キノコのこのこ!
冬が近づいてきた、11月初旬。
流石に半袖で過ごす事がなくなってきたこの時期には、スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋、人は様々な秋に楽しんで居るだろう。
さて、自己紹介をしよう。
私は高本蔵名(たかもとくらな)。
身長148cmの男性…なのだが、見た目は女子そのもので、その容姿は一つのコンプレックスでもある。
主に顔の童顔と、長い髪をゴムで縛っているせいだと思う。
私はそんな秋を堪能してはおらず、今いるのは紅葉が落ち乱れる森の中。
何故こんな所にいるのかと言うと、大学の課題である。
私は生物や科学といったことを専門としている理系の大学に通っている。
そして、今回の課題は生き物、もしくは植物についてレポートをまとめなきゃならない。
そして、私の研究テーマは「キノコ」。
森…というか山に来たのはキノコを探すためであった。
ただ、山の麓にはキノコはなかったので、私は今、山の中腹にいる。
また、そのキノコ探しに着いてきたのは、私だけではなく…
「ふむ、なかなか松茸は見つからんな」
私の後ろでハスキーボイスを発しているのは、私が通う大学の教授で、白衣を纏った、白と青色の体毛の狼獣人である。
掴み所がなく、変わった人である。
しいていうならお喋りで、ウザい。
もう一度言おう、ウザい。
「松茸なんかある訳ないでしょ、ちゃんと探して下さい教授」
「お、ベニテングダケか」
ダメだこの人、早くなんとかしないと。
私の手伝いをするどころか、むしろ邪魔してる気がする。
そもそも私が探しに来てるキノコはタケリタケっていうキノコだ。
松茸でもベニテングダケだけでもない。
だが、この人がいなくなると、タケリタケを探す事が出来ない。
何故なら私はタケリタケをあまり知らない。
そもそも、この人がこのキノコを調べたら単位をくれるって言ったから調べているだけだ。
形、見た目も調べない自分も自分だが。
まぁ、調べていないのは教授が「俺がいるから、大丈夫だ、問題ない」から調べなくていいとの事。
「教授。早くしてくれない?」
「待ってくれ、この生物の生体データが…!」
「知らねえよ」
流石にムカついてきた。
教授は渋々立ち上がると、フラフラとこちら歩いてくる。
「クラナ君がどんどん口が悪くなって行く…教授悲しい」
「その悲しみを抱いて身投げして下さい。そもそもふざけるなら帰って下さい」
私はそう言葉を吐き捨てると、前を向いて歩く。
すると、教授も私と距離を置きながら歩き始める。
私は辺りを見回して、キノコがないか探す。
「あ、ベニテング…」
「どれ、チェックして…」
「さっき調べてただろ…」
「ここキノコにも一つ一つ個体差というものがある!」
どうでもいいわ。
というか、そんな事ばっかしてると日が暮れる。
なるべく早く行動しなくては。
「教授、お願いですから早くしてください。私だって早く終わってゆっくりしたいんです」
「そうだな、遊ぶのはやめて本題に進むか」
教授はそう言うと、鞄の中から本を取り出す。
どうやら図鑑のようだ。
「さて、クラナ君。タケリタケとはどんなキノコか、分かるか?」
「知るわけないでしょう。貴方が調べなくていいと言うから」
「そうだな、簡略に言おう。タケリタケはテングタケの仲間、ガンタケの子実体に寄生して出来るキノコにだベニテングダケだけなどにも寄生したりもする」
いきなり講義が始まったのだが、私にとって何時もの事なので普通に接する。
「つまり、珍種ですか?」
「珍しい種ではあるな。ほら、これがタケリタケだ」
「ふーん………は?」
私はそれを見て絶句する。
何故ならタケリタケが……
「立派だろ?」
「立派だろ?じゃねぇよ!」
ご立派様であったからだ。
どんな形か?言わせんな恥ずかしい。
というか、なんでこんな形に…
「傘が開かず成長しないため、このようになると言う」
「可哀想に……」
「哀愁を込めて言わんでもいいだろう」
タケリタケの見た目や特徴が分かった。
というか一つ思い出した。
「教授、これを探させようとした目的はなんです?」
「君のは・ん・の・うが見て見たかったのだ」
「だから教えなかったのか…ほんと、最低ですね」
私がそう言い放つと、教授は耳を垂らして俯く。
こうなったら面倒臭い。
「最低……ただ、純粋な子どもの反応が見たかっただけなのに……単位もあげるのに……もう鬱だ、死のう…」
すごいネガティブに口走る教授。
純粋な子どもってなんか危ないイメージしか湧かないのだが、面倒臭いので、あやすことにする。
「ごめんなさい。言い過ぎました。教授の好きな頭なでなでしてあげますから…」
「なでなでとか、君も子供だな……プッ」
「あんた本当に死んでくれよ」
そう言葉を吐き捨て、私はキノコ探しを再開する。
先ほどの図鑑のやつを探せばいいのでついに私一人でも探せる様になった。
これでどんどん教授がいらない子へとランクアップして行く。
「ところでクラナ君」
「何ですか?」
「ここの山の土は湿り気が強い上に不安定だ。あまり斜面側に寄らない方がいいぞ」
私はしゃがみ込み、土を触る。
確かに教授の言う通り土は湿っており、不安定な土であった。
「ええ、気をつけます。教授こそ、キチガイな思考で見知らぬキノコがあるからと言って斜面に生えてるキノコを取りに行こうとしないでくださいね」
「普通に教えてあげているだけで何故disられなければいけないのだ…」
教授は俯く。
普段人の事をからかってくるのはあんただろうが。
はっきり言ってdisられても仕方はない。
だが、今回は普通に教えてくれたみたいなので、流石に言い過ぎたかもしれない。
あれ、なんで罪悪感を覚えてんだろ。
「それじゃ、ここら辺でキノコを探そうかな」
私はなるべく斜面から離れるようにキノコを探す。
と言ってもキノコはなかなか見つからず、困り果てる。
そして、時刻は昼を過ぎ…
[newpage]
「ダメだ。見当たんない…」
「……少し休憩するか?」
「…そうですね。お昼にしますか」
私達はブルーシートを敷き、その上に座り、荷物を降ろす。
私は鞄を開けて、弁当箱を二つ取り出す。
すると、教授も同じように弁当箱を二つ取り出す。
「あれ、教授持ってきたんですか、私、二つ作ったんですが」
「…奇遇だな俺もだ」
二人の間に沈黙が走る。
そして、合計4つの弁当箱を二人して見つめる。
「分けて食べましょうか」
「そうだな」
私達は弁当箱を開ける。
「む、意外と綺麗な彩りの中身だな」
「一番あんたに意外って言われたくないんだけど…って教授も綺麗な彩りじゃないですか」
そう言うと、教授は顔を赤くして尻尾をブルーシートに何度も優しく叩きつける。
「実は、弁当を作ったのは初めてでな…」
「ふーん」
私は有無を言わせず、教授が作ってきた玉子焼きを食べる。
「美味しいですよ」
初めてにしては上出来だと思う品だ。
まあ料理を始める過程に置いては初歩的なのだが、初歩的がこれなら料理の腕は早い段階で良くなるだろう。
「そ、そうか……」
教授が顔を赤めて笑う。
へぇ、教授ってこんな顔もするのか。
なんか純粋で可愛いと思った自分が居た。
「それにしても、クラナ君はとても料理慣れしているな。味付けのバランスも焼き加減やそれぞれが上手い」
「そりゃ幼い頃から作っていますから」
「…クラナ君の幼い頃はどういった様子だったんだ?」
「普通の静かな子供でした」
「…ふーん、あ、茄子味噌炒めだが、食うか?」
教授が私の所に箸を使って、私の前まで持ってくる。
「ほら、あーん」
「…茄子嫌いなんですけど」
「好き嫌いしてはいかんぞ」
「教授だってセロリ嫌いじゃないですか」
そんな事を言っても、教授は私の前から茄子を退かそうとは一切しなかった。
「…あー」
私は観念して、口を開く。
すると、教授は遠慮無く私の口に茄子味噌炒めを放り込んできた。
味噌の味は程よいのだが、茄子のべちゃべちゃ感が…やはり美味しくない。
「………やっぱり茄子美味しくない」
「そうか、まだあるぞ」
「今度教授の口の中にセロリを生花のように挿しますからね…」
「まあまあ、今度アイス買ってやるから」
…なんか教授のペースに乗せられてる気がする。
いや、それは何時ものことなんだけどさ。
「とにかく、昼ごはん食べちゃいましょう」
「えー…もう少しゆっくり食べたかった…」
「お前が毒キノコにばっかりに目を向けてるからだろ」
「口が悪いぞ」
教授は指を立てて、左右に振る。
何か殺意湧くな…その動き。
「とにかく本当早く食べて?」
「メイド風に頼む」
ムカつく…どうせやらないとゆっくり食べ続けるんだろ。
私は目を閉じ、心を決めて目を開く。
「…早く食べて下さい♡ご主人様♡」
必死の演技。
もう私のプライドはズタボロだ…
「今の声、ボイスレコーダーに保存したからな」
「やめろおぉ!!」
「はっはっ!これで私は君の弱みを握ったな!」
「もうやだこの人……」
私は俯き、教授から体を背ける。
「というわけで、クラナ君。俺の肩を揉んでくれ」
私は立ち上がり、教授の背後につく。
そして…
ゴキリ…
「いだだだだ!!!?」
「どうです?気持ちいいでしょ?」
私は教授の肩を思いっきし、揉んでやった。
「気持ちいい訳……あだだだ!!」
「こってますねー」
私は教授の肩を思いっきり握って遊んでいると…
「がぁぁ!!」
いきなり教授が私を振り払い、押し倒してきた。
「……っ!」
私が驚いた表情を浮かべていると、教授は私の上から退く。
すると教授が訝しげな表情を浮かべる。
「…なんですかその顔は」
「うーむ、エロチックな雰囲気は出せないもんだな」
「そんな雰囲気、別のページで出してください(R-18的な意味で)」
私は起き上がり、土を払う。
「むー、いいではないか。私はクラナ君は結構好みだぞ」
はいはいそーですk……
「…は?」
教授が私の顔を見る。
いや、待って私…男だし。
そして、まさかそんな事を言われるとは思ってなかったので、私は顔を赤くして、教授を見る。
すると教授は優しく笑みを浮かべて…一言呟く。
「…性的な意味で」
ナニイッテンダコノ37サイノオッサンハ。
「本当サイテーなロクデナシですね。死ねばいいよ」
私は教授を無視して、前を歩く。
恥ずかしさなんか虚無に消えたわ。
教授も私の後をついて来る。
「ついてくんな、変態親父」
「照れるな…イケメンだなんて」
「言ってねぇよ」
このやりとり何度目だろうか。
そろそろ、キノコを…タケリタケを探さないと…。
「むっ!あれは…まさか!!」
教授がいきなり声をあげて、走り出す。
そして、一つのキノコを持ってきた。
私達はついにタケリタケを見つけた!
…と、思ったのだが。
「見ろ!クラナ君!タマゴタケだ!」
the☆タマゴタケ。
というか、タマゴタケじゃない。
普通のタケリタケを探してるんだ。
いや、タケリタケ自体も普通のキノコじゃないけども。
三文字しか合ってない。
タとタケしか合ってない
「いただきますっ!」
私はふと教授を見ると、タマゴタケにかぶり付く姿が見えた。
私は少し唖然として見ていたが、少し溜息を吐く。
「まーた変なの食べて…。何か起きても知りませんよ?」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ」
本当かよ……
まぁ、タマゴタケって確か食用のキノコだった筈だ。
ベニテングダケと似てるけど、多分平気だろう。
「うっ……!?」
と、思っていた矢先、教授が膝をつき苦しみ始めた。
「教授!?」
私は慌ててしゃがみ込み、教授の心配をする。
どうしよう…!さっきのキノコ、毒キノコだったらどう対処すれば…!?
だが、そんな心配をしていると、教授は立ち上がり、私の方を向く。
「……演技〜」
教授は両手を開くように私に向けて和かに微笑む。
ブチッ……
その時、私の中で何かが切れた。
「いやー、びっくりしただろう?クラナ君…」
教授が呟いたその刹那、私は教授の顔に思い切り平手打ちをかました。
大きな音がこだまする。
「……」
私は教授は唖然のして私の方を向く。
「なんですか、謝りませんよ」
絶対謝るもんか、激おこぷんぷん丸だ。
今年の流行語大賞の一覧に載ってたけど、いや、そんな話はどうでもいい。
私は睨みを利かして、教授見ていると、教授は耳を伏せて涙目になり、その場に崩れ落ち、こちらを見つめて来た。
私は少し唖然として、様子を見ていると。
「すまん……クラナ君」
そう呟くように言った。
教授の尻尾は既に垂れていた。
恐らくふざけていないだろう。
ふざけていたら、流石に次はぶち転がすが……
まぁ、許してやるか…
「…私も頬を叩いてごめんなさい」
そう言って、私は教授の頭を撫でる。
すると教授の顔がみるみるうちに元気になっていく。
尻尾もはち切れんばかりに揺れていた。
こんな風だったら可愛げがあるのになぁ…
「というわけで、抱っこだクラナ君」
「あんた本当にいい加減にしろよ」
「いい加減にしないのが俺クオリティだ
ウゼェ……
主にその開き直りっぷりが。
なんかこの人よくわかんない。
何がって?全てだよ。
「…はぁ、キノコ探しますよ」
「うむ、探索開始だな」
私たちはキノコを探しに行く。
[newpage]
すると…
「あそこにあるの、タケリタケですよね」
見つけた。
見つけたのだが…
「…斜面に生えているな」
私達が見つけたそれは、斜面に堂々と生えていました。
ほんと、手間がかかるなこのキノコ…
だが、こんな事もあろうかととあるものを持ってきていた。
「教授、しっかり持っていてくださいね」
私は教授にロープを投げつける。
これさえあれば、斜面に降りてキノコを採る事も出来る。
私はロープをしっかり握ると、斜面に一歩踏み出す。
「…気を付けて降りるんだぞ」」
「分かって…」
ます。そう言おうとした矢先、足が滑りそのまま滑っていく。
しまった、滑る斜面を甘くみてた。
「きゃぁぁ!?」
「クラナく…!」
ついでにロープの引っ張られる力に、滑り落ちた私に驚いていた教授が止められるはずもなく、私と一緒になって滑って行く。
「うぉぉぉ!?」
「バカ!何してるんですか!?」
「君も人の事…言えんだろうがぁぁ!?」
私達は山の斜面を猛スピードで滑り降りて行く。
勿論この山の斜面に木が生えていない…ということはなく、途中木にぶつかりそうにもなる。
「きゃ!?」
が何とか躱す。
「クラナ君、きゃ!?とか可愛いな」
お前後で殺す。
というか、余裕だな。アンタ…
そして私達は山の斜面を滑り続けて行った結果、山の麓にある川の側の崖から落ちた。
下には川が見える。
「いやぁぁ!?」
「うぉぉぉ!?」
そして、当然為す術無く私達はそのまま川に落ちていく。
ギャグアニメの様にザパーンと大きな音を立てて川の中に入ると、もがくようにして水面から這い出て陸に上がる。
11月の水は冷えており、更に天然の流れて来る水だ。
冷たくて寒いという感想しか出ない。
「……教授のバカ、何でしっかり支えないんですか」
私の後に続いて教授も陸に上がる。
「無茶言うな…一歩踏み出していきなり落ちる奴が居るか…」
「あーあ…鞄びしょ濡れじゃんか…」
私は鞄を開き、中のびしょ濡れ具合を見る。
…全滅してました。
持ってきていた筆記用具、ノートは使い物にならない。
唯一奇跡だったのはスマートフォンを教授の車に忘れて来たということだった。
「うわっ…」
「…乾かすのは必至だな」
教授が溜息混じりに呟いた。
あ、そうだ。思い出した。
「教授、覚悟しろ!」
「ちょ、クラナ君……」
私は教授を川に突き飛ばす。
再び、教授は川の中に顔から突っ込む。
「ぶはっ!?」
教授はもがくように川から這い上がる
「クラナ君…なにを」
再び陸に上がってくると、私の所に近づいてくる。
「さっきの仕返しです。人の事はバカにするから…」
私は大きな溜息を吐いて、その場に座り込む。
「…車に戻ろう、クラナ君」
「…戻るってどうやって?」
私達は無言になる。
ということは、私達は遭難している。
「あー、とにかく…服を乾かそう」
「火種を探して来るのだ。クラナ君」
「あんたも探せよ!」
私達は火種を集めると、教授が持っていた着火マンで何とか火を付けることに成功する。
水に落ちてんのにちゃんと火が付くとか、着火マン優秀。
「あー、あったかい…」
「…そうだな」
私達は焚き火に近づき体を温めて居た。
…二人ともパンツ一丁で。
仕方ないとは言え、寒い。
夏じゃないし、秋だし…
因みに服は乾かしている。
「とはいえ、風が寒い…」
「なら、抱きついていいか?」
「ノーモア、ハグ」
「いけず」
「調子のんな」
私は教授にそう吐き捨てると、体を暖まる事を最優先に考える。
「教授はいいですね、毛皮があって」
「だから抱きつこうと言っておるのに」
「あんたの場合変な方向性に行くからダメだと言ってんだ」
少なくとも襲われないだろうが…襲われないよな?
「君はカルシウムを摂取した方がいいぞ!」
「お前は紳士という言葉を学んでこい」
もう、寒いし疲れたから話しかけないで欲しい。
「お、白衣が乾いた」
「…早いですね」
「特注品だからな」
…あんたは変なところでハイスペックだな。
いや、教授の周りの物がハイスペックなんだけどさ。
「…ほら、クラナ君」
教授は乾いた白衣を私にかけてきた。
「…教授?」
「君の方が寒いだろう?気にするな」
「…ありがとうございます」
私は教授の親切に感謝しつつ、体を温める。
[newpage]
あれから3時間。
服が乾いたので、服を着て山を降りることにした。
キノコ探し?諦めたわ、んなもん。
崖から落ちるわ、濡れるわで散々だし、このままやっても収穫は得られそうになかったから。
というか暗くなる前からこのまま山を降りないとやや危険だ。
脱出しないと。
そう思っていたが、ここの川から車の距離まで離れていなかった。
私達は車に乗り込み、そのまま帰路に着いた。
その道中の事だ。
私は車の助手席に座り、教授が車を運転していた。
私は外を見つめて溜息を吐く。
「はぁ…結局タケリタケは収穫なかったですね」
そう呟くと、教授が肩に手を置いて微笑んだ。
「心配いらないぞ、ほら」
教授はそう言うと、私に薬品瓶を渡してくる。
私はそれを訝しげに開けると、そこには先程採り損ねたタケリタケがあった。
「…これは?」
「実は山を登り始める時に見つけてな」
若干イラッとしたが、敢えて理由を聞いて見た。
「……なんでそれを言わなかったんです?」
「…君の事だ、すぐに帰りたがるだろう?それを考慮して、君とコミュニケーションが取れると思ったから君に見つけたことを敢えて言わなかった。まぁ…最後の崖から落ちたのは予想外だが…」
教授はそこまで言うと、頭を掻きむしり、それを終えると、車のハンドルを両手でしっかり握る。
…結構色んなことを考得てくれているんだな。
少し、有難く感じた。
「…教授、有難うございます」
「なに気にするな」
あれ、教授ってこんなに紳士だっけ。
少し見直した…
「というわけで、ほら」
教授は人差し指を自分の頬に指差す。
「…何ですか?それは」
「何ってキスしてくれたら今回の件はチャラにする」
「じゃあ、いいです」
「では、数日間私の助手になって働け」
「めんどくせェ……」
私は大きく溜息を吐く。
「泊まり込みでな」
「嘘だろ…」
私は顔を顰める。
それを見た教授はドヤ顔をして私の事を見てきた。
殴りたい衝動に駆られる。
後で
「クラナ君」
教授が前を向いたまま私を呼んだ。
その顔は嬉しさに満ちていたのか、とても穏やかだった。
「何ですか?」
「…ホテル行こう」
「テメェ車降りろ!!」
この後、私達はこんなやり取りをしながら自分達の住む街へと車を走らせていった。
散々教授に振り回されたり、何時も通りのウザさが更に磨きがかかったキノコ探しだったけど、教授が私の事を思って行動してくれた事、そして、さりげない優しさを掛けてくれた思いやりがあるという意外な一面があることが分かった。
今日は散々な目にあったけど、その反面、教授の見方が変わってきた日でもあった。
私は、そんな事を考えてながら、大きな溜息を吐いて、自宅へと向かっている車の中から外を見るのであった。
[newpage]
そして、次の日。
私たちが揃いも揃って熱を出して学校を休んだのは言うまでもない。
終わり