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獣の家

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  [newpage]

  呪われたこの体が、まともに動いてくれたなら。

  大好きな兄様と一緒に、駆けたり、歩いたり、太陽の下を一緒に歩けたら。

  そう、何度も何度も願っては、それを裏切る弱々しい自分の体を恨んできました。

  ああ、でも今は違う。

  あの薬!

  あれを飲んで、私の体はたちどころに生まれ変わったのです。まさしくあれは第二の生誕でした。弱々しく、すぐに熱を上げ、目眩や立ち眩みに酔い、締め上げるような頭の痛みに悩まされていた私の体は、呪われていた私の体はすっかり、解放されました!

  今はもう違う!

  どれだけ叫ぼうが、どれだけ笑おうが、どれだけ体を動かしても息も切れない!

  ああ!新しい私の体!なんとすばらしく快適なことか!

  どれだけ喘ごうが、どれだけ睦事に耽ろうが、どれだけ突き込まれようが、いくらでもいくらでも続けていられる!

  

  今まで知らなかった雄の味!猛く張りつめる男根の匂い、たぎり、口に含むとまるで太陽のように熱く、濃厚な精の雫が私の脊髄を振るわせる!

  嗚呼、兄様!私は幸せです。

  兄様がくれたあの薬のおかげで、私はすっかり生まれ変わることができました!

  兄様!

  はやくわたくしに、わたくしのくちに、兄様のいちもつを含ませてください!

  兄様の男の匂いで、わたくしをツヨくツヨく酔わせてください!

  ホトのおくを、ついてついて、わたしのあつい女のあなを、ぐずぐずぐらぐらと沸き立たせてほしいのです!さうすれば、わたしは熱く熱く鳴いて、しっぽを振って、いっぱしの娼婦にもまけないくらい、兄様をここちよくしてあげますから!

  だから、はやく、はやくかえってきてくださいまし!兄様!

   [newpage]

  「うわ」

  なんてモノを読んでしまったんだろうかと、マヤはベッドの上で額に手の甲を当ててうなった。なんだか目眩もいつもより強い気がする。

  体の弱いマヤの療養のため、兄の進学に併せて越してきた古い一軒家。マヤはその居間に置いた介護ベッドの上で、とんでもない文章に頭を抱えていた。開いた窓からは、さらさらと竹の葉が風に揺れる音が聞こえてくる。

  とある地方都市のはずれの山裾にあるその家は、間近に迫る竹林に呑み込まれるようにして建っていた。前の住人は全くの赤の他人であるが、元々はこの街に住んでいた親戚の家と土地で、親戚の死没後、父が相続したために庭付きの一軒家を兄妹は只で使えている。木造二階建ての建物自体はやはり古いが、あちこちリフォームしてあるので不便さは感じられない。介護ベッドをおいてある居間からは瑞々しい庭と竹林の景色が広い窓からたっぷりみえる。マヤのお気に入りだ。

  そんな居間のベッドの上で、マヤはこめかみを押さえていた。

  「何でいきなり、こんな日記に‥‥」

  兄が大学に行っている間、マヤは静かにこの家で過ごす。

  流れるような長い黒髪に白い肌。すこし痩せ気味でほっそり華奢な体つき。小学校のころ見舞いに来た数少ない友人が、お姫様みたいと言ってくれたが、それを見せる相手はほとんどいない。

  まるで呪われたかのような自分の体。

  すぐに熱がでる。体力もない。幼い頃から体が弱く、学校に通うのも精一杯なくらい身体の弱かったマヤだったが、この家にきてからは少しだけ、体調がよくなってきていた。綺麗な空気のためか、水がよかったのか、とにかく少し体調の戻った彼女が、家を探検していて見つけた古い日記帳。前の住人とともに空っぽになった仏壇を置く棚。その奥、壁板の裏にしまってあった木箱にそれは入っていた。

  大正の文字が見え隠れするその日記帳に書かれていたのは、マヤと同じ病弱な少女の日常だった。この家の由来からして、マヤ一家につながる誰かの日記であろう。この家の築年数より遙かに古いので、前の親戚が持ち込んだのだろう。

  日記の主に親近感を覚えたマヤは、古い文体に苦労しながらも少しずつ少しずつその日記を読み進めていった。優しい兄がいるところも同じ。よく熱を出してめまいを起こすのも同じ。まるで100年前に自分がタイムスリップしたような不思議な感覚を楽しみながら読み進めていったマヤが、遭遇したのが、あのページだった。

  穏やかな療養の日々に、突如として淫らな喜びと欲望を爆発させたかのような、異様なページ。

  「‥‥なにがあったんだろ」

  それまでの物静かな日記から、突然人が変わったかのような内容で。どうも薬が効いて体調がよくなったと言うことのようなのだが、後半はひとことでいってしまえば狂気に満ちていて、日記の主に親近感を覚えていたマヤからすれば、まるで自分が変貌してしまったかのように思えていやな気分だ。

  「お兄ちゃん、今日は遅いって言ってたっけ‥‥」

  兄の買った、ぶんぶんとクマバチみたいに必死に走るあの軽自動車のエンジン音はまだ聞こえてこない。

  2つ離れた兄の裕児はマヤのために、進学時に入居した大学近くにある学生街のアパートから、マヤの体調が何より優先だと言って大学から遠いこの家にわざわざ引っ越した。めがねを掛けたいかにも理系という風貌の兄で、見た目に違わず振る舞いも落ち着いていてマヤの自慢の兄である。

  もともと彼が進学先をこの街の大学に選んだのも、いずれこの家に自分と住むことを考えてのことで、マヤの卒業と引っ越しにあわせて中古の軽自動車まで買っていた。少々シスコン気味だが、幼少時から体の弱い妹の世話をしてきたからには、多少は仕方ないだろうと思っている。

  梅雨の終わりの、天気が悪い午後。どんより曇っている日は、この家はまるで夕方のように暗くなる。

  早く帰ってきてほしいと思いながら、マヤはあの日記を箱に戻してベッドの下に押し込んだ。

  

   [newpage]

  「マヤ、マヤ!」

  「う‥‥」

  「ただいま。大丈夫か?俺がわかるか?」

  「んっ」

  気がついたら、心配そうな裕児に体を揺さぶられていた。蛍光灯の白い光がマヤの目を突き刺す。ゆっくり目を開けたマヤは、全身汗びっしょりなのに気がついた。ぼおっ、と頬が火照っている感覚。また熱がでたようだ。時計は19時に近かった。夏至も近いのに部屋は暗かった。まだ雨が降っている。

  「ゆーにぃ‥‥」

  「また熱がでたな。ごめん遅くなって。薬飲もう」

  「う‥‥」

  「体、起こそうな」

  兄をゆーにぃと呼ぶ幼い頃の癖はなかなか抜けない。けど今はそれこそ幼子のように甘えたくてたまらない気分だった。熱のせいで、また気分も悪い。目眩がして、胸がムカムカして、苦しいのだ。顔に張り付く黒髪が鬱陶しい。

  「起こすよ」

  介護用のベッドは兄の操作でゆっくりとマヤの上体を起こしてくれる。はあはあと荒い息を吐くマヤの前に、コップと薬が差し出された。いつもの熱冷ましに、もう一つ。黒い丸薬。

  「これ、は?」

  「途中の道の駅に売ってた薬草丸。ハーブを練り固めたんだってさ。俺も舐めたけどさ、のどがすーっとして気持ちいいよ。よかったら舐めてみな」

  「‥‥」

  「どした?」

  あの日記が頭を一瞬よぎる。一瞬躊躇したマヤだったが、兄も舐めたというし、この火照る体が鬱陶しくて、手を出した。

  「んっ!?」

  唾液がふれた瞬間、清冽な香りが丸薬からあふれ出し、マヤは目を丸くした。

  「どう?」

  「‥‥すごいね」

  単に薄荷だけではない。兄の言うとおりいろいろなハーブの混合体だった。雨の日の森や空気、山から吹き付ける甘い草の匂いが、ホロリと崩れる丸薬からわき出すように口に溢れてくる。水を飲む。匂いはさらに瑞々しくなった。

  「ふあ‥‥」

  すうっと、体から熱が抜けていくのがわかる。心地よさに、思わず目が細くなる。

  そんなマヤの様子を見て、兄はうれしそうに笑いかけてきた。

  「どう?」

  「すごい‥‥外、森の中散歩してるみたい」

  「いい香りだよな。気に入ってくれてよかった。食事作ってくるから、ちょっと待っててな」

  「うん‥‥」

  もしこれが”あの薬”だったら。元気になるのはいいけれど、あれは、ちょっと。

  がさがさと台所で買い物袋を広げている兄の後ろ姿が見える。

  思わず目線が下半身に向く。ズボンの下に、兄もアレを持っている。ごくりと、のどがなった。

  「――っ」

  その音にぎょっとする。せっかくの薬草の香りが妖しい気持ちで乱されるのは嬉しくない。

  マヤは目をつむり、顔を背けた。

  [newpage]

  次の日、マヤの熱はすっかり下がっていた。普段だったら一度熱が上がると微熱や倦怠感で3、4日は不調を引きずるのだが、たった一晩でダルさも無くなっていて、兄と一緒に朝から目を丸くした。外はからっと雨も上がり、初夏らしい瑞々しい青がまぶしい朝の陽光と一緒に、居間の窓から溢れていた。

  「すごいな。これ」

  「ほんとにその薬のおかげかな」

  「わかんね。でもそうならすごいな」

  まだ数十粒ある丸薬が入った小瓶を眺めて、裕児が嬉しそうに笑う。今日は朝一から講義がある日で、マヤの体調という心配事が減った兄はとても嬉しそうに見えた。

  教科書が入ったデイパックを肩に掛け、兄がベッド脇に来た。おでこに手を当ててくる。熱の下がったマヤのおでこを触る手が、なんだかくすぐったい。

  「うん。これなら大丈夫そうだな。今日は午後3まで講義があるから」

  「わかってる」

  「昼食は冷蔵庫に入れてある。待ちきれなかったら夕食も先に食べてな。冷凍庫にピラフが入ってるから」

  「うん、うん」

  「じゃあ、行ってくるから」

  「いってらっしゃい」

  にっこりマヤに笑いかけると、裕児は出かけていった。クマバチ軽自動車をぶうん、とひと鳴きさせて。

  「いってらっしゃい‥‥」

  家に残されたマヤは、ベッドの上で玄関をじっと見つめていた。

  どくん、と胸がなる。

  「ゆーに‥‥」

  ベッドのリモコンを操作し、ゆっくり上体を起こす。今日はこれに頼らなくてもいいくらい体の調子はいいのだが、マヤはベッドに頼った。

  「なに、これ」

  胸がどくどく鳴っている。動悸と言うほどではないが、異様に血の巡りがいいのだ。原因はおそらくあの丸薬である。道の駅で売っていたと裕児は言っていたが、正直今まで飲んできたどの薬よりも効いている。そう感じる。何か変な成分でも混ぜられているのではないかと疑うくらいに、全身に血の巡る感覚がしていた。

  そしてそれは、マヤの体を妖しく火照らせてもいた。まるで、あの日記の主のように。

  「んっ」

  そっと、体を動かしただけなのに、声がでた。乳首が寝間着と擦れたのだ。こりこりに固くなった、乳首が。

  「うそぉ‥‥」

  今朝はまともに裕児の顔を見れなかった。顔の火照りに気づかれたくなかったし、よからぬ想像が頭をぐちゃぐちゃにするからだ。

  「はあっ」

  深呼吸しながら、そっと胸の先端に服の上からふれる。甘いしびれがたちまち体に駆け抜けていった。自慰はいつぶりだろう。マヤにも性欲はあるが、迂闊に体力を使うとたちまち熱が上がるので、滅多に自分ですることはなかった。

  そうなのだが、今日は体調がいいせいか、それとも丸薬か、あの日記か、もう全部なのか、とにかく勢いよく全身をめぐっている血流が、マヤに久々の性欲を思い出させていた。

  「んっ」

  服の上から乳首をゆっくり摘む。神経の塊のようなそれが、つんっと鋭い性感を発し、白いマヤの体をびくっと振るわせる。今日は、気持ち悪くならない。マヤは、指を蠢かせて、乳首をくり、くりと弄くりだす。

  「は、ああっ」

  せっかく体調がよくなったのに、その途端になにをやっているのか。ほの暗い背徳感と妖しい快楽がわき起こる。あの日記の少女のようになっている。あにさま、あにさまと艶めかしく鳴き、兄の逸物を舐めたという彼女のように。

  「んぅ、んんっ」

  くりくりと乳首を指先で転がすたびに、体がビクビクとはねて、ベッドがぎしぎしと軋む。汗をかいた体は少しにおう。ほんとうは自分で風呂にはいるはずだったのだけど、先に“これ”を済ませてしまおう。うっすら目を開き、マヤは自ら乳首を転がし続ける。薄目でぼやける視界の先、焦点をあわせずに自分の指をみる。そうすると、だんだんまるで、誰かにされているように感じてくる。ベッドの上でびくびくと跳ねながら、甘い刺激に酔う。乳首はますます硬く張り、パジャマをいやらしく盛り上げている。左手で刺激を続けながら、マヤはそっと右手を股間に伸ばした。

  白い布団の下、ゆっくり目的地に着いた指が、マヤの股間をぐっと押し込む。

  「ふあああああっ!?」

  大きな声が出たことに自分でも驚いた。パジャマとパンツ越しだったのに、まるで直に触れられているかのような衝撃的な刺激に、久々に精気みなぎっているマヤの肉体は敏感に反応した。

  「っは、ああっ、すっごい、なに、これ」

  熱くうっとりとした声。こんな自分の声も久しぶりに聞く。思わず中指が伸び、しゅるしゅると割れ目をなぞってゆく。その指の一往復毎に、たまらない快感が脳にとどくのだ。もう乳首も陰唇もクリも、触るのをやめられない。

  「すごいい‥‥これ、すごいのぉ」

  兄が帰ってくるまでまだまだたっぷり時間はある。この山裾の家は隣り合う家もない。声を上げても、竹林に全部吸い込まれてゆくのだ。続きをためらう理由はなにもない。マヤはこぼれかけた涎をねろりと舐めとると、あそこに延びていた右手を、ゆっくりパジャマに差し込み始めた。

  布越しでこれなのに、直接さわったらどうなるだろう。胸も、あそこも。再び大きな音でのどをゴクリと鳴らす。熱がこもり、汗で少し蒸れた下着が指に触れる。指を伸ばして揃え、すぼめた手のひら全体で、押し込むように、また触ってみる。

  じゅん!

  「ふううううううっ‥‥」

  ぶるぶるとマヤの全身が震える。深く甘い快感が、手のひらに力を込めるたびわき起こる。つつつ、と割れ目を下から上になぞれば、ぞくぞくと快感が脊髄を焼くのだ。

  予行演習は済んだ。マヤはもう我慢できずに、下着の中に右手をつっこんだ。ざわっと手に触れる陰毛が、これからなにをされるか、マヤ自身の性器に警告を発している。

  「さわ、っちゃうね‥‥んひううううう!」

  じゅくっ!と水音を聞いたような気がするほどに、マヤの性器はぐずぐずにとろけきっていた。敏感な陰唇は、まるでぱっくりくわえ込むようにマヤの指を奥へ奥へと呑み込んでゆく。膣の中、ざらつく一点が中指に触れる。そこを、躊躇なくそっと押し込む。

  その瞬間、爆発的な快感がはじける。

  「はうううっ!っふあああああああ!」

  ぐぐっ!と上体が伸びる。頭が真っ白になって、ベッドの上でびくびくと魚のように跳ねる。ひさしぶりの絶頂。圧倒的な快楽。ぐるぐる目が回るが、いつもの目眩ではない。体中に熱い血が巡っている。張りつめた乳首を、ぐりぐりぐりっと力任せにすりつぶす!

  強すぎる刺激はマヤを連続絶頂に陥れた!

  「あっあ!あああ!いぐっ、ま、まだいぐっぅぅうううう!っぐううううっ」

  歯を食いしばってよだれの泡を吹きながら、なんとか指を止めようと全身を硬直させるが、まるで別の生き物のように指が止まらない。じゅぶじゅぶ、びゅちゅぶちゅぶちゅっ!溢れ出る蜜が指にからみ、ねばっこく淫らな音を響かせる。

  「はああああんんっ!とまらないっ、ひゅあ、あ、とま、とまらないのお!きもちいいのぉ!」

  “今まで知らなかった雄の味!猛く張りつめる男根の匂い!”

  「っぐ、ふ、あっ」

  喘ぐ口がだらしなく開き、舌がゆっくり延びてゆく。あの日記の一節。あの少女は男の味を知った。自分はまだ、それを知らない。知識としては知っている。まるで媚びるように、熱くて硬いそれを、口に含む自分を想像しながら、半開きにした口の中で艶めかしく舌を動かし、指は乳首をころころ転がし、ぴん、と延ばした足で突っ張るようにベッドの上でからだを硬直させる。ぐちゅぐちゅぐちゅと下着の中から溢れるいやらしい音が、どんどんマヤを酔わせていく。口は虚空で男の形を舐め回す。熱くて太い雄のあれに舌を絡ませ、匂いをむねいっぱいに――――

  ぶうううううう!

  「――――――!!!!!」

  突如響いたエンジン音に背筋が凍るような衝撃が走る。クマバチのようなあの音!兄が、裕児が戻ってきた!

  半開きの口からよだれをこぼし、パジャマの前をはだけ、布団は足下でくしゃくしゃになってて‥‥こんな姿見せられない!

  「はわあっ!」

  「忘れた!レポートレポート!!」

  玄関が開き、兄が入ってきた。マヤは慌てて布団を引き寄せると、ぐちゃぐちゃに乱れた身体にばさっとかぶせて潜り込む。兄が居間に踏み込むのとマヤが布団に顔を隠すのはほぼ同時だった。

  兄はマヤのベッド脇を突っ切ると自室にしている隣の部屋に入り、文机からレポートを拾い上げ、安心したようにため息をついた。

  「ああ、あった」

  「っふ、ふうううっ、っは、あ」

  「ん?なにしてんの、おまえ」

  「な、なんでも、ないっ」

  「具合悪いのか?」

  ふうー、ふうーと荒い息を吐く妹。布団に深く潜って、額には汗が光っている。

  「熱あがったのか?」

  「だ、だいじょうぶ、ちょっと、汗を」

  「息あがってるじゃないか。ちょっと触らせろ」

  「ま、まって」

  そう考えるのはごく自然なことだった。裕児はマヤに近づくと、おでこに手を当てる。

  「あ」

  ぞくり、と甘いしびれが頭に広がる。おでこに手を当てるためにあげた右腕。わきの下からただよう裕児の体臭が、いつもより濃い気がした。

  汗の匂い、皮脂の匂い、そして頑丈な男の匂い。

  どっどっどっ、と心臓が早鐘を打っている。

  「なんだ、熱はないな」

  「だ、だから、だいじょうぶだって」

  「‥‥」

  「な、なに」

  裕児がゆっくり顔を近づけてくる。マヤは目深にかぶった布団から目だけを出して、近づく兄の顔を怖々と見上げた。あと一歩のところで寸止めを喰らった身体が、疼いてしょうがない。

  「な――――」

  「におうよ」

  「!!!!!」

  今度こそ、心臓が止まるかのような衝撃。かぎつけられた!?

  「汗くさい。せっかく体調いいんだから、起きれるか。あとで風呂入れよ」

  しかし放たれたのはのんきな一言だった。淫らな体液の匂いを嗅ぎつけられたと思ったマヤは、一瞬の硬直の後、眦をつり上げた。

  「――――わ、わかってる!なによ!女の子に向かってクサいって、ちょっと!」

  「わりぃわりぃ。じゃ、今度こそ行ってくるから。じゃな」

  レポートを片手に握り、兄はまたがちゃがちゃと玄関の扉を鳴らして行ってしまった。一人残されたマヤは、エンジンの音が聞こえなくなるのを待って、布団をはね飛ばした。

  「っふううう!ううううう!ううううう!」

  乳房を揉みしだき、乳首を乱暴に押し込んでは放し、中指だけでなく人差し指も薬指も膣口につっこんで激しく出入りさせる。じゅぼじゅぼと泡立つ音。お預けをさせられていた身体は、開放感から一気に快感を爆発させる。

  「っはああん!ああっ、っき、きもちいいっ!ふああ!」

  兄は気がつかなかった。でも、もし、もし兄に、さっきの自慰がみられていた世界が、あったら?あさましく舌をつきだして、いやらしく乳首をねぶってヴァギナをかき回す自分の姿が、みられてしまったら――――怒る?けなす?あきれる?それとも、わたしを、男の、あれで――――

  「あああああ!あ゛あ゛あ゛あ゛っ!いぐっ!いぐぅぅ!いぐううううう!」

  がぐがぐがぐがぐっ!ともっとも激しい絶頂が襲う。マヤはしばらく口をぱくぱくさせて悶えていたが、そのうちゆっくりと深呼吸をすると、横を向いて枕に汗塗れの顔をこすりつけた。

  「‥‥や、ばい」

  まだ股間につっこんだままだった右手をずるりとひきぬく。どくどくと心臓も早鐘を打ち続けているが、嘔吐感はない。激しい運動と同じことをしたのに、全く影響がないのだ。本当に体調が嘘のように改善している。ふと、テーブルの上にある薬の瓶が目に留まった。額の汗を拭いながら、マヤはベッドから降りる。若干足がふらついたが、目眩はしなかった。手を伸ばして小瓶をつかむ。深緑色の丸薬がころころと入っているガラス瓶。ラベルには何か黒い動物が描いてあった。薬の名前はごくシンプルに「滋養丸」とだけ書いてあった。

  とりあえず手を洗おう。風呂に入って汗を流そう。マヤは薬瓶をテーブルに置き、風呂場へと向かった。

  竹林側にある風呂場は、リフォーム済みで新しいユニットバスになっている。

  そこで目にした自分の身体の、ある一点にマヤの目は釘付けになった。

  「へっ」

  黒いしっぽが、お尻から生えていた。

  「えっ、えっ?」

  [newpage]

  「マーヤ。マヤっ」

  「っへ!?」

  「なんだ、食べないのか。やっぱり食欲ないか」

  「い、いや、そんな、ことない」

  テーブルにあがっているのはお寿司が並んだプラスチック容器。体調がよくなったはずなのに何か元気のない様子のマヤに、裕児が怪訝な顔をしているのを、マヤは手をパタパタ振ってごまかした。

  帰るのが遅くなった兄が、マヤの体調がよくなったからと喜んで奮発した回転寿司の持ち帰りパックが今日の夕食だ。しかもベッドからではなくテーブルを囲んで。マヤもお寿司は好物なので、二人してにぎやかに食べるのを兄は想像していただろうが、帰ってきたら妹はどこか上の空で、お寿司を目の前にしても何かぼーっとしているのだ。気にするなと言う方が無理だ。これ以上心配をかけさせまいと、マヤは努めて明るく振る舞ってみた。

  「なんか、久しぶりのお寿司で、本当かなって、ちょっと、びっくりして」

  「‥‥そんな、昭和の子供じゃねえんだから。今月は余裕あったし、気にしないで食べな」

  「うん」

  鉄火巻を箸でつまんで口に運ぶ。その様子を見ていた兄が心配そうに口を開いた。

  「大丈夫か、おまえ」

  「え?」

  「醤油つけてないけど」

  「あ」

  二つ目の鉄火巻きに慌てて醤油をつけて口に運ぶ。味は、いつものお寿司だった。

  何か様子がおかしい妹を、ちょっと怪訝そうに見つめる裕児だったが、ちょっと身を乗り出してしかめ面をした。

  「‥‥気になることあるなら、ちゃんと言えよ」

  「う、うん。大丈夫。お寿司おいしいから」

  これ以上兄に悟られないよう、マヤは次のお寿司に箸をのばす。しかし。

  「んくっ!」

  「どした?」

  姿勢を変えたら、全身にぞわわと刺激が走った。

  お尻に生えた、尻尾のせいだ。黒い毛に覆われた犬のような尻尾。風呂に入ろうと服を脱ぐまで全く違和感も感じなかったのに、この異物がお尻から生えていた。当然パニックになったし、なにがどうなっているのかさっぱり分からなかった。

  自分の姿を見るのが怖くて、結局風呂にも入れず鏡の前から逃げてきてしまった。今はパジャマの中に押し込んで何とか隠しているが、身じろぎするたびに毛皮が引っ張られて変な感覚が全身に走る。おかげで平静を装うにも、なかなか会話に集中できない。

  それに、マヤがそわそわしているのは尻尾の感覚だけではなかった。

  (このままだと、わたしも、あの日記みたいに‥‥)

  この家で見つけた古い日記。薬を飲んで突如として淫らな欲望に目覚めたあの女の子。アレがもし、マヤに起こっていることと同じだったとしたら何か解決策が書いてあるかもしれない。あのページを読んで以来放っておいた日記を、裕児が帰ってくる前に確認しようとマヤはおそるおそる読んだのだ。だが期待してめくったページに書かれていた日記は、解決策どころか正反対の内容だった。

  “兄様のおとこを舐めしゃぶるとき、私の身体は歓喜に震えるのです。尻尾と耳を揺らして、まるで獲物を狩るように覆い被さるとき、私の身体は嬉しさで同じようにぶるぶるぶるぶると震えるのです。得も言われぬ薫りを放つ、熱い熱の塊から、いのちの種を吸い上げるときの、うれしさは、体の弱かった私には、まったくもって妖しい毒として、つよくつよく作用するのです”

  日記の主はますます淫らな文章を書き散らしていた。尻尾どころか耳まで生えて、兄のあそこにむしゃぶりつく。前の日の日記にも尻尾という単語が出てきていたが比喩だと思っていた。しかし、自分の身に起こっていることを考えると、この日記を書いた少女にも実際に尻尾が生えていたに違いない。そうするといずれマヤにも耳が生える可能性がある。そして、淫乱になって兄を押し倒すのだ。

  この日記通りになるなんて全く想像もしたくなかったが、マヤには残念なことに予感があった。

  尻尾が生えてから、ものすごく、鼻が利くようになっているのだ。そして、兄の匂いが強く感じられるようになっていた。強く感じると言っても男臭いと言うわけではない。かいでいると安心して、胸がドキドキしてくるのだ。フェロモンが嗅げるようになったと言った方がいいのかもしれない。これまで兄を異性として意識したことなどいっさい無かったし、マヤ自身体が弱かったせいで異性と交際したこともないが、この胸の動悸が強くなり、ほかのことが考えられなくなるような感覚は、きっとそういうことなのだ。

  (おかしい。おかしいよ、こんなの)

  食事が始まって、裕児がテーブルの向こうに座ってから何分たっただろうか。押し寄せる男のフェロモンに脳はどんどんとゆで上がり、もうさっきからまともに裕児を見ることができない。口から覗く舌が、寿司をつまむ指先が、たまらなくいやらしく見えて、顔を上げられなくなっている。

  あの艶めかしい舌で口をかき混ぜて、乳首を転がしてもらえたら。

  あの指先で、クリトリスをひねってつまみ上げられたら。

  「マヤ」

  そうされながら、耳元でささやかれたら―――

  「マヤ!」

  「はひえっ」

  ちょっと怒った声で、裕児がこちらを見ていた。

  目が合ってしまった。

  「具合が悪いんなら、寝ろ。寿司はまた明日食べればいい」

  「あ‥‥」

  動悸が強くなる。顔が赤くなっていくのが分かる。身体が暴走している。息がドンドン荒くなっていく。股間がきゅうと締まる感覚がする。

  「マヤ?大丈夫か?熱があるな?またあの薬のむか?」

  「!」

  異変に気がついた裕児の提案に、身体がビクリと跳ねる。

  あの薬を飲んで自分の身体はおかしくなった。それでさらにあの薬を飲んでしまったら。

  やめたほうがいい。頭のおくで誰かが警鐘を鳴らしている。しかし、ゆであがった脳味噌はまともな判断ができなかった。むしろこもった熱を、あの涼やかな香りで吹き散らしたくて、無性に薬が飲みたくなっていた。

  マヤにはそれ以上迷うことはできなかった。あっさりと、「うん」と頷いた。

  「そら、飲めるか」

  裕児が席を立ってこちらに近づいてくる。手にあの薬を持って。体が熱い。裕児の匂いがどんどん強くなる。息が荒くなる。激しく息を吸うほど、裕児の匂いを胸一杯に吸い込むことになって、身体の奥からどんどん妖しい熱がわき起こる。

  「ほら、薬を――」

  「んんっ!」

  「!?」

  気がつけば、マヤは薬ごと、裕児の指をくわえていた。

   [newpage]

  「ま、マヤっ!?」

  「ん、んむっ」

  突然薬毎指を呑み込まれた裕児は、目をまん丸に開いて硬直している。マヤはそんな兄の指に、熱い舌を絡めた。兄の指と舌の間で薬がつぶれ、あの深い森のようなさわやかな香りが口いっぱいに広がる。その香りをもっと楽しみたくて、マヤは潤んだ目でくわえた指をじゅるじゅると舐めしゃぶった。

  「マヤ!っちょ、なにをっ」

  「ん、っぷ、じゅ‥‥」

  ゆであがった頭に、理性の居場所はもう無かった。マヤは、ぷはっと指を吐き出すと、椅子に座ったまま、ゆっくりと立っている裕児の腰に手を回して抱き寄せる。

  「ゆーに‥‥」

  「どうした、マヤっ」

  「からだ、あついの」

  「――っ」

  裕児も男だ。マヤの赤らんだ頬や潤んだ目を見て、その“あつい”がどのような意味であるかは想像できたようだ。

  身じろぎし慌て始めた裕児の腰をマヤは強く抱きしめて動けなくする。

  「くすりのんでから、おかしいの。からだ、あつくて」

  「お、おまえ」

  「からだ、おかしいの。わたしの、からだ」

  立っている裕児に座ったまま抱きついている。マヤの顔は、兄の股間の前だ。マヤはスンスンと鼻を鳴らし、まるで動物のように臭いを嗅ぐ。

  「あのくすり、すっごい元気になるけど、からだ、あつくなって、むねが、どきどきしてっ」

  「マヤ、落ち着けっ、酔っぱらってるのか?」

  「そうかも」

  顔を兄の股間に押し付け、すうううう、と鼻からたっぷり息を吸う。汗、皮脂、柔軟剤が渾然一体となったにおいの向こうにソレの香りが強く強く存る。

  「はあっっ、あ」

  「まやっ」

  ベルトの金具に手をかけたマヤを見て、慌てて頭を押さえて制止しようとする裕児だったが、潤んだ目に見上げられ、手が止まってしまった。

  「おねがい。からだあついの。おっぱいもあそこもジンジンして耐えられないの」

  「まや」

  「昼間も、ゆーにが出かけてから、たくさんしたの。でも足りないの、おさまんないの!ゆーにの匂いかいでるとどんどん変な気分になってくるの!」

  「だ、けどっ」

  「もう、まてないの」

  そういい捨てると、マヤは裕児のベルトをはずし、ズボンの金具を開いてすとんとずり下げる。

  「ふあっ」

  「あ、あ」

  わっ!と、まるで立ち上るフェロモンが見えるかのようだった。一日履いた兄のパンツが目の前にある。すさまじく濃密な男性フェロモンを放つ蒸れた下着に、マヤはうっとりと鼻を寄せる。形のよいマヤの鼻がパンツ越しに裕児の陰茎に触れた。

  「ひあっ!」

  「ふああ‥‥」

  びくっ、と裕児の身体が震える。マヤはそんな兄の反応と匂いに、うっとりとした声を上げていた。もう邪魔なものは布一枚だけだ。でも脱がす必要はない。男のパンツにはそれを出す穴がある。マヤはそこから引っ張り出そうと、パンツの上をさわさわとなで回して穴を捜す。その手がせわしなくいやらしく這い回る感触に、裕児がああっ、としかめ面をしながら喘いだ。

  「きもちいいの?」

  「ま、おまえ、なんで、ああ!」

  「んっ!」

  そっと穴から差し込まれた手が、陰茎に直接触れた。たどたどしく探ると、膨らみつつあるそれをマヤは一気に引きずり出す。

  「っふあ、ああ!お、お前!」

  「ふああっ‥‥すごい‥‥」

  眼前に現れた陰茎から直接フェロモンを嗅ぎ、マヤはうっとり口を開いた。白く細い指にからみつかれた陰茎は、あっという間に充血し硬く張りつめてゆく。子供の時以来にみる裕児のそれは、剥けきって、鎌首をあげる蛇のように少し下向きに湾曲しながら、全体は水平にマヤの鼻先に向かっていた。絡めた指から伝わる熱と少し赤みがかった亀頭や裏筋から発せられる猛々しい匂いが、マヤの鼻腔を焦がしてゆく。マヤは成人男性の実物を見るのは初めてだ。家の中にこもりきりではそんな機会などに巡り会うことなどない。だが、全く興味がないわけではないので、動画や画像その他でそれを知ってはいる。どんな形で、どんな風に“扱えばいいか”も知っている。しかし、いざ実物を目の前にすると、その堂々として少しグロテスクな、陰茎のあからさまな機能本位の形に頭がくらくらする。

  牝を刺し貫く硬い茎、膣をえぐるエッジの利いたカリ首、子宮口に密着し精液を送り込むための、少し柔らかそうな亀頭。そして目の前にした牝をグズグズにとかし腰を砕けさせて服従させる圧倒的な雄フェロモン。

  そのすべての形や有様が、女を孕ませるために進化してきたと、それを強烈に感じさせてくるのだ。

  はあはあと興奮した荒い息を吐きながら、マヤは裕児に最後の確認をした。

  「ゆーに」

  「マヤ、ああっ、あ、そんな、手がっ‥‥」

  「かのじょ、居たらごめんね。もうだめ」

  「まっ‥‥洗っ、せめて風呂、うおおああっ!」

  「んくっ‥‥」

  裕児の返答を待たず、マヤは一気に熱い昂ぶりをくわえこんだ。

  「むうううう!」

  ぶわあああ!と口いっぱいに広がる雄の匂いに卒倒しそうになる。初めてのマヤに、洗っていない陰茎は無茶苦茶過激な代物だった。ざああああ、と髪の毛がひろがり、ぶるぶると口から全身に身震いが走る。

  「っああ‥‥あついっ‥‥」

  裕児の戸惑い気味のため息が聞こえる。くさくて、くさくてたまらないのになぜか口から出したくない。もっと嗅ぎたい!マヤはもうろうとしながら溢れる唾液でねとねとの舌を、陰茎に絡ませてゆく。

  「んおおう!あ、ああ」

  「ん、く、っぷ、じゅ、んむうう、んん‥‥」

  裕児がのけぞって喘いでいる。抱きついたままの腰ががくがく震えている。裕児にとってもこれは強烈な刺激だったようで、時折からだががくがくと揺れ、陰茎が上下に揺れる。立っていられなくなるような快感に目を回しているのだと気がついたのは、懇願するような呼びかけを聞いてからだった。

  「ま、まやっ、まって」

  「ん、っぷ、んぷっ」

  「マヤ、せ、せめて、よこっ、よこにっ、はあああ!」

  「んむ‥‥?」

  くわえたまま見上げた裕児の顔は真っ赤で、必死にテーブルをつかむ手ががくがくぶるぶる震えていた。

  はあっ、はあっと激しい息を吐いて、がくがくと腰が揺れている。

  「た、たって、られないからっ‥‥」

  「ん」

  ぱちくりと瞬きをしたら、裕児がくわえられたままゆっくり腰をおろし、ダイニングの床にどさっ、とお尻をついた。下がる陰茎をくわえたまま追いかけたマヤはお尻を高くあげる格好になる。

  そのとき、パジャマがばさりとずれ、黒い尻尾がぶわっ、と飛び出した。

  裕児が目をむいた。

  「は!?ま、マヤ、それっ」

  「っぷは、ああ‥‥これ、はえちゃった、の」

  「は、生えちゃったって、くあああ!」

  吐き出したねとねとの陰茎を両手でぬちゃぬちゃとしごかれて悲鳴を上げる裕児。マヤははあはあと相変わらず熱い息を吐きながら、困ったように眉間にしわを寄せながら、へへっ、と笑った。

  「う、動くんだよ」

  ぶんぶん、と嬉しそうに尻尾を振ってみせるマヤ。いきなり襲われている状況に加えて、妹の身体にあからさまな異変まで起こっている状況を目にして、裕児はなにもしゃべることができない様子だった。

  「っは‥‥」

  「ねえ、ねえゆーに、どうしよう。わたし、このままだと狼になっちゃうみたい」

  「な、なんだそれっ」

  「ほしくて、たまんないの、して、してほしくて、からだっ」

  「っし、しごくなっ、てっ、あああ!」

  「あむ」

  根本をぬぎゅぬぎゅとしごきながらあいた小指で陰嚢をカリカリくすぐる。同時に亀頭にむしゃぶりついて、べろべろぬろぬろと舌で舐め回し、裕児のフェロモンを夢中になってむさぼる。ざわざわと頭皮が蠢いている。耳の先が熱い。

  「っむ、ぐあぁ、ああっっ、ま、まやっ、だめだっ、は、はげしすぎっ‥‥!」

  「っちゅ、っむ、じゅぶ、ん、っぱ、ふああっ」

  息継ぎしながら、よだれを吸い上げながら、初めての男根にまるで娼婦のような大胆な攻めを繰り出すマヤ。攻め立てられる裕児はがくがくと腰を震わせ、必死になって目をつぶり耐えている。どうすれば気持ちよくできるのかなんてスマホでしか知らなかったが、とてもうまくいっている。もうすぐ、裕児のアレから精液が出てくる。アレのにおいが嗅ぎたい。嗅いでみたい。まるで狼か犬のように利くようになった鼻で、それのにおいを嗅いでみたい。臭くてたまらないはずのちんちんがだって、こんなにもいい匂いになって、興奮してたまらないすばらしいにおいになってるんだから。

  はやく、はやくはやくはやく。

  “今まで知らなかった雄の味!猛く張りつめる男根の匂い、たぎり、口に含むとまるで太陽のように熱く、濃厚な精の雫が私の脊髄を振るわせる!”

  頭に浮かぶのはあの日記の一節。がっつくように陰茎をしゃぶるマヤは、必死に耐える裕児に呼びかける。

  「おむ、れるれるっ、っは、ゆーに、ゆーにぃ、だして、だして」

  「そ、んっ」

  「ゆーにっ!」

  「!?」

  大きく強い声を出したマヤに、思わず目を開いてしまった裕児。彼がみたのは、よだれでべとべとになり、陰毛を頬に張り付け、涙目で懇願するような顔で、赤い舌をねろねろと出し、黒い尻尾を振り白い頬を赤く紅潮させて陰茎をねぶり、しごくマヤの姿。

  病弱な彼女の想像もできないような淫乱な姿を見せつけられて、限界を迎えていた陰茎はとどめを刺された。

  「ああ、ああっ、はな、はなせっ、で、でるっ!」

  どびゅううっ!

  「ぷっああああ!」

  最後のひとしごき。手のストロークと同調するように勢いよく吹き出した裕児の精液が噴出し、思わず口を離してしまった。

  そのまま熱い迸りを顔面で受ける。白い肌に、艶のある黒髪に、長いまつげの生える瞼に、こってりと精液がコーティングされてゆく。裕児は泣きそうな顔でそれを見ていた。

  びゅっ、びゅうっ、と3、4度しゃくると、ようやく噴出が止まった。あたりに立ちこめる花のような精の匂い。それはまるで、あの薬のようで、火照った頭に、一瞬だけ涼しい風が吹いたような、そんな気がした。

  「っは、はああっ‥‥れうっ」

  「ま、や」

  「はあ、ああっ、あ‥‥すごい‥‥っは、はああ」

  荒い息を吐くマヤを、裕児が見つめてくる。しかし、股間にはまだ彼の陰茎が、ビクビクと震えながらそそり立っている。精液の雫にまみれたそれが、たまらなくほしくて、胸がドキドキしている。ぎゅうう、とマヤの陰部が切なく震えた。あの、あの日記の女の子のようにされたい。疼いてしょうがない、ほしくてたまらない。はあはあと息を吐きながら、マヤはくるりと裕児にお尻をむけた。恥じらいはあったが、肉欲にかき消されていた。

  「ゆーに‥‥ごめん、して」

  「はっ?な、なにを」

  「おね、がい‥‥だから」

  マヤはそういうと、裕児に向かってお尻をむけた。

   [newpage]

  裕児にむけたお尻、太股の付け根でグズグズに塗れる大淫唇を、マヤは添えた左手の指で開く。TLコミックで何度かみた光景。ぐちゃぐちゃになったおまんこをくぱっと開いて、男を誘う少女。それをしているのが自分だ と言うことに、頭がどうにかなりそうになる。

  マヤは懇願した。どうにかなる前に。ばさり、ばさりと異形の尻尾を振って。

  「ゆーに‥‥おね、がい」

  「はあっ、はああっ」

  ぎゅっと目をつぶって、おまんこをめいっぱい開く。時々ひくひく、きゅうきゅうと力が入って、たらり、と粘液が垂れる感触がする。

  なんだ、なんなんだろう。昨日薬を飲んで、ちょっと元気になった。それだけのはずなのに。体は熱くなって、あの日記の少女のように、娼婦みたいに裕児に媚びて、奉仕して、尻尾を振って突き込まれるのを懇願してる。あり得ない、昨日まででなんかあり得ない。だのに、もう我慢できなくて、死にたくなるくらい恥ずかしいことして、お尻振って裕児を誘ってる!

  「して、いれて」

  「‥‥」

  返事がない。耐えきれずにマヤは目をつぶったまま絶叫した。

  「おねがいいい!いれて!おまんこ!ついてついてめちゃくちゃにしてきもちよくして!わた、わらし、もうっ、おがしくなっちゃううううう!」

  「っこ、後悔するなよ!」

  じゅぶぶぶぶぶぶ!

  「っはあああん!」

  熱い塊がマヤの柔肉をぞりぞりかき分けながら突入してきた。その衝撃におもわず叫んでしまう。裕児は、ぐうう、と唸りながら、マヤの腰をぐっと力強く抑え込んできた。

  「うご、くぞ」

  「ま、まっ‥‥ああ、ああ、ああ!」

  ずぐん!ずぐん!と熱くて大きいモノが体の中を出入りする。そのたびに勝手に声が漏れる。痛みはなかった。するのは初めてなはずだが、一人あそびは数え切れない位している。いつの間にか破っていたのかもしれない。そんなことよりくらくらするくらい気持ちいい。ずんずんと奥を突かれるとおなかから快感がはじけて全身に広がる。ずるずると膣を這い回る陰茎のカリ首がマヤの体内を耕してぐずぐずにする。

  「す、っげええ、おまえ、お前のナカ、すっげえ‥‥」

  裕児がうっとりした声を出している。きもちいいんだ。ゆーにぃが、わたしのおまんこできもちよくなってる。それがなんだかとても嬉しくて、マヤはおしりをぐいぐいと裕児に押しつける。突き込みがより深くなって、痛み混じりの快感が最奥から響き始める。

  「っはああ!ああ!ああ!きも、きもちいい、きもっちいいい!ゆーに、ゆーに!」

  「っは、ああっ、ああっ」

  裕児のピストンがだんだんと早くなってくる。ずんずんずんずん、とそのたびに背骨に響く快感が全身をグズグズにする。

  がくがくとその腰が震え始めた。はあっ、はあっと激しい息づかいをしながら、裕児が怒鳴りつけてきた。

  「っだ、だす、だずぞ!いいな、いいんだな!」

  「も、もうっ、もうでる、のっ」

  「うるさい!おまえが舐めるせいで、もう、げんかいなんだ、よっ!」

  「いいの!いい、のっ!だして、きもちよくなって!わあ、わらし、わたしのおまんこにだして!だしてえ!」

  「っは、ああ、ああっ、くそっ、この、おまえ、へんたいかよっ!」

  「ふうあああ!」

  変態と言われた瞬間、すさまじい震えが腰から始まって全身を駆け抜けた。そうだ、わたしは変態になっちゃったんだ。獣の尻尾はやして、浅ましくサカって、精液ねだってる変態!

  「っひ、ひあああ!ああ!はげ、はげしっ、ゆーに!ああ!」

  「っだ、だす、だすぞっ!」

  「きて、きてえっ!」

  っど ぼっ んっ

  「っああああああ!」

  「~~~~~~~!!!!!」

  ぼん!と体内で爆発するかのように放たれた2回目の射精に、マヤの視界はぐるぐる回る。いちどに大量の熱い粘液がはじけ、ごあん!と脳髄を殴られたかのような快感の爆発に、マヤの全身がわななく。

  「っは、へ、ええええ‥‥」

  ずる、ぼて、と身体から力が抜け、マヤは畳に顔を押し付けながら気を失った。

  ざわわわ!と耳のあたりがなんだか騒がしかった。

  遠くで雷が鳴っている。

   [newpage]

  

  暗い森の中で、マヤは一人立っている。

  生ぬるい風が、あまい草いきれを運んでくる。夏草の輝くようなすがすがしいにおいなのに、森の中は真っ暗だ。

  目の前の藪は、とても深い。

  藪の終わりをみようと、マヤは視線をあげてゆく。

  だんだんと首が上を向き、藪はそのうち、空に溶けてしまった。

  

  「あなたはどうするの」

  ふと、森の中から声がした。

  目を凝らすが、何も見えない。

  ただ、どこか懐かしい匂いがした。

   [newpage]

  「これが、おまえの言ってた日記‥‥」

  時計は0時を回っていた。庭からざあざあと雨の音が入ってくる。夜になってすこし強めの雨が降ってきていた。裕児はマヤの介護ベッドに腰掛けてあの日記帳をめくっていた。あのあと、気を失ったマヤに続いて、激しい性交でぐったりした裕児まで畳にもつれるようにして倒れこみ、二人して真夜中になるまでそのまま寝ていた。その後雨の音で起きた二人は畳にまき散らした体液の後始末をして、またベッドに座っていた。  マヤに背中を向けて裕児が座っているのは、気まずさによるものだ。

  二人ともざっと体を拭いただけで、さっきの睦事で振りまいた汗、精液、愛液の残滓が、時折臭って鼻を衝く。

  「書いてあることが、なんか、そのままでびっくりしちゃって‥‥」

  ベッドの上でシーツを体に引き寄せながらぽつぽつと喋るマヤ。右手には、お尻から生えた黒い尻尾が握られていた。

  「表紙には、名前もなにも書いてないな。書いてある文章は結構古そうだし、紙もそうだけど‥‥」

  「しおりを挟んでるところまでは読んだけど、大正時代のご先祖様の日記みたいってだけ」

  「創作かどうかわからないってことか」

  「うん」

  呟きながらなでる、ふさふさの尻尾はとてもさわり心地がよくて、これが自分から生えているなんて信じられないマヤである。

  ざあああ、と雨が少し強くなった。

  「この先は読んだのか」

  「ううん‥‥よんでない」

  「どうする」

  「え‥‥」

  裕児が日記を閉じて、こちらを見ていた。

  「お前のそれがどうなるか、読んでみないか」

  「でも」

  「どうすればいいか、書いてあるかもしれないだろ。もしあの薬が原因なら、例えば解毒の方法とか」

  そう思って昼間読んだらあの内容だったので、マヤはもう進んで読む気はなくしていた。それに、読む気になれない理由はもう一つあった。

  「読んでも、どうにもならないんじゃ‥‥」

  そう言って、マヤは耳に触れた。ふさっ、と毛皮の感触。

  マヤの耳は、黒い獣毛に覆われていた。黒髪の横、元の人間の耳があったあたりから黒い獣毛に覆われた耳が飛び出している。裕児に中出しされて気絶した後、起きたらこの有様だった。

  尻尾も生えた。耳まで獣に変わった。常識的にあり得ないことばかりで、日記に解決策がかいてあるなんて、マヤには思えなかった。仮に書いてあったとして、そこに至るまでどんな経過をたどるのか、見たくない気持ちの方が強い。

  ごろごろ‥‥とまた遠くで雷が鳴った。

  「その耳の話も、日記に書いてあったのか」

  「一応‥‥ずっと、日記に書いてある通り」

  ざああ、ざあああと雨は降り続いている。みずみずしい森の匂いが音に乗って漂ってきている。

  「まあ、お前が読む気ないなら、あとで俺が‥‥」

  「いいよ、読まなくて」

  マヤはそういうと裕児の手から日記をもぎ取った。裕児は何も言わずにされるがままだった。

  「寝ようか」

  「‥‥うん」

  もう真夜中はとっくに回っていた。裕児はお休みを言うと、二階に上がっていく。介護用のベッドを置いてある関係で一階の居間横の和室がマヤ、二階の洋室が裕児の寝室になっている。不安感もあるので一緒に寝てほしい気分もないことはなかったが、また寝ている間に怪しい気分になるほうが怖くて、今晩は一人で寝ることにしたのだ。

  明日の朝になったらまたなにか調べればいい。まだ何とかなる。この時のマヤはまだ楽観的な気分を持てていた。この時までは。

  すでに手遅れだとは気が付けなかった。

   [newpage]

  「‥‥」

  真っ黒い獣毛に覆われているのが自分の両手だと言うことに気がつくまで、起き抜けのぼんやりした頭ではかなりの時間がかかった。

  寝て起きたらさらに状況が悪化していた。肩から指先まですっかり黒い獣毛に覆われた自分の腕を見て、ベッドの上でマヤは途方に暮れていた。

  朝食の用意をしていた裕児も、起そうと居間横の寝室に入るなりマヤの腕を見て絶句していた。

  「ゆーに、これ‥‥」

  背もたれを起こした介護ベッドの上で、毛むくじゃらの両腕を広げてみせる。手のひらはまだ人間のものだが、指先から手の甲まで黒い毛に覆われていて、肩先まで獣毛の範囲は広がっていた。

  「おまえ‥‥」

  裕児は目を丸くしていたが、エプロン姿のままで寝室に入ってきた。

  「ほかに、変わったところはないのか」

  「ううん、わかんない」

  しばらくマヤの腕を見ていた裕児だったが、ゴクリと唾を飲むと、遠慮がちに口を開いた。

  「‥‥ちょっと、身体見せてみろ」

  「え、ちょっと」

  「いいから。ちょっと、ふつうじゃないぞ」

  「ちょ、ちょっとまって」

  制止も聞かず裕児がマヤの布団をはぎ取る。ばさりとめくられた瞬間、中にこもっていた自分の体臭が強く鼻を衝き、マヤは「やぁっ」と悲鳴を上げた。

  「ど、どうした」

  「‥‥なんで、もない」

  起きてからまだシャワーも浴びていないので、昨日のアレこれの臭いが布団の中に残っていたので思わず抵抗したマヤだったが、裕児はかまわずに布団をはいでしまった。そしてはぎ取った布団を床に丸めて置き、裕児は改めてマヤの身体を見渡す。庭から入ってくる朝の森の風が、汗で蒸れた寝間着姿のマヤを涼やかになでていく。

  裕児は毛むくじゃらのマヤの左腕を持ち上げ、真剣な目つきであちこち観察していた。腕を持ち上げられた瞬間、汗ばんだ脇の下から汗の臭いが吹き出して、「ひっ」と小さく悲鳴を上げてしまった。

  そんなマヤの様子にいっさいかまわず、裕児はマヤの身体を舐めるように見回す。マヤは体臭が気になるのと兄の視線への恥ずかしさでどうにかなりそうだった。

  「とりあえず今回は腕だけ、なのか。足首は普通だけど‥‥パジャマの中、どうだ」

  「え」

  「ちょっと触るぞ」

  いうが早いが、裕児はパジャマの上からマヤの足にそっと触れてきた。ぞぞぞ、と怪しい感触が襲い、「あう」とマヤは獣耳を揺らして顔をそむける。

  「ゆ、ゆーにっ」

  「脚に、毛は生えてないか‥‥おなかも、普通だな」

  「ん、んんっ」

  さわさわと裕児の手がマヤの体をはい回る。そのたびに触られたところから怪しい感覚がぞわぞわと走り、ぎゅうぎゅうとおまんこが締まる感触がする。

  「ゆーに、っちょ、っと、もう、いいでしょっ‥‥」

  「まだ、ちゃんと調べなきゃだめだ‥‥」

  おなか、むね、せなかと裕児の手がパジャマの上からマヤの体を撫でるように這いまわる。むずがゆさと謎の快感に身もだえるマヤだが、ふと裕児と目が合った。

  じっ、とこちらを見つめる目の様子がおかしい。そう思った瞬間、唇を奪われていた。

  「うむううっ!」

  無言で舌を突っ込んでくる裕児。熱い舌がまっすぐ口に侵入して、マヤの舌をそわそわ撫でる。ざらざらした先端に舌の表面をこそげるようになぞられるたび、ぞくぞくと背骨がしびれて、ぶわっと耳に生えた毛が開いていくのがわかる。むうう、ううう、と唸って裕児を押しのけようと手で押すが、逆に毛むくじゃらの手首をつかまれて抑え込まれてしまった。そのまま、磔のように両手を顔の横に持ち上げたまま、起こしたベッドの背もたれに押さえつけられる。

  押さえつけながら、エプロン姿の裕児が、ベッドの上に乗ってきた。パジャマ姿のマヤをまたいで正面に陣取り、両手を背もたれに押さえつけて、執拗に口づけを続けてくる。豹変した裕児の様子に混乱するマヤは、跳ねのけることもできずにされるがままだった。

  「ん、っぐ‥‥むう」

  「むうううう!じゅ、っぶ」

  裕児の手が獣毛にまみれた手首をつかんでいる。じゃりじゃりと固い獣毛が手首と素肌との間でこすれて、剛毛が生えている現実を強く認識させる。

  まるで、自分がすっかり獣になったような、拘束されて、身動きとれなくされているような、鎖でつながれている、そんな被虐的な感覚にマヤの身体がぞくぞくと甘くしびれた。

  「ぷっは」

  「っは、はああっ」

  ようやく裕児が口をはなした。よだれの糸が、つうう、と二人の口の間にかかる。

  「ゆ、ゆーに、どう、したの」

  「悪い‥‥おまえ、すげえ、くさい」

  「!?」

   [newpage]

  思わず両手で身体を抱きしめようとしたが、押さえられていてできなかった。裕児がちょっと顔をしかめながら、マヤのうなじに鼻を寄せてくる。マヤは思わず目をつぶって顔を背けた。

  「っや、やだっ!な、なにいって」

  「んんっ‥‥汗‥‥おまえ、いつもより汗かいて‥‥」

  「っちょ、ゆーに、だ、だめ、嗅がないでっ‥‥まだシャワーして、ないからっ」

  昨日終わったあと、すぐにでも風呂に入らなかったことをマヤは後悔したが、後の祭りだった。汗と精液と愛液と、パジャマにこもった自分の体臭を思い切り嗅がれて、鼻息がうなじをなでるたび全身がふるえる。

  そして裕児はまるでそんな彼女の臭いに当てられたかのように、すんすんと鼻を鳴らして、血走った目でマヤを見ていた。

  「やべーよ‥‥おまえ、なんか、臭いのに‥‥すげえエロくていい臭いで‥‥」

  「お、おかしいっ、ゆーにおかしいよ!あ、っだ、だめええぇ‥‥く、くびなめないでぇ‥‥」

  ねろりと首筋に舌を這わされ、全身がびくびくと痙攣した。このままだと昨日の夜と同じようにまた裕児と淫らな関係になってしまう。だめなのに、こんなのだめなのにと思うけれど、口をねぶられてすっかり脱力してしまった身体では、思うように抵抗できなかった。

  「だめだよおぉ‥‥ゆーに、こんなの‥‥」

  「おまえの臭い、前と違って、変わってるんだよ‥‥獣みたいなにおい、して、いつものおまえの臭いじゃなくて‥‥」

  「うううう!」

  「雌の獣って感じで、エロい‥‥」

  「な、なにそれ、や、やめ、ゆーに!や、やめてっ!うむううう!」

  また熱い口づけがきた。じゅぶじゅぶと舌が出入りして、上顎のうらから歯茎、舌の裏をそわそわとなでていく。それだけでマヤの頭はしびれて、身体の力が抜けてしまう。手首を押さえる裕児の腕の力は強く、マヤは彼の中に雄を感じて、さらに下腹部がじゅん、と熱くなる。

  「っぷは」

  「はあっ、はあっ、っぐ、も、もう‥‥」

  「ここまでしてやめられるかよ」

  「だ、大学、おくれちゃう」

  「昼2からだ。まだ3時間以上ある」

  裕児はそういうと、磔のように押さえていたマヤの獣腕を放す。すっかり脱力したマヤはもう跳ねよけようとすることはなく、潤んだ瞳で裕児のすることを黙ってみていた。ただ興奮して臭いに当てられているだけなら逃げればいいのかもしれないが、理性を残したまま暴走していることを悟り、叶わないとマヤは抵抗をあきらめた。

  「どうせ、脱ぐからな」

  そういって、裕児はマヤのパジャマのボタンをはずしにかかる。汗ばんだ身体が、すこしずつ朝風に触れていく。昨日はこっちは責められていない。汗が飛んでいく気持ちよさと、羞恥と同じくらい強い快楽への期待で、マヤは自分の胸が露出されていくのを無抵抗で見ていた。そして昨夜一線を越えた兄は、ためらうことなくパジャマの前を開いて形の良い乳房を暴き、はあっ、と荒い息を吐いた。

  「つけてなかったのか」

  胸からへそ、下腹部までさらされたマヤのあられもない姿を目にして。ブラをしていないマヤの裸体を見て、ぎらぎらとした目で裕児が呟く。

  「‥‥むね、つけてると、痛くて」

  「舐めるぞ」

  「え、っちょ」

  また抵抗しようとしたマヤだったがあっさり腕を押さえつけられた。身じろぎしてささやかな抵抗をするが、ねらねらと唾液にまみれた舌がゆっくり近づいてくる。

  「すっげ‥‥やっぱ、エロい‥‥獣臭い‥‥」

  「な、なにいって、ゆーにっ、っひ、ひいいああああああああ!」

  「じゅぶぶぶっ」

  右胸の先端でぶるぶる震えていた乳首が、目の前で熱い口の中に吸い込まれた。自分で触るのとは比にならない鋭い刺激が全身を駆け抜け、ぎぎぎ、とベッドを軋ませマヤは悶える。ふと顔を背けた拍子に居間のテーブルが目に入った。ふたが開けられた薬瓶が、食器の間に置かれていた。

  「っゆ、ゆーに!あ、あのくす、ふああああ!あ、っち、ちくびねろねろだめええええ!くす、くすり、のんだのっ」

  「ん‥‥じゅ‥‥っぱ、っはは、ぶるぶるしてて、舐めてるだけで舌がぞくぞくするな‥‥」

  「き、きいてよっ、ゆーに、ひゃああああ!」

  「んくっ‥‥んっんっんっ」

  「っふあ!ああああ!あああ!」

  右乳首を執拗に責められ、マヤは天井を仰いで大きな声で喘いだ。両手も足も、裕児の手と身体で封じられて全く逃げられなくて、その状態で敏感になった乳首をこりこりねろねろと舌先で転がされている。左は対照的にいっさい触れられなくて、汗ばみ始めた乳房の上で硬くしこり続けていた。

  右ばっかりいじられているのに気がつくのにさほど時間はかからなかった。そうなると、全く触れられていない左が無性に気になってくる。あう、あうと悶えながら、マヤのあえぎ声がだんだん小さくなってくる。はずかしいのだ。大きな声で喘いでいたら、そのうち左もいじってと叫んでしまいそうで。

  しかしそれは裕児にはお見通しだったようだ。段々恥ずかしそうに顔を赤らめて声を我慢し始めたマヤを見て、にやにやと笑いながら裕児が乳首を吐き出した。

  「っは、どうした。マヤ」

  「ゆ、ゆーに‥‥」

  恥ずかしそうに息をのむマヤの二の句を待たず、裕児は顔を少し沈めると、乳房の下側に鼻をつっこんで、ねろっ、と舐めあげた。舌のが肌をなぞる動きにあわせてマヤは「あっ、あっあっ」と悶える。

  「ここも、獣くせえな‥‥」

  「やだ、な、なんでそんなこというのぉ、ふあっ、ああ」

  「くすり、また飲んだんだよ、おれも‥‥れう」

  「だめえ、あ、あのくすり、のんだらぁ、ゆ、ゆーにまで」

  「俺はな、何ともねんだよ‥‥っちゅ」

  「わ、わきだめええ」

  「ああ、すっげえ、おまえの臭い、すっげえ獣くせえ‥‥そうだな、鼻は、利くようになったかな‥‥おまえの、臭い、めちゃくちゃ臭うようになって‥‥」

  「っひ、いいい!」

  「脇なんか、はは、くっせえ‥‥脇毛、もしゃもしゃじゃん」

  「や、やだやだやだ!そんなとこ舐めないで!」

  本気で言っているのか冗談なのか、マヤにはもうわからない。とにかく、昨日の晩してしまったあと、風呂に入らないでそのまま体臭を嗅がれている。おまけに腕は狼女みたいに獣毛が生えて、獣臭いと言われてる。その現実で頭がどうにかなりそうだ。しかも、裕児はあの薬をもっと飲んでしまっている。マヤのように獣毛は生えていないが、やたらと臭いに敏感になっているという。最悪の状況が組み合わさっているのだ。どうにかして逃げたいと思うけど、執拗な乳首責めで発情した身体にはもう力は入らなかった。

  「あむ」

  「ふくうううう!」

  また右乳首をくわえられる。放って置かれている左の乳首が痛いほど勃起している。裕児の舌が先端をこそげるたび、甘いしびれが右からだけ爆発して、全く触られていない左がそのたびにびくびくふるえてオネダリをしているのだ。

  触ってほしい、ひだりも思いっきり触って舐めてほしい!

   [newpage]

  「っは、はああああ、っぐ」

  「ん、んちゅ‥‥」

  「っゆ、ゆーにぃ‥‥」

  「ん‥‥んん?」

  限界はとっくに来ていた。顔が真っ赤になるのが分かる。マヤは右乳首から広がる刺激にぶるぶる震えながら、ついに懇願を始めた。

  「お、おっぱい、なめて」

  「ん‥‥ちゅ‥‥なめて、るひゃろ‥‥」

  「ふあああ、ああ、っち、ちがう、のっ」

  「ん?じゅ、はにが、ちがう?」

  「か、かまないれええ!っひ、ひだりっ」

  「ひだりが、どうかしたか」

  「っひ、い、いじわるうう!ひだり、ひだりもなめてえ!」

  「左の脇か」

  「ちがう!ひだりのちくび!お、おっぱいなめて!放っておかないでえええ!」

  「どうしようかなー」

  「なめてえ、い、いじわるしないでえ‥‥」

  潤んだ目で、裕児を見つめる。兄はずれためがねをくっ、と戻すと、にやっと笑った。ぞぞっぞ、と背中に悪寒のようなざわめきが走る。

  「ゆ、ゆーに」

  「そんなに舐めてほしいか」

  「な、めて」

  「仕方ねえな」

  そういうと、裕児は無造作に、まったく無造作に刺激に待ちこがれる左乳首に、勢いよく吸いついた!

  「ひっぎいいいいい!っつ、つよ、つよすぎっ!」

  「舐めろっていったの、っく、おまえだ‥‥」

  「っは、っはああ!あああ!」

  待ちこがれた刺激はすでに発情しきった身体には強すぎた。ぎゅんぎゅん乳首から脳味噌が揺さぶられて刺激されて、あんあん喘ぐことしかできない。いつの間にか両腕を押さえていた裕児の腕が離れていたことにも気がつかなかった。

  ぎゅん!

  「ひぎゅうううう!」

  「ふへへ」

  唾液まみれの右乳首がぎゅっ!と摘まれる。不意打ちで両胸から爆発する快感に耐えられず、マヤの視界が真っ白に染まる。

  「あ、いぐ、いぐうううううう!」

  じゅわ、と股間が締まる。執拗な乳首責めで限界だった身体は胸だけで絶頂してしまった。毛むくじゃらの腕を振るわせ、マヤは白い肌を赤く染めてベッドの上で痙攣する。

  「っは、はああ、ああ」

  「すげえ、胸だけでイくんだな」

  興奮した様子の裕児の声が聞こえる。はあはあと荒い息を吐いてぼんやり目を開けたマヤがみたのは、エプロンや服を脱ぎ、陰部を露出させた裕児の姿だった。

  股間には、昨日マヤに挿入された陰茎が、ぐぐ、とそそり立っていた。すさまじい臭いがそこから立ち昇っているのが分かる。

  彼も、昨日そのまま寝たのだ。

  理知的な裕児の顔が、快楽にゆがんでいる。普段の彼とはまるで違う振る舞いをみて、戸惑いと同時に興奮がわき起こってくる。

  そんなマヤのとろけた表情をみたか、メガネの奥で裕児の目がほの暗く光った。

  「ほしいか」

  「っは、はああ」

  「欲しいだろ」

  ぐい、と裕児がマヤのパジャマを、下着ごとずり下げた。洗っていない、愛液と精液まみれのマヤの股間が露出する。‥‥昨日よりも、くろぐろと茂った、剛毛にまみれた股間だった。

  両腕、耳、尻尾、そして下腹部と、まるで獣のコスプレをしたかのような自分の有様に、思わず叫んでしまう。

  「っふ、ええええ!?」

  「ここが生えてたか。すっげえな。毛がぼうぼうでますます獣だな」

  「もう、やだぁ‥‥」

  「はは、すっげえ、獣くさいな」

  裕児が顔をしかめている。マヤはもうなにも言えずに涙目で顔を背けていた。妖しい日記を読んで、妖しい薬を飲んだら、体が熱くなって、獣の尻尾と耳が生えて、いつの間にか兄と一線を越え、彼の逸物をしゃぶって突き込まれて獣みたいにまぐわって、身体まで毛むくじゃらの獣になりつつある。くさいくさいと貶されて、それでも身体のうずきが止まらない。

  「おまえ、昨日言ってたよな。彼女いたらごめんとかよ」

  「‥‥?」

  「居ねえよ。お前のことだけ考えてきたからな」

  横目で見た裕児の顔に、一瞬理性が戻る。しかし、すぐに快楽に歪んだ。

  「それなのに、おまえ、何のつもりか知らないけど、お前がそうするなら、俺もそうするんだよ」

  「ゆ、ゆーに」

  「我慢してきた。ずっと。特にお前は大事にしなきゃならないから。それなのに」

  ずい、とペニスが突き出され、マヤの鼻がゆがむ。フェロモンを直接かがされて、口が勝手に開き始めた。

  眼鏡の奥で快楽に染まった冷たい目を光らせて、裕児が口元を笑みの形にゆがめた。

  「舐めるか。それとも入れるか。時間がないからどっちかだ。どうする」

  「うう、う」

  快楽を得られる挿入と、裕児のペニスを舐めるのがおまえにとっては等価だと言われている。――――臭いペニスを舐めるのが好きなんだろうおまえ、と。

  以前のマヤなら怒っていただろうが、そうやって貶されるのでさえ、今のマヤは快楽に感じられるようになっていた。だってその猛々しい異臭を嗅いでから、よだれが止まらない。はあ、はあと息が段々荒くなっていく。目の前に見えるのは裕児の陰茎、剛毛が茂ってまるで原人のように毛深くなった下腹部。その爆毛を割り開いてねらねらとひかる自分の陰部。それに、淫らな行為を最初に仕掛けたのは自分だ。裕児の言う通り、彼を壊したのは自分なのだ。だったら、非があるのはこちらではないか。

  すん、と鼻を鳴らし、マヤは迷った末に、顔が赤くなるのを感じながら、裕児にねだった。

  「いれ、て」

  「舐めなくていいのか」

  「終わってから、きれいにする」

  「‥‥っふ」

  裕児のメガネが、一瞬光った気がした。

  マヤの返答を聞いた彼は、おもむろに腰を突き出すと、半開きになっていたマヤの口に陰茎をつっこんだ。

  「ふっぐうううううう!?」

  不意打ちで口腔をすさまじい濃度の雄フェロモンに侵され、なにが起こったか分からないままマヤはくぐもった悲鳴を上げさせられた。

  「味見くらい、させてやるよ」

  「っふぎゅ、うぐうう!」

  ぞんざいな物言いと激臭ペニスに頭がくらくらする。ぐらぐらと目が回るうちに、くさいペニスは口から出て行った。ぶは、と吐いた息まですさまじい臭いに染まっている。その臭いにさらに自家中毒を起こしてぶるぶるとからだを震わせているマヤを後目に、裕児はパジャマの下を完全に脱がすと、足の間に入って太股を持ち上げ、流れるようにその熱いたぎりをマヤにぶち込んできた。

  「っふがああああああああ!」

  「っは!なんか、あえぎ声まで獣臭くなってきたな、おまえ!」

  裕児の銀縁眼鏡のフレームに汗が垂れて光っている。酩酊状態からそのまま脊髄ごと全身快楽にどぶ付けにされ、全身がわななく。ざわざわと背中が疼く感覚がする。昨夜は耳だった。こんどは、背中か‥‥ぼんやり考えるが、どろどろの膣内を埋め尽くす熱い肉棒のせいで思考が断続的に真っ白になる。裕児が何か言っているが、ずんずんと体内を出入りする陰茎がもたらす快楽で、おう、おうとケダモノみたいなあえぎ声しか出せない。

  「ああ、お゛、お゛ーっ、お、っぐ、ひゃう」

  「っは、出てくる、愛液っ、昨日の精液混じってるなっ、はは、っく、くっせええ」

  「うおあ゛あ゛あ゛あ゛」

  鼻をうごめかしながらしかめ面で叫ぶ裕児。マヤは毛むくじゃらの手をゆらゆら枕に這わせながら吠えた。

  ぐっちゃ、ぐっちゃと結合部から濃厚な臭気を漂わせる体液がまき散らされ、白いシーツにシミをつくってゆく。執拗に獣臭いという裕児。あの薬のせいで感性が変わったのだろうか。それとも本当に、ただ私が獣臭いだけだろうか。だんだんと快楽に震え始める身体が、絶頂が近いことを告げてくる。その身体の震えは裕児にも伝わっていた。

  腰を一段と力強くつかむと、ピストン運動をますます力強くしてきた。がつがつと打ち込まれるペニスが、ぐぐぐ、と膨らんでくる。

  「は、はひっ、あお゛っ、お゛ーっ、ぐっ、おおおお」

  「どろっどろだな、おまえのナカ!気持ちいい、すごいぞっ‥‥」

  「っぐ、ふぐううっ、・ああ、ああ」

  ぐちゃっ、ぐちゃっとねばっこい水音をたてて打ち込まれる陰茎に与えられる暴力的な快楽、臭い、そしてざらざらと擦れあう陰部の剛毛。あの日記の続きはまだ読んでいない。でも分かる。自分はケダモノになりつつある。そして兄もまた、違う意味でケダモノになってきている。

  あの薬のせいだ。ぜったいに、薬のせいだ。でなければ、こんなこと!

  「っも、もう、でるぞ!いくぞ!」

  「っぐ、うっ、ああ、あ、お゛ーっ、あ」

  「うぐううっ!」

  ぼびゅるるるう!

  「ふぎいいいいいいいっ!」

  体内で暴力的に渦巻く精液に、こらえるようなあえぎ声とともに絶頂に至る。がくんがくん、と2、3度腰を振ると、裕児はずぼっ、と陰茎を抜き去り、ベッドの上に膝建ちになって未だ痙攣するマヤの胸をまたぎ、どろどろのペニスを絶頂の余韻で小刻みにふるえるマヤの口に放り込んだ。

  「っぐむ、むううう」

  異臭のする陰茎を口にぶち込まれ、マヤの身体が勝手にふるえだす。知らぬ間に、その臭いだけでマヤは軽い絶頂に至っていた。

  「きれいにしろよ‥‥」

  朝の光に妖しくメガネを光らせながら、裕児は痙攣するマヤをみて、笑った。

  「帰ったら続きだ。いいな」

  その冷たい目をみて、ぞくぞくと背中がふるえるのを感じながら、マヤはペニスを咥えたまま失神した。

   [newpage]

  気絶している間に兄は大学に出かけたらしい。目を覚ましたマヤはベッドの上で異臭にまみれながら、ぼんやり天井を見上げていた。

  「また、生えてる‥‥」

  背中一面に、獣毛が生えているのが分かる。お腹や胸はまだ人の肌を残しているが、産毛は段々濃くなっているようだ。どうも、寝ていると獣化が進むようだ。

  「んっ‥‥」

  股間からどろりと精液が流れ落ちる感覚に身体がふるえる。同時につん、と汗の臭いが鼻を衝く。下半身からは精液と愛液、上半身からは汗臭と、丸二日風呂に入っていないマヤの身体は裕児に獣臭いといわれたように、動物的な臭気にまみれていた。いくらなんでももういい加減風呂に入らなくてはまずいとは思うが、尻尾が生えたあの日、鏡の前で変貌した自分の姿を見るのが怖くて逃げてきたのだ。あのときよりもさらに事態が悪化しているのに、まともに自分の身体をみれる気なんか無かった。

  マヤは、迷ったあげくにベッドの下に置いてある日記の続きを読むことにした。先のことが書いていようがいまいが、それくらいしか今のマヤにできることはなかった。

  とっ、とベッドから畳の上に降りる。足先はまだ素肌のままだったが、背中からお尻にかけて広がった獣毛はすでに太股まで覆い始めていた。胸からおなかにかけてはまだ毛が生えていなかったが、ほぼ全身を黒い獣毛に覆われているのだ。初夏とはいえ気温もすでに高く、もうパジャマも暑くて着ていられなかった。マヤは全裸でベッドから降りる。開けた居間の窓から吹く竹林の風が、一瞬マヤの毛皮から漂う濃密な獣臭を吹き散らす。

  (きもちいい‥‥)

  全身に感じる涼やかな感覚に、少しだけ気分がよくなる。あの薬を飲んで以来、いや、あの日記のページを読んで以来あり得ないことばかり起こっていて、しかも淫らに乱れて、裕児までおかしくなっている。どこかに逃げようにも誰かに相談しようにも、この姿では無理だろう。まずはあの日記だ。マヤは木箱からそれを取り出すと、明るい縁側に歩いて行った。暗い部屋であれを読んでいたらなにか戻ってこれない気がした。

  夏の日差しとセミの声溢れる縁側に、獣の姿で正座したマヤだったが、ふと思いなおして胡坐をかいた。

  「う」

  この体勢は思い切り股を開く。むわっ、と股間から立ち昇る異臭にうめき声が出たが、すぐに夏の空気に吹き散らされて消えていった。黒い毛皮は夏の日差しで熱もため込むが、風が吹いているので大丈夫だろうと、マヤは自分を日干ししながら、日記を読むことにした。

  あの淫らに変貌した日付のページと、そのあとは読んでいる。マヤはちょっとためらった後、次の日のページを開いた。

  “兄様が持ってきてくれた薬は、上野の薬局で手に入れたと聞きましたが、聞いたことのない薬の名前でした。養狼丸とは、薬らしくない名前です。それでもその名にたがわず、薬は私に野山をかける狼のような体力といやらしさをくれました”

  落ち着いた内容に少しホッとする。薬の名前が出てきた。居間のテーブルに置かれた瓶には「滋養丸」と書かれていたはずだ。しかも上野から、この薬をお兄さんが買ってきてくれたという。とりあえずこの子が飲んだ薬はマヤが飲んだ薬とは違うのかもしれない。しかしそう思って読み進めた先には、見覚えのある内容が記されていた。

  “あの薬はとてもよく効いてくれましたが、怪しい気分になるのと、毛深くなるのが玉に瑕です。まるでケダモノのような匂いがしてくるのにも、いささか閉口します”

  たらり、と額から汗が流れ落ちてきて、口に入る。塩辛かった。どういうことだろう。書いてある内容はマヤの体に起こっていることとそっくりである。

  “誰にも見られていないことをいいことに、一人でいやらしい遊びを何度もしていると、この姿ではまるで私が本当の獣になってしまったかのような錯覚に陥るのです。むかしから体の弱かった私ですから、普通に歩き回れるだけでもよっぽどめでたいことではあるのですが”

  このあたりの記述には手掛かりになりそうなことは書いていないようだ。マヤはそのままページをぱらぱらとめくり、できるだけ簡潔に中身を読んでいった。日記の本の総ページ数からすると、変貌したのは全体の2/3くらい。あのページにくるまで、日記を書いていない日もあったが3回ほど正月の記載があったので、全体は5年分くらいだろうか。

  マヤは目検討で、変貌した日から1年後くらいのページを一気に開いた。1年たてば、何かしら動きはあるはずだ。何も書かれていないかもしれないという悪い予感もあったが、思い切って開く。果たしてマヤの危惧は外れ、そこにはちゃんと日記が書いてあった。

  “この姿になって2回目の正月――――”

  「ひっ」

  1年どころか2年進んでいる。しかもひたすら不穏な内容だ。ぎゅっ、と心臓が縮むような気持になりながら、マヤは恐る恐る文章を読んだ。

  “菓子の類はすっかり口に合わなくなって久しいけど、たまにはお汁粉がたべたくなります。今日も兄様は私にご飯をくれますが、このところ、野ネズミばかりでつまらない。正月くらい、たまには鶏が食べたいのです”

  これはどう解釈したらいいのか。そのまま受け取るなら、この日記を書いた女の子はすっかり狼になって、ご飯も人間の食べ物ではなくネズミになっている有様。けど、日記はちゃんと書いている。檻に入れられてしまったのだろうか。マヤはばらばらとページをめくってみる。日記の文章量は明らかに少なくなっていて、日に1,2行くらいが関の山だった。あのページまでは一回に4,5行くらいきっちり使うほどの文章量だったのだが。読み進めるが、“今日はネズミ”だの“あぶった猪”だの、野性的な食事の記述ばかりで、それ以外は何もない。‥‥それはやはり、監禁されていて他に書くことがないからに違いない。マヤはもっとページをめくって、大体1年後くらいのあたりを開いた。相変わらず短い文章の日記がぱらぱらと書かれていたが、途中気になるページがあった。変貌前のように文章量が多いのだ。正月かなと思って読み込んだマヤの目に飛び込んできたのは、もっとカオスな内容だった。

  “今日は兄様に、常陸の玉川から女の子を連れてきてもらいました。やっぱり、私の姿を見るなり泣いて逃げようとしたけど、捕まえて男根を入れてあげたら、すぐに具合がよくなって、しっかり楽しませてくれました。最近は稼ぎも少なくなって中々引っ張ってこれないけど、今回はおおあたり”

  「な、にこれ」

  ただ読めば、どこからから連れてきた女の子とエッチしたという内容である。ただ、この日記の主は女の子なのだ。男根なんて、ちんちんなんて生えているわけがない。のだが‥‥

  “キヨちゃんというその女の子は、最初は怖がっていたけれど、私が人の言葉をしゃべること、そして何より、同じ年ごろの女子であることを知ると、打って変わって、とても仲良くなってくれたのです。

  彼女が来る前に念入りに体を洗っておいてよかった。薄暗い座敷牢に狼女と二人だけにされたら怖いに決まっています。獣臭ければなおさら怖くてたまらないでしょう。舶来物のシャボンの香りがする狼女を見た時の、キヨちゃんの驚いた顔って言ったら!

  ああ、私の記憶を絵にして残しておければどんなに楽しいでしょうね。「珍宝から膿垂らしながら来る男よりはずっときれいだ」といって、わたしの毛むくじゃらの体を、一生懸命気持ちよくしてくれました。

  黒いケダモノの毛におおわれた乳房や、それなのにそそり立つ男根を見た時もそれはそれは驚いていましたが、なんと仏様みたいと言って。仏様です。この私のケダモノの姿を見て。なぜかと聞いたら、男と女が一緒になっているからと。

  これまでの子は、泣き叫んでしまって、気を違えてしまう子までいたというのに。キヨちゃんはあたまがよくて知識もあり、気遣いもすばらしく、わたしはあのこが廓に居るのが間違いに思えます。私の牙も鼻も恐れずに口づけをし、乳房や一物を丁寧に舐めて、終わった後は気を使って眠りにつくまでお喋りまでしてくれました”

  これはもう、そのものずばりの内容になってしまった。この日記の主は全身に毛が生え、狼女の姿で、座敷牢に入れられて野ネズミや生肉をくらい、挙句の果てにペニスが生えて、定期的に連れてこられた女の子をあてがってもらって性欲処理までしているのだ。しかも変貌が始まってから2,3年たつというのにこれである。もしこれがマヤの体にも起こる話だとしたら、もう体はかなりの期間狼になったままで、しかも、その、男のものまで生えてくるのだ。

  「っぐ」

  汗が垂れてきて目に染みて、マヤははっと顔を上げる。時計を見たらもう1時間ほど読み込んでいて、おまけに全身かなり汗をかいていることに気が付いた。日に焼かれて体温が上がっている。風が読み始めた時より弱くなっていたのだ。この姿のまま熱中症で運ばれるわけにもいかない。マヤは日陰になっている居間のほうへ引っ込んだ。ベッドの上に腰かけ、ちょっと迷ったが最後のページを開くことにした。すっかり恐怖心が薄れていたマヤは、薄暗い家の中で、躊躇なく最後のページを開いた。しかしそこには何も書いていなかった。裏表紙から2,3ページほど、白紙だったのだ。

  「これって‥‥」

  ページを戻しながらめくってゆく。茶色く変色したページを数枚めくった先に、見慣れた文字があった。あの日記の主のものだった。

  “この家にいるのも今日が最後”

  たった一言だけ記されたページには、理由も何も書かれていなかった。

  マヤはその前のページをさらにたぐる。2,3ページほどまた白紙が続き、ようやく内容が書かれたページにたどり着いた。マヤは額の汗を毛むくじゃらの腕でぬぐいながら、その中身を読んでみた。

  “キヨのおなかもすっかり大きくなった。兄様は、自分の子として育てるというが、ふざけないでほしい。あれは私の子種で実った大切なこどもだ。でも、狼となった私では、おなかの子の親として生きるのは難しいだろう。

  泣いている私を、キヨが慰めてくれている。ああ、やさしいキヨ。離れることなんかどうしてできましょうか。でも、わたしは予感がするのです。家の中から火薬のにおいがする。兄様が、わたしを撃つために仕入れてきた銃のにおい。

  私がもし人の姿のままで、私と同じように獣になってしまった誰かを見ていたとしたら、兄様のすることにきっと賛同したことでしょう。異形の身内など、恥なだけですから。

  けれども、私がそのケダモノであるならば、黙って撃たれることなどできやしないのです。何度も何度も愛して、こんな体で、家族ができるなんて、思ってもみなかったから、わたしは、女であるのに父になった私は、どんなに異形と蔑まれても、妖と罵られようとも、生きなければならないのですから。

  世話をしてもらって好き勝手言うなとお怒りでしょうね。でも、私は負けるわけにいかないのです。かわいいかわいいキヨのために”

  内容に関していえば、もうこの世のものとは思えない。創作か何かでないなら、夢だ。それかこの日記の主の妄想だ。そんな内容に目をつぶり読んでところからすると、この決意に満ちた文章の後で一言だけ書いてあるところを見れば、この主は兄を退けて、家から逃げ出すことに成功したのだろう。たぶん、キヨちゃんと駆け落ちして。なかなか強い女の子である。マヤはもう一度、裏表紙のほうまで、ページをめくってみた。

  「ん?」

  最後のページに、さっき見落としたのだろうか。端のほうに小さな文字が書かれていた。覗き込んだが、薄いうえに小さくて薄暗い部屋の中ではよく見えない。マヤはスマホを持ってきて、ライトを起動して照らしてみた。

  “100年の後、おなじ呪いを受けたあなたはどうするの? ねえ、あなた”

  

  [newpage]

  山に囲まれているので、昼間思い切り晴れれば、夕方には滅茶苦茶なゲリラ雷雨になるのがこの町の夏だ。

  どおおおおお!と間近に落ちた雷の音を聞きながら、毛むくじゃらのマヤはベッドの上で膝を抱えていた。部屋中の明かりをつけているので、家の中は明るかった。暗闇が恐ろしかった。

  部屋の隅には、あの日記本が放り投げられていた。どうすればいいかなんてわからなかった。おそらく100年前に書かれた日記帳の、最後のページに、あんな内容が書いてあるなんて。偶然と思いたかったが、100年というタイミングが恐ろしくぴったりで、身体の様子だって似ているところに、あんな書き込み。しかも最初にページをめくったときはあんな書き込みは無かったのだ。見落としているだけと思いたい。それ以外ありえない。でも偶然の一致で済ますにはとてもじゃないがありえない。

  また遠くで雷が落ちたか、部屋の明かりがちらついた。びくっと体を震わせた拍子に、テーブルの上の薬瓶が目に入った。

  さっき、一錠のんだ。あの薬は飲めば飲むほど、身体か心をケダモノに変える。きっと。そう。

  もう、元には戻れないかもしれない。

  あの薬については、ただ、呪いとだけ書いてあった。

  そして、呪いを受けて、どうするか決めろ。そう、日記には問われた。

  「んっ」

  ぐじゅ、と剛毛の奥、アソコがうずく。日記の主が出会ったキヨという女性。彼女に出会って、あの日記の主は自分がどうするか決めた。正直ここ数日の話で、今後どうするかなんて今聞かれたって答えようがない。それよりも、キヨに施された奉仕の内容が頭にちらついてしまう。乳首を責められて、生えた男根を舐めしゃぶられて、彼女のアソコで気持ちよく奉仕して。生えてもいないので想像なんかできないが、昨日の夜マヤに舐めてもらった兄は、たまらなく気持ちよさそうにしていた。あの快感がいずれ自分でも体験できるのか。体の変貌よりも淫らな好奇心に気を取られる自分が情けないが、一度気にしてしまうと、あの薬に毒されたこの体は、ひたすら快楽を自分で生成して気持ちよくなろうとするのだ。

  まだ、顔と胸、腹は人間のままだ。蒸し暑い部屋の中、マヤは膝を抱えた体勢のまま、そっとアソコに手を伸ばす。ここ数日の睦事で出た体液をこれでもかと吸った陰部の剛毛が、同じく毛の生えた指に絡みついてくる。それをかき分けながら、マヤは陰唇に触れた。

  「っくふうううう!」

  ぱんぱんに充血したアソコから、ぶわっと快感が全身に広がる。ベッドがギシギシ鳴った。もうすぐ兄が帰ってくるくらいの時間だが、朝にあれだけ淫らなことをしたのだ。マヤの姿もさることながら、裕児との関係ももう元には戻れないところまで来ている。そう思う。

  “獣くせえ”

  蔑むような声と、眼鏡の奥で光る冷たい目が脳裏をよぎる。結局、風呂もシャワーも使わなかった。全身から汗臭と性臭を漂わせて、ベッドの上でオナニーを始める淫乱なケダモノ。それが今の自分だ。裕児の蔑みだって、当然の話。

  「ああ、っあ、ぐうう」

  獣毛の生えた指は抜き差しすると刺激が増して恐ろしく気持ちがいい。ちくちくと無数の毛が膣壁を刺激して、目の前に星が飛ぶ。よだれを垂らしながら、マヤは快楽をむさぼった。

  ――――捕まえて男根を入れてあげたら、すぐに具合がよくなって、しっかり楽しませてくれました――――

  「あ、ああっ、っく、ふうううっ!ううう」

  “まだ”、自分にペニスは生えてない。マヤはキヨちゃんになったつもりで、じゅぼじゅぼと獣臭い蜜穴をほじくる。無理やり押さえつけられて、毛むくじゃらの狼女に犯される、女の子。ぐじゅぐじゅと穴をほじくられ、気持ちよくさせられて、最後の最後には孕ませられて――――

  「っは、はああ、あっ、ぐう、ううう、ふうんっ!」

  左手が胸に伸びる。介護ベッドの背もたれに寄り掛かり、抱えていた毛むくじゃらの足を開く。むわっ、とケダモノの匂いが居間に充満していく。湿った竹林の匂いとマヤの体臭が混じり合い、まるで動物の巣穴のような臭いになりつつあるのを感じながら、マヤはシーツに愛液を跳ね飛ばして自慰にふける。

  ぶうううううん!と、玄関からクマバチの音がした。兄が帰ってきた。

  「っは、はひっ、はは、あ゛―」

  がちゃがちゃとカギを開ける音。その音を聞きながら、マヤはガクガク震え始めた下半身をさらに刺激し、胸をつまむ。どすどすと足音が聞こえる。裕児が来た。ぞぞぞぞぞぞぞ!とすさまじい快感が脊髄を駆け抜けてゆく。この情けなくて浅ましいケダモノの姿を見られる。そう、思ったから。

  「マヤ」

  「っはああああーーー!」

  裕児が部屋に入るのと、マヤが絶頂するのは同時だった。

  「‥‥なんだよ、この臭いは」

  「っは、へへ、ゆーに、へへへ」

  「ケダモノが」

  冷たく言い放った裕児の手に握られているものを見て、マヤの全身にぞくそくと甘い痺れが走った。

  首輪だ――――

   [newpage]

  深夜の居間に、淫らな喘ぎ声が響いていた。

  「っは、はあああっ、あああん!」

  「もっと、もっと鳴けよ!狼女!」

  「っひ、ひどい、ゆーに、ひどいよお、わたし、そんな、わたしはっ」

  「だま、っれっ、この、ケダモノ!」

  っぱあああん!

  「ひいいいいいっ!」

  毛むくじゃらの尻を鞭で叩かれて、マヤは尻尾を痙攣させて目を剥いた。

  ベッドに手をつき、後背位で犯されながら、マヤは舌を垂らして喘いでいた。裕児が買い込んできたアダルトグッズに責め立てられながら。鞭に、手錠に、ボールギャグ、バイブにローター。タガが外れた雄は見境がなかった。まだ獣毛が生えていない乳房にはローターが貼りつけられ、お尻の穴にはディルドが突き刺さっていた。目隠しをされ、赤い首輪をつけられて、肩幅に開くよう足首には開脚器をつけられ、毛むくじゃらの体を鞭うたれ、首輪につながったリードを引っ張られながら、それこそ動物のようにマヤは犯されていた。獣毛が生えていないだけで、裕児もケダモノになっていた。

  じゅぶじゅぶと結合部で泡立つ愛液が大陰唇周りの獣毛に吸われて貼りつき、粘っこい水音を立てている。そこから漂う獣臭に、裕児が顔をしかめて文句を言う。

  「くせえ、くせえなぁ、マヤ!おまえ、風呂にも入らないで、何してた!いってみろ!」

  「っは、あああ、ああんっ!っは、はげしっ」

  「マヤ!」

  「っぐおうう」

  リードを引っ張られて首が締まり、気ままにあえいでいた獣は罰を受けた。

  「おい!」

  「あ、あついところにいて、あせ、あせかいて」

  「は?」

  「そ、そのまま、おふ、おふろ、はいんないで、おまんこ、い、いじってましあぁ」

  「ケダモノがっ!」

  ばちいいいいいっ!

  「ひいあああああ!」

  背中にまた鞭が振るわれ、派手な音が響く。しかし獣毛で覆われた体に大したダメージはない。ただその陰惨な音を聞いて楽しむだけのいやらしい道具。裕児が鞭をふるうたび、被虐の快感にマヤの陰部からブシュブシュと愛液が跳ね飛ぶ。裕児はマヤの腰に手を伸ばすと、紐で括り付けていたローターのつまみを最大まで回す。

  「ひっぎいいいいいい!」

  乳首責めのローターがバッテリー切れもいとわない滅茶苦茶な出力で震えだし、マヤの視界に星が飛ぶ。

  裕児はディルドのスイッチも叩き、振動を同じように最大にする。

  下半身と上半身が爆発するような快感に、マヤが絶叫する。

  「っは、あああ!ゆーに、ゆーにっ、だめ、いぐ、いっじゃうううううう」

  「また勝手にイく気か!」

  「ごべんなさいいい、でも、れももうだめへ、ああ、ああああああ!」

  ぶじゅじゅ!と潮をまき散らして、マヤは一人で絶頂する。獣の耳がびくびく震え、尻尾がぶわっと広がるのがわかる。胸が、顔が、股間が、ぞぞぞぞ、とざわついた。

  ああ、これで、全身、かわる――――

  「まだ、イってねえんだぞ、俺は!」

  「お゛―っ、あ、あああ゛―!」

  絶頂中で痙攣している膣をかき分け、無理やり裕児のペニスがピストンを続ける。滅茶苦茶な刺激が生まれ、マヤが人間の言葉を失う。

  「っくそ、くっせえのに、締まるっ‥‥!っだ、出すぞ!」

  「ひぐぐうあううあ」

  どぼっ!

  腹の中で精液がぶちまけられる。ぐぐ、と裕児のペニスを押し返して結合部に流れていく奔流がマヤの膣をえぐり、さらに快楽を与えてくる。

  「おらっ!」

  目を回していたらリードを引っ張られて、マヤは床に座らされた。しりもちをついた瞬間にディルドがさらに押し込まれる。

  「んぎいいいいっ!」

  「おら!」

  乱暴に体の向きを変えられベッドに寄り掛からされると、ずぼっ、と音を立ててマヤから抜けていった一物が、口に突っ込まれる。髪をつかまれて、まるで道具のように口にペニスを突っ込まれて腰を振られる。裕児の股間から漂うすさまじい臭いが鼻を焼く。

  「うむううううう!ううう!じゅぞぞ」

  「くっせえだろ!おまえの、臭いだぞ!」

  目の回るようなこの臭いが、自分の体毛から発せられていたものだと言われ、ぎゅううう、と膣が締まった。ぞんざいな扱いが、いままでやさしかった兄とのギャップが、すさまじい快楽が、臭気が、破滅的な快感を脳髄に爆発させる。

  ケダモノだ。私はもうケダモノだ。

  体が弱くて、まともに外も出歩けなかったのに、あの薬を飲んだらそんなことすっかり忘れるくらい体力に満ちて、でも、その代わり体は獣になり果てた。

  首にはめられた真っ赤な首輪。金具がカチャカチャ鳴るたびに、狼女になって、閉じ込められていたあの子の日記が頭をよぎる。おそらく二度と、呪われて、ヒトに戻れなかった、あの子の――――

  「っふ、うぐううう!」

  口内でうごめく裕児のペニスを追いかけるように舌を這わす。背中からお尻にかけてすっかり生えそろった黒い獣毛を震わせ、汗と精液の臭いをむわむわ振りまきながら、首輪につながれて無理やり肉棒を咥えさせられる哀れな獣。それがわたし。

  「んんっ、んくっ」

  いつの間にか尻尾が揺れている。ぱたり、ばさりと大きく左右に揺れて。ぼたぼたと精液交じりの白濁したよだれが、口元から垂れおちて乳房の上にぬらぬらと流れていって、そのたびにぶるぶると体を震わせてしまう。すでに何度も射精したはずの裕児のペニスが、むきむきとまたハリを増してゆく。顎が外れそうなくらい、ぱんぱんに張り詰めた熱い肉棒。被虐の快感を得て艶めかしく揺れるマヤは、一度それを口から出すと、舌を伸ばして陰嚢の付け根からつうっ、と先端まで舐めてやる。裕児はペニスに目隠しされるような格好のマヤを見て、また眼鏡の奥の目玉を、冷たくギラギラと光らせている。

  「立て。またケツを向けろ。もう一回犯してやる」

  「ひゃい」

  かちゃかちゃと、開脚拘束具と首輪を鳴らして、マヤはベッドにべたりと腹ばいになるように倒れこみ、お尻を向けた。薬を飲んだ日以来変えていないシーツも、とんでもない有様だった。汗と精液と愛液、マヤの獣毛がこびりつき、動物の寝床のような見た目と臭いになっていた。そのシーツに顔をうずめるようにして、お尻を振って。汗臭と性臭が、マヤの陰部を中心として黒い獣毛からどんどん揮発していく。まだアナルにはディルドも入ったままだ。頭がぼおっとしてくる。目の回るような快感、臭気。足元の拘束具、少し苦しい首輪。鞭。

  「っは、ははは、ははあっ」

  「何笑ってる!?」

  じゅぶぶぶぶぶぶ!

  「っはああああんん!」

  やさしかった兄の変貌と、一緒にする淫行。

  ざわざわ、と顔が、鼻がうずく。クリトリスが固くしこっているのがわかる。ただ、異変を察しても、裕児にどがどがとペニスを叩きこまれて、マヤはうめき声をあげることしかできなかった。

  「あ、ああ゛ーっ、あー」

  「っぐ、んぐっ!気持ちいいか、ああ?マヤ!」

  「ああー、ああっ、っは」

  「っと臭いな!ケダモノ!」

  黒々と生えそろった剛毛を割り開き、真っ赤に充血したおまんこをさらして、ぐっちゃぐっちゃと異臭振りまく陰部を罵倒と共に掻き回され、もう何も考えることができなかった。

  (ああ、ああ、もう、変わっちゃう、完全に、ああ)

  「おらああっ!」

  どぼっ!

  薬を飲んだ効能か、衰え知らずの裕児の一物から、また精液が注ぎ込まれる。

  「あぎいいいいいいい!」

  (ああ‥‥)

  薬の謎も、あの日記の秘密も、なんで自分が呪いを受けるのかもわからないまま、マヤは人間としての最後の意識を手放した。

  [newpage]

  ――――あなたは、どうするの?

  また、暗い森の中で、誰かに聞かれた。

  ――――呪われて、おおかみになって、なにがしたいのかしら?

  マヤは、何も答えなかった。

  その代わり、ぺろん、と舌なめずりをした。

  [newpage]

  目を開けると、まだ裕児が腰を振っていた。

  さっきの体勢、ベッドにうつぶせのまま気絶してしまったマヤを、衰え知らずの一物で延々と犯していたようだ。

  アナルディルドは抜き去られていた。

  ざわざわと肌に走るむずがゆさが、顔から乳房にかけて全身に広がってきた。ああ、ついに来たのだ。

  ぞくぞくと体を震わせ、マヤは、そっと膣に力を込めた。

  「っ!?」

  突然締りの良くなったマヤに、裕児が息をのんでいるのがわかる。マヤは目をつぶったまま、さらに膣に力を入れて、傍若無人に暴れまわる裕児の一物を締め上げてやる。

  「っぐ、はああああっ、んあ、きゅ、きゅうにっ」

  「っへへ、どお?ちょっと締めてみたけど」

  「マヤっ?おまえ、っぐあ、こんな、ことできる、んなあああ」

  びくびく震える一物が、動きを止めた。はあ、はあと荒い息が聞こえる。マヤは毛むくじゃらのお尻を振って、捕まえた兄のペニスを右に左に揺らす。

  「っふあ、ああっ、ま、マヤっ」

  「そーれ、あっは、そおれっ」

  ビキビキと一物を締め上げられたまま、裕児はマヤの尻振りに合わせて左右に腰を振らせられる。時折、どたた、と足がもつれる音がする。

  ――――いまからは、わたしのばん。

  マヤはシーツにうずめたままだった顔をあげると、今度は前後に尻を振る。絶妙に、締め上げを緩めながら。勝手にピストン運動させられて、裕児はさっきまでの余裕がうそのような有様であえいだ。

  「っふ、あ、あああっ、マヤっ、おま、ああっ、くそっ」

  「たっくさんして、ちんちんも鈍いんだよねぇ。締めててあげるからイって、ゆーに」

  「お、おまえっ、ど、どうした、急にっ」

  「たぶんねぇ、最後だからぁ」

  「っは?ああ、あっぐ、あ、あ、ああ」

  唐突な告白に裕児は目を剥くが、その前に射精の限界が来るようで、腰を震わせ始めた。一物がぱんぱんに膨らんで、裕児のほうから腰を――――

  「まだっ!」

  っぎゅううううううううう!

  「あがあああっ!」

  裕児の限界は、何度も注ぎ込まれて理解していた。もうちょっとで射精するタイミングで、マヤは渾身の力を膣に込めて裕児の一物を絞り上げんばかりの力で締め上げた。

  「っがああああ!あ、ああっ」

  「まだ、だめー」

  痛み交じりの強烈な締め上げに、射精を控えていた裕児は思わず叫んで射精の快楽を忘れた。強引な射精管理に、汗だくの裕児がうめく。

  「な、なんだっ、ま、や、お前」

  「いったよね。最後って」

  マヤはそういうと、シーツから顔をあげてのけぞり、後ろを振り向く。

  「わかる? 私の顔、変わっていってるの」

  「っへ、あ」

  ざわざわざわと皮膚がうごめいている。背中からまるで菌糸が伸びるように、黒い獣毛の範囲が首を一周して、顔に広がりつつあった。ぞぞぞ、と頬と口回りに獣毛が湧き、鼻が突き出してくる。白く綺麗だったマヤの顔が、黒い獣毛に侵されていく。それを目の当たりにした裕児が、声にならない悲鳴を上げた。

  「ゆーには、あの日記、最後まで読んでないよね‥‥んんっ」

  鼻が突き出し黒く染まり、獣のマズルと化してゆく。ざわざわと獣毛は目の周りにまで到達し、あっさりと頭髪まで達してしまった。めりめりと伸びた顎。上下の犬歯が、くん、と伸びた。マヤは目をつぶって、ぶるぶると体を震わせる。獣毛は首から、まるではめてある首輪から湧くように、胸部に向かっても範囲を広げてゆく。形の良い乳房が、ほっそりとしたおなかが、黒い獣毛に塗りつぶされるように覆われていく。陰茎を締め上げられたまま拘束された裕児は、眼鏡の奥で大きく目を見開いたまま、だまってそれを見せられていた。

  「こう、なるの。あの薬飲んで、日記の子もね、こうなったの」

  ぶるるるっ、と全身を震わせる。変貌は完了した。次に目を開いたとき、マヤの瞳は、まるで満月のように黄色く光っていた。

  完全なる狼女と化したマヤは、長く伸びたマズルから舌をだらりと伸ばして、あはは、と笑って見せた。

  「きれい?」

  「あ、あああ‥‥」

  あまりの光景に裕児は何も言えなくなっていた。膣に入っていた陰茎が、段々と萎んでいくのがわかる。ショックで何も考えられないのだろう。ぬるん、と抜けていった陰茎を肩越しに見つめ、マヤは裕児のほうに振り返った。そしてしゃがみこむと拘束具を外す。

  「ゆーに。どうしたの?」

  「あ、あああっ‥‥」

  どたっ、と尻もちをついた裕児。マヤはがぱっ、と獣の口を開きながら、外した拘束具を片手にゆっくりと歩み寄る。

  「ああ、あああっ」

  「ゆーに、こわしちゃったの、私のせいだもんね。エッチせがんで、タガ、外れちゃったんだよね。いーよ。私は大丈夫だから」

  「ま、やっ」

  「こわれよう?いっしょに‥‥」

  裕児の前で立ち止まるマヤ。全身毛むくじゃらで、黒い獣毛に覆われ、ここ数日纏い続けた汗と精液と愛液の混合物からなるすさまじい獣臭を振りまき、尻尾を振る黒い狼女。それが、今のマヤだった。体の弱いころの自分なんかもう思い出せない。何日も続けてセックスにおぼれて、それでもなお、体力は底なしにわいてくる。

  「あれ、ちいさくなっちゃった」

  「ま‥‥」

  「おっきくしてあげる」

  そういうと、マヤはしりもちをついたままの裕児に近寄り、逆に彼の足首を開脚拘束具で縛り上げてしまう。足を閉じられなくなった裕児の股間に垂れ下がる陰茎は、すっかり小さくなって萎んでいた。マヤはへっへっと舌を出して笑うと、ぐっ、と裕児を畳に押し倒す。

  「ほら、おっきく、して」

  「ああああ!」

  長くて赤い獣の舌が、裕児の雄乳首をねろり、と舐めあげる。変貌した妹の姿に混乱していた裕児は、何も考えられないまま性感帯を刺激され、情けない喘ぎ声をあげた。

  「っは。さっきまで、すっごい、威勢良かったのに。なあに、なさけないの。変態ゆーに」

  「は、あああ、あああっ」

  ねろねろと乳首を舐めると、眼鏡の奥で目をぎゅっとつぶって、裕児が悶える。両手は拘束できていないが、畳の上に投げ出されていて、抵抗する気力はなさそうだった。マヤは仕返しとばかりに、乳首を執拗に舐めて刺激しながら、空いた手を裕児の股間に伸ばした。新たな刺激で立ち上がりつつあった陰茎を、きゅっ、と毛むくじゃらの手で包み込むようにつかむ。「ああ!」と裕児があられもない声であえいだ。――――BLの受けみたいだな。されるがままの裕児を見て、マヤはちょっぴり余裕な気分で、陰茎をぐにぐにしゅるしゅると撫でさする。ぶるぶると体を震わせながら、裕児は乳首責めとのダブル攻撃を受けてあっという間に陰茎を勃起させてゆく。

  「ゆーに、どうして、ほしい?」

  「っは、あ、ぐうっ!」

  爪の先で乳首をカリカリやったら、全身をわななかせて悶えたが、何も言えない様子だった。それを見て、マヤは返答を聞かずに裕児の眼鏡をはぎ取って部屋の隅に放り投げる。そして、体を起こすと裕児の顔に背を向け、がばっと股を開いて、顔をまたいだ。裕児の目の前に見せつけるのは自分のおまんこ。何日も洗わず獣のような臭いを纏い、垂れ堕ちる精液にまみれた、蒸れて激臭の狼まんこを、マヤは躊躇なく裕児の顔に押し付ける!

  「ぶぐううううううっ!っぶ、っごう、ごげえええっ!」

  「あはっは。っどう?くさい?っは、あははは。すっごい、ゆーに、びくびくいってるぅ」

  言わずもがなの問いかけをして、すさまじい臭いに痙攣しえずき、震える裕児の体の動きで陰部を刺激し、舌を出して笑う。激臭まんこで裕児の整った顔に顔面騎乗をかましながら、マヤはそれでもそそり立ち始める陰茎を見て、牙を剥いて笑った。

  「あは。すっごい。ゆーに、こんなにくっさい私のおまんこかいで、勃っちゃうんだ。へえ。そんなにいいの?わたしのくっさいおまんこ」

  「っむ、っぐうううう!」

  「いいんだよね。じゃなきゃ、こおんなバッキバキになんかならないもんね‥‥あむ」

  「ふぐううううう!」

  マヤは一人でけらけら笑って、ねばねば激臭まんこを裕児の顔に押し付けたまま、そそり立つ陰茎を獣の口で咥えた。びくっ、と裕児が震えるのがわかる。長くなった口腔で、長い狼の舌を巻きつけるように絡めながら、マヤはたっぷりの唾液をまぶして裕児の陰茎を舐めしゃぶる。ときどき腰を上げてまんこを顔から離すと、ぶああああ!と強い息継ぎの音が聞こえる。マヤはわざと息継ぎの途中で腰を下ろし、ねっとりまんこの匂いを直接嗅がせてやる。そのたびにくぐもった悲鳴が上がるのが楽しくて、マヤはちんこをしゃぶりながら、執拗にまんこを裕児の顔に押し付けては離しを繰り返した。

  

  「っぷは。ちんこびくびくいってるよぉ‥‥ゆーにはわたしのくさくさおまんこの匂いかがされて、ちんちんおったててイッちゃう変態さんなんですね」

  「っぶうううう!っご、んぶっぶっ」

  「ほら、だしちゃえ」

  ぬちゅぬちゅぬちゅ!と、繰り出されるとどめの手コキ。裕児はマヤの尻の下でぶるぶる震えながら、情けなく射精する。

  どぶっ‥‥

  「っはあ!」

  さすがに出し続けて残っていないのか、量は少なかった。ごぼっ、と漏れるように先端から流れ出た精液は、マヤの手の毛皮に染みこみながら裕児の下腹部にながれていく。びくびく、と2,3度痙攣すると、裕児の動きが止まった。

  「もう、でない?」

  ぺちゃぺちゃと動物のように精液をなめとって、ごくりと飲み込む。腰をあげたら、裕児は白目をむいて気絶していた。顔面にねばつく体液と陰毛を貼り付け、鼻水と涙を流して。ところどころ白く見えるのはマンカスだろうか。裕児を徹底的に汚せて、マヤは牙を剥いて笑った。

  「もう、おしまい?」

  蒸し暑い室内はマヤの塩酸っぱい汗臭でひどい臭いがこもっていた。開脚拘束具をつけられて、両腕を広げて気絶している裕児。マヤは裕児の買ってきたアダルトグッズの中を漁る。首輪、開脚拘束具となれば、あれがないはずがなかった。

  「へへ」

  黒い不透明のレジ袋の奥、紙袋に入ったSM用の手枷を見つけると、マヤは裕児を転がして後ろ手に拘束する。そして彼を持ち上げると、畳の上にお尻を上げた姿勢を取らせた。

  「っは、あ」

  引くつく肛門を前に、マヤの股間に熱いものが集まり始める。それはっぐぐ、と血液を集め、ゆっくりとそそり立っていく。日記の子にも生えた、狼の陰茎。赤黒く、毛の生えた包皮から飛び出す、長い亀頭。まるで陰茎のように見えるが、狼らしく陰茎のような長く固い亀頭が、マヤの股間にそそり立っていた。

  気絶しているので、これをはやす瞬間を裕児に見せられないのはとても残念だったが、マヤにはもう余裕がなかった。全身の獣化と共に生えた狼ちんぽは、顔面騎乗でさんざん近くを刺激されて、ギンギンに張っている。これで何もせずに一晩超すのは無理だった。マヤは、目の間にある裕児のアナルを、長い舌でねろり、と舐めあげる。自分のほうがはるかに臭いので、アナルを舐めるなんて行為は、全然意識もしなかった。

  陰嚢からアナルまで、いわゆる蟻の門渡りを舐められて、裕児の体がびくびくと震える。気絶していても感じるくらい敏感なそこを、マヤは何度も舐めて丁寧に緩めていった。こんなシーンはBLコミックで何度も見た。そして十分刺激したことを確かめると、マヤはおもむろに赤黒い狼ペニスを裕児のアナルに押し当てた。強い熱を受けて、裕児の体が一瞬びくりと震える。あふれる唾液でしっかりコーティングすると、マヤは裕児の腰をつかみ、ぬりゅぬりゅぬりゅ、と少しずつ挿入してゆく。

  「っはああああ‥‥」

  熱い体内の感触に、マヤは舌を出して悶えた。ぐうう、とうめき声がかすかにきこえたが、起きる様子はなかった。マヤはだらだらと涎をこぼしながら、生えたてのちんぽの感触を、裕児のアナルで確かめてゆく。全周から締め付けられる神経の塊のような雄器官。マヤはちんぽの快楽にうっとりしながら、毛むくじゃらの腰を振って、裕児のアナルをほじっていく。何か奥に固いものがあって、ちょうど先端に当たる位置にあったが、ここを押すと裕児の体がびくびく震える。ここが前立腺か。雄の急所をみつけて、マヤは牙を光らせて、尻尾をふった。

  薄暗い室内、時刻は深夜を回っている。ぬちゅ、ぬちゅと裕児のアナルをほじる音だけが部屋に響く。こりこりした前立腺を刺激するたび、裕児の体がびくびくと震える。今起きたら、裕児はなんていうだろうか。あの日記を、ちんちんが生えるところまで裕児は読んでいない。マヤはあの日記通り、呪いを受けて生えたちんぽで、兄を犯している。まるであり得ない状況だが、股間から爆発している快感は本物だ。

  あの日記通りなら、最後に裕児はマヤを手にかけようとするのだろうか。それとも、キヨちゃんに相当するような女の子を連れてきてくれるんだろうか。

  考え事を少ししてみたが、初めてのちんぽにはすっかり負けた。ぶるぶると腰が震え始める。射精前の裕児と同じで、マヤは腰を送る速度を上げた。

  「っは、ゆーに、ゆーにっ、だすよ、だしちゃうよ!おおかみちんぽで、ゆーにのおしりに、せーえきいっぱいだしちゃうの!っは、あははは!すっごい、きもちいい!」

  うっ、とかああ、とか断片的なうめき声が聞こえるが、激臭顔面騎乗責めは相当なものだったようで、ついに裕児は目覚めなかった。マヤは一人で腰を振って、思い切りちんこを奥にねじ込んで、射精する!

  「っふううあああああああああ!」

  びゅるうううううううううう!

  裕児のそれよりも絶対に長い。まるで魂が出ていくかのような大量の射精に、そこから発する激烈な快感にマヤは唾液を振り飛ばして吠えた。びゅうびゅうと流れ出る精液はなかなか止まらない。裕児は裕児で前立腺をこれでもかと刺激され、気絶したまま陰茎を揺らして、だらだらと精液を垂れ流していた。

  「っはああ‥‥」

  

  うっとりと息を吐くマヤ。いつまでもこの快感を味わっていたいと思ったマヤだったが、股間からの異変に気が付く。

  「っへ?」

  

  ぎゅううううう!と根元が締め上げられている!思わず抜こうとしたが、無理だった。締まっているのではなく、マヤのちんちんの根元が膨らんで瘤になっている。

  「っが、んぐいいいいっ!」

  「あ」

  強制拡張にはさすがに耐えられず、裕児が絶叫する。しかし、前立腺をちょうど刺激する位置でマヤのちんちんが固定されたために、拡張による痛みと連続絶頂に苛まれ、ものすごい勢いで痙攣し始めた。

  

  「うは」

  無言でガクガクびくびく痙攣する裕児を見下ろしながら、尻に嵌まり込んで抜けない獣ちんこを早く抜いて、自分がされたように、ドロドロの射精後ちんこを裕児の口に突っ込んで綺麗にしてもらいたいと、それだけを考えていた。

  [newpage]

  大昔の因縁だの、かみさまの怒りだの、祠を汚しただの、理由はいろいろあろう。呪いを受ける側は、あとから受けた理由を必死に考えるのだ。

  あの行いがよくなかった、あんな言動をしたからだ。あの作法を守らなかった。呪いを受ける理由を、みな必死に考え、見つけ出す。それとは逆に、ただひたすらに運が悪かったと思って無理やり納得する、そんな方法もある。

  裕児とマヤに起こったことは、実のところ、とばっちりである。彼ら兄妹に、何ら瑕疵はない。ただ、あの家に居たこと、あの家で偶然にあの薬を飲んだこと、そして彼らが、日記に書かれていたキヨの末裔であること。それが重なり合っただけのことである。なにも悪くはないのだ。少なくとも、彼らは。

  ただ、彼らがそれを知る術はない。どうすればよかったのかなんて、いまさら分かりっこないのだ。

  ゲームのような手掛かりや選択肢を用意する親切な誰かはいなかった。それだけだ。

  「ゆーに、きょうも、すっごい‥‥」

  薄暗い居間に、黒いケダモノが立っている。黄色く光る眼を輝かせ、足元の獲物を見下ろして、舌なめずりをして。

  「っが、ふうううっ」

  「おちんちん、すっごい臭い‥‥この臭い、好き‥‥」

  「ぶふふうううう!」

  黒い狼女と化したマヤが、介護ベッドに転がされている裕児の陰茎を、ねろりと舐めあげる。垢と汗と、精液が変じた濃厚な臭いが、黒い鼻を焼く。ひくひくと揺れる赤黒い陰茎を、マヤは横から舌を這わせるように舐めあげ、生臭いだ液まみれにした後で、大きく裂けた獣の口を開いてぱくりとくわえ込んだ。ギャグボールを咥えさせられた裕児は、くぐもった悲鳴を上げた。顔にはアイマスク。両手首には手錠。両足首には長い開脚拘束具。M字に足を開かされ、両手を上げた姿勢でベッドの頭側の柵に両手を拘束された裕児。背もたれは45度ほどに起こされていた。全く大事なところを隠すこともできず、抵抗もできない情けない格好で、そそり立つ陰茎を獣の口で舐めしゃぶられてびくびく震えている。じゅぶじゅぶ、ぞぞぞ、とあふれるよだれを吸い上げながらフェラするマヤは、ガクガクと跳ねる裕児の腰を押さえつけて、無慈悲な口淫を続ける。

  

  「むふううっ、うううっ!」

  「っはぁ‥‥くっさぁ‥‥」

  根元の陰嚢に鼻を突っ込み、うっとりとつぶやくマヤ。1週間。彼が前に風呂に入ってから、今日、拘束されて責められるまで、二人が睦事にふけった日数だ。その間一切洗っていない。もはや発酵といっていいくらいの凄まじい臭いを纏う陰茎を、マヤは菓子でも舐めるように平気な顔をして舐めている。梅雨の戻りで長雨だった古い一軒家の室内は、湿気とその異臭で、獣の巣穴のような臭いに満ちていた。

  ベッドの上でびくびく跳ねている裕児も、ほぼずっと、この場所に拘束されたままだ。ねばつく汗を纏う素肌はベタベタとぬめり、男子として最低限の処理しかしていない脇は、毛が汗とマヤの唾液で汚れて寄り集まり、ちりちりと固まっていた。首筋から胸、雄乳首に腹、へそも、どこもかしこも汗とマヤの唾液まみれで、生臭い臭いを放っている。それでも獣に堕ちた彼女には興奮材料でしかないのだ。これは1週間かけて熟成させた、フェロモンの塊だ。理知的なやさしい兄を、ここまで汚しきれたと思うと、マヤはゾクゾクしてニヤつくのを抑えられない。

  「っふ、むううう‥‥」

  マヤに着けようと買ってきたボールギャグを逆につけられ、アイマスクで目隠しされ。マヤのフェラ責めに呻きながらよだれを流す裕児。薬のせいで鼻が利くようになったという彼も、自分とマヤの臭気を嗅いで、興奮する体になっていた。

  「ゆーに。くっさいねえ。ゆーにのおっぱいも、おへそも、ちんちんもきんたまも、すっごい臭くておいしそうだよ‥‥マヤ食べたくなっちゃうなぁ‥‥ほや」

  そういうと、マヤは恐ろし気な獣の牙が並んだ口で、裕児の陰嚢をあまがみする。ガグガグ、と裕児の腰が跳ねた。その反応に気をよくして、マヤは尻尾を振りながら、裕児の身じろぎでぎしぎしとベッドがきしむ音を楽しんだ。

  

  「っふむううう!うううう!」

  「れう、じゅぼ、んんっ、っは‥‥れうれう」

  「ひうううう!」

  ベチャベチャと舌で転がし、裕児の悲鳴を楽しんだマヤは、その生臭い舌を太ももの付け根から、おなかを通って、段々と胸へと進めていく、ナメクジが這った後のような、異臭のする道をつけながら。途中、固くしこり切った雄乳首をレロレロ刺激し、固まった腋毛を舐めほぐしてその臭いを堪能して、首筋に牙を立ててあまがみする。そのたびに裕児の体がびくびく震え、ベッドがきしみ手首を縛りつけた手枷が、ガチャガチャと鎖を鳴らした。

  「へへ、ゆーに」

  マヤはかわいく呟くと、アイマスクを外した。涙にぬれた目が、こちらを見ている。大好きな裕児の目だ。マヤはおもむろにベッド柵にかけた小物入れに手を伸ばす。ベッドのリクライニングリモコンが普段入っていたそこから、彼の眼鏡を取り出すと、そっとかけてやる。銀縁の眼鏡はレンズがねとねとと汚れて惨めな有様だったが、マヤは嬉しそうに、狼の口を笑みの形にゆがめた。

  「ゆーにはそっちのほうがかっこいいね。っふふ」

  「むううっ!うう!」

  口枷をはめられた彼は何事か言っているが、眼鏡の奥の目が、トロンと溶けているあたり、嫌がっているわけではないだろう。きっと。そう思って、マヤはべろん、と生臭い舌で鼻を舐めると、彼の体をまたいで膝立ちになった。

  「ほら、わたしも、ぬいじゃおっかな」

  「むううう!」

  裕児の前で、マヤが見下ろすように膝立ちになっている。その体には、厚手のコートを纏っていた。日に照らされていないとはいえ初夏である。もうそんなものを着る季節ではない。はっはっ、とマヤも舌を出して暑そうにしているが、これも準備作業である。

  「へへへ‥‥」

  マヤは、コートの留め具を外していく。少しずつ開いたコートの中から、これまで以上の獣臭が噴き出してきた。

  「どう?っへ、すっごい‥‥ああ、すずしい‥‥」

  こもった汗臭が、部屋に解き放たれる。黒い毛皮は汗を吸い込みぐじゅぐじゅで、水分はこれまでにたまった臭いのもとを改めて溶かし込み、黒い毛皮から蒸散させてゆく。その濃厚な湿気に、裕児の眼鏡が曇った。汗で蒸れた毛皮、股間で愛液を吸って萎んでいる剛毛。そして下腹部で屹立する異形の獣ちんこ。そのすべてが陰惨な獣臭を放ち、コートの前を広げるマヤから放たれ、裕児を苛む。

  「ぶっお゛、ぶっごおおおお」

  涙を流し、せき込む裕児。濃厚すぎるマヤの獣臭とそこに混じったフェロモンに焼かれ、目がぐらぐら揺れている。しばし臭いを嗅がせ、まるで変質者のようにコートを広げたポーズのまま、マヤはゆっくりとにじり寄って、おなかの獣毛を、じゃりっ、と眼鏡にこすりつけた。裕児はマヤのへその匂いを無理やりかがされて、顔をよじって逃げようとするが、すかさずコートの上から頭を押さえつけられた。

  むれむれのコートに取り込まれ、密閉空間で汗臭と獣臭を嗅がされ、悲鳴を上げる裕児だがコートとボールギャグのせいでほとんど聞こえない。ぎしぎしベッドが激しくきしんでいるのが、彼の激しい体の震えを伝えている。マヤの体にも、裕児のびくつきが伝わっている。恐ろしげな笑みを浮かべ、狂気に満ちた黄色い獣の目をゆがめ、舌を垂らしている。

  「ゆーに、こっちも、かいで‥‥」

  

  マヤは少し下がるとコートを脱ぐ。全身から汗臭を吹き出すマヤの股間におびえる獣のちんこが、ゆっくりと鞘から赤黒い中身を覗かせ始めている。

  「いっしゅうかん、まったから‥‥」

  そう言いながら、マヤはおもむろに裕児のボールギャグを外す。裕児は口を解放されたが、きつくはめられていたのか、顎が開いたままでなかなか元に戻らないようで、かくかくと顎をうごめかしていた。そんな彼の眼前で、獣ちんこが伸びていく。白いかすを纏った、汚らしいちんこが。

  「ほら、一週間、まったんだよ。そのあいだ、ずっと毛皮であっためてたんだよ‥‥ちんかす、いっぱいついてるでしょ‥‥へへへ。くさいよね。だめだね、わたし、すっかり獣だね」

  「っぐあ、あがっ、ま、まや゛っ」

  「きれいに、して‥‥」

  「おぶううう!」

  マヤは何か言おうとした裕児にかまわず、そのチンカスまみれの獣臭の塊を彼の口に突き込んだ。

  「ひゅぶおおおっ!」

  「っはあああああああんんん!」

  「ぶ、ぶげっんごごおおおおっ」

  裕児の口が、一週間まったマヤのちんこをぬるぬる包み込む。裕児は白目を剥くほどの異臭に激しくえづくが、のどの動きでマヤを楽しませるだけだ。

  「ああ、あっついい!ちんちん、ちんちんとろけちゃううう!すきい!おちんちんなめてもらうの、すっごいすき!」

  「むぐっ!おごおおおお!うげぶ」

  ケダモノは激しく腰までふり、ふたなりちんぽで裕児にイラマチオを強制する。汗臭をばらまき、尻尾を振って拡散し、ひとり涎を垂らしておんおん鳴く狼女。そんな存在に堕ちたのに、マヤは嬉しくてたまらない。体が丈夫になっただけではないだろうが、いろいろなものがぶっ壊されていって、それをやって壊しているのが自分だということが、ベッドの上で何もできなかったマヤにはうれしい。まるでBL漫画の悪役のように、裕児を責めているのが自分だということに、背徳的の一言では済まないような強烈な快感が爆発してくるのだ。

  「っは、ああああ!ゆーに、ゆーに!出すから飲んでっ!ほらっ!」

  びょびゅうるるるうるうううううううう!ごぼぼ、ごぼぼ・・‥

  「がびゅうぼぶぶうおべ、ごべべ、うげぐ」

  人間よりはるかに大量の精液を一気に流し込まれ、裕児の口から、鼻から、大量の精液が逆流する。鼻は涙腺ともつながっている。よく見れば、眼鏡の裏、彼の目からも涙を押し出して白濁したなにかが流れていた。むくむくと亀頭球が膨らんでいく。裕児を孕ませようと精液を大放出したちんこを、マヤはうっとりしたまましばらく舐めさせる。

  そしておもむろに抜き去った。すっかりきれいになったちんこを、口から精液を流し、チンカスのにおいを漂わせながらぼんやり見つめる裕児。その股間では彼の陰茎が、ばきばきと勃起していた。

  「っす、するよ。もう、がまんできないから」

  余韻に浸ることもなく、マヤは獣ちんぽの裏に手をやる。膨らんだ亀頭球の裏で、マヤの獣まんこが、涎を垂らして黒い毛皮を割り開き、赤黒い粘膜をさらしていた。

  「い、いくよ!いくよお!」

  じゅぶぶぶぶぶ!

  「っはあああんん!あっつい‥‥ゆーにのちんちんもあついよ‥‥」

  「むおおおお、っは、マヤぁ‥‥」

  しゃがみこんでちんこを自分の獣まんこに突き刺すマヤ。じゅぶじゅぶと愛液があふれ、シーツに何個目かもわからないシミを作っていく。裕児は口から精液を流しながら、うわごとのように喘いでいた。

  

  「っは、ああっあああ!かったい、かたくて、すきっ!ゆーにの、ちんちん!」

  じゅぼ、じゅっぼ、ぐぶっ、ごぼっ。暗い部屋に激しい水音が響き渡る。ベッドをギシギシきしませて、獣ちんぽを揺らしながら拘束された男の上で腰を振るふたなり狼女。汗臭まみれ、性臭まみれのケダモノが、快楽にあさましく酔って、舌を垂らして悦んでいる。

  それが自分だということに、マヤは、堕ちきった頭に、すさまじい喜びを感じていた。

  「っは、ゆーに!きもちいい!くすり!ありがとう!わたし、こんなにげんきだよっ!こんなに、つよいからだに、なったよ!くっさいけど!」

  「うおお、あ、ああ、あ」

  「ゆーに!ゆーに!だして!せーえきだして!ゆーにもいっぱいだして!」

  「おう、おお、ごっ」

  先にフェラ責めで感度を高められていた裕児の陰茎は、長くはもたなかった。あっという間にざらざらの獣まんこで締め上げられ、限界を迎える。その震えを感じ取り、マヤは嬉しそうに吠えた。

  「だして!いっぱい!だして!わたしも、わたしもまた、でそううっ!」

  「うううあ、ああ、あああ、ま゛やっ!」

  「っはああ!」

  ごぼっ!びゅるううううう!びゅびゅっ!

  裕児とマヤは同時に射精する。裕児のは獣まんこに、マヤのは、噴出して裕児の顔面から眼鏡、胸にまんべんなく降り注ぐ。白い粘液が眼鏡から流れ落ち、裕児の顔に垂れていく。

  「ゆーにっ、すきい‥‥」

  そんな精液が毛皮に絡みつくのもいとわず、マヤは獣毛を纏った体で、裕児に抱き着く。ねちゃ、と精液がつぶれる音が二人の間からでてくる。

  「へへえ、うへへ。すっき。だーいすき‥‥」

  毛むくじゃらの体で、裕児に抱き着く。拘束された彼の手が彼女を抱こうとしているのか、手枷ががちゃがちゃと鳴っている。獣のうなじに顔を突っ込んだ裕児が、ぽつりと、つぶやいた。

  「ご、めんな‥‥」

  「へへへ」

  マヤは、恥ずかしそうに笑った。それだけだった。

  ケダモノと化した二人は、呪いを嬉しそうに受けていた。

  

  ここは、獣の家。

  幸せそうに呪われた、獣たちが暮らす家――――

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