「おーい翔太ー!昼休みだしサッカーしよーぜー!」
「ああ!今い……くっ!?」
友達にそう返事をする俺だったが、突如腹に何かを感じて押さえてしまう。
そんな俺を見て、親友の海斗が駆け寄ってきた。
「悪い、コイツまた腹痛めちゃったみたいでさ〜。俺様子見てるからみんなはサッカー行ってこいよ!」
「え〜、またかよ。最近ずっと腹痛めてるけど大丈夫か?ま、無理すんなよ〜」
そう言ってクラスの奴らは校庭へと向かい、俺と海斗は普段は立ち入りが禁止されている屋上へと向かった。
「ほら、無理せず出しちまえよ。」
「そ、そんなこと言ったって、お前に見られながら出すの恥ずかしいんだよ…。」
「でもいつもやってることだろ?ほら、青空の下で開放感もあるし、ここなら誰も来ないんだし気にせず出せよ。」
そう海斗に言われて、俺はしぶしぶ身体に力を込める。
すると俺の身体からはぞわぞわっ!!!と羽毛が生え出し、腕は翼へと変化していく。
唇は硬くなって前に迫り出し嘴となり、足も鳥足に鋭い鉤爪がついたものに変わっていき……
「クケェェェェェェェェェッ💕💕💕」[uploadedimage:17314922]
俺はすっかり鷲のような怪人『イーグルイビル』へと変貌し、けたたましく泣きながら大きな卵を産んだ。
「はい、お疲れ。今回も卵は研究施設に回すから貰っていくぞ。」
「くぅ…なんで俺がこんな恥ずかしい目にぃ……。」
淡々と俺の卵を回収する海斗を少し恨めしい目で見ながら、俺はついこの間のことを思い出していた。
あの日、俺は悪の組織『ダークネスイビル』に拉致され、鷲怪人『イーグルイビル』へと洗脳・改造された。
親友である海斗が実はヒーローだったおかげで俺はコイツに倒され正気に戻ることができたのだが、怪人の身体に改造された身体は元には戻らなかった。
割とそういう人は多いらしく、研究施設によって俺はなんとか見た目だけは人の姿に戻ることができたのだが、時折本能としておこる産卵衝動に犯されるたびにこうして変身してしまうのだ。
「ほんと、この体質なんとかなんねぇのかなぁ…。ダークネスイビル、ふざけた名前してるくせに俺の身体をこんな風にしやがって……」
「ま、それをなんとかするために研究施設に卵や身体を診てもらったり、俺と一緒に怪人と戦って手がかり探したりしてんだろ?そのうち元に戻るって!」
「それはそうなんだけどさぁ…。ったく、人がこんなに恥ずかしい思いして苦労してんのに……」
「そうだ。人間に戻れるようになるためにも、今日は研究施設寄ってかないか?ちょっとは手がかりが掴めるかもしれないぞ?」
「ええ…?俺あの研究員の人苦手なんだけど…まあ仕方ないかぁ…」
そう溜息を吐いて、俺は怪人の姿から人間の姿へと戻っていった。
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「ドクター、入りますよ〜。」
「お、おじゃまします…」
「ん……?ああ、君か!また来てくれて嬉しいよ、イーグル君!!!」
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放課後。俺達が研究施設に入ると、白衣を着た黒豹の女怪人、通称『ドクター』が嬉しそうに出迎えた。
彼女もまた俺のようにダークネスイビルの手により改造された元人間どうし……なのだが、俺はどうも彼女のことが苦手だ。
「ここに来たということは、君の身体について調べさせてくれるんだろう?さあ、早く変身……いや、君本来の姿に戻りたまえよ💕」
ハァハァと息を荒くして、ドクターは俺を見つめる。
自身も怪人に改造されたことでその魅力に目覚め、洗脳から解放されても重度の怪人フェチに陥ってしまったそうだ。
元は天才的な女子大生だったようだが、これならここで働いているよりもそのままダークネスイビルに就職していた方が幸せだったのではなかろうか。
非常に残念ながらもうこんな彼女には慣れてしまっているので、俺は呆れながらも人間の身体からイーグルイビルの姿に戻った。
「ん〜💕やはり君の身体を診ていると滾るねぇ💕本来の鷲の要素がここまで上手く引き出され人間と見事に融合しているとは…💕君を改造した研究者には尊敬の念を抱かざるを得ないな💕」
「ちょっ、あんま触んなっての‼︎あっ、パンツはやめっ💕」
「触診はいつもやってるしその辺でいいでしょう。そんなことよりもドクター、翔太を完全に元に戻す方法は進展無いんですか?」
「え〜?こんなに素晴らしい身体からわざわざ人間に戻すなんて勿体無いなぁ…。まあ正直進展はあまり無いし、今日は彼が怪人だった頃のデータチェックでもするかい?」
「ええ……俺、あの時の姿見るの恥ずかしいし第一意味あんのか?」
「まあまあ。何かの参考になるかもしれないし一応チェックしておこうよ。折角来たんだしさ。」
「流石、海斗君は話が分かるねぇ💕さてと、それでは楽しく視聴会を始めようじゃないか💕」
そう楽しげに言うとドクターは憎たらしいほどの手際の良さでモニターを操作し、パソコンと繋げる。
するとパッ!とモニターが映り、音声と共に俺の恥ずかしい姿が映し出された。
『クケケケケケケ!!!俺は怪人イーグルイビル!!!さあ、俺の卵で人間をどんどん戦闘員にしてやるぜ!!!』
「うわぁ…。俺こんな感じだったんだ……。すっげぇ恥ずかしいんだけど……」
「だ、大丈夫だって!いつも戦ってる怪人達もだいたいあんな感じだしさ‼︎」
「それフォローになってねぇよ!?」
「はいはい。2人とも、ポップコーンとジュースはいるかい?」
「ドクターは映画感覚かよ!?」
そんなこんなで、俺は俺自身が怪人として暴れ回り海斗に間抜けに倒される映像を親友と変態と共に見せつけられるという辱めを受けるのだった。
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「キキキ!!!俺は怪人ムササビイビルだぞー‼︎さあ、俺の自慢の『ラブラブウイルス』を空から振り撒いてやるぜー!!!」
翌日。町の展望台の上では、男子小学生が改造されたのだろう、小さなムササビ怪人が声高らかに笑っていた。
「出たな!怪人‼︎俺達が相手だ!!!」
「悪いこと言わないからその辺でやめとけ!絶っっっ対後で恥ずかしくなるから!!!」
「キキッ!?なんだ!?ヒーローに……怪人!?」
そんな彼の前に、俺達は変身姿で現れる。
あんまりこの姿にはなりたくないが、元に戻る手がかりを探るためだ。仕方ない。
「ヒーロー側につくなんて裏切り者め!
まあいいや、俺は組織が植え付けてくださったこのラブラブウイルスで人間共をラブラブ三角関係パニックに落とし込んでやるぜー!!!」
そう元気よく叫んで、怪人は勢いよく展望台から飛び降りて滑空した。
「くっ!逃げたか!海斗、俺が追いかけて‥‥」
『待ちたまえ!イーグル君、こんなこともあろうかと君に改造で新たな能力を与えておいたんだ!早速使いたまえ‼︎』
俺が怪人目掛けて飛んで行こうとした瞬間、海斗が付けている通信機にドクターから連絡が入り俺はその場で踏みとどまった。
「なっ!?いつのまに改造なんかしたんだよ!?」
「ああ、昨晩君が家で寝ている時に忍び込んでちょちょいっとね。」
「不法侵入じゃねぇか‼︎」
「翔太、気持ちは分かるけどとりあえず今はその能力とやらを使ってみてくれ。」
「はぁ…。わかったよ。それじゃあ……」
諦めたように溜息を吐くと、俺は頭の中で新しい能力とやらをイメージしながら力を込める。
すると確かに今まで無かったような何らかの手応えがあり、俺の身体は徐々に変化していって……
「クケェェェェェェ!!!」
けたたましい鳴き声を上げ、俺は巨大なワシへと変貌していた。
「うおっ!?お、俺デッカいワシになっちまった!?」
「すげーな翔太!これなら俺が乗っても大丈夫そうだ!」
『その通りだ。この力さえあれば、君は海斗君の乗り物として活躍できるというわけだよ!』
「乗り物てお前……。なんだか俺、人間に戻るどころかどんどん人間じゃなくなってるような……」
「よし、行くぞ翔太!背中借りるな!」
「お前は順応しすぎじゃね!?」
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そう文句を言いながらも、俺は海斗を乗せて大空に飛び立つ。
なるほど、確かに海斗が乗っていても全然負担など無く飛べるし、むしろいつもより飛ぶのが気持ちいい。癪だけど。
そんなこんなで俺は、あっという間にムササビイビルの真上まで到達した。
「キキィッ!?おっ、追ってきやがった!?まっ、待て!やめろ!!!」
「いくぞムササビイビル!覚悟しろ!『オーシャンブレイブキーーーック!!!』」
「ぐえぇっ!?きっ……キキーッ!!!」
上空から垂直に必殺キックを喰らい、ムササビイビルは派手に地面に激突して爆発した。
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「ひいっ!?なんだよこの姿ぁ!?しかも俺、もっこりしたパンツいっちょじゃん!?はずかしいよぉ!?」
その後。ムササビイビルが倒れた現場へと降り立った俺達は、洗脳が解けたのか動揺している彼を目にした。
まあ目が覚めたらこんな姿にされていたんだ、俺もそうだったが無理もない。
「まあ安心しろ。処置さえ受ければこうやって人間に『擬態』できるようにはなるから。しばらくは怪人としての本能が色々キツいかもしれないけど……。」
「う、うん……。それとお兄ちゃん、ちょっとだけ覚えてるけど、飛んでるとこカッコよかった…よ?」
「えっ!?お、おう……。」
思わぬ一言を言われ顔を赤らめていた俺とそれを微笑ましそうに見つめてくる海斗だったが、そんな俺達の前に例の変態ドクターが現れた。
「やあムササビイビル君。さっきそこの彼が言ったように、君が人間に擬態できるようになるために私の元で処置を受けてもらう必要がある。一緒に来てくれないか?……身体も隅々まで調べさせてもらうよ?」
「えっ、うっ、うん……。なんだか距離近くない……?」
「おまっ!?相手はまだ小学生だぞ!?絶対に変なことすんなよな!!!」
ムササビイビルを見つけるや否や、彼の元に真っ直ぐに向かっていきその身体を密着させて囁くドクター。
海斗が呆れた目線をドクターに送る中、俺は彼女と怪人を必死で引きはなそうとするのだった。
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「はあ…。今日も散々だったなぁ…。」
俺は家の姿見の前で擬態を解き、怪人の姿に戻る。
擬態ということもあり、人間の身体よりもこっちの身体の方が気が楽になってしまったことに俺は深く溜息を吐く。でも……
「カッコイイかぁ……。ふふっ。」
先程ムササビイビルに言われたことを思い出し、俺は様々な角度で怪人としての自身の姿を見る。
しばらくはこんな姿も悪くないか。
少しだけ、そう思った。
「……んあっ!?💕ヤベッ!?また卵出ちゃうっ!?クソッ!こんな身体、やっぱもう嫌……クケェェェェェェッ💕💕💕」
……そんな俺の思いは即座に撤回されることになり、俺は姿見の前で自身の痴態を見せつけられるかのように産卵するのだった。