テオと温泉旅行に行く話

  「2人で何処か遊びに行かない?」

  授業が一段落して、中期休みが訪れた頃、音楽堂でピアノを弾いていたテオにそう提案した。

  数ヶ月前に事故で訪れた無人島は、決して楽しい記憶では無かった。生還出来たから良かったが、あのような極限状態ではなく、純粋にテオと遊びたい。

  「何処かとは何処だ?」

  「この前行ったアンクプールの近くに、東洋風の温泉があるって聞いたんだよ」

  「⋯⋯俺のE.P.が無いと行けないという訳か。俺は貴様達の便利屋じゃないと何度言ったら⋯」

  「違う違う!確かにお前の力頼りだけど、俺は本気でお前と行きたいと思ってんの!」

  テオに目覚めた能力、テレポーテーションは、己の記憶に基づいた場所へ瞬間移動出来るという凄まじい能力だ。

  悪戯が捗りそうだとグランが喜びそうな力だが、今回のような小旅行にも使える利便性が高いものである。

  「何故2人なんだ?グラントリーやオスカーも誘えばいいだろう」

  「それも考えたけど、あの2人とはよく出かけてるから、偶にはテオと楽しみたいなって⋯⋯ダメ?」

  「むっ⋯⋯その視線をやめろ⋯」

  ピアノを弾く手を止め、少しの間考える素振りを見せる。学院の規則などは今更気にしないだろうが、諸々の事情を気にしているのだろう。従者のヘルマンは特に騒ぎそうだ。

  しかし、俺は知っている。

  テオは頑固に見えて、意外と押しに弱い。出会ってすぐの頃なら即座に拒否されただろうが。

  「⋯⋯良いだろう。夜には戻れるんだ。俺達が一日消えたところで何かある訳でも無い」

  「ん?いや、一泊しようと思ってるんだけど⋯」

  「⋯⋯一応聞くが、貴様は罰則を受けてもいいのか?」

  「嫌だけど、何とか誤魔化せるだろ!」

  「⋯⋯アホか貴様⋯⋯」

  溜息を交えつつも否定はしていないので、誘いには乗ってくれるようだ。まもなく訪れるテオとの小旅行にワクワクしながら、その日が来るのを待った。

  ━━━━━━━━━━━━━━━

  「2秒で着いた⋯テオ、お前の能力大当たりだよな⋯」

  「貴様の力も大概だと思うが⋯⋯我ながら便利ではある」

  アンクプールへ到着してから、暫くの間は徒歩で目的地を目指す必要がある。服装に関しては、制服では不審がられるという事で、テオのポケットマネーで現地に合う服をプレゼントしてくれた。服装の善し悪しはよく分からないが、テオに似合いそうな服を探して店の中を彷徨うのは楽しかった。

  テオは逆に、"身嗜みに気を使え"とか"俺の横を歩くのだからそれ相応の服装をしろ"と真剣に服を選んでくれた。

  「テオ、かっこいい服買ってくれてありがとな!」

  「以前にも話したが、この程度どうという事は無い」

  着せ替え人形のように次々と服を用意する姿には少し笑ってしまった。

  全身がテオのセンスに包まれた俺の姿を見て、満足そうだし、そんなテオを見られて俺も嬉しい。

  「どのくらいで辿り着くんだ?」

  「うーん、あとちょっとだと思うんだけど⋯」

  街を出て少しの所にある軽い山道。そこを登ると、風情ある温泉旅館があるとアンクプールの人に教えてもらった。遠い異国の文化のようだが、その人の話を聞く限り、疲れた身体と心を落ち着ける事が出来るようだ。

  「楽しみだよな〜、俺、村にいた頃はこんな経験出来るなんて思わなかったよ」

  「⋯⋯⋯それは俺も同じだ」

  隣を歩くテオは僅かに微笑んだと思ったら、歩道の先を指さし、目的地に到着した事を告げる。学院で訓練をしているお陰で疲労は堪らなかったが、近くにある源泉の熱のせいか、身体が少し汗ばんでいる。

  「着いたな」

  「⋯そういえば、予約とか必要なのかな?」

  「なっ⋯⋯事前に確認しておくべきだろう!?」

  「ま、まぁ入ってみようぜ」

  呆れた目で視線を投げるテオを余所に、誤魔化すように旅館の扉を開ける。そこには、西洋風な華美な装飾ではなく、落ち着いた配色が中心の、手入れが細かく行き届いている風情ある様相が広がっていた。キョロキョロと辺りを見回していると、受付担当と思われる虎獣人に声を掛けられた。

  「いらっしゃいませ。ご予約はされていますか?」

  「してないんですけど、大丈夫ですかね⋯?」

  虎獣人は客の出入りを管理している名簿表を取り出すと、温和な目付きでページを捲り始めた。もしかしたら泊まれないかもしれない、若干の不安はテオも感じていたようで、何とも言えない表情をしている。

  「⋯⋯2名様ですね。日帰りのご利用でしょうか?」

  「一泊したいんですけど⋯」

  「かしこまりました。お荷物をお預かり致します」

  虎獣人が手元の呼び鈴を鳴らせば、奥から若い兎獣人が現れ、俺達に会釈をした後、荷物を預かってくれた。

  「お部屋へご案内致しますが、何かご希望はございますでしょうか?」

  「部屋⋯⋯えっと⋯」

  これは⋯何て答えれば良いのだろうか。

  料金で部屋の豪華さが変わってくるのは分かるが、その金額の幅が分からない。せっかくの旅行だ。テオには快適に過ごして欲しいが、俺の貯金でどの程度の部屋が取れるのか⋯。

  「一番快適に過ごせる部屋は空いているか?」

  「⋯⋯テオ?」

  回答に困る俺を遮り、虎獣人へ質問する。

  「滅多にない機会だ。このくらいの贅沢は良いだろう」

  「テオ⋯⋯」

  嬉しかった。

  少しだけ、強引に誘ったのではと心配だったが、滅多に揺れない尻尾がゆらゆらしている所を見るに、杞憂だったようだ。

  「貴様には、借りを返さなければならないからな」

  「えっ?」

  虎獣人が兎獣人に部屋を伝えると、荷物を持って俺達に着いてくるように促してくる。

  少し歩くと、周囲とは隔絶された部屋があった。美しい模様の襖。静かに過ごせて景色もよく、浴場や外出時のアクセスも一番優れているらしい。

  流石に、王宮と比べたら見劣りしてしまうだろうが⋯。

  「⋯⋯何か、不安を感じているようだが」

  「え?」

  「俺は、無駄な時間を過ごす程暇では無い」

  柄でもない言葉を吐くテオ。はっきりとは口にしないが、きっと俺の内心を把握し、気を使ってくれたのかもしれない。出会ったばかりの頃は、相手の感情など何とも思わない冷酷な印象だったが、随分と変わったものだと感心する。

  テオに続き部屋に入る。ふと顔を覗き込むと、普段よりも少しだけ子供っぽい笑顔を浮かべていた。

  ━━━━━━━━━━━━━━━

  部屋で少し休憩した後、早速温泉に行ってみようと、浴衣を持って脱衣所に向かう。通路には夜に向けて沈み始めた夕日が窓から差し込み、テオ艶やかに照らしていた。

  かつて海岸で見たテオの裸体を思い出していると、無意識に邪な目線を向けていたのか、ジロジロ見るなと抗議を唱えてくる。

  「俺の顔に何か付いているか?」

  「いや⋯⋯やっぱカッコイイ顔してるよなーって」

  「⋯⋯気持ち悪いぞ」

  自国の中で嫌という程、人の憧憬や憎悪を浴び続けてきた王子。俺の好意はお見通しだろう。

  この男は、世辞は聞き慣れているが、純粋な褒め言葉は受け止め慣れていない。常日頃隣にいるヘルマンの賛美は大袈裟過ぎて流しているようだし、せっかくの旅行だ。テオをこれでもかと言うほど甘やかしたい。

  テオの顔が赤くなり始める。陽射しのせいだけではない筈だ。

  「⋯⋯」

  その後、俺達は何となく無言になる。脱衣所に到着し、服を脱ぎ身体を清める。 期待の露天風呂は、夕方と夜が混ざったような幻想的な空、自然が多い事もあり、澄んだ空気が広がっていた。

  ようやくテオが口を開いたのは、湯に浸かり息を吐いたすぐ後だった。

  「⋯⋯どうしても気が緩むな」

  「まぁ、たまには良いんじゃないか?」

  テオは、沈みかけた夕陽をぼんやりと見ながら呟き始める。

  「良くはない⋯⋯だが、貴様といる時くらいはいいかもな」

  穏やかな口調。テオと最初に出会ったあの日、夕食の時間に言い争った時を思い出す。あの時は確か、人を馬鹿にする余りの態度を受けて、理想な騎士と比べて腹を立てたのだ。

  「今のテオ、俺は好きだぞ。ちゃんと俺を見て話してくれるし」

  「⋯⋯そういう事を軽々しく言うから、俺は⋯」

  「ん?」

  何か言いたそうに俺を見るが、すぐに口を閉じて景色に視線を移す。

  「⋯⋯貴様の故郷も、この場所のように自然が豊かなのか」

  「ん、そりゃ田舎だからな。空気も負けないくらい綺麗だぞ」

  そうか、と相槌を打ちながら俺の話に耳を傾ける。相変わらずの無表情だが、形の良い耳がヒクヒクと動いている。

  「前も言ったけど、いつか連れていくからな。楽しみにしててくれよな」

  「あぁ⋯⋯」

  何となくぼんやりとした返事。

  言いたい事はあるけれど、面と向かっては言いにくいような、胸の内に何かを秘めている感じがする。

  「テオ、大丈夫か?のぼせた?」

  「むっ⋯⋯いや、な。つまらん事を考えていただけだ、気にするな」

  変化の無い表情をピクリと動かし、悟られないように顔を背ける。そんな反応をされては、少しばかり気になるのも仕方ない。

  テオの正面に回り視線で訴えかけると、躊躇うような態度を見せた後に、観念してようやく話し始める。

  「⋯⋯貴様の故郷に行くまでは死ねんと思っていただけだ」

  「んっ⋯なるほど、そういう事ね」

  今では学院に通い最低限の安全は保証されているが、本来は常に命を狙われ続ける、息を吸うだけでも警戒する必要があった生活を送ってきたテオ。未来の話なんてあまりした事が⋯しようとした事も無かったのかもしれない。

  「前も言ったけど、俺だって強くなってテオを守るからな!」

  「⋯⋯気持ちはありがたいが、俺が真に不安を感じているのは⋯⋯貴様に対してなんだぞ」

  「えっ⋯⋯俺?」

  「俺が生きていても、貴様が死んだら意味が無い⋯騎士を生業とするならば、寧ろ貴様の方がリスクが高い」

  今度は、俺の目を真っ直ぐに見て言う。かつての傲岸不遜な、相手を見下ろすようなものではなく、自身の意志を相手に伝えたい、届いて欲しいと主張するように。

  「⋯⋯俺にはどうしても、貴様が剣を握り、銃を放つ姿が想像出来んのだ」

  「むっ⋯⋯」

  確かに、デリク教官にも前に似合わないとか言われた気がする。俺自身、訓練では出遅れているし、決して得意とは言えない。グランの剣技やオスカーの銃のセンスを羨んだりもしている。

  「俺だって、ちょっとずつだけど上達してると思うぞ。勿論、テオと比べればまだまだだけど⋯」

  「⋯⋯否定はしないが⋯⋯そうだな、俺が口を挟む事では無い。死ぬ気で訓練に励み、俺を倒せるぐらい強くなれ」

  「お、おう⋯?」

  話したい事を押し殺すように、テオは話を切り上げる。

  違和感を覚えたが、せっかくの旅行だ。楽しい空気を台無しにもしたくない。これ以上、深く聞くのは辞めにして、他愛のない話をしばらくの間続けた。

  ━━━━━━━━━━━━━━━

  「ご飯、美味かったな!」

  「海鮮が主だったが⋯⋯たまには悪くないな」

  風呂から上がった俺達は、部屋に着いたタイミングで声を掛けられた。旅館に入った時に案内してくれた兎人が夕食を運んでくれて、学院とはまた違う、美しい料理の品々が目の前に並んだ。

  腹も減っていた俺達はあっという間に平らげ、各々の感想を話しているうちに、兎人が部屋に来て食器を下げてくれた。

  「⋯⋯部屋にも備え付けの湯船があるのか」

  「寝る前に一緒に入ろうぜ」

  「構わんが⋯何度も風呂に入る趣味でもあるのか?」

  「誰にも邪魔されずにゆっくり出来るだろ⋯?」

  「⋯⋯⋯」

  ━━━━━━━━━━━━━━━

  「んじゃ、背中流してやるよ!」

  「あぁ⋯⋯」

  短毛種用のボディソープを泡立て、テオの身体を洗い始める。既に湯に浸かった後なので汚れ等は無かったが、ほんの少しだけテオ本人の体臭がする。

  「⋯⋯!」

  「へへっ⋯⋯」

  下心が無いかと言えば、勿論嘘だ。

  あの日の海岸でテオと交わって以来、どうしてもそういう目で見てしまう事がある。

  彫刻のように美しい裸体、夕日に照らされた黒毛と精液のコントラストが未だに脳裏に焼き付いている。

  「⋯⋯こ、擦り付けるな⋯!」

  「え〜、そんな事してないけど〜?」

  「適当な嘘を付くな!」

  狼狽えるテオを無視して身体中を撫で回すと、くすぐったいのか気持ちいいのか判別が難しい声を漏らす。

  ネコ科獣人の尻尾は他の種族よりも敏感だと聞いた事はあるが、試しに擦ってみると更に声を上げる。

  「っ⋯⋯俺で遊ぶな⋯」

  

  「勃起しながら言っても説得力無いぞ〜」

  状況に興奮しているのか、俺の愛撫の刺激を受けてなのか、テオの肉棒は徐々に上を向き始めていた。敢えてそこには触らず、初々しい色の乳首や尻穴の周囲を軽く撫でる程度に留める。

  「んっ、あっ、うぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」

  必死に耐えている姿が目の前の大鏡に映し出される。弱々しい力で俺の腕を払おうとするが、見せかけばかりの抵抗だ。本人もこれから先を期待しているらしい。

  完全に上を向いた肉棒は既に先端から透明な汁を垂らし、長い糸を引いて床に落ちる。荒い息遣いに俺自身も興奮を隠せない。

  「おい、アルゴ⋯⋯!」

  「気持ちよさそうだな〜テオ」

  「誰だってこうなる!」

  「そりゃあな〜、まだ未使用のチンポだもんな〜」

  ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる俺をギロリと睨むテオ。

  一国の王子が、未だに童貞にも関わらず処女を喪失したのは俺のせいなのだ。"貴様が奪ったんだろうが"と言いたそうな視線を無視しつつ、既に怒張した俺自身の肉棒を揺らす。

  性的欲求が薄いように見えるテオだが、実際、そんな事は無い。俺が抱きつけば腕を回してくれるし、キスをしたいと言えば文句を言いながら受け止めてくれる。

  「順番的に今度は俺の番だろう⋯!」

  「えっ、テオってばそんなに俺とシたいんだ⋯」

  「なっ⋯⋯そういう流れでは無いのか⋯!?」

  分かりやすく慌てるテオの様子は面白くもあり愛おしい。世界中でこの姿を見せてくれるのは、俺だけがいいと思ってしまう程に。

  「可愛いな〜、ツンツンしてるのも可愛いな〜」

  「⋯⋯貴様も勃たせておいて、よく⋯」

  俺の肉棒をじっと見つめるテオ。立ち上がりテオの目の前に怒張を持っていくと、テオは尻尾を激しく揺らしながら俺を見上げる。

  俺の意図を理解はしたが、大人しく従うのはプライドが許さないといったところか。

  一国の王子の顔に肉棒を叩きつけるなんて、どう考えても極刑になりそうだが、本人が喜んでそうなのでまぁいいだろう。

  「⋯⋯舐めてみる?」

  「だ、だが⋯うぅむ⋯」

  最早竿を顔に擦り付けられても何も抵抗していない。

  上目遣いで悩ましげに俺を見る姿に更に欲求が膨らむ。

  「⋯⋯ほら、俺も舐めてやるからさ!」

  「それならまぁ⋯⋯良いのか⋯?」

  渋々といった様子で俺の竿を掴むテオは、舌を少しだけ出した後、すぐに引っ込める。亀頭をまじまじと凝視しながら、一体何を考えているのか、数回俺のを扱いた後に、決心したように勢いよく口に含む。

  「うぁ⋯!」

  

  技術的な面では全く上手くないのだろうが、テオに奉仕されているという事実に快楽が溢れる。少し右手で竿を扱きながら、舌で亀頭を撫でる。その時間、僅か10秒程度だろうか。息継ぎをするようにテオは顔を離し、ふーっ、と溜息を吐く。

  「⋯⋯不味い」

  「あっ⋯⋯やっぱり?」

  「ヌルついた感覚が⋯⋯味も⋯何とかならないのか」

  美味いものでは無いだろうが、ここまで嫌そうな顔をされると少し傷付く。

  「仕方ないだろ、気持ち良いんだから!」

  「⋯⋯はぁ⋯」

  シャワーの水流で俺の亀頭を雑に洗い、再び咥え始める。

  未だにテオ本人の竿は天を向いた状態なのは、この状況に脳の処理が追いついていないからなのかもしれない。

  「うっ⋯⋯、テオ、気持ち良い⋯」

  「⋯⋯」

  俺の言葉には特に反応せず、無言で舌を動かし続ける。

  もう少し強い刺激が欲しく、テオの頭を両手で挟み軽く腰を動かしてみる。すると慌てたように顔を引き抗議を始める。

  「ごほっ、ごほっ⋯⋯⋯」

  「あっ、ごめん⋯」

  「⋯⋯あまり乱暴にするな」

  目尻に涙を浮かべる様子を見て少し申し訳なくなる。

  「そろそろ交代するか!な、テオ!」

  「むっ⋯⋯もういいのか?」

  「俺も舐めてみたいし⋯⋯いいだろ?」

  何とも言えない表情をするテオ。

  顔を紅潮させながらも若干の不満を抱いてそうな。これは恐らく、"俺の口淫に文句でもあるのか"と"初めての経験に緊張し興奮している"といったところか。

  「⋯⋯どうすればいい、俺も立ち上がればいいのか⋯?」

  「おう、俺が座って⋯⋯そうそう」

  テオが座っていた風呂椅子に座り、立たせて向かい合う形になる。俺の目の前にはテオの肉棒、上を向いたら何とも言えない表情で俺の顔を眺めている。

  「うわっ⋯何か、凄いな」

  「⋯⋯」

  眼前で反る肉棒。テオと同じ黒曜石のような美しい色をした竿と初々しい桃色の亀頭のギャップが蠱惑的に感じる。先端にぷくりと膨らむ水滴は我慢汁に間違いない。

  「やっぱ俺のよりデカイ⋯⋯?」

  「⋯⋯息が⋯かかる⋯!」

  どうやら俺の吐息が亀頭に当たるのが気になるらしく、逞しい足が僅かに震えている。わざと強く息を吹いてみたら、まるで生物のようにぶるぶると上下に揺れる。

  「あははっ⋯⋯」

  「人のモノで遊ぶな⋯!」

  文句を言いつつグイグイと俺の顔にモノを押し付けてくる。

  そろそろ忍耐の限界のようだ。

  「はいはい、舐めてやるからな」

  俺のより僅かに大きい⋯ように感じる亀頭をパクッと咥えると、"うっ"という声が聞こえた。

  舌を動かしつつ上目遣いでテオを見ると、慣れない刺激に戸惑っているのか、口を抑えて声が漏れるのを防いでいた。

  「⋯⋯ほへ、ははんひなくてひーほ」

  「⋯⋯?」

  口の中にしょっぱい味が広がり始める。

  口淫が得意な訳では無いが、俺以上に経験不足なテオにとっては、この程度の快感も耐え難いものなのだろう。

  軽く触れる程度に竿を舐めていたが、少し強めにカリ付近を舌先で擦る。

  「うぁっ⋯!」

  悶えるテオをよそに、竿から口を離し、張った玉を口に含める。吸いつつコロコロと転がしてみると、余りの刺激に急に後ろに飛び退いた。

  「変な事をするな!」

  「ごめん、ちょっと楽しくなっちゃって⋯」

  「俺は真面目にやったぞ⋯!」

  恨めしげに睨む視線から逃げるように肉棒を咥え直す。

  苦言とは裏腹に竿の中心はパンパンに張っており、金玉から上り始めた精液が尿道に近付いているのが分かる。あと少しでも刺激を与えればあっさりと白濁を吹き出すに違いない。

  「⋯⋯もうイきそう?」

  「⋯⋯⋯数週間、処理をしていない⋯」

  「んじゃ、一発出して楽にしてやるよ!」

  強めにカリを口蓋で擦ると、すぐに喉の奥まで熱い液体が入り込んできた。テオは快楽に耐えるように声を抑えるが、口から溢れる粘性の白濁液、余程溜め込んでいたらしい。

  「⋯⋯っ、はぁ、はぁ⋯」

  「出しすぎ⋯⋯めっちゃ飲んじゃった⋯」

  教官のものを飲み込んだ事はあるが、流石に飲精はまだ慣れない。食べるものによって精液の味が変わると聞いた事があるが、テオの味は教官と比べて少し甘かった。

  「ぷはっ⋯⋯ごちそうさま」

  「⋯⋯すまん。堪えきれなかった⋯」

  「いいって。俺のフェラ気持ちよかった?」

  「初めての経験だが⋯自身で処理するよりも数段良かった⋯気はする」

  射精した直後だからか、テオは俺の顔を直視はせず、恥ずかしそうにしている。それでも目の前の肉棒が萎えないのは、肉食獣人が従来持つ性欲の強さのせいか。

  「こ、今度は俺が⋯⋯」

  「んじゃ、そろそろ本番するか!」

  「⋯⋯そうなるだろうとは思ったが⋯」

  "今回は貴様が女役だぞ⋯"という表情をしているが、勿論違う。こんな痴態を見てしまっては、今更俺を抱くテオなんて想像出来ない。

  「⋯⋯その目は、まさか」

  「俺、テオをたくさん気持ち良くさせたい⋯⋯ダメ?」

  「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

  長い沈黙を経て、自分の中で何かを飲み込んでくれたらしい。渋々と言った表情で頷き、テオは尻を向けてくる。

  「あっ、ここでするの?」

  「⋯⋯?」

  「いや、身体冷えて風邪ひいちゃうから中で⋯」

  「⋯⋯⋯」

  そこから湯に浸かり風呂場から上がるまで、テオは本当に一言も喋らなかった。俺が密着しても追い払われなかったから怒っている訳ではなく、己の行動を省みて只管恥ずかしがっているようだ。

  部屋に戻るテオの後を追い、腰にタオルを巻いて用意された布団へと向かう。これから始まる行為に股間の隆起が収まらず、それを確認したテオの視線はまるで"このケダモノめ"と主張しているようだった。

  ━━━━━━━━━━━━━━━

  「貴様、何故いつもいつもローションを持っているんだ⋯?」

  「テオといる時は大体持ってるぞ」

  「性欲の権化め⋯⋯」

  電球が仄かな燈を灯す部屋、本番のための下準備を始める。

  風呂場である程度は終わらせた。痛くしたり変な真似をする度に足で蹴られるが、甘んじて受け止めている。

  「あんま蹴るなって⋯やりづらいだろ」

  「五月蝿い⋯」

  「痛っ⋯⋯うん⋯もう大丈夫かな」

  テオと身体を重ねるのは久々だ。念入りに準備をしなければ苦しませてしまう。偶に指が悦い所に当たるのか、ビクッと震える時がある。肉棒は未だに萎えていないので、快楽は感じている。

  「んじゃ、挿れるぞ」

  「ゆっくりやれ⋯」

  少しずつテオの身体に俺の竿を埋めていく。

  早く腰を動かしたい衝動に駆られるが、圧迫感に少し苦しそうなテオを見て思い留まる。亀頭が沈む度に体内の熱を感じ、相手にも同じように伝わっている。

  「ぐっ⋯⋯もう少し小さくならないのか⋯!?」

  「ごめん、興奮しちゃって⋯⋯」

  部屋が暗いせいではっきりとは見えないが、テオの肉棒も痛い程に隆起している。

  「⋯⋯どうした?」

  「いや、なんでも⋯⋯もうちょい早くしていい?」

  「⋯⋯問題ない。少し慣れてきた⋯⋯」

  許可を得て、先程より少しペースを上げてみると、確かに若干の余裕が出てきた気がする。

  「あっ、うぉっ⋯」

  「気持ち良い⋯⋯お前の身体、やっぱ最高⋯!」

  「⋯⋯!」

  漁村育ちの一般人に犯される一国の王子⋯⋯何とも股間に響くフレーズだ。俺目線では素晴らしいシチュエーションなのだが、テオの目線ではどう思っているのだろう。

  「あっ、おぉ、うぁ、はぁっ⋯⋯!!」

  「やば、締め付けが⋯!」

  段々と艶やかな声を上げ始めるテオ。

  2回目ともなると、感じやすい場所もすぐに見つかった。完全に硬くなった肉棒で何度も執拗に攻めると、抵抗も見せずに更に身体を震わせる。

  「随分、気持ち、良さそう、だな⋯!!」

  「んぉぉ、あっ、やめ、止まれ⋯!!」

  プシュっと、テオの肉竿から白濁液が漏れる。

  

  「軽くイっちゃったな⋯!俺も、そろそろイきそう⋯!」

  射精の予感を感じ、自身の尻穴がキュッと締まる。絶頂に向けて動きを早めると、テオは布団を掴んでいた両手を離し、俺に向けて腕を伸ばす。抱き締めろと、言葉を紡がずとも言いたい事は分かる。

  「へへっ⋯⋯可愛いぞ、テオ⋯!」

  「⋯⋯うぁ、で、でる⋯⋯!」

  ハグをしながら、俺の腹に熱い液体が触れるのを感じる。

  射精したのだろう、目を瞑りながら襲いかかる快楽に耐えている。爪を立てているのか、背中が痛い。落ち着かせるようにキスをした後、自身が精液を吐き出してしまった事に気が付いた。

  「⋯⋯⋯貴様、また中に出したな⋯」

  「⋯⋯ごめん⋯」

  テオの尻穴からゆっくり竿を離す。体液で汚れた体毛が布団を汚さないように気を回すも、既にグシャグシャに濡れていて手遅れだった。

  「ふぅ⋯⋯⋯今更だが、部屋を汚して良かったのか?」

  「いや⋯⋯どうにかしなきゃ⋯」

  「俺は動けん⋯⋯貴様がどうにかしろ」

  「ケツに力は入れとけな、俺の精液漏れちゃうから」

  「⋯⋯⋯まずは風呂に連れて行け」

  その後、もう一度身体を清めた後、申し訳程度に部屋を綺麗にする。汚れていない布団に2人で入り込み、向かい合って眠りにつこうと目を瞑る。

  何度もキスをすると、その数だけキスを返してくれる。しばらく経って寝息が聞こえ始める。リラックスした表情を少しだけ眺めて、俺もすぐに眠りについた。

  ━━━━━━━━━━━━━━━

  「えっ、ヘルマンに?」

  「貴様が眠りこけてる間にな」

  次の朝、目を覚ました俺は朝食を食べながらテオは話し始める。どうやら、一人瞬間移動で学院に戻り、ヘルマンに口裏を合わせてもらうように手配して貰ったらしい。

  「流石だよな⋯」

  「当然だ。後から騒ぎになると面倒だからな」

  器用に魚の骨を取りながら、テオは昨夜に起きた出来事を口にする。俺達は同室だから相方が不在で騒ぎになる心配は無いが、夕食時の不在などは誤魔化せない。

  「なんて伝えたんだ?」

  「貴様と旅行するとそのまま伝えた」

  「えっ⋯⋯」

  学院に戻ってからが怖い。また床に埋められて酷い目にあわされる前に、上手い言い訳を考えなければ。

  「もう少し捻った理由をですね⋯」

  「⋯?別に問題ないだろう」

  「丸一日質問攻めに合うかも⋯何処に行ったとか、何をしたとか」

  「⋯⋯それは、確かに面倒だな。しかし、貴様にも落ち度はあるぞ。疲れ果てた俺に全て押し付けたのだからな」

  「ごもっともです⋯⋯」

  朝食を済ませた俺達は、学院に戻る準備を始める。帰りはテオの力を使えるので、例の海岸に飛んで、見つからないように部屋へ向かう予定だ。

  部屋を整えてから、チェックアウトをする為に受付に向かう。リフレッシュ出来たのか、テオから漂う雰囲気は普段より少しだけ柔和だ。

  「一泊だけだったけど、楽しめた?」

  「あぁ。尻が痛む事以外はな」

  「うっ⋯暫くは介護します⋯」

  「それでいい。ほら、行くぞ」

  軽口を叩きながら受付に着くと、昨日迎えてくれた虎獣人が同じ姿勢で起立していた。

  「お寛ぎ出来ましたでしょうか?ぜひ、またのご利用をお待ちしております」

  「⋯⋯あれ、お会計は?」

  「昨夜、既にお支払いなされましたが⋯?」

  戸惑う俺を余所に、テオは虎獣人に礼を言い出口へと向かう。早足で立ち去る後ろ姿、受付に感謝を伝えて後を追う。

  「なぁ、テオ。お会計⋯」

  「気にするな。貴様に借りは返すと伝えた筈だ。命を救われた対価にしては物足りんが」

  「テオ⋯⋯」

  テオに貸しを作ったなんて思っていない。

  確かに、村で得た知識が無人島での生活で役立ったのは事実だが、テオの力が無ければ学院に戻る事も出来なかった。俺達は互いが互いを支え合って、あの試練を乗り越えたのだ。

  「テオ、俺は別に⋯」

  「⋯⋯当分、貴様に借りは返せそうにないな」

  「⋯⋯えっ?」

  「こちらの話だ。さっさと手を掴め」

  話を遮り、俺の腕を乱暴に掴む。次の瞬間、俺達の姿は旅館の前から跡形もなく消え去り、目を開けたら見慣れた海岸の景色に戻っていた。

  「旅行、終わっちゃったな⋯」

  「⋯⋯次の長期休暇は4か月後だな」

  「そ、そうだっけ⋯?」

  「その時にまた誘え。今度は俺が最初から最後までプランを考えてやる」

  「⋯⋯おう!それまでにもっと仲良くなろうな!」

  着慣れた学生服を身に纏い、仲間がいる学院へと足を動かす。テオの一歩は早くて大きい。いつもいつも必死に追い掛けて、もしかしたら一生追いつけないかもしれない。

  それでも、いつかテオを守れるくらいの強い騎士になって、ずっと一緒に歩いていきたい。

  「何を呆けている。行くぞ」

  「おう!」

  アルゴ。

  貴様とはまだ僅かな時間しか共にいない。だが、その顔を見る度、声を聞く度に思うのだ。

  貴様の力は国すら傾ける神業とも呼べる。数ある未来の可能性を手繰り寄せ、現実に反映させる⋯本人は自覚していないようだが、俺を含め、他とはまさに格が違う能力。

  だからこそ、それが有力者に知られれば、その身柄を確保しようと動く輩が必ず出てくる。己のために力を利用しようとする者、邪魔に思い排除しようとする者、俺よりも余程命を狙われる立場に、いずれは追われることになる。

  俺にはそれが堪らなく恐ろしいのだ。

  輝かしい記憶が重なる度に、その恐怖も膨れ上がる。

  あの時は言えなかった。貴様の努力を否定する事になるからだ。懸命に剣を握り銃を構える、その姿はアルゴには酷く似合わない⋯そう思うのだ。

  きっとアルゴは耐えられない。

  誰かの命を奪うのも、奪われるのも、どちらもだ。

  

  予知など発現せず、漁村で平和に暮らしていれば⋯少しだけ、そんな事を考える。例え、俺との出会いが無かった事になったとしても。

  それでもアルゴは、己の信念を貫き、理想の騎士を目指すだろう。

  ならばせめて、俺がその隣に立ち、その命を守る。

  それが叶った時、ようやく借りを返せるのだと信じて。