朝起きたら獣人になっていた(1)

  序章:変わり果てた自分

  現代の社会では、人類と獣人が共存していた

  獣人たち、すなわち獣化遺伝子を持つ人々は

  長い間自然の中で暮らしていたが、

  急速に進行する都市化と自然の消失によって

  住処を追われることになった

  彼らは人類の前に姿を現し

  都市に住むようになった だが、

  社会の中での立場は決して簡単なもので

  はなかった。人類と獣人は、

  同じ空間に共存しながらも、

  互いにどこかしら警戒し合っていた

  主人公は都会の一角で一人暮らしを

  している社会人の若者

  夢は狼の獣人になりたいという、

  なんとも奇妙な願望を抱えていた

  目覚めた瞬間、違和感に襲われた。

  布団の感触はいつもと同じはずなのに、

  手のひらの感覚が鈍い。指を動かすと、

  爪が当たるザリザリとした感触がある

  「……?」

  眠気を払いながら手を見下ろす。そこにあったのは、

  人間のものとは違う獣じみた手だった

  指先の爪が鋭く伸び、節くれ立った関節には

  短い毛が生えている。驚いて飛び起きた

  慌ててベッドの横にある姿見に駆け寄った

  そして、そこに映ったものを見て、息が止まる

  「え?」

  鏡に映っていたのは、見慣れた自分の

  部屋の中で、狼の頭を持つ獣人だった

  目元を擦ろうとして、また違和感に気づく

  手の甲にも短い毛が生えている

  口を開けると、鋭い犬歯が覗き、

  舌がわずかに長く感じられる

  驚いて息を吸うと、嗅覚が異常に

  鋭くなっていることにも気づいた

  恐る恐る首をひねると、背後には灰色の毛に

  覆われた尻尾がゆらりと揺れていた

  「何だよ、これ……」

  昨夜までは普通の人間だった

  狼獣人に憧れてはいたが、

  まさか自分がなるとは思ってもいなかった

  これは夢か?

  頬をつねる。だが、鋭い爪が食い込んで

  思わず手を引っ込めた 痛いつまり、現実

  思考が追いつかないまま、ふとスマホを

  手に取る しかし、指の形が変わって

  しまっていて、指紋認証が反応しない

  パスコードを打とうとするが、

  爪が邪魔でうまく押せない

  「やばい……」

  このままでは仕事にも行けないし、

  外に出ることすらままならない 何より、

  どうしてこんな姿になったのかがわからない

  焦燥感に駆られながら、主人公の

  「獣人としての生活」が始まる