籠のなかのうさぎちゃん─オオカミの双子に囚われて強制えっち─

  「ねぇ、ステラぁ。しろちゃん全っ然起きないよ?」

  グレーとブラックを基調とした一室。部屋の中央に置かれたキングサイズのベッドには可愛らしいレースの天蓋が付いており、それだけが部屋の調和から明らかに浮いていた。

  ベッドの中央には、雪のように白い垂れ耳と丸いしっぽを持つ兎の獣人の少女が寝かせられており、ステラと呼ばれた青年はその少女の寝顔をうっとりと見つめながら、心底面倒くさそうに返答する。

  「ルミナ静かにしてよ。しろちゃんの可愛い寝息聞こえないでしょ」

  ステラとルミナは狼の獣人の双子である。艶のある黒い耳に尻尾。系統の異なる整った顔立ちと暗闇で爛々と光る紅い瞳がおぞましいまでの美しさを放っていた。そんな二人が狼から見れば子供のようにも見える兎の獣人に執心し、部屋に不格好な可愛らしいベッドまで買ったのである。

  「でもかれかれ三時間は眠ってるけど、しろちゃん大丈夫なの?」

  「だぁいじょうぶだって。ほらそこ。薬の空き箱あるでしょ。ちゃんと適量飲ませたし。」

  ベッドサイドのテーブルに置かれた紙箱には確かに「睡眠薬:兎獣人用」と記載がある。「しろちゃん」と呼ばれる兎族の少女がこの薬で眠らされ、普段なら相入れることのない肉食動物代表の狼に誘拐されたのは簡単に想像出来ることだ。ルミナは薬の空箱を指先で持ち上げ記載を読むと、テーブルに放り、ステラの反対側──シロを挟むような形で寝転んだ。

  「……はぁぁ……ほんとちっちゃあい。おみみふわっふわ……」

  「ねぇ勝手にベタベタ触んないでよ。僕のしろちゃんなんだから。」

  「はぁ?誰のおかげで今ここにしろちゃんがいると思ってんの?あの速さで誘拐できたの誰のおかげ?フィジカル雑魚なステラじゃ無理だよね」

  「はぁ〜??草食動物の居住区域まで簡単に侵入出来たのは誰のおかげですかー?セキリュティ破ったのは僕ですけどぉ?」

  眠っているシロに一応気を使っているのか、小声で口喧嘩をする二人は、同時に舌打ちをするとピタリと口論を終了し、各々指先でシロの身体を撫で始める。

  生憎、この双子は仲が良いわけではなく、得意分野やそれぞれの体質が上手いこと噛み合って利害が一致しているだけだ。双子ならではのシンパシーなのか、好きになる女まで一緒とは中々珍奇だが。

  「……早く起きないかなぁ。おはようのちゅうしたら起きるかな〜」

  「……ルミナ?」

  「ハイハイ、わかってるってば。ファーストキスはどっちか、ちゃんとしろちゃんに決めてもらうって……。ま、ステラはド変態だから俺が選ばれると思うけど」

  「え?絶対僕でしょ。しろちゃんはぜったい僕みたいなタレ目で優しそーな顔が好きだって」

  「しろちゃんは顔で男選ぶような子じゃないでしょ」

  二人が下らない言い争いを繰り返しながら、シロの耳を捲ってみたり撫で回したりしていると彼女が擽ったげに身を捩らせた。

  「あっ♡動いた〜……くすぐったいの〜?かぁわいい〜……♡」

  「ふふ……よしよーし……お耳やなのかなー♡」

  「……ゔ…っ」

  眩しそうにしながらシロが目を開ける。薄桃色の瞳が瞬きで見えかくれしながら、照明を受けてきらきらと光っている。無防備に深い眠りから覚めたシロは自分の両側に狼がいることにも気が付かず、ゆっくりと覚醒し始めた。二人もその様子をじっと網膜に焼き付けるだけで、声をかけようとはしない。

  「……ん……ここ、どこ……」

  見慣れない寝具に疑問を覚えたのか、しかしまだ寝ぼけた様子でしろが右を向く。

  「……っ!!だ、だれ……っ!?」

  「やぁーっと気づいた。兎って危機管理能力なさじゃない?そんなとこも可愛いけど……」

  「ひっ……」

  ルミナがくすくすと笑いながらシロの頭を撫でようとすると、なんとか逃げようと反対側を向く。しかし───

  「ふふ、おはよう♡しろちゃん」

  残念ながらこちら側にはステラがいる。

  「ぁ……え……?」

  シロは混乱したように喃語のような声を上げながらきょろきょろと周りを見渡す。全く知らない部屋。知らない二人の男。加えてその頭には狼の耳が生えている。

  「……!!や、やだ、やだ……っ、たべないで……っ、たべないでください……っ!」

  「あ、」

  シロは弾かれたようにベッドから飛び降り、ドアまで走ると必死にドアノブを引く。しかし、開かない。ガチャガチャと乱暴に押してもドアはびくともしなかった。

  「びっくりした〜。兎って逃げるのだけは速いもんねぇ。」

  「しろちゃん♡だいじょうぶ。怖いこと何もしないし、食べたりしないから♡」

  「……っひ、」

  両肩それぞれに二人の手が添えられ、そのまま耳元で囁かれるとシロは怯えながらもドアに爪を立てて引っ掻く。

  「あっ、ドアがりがりしちゃだめでしょ?いい子だからベッド戻ろうね。」

  「ぁ……」

  ひょいと軽く片手で持ち上げられると長い足で数歩、あっという間にベッドに戻される。自分の体をぎゅっと抱きしめて涙を流すシロに二人はなるべく優しく話しかけるが、シロは泣き止まない。

  「よしよーし……ごめんね。怖いよねぇ……。いきなり狼さん二人に知らない家に連れてこられて……」

  「大丈夫だよしろちゃん。泣かないで……?♡……あ、僕たちのことなんにも知らないから怖いんだよね。自己紹介しよっか」

  「そうだね。俺はルミナって言うの。よろしくね?」

  そう言ってルミナが手を差し出すがシロは警戒心を隠せないままその手をじっと見つめるだけだ。

  「……ルミナ嫌われててウケる。ふふ、僕はステラ。一応僕たち双子だけど、全然似てないからね。僕の方がルミナの100倍優しいから♡」

  ステラがルミナを鼻で笑う。シロは二人を見比べると、確かにステラはタレ目で一見優しそうだ。しかし、肉食動物であることに変わりは無い。このまま油断させて頭から食べられてしまうのではないか、とシロはカタカタと震えた。

  「ん?しろちゃん寒いの?」

  ステラはシロをベッドにころんと転がすと、添い寝するように横に寝転び、シロを抱き寄せる。

  「っや……だ、やだ……たべないで……たすけて……」

  「……あは♡可愛い〜♡大丈夫だよ♡草食動物の教育ってほんと遅れてるよね〜。先祖はどうだったか知らないけど、今の時代に物理的に食べるわけないのに」

  「あっ、ちょっとステラずるい。俺も後ろからぎゅうしてあげる。」

  「ひ……っ、や!はなして!やだ!」

  シロがじたばたと暴れても二人はビクともしない。シロはパニックになって泣き叫ぶが二人は愛おしそうに前後からシロを抱きしめる。特にステラは泣いているシロを湿度の高い目で見つめていた。

  「っふふ♡泣いてるの超かわいい……♡あ、やば……♡勃ってきちゃった……」

  「うーわ。しろちゃん。こいつ泣いてるしろちゃんに興奮してるんだって……。こわいね〜ルミナおにいさんの方がいいよね〜」

  「は?お前も大概でしょ。」

  「はぁ?ステラのがやばいって。」

  「あ?」

  シロを挟んで喧嘩する二人に、シロはなんとか逃げ出せないかと思考を巡らせる。しかし、ドアは開かなかったし、二人に抱きしめられている以上逃げる術などなかった。

  「……っひぐ……たすけて……おかあさん……おとーさん……」

  とうとう声を上げて泣き始めてしまったシロに双子は慌てて声をかける。

  「あー♡しろちゃん泣かないで。」

  「ごめんね、ごめんねぇ♡ほらステラおにいさんがぎゅーってしたげるから泣かないで……」

  「……っう……ひぐ……」

  シロは恐る恐る顔を上げるとステラの顔を見つめる形になる。涙に濡れた薄桃色の瞳がゆらゆらと金の瞳を見返した。

  「あ♡やば〜……かぁわいい……ふふ、ね、しろちゃん。おにいさんとちゅうしてみる?♡そしたら怖くなくなるかも♡」

  「あ?」

  「っひ……」

  ステラの提案にルミナが反応すると、二人の腕の中でシロがぴくっと飛び跳ねた。

  「あっ。ごめんね、ごめんね♡しろちゃんに怒ったわけじゃないからね。でも、しろちゃんもちゅうするならこんな変態じゃなくて、俺の方がいいよね?」

  「はぁー?お前がそれ言うー??」

  「お前みたいなサディストの変態がファーストキスとかトラウマになっちゃうでしょ。しろちゃん可哀想じゃん」

  シロを挟んで険悪な雰囲気になる二人はいつの間にかシロを押し倒し、左右から見下ろしている。

  「ねーえ。しろちゃんはファーストキスどっちがいーい?」

  「俺だよねー?ステラとちゅうしたら絶対苦しいよ?俺なら優しくしてあげるけど…」

  「っ、や……はなして……」

  シロが二人の手から逃れようともがく。しかし二人はそれを許さない。

  「あは♡しろちゃんってば元気だね〜♡そんなに暴れたら疲れちゃうよ?僕とルミナどっちがいいか決めらんないの?♡」

  「俺だよねー?しろちゃんは優しい方が好きでしょ?」

  「……っう……ひぐ……っ」

  左右から詰め寄られまた涙が溢れてくる。二人の中では完結しているのかもしれないが、シロにとっては何故ここに連れてこられて、キスされるならどっちか選べとせがまれているか全く理解出来ていないのだ。

  どっちがマシか───どっちを選んでも選ばなかった方の機嫌を損ねるのは目に見えている。ステラは顔こそ優しそうだが、泣いている自分に興奮している。しかしルミナも狼であることには変わりない。

  「……ね、しろちゃん。早く選んでくれないと日が暮れちゃう♡」

  「……ね?どっちを選べばいいか分かるよね?」

  ルミナ曰く、ステラとキスをすると苦しい。でも優しくすると言ったルミナが嘘を吐いていたら?シロは悩みに悩んだ末、弱々しく片方の袖を引っ張った。

  「!!!ふふ♡いい子♡やっぱりステラは怖いもんね。俺のこと選べていい子♡」

  「……え〜…しろちゃん悪い子……。僕のこと選ばないなんて……後でおしおきしてあげなきゃ」

  「……っひ」

  「あは。負け押しんでなんか言ってる。ふふ、じゃあルミナおにいさんと初ちゅうしようね♡」

  「……っ!?ん゛ぅ」

  シロの口にルミナの大きな口が覆い被さる。しろの小さな口は容易くルミナの口に覆われた。

  「ん゙ー!!んん!!」

  「……っふ♡ふふ♡」

  口を離そうとすると後頭部を大きな掌で掴まれ、より深く口付けられる。シロはなんとか抵抗しようと舌を押し返すが逆に絡め取られてしまった。

  「っん、む……っは、ぁ……っ」

  「ふふ♡舌もちっちゃいね……♡可愛いなぁ♡」

  「ぁ゛……っ!ん、む……ぁ……」

  舌を甘噛みされ、そのまま根元からじゅるりと吸われると甘い刺激と恐怖でシロの体が震えた。やっと口が離される頃にはシロの息は完全に上がっており、弱々しくルミナに向かって呟いた。

  「うそ、つき……っ、やさしく、するってゆったのに……っ、ぅ……」

  「っ、ふふ、あー可愛い♡でも、俺嘘はついてないよ。普通のちゅうだもん。しろちゃんがよわよわなだーけ♡♡初ちゅう気持ちよかったね♡俺にくれてありがと♡ 」

  「っ、ぅ………」

  シロはまた泣き出してしまう。ルミナがそんなシロの涙をぺろぺろと舐めているとステラはにっこりと笑いながら、シロを奪うようにして抱き抱える。

  「しろちゃん♡次は僕とちゅーしようね。」

  「ぁ……や……っ」

  「はぁ〜……ステラやり過ぎないでよー?見てたからわかると思うけどしろちゃんってすっごい弱いんだから。」

  ルミナの忠告にシロがビクリと身体を震わせるが、それも束の間ステラはシロの口を食むように唇を合わせた。

  「……っ、う……?」

  「…………」

  ルミナとは違い、ステラは直ぐには舌を入れてこない。唇を合わせたままピタリと動かないステラの顔をシロは恐る恐る見上げる。

  「……!」

  ステラは無表情でじぃっとシロの顔を脳に焼きつけるように見つめており、その恐ろしさにゾワリと鳥肌が立つ。少しして、シロは苦しさから唇を離そうと藻掻くと、それを待っていたかのようにステラはシロの後頭部をグッと押えた。

  「……っ!?ん゛!!ん゛んー!」

  酸欠で真っ赤になって必死でステラの胸を叩いたり、遂には手をガリガリと引っ掻くシロをステラはうっとりと見つめる。そしてやっと唇を離して息を吸わせたかと思えば、開いたシロの口に舌を入れ込んだ。

  「っん゙ぅ!!っゔ、っふ、……っ、ん、」

  舌が口の中をねっとりと舐め回す不快感と酸欠の苦痛、そして僅かな快楽でシロの頭はショート寸前。くるりと瞳が上を向きかけた時、やっと唇が離された。

  「げほッ……!!っひゅ、ひゅ……〜〜……」

  「゛あ〜……かぁわいい〜……必死で息吸っちゃって〜……♡♡んふ、ふふ♡ごめんねしろちゃん……♡しろちゃんが可愛くてつい……♡♡」

  「……うーわ…やばぁ。」

  シロに引っかかれて血が滲む手でよしよしとシロの背中を摩るステラを見て、ルミナはドン引きながらつぶやく。

  「……ルミナうるさぁい。しろちゃんが最初に僕のこと選んでたらこんなことしなかったし。おしおき代わり♡」

  「はぁー?そんなんただの口実じゃん。」

  「なんか言った?」

  「別にー?」

  シロを挟んでバチバチと火花を散らす二人を他所に、シロは酸素を取り込んで少し落ち着いたのかステラの腕から逃れようと身を捩る。

  「……ふふ、しろちゃん早くステラから離れたいって。ほら、こっちおいで」

  「え〜……しょうがないな。」

  ステラの腕の中から飛び出したシロを丁度キャッチするように受け止めると、ステラはシロの頭を優しく撫でる。

  「ふふ♡よーしよーし怖かったねぇ……ステラのちゅう嫌だったね〜……。」

  怯えるシロのまろい頬にちゅっちゅと軽くキスを落として、ルミナは満足気に身体を撫で続ける。

  「……なぁんか僕だけ悪者みたーい。ねーえ、ルミナはそうやって縋られるのが好きなだけで〜、もし僕が泣かせてなかったら自分でしろちゃんのこと泣かせてたよきっと。」

  「え〜?そんな事しないしー……」

  「あ、今目逸らしたでしょ。絶対するって〜……しろちゃんかわいそ〜」

  シロは二人の会話を聞きながらも、ルミナが自分を撫でる手がくすぐったいのか、もぞもぞと身じろいだ。

  「あはは、くすぐったい?それともきもちい?」

  ルミナが脇の下を触れるか触れないかギリギリの位置で撫でると、シロはまた体をよじる。

  「……っ!くすぐった……」

  「ふふ、シロちゃんの体ちっちゃくて柔らかいからこうしてるだけで興奮する……♡♡」

  「ルミナばっかりなでなでしててずるーい。じゃあ僕はしろちゃんのおみみ可愛がってあげる♡」

  ルミナはため息を吐きながらシロを抱え直すと膝の上に乗せ、シロの耳をステラが触りやすいようにする。

  「……あはっ……おみみふわふわ♡ロップイヤーって言うんだっけ♡周りの音聴こえにくいから、うさぎの中でもよわよわなんだよね♡」

  「ん……っ、ふ……みみやだぁ……っ」

  耳を触られるとびくびくと震えて嫌々と首を振るシロにステラは笑みを深くした。

  「ふふ♡撫でるだけじゃなくて甘噛みもしてあげよっか♡」

  「っひ!!やだ……っ!!!」

  「あ〜、ちょっとステラあんまり怖がらせないでよ。しろちゃん蹴る力は結構あるんだから…押さえるの大変なの。」

  「んふ、ごめんごめん。でもしろちゃんはちゅうよりお耳の方が好きみたいだね♡」

  「っ♡……ひぁ」

  ルミナがふぅっと耳に息を吹きかけるとシロはふるりと震える。二人に挟まれて不安げな声を漏らすシロに、ステラは安心させるように優しく話しかけた。

  「しろちゃん、大丈夫だからね〜♡これから僕とルミナで気持ちいいこと教えてあげるね♡」

  「ふふ、しろちゃんはね。俺の……はいはい、俺たちの番になるの♡」

  「っ、な……なんで……?」

  シロは正面にいるルミナの顔を見て絶望を瞳に宿す。そんな様子にルミナが笑った。

  「ふふ♡だってしろちゃん可愛いんだもん♡ちっさくて華奢で綺麗な髪の毛も宝石みたいな目もその小さな身体も、ぜーんぶ俺らのものにしたいなぁって……♡」

  「昔ちょっとした用事で兎の居住区に行った時にしろちゃんのことたまたま見つけて、それからずーーっと機会伺ってたの。」

  「そうそう。だからしろちゃん、もう逃げられないよ♡あは♡」

  「っひ……ゃだ……っ」

  シロの瞳にじんわりと涙が浮かび上がると、二人はごくりと唾を飲み込んだ。

  「あー可愛い……本当に可哀想で可愛いなぁ……♡たまんない……早く僕のものにしたい……」

  「ステラだけのじゃないから。……ふふ、しろちゃん大丈夫。さすがに二人もいるし、体格差もすごいからちゃんと日数かけてゆっくり気持ちいことしようね♡」

  ふるふると震えるシロだが、為す術がない。睡眠薬を使われたのだろう、誘拐された時の記憶も曖昧で状況を飲み込めていない。ただ兎に角目の前の双子が怖くて、言うことを聞く他なかった。

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