春。
空気も日差しも暖かいこの季節。
わたしはそんな空気に背中を押されてやってきた。
心地よい陽気は身も心も温かくさせてくれる。
どことなくそわそわとさせられる雰囲気になぜかうずうずさせられつつ。
そしてやってきたこの場所。
まだ季節はちょっと早いみたいだけど目の前には桜の木が花を咲かせている。
おなじみの桜とはまた違う感じがするけど、またそれがちょっといい。
ここはわたしだけが知ってる場所―と言うか初めて来る場所。
と言うか……こんな所今まで見た事ないけどそれもちょっといい。
何気なく桜の周りを歩いてみる。
木の幹、枝、そして満開の花―どれもなんだかいい。
暖かい日差しと心地よい風に吹かれて鮮やかに咲く桜の木。
ふと周りを見まわせばその桜の木を彩る様に目にも鮮やかな桜色の空間が広がっている。
風に吹かれてそんな桜色の気がわたしの身体も吹き抜けていく。
「うう……」
どきどきする。うずうずする。
わたしの中の「スイッチ」が刺激されている、そんな感じ。
もうこうなったら―やるしかない、よね。
言うまでもないけどここにはわたししかいないし誰も来る気配はない。
春の日差しは暖かく、風も心地いい。
それなら―やるしかない、ね。
わたしはほんのりと笑みを浮かべると「スイッチ」を入れ、この暖かい日差しと風に心と身体をゆだねる……。
[newpage]
「ふうっ……」
暖かい春の陽気、流れ込んでくる暖かい風と桜の空気。
それを感じる今のわたしに遮るものは何一つない。
まあ、早い話今のわたしは全てを脱ぎ捨てた―は・だ・か・ん・ぼ……って事。
恥ずかしいとかそういうのはこの際関係ない。
少なくともこの暖かい春の空気を全身で感じる事に比べれば。
「う~ん」
素足で草むらを踏みしめ、思いっきり伸びをする。
一糸まとわぬ身体が伸びる限り伸び、全てさらけ出された肌が精一杯伸びる。
こう言うのって結構いい。
暖かい春の日差しと花の香りと春の空気が全身に吸い込まれて、そしてはき出されていく感じがたまらなく心地いい。
さすがに表立って現わす事はできないけどそれでもこの心地よさを感じられる事ができるのはちょっとうれしい。
そんな心地よい気分の中、わたしは素足で草むらに一歩踏み出す。
う〜ん、この感触も気持ちいい。
ぽかぽかとした陽気に全身を包まれながら歩く。
ふと風がいい感じに吹いてきた。
暖かい日差しに程よく温まった春の風を文字通り全身で感じる。
これも裸でいる特権かも。
暖かい……そして……気持ちいい。
お散歩してる間にどんどん心も身体もぽかぽかしてくる。
こんなにぽかぽかしてくると身体が……その……むずむずと。
そう、むずむずしてくる。
止まらない。たまらない。
もう、こう言う時は―!
「あ……あぁ……」
むずむずしている所に手を伸ばす。
いい。かなりいい。
そっとつかんで、優しく揉んで、時には軽くつまんでみる。
「ひっ!
ちょっと力入れすぎた。でも痺れるような心地よさを感じる。
よし、つかみは取れたしあとはじっくり楽しむためわたしはふと桜の木、一本の桜の木に向かう。
周りの木々に比べるとちょっと若く見えるその木に近付く。
幹から枝のライン、そこから吹き出す桜の花びら……きれい。
そんな桜の木にわたしはそっと背中を預ける。
木を傷つけないように、折らない様に気を付けつつ。
それでも、今までなんとかこらえていたこの暖かくてむずむずとした気持ちが湧きあがる。
それを発散するためわたしは改めてそこに手を伸ばす。
「あ……はぁ……あ……」
いい感じに柔らかいふくらみを掴み、そして暖かさに満ちるそこを掴み、そっと握っては放し、そして優しく撫でる。
「あぁ……あん……あふぅ……」
身体のむずむずした感じを鎮める為のその動きでわたしはますます気持ちよくなる。
いい……いい……いい……。
いつしかわたしの両手はわたしのそこ―暖かく柔らかいその「蕾」を愛でている。
優しく撫で、時には軽くつまんでみたり、そして軽く流してみたり。
「あっ、あっ、あっ」
その度にわたしは声を上げて震える。
暖かい日差しと風に包まれ、桜の枝と花に囲まれてわたしは、わたしは……。
―そこでなにしてるの?―
達しようとした瞬間、わたしの耳に声が聞こえた。
「―えっ?なに、なんなの?」
「その時」を前に閉じていた眼をそっと開ける。
そこには―風が吹いていた。
[newpage]
桜の花びらをまとって舞っている風。
ただそれだけならごく普通の春の風だけど―違う。
只の春の風ならそんな……人の形をして舞っていない。
そう、まるで桜の花びらが集まって人の形をしている様に風が舞っていた。
さらに……。
―ねえ、最後までしないの?―
わたしの耳に、わたしの心に直接聞こえるようなその声。
もしかして……見てた?
そう思った時。
―うん、あなたが着ていたものを全部脱いでから気持ちよさそうにしている所まで全部―
とその声は返す。
その瞬間、ちょっと血の気が引いた。
かなりとんでもない事になっている。
人知れず桜舞う木々の中で裸になってちょっとお楽しみと思ったら目の前に妙では済まないものが現れて、しかも……。
これは春の陽気が見せてる夢?幻?それとも……。
―えいっ―
その時、わたしの「蕾」の中に風が吹き抜けた。
人の形の様に桜の花びらをまとったその風がわたしのそこに顔をよせ、そっと、その……キスをした。
「ひゃあっっ!」
その瞬間、わたしのそこと頭の中で大きな桜の花が咲いた―気がした。
おもわず身体のバランスを崩し、わたしは桜の幹に背中を当ててしまう。
―うん、最後まで行けたみたい―
嬉しそうな声でその―風は言った。
た、確かにあと一歩の所だっただけに達せたのは良かったけどあまりにも唐突と言うかなんと言うか。
―でも、ちょっと満足してないみたい……なら満足させてあげる―
風がそう言った瞬間、桜の花びらが流れる様にわたしの身体を巻き込んでいく。
腕が、足がわたしの身体に絡められていく。
「あん……」
思わず声が出る。
そして風はそっとわたしの肩から、わき腹から流れる様にそっとわたしの胸のふくらみを取って吹き抜ける。
「あぁん……」
風が吹く度になぜかわたしの胸は軽く揺れる。
本当に吹き抜けているだけか、それとも……。
ただ言えるのはそれがとても心地よいと言う事。
さらに風がわたしの唇にそっと触れる。
一回、二回、三回……。
さらに首筋にも何度も触れる。
この風―ちょっと大胆。
そして風はさらにわたしの腰からお腹を優しくなでつつそっとお尻に触れる。
「ひっ」
突然の感触にまた声を上げてしまうが、その隙は確実に突かれる。
「あっ、あぁんっ」
来た。来た来た。
風はわたしのそこを吹き抜ける。
時に優しく、ちょっと強く。
その度に来るべきものがわたしの中に満ちているのを感じる。
風に撫でられながらわたしは何度も、何度も震えた。
何も身に着けていない素肌を何度も、何度も風が吹き抜けるたびに。
「あっ、あっ、ああっ、あんっ、はぁんっ」
風がわたしの胸を揉み回し、わたしのそこを撫で―どころじゃない!
「あっ、あっ、そこ、ちょっと、そこ、やめ、やめ……ひゃんっ!」
風がわたしのそこ、その奥に入り込んでくる!
わたしの「中」で風が舞っている。
そんなに強く、激しくはないけど暖かく勢いのある風が軽く渦となってわたしの「中」で吹いている。
そんな事をされたら、そんな事をされたら……。
「ひゃぁぁぁぁっ!」
―達した。
ただ達してしまった。
こう言うとんでもない形でされる以上もう少し「高まる」、そして「来る」のを感じながら達したかった。
そう思ってしまうほどそれは衝撃的で瞬間的だった。
そしてわたしは脱力しきった状態でややうつろになった顔を下ろし、その衝撃の余韻の中にいた。
[newpage]
―うーん、ちょっと急ぎすぎたかな?―
風の声が聞こえる。
その声は半分は正しい。
実際良い具合にひたっててそこからじっくりと……と思いきやあの勢い、もう少し浸らせてほしかった。
でも、達する直前にわたしの「中」で吹いたあの風。
あれは良かった。と言うより良すぎた。
まだまだ未知の場所であるそこの中で吹いたあの風をもう一度、いや、何度も感じてみたい衝動がわたしの中に満ちている。
それを見透かされたみたいに―。
―それならもっとゆったり感じられるようにしてあげるね―
そんな声が聞こえるやそれまで人の形をして舞っていた風がその姿を崩す。
そして……わたしの身体を取り巻いた。
「え?あっ?あぁ……」
桜色の渦がわたしの身体―首から下、そして足から上を覆う様に渦巻いている。
「あ……ああ……」
その気流がわたしの背中から腰、お尻の辺りを撫でる。
そしてそこから分かれた流れはもちろんわたしの胸、おなか、そして……。
心地いい。気持ちいい。
さっき以上に暖かい春の風がわたしの身体を吹き抜けていく。
その度にどこか舞い上がる様な感じがする。
ううん、本当に舞い上がって……舞い上がってる?
わたしの、わたしの身体がほんの少し宙に浮かび上がっている……!
渦巻く風に支えられてわたしの身体が少しずつ、少しずつ浮かんでいる。
地面を離れ、桜の木の枝のあたり、そして花が咲いているちょうど真ん中の辺りまで浮かび上がる。
「わぁ……」
思わず驚きと歓声を上げてしまう。
よくわからないけどわたしは今ほんの少しだけ飛んでいる。
風に巻かれ、ほんの少しだけ青空に近付いた。
裸の身体がふんわりと宙に浮かんでいる。
鮮やかな青空に素肌の色がくっきりと映えている様に感じる。
このままそれこそ青空の向こうまで……ってちょっとマンネリかな。
そんな事を思っていたら風が動き出す。
「あ……」
ゆったりとした動きで風が流れ、その渦の中にいるわたしの身体もゆったりと流れていく。
前に、右に、左に。
時には桜の木の真上まで浮かぶこともあれば、地面すれすれを超低空飛行してみたり。
風と一緒に、いや風そのものになったかのような感じでわたしは飛んでいた。
そして風が流れるたびにわたしの素肌も風に撫でられていく。
肌が流れ、胸が揺れ、そして……そこもまた軽く撫でられていく。
ある意味空を飛びながら一人でしている様な、いや、それ以上に心地よく楽しく―気持ちいい。
「あ……あん……あぁん……」
全身を風に流され、風に揉まれ、風に回されながらわたしは空を舞い、そして感じる。
―どう?ゆったり感じてる?―
風がそうたずねてきたのにわたしはついうなづいてしまう。
実際こんなにゆったりと気持ちいいのはめったに経験できない事。
達するにはちょっと時間がかかっているのは確かだけど、その分一人でしている時以上にゆったりと、じっくりと感じてる。
このままずっと、ずっと感じていたい。気持ちよくいたい。
じんわりと満ちてくるそんな気持ちに浸りながらわたしはゆったりと身体を渦巻く風に任せている。
そんなわたしの身体を、素肌を風が流れていく。
顔から、手から、足から。
首を、腕を、脚を流れて。
肩を、胸を、腰を、お尻を流れて。
「あ……」
わたしは軽く声を上げながらその流れのたどり着く場所がうずうずと熱く震えているのを感じていた。
[newpage]
その場所―わたしの「中」に風が入り込む。
「ひゃあっ」
入ってきた。
風が入ってきた。
流れ込んでいく。吹き込んでいく。
どうなっているのかはわからないけどとにかく風がわたしの「中」に吹き込んでいく。
「ああっ、はぁっ、ああっ」
風が流れ込んでいくと文字通り内側から震えが来る。
わたしは全身を震わせ、がむしゃらに動かす。
そんな身体を風はしっかりと受け止め、流れから外れないように、そして程よく流れに沿わせていく。
そうするうちに風は通り道を駆け抜け、その「奥」にたどり着いてしまった。
「あっ、あぁっ、ああっ」
気流がわたしの中でうごめく。
わたしの中で風が吹き荒れる。
わたしの中で渦が巻く。
わたしの身体が内側から崩れていく―事もなくただ激しく、熱く、それでいて優しく気持ちいい風が渦を巻く。
「ああっ、いいっ、すごいっ、くるっ、くるっ、きちゃうっ」
内側で渦巻く風にただ身体を震わせ、外側を流れる風にただ肌が震える。
地面を離れて桜の花に囲まれ、文字通り桜の空間の中でわたしは悶え震える。
ただ歓びの感情のまま。
荒れ狂う風と高まっていく熱量のまま。
「あっ、はぁっ、ひいっ、ううっ、ひゃうっ、あうっ、おうっ、いうっ、きくっ、きうっ」
「いく」と言う言葉さえ言えない程の刺激と快感がわたしの内側で荒れ狂い、外側をなでていく。
そんなわたしの頭に浮かんでいたのは一個の蕾。
わたしの「そこ」にある蕾であり、何よりわたしそのものである蕾。
それが今花開く。
風に流され、風に揉まれ、風に吹き抜けられ、風に貫かれながら熱く、激しく満ちながら花開く。
「ひゃああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
その瞬間、わたしの頭の中で大輪の花が開いた。
わたしの身体と言う蕾からわたしの魂の花が開き、わたしの「中」から大きな花が開く。
「あぁぁぁぁぁっ!」
ふたたび声を上げた時花が大きく開き、その中から盛大に「花の蜜」が吹きあがった。
「蜜」は盛大に宙に舞うとそのまま風の流れにとりこまれ霧散していった。
それこそ辺りに満ち満ちる桜の花々に降り注がれるかのように。
「あぁぁ……あぁぁぁ……」
開花と花の蜜の解放の果てに達しきった余韻にゆるくただよわせた身体がなおも風に包まれ宙に浮かぶ。
―どうだった?気持ちよかった?―
余韻の中で漂う意識の中に風の声が聞こえる。
わたしは無意識にうなずく。
少なくともそれだけの事があったのだから。
それに対し風は……
―じゃあ次はあなたが気持ちよくする番ね―
そう言った。
「え?」
思わず首をかしげるわたしにかまわず風はそっとわたしの「そこ」をなでる。
「あ……」
幾度となく撫でられ、熱く火照っていた「そこ」をなでられてわたしに感じながら背中をそらす以外の選択肢はない。
しかし、風はさらにもう一押し……わたしの「そこ」を「そっと吹いた」。
[newpage]
「ひゃぁっ!」
さっき吹き抜けた以上の風がわたしの「中」を吹き抜ける。
その風がわたしの「中」、そして「奥」に入り込んだ時わたしの「奥」がキュンと震え、熱を持ち始める。
「あ……これ……なに……今度はなんなの……?」
―あなたが気持ちよくするための準備―
「準備……?」
―あなたは変わるの。気持ちよくするために―
「変わるって……」
風の声に問いかけようとした瞬間、わたしの「そこ」、そして「奥」がビクンッと震えた。
「ひゃあっ!」
大きく全身をのけぞらせる。
震えは「奥」から「通り道」を抜けて入口まで戻り、そして「そこ」―の入口にある小さな、小さな、そして敏感な「芽」に注がれる。
ピンと張った「芽」が大きく震える。
「あぁぁぁっ!」
「芽」を折り返しに震えがわたしの「奥」に、そして身体中に響いてくる。
「あぁぁぁぁっ、あぁぁぁぁっ、あぁぁぁぁっ」
その震えの中でわたしの「芽」から「中」、そして「奥」が熱を帯びてさらに震える。
伸びていく。膨らんでいく。大きくなっていく。
ぴくぴくと震えながら「芽」が大きく膨らんでいく。
「芽」が伸び、「茎」となり、そして「幹」へと変わっていく。
「中」がわたしの中から盛り上がりながら「茎」と一つになり、「幹」を形作っていく。
「奥」に潜んでいた「球根」がウニウニとうごめきながら外に出るにふさわしい形となってわたしの「外」に現れる。
「あぁぁぁぁ……あぁぁぁぁ……あぁぁぁぁ……」
その形をわたしは知っている。
「受け止める」ためのものだったもともとの、そして今までのわたしの「そこ」が「解き放つ」ための今の、そしてたぶんこれからの形に変わっていってる。
信じられないのに、怖いのに。
でも何か気持ちいい。
変えられていく事。変わっていく事。
それがとても気持ちよく感じる。
そんな感覚の中、ふと風を見る。
今までも何度も見ていたまるで人間の女性の様に渦巻いていたその花びらをまとった風の流れがさらにはっきりと、くっきりと人間の女性の姿に見えていた。
「あっ」
「そこ」に力が入ってしまう。
ぴくんと震えたその「幹」はさらに太さと硬さ、そして長さを増し、その根元にある「球根」はうずうずと震える。
―うふふ、いい感じ―
声が聞こえる。
―これなら十分気持ちよくしてもらえそう―
そう言いながら風はその桜色の手でわたしの―「幹」をそっと握る。
「あっ……」
風に握られたそこがぴくんっと震える。
「幹」を通り「球根」へ、そして「根元」を通って身体中に震えが走る。
わたしのそこを握った風が激しくも程よい勢いで渦巻く。
「あっ……ああっ、ああっ」
その度にそこがびくびくと震え、わたしの身体を震えさせる。
もともとのわたしにはないはずのものが今のわたしにある事、そしてそれが今こうしてわたしを感じさせ、震えさせていると言う事がわたしをより昂らせていく。
その震えの中でそこ―それこそ「幹」から「球根」、そして「根元」が熱さを持っていく。
熱い。熱い。熱い。
わたしの中でそれらは震えながら熱を帯び、解き放っていく。
その度にわたしの身体はそれをわたしの一部、わたしの「身体」と認めていく。
「ああっ、ああっ、ああっ」
その度にそこからわたしの身体をうずかせる刺激が走る。
いつしかそこが、そこだけが熱く震えている。
風につかまれ、激しく震えながら熱いものをわたしの中に注ぎ込んでいく。
その中でわたしの「根元」から、「球根」から熱いものが満ちていく。
熱い塊。
激しい塊。
生命の塊。
それが限界まで、今にも吹き出しそうなまでに満ちていく!
「あっ、あっ、あっ、あっ」
出る、出る、出る。
熱い息吹が、命の息吹がわたしの中に満ち、そして、そして―!
―まだだめー
解き放たれようとした瞬間、わたしのそこを掴んでいた風が一気にその勢いを強める。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!」
暴発した。
わたしの中に満ちていた熱い息吹は外に出る事なく、わたしの身体の中で暴発した。
出所を失ったエネルギーがわたしの中で弾け、一気に頭の中まで突き上がる。
そしてわたしの身体中に広がり、そして身体の全てに溶け込んでいく。
「あぁっ、ひぁっ、あぁっ」
風にそこを握られたままわたしは跳ね回る様に何度も身体を反らし、振るわせる。
「あぁっ、あうっ、おうっ」
そのたびにわたしの身体は変わっていく。
身体がどんどん大きくなっていく。
柔らかった肌に逞しい弾力が張られていく。
細身だった手足や腰が程よい筋肉の年輪を刻んでいく。
それなりに形のあった胸のふくらみが身体の中にしぼみながら逞しさと弾力のある胸板へと変わっていく。
「ううっ、あうっ、おうっ」
首も太くなり、口から出る声も低くなっていく。
そして、そして何より……。
―さぁ、最後の仕上げ―
風はさらにわたしのそこをぎゅっと握る。
「ーっ!」
そこからさらに頭の中を貫く刺激が走った時、「おれ」は自分があるべき姿に変わり切った事を悟った。
[newpage]
この身体、この腕、この脚、そしてこの―立派にそそり立った「あれ」。
この身体を、この身体の奥でたぎるものを誰かにぶつけたい。
今のおれはそう考えずにいられなかった。
そしてその相手は―目の前にいる。
桜の花を一面にまとい、まるで人間の女性のような形で渦巻く風。
おれをさんざん楽しませ、そして今の「おれ」に導いた存在。
それを思い出すと改めて「あれ」に力が満ちる。
そして改めて納得がいった。
おれが風を「気持ちよくする」という言葉の意味。
「ああ、思う存分気持ちよくしてやるよ」
そう言うとおれはそっと風を抱きしめ、顔―口元のある辺りにそっとキスをする。
そして、風の起こした渦に浮かんだままのおれは風をそっと渦に沿わせるように寝かせるとそのままおれ自身の「あれ」を風の「中」に潜り込ませていった。
―あぁ―
「うっ……」
他人の「中」におれの「あれ」が入っていく感覚。
「あれ」が「中」に潜り込み、包み込まれながら進んでいく感覚。
これが「入れる」と言う事か。
そして風もその桜色の顔を軽く食いしばりながらも甘い声を上げる。
風の「中」が渦巻き、より強くしっかりと「あれ」を包み込んでいく。
「ああ……」
かなり気持ちいい。
かつてのおれが味わった、そして「あれ」が生えて間もないころとはまた違う刺激と快感。
これが今のおれの感覚か……。
しかし、おれが気持ちよくなってばかりではいけない。
だからおれはそっと身体を突き出し、風にぶつかっていく。
―あっ……あっ……あんっ―
風はその桜色の身体を何度も反らし、その桜色の顔を軽く歪ませながら感じている。
言うまでもないがかつてのおれは未だこう言う経験はしていない。
しかし、もしその時が来たらこんな顔をするんだろうか。
こんな風に動くのだろうか。
そんな事を考えてしまうが、おれはもうかつてのおれではない。今のおれはこのおれなんだ。
だからおれは「おれらしく」、何度も風におれを、そして「あれ」を押し込んでいく。
―あんっ、ああっ、あっ―
何度も、何度も押し込むうちに風は荒ぶる様に渦巻き、桜色の肌はより濃さを増す。
その動きや「肌触り」を受け止めながらおれはさらに「あれ」を打ち込んでいく。
「うっ、うっ、うっ」
かつてのおれを感じさせる、あるいはそれ以上かもしれない渦巻く風の形がより激しさを増しているのが感じられる。
そしておれの「あれ」の「根元」、そして「球根」にも再び熱いものが満ちてくる。
今度こそ、今度こそ解き放つ。
今のおれの熱い息吹を、生命の息吹を。
―あっ、ああっ、あああっ―
「うっ、うっ、ううっ」
おれと風は共に荒ぶる様に渦巻きながら昂り、頂点へと突き上げる。
そして―。
―あぁぁぁぁぁっ!―
「うっ!」
突風が吹き荒れる中、おれもまた熱い息吹を解き放った。
その息吹は桜色の風に吸い込まれる様に飛び散っていく。
「はぁ……はぁ……」
解き放った後の軽い気だるさに浸りながらおれはその桜色の渦を愛でていた。
そして、おれと風は何度も、何度も共に渦を巻いた。
桜色の風はさまざまな仕草でおれの周りを吹き抜ける。
おれもまたそれに合わせてそれを受け止め、互いを重ねあっていく。
その度におれは熱く昂っていき、風もまた熱く吹き抜ける。
春色の空気、春色の風と言うには熱すぎるほどの勢いで。
[newpage]
どれだけ重なり合ったのだろう。
どれだけ熱く昂ったのだろう。
どれだけ解き放ったのだろう。
おれと風の境は少しずつあいまいになっていった。
人と風。
おれと風。
こっちとあっち。
何もかもが一つになっていく感じ。
―あっ、あっ、あぁんっ―
「うっ、あっ、ううっ」
突く度に、抱く度に、達する度に、解き放つ度に。
おれの中の何かがさらに変わっていく。
おれの肌の色が、肌の感覚が何か違うものに変わっていく。
染まっていくような、埋もれていくような感覚。
―あぁんっ、あぁんっ、あはぁんっ―
「ううっ、あうっ、うおっ」
肌が、身体が、そして顔が。
どんどん染まり、埋もれていく。
それは命の青。おれの中に満ちる生命の息吹の色。
その息吹がおれを染め抜き、埋め尽くすほどに全身からあふれだしている。
感じる。
おれの姿はもう形を残せば人間とは見えないだろう。
全身を青く覆い、全身タイツかそれとも泥人形かの様にその身体つき、そして顔つきも埋もれている。
それでもおれは風―桜色の風を抱き続ける。
(うっ……あっ……うっ……)
―あぁっ、あぁっ、あぁぁぁっ―
荒れる様に、乱れる様に渦巻く風を抱き、その中に突き立てていく中でおれの頭の中も薄らいでいく。
ただ相手を抱き、突き、達し、解き放つ事だけを考えながら。
そして、おれは自分の意識で感じる最後の「到達点」を迎えた。
(ううぅぅっ!)
―あぁぁぁぁんっ!―
その瞬間、おれの中で何かがはじけた。
そして桜色の風も弾けた。
弾けて空に舞う風に抱かれながら薄れていく。
おれの中のなにもかもが。
桜色の花びらに包まれながら消えていく。
―の全部が。
風と―が重なり合う中でただ感じる。
輝き。
―と風の中にあった「生命の輝き」。
今そこにあるのは一本の桜の木。
生命にあふれた息吹をそのまま形にした根と幹、枝。
そしてそれを彩る桜の花々。
その形はどこまでも美しく、輝きにあふれている。
いい。いい。いい。いい。
―はただその歓びだけを感じていた。
その歓びの中、―の中の輝きが渦巻くのを感じる。
(……)
―はその感覚にただ身を預け、輝きの渦に飲まれていく。
(……)
輝きの渦の中で―はさらに命の喜びを感じていた。
いい。いい。気持ちいい。
もっと、もっと輝きたい。
もっと、もっと感じたい。
そんな思念と共に光の渦は少しずつ塊へと変わっていく。
内側で光が渦巻く中で桜の木もまた桜の花を振るわせ、その青い幹や枝もぴくぴくと震える。
(……いい……いい……もっと……もっと……)
少しずつ意識が作られていく。
少しずつ思考が作られていく。
光の渦の中で―は形作られていく。
気持ちいい。
気持ちいい。
それがたまらなく気持ちいい。
もっと、もっと気持ちよくなりたい。
渦の中で―はさらにそう求めた。
桜の木はさらに大きく揺らぎ震える。
内側で満ちていく輝く生命の渦を精一杯受け止めようとするかのように。
(いい……いい……あぁ……あぁ……あぁぁ……)
生命の息吹と輝きの渦が重なり合い、形を作っていく。
桜色の風と青い息吹の中でまじりあった生命が彩られていく。
(あぁ……あぁ……あぁぁ……あぁぁぁ……)
より強く、より確かに意識が、形が浮かび上がっていく。
その度に―はますます高まっていくのを感じていた。
身を反らし、よじらせ、全身を広げながら。
身体があふれる。弾ける。
そう、飛び出したい。弾けたい。
もっと、もっとこの身体の中にある息吹、そして輝きを感じたい―!
(あぁぁぁぁぁぁぁーっ!)
そんな思いが重いきり突き抜けたと同時に、桜の木は爆ぜた。
桜の花びらと青い息吹が風に舞う中―「わたし」はあふれる生命の余韻に浸りながら立っていた。
「あぁ……はぁ……」
気持ちいい。
あらわになった裸の身体に吹く風がよりわたしの内側にあふれるものを火照らせる。
様々な形で感じ続けたその感覚。
様々な形で感じ続けたその歓び。
何事もなかったかの様にそこにあるわたしの身体の中にそれらは確かに感じられる。
そのそれなりにすらりとした両手足に。
そのそれなりに形のいい胸のふくらみを、それなりに形のいい腰やお尻に。
そして―わたしの中に咲く「花」に。
全ての中に満ち満ちている。
そう思うとわたしは笑みをこぼさずにはいられなかった。
暖かくまぶしい春の日差しが。
くすぐったいくらいに心地いい春の風が。
改めて生まれたままの―あるいは生まれ変わったばかりのようなわたしの身体いっぱいに満たされていく。
いつの間にかわたしの手は熱く火照り輝く中心―わたしの「花」に伸びようとしていた。
その時―。
「ひゃぁっ」
強い風が吹き、わたしの身体の周りを渦巻く。
素肌いっぱい、そして思い切り張りつめていたわたしの敏感になっている場所全てを吹き抜けたせいでわたしは―達してしまった。
突き抜けるような気持ちよさと共に身体が大きく震え、わたしの「花」から命の息吹のこもった蜜が思い切り吹き出しながら風の中に舞っていく。
―たのしかった。ありがとう―
そう言いながら風はわたしにそっと口づけをしたあと、桜の木をしばし吹き抜けてそのまま春の空に消えていった。
「……」
どこまでもいたずらで、そして心地よいものを残しながら通り抜けていった風をわたしはしばらく見送る。
この体験は夢か妄想かはわからない。
ただ、このまま「スイッチ」を切り、久しぶりに衣服の感触を素肌になじませるにはもう少し名残惜しい。
わたしは裸のままもう少し、もう少しだけその場に立っていた。
わたしは裸のままもう少し、もう少しだけ桜の木を愛でていた。
わたしは裸のままもう少し、もう少しだけ春の空気の中に漂っていた……。
[newpage]
新緑の季節。
風薫る空気と緑に照り返し鮮やかに輝かせる日差しがまぶしい。
わたしはそんな空気に導かれてやってきた。
花の季節が過ぎ、みずみずしく活き活きとした活力を感じる空気と光に包まれた緑がわたしの身体に降り注いでいる。
この気分を味わう為わたしはこの場所にやってきた。
花の季節には鮮やかなピンク色に彩られていた空間は今では鮮やかな緑の空間になっていた。
そうかどうかはわからないけどとりあえずここにいるのはわたし一人。
他の人が来た気配は―多分ないと思いたい。
そう思いながらわたしは緑に彩られたその場所を歩く。
も・ち・ろ・ん―真っ裸で。
歩いているだけで身体中に新緑の空気が満ちてくるって感じ。
身体中で呼吸しているって実感できるこの感じ。
全身が活き活きし過ぎているのを感じながら足取りも軽くなっていく。
活き活きと瑞々しい緑の空気をまとった新緑の風に身体を乗せて歩く。
うーん、身体中がみなぎってくる〜。
このみなぎりまくった気持ちをどう発散するか。
―と、そこでふと周りを見回す。
こんな事、この間もあった気がする。
こんな気分になって、そしてこれを思い切り発散していたら……。
でも季節は新緑。
今さら桜の花のシーズンでもないしまさか、ね。
そう思って顔を上げた時、そこには……。
―また来たんだ……ちょっと待ってたよ―
「は、ははは……」
人の姿をした緑の風が吹いていた。
了