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【ラブヒロ】夏が終わる

  サク、サク、と砂浜を踏む音。少しずつ近づく。

  覚醒しきらない意識の端で、その音を聞いている。

  閉じた[[rb:瞼 > まぶた]]の向こうはまだ暗い。感覚的に、朝の五時前くらい? ……眠い。

  今は砂浜にシートとタオルを引いて横になっている。

  頭の脇、しゃがむ気配があった。

  それから肩に、触れるか触れないかくらいの手が添えられた。

  「――参謀殿」

  [chapter:夏が終わる]

  その声に意識が深いところから引き上げられる。

  目をつぶったまま、大きく深く、呼吸した。

  「……起きられますか?」

  「……うん。まって」

  囁くほどの声で会話する。

  半身を起こす。やっぱりまだ眠い~……。

  「引っ張って~」

  それで甘えちゃう。

  声の相手――サダヨシさんは、伸ばした手をすぐ取ってくれた。

  「いきなり起き上がると危険ですから、ゆっくり」

  「うん」

  両手で掴まっても、サダヨシさんはびくともしない。ぐっと盛り上がる肩と腕の筋肉。すごい。

  立ち上がって――、体に重なっていたタオルがぱさりと落ちた。

  ……あれ、これユーハンさんが使ってたやつだ。

  拾い上げて見れば、向こうで寝息を立てている彼。その体には、小さい別のタオルがかかっているだけだ。近寄って、そっとかけてあげた。

  焚火は[[rb:熾火 > おきび]]になっている。それを挟んだ反対側でイサリビさんも寝ている。

  岩陰に用意したキャンプ。彼らを起こさないように、ゆっくり歩いて移動する。

  砂浜は意外とデコボコしていたり、物が落ちていたりするから、より気を付けて。

  その間、サダヨシさんはずっと手を握ってくれている。

  キャンプから離れて意識もしゃっきりしたところで、歩調を戻して距離を詰めた。

  「――サダヨシさん。わがまま言って、ごめんなさい」

  「いいえ」

  サダヨシさんはすぐ首を振って、振り返った。

  「こんな状況なのです。むしろもっと言っていいくらいでした」

  寝る直前にお願いしたこと。

  ――日の出を見たい、なんて。子供みたいなこと。

  カイブツを倒して帰る算段がついて。当然喜ばしいことだけど、それで訪れたこの生活の終わり。……そう思ったら、急に惜しくなったのだ。

  激しいバトルの後で夕飯を食べて(ビーチバレーもして)、みんなヘトヘトで。

  そんな中で焚火の番をすると言い出したのはサダヨシさん自身。「自分が一番体力があるでしょうから」と。

  でもそうすると、サダヨシさんほとんど寝られない。夜明け前に起こしてもらう約束をしてから、それに思い当たって慌てた。

  けど彼は「俺も見たかったですから」と、そういう言い方をしてくれる。

  「どうしました?」

  「こ、子供じゃないんだから、そんなにわがままなんて言わないんですー」

  負い目とかそういうのとは違う、でもいつも頼りっぱなしの自覚は確かにあって、言っちゃう。

  そうすれば返ってくるのは、年長者っぽい余裕のある笑みだ。

  「おや、そうですか? ここにいる間だったら、なんでも聞いてあげましたのに」

  「ムー……」

  魅力的すぎること言う~。

  そしてその言葉に、またこの生活の終わりを嫌でも意識して。

  「……今日で、帰れるんだね」

  「ええ。あまりに濃密な時間でした」

  「一年くらいいた気がする」

  「それは言い過ぎでは……でもないか」

  二人で笑って、ずっと手を繋いだままだったことに気づいて、自然と離す。

  

  「このあたりで」

  「うん。……眠くない?」

  「体力には自信がありますよ」

  砂浜に打ち上げられていた流木に腰を下ろす。

  迷いなくここまで向かってきたから、あらかじめ見当をつけてくれてたっぽい。……本当にすごいな、このヒト。

  並んで座る。肩が触れているけど、今はもうあんまり気にならない。

  サダヨシさんとの距離、すごく近くなった。それだけでもここに来てよかったなんて……みんなすごく心配してるだろうに、不謹慎?

  まだ暗い空と海を前にサダヨシさん、彼にしては珍しく上を向いてクンクンした。

  「夜明け前は、不思議なにおいがします」

  「そうなの?」

  「ええ、なにか胸がざわざわするのです」

  「嵐が来る前みたいな」

  「近いかもしれません。何かが変わる、始まるような……」

  「映画が始まる前の感じとか近いかも」

  「なるほど……映画館には、ほとんど行ったことがございませんが」

  夜明けを待つまでの当たり障りのない会話。

  ふと、二人して押し黙った。あたりが一段と暗くなった気がして。

  「……もう少しかな?」

  「……まもなくでしょうね」

  自然と声のトーンも下がる。

  いつの間にか、あんなにあった星は消え、冗談みたいな大きさの月も海の向こうへ沈んでいった。

  何かで聞いたことを思い出す。確か、夜明け前が一番暗い時間なのだと。

  闇が深くなって、波の音だけが聞こえている。今日は風が少し強いみたい。

  大切な言葉がかき消されてしまわないように、息をひそめて、そっと言った。

  「あのね……」

  こちらを見るサダヨシさん。見たと思う。暗くてよくわからない。

  それを示しているのは、かすかな光を反射する大きな瞳だけ。

  「……帰ってからも、また、会ってくれる?」

  「もっ、もちろんです。……そのつもり、でした」

  「映画も行く?」

  「行きたいです……!」

  また笑いあう。よく見えないけど、間違いない。

  「よかった」

  「はい」

  言ってから、正確じゃなかったと気付いて。

  言う。

  「サダヨシさんと仲良くなれて、よかった」

  「――――、」

  彼は何か言おうとしたと思う。

  でもその時。

  世界がさっと照らされた。

  真っ暗だった視界を、鋭い光がまっぷたつに断った。

  閉じた狭い部屋を一気に開け放ったみたいに。

  それで、そこに海と空があることを知る。

  音が聞こえそうなほどの勢いで、空が塗り替えられていく。

  宵と明けが上空で交じり合って、夜の気配を一気に押し出す。

  幾層もの雲が燃えるように輝いて世界が朱に染まった。

  そうして、海面が[[rb:金色 > こんじき]]に輝く。

  波立つ水面に複雑な反射光。あまりの眩しさに目の端がじわっと[[rb:滲 > にじ]]んで。

  思わず瞼を閉じてもそれは、心のどこか深いところを強く抉った。とても強く。

  その間も、風と波の音は絶えることがない。

  ざわざわと心をかき乱す、何かが変わる、あるいは始まる予感。

  それがこのムイラウカⅣにある無人島の、一日のはじまりだった。

  「…………すごい」

  「…………ええ」

  息を呑んでしばし。交わせる言葉それくらい。

  夜明けくらいに目を覚ますことはあったのに、こんなに圧倒されたのは初めてだ。

  隣のサダヨシさんが、はぁっ、とひときわ大きな息を吐きだした。

  「…………来て、よかった」

  その声は少し震えていて、思わず見れば、はっとサダヨシさんもこちらを見た。

  まったく意図せず漏れてしまった言葉だったのかもしれない。慌ててる。

  だから、先回りして言ってあげた。

  「不謹慎なんかじゃないよ」

  軍人だって、隊長だって。鍛えていたって、体力に自信があったって。

  そういうこと言っていいんだって。それはちゃんと、サダヨシさんの[[rb:言葉 > きもち]]なんだって。

  まっすぐその瞳を見る。それで確かに伝わったと思う。

  サダヨシさんは、うなずいてくれた。

  それから二人で、世界が徐々に柔らかな色に変わっていくまでそうしていた。

  嵐のように訪れたサバイバル生活は、これで終わりだ。

  だから、最後にお願いをする。

  「ね、もう一個だけ、わがままきいてくれる?」

  「――どうぞ。いくつでも」

  もうお約束みたいに、しょうがないな、という顔が答えてくれる。

  それで、両手を伸ばして大きな手を取った。反射的に力がこもったのもわかる。

  そうでなくても、軍人の彼が、こんな風に誰かに簡単に手を取らせるなんて普通はないってこともわかってる。

  だからやっぱり、まっすぐに言う。

  「サダヨシさんも、わがまま言って」

  「――――。」

  聞こえるのは、波の音だけ。

  彼は固まって、視線を外さないでいる。握る指に、力。

  「言って」

  ダメ押しのもう一言。それで彼は目を閉じた。

  少しずつ、ほんの少しずつだけど、その顔が近づいてくる。重いものを運んでるみたいなぎこちなさ。

  鼻先が触れるくらいになっても止まらなかった。そのままこちらの首筋に触れて、体を預けてきた。

  「…………実は……少しだけ、眠いのです」

  「うん」

  「このまま……五分ほど、目を瞑っていても――――いい、でしょう……か」

  「いいよ」

  五分だって十分だって、五十分だって、いい。

  ずっと。ずっと続いたっていい。

  でもあたりの空気は、太陽に照らされて既に暖かくなってきている。今日も暑くなりそうだ。いつまでもは、このままでいられない。

  ――でも、もうちょっとだけ、と。

  誰かもわからない相手に心の中だけでわがままを言って、こちらも目を閉じた。

  肌に、柔らかい獣毛とたっぷり湿気を含んだ風を感じながら。

  「――サダヨシさん」

  返事はない。

  本当に寝てしまったか、あるいは波の音にさらわれて届かなかったか。

  「あのね…………。サダヨシさんのこと……、」

  ――だよ、と。

  小さな告白は、やっぱり波の音にかき消された。

  そう思う。返事がなかったから。

  それでいいと思う。今は。

  そう思いながら、新しい一日のはじまりに、彼をそっと抱きしめる。

  ◆◆◆

  「っはぁー、パブラシアにすげえ怒られた!」

  部屋に入ってくるなり、イサリビさんがそんなことを言っている。

  いつの間にか通信が回復していたおかげで、みんなが助けに来てくれた。

  そして今は乗せてもらった船の医療室で、順番に簡易検査をしてもらっていたところ。ちなみに結果は、日焼けしたくらいですこぶる健康、だそうな。精密検査は戻ってからだけど。

  「えー、パブラシアさんて怒るの?」

  「おーもう、すげえ怒るぞ。オイラとかゴロウが酔っ払って飲み屋の椅子投げそうになったときとか」

  「それでむしろ今まで怒られなかったの……」

  「怒るっつかお説教? まったくアイツおとうさんかよ。パパラシアさんなんつってなダハハ!!」

  さすがイサリビさん、ブレない。で、続けて入ってくるのはユーハンさん。

  「あーひさびさに大目玉だなー……」

  こちらもキルシュちゃんや事務所にこってり絞られたらしい。いつもの“にぇへへ顔”に、さすがにタテ線が入っている。

  で、そんな二人がそっちは? と目線で問いかけてきたので、手にしていた端末をふりふりする。

  「社長がね……すっごく心配してくれてるんだけど、声のトーンずっと同じで、笑顔もずっと変わんないの。静止画かって思うくらい……」

  「こえー!!」

  そんなこんなで状況を共有しあって、ひとしきり笑い合う。帰ったらまたちゃんと謝らないとだ。

  だけど、そんな殊勝な気持ちになっている一方で思うところもあって。

  声を潜めてこそっとするポーズに、二人は顔を寄せてくれる。

  「あのさ、こんなこと言ったら怒られちゃうけど……。けっこう楽しかった、よね……今度はちゃんと計画して……また行きたい」

  そうしたら、ニヤッとしてくれる人生の先輩たち。

  「大将、ほんとしたたかだねえ。そういうとこ好きだぜ」

  「今度は調理器具もっと持ってくぜー。満漢全席でも作ってやるよー」

  こんなこと言えるのも同じ経験した者だけの特権だ。やっぱり嬉しい。

  そしてそこにやってくる我らが隊長さん。ユーハンさんが一番に声をかけた。

  「おつかれー、サダヨシも怒られたのかー?」

  「あ……お疲れ様です。いえ、叱責というか……山ほどの報告書の提出を命じられまして。叱責されるのはその後でしょう」

  すでに迷彩服に着替えているサダヨシさん。はあ、と珍しく大きく息を吐く。

  「しかしそのために書く報告書は本当にめんど……いえ徒労しか感じませんで」

  その様子にイサリビさんが吹き出して、

  「めんどくせーって言いかけたろ?」

  「まあ、ええ。そうとも言えます」

  「ようよう、ソレ、[[rb:ダレか > ・・・]]の口グセがうつっちまったんじゃねえのかい?」

  「そういう[[rb:ご指摘 > ツッコミ]]は受付けいたしません」

  イサリビさんのイジりに、サダヨシさんはぷいっとしてみせる。

  そして――吹き出す。みんなでまた笑った。

  「ね、ね、生還記念? に写真撮ろ!」

  「おー。島でも結構撮ってたけどなー、全員揃っては撮らなかったよなー?」

  「写真好きじゃねえやつもいるから、しょうがねえやな」

  そうして、四人で顔を寄せ合って撮った。いい笑顔!

  本当に頼りになるヒーローのみんな。大切な思い出がまたできちゃった。

  「あとでシェアするね。――ね、ちゃんと頑張ったって証拠に、この写真ほかの人に見せたり送ったりしてもいい?」

  「もちろんだぜー」

  「大将の写真もらえば、機嫌なおすやつもいるだろうしな!」

  サダヨシさんもうなずいてる。けど、さすがにその表情には少し疲れが見える。

  「サダヨシー、ほとんど寝てないだろー。少し寝たほうがいいんじゃないかー?」

  「ああ……ええ、そうさせていただこうかと」

  「――よっしゃ。じゃあオイラはもうちっと叱られに行きますかねっと。アイツらにゃ心配かけちまったしな」

  それで、ぱちんと膝を叩いて立ち上がるイサリビさん。

  でも部屋を出ていく直前、振り向いて人差し指をびっと立てた。

  「サダヨシ! 空港でちっとダベるくらいは時間あんだろ? 勝手に帰ったりすんなよ?」

  「しません。ちゃんとご挨拶します」

  そんならいいけどよっ、と出ていくイサリビさん。頼もしいムードメーカー。

  「イサリビは色んなこと、よく見てるよなー」

  「ユーハンさんもね」

  「おりょ? そーかなー? にぇへへ。空港着いたら、お土産買って帰ろうぜー」

  で、ぽんぽんと肩を叩いてくれて、ユーハンさんも退出した。誰にも分け隔てないあの笑顔で。

  こちらも、と端末を手に踏み出しかけて、ふと振り返れば――ベッドに腰かけたサダヨシさんと目が合った。

  一瞬躊躇する様子を見せてから、彼は自身の隣を示した。

  「ここに、座っていただけませんか。少しだけ……」

  「え? うん」

  少しじゃなくてもいいのに。

  とんっと座って、横顔を見て、わざと黙って待っている。

  サダヨシさんが意を決したように口を開くまで。

  「俺の……わがまま、きいてもらえませんか」

  「いいよ」

  「……内容を聞いてから、ご判断するべきです」

  「サダヨシさんのことならなんでもきく」

  ――その肩から、ふっと力が抜けたのが見えた。

  「撮って、欲しいです」

  「え?」

  「写真。ふたりで」

  「あ、うん」

  そんなの、ぜんぜん。

  すぐ端末を構えてインカメラをこちらに向けて、

  「もっと寄って」

  「こうですか」

  「そう」

  ほとんど顔がくっつくくらいにする。

  みんなで撮った時より意識して近づいちゃってる。ほっぺと首回り、モフモフ。

  画面の中で目が合うけど、どちらも何も言わない。

  

  そうして指がシャッターボタンを押す瞬間。

  彼が首をひねる。頬に温かいものが触れる。

  触れるというか、結構強くぐっと押し当てるくらい。

  もちろん画面に映っているから、そんなの一部始終が見えていて。

  首をひねった時点で、何をしようとしてるかなんてすぐわかった。

  それで思わず指に力が入って長押ししちゃった。ズシャシャシャと連続で撮影音。

  「…………もー、連写しちゃったよ」

  照れ隠しも含めてわざと責めるように言う。

  でもそれ以上、言葉を続けられなかった。

  目の前にあるその顔が、ぐっと口を結んでいたから。

  真っ赤になってる。……そりゃ、そんなことするの、キャラじゃないし。

  バレンタインの時は向こうからしてきたりもしたけど、その照れた顔とも違う。

  そんな表情、見たことない。――まるで、今にも泣き出しそうな。

  彼がうつむいた。

  何かに耐えるみたいに、さらに表情を強張らせる。肩がほんのすこし震えてる。

  そして。

  「それ…………誰にも、見せないで」

  口にしたのは、そんな、子供みたいなこと。

  なんでもない小さなわがまま。大人になったらフツウ言わないような。

  でもそれで、わかる。

  たぶんそんなことを、彼は一度も言ったことがなくて。

  ……もしかしたら、思ったことすら、なかったのかもしれない。

  だから。

  「わかった」

  だから、すぐにうなずいた。

  彼が、いつだってそうしてくれるみたいに。

  こちらを見る瞳は、少しだけ潤んでいる。

  「ほかの、誰にも……」

  「誰にも見せない」

  「約束を」

  「する」

  「絶対ですか」

  「絶対」

  うなずく。うなずき返す。うなずき合う。何度も。

  そうやって、交わしたばかりの、ほんの小さな約束の手ざわりを確かめ合う。

  脆く儚いものが、他のなにものにも、決して汚されたりかき消されたりしませんように、と。

  もっと距離近く……けど、誰かが来る気配があって立ち上がっていた。

  入ってきたのは医療スタッフのヒト。棚から何かを取って、またすぐ出ていく。

  振り返れば、サダヨシさんはすでにいつもの彼の顔になっていた。

  でも横を向いてはいる。今は、照れてるね。

  「……写真、あとで、俺にも送ってください」

  「うん。送る」

  「オリエントシティに戻ったら、連絡をします」

  「絶対ね」

  絶対です、と答えてくれる彼に小さく手を振って、部屋を後にした。

  甲板に出て、連絡しなきゃいけない人たちの顔を思い浮かべながら、端末を手に――でも今だけ。

  ちょっとだけ、後回しにさせてとポケットにしまった。

  手すりにもたれかかる。思い浮かぶのは島であった色々なこと。

  出会ったヒトたち。乗り越えたこと。理解したり、できなかったりしたこと。

  それからあの朝焼け。いまもずっと、心に焼き付いたままだ。

  振り返ってもあの無人島はもう、影も形も見えないけど。

  それらは心の中に、確かにある。

  しばらくそうしていてから。

  端末を操作して耳に当てる。聞きなれた電子音。

  山積みになっているであろう仕事のことを考える。

  うんざりするほど忙しくて厄介で、充実した日常が戻ってくる。

  潮風を受けながら前を向く。

  そうして、ムイラウカⅣの夏が終わる。

  ◆夏が終わる

  ――完。

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