うだるような暑さのなか、俺は大学生の特権、人生の夏休みを謳歌していた。
エアコンをがんがん効かせ、ぐーたらして過ごしていると、インターホンが鳴った。
こんなときに誰だぁ、と重い体を持ち上げ玄関に向かう。扉を開ける。
「お兄ちゃん、ひさしぶり!」
「うぐっ」
扉の開閉とともに飛び込んできた弾丸のような少年の頭が、俺めがけて突撃する。
このクソガキはケン、いわゆる親戚の子、ってやつだ。正月や盆に会うくらいなのに、異常に俺に懐いている。まあ、まんざらでもないが。
そういえば二泊三日で泊まりに来る、と連絡を受けていたのを忘れていた。
ケンは重たそうなボストンバッグを無造作に置く。来客用のこじゃれたものなんて用意していないから、常備してある適当なスナック菓子を出してやろうと、ケンが手を洗っている間に準備を進める。
「飲み物はオレンジジュースでいいか?」
「うん、ありがとお兄ちゃん」
ごちゃごちゃとしている、漫画とかが散乱している床をぐいっと足でどかしスペースを作ってやる。ケンは出されたジュースを一気飲みして、はあ、いきかえる~なんて言っている。かなり暑かったからな。
ひととおり休憩がおわると、さっそくケンはゲーム機を取り出し、ね、勝負しよ? とこっちを誘ってきた。
「ははん、今年の正月にコテンパンにされて半泣きになってたやつはどこのどいつだ~?」
「へへん、あれからネット見たり友達に聞いたりして強くなったんだからね!」
オンライン対戦などしていたら、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
「んー、夕飯も食ったし、早く風呂入ってもう一勝負やるか」
「やった! あ、でも……」
めずらしくもじもじしているケン。どうしたんだ、と優しく聞いてやる。
「その、ぼくひとりで入るの怖くて……いつも一緒にお風呂に入ってるコがいるの」
なんだ、そんなことか。まだまだガキだなあ。なんだろう、ぬいぐるみの類か……?
ケンがボストンバッグをごそごそと探り、中から取り出してきたのは、ぺしゃんこに空気の抜かれた黒いビニールの何かだった。
「なんだこれ、シャチフロート……?」
「そうだよ」
広げてみると、結構な大きさだ。普通の、プールとか海とかで使うようなサイズだが、こうやって室内で見るとかなりでかい。これ、俺のボロアパートの狭い浴室に入らんぞ。うーむ。物は試しか、なんとかしてみよう。
すでにお風呂の準備はできているので、俺は先に入ってシャチフロートを膨らませることにする。ちゃんとケンが空気入れを持ってきていたので、そこまで苦労はしないだろう。
と思っていたが……。
おかしい。空気を入れても入れても一向に大きくなる気配がない。あっ。混み入って張り付いているシャチフロートの表面同士を引きはがすと、つなぎ目が破れているのが見えた。なんだ、壊れているじゃないか。
「おい、ケン、このシャチフロート壊れて、る……?」
ぐわん、と全身を揺さぶるような、めまいに似た何かが俺を襲った。
左腕がとたんに重くなり、その奇妙な感覚がより一層加速する。目を向けるのが怖かった。凍り付いたようにこわばった首を動かす。そこに広がっていた光景は、シャチフロートと俺の境目が、熱で溶けてしまっているかのように、混じり合っていた。
背中を、水滴になったいやな冷たい汗が伝う。額から汗が湧きだし、それがだらだたと流れていく。目の前の光景が信じられず、戸惑いが脳裏で円を描く。
「あっ、お兄ちゃん」
「け、ケン、お前のシャチフロート、なんか変だぞ!」
ケンの前でこんな醜態をさらしている恥じらいはどうでもいい。今は緊急事態だ。
「いい感じだね……うんうん、うまくいってる」
「……どういうことだ?」
「じゃーん、これみてよ、この前物置で見つけたんだ。『魔法の本』なんだって」
胸元で大事そうに抱えられた本は、表紙は古めかしい紙質で、植物のつたのような装飾で覆われており、怪しげな雰囲気を醸し出していた。
「も、元に戻せ! さすがに俺も怒るぞ!」
「ええ? お兄ちゃんはもうぼくの魔法のなかにいるんだから」
にたにた、おかしくて仕方がない、といった様子でケンは笑みを隠せないようだ。
そんなこんなの間に、くしゃくしゃのシャチフロートは不思議に体の中に溶け込んでいしまった。変化は止まったのか……? 正直これからどうなるのかとんと見当がつかない。
と、変化は一旦ストップして、ケンの持つ魔法の本とやらを奪おうと一歩踏み出したときだった。
着地した足裏の感覚が、いつもと違っていて困惑する。なんだ、ぽよん、という感じだったが……。
「おっ、お兄ちゃんのヘンシンが始まったねえ!」
「はっ!?」
膨らんでいた。足が。まるで空気を吹き込まれた風船のように、俺のけもくじゃらな足がむくむくと膨らんでいく。そして肌が引っ張られると、色が黒く変色し、まるでシャチフロートそのものの色になった。ご丁寧に向こうの景色が少し透けて見えた。
お、おい! このまま俺はあのシャチフロートみたいな、風船人間になっちまうのか!?
そんな体の膨張は、あちこちで同時多発的に起こる。腹が何倍にも膨らみ、俺はバランスを失って浴室で後ろ向きに倒れた。がつん、とその後やって来るであろう痛みを覚悟したが、不思議とそんなものはなかった。すっかりあちこち風船じみた構造になったおかげのようだ。
むくむくと膨れた足が急に熱くなったかと思うと、プラスチックが熱で成形されるように、ぐにゃりと溶け合って一本の棒のようになった。棒の先端からにょきっとヒレができて、腕がどんどん縮み、胸ビレができる。
もぞもぞとした違和感がぐっと頭全体を包み込み、ぐぐっと顔が前に引き伸ばされて、細長いくちばしのような、シャチやイルカ特有の口元になる。
ん、んぐっ! 口が完全に閉じて、ただのモノになってしまったからか、体も動かせないし、声もでない。くそ、ケンのやつ好き勝手やりやがって!
「ふふ……お兄ちゃん、すっごくすてきだよ……」
ケンがするすると服を脱ぎ、下着を投げ捨てる。あらわになったつるぺたの体は、きめ細やかな白い若々しい肌に覆われており、股間もまだ毛が生えていない。
微笑みながら、ケンは俺の体を、俺のシャチフロートそのもののビニールの表面を、慈しむように細い指で撫でた。その手つきはなんとも卑猥で、淫乱な光を宿したケンの瞳は、なんだか見ていてケダモノのようだと思った。性というものを早くに知ってしまい、その気持ちよさの虜になっている、というような……。
見つめられてぞわりとする。顔のあたりを舐められて、ふと立ち上る乾いた唾液の匂いや、蒸発するときの冷え込み、そしてぬらりとした粘ついた唾液そのもの、柔らかい舌の敏感さに酔う。
狭い浴槽に、ケンと俺の体が押し込められ、ケンに全身を深く抱きしめられていると、怒りや戸惑いなんて忘れてしまって、少し熱い体温をじっくりと味わっていた。
なんか、もうどうでもいいのかもしれない。そんな投げやりなことも考えてしまう。
このままだとシャチフロート的な(?)思考回路に乗っ取られてしまう、と焦ったころに、ケンはおもむろに湯舟から出た。体を洗うらしい。
動けない体で、ほとんど挟まったような状態で、俺は湯舟の上で固定されていた。
そのときだった。
ん!? またなんかぞわってした感じが。ビニールの肌が擦れあい、縮み伸びてを繰り返し始めた。突然の変化に、これ以上なにかあるのかと困惑する。助けを求める感じで、俺はケンの方に意識を集中させた。気づけ! と藁にもすがる思いで念を送る。
その甲斐あってか、ぐいん、と首が動いた。よし、なぜだかわからんが全身の状態を確認できる。すると、俺の眼に飛び込んできたのは、シャチフロートそのものだった体形が、ごきごきと膨らみを移動させて、だいぶ人間に近い体形に、いうならばシャチ人間、といった感じに近づいている光景だった。
も、もしや元に戻れる?
ただの飾りだった口元も、切れ込みが入り喉が開通した。
「あ、あー……」
よし、声も出る!
「……よくも俺の体で好き勝手してくれたな、ケン」
ケンはそんな俺の声に反応したようで、シャンプーを急いで洗い流し、こっちを見た。
「おっ、お兄ちゃん、だいぶなじんできたね」
「え……? 元に戻れるんじゃないのか……?」
「そんなすぐに戻したら面白くないじゃん。もっとあ・そ・ぼ?」
風呂から出て、俺はもう観念して、ケンの髪を乾かしたり、体を拭いてやることに専念した。どうやら魔法なんて空想の産物じみたものが、確かに存在しているらしい。
パジャマに着替えると(もちろん俺はシャチフロート人間のまま、つまり素っ裸だ)、ケンは俺ともっと遊びたいのだと上目遣いでねだって来た。そんなのどこで覚えてきたんだ。
いいぞ、と答えてやると、じゃあまずはお馬さんごっこ! と元気よく答えた。
はあ、仕方なしに四つん這いになる。ん、けっこうぶくぶく太った体形のせいか、あちこち締め付けられる……。
「よーし、お兄ちゃん、しゅっぱーつ!」
こんなののどこが楽しいんだか。でもまあ、ケンは満足そうに笑っているし、別にいいか。
次にご所望だったのはトランポリン。俺の腹の上で飛び跳ねたいらしい。
人間だと内臓がやられて大ダメージだが、シャチフロートになっているせいで、中には空気しか詰まっていない。ていうか骨とかどこに行ったんだろう……。
「ぐっ、うぐっ」
「じゃーんぷ、じゃーんぷ」
弾けんばかりの笑顔が見れたし、まあ、俺もまんざらでもない。
「わっ!」
そのとき、ケンは空中でバランスを崩した。寝っ転がって手足をぐでん、と伸ばしているので反応しても間に合わない。危ない! そう口に出そうとしたのに、俺の口から飛び出したのは、ああああんっ♡ という、とてもケンには聞かせられないような汚らしい喘ぎ声だった。
「お、お兄ちゃん……?」
「んあ、あ、あう、……う、うん、大丈夫だ。ケンは怪我ないか?」
どうやら、尻尾(というか尾ビレ)の付け根のスリット部分に、ケンが着地し、指がスリット内部にぶっ刺されてしまったらしい。性感帯とかあるのかよ……、そりゃ、俺も混じってるからか。
というか今、ものすごく嫌な予感がする。股間が重い。ぐいん、とヤツが持ち上がった感覚がある。俺も男だ。この感覚を間違うはずがない。
「あれ……? お兄ちゃん、これ、形がヘンだけど、おちんちん、じゃない?」
ケンはうれしそうににちゃあ、と悪魔のように微笑んだ。
「ぼく知ってるよ。学校で勉強したし、ぼくもちんちんいじってたらすっごく気持ちよくってせーし出しちゃうし。ふうん、お兄ちゃん、今ならどんなせーしが出るのかなあ?」
「や、やめろっ!」
「やーだね、はい、動くな!」
ケンがそう言うと、急に体に力が入らなくなってしまった。
「な、なんでだ!?」
「ふふ、魔法だよ、お兄ちゃん」
く、くそ、こんなこともできるのか! 全身に力が入らない。手足やシャチのあの尾ビレや、頭を持ち上げられない。ぴんと立ち上がったチンコを、ひたすらに貪られる。
ご丁寧に、シャチ型になった真っ赤なケモチンは、表面のビニールが亀頭のように敏感で、握られるだけで射精してしまいそうだ。
んあ、あ、ああああっ! そんな喘ぎ声をあげながら、行き場のない快感を逃がすために俺の体は電気を流されているかのように痙攣し、なんどもなんども体を床に打ち付ける。
体の自由を奪われて、何歳も年下の少年に精を貪り取られているという状態に、俺はどうしてか興奮してしまう。
ばちばちとした快感が、体中を駆け巡り、俺をどんどん馬鹿に、脳みそを溶かしていく。
「あ、あっ、ケン、やめろ、やめてくれっ、んあ。で、出るっ!」
ばちん、一段と大きな波が、俺を握りつぶすように襲った。
びゅく、びゅる、びゅるるる、びゅーーーーっ!
それはまるで花火のようで、祝砲のようで、とにかく、お祝いのようなすばらしい射精だった。噴火の勢いは止まらず、俺は一旦天井に張り付き、ぼたぼたと落ちてくる粘液を、全身に浴びていた。
あ、ああ……。体の全部を精液に変換して、感情のすべてを吐き出したかのようだった。
「ん、んんーっ、なにこれ、お兄ちゃんのせーし、すっごい、甘い!」
「へ?」
「んん、ぼくもっと欲しい!」
「あ、ちょ、け、ケン! ちょっと休憩ッ」
「いただきまーす!」
ぱく、と半萎えのシャチチンコが咥えられた。しかもケンはなんとか口の中に全部収めようと、むりやりぎゅっとチンコを握りつぶすようにして空気を追い出し、小さくしてから喉奥までぶっ刺していた。そのせいでケンの喉マン全部にぴったりと俺のチンコが張り付き、ほんもののセックスのような快感が、さっき射精したばかりの俺に降りかかる。
「ちょ、ま、あ、まだイクっ!」
「んんんー!」
それから何回やっただろう。最後には、いちいち射精させるのが面倒だから、と言ってケンは俺に常に射精するように魔法をかけた。当然のごとく、俺は気持ちよさに内側から食いつくされてしまい、気を失った。
ん……。
あれからどれくらい時間が経ったのだろう。
よいこら……あれ?
起き上がろうとしても体が動かない。足の感覚が、ない。
まじか、これ、またシャチフロートになってる? 辺りを見渡せないせいで、情報量が少なすぎる。天井に良く見知った電灯があるところを見ると、俺の部屋の中であることは間違いなさそうだが。
「おっ、お兄ちゃん起きた? よかった、もう目覚めないかもって心配してたんだ」
ケン! これもまたお前の魔法とやらか?
「へへ、まあ、お兄ちゃんが何考えてるのかよくわかんないけど。どうしてまたシャチフロートに戻っちゃったのか、を気にしてるのかな? ふふ。お兄ちゃんはねえ、昨日、人間としての成分をぜーんぶせーしにして出しちゃったんだよ」
どういうことだ! 俺はせめてもの抵抗として、眼光鋭くケンを睨みつける。
「だから……、戻るには人間成分を入れ直さないとね、これで」
パジャマを脱ぎ捨て、あらわになった股間にそびえたつ、まだまだ幼さの残るケンのチンコ。お、おい、まさか……。
「大丈夫だよ。昨日の夜、お兄ちゃんが気を失ってから、じーっくり魔法をかけたからね。ぼくのちんちんは、ふつうの人の何倍何十倍もびゅーびゅーできるようにしたから、さ?」
や、やめろっ! 俺たち男同士、いや、「そーゆーコト」が行われていることは知ってるけど心の準備が!
「ほら、お兄ちゃんびくってしたね、ふふ、お兄ちゃんのあそこ、もうなかとろっとろだよ? ぼくのちんちん欲しがっちゃってぇ」
スリットが開かれ、中に詰まっていた熱がさっと逃げていく。外気に触れて、本来体内に収納されているはずのあれこれが、直に刺激される。
「えーっと、こっちがおしりの穴かな?」
うん、んあっ!
突如俺のアナルに侵攻してきたケンの指を、俺の体は異物と認識し、ぎゅっと締め付け追い出そうとする。
「うわーっ、すっごいぎゅってなってるよ? じゃ、おじゃましまーす」
ちゅぽん、とケンは指を引き抜き、俺はまたよがる。これ、人間だったら喘ぎまくってる。頭がおかしくなって、めちゃくちゃに犯される……!
ケンはそんな俺をよそに、床に押し倒すようにして股間にまたがった。シャチフロート人間ではないからか、勃起する感覚はない。ただ空気穴のようになったスリットやアナルが残っているだけなのだろう。
そして、じゅる、じゅぽん、にゅぷ……、と、ケンの生暖かいそれが、ゆっくりゆっくりと、注射針のように差し込まれた。
ん、あ、んあっ。ずっと子供の、年下のやつにこうやって主導権握られて、犯されてるッ!
「んあぁ……、お兄ちゃんのなか、すごいね。風船みたいな感じだからなのかな? すっごいぼくのおちんちんをぎゅーって抱きしめてくれて、すっごくきもちいいな」
よいしょっと、動くね。そう優しく呟くと、ケンは腰を振り始めた。
ずぷずぷ、と根元まで差し込まれて、ぐちゃぐちゃに開通される俺の中身がかき分けられて、脳のずっと真ん中の大事なところを、直接ぐちょぐちょとかき混ぜられているようだった。そしてにゅぷん、と引き抜かれると、その快楽を逃したくないからと、すてきなドラッグにしがみつくように、俺はケンのチンコを求めた。
「あうっ、もう、昨日からがまんしてるからっ! ぼ、ぼく、しゃせーしちゃう!」
ケン、ケン、ケンっ! 出してくれっ、ああ、うっ!
元に戻るとかはこの瞬間はもうどうでもよくて、ただただケンの精液が欲しかった。
びゅる、びゅるるる、びゅ、びゅーーーーーっ!
とても人間とは思えないほどの射精量と射精圧だった。蛇口を全開にしたホースからの水かと錯覚した。びちゃびちゃと、粘性たっぷりのねとねとの体液が、俺の体の中の空洞になみなみと注がれていくのを、じんわりと脳の片隅で感じ取っていた。
「あれ……? 出したのにまだ人間にぜんぜん戻らないねえ……。うん、やっぱり足りないのかな? ふふ、ぼくはまだまだ出せるからね」
なっ! こいつ……! だが俺は体を動かせないことをいいことに、終わりどころを知らない気持ちよさの連鎖の中に飛び込んでいった。
結局、三日三晩、というレベルでヤりまくったおかげで、俺は元の人間の姿に戻ることができた。
「ね、お兄ちゃん……、いつでもぼくの魔法が欲しくなったら言ってね」
そんな呪いの言葉みたいなのを残して、ケンは親元に帰っていった。
しばらくして、一人でさみしくシコっていると、ふと、というよりあの強烈な快楽を忘れられないはずがない。俺は、俺はそんな変な趣味はなかったはずだ。自分の性癖が歪みに歪んでしまったことに内心苦笑しながら、ケンの母親に電話をかけていた。
「次の連休、久しぶりにそっちに行ってもいいですか」