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今年の夏は史上最高に暑い。大人達は汗だくで死にそうになりながら働いている。夏休みの子ども達は、クーラーの効いた部屋で気ままに遊んでいる。
中学生のジュリとマリカも、涼しい部屋で、楽しい夏休みを過ごしていた。
「ねぇ、これ見て。コナツちゃん、めちゃバズってるぅ」
マリカはジュリに[[rb:Kick > キック]]-[[rb:Talk > トーク]]の画面を見せる。ピーチパラソルの下で、サングラスをかけたコナツがマンゴージュースを飲む動画が、5000ハートを超えていた。
「ええ? 何で、こんな動画でバズってんの?」
「コナツって、ちょっと大人っぽいじゃんかぁ。そんで、ヘソ出しシャツとか、わきとか見せて、男のフォロワー増やしてるみたいよぉ」
「うわっ、やりよるな」
2人とも[[rb:Kick > キック]]-[[rb:Talk > トーク]]をしているが、バズっても精々300ハートだった。金持ちの性悪なコナツに負けているのが悔しかった。
「そんで、あたし考えたのぉ。こっちも男のフォロワー増やすために、ポケモンヲタクになろうって」
「ポケヲタ? うちも弟の影響で、少しはポケモンに詳しいけど」
「うん、知ってる。だから、ジュリの力借りようと思ってぇ。ポケモンシール集めてるよねぇ?」
「あー。弟がダブったのをもらってるよ」
ジュリはドロップの缶を開けて、ポケモンシールの束を取り出した。それらはポケモンパンのおまけである。
「これをほっぺたに貼って、ポケモン好きをアピールしちゃおってワケ」
「そんなんでフォロワー増えるかな?」
「やってみなわからんて。それじゃ、あたしはウェーニバルにするわ」
「うーん。じゃあ、ジュカインにしよ」
2人は頬にポケモンシールを貼り、ピースサインのツーショット写真を撮った。マリカは#ポケモン女子や#ポケモン好きとつながりたいなどのハッシュタグをつけて、その写真を投稿する。
「次は2人でポケモンのアニメの曲歌う動画撮ろうよぉ」
「ちょっと、マリカ! その顔どうしたの?」
「えっ? クワッ?」
マリカの口周りが黄色くなって前に伸びて、鳥の口ばしのように変わる。彼女のザラついた声も少し甲高くなった。
ジュリは首が長くなり、緑の毛が生えだす。目の下に赤いラインが走り、瞳が細長く、白い部分が黄色くなった。もう、人ではなく、爬虫類の目だ。
「これ、ヤバくない? クワァ!」
マリカの手に青い羽毛が生え、スマホが持てなくなってしまう。両肩に水色の肩パッドのようなものが生える。顔から胸元は白鳥のように綺麗な白い羽毛が生えそろっていく。
「もしかして、ポケモンになってる!?」
ジュリの顔は丸みを帯びて、頭部に2つのでっぱりが生じる。両手の指は3本になり、緑色の毛が苔のようにびっしり生えた。両手首の辺りからは2つの突起が出てくる。彼女のクリアな声が少し低くなっていた。
「お尻が痛い……」
マリカの尻が大きくなり、チノパンを突き破って青い羽毛が飛び出す。そこからクジャクのような尾羽が広がっていく。両脚は人の時より細くなり、靴下の足先が破れてオレンジ色の指が出てきた。
ジュリのお腹が少しふくれて、両脚が短く太くなる。背中からは丸い黄色いタネが生えて、服を破っていく。足の指は3つになり、緑色の爪が生えてきた。
「わかった! うちはジュカイン、マリカはウェーニバルになってる!」
「わかってもさぁ、これどうすんのよぉ。クワックワァ!」
マリカの髪の量が増えて、ウェーブを描いて伸びていく。これで、彼女はウェーニバルと化したが、目と口ばしの上の毛がオレンジではなく人間時と同じ茶色だった。
ジュリの方もスカートをめくって、木のように葉が生い茂った尻尾が飛び出した。これで、ジュリもジュカインと化したが、黒いショートヘアーと左目の下のほくろが、人のなごりである。
「シールを貼って変身したから、シールがはがれたら人間に戻れるよね?」
「わからん。うーん。あっ、そうだ! せっかくだから動画撮ろ!」
「えー? まだバズり狙ってるの?」
ウェーニバル化マリカは、ジュカイン化ジュリに自分のスマホを操作してもらい、動画を撮影した。彼女は破れた服を脱いで全裸になる。両手と尾羽を広げ、右足と左足をクロスさせて、甲高く鳴いた。
「クワクワクワワァワー!」
動画を撮り終わると、[[rb:Kick > キック]]-[[rb:Talk > トーク]]にUPする。BGMに「マツケンサンバⅡ」を選び、#ウェーニバルや#リオのカーニバルなどのハッシュタグを盛る。動画のタイトルはウェーニバルサンバだ。
「これで万バズっしょ」
「どうかなぁ?」
すると、投稿してから数分で通知が鳴りやまなくなり、10分後に1万ハートに到達した。
<本物みたい!>
<かわいい♥>
<一緒におどりたい>
次々とコメントとフォロワーは増える。ウェーニバルは万バズ歓喜の舞いで、タップダンスを始めた。
「やったぁ! これで、あたしは人気者だわぁ」
「ううう。うちも何か撮らないと。そうだ!」
ジュリは台所からつまようじを取ってくる。彼女はつまようじをくわえ、腕を組んで目を細める。
「ヤンキーっぽくなってる?」
「いい感じだよぉ」
ジュリはスマホスタンドで、ツッパリを意識した自分を録画した。BGMに「男の勲章」を選び、#ジュカインや#ツッパリや#今日から俺はなどのハッシュタグを盛る。動画のタイトルはツッパリ・ジュカイン・ロッケンロールだ。
「これで、うちもバズるよ」
「1万はいかないでしょ」
ジュリの動画の伸びは速く、投稿から5分後に1万ハート、10分後に1.5万ハートに到達した。
<ツッパリジュカイン、カッコいい!>
<彼氏にしたい!>
<めちゃ強そう>
ジュリにハートや再生数で負けたマリカは、地団太を踏んでクワクワ鳴く。
「よぉーし! じゃ、瓦割りする動画撮るぅ!」
「瓦なんかうちの家にないよ」
「そんじゃ、この家の車をキックして横転させるぅ!」
「それはやめて!」
「うるさいなぁ、テレビが全く聞こえ、えっ?」
ジュリの弟のユウキがドアを開けると、ウェーニバルとジュカインが視界に入った。彼は状況が飲み込めず、頭の中が真っ白になった。
「メガドレイン!」
ジュリは弟の体力を吸い取る。弟はうつぶせになって倒れた。彼女は意地悪な笑みを見せる。
「今からユウキを可愛いポケモンに変えて、どちらがバズる動画撮るか、勝負しようぜ?」
「いいねいいねぇ。どのポケモンにするぅ?」
2人はシールの束から、1番可愛いテールナーを選んだ。ジュリはユウキの首にテールナーのシールを貼る。
シールを貼った途端、ユウキの首まわりには白いふわっとした毛が生える。鼻が伸びて、オレンジ色の犬の鼻に変わる。耳が縦に伸びて、オレンジ色の炎のような耳毛が飛び出した。目はつり上がり、オレンジの瞳になる。
「めちゃ熱いよぉ」
彼の体は燃え上がり、小さくなっていく。両脚は黒い毛に覆われる。腰から下が黄色いスカートのように広がる。尻からは太くて丸い尻尾が飛び出した。両手は人間時より華奢になって、白い毛が生える。
こんがりキツネ色のテールナーと化したユウキだが、黒のスポーツ刈り頭は人間時と同じだ。
「どうなってんだよテナァ」
ユウキはぶかぶかになった服から顔を出して、か細い声を上げる。
「可愛くなったねぇ。おめかししよっか?」
「やだよ! オレを元に戻せテナァ!」
「アクアジェット!」
ウェーニバルがテールナーの腹に突っ込んだ。テールナーはひざをついて、涙を浮かべる。こうかはばつぐんだ!
「チクショー。姉ちゃんは燃やせるのに、ウェーニバルはズルい!」
「ごめんねぇー。ジュリ、先に動画撮っていいよぉ」
「ありがとう! それじゃ、最強のアイドルになってもらうね」
「ア、 アイドル?」
ジュリは弟の頭にリボンをつけ、着せ替え人形のピンクの服に着替えさせた。さらに昔ハマっていたプ〇キュアの魔法のステッキを尻尾に突き刺した。
「うん、完璧! テナテナって泣きながら、両手でハートマーク作ってくれる?」
「テナテナァ……」
ユウキは顔を真っ赤にしながら、姉の指示通りのポーズを取る。ジュリはBGMにY◎ASOBIの「アイドル」を選び、タイトルをさいきょうアイドルポケモン・テールナーにした。
「今度はあたしの番ね」
マリカはユウキにリボンだけつけて、一緒に社交ダンスを踊る。
「テールナー、あたしを見つめてぇ」
「う、うん」
ユウキはウェーニバルの澄み切った青い瞳にドキッとする。
「あー、やっぱ、こっちがいいや!」
「うわっ!」
マリカはユウキの体を持ち上げて、お姫様抱っこをした。ユウキの心臓は早鐘のように鳴り響く。
マリカはBGMに「美女と野獣」を選び、動画のタイトルを「ビューティ&キュート」にした。
「さぁ、どっちがバズるかなぁ」
「こっちの動画の方が可愛いんだから」
どちらの動画も恐ろしい勢いでハートがつく。繰り返し流れる自分の姿を見て、ユウキは恥ずかしさのあまりに目をおおった。
<かわいすぎる!>
<テールナーたんhshshs>
<この着ぐるみほしい!>
「何か、あたしらの動画の伸び早くない?」
「やっぱテールナー人気の高さよ」
10分後には、両方とも10万ハートに到達し、互角の勝負になってきた。しかし、2人はバズり勝負に飽きて、赤面のテールナーをしげしげと見つめる。
「ユウキ君、とっても可愛いねぇ」
「うん。もう、ずっとこのままでいいよ」
「やだい! オレはリザードンじゃなくって、リザードンやバク」
「オレじゃなくて、私と言いなさい」
ジュリがユウキの耳元で低音イケボささやきをする。ユウキは目をグルグル回し、声を高くして喋った。
「私はテールナーちゃんテナァ!」
「よーく言えました!」
「あっ! 今の撮り損ねたぁ!」
ウェーニバルとジュカインはテールナーをひたすら可愛がった。最初は反抗していたテールナーだが、次第に甘えん坊にあり、ジュカインの葉っぱの尻尾を噛んだり、ウェーニバルに抱きついたりするようになった。
夕方頃にはシールがはがれて、3人は元に戻れた。3人は後日、ポケモンシールを貼って遊ぶことを約束した。
***
数日後、ジュリとマリカが大量のポケモンシールを見て悩んでいた。なお、これらのシールはユウキのコレクションである。
「うーん。男っぽくて強いポケモンがいいかな。ダイケンキかリザードンかガブリアスか……」
「あたしはスラッとした美形のポケモンにしようかなぁ。インテレオンかアシレーヌかミミロップか、悩むぅ」
「オレはこれにする」
ユウキはニンフィアを選んで、2人に見せた。2人は顔を合わせて、ニマッと笑う。
「わかってるじゃん」
「さすが、うちの弟!」
これからも、3人はポケモン化して、大バズリ動画を撮り続けるだろう。
(おわり)
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