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めざせ!融合ポケモンマスター

  ここはアローラ地方。照りつける太陽と麗しい月が交互に人々を見守っています。

  

  ここで暮らす人々は、今日も陽気に暮らしているはずです。おやおや、あそこの家の少年は泣きじゃくっていますね。ちょっと中をのぞいてみましょうか。

  

  「ボクはちゃんと世話できるよぉ。だから飼わせてよ、お願い!」

  

  少年は右手に赤ヒゲのニャビー、左手に褐色の剛毛のイワンコを抱いています。二匹はうるんだ目で、少年と一緒に大人を見上げています。

  

  「ダメよ、ニッキー。この前のモクロ―だって、あなたはほとんどサボってママ達に押しつけてたじゃない」

  「そうだぞ。一人で飼うという約束を破ったんだから、そのニャビーとイワンコはあきらめなさい」

  

  ママとパパの言うことが正しいのは、ニッキー君も頭で理解しているのです。それでも、この捨てられた二匹を放っておくことは出来ません。さっきまで通り雨にぬられて、ぬれトゲデマルなのですから。

  

  あきらめられないニッキー君は、顔をくしゃっとさせて捨て身のお願いをします。

  

  「ニャビ―とイワンコを飼わせてくれたら、もうずっとおこづかいナシでいいから! お願いおねがいおねがい!!」

  

  お小遣いナシが無くなると、大好きなお菓子や漫画が買えなくなります。一世一代の賭けに出たニッキー君でしたが、パパは冷たく突き放しました。

  

  「そんなこと言ってもダメなもんはダメだ!」

  「パパのわからず屋!」

  

  ニッキー君は怒鳴り返して、家を出て行きます。かんかん照りの空の下で、どこに行くあてもなく彼は走り続けます。二匹の重さも忘れて、全速力で。

  

  幼なじみのアーナちゃんの家の前で立ち止まろうしましたが、やめます。ペットを飼わせてくれないから家出なんて、恥ずかしいですものね。

  

  そして、息が切れたところで立ち止まります。ニッキー君の目の前には、落書きの壁に囲まれた空き地があります。なぐさめてくれるのはニャビーとイワンコだけです。

  

  「グスッ、グスン。いいじゃん、飼ってくれたって。ケチィ、トンチキ」

  

  ニャビーはニッキー君を心配そうに見上げて鳴きます。イワンコは彼のあごを優しくなめています。

  

  ふと、ニッキー君は家出して、この二匹と一緒にくらそうかと考えます。それは楽しいことで小。好きな時に泣て、食べて、遊んで、親や先生に口うるさく言われないパラダイス!

  

  でも、そんなことは不可能だと、ニッキー君はちゃんとわかっています。必ず街のどこかにジュンサーさんがいて、子ども達を家へ戻すのです。彼もじきに見つかって、強制送還されることでしょう。

  

  「坊や、どうしたの?」

  

  ついに見つかってしまったニッキー君はばつが悪そうに、声の主を見ます。それはそれはしわが幾重にも刻まれたおばあさんで、手押し車を前に前にデンヂムシよりゆっくり歩いていました。

  

  「おばあさん…、ボ、ボグゥ……」

  

  知らない人に話しかけられた、何も答えずについて行かない。学校でそう言われてたはずなのに、怒りに任せて、両親のひどいしうちを延々と語ってしまったのです。

  

  ニッキー君の話を聞いている間、おばあさんは眠っているのか笑っているのか微妙な表情を浮かべています。彼が最後に家出したいと言うと、首を横に振ってこう諭します。

  

  「それはいけないことよ、坊や。ママとパパなしでどうやって生きていくつもり?」

  「うん。わかってるけど……」

  

  返す言葉が見つかりません。すると、おばあさんが手押し車から2つの丸い物を出してきました。何と黄金に輝くマスターボールじゃありませんか。

  

  「さぁ、この中にニャビ―とイワンコを入れなさい」

  

  ニッキー君はおばあさんに言われた通り、二匹をゴールデン・ボールの中に入れます。しかし、ボールに入れたとしても、家の中で出したら親にバレてしまいます。

  

  「おばあさん、これだと飼っているのと同じじゃない?」

  「ウフフ。そのボールをパパとママにぶつけてごらん。面白いことになるよ」

  「どういう意味?」

  

  ニッキー君がたずねると、もうおばあさんの姿は見当たりません。彼は首をかしげながら、家に帰るのです。

  

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  ニッキー君が家に帰れば、涙と鼻水まみれのママがきつく抱きしめてきます。パパも腕組みしながら、必死に涙をこらえています。

  「ごめんなさいニッキー! あなたに強くあたっちゃって」

  「いいよ、別に。全部ボクが悪いんだから」

  「いいや、息子の気持ちがわからないなんて、父親失格だ。ホントにすまん!」

  

  パパは自分の頭をこづきます。両親に大きな心配をかけたとわかると、ニッキー君はとても後ろめたい気持ちになります。彼のポケットの中には、親を悲しませる原因になったものがいますから。

  

  さらに悪いことに、ニャビ―とイワンコは近所のおばあさんに預けたという嘘をついてしまいます。とたんに両親は涙をぬぐい、太陽の笑顔になります。

  

  「さぁ、一緒にご飯を食べましょうね。今日はニッキーが好きなハンバーグよ」

  「腹ペコだから、どんどん食べて大きくなれよ」

  

  両親が背を向けてリビングへ向かいます。その瞬間、ニッキー君は2人の背にゴールデン・ボールを投げつけたのです。Gボールはパパとママそれぞれを吸いこむと、床に転がっていきます。

  

  「あっ、あれぇ? パパとママ、どこに行ったの?」

  

  ニッキー君の両親はGボールの中に入っちゃいました。では、ボール内でどんなことになっているのでしょうか? 早速、中をのぞいてみましょう。

  

  パパが入ったGボールの中にはイワンコがいます。イワンコはパパの脇の臭いを嗅いでいます。

  

  「あっ、こら! 変なトコを臭うんじゃない! ちょっ、おわ?」

  

  不思議なことにイワンコの頭がパパの脇の中に溶けこんでいきます。しばらく待つと、イワンコの頭がパパの右肩にひょっこり現れます。

  

  「ワンワンワン!」

  

  イワンコは楽しそうに吠えて、パパに頬ずりしてきます。すると、2つの頬がくっついて1つになります。もう、パパの鼻がイワンコの鼻になったのか、イワンコの頭の上にパパの黒髪が乗っているのか、よくわかりません。

  

  彼は体中から毛が生えてくるもぞもぞした感覚に包まれています。その感覚が続く間、肉球をなめてみたり、大あくびをしたり、本能のまま行動していく。何かもっと楽しいことが起きると、尻尾が左右に振られているのです。

  

  一方、ママが入ったボールの中にはニャビーがいます。ママとニャビーはともに暗い所が苦手なため、必死に外へ出ようとします。

  

  「ここはどこなのよぉ! 出してぇ出して!」

  「ニ“ャーニ”ャ―」

  

  鋼鉄の壁を叩いても、ビクともしません。力尽きたママは座りこんで顔をしかめます。

  

  「さては、ニッキーのイタズラね! 外に出たら、たっぷりお説教しないと」

  

  こう言った途端、彼女の背中に奇妙な違和感が生じます。まるで毛皮のコートを一部だけ着ているような。後ろを見たら、背中合わせにニャビーがくっついているじゃありませんか。

  

  「ニャッ、ニャンでニャビーが?」

  

  彼女の声は甲高くなっています。このまま放っておくと大変になると感じた彼女は、ニャビーの腹をつまんで引き離そうとします。しかし、ニャビーの腹が背中に溶けこみ過ぎて、全くつかめません。

  

  「あーん! どうニャッてんのよぉ!」

  

  彼女の口まわりに赤い毛が生えてきます。目が赤く充血し、暗闇が見やすくなります。服が消え失せて、赤い腹があらわになります。体中が真夏の炎天下に一時間立っているみたいに熱くなり、毛がどんどん伸びていきます。

  

  彼女は身をよじらせて、ニャビーを体から追い払おうとします。でも、そんなことをやっても、変化が進むだけです。次第に彼女の脳内は、テッポウオを口いっぱいに入れたいという欲望に支配されます。

  

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  ニッキー君が一人でご飯を食べていたら、ゴールデン・ボールが妖しく光って口を開けます。中から出てきたのは、ニャビーとイワンコです。ただし、普通のニャビーとイワンコと違い、彼と同じぐらいの大きさで、金や黒のたてがみを持っています。

  

  「ニッキー、パパとたくさん遊ぼワン!」

  「変ニャいたずらしちゃダメでしょ、もう!」

  

  すぐにニッキー君は彼らが両親だと気づきます。体型も元の二人を思わせるものです。イワンコはパパと同じ細マッチョ、ニャビーはママと同じぷっくりしたお尻と後ろ足ですから。

  

  「パパがイワンコで、ママがニャビーかぁ。じゃ、パパンコとママビーって呼ぼう!」

  

  ニッキー君がこれっぽっちも反省していないので、ママビーは怒ります。

  

  「ニャンですって!? ママ達をこんニャ目にあわせといて、そんな能天気なことをよく言え―」

  「ママビー、静かにして!」

  

  ニッキー君の命令により、ママビーは口をつぐみます。Gボールに入った影響で、二匹はマスターの命令に逆らえなくなったのです。

  

  マスターがご飯を食べ終えると、二匹のためのポフレを買いに行きます。その間、パパンコとママビーは仲良くお留守番、できませんでした。

  

  ママビーは怒りに任せて、壁にむかって爪とぎを始めます。パパンコはママビーに対して甘えようと、しきりに彼女の尻尾を甘噛みします。

  

  「ギニャ!? ちょっと、パパ! こんな時にふざけるのはやめなさい!!」

  「だってぇ、ここ最近、遊んでないんだもん」

  

  パパンコはイワンコの影響を受けすぎて、とにかく誰かと遊びたいようです。ママビーは目を細くして、甘えん坊のパパンコの頬を引っかきます。

  

  血が床一面に飛び散り、ママビーの耳をつんざく悲鳴が上がります。

  

  「キャウウウン! 何すんだよぉ!」

  「いいかげんに目を覚ましニャさい。私達は人間よ。ニッキーのママとパパなのよ!」

  「クゥン。だが、ニッキーのペットでもあるぞ」

  

  パパンコは真っ正直な青い瞳を彼女に向けます。

  

  「そうね。ニッキーに拾われたからニャ。あらっ?」

  

  ママビーにはニャビーの記憶が植え付けられているのです。人間から食料を奪ったり、子どもから石を投げつけられたり、母に思いをはせたり、様々な辛い出来事が脳裏に浮かびます。

  

  さっきまで気丈な妻を保っていたママビーは、思い出の荒波に耐えきれず、泣き崩れてしまいます。

  

  「はあああ。辛いよパパンコ、アーン!」

  「よしよし。俺の尻尾に顔入れて、落ち着きなよ」

  

  パパンコの尻尾は、冬の掛け布団のようにふかふかで温かいものです。ママビーはその温かさと臭さに触れて次第に落ち着きを取り戻していきます。

  

  二匹が仲良くなっている時に、ニッキー君が帰って来ました。

  

  「ただいまぁ! チェリンボ味のポフレ買ってきたよぉ」

  

  甘い香りを嗅ぎつけたパパンコは一目散に駆け出して、マスターの袋を引きちぎろうとします。マスターはパパンコの頭を軽く叩いて「パパンコ待てまて」と、笑いながら言います。

  

  マスターはリビングに突くと、二匹の前にポフレがのった皿を置きます。パパンコは目にも止まらぬ速さでかじりつきましたが、ママビーはキョロキョロして落ち着きがありません。

  

  「どうしたの? いらなかったら、パパンコにあげちゃうよ」

  「違うのよ。スプーンやフォークを使わニャいで食べるのって、ちょっと恥ずかしくて……」

  「なるほど。じゃ、僕が食べさせてあげるよ。はーい、ママビーちゃん、口を大きく開けてー」

  

  息子に赤ちゃん扱いされて腹を立てたママビーは尻尾から炎を放ち、マスターの髪をチリチリアフロに変えてやりました。肝心のポフレの味は甘酸っぱくて、ほっぺが落ちるようでした。

  

  二匹との親密度(?)が上がったところで、マスターはこんなことを話します。

  

  「パパンコ、ママビー、よく聞いて。僕はこれからポケモンマスターになろうと思ってんだ」

  

  ポケモンマスターになれば、十年間遊んで暮らせる優勝賞金が入り、全世界の人気者になれます。その道のりは険しく、二十年間挑んでも未だにポケモンマスターになれない少年もいるようです。

  

  息子が安定した収入を得られる職業に就くことを望むママビーは、断固として首を横に振ります。

  

  「ダメよニッキー。あなたはちゃんと学校に通わニャいと。まだまだ知らないことがたくさんあるんだから」

  

  一方、パパンコは尻尾を振って、息子の夢を後押しします。

  

  「パパンコはいいと思うぞ。俺達がこんな姿になったら、お前を食べさせてはいけない。ポケモンマスター目指して、色んな街のたくさんの人のお世話になればいいワン」

  「世の中、親切な人ばかりじゃニャア!」

  「じゃあ、誰がニッキーを育てるんだワンワン!」

  

  パパンコとママビーは取っ組み合いのけんかを始めます。お互いに噛む強さは同じで、相手を傷つけたくない思いがあるため、中々決着がつきません。

  

  業を煮やしたマスターは両手を叩いて、こんな提案をします。

  

  「じゃあさ、ポケモンバトル風に決めようよ。相手が技を一回だしたら、その技を受ける。その次に自分が技を出すみたいに、攻めと守りが交代する感じで」

  

  双方が納得したため、ポケモンバトルを始めます。

  

  先攻はママビー。

  

  ママビーは小さな炎をパパンコに向かって放ちましたが、素早くよけられてしまいます。

  

  後攻はパパンコ。

  

  パパンコはガㇽルとうなってからジャンプして、ママビーに襲いかかります。ママビーは防御力が低いお腹を床につけて、彼をにらみます。しかし、パパンコの石頭が額にぶち当たって、大きなダメージを受けちゃいました。

  

  「ニャハァ…、いってぇ……」

  

  もふもふに見えて、実は体が硬いパパンコ。ポケモンの能力をあまり知らないママが負けるのは、仕方ありませんね。彼女は目を白黒させて倒れてしまいます。

  

  [newpage]

  

  

  翌朝、ニッキー君と二匹のポケモンは、穏やかな波が打ち付ける岬の上で出発式を行いました。

  

  「僕達の旅はここから始まる!」

  「イワン!」

  「ニャッビ!」

  

  ニッキー君がゴールデン・ボールを天高くかかげます。すると、そこに幼なじみのアーノちゃんが通りかかりました。

  

  「あらニッキー君。ポケモン連れてどうしたの? 学校は?」

  

  ポニータテールの彼女のことが好きなニッキー君は、急にもじもじして答えにつまります。

  

  「ええと、そのぉ、ボグゥ…、ええいっ!」

  

  説明するのが面倒臭いので、彼女に向かってGボールを投げつけます。彼女と一緒に岬のベンチで寝そべっていたアシマリも、ボール内に吸い込まれてしまいます。

  

  「あらぁ。ニッキーやっちゃったニャア」

  「この調子だと、街中のみんながポケモンになるぞ」

  

  ママビーとパパンコが口元を緩めながら、マスターを見上げています。両親にカッコ悪い所を見せつけてしまい、ニッキー君の顔はダルマッカ色です。

  

  それでも、マスターとしての威厳を見せつけるために、拳を固めて二匹を黙らせます。

  

  「るさーい! マスターのやり方にいちいち文句をつけ、うあっ!」

  

  突然、ニッキー君の体が泡の中に包まれてしまいます。その泡を作ったのは、アシマリならぬアノマリちゃんです。

  

  「よくもこんな姿にしてくれたねっ! せっかくここの岬でのんびり、いや学校でみんなと遊びたかったのにぃ。たっぷりいたぶってやるマリ!」

  

  アノマリは鼻の上にマスターを乗せて、いつもより多めに回します。マスターは目が回り過ぎて、酔っ払ったおじさんのように変な言葉をつぶやいて吐き気をもよおしています。

  

  こんな頼りないマスターを見ても、パパンコとママビーの忠誠心は変わりません。

  

  自分達を拾ってくれたマスター、または自分達を笑顔にしてくれたニッキーを守りたい。この気持ちはどんな姿になったとしても、ずっと強く固く持ち続けているでしょう。

  

  ニッキー君はあめ玉をしゃぶりがちですが、そのGボールでたくさんの人をポケモンと融合させるでしょう。

  

  パパンコは骨っこをかじりがちですが、その石頭であまたのポケモンを倒していくでしょう。

  

  ママビーは丸い物をいじりがちですが、その炎の尾でお肉やモクロ―を焼いていくでしょう。

  

  アノマリはオシャレをしながらも、その泡で多くの人やポケモンの方向感覚を狂わすでしょう。

  

  かくして、ニッキー君と両親・友人の融合ポケモン達は、ポケモンマスターを目指す長い旅に出発したのです。

  (おわり)

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