展開編 第三十二話 密偵の洗い出し

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  会議に終わったダインは直ぐにテガスに魔術通信を送ってディアーナを呼び寄せる、テガスにも魔術クガト側の間者が紛れているだろうが、ククジア王都であるククージアの方がより大きな諜報拠点があると判断したからだ。

  職務で忙しいティアスは席を外したが、ダイン達はこのまま話し合う事にする、そして、王宮で働く使用人達の名簿も集められて、疑わしい人物をピックアップして行く。

  ダイン 「意外と若い娘が少ないですね、まぁ情報を握って分析している人間は経験を積んだ男性の方だとは思いますが」

  フェカト 「確かに、事務処理能力が極端に高い男性っていますよね、フェカトは遊魔の能力で今の実力を得てますけど、フェカトを上回る人も存在してますから、まぁお金を稼ぐ才能ですけどね」

  ダイン 「多くの情報を結合させて物事を推測する力は役に立ちますよ、昔の武将が敵陣の炊事の煙が多いのを見て、夜襲を悟ったという話も聞いた事が有ります」

  リレッタ 「なるほど、仕掛ける前には十分に腹ごしらえですか、一見すると関係無さそうな炊事の煙ですけど解る人には解るんですね」

  ダイン 「あくまで一例ですけどね、ですが知ると知らないでは考え方自体が変わるでしょう」

  リレッタ 「つまり何らかの通達方法が無ければ、ルゥ様の正体を晒しても効果が薄いというわけですね、信じるに足る証拠も必要でしょうし」

  ダイン 「私も遊魔の正体がバレた想定を日頃から行なっていますが、人類圏の技術では伝わり難いとも思っています、ザキトスの様な悪逆を行うなら解りますが、私が魔族だと行っても、人を虐殺とかしてませんし」

  フェカト 「ダイン様には良いイメージが付いてますから、異世界料理の別名はダイン料理ですからね、即ちダインで連想されるのは美味しい食事だったりします」

  ダイン 「想定通りの状況ですね、美味しい食事は正義ですから」

  リレッタ 「確かに美味しいに悪いイメージって有りませんよね、この世界で重点的に料理広めてましたけど、それが目的だったんですか?」

  ダイン 「いや、遊魔の幸せの追求とそのお裾分けです、何でも沢山作った方が単価は安くなりますから」

  ダインは笑みを浮かべながら言ったが、初めから想定していたとリレッタは確信している、ダインは馬鹿げた事に注力する事が多いが、そこに無駄は感じられないのだ。

  フェカト 「調味料の輸出はユーマの今や主要産業ですから、材料が足りなくなってきたのでエゴナの取り込みを狙ったんですよね、ちょうど新国王を選んでいて良かったです」

  リレッタ 「新国王に早速手を付けちゃうなんてダイン様らしいですね、リレッタも訪問して味見しちゃいましょう」

  ダイン 「それは良い考えですね、ヒューリとエリリナを慰めに行って上げて下さい、立場が有る私はおいそれと他国に赴けませんからね」

  ルーフィン 「まぁ尻尾が有るから牝遊魔同士でも満足出来るけどね、でもやっぱりダイン君が良いよ」

  フェカト 「ダイン様との交わりは遊魔最高のご褒美ですから、ルゥの産み出した魔族にも尾ニプルを与えているんですよね」

  ルーフィン 「徐々に遊魔にしてるよ、でも、ダイン君への依存心は薄いんだよ、ザキトス魔族はやっぱり纏まりに欠けてるよ」

  ダイン 「ならば二、三人サンプルが欲しいですね、私自らの手で遊魔化させるとどうなるのか実験したいですから」

  ルーフィン 「じゃあ、王都に居る娘を差し出すよ、ちょうど良い娘が居るからさ」

  ダイン 「なら、早いうちにビグ・ユーマに遣わせて下さい、あそこが一番安心出来ますので」

  リレッタ 「ダイン様の動く城ですからね、ビグ・ユーマより安全な場所は人類圏には無いんじゃ無いですか?」

  ダイン 「どうでしょうね、目立つのは間違い有りませんから標的になりやすいですよ、存在を知られ無ければ攻撃もされませんよ」

  ルーフィン 「それで魔導具を使わずに攻めるのんだよね、ダイン君のやり方だと攻められてるの解らない内に勝敗が決まっちゃいそうだよ」

  ダイン 「危機に直面していなければ備えなど無いモノです、ですから平和が一番攻めやすい」

  フェカト 「ククジア、それにエゴナまで実質手に入れてますからね、本当に賢いやり方です」

  ダイン 「アーグル世界が処女の地位が特に高いからですね、私の世界の国家の元首なんて年寄りばかりですから、国家の頂点に君臨している獲物なんて所有欲を掻き立てられますよ」

  ルーフィン 「そういうところがダイン君だよね、ルゥも魔王ってのが好まれてるし」

  ダイン 「抱えている牝が優れている程、私が凄いという証です、遊魔にはもっと己を高めて貰いたいですね」

  ダインのこの欲求を理解しているからこそ、遊魔達はレブナン島行きを止める事は無い、ダインがもっとも楽しんでいる娯楽は、女体狩りから始まる一連の魔進化で、今のダインはまだ見ぬ獲物に胸を焦がしている狩人と創作に燃える芸術家が合わさった様な存在なのだ。

  その後、ククジア王宮最上階で行われる遊魔の会議は状況に変化を与える存在で有るディアーナが到着するまで続き、ディアーナ到着後はビグ・ユーマへと場所を移した。

  フェカト 「やっぱりここが落ち着きますね、画面にイメージの投影も可能ですから」

  ビグ・ユーマは日々改良が加えられて、もはや何だか解り難いモノへと変容している、ユーマ移動王宮で有りながら人類圏最強と言える戦闘兵器、ダイン料理が味わえる食堂でもあり、最近では浴場も追加された、そして現在は司令部として機能している様で、ディアーナの記憶を投影して、人物鑑定を行なっている。

  ダイン 「この男がディアーナが情報を報告していた人物なんですね、名簿では誰に当たるんですか?」

  フェカト 「クガト出身の執事ですね、王宮での勤務は四十年を超えてますよ」

  リレッタ 「ガトゥーラン家の人間ですね、クガト分家に当たる家ですが、クガトの貴族って殆ど分家ですから、ガトゥーランは貴族階級を剥奪されて平民に落とされてますが、その方が使用人としておかしく有りませんし、何より元貴族なので作法が身に付いてます」

  ダイン 「ディアーナの家も近い感じ何ですか?」

  ディアーナ 「私の家は一応まだ貴族です、ガトゥーラン程古い家では有りませんし」

  ダイン 「貴族階級とは別に裏の序列が有るわけですね、この男に家族はいるんですか?」

  フェカト 「名簿に住所だと富裕層の住む地区ですね、大きな屋敷を持っていると思われます、王宮勤めの時は泊まり込みですから」

  ダイン 「いい具合の娘がいると良いですね、相手に悟られずに情報を得たいですから」

  遊魔のやり方は効率的だ、身内がダインにいつの間にか心酔して状況提供者になるとは考えが及ぶわけが無い。

  ディアーナ 「私もそこまでは存じていません、ですがメイド達からは父の様に慕われています、非番の日に屋敷に尋ねたとの話も聴いた様な」

  ダイン 「そのメイドがレブナン島出身の魔術士の可能性はありますか?」

  ディアーナ 「解りません、ですがメイドにしては魔力が高かったとは思います、湯沸かしの魔導具を使ってましたから」

  ダイン 「プルルが使えなかったやつですか、魔術とはどの程度の魔力から使えるんでしょうか?」

  ディアーナ 「火起こしぐらいなら、大抵の人間が可能だと思います、もっとも修練と効果が見合っているとは思えません」

  ダイン 「ディアーナの魔術は遊魔の能力でモノにしましたが、習得にそんなに苦労が有るとは、リエルの魔術は閃きの様な感じでしたが」

  ルーフィン 「ルゥの世界とここじゃ魔術の質が違うからね、ルゥの世界は才能が必要だけど、ここじゃ体系の理解なんだよね」

  ダイン 「だからこそ一番初歩の火付け魔術の会得に時間が掛かるんですか」

  ディアーナ 「厳密に言うと魔力の熱変換ですね、魔力の熱変換を凝縮して行う事で火が発生して、別系統で魔力自体を燃料とするわけです、でも私も原理をちゃんと理解出来たのは遊魔になってからです、燃料という具体的な存在は明示されなくて燃える物と念じろって教わりましたから」

  ダイン 「魔導の原理を想像で行なって効果を導き出すのが、魔術というわけですね、確かにリエルの魔術とは別物ですね、名称を変えた方がいいですね、第四世界由来のモノは魔法としましょう」

  ルーフィン 「でもダイン君って使い分けて無いじゃん、だったらどっちも魔術でいいよね」

  フェカト 「確かにそうですよね、そもそも魔術よりも魔導の方が好きですよね」

  ダイン 「才能に影響されるのは嫌いなんですよ、人の文化は知の積み重ねで進歩したモノですから、私だけが特異な才能を発揮していては遊魔も進歩しませんよ」

  リレッタ 「遊魔増やせるのダイン様だけですよね、ルゥの産み出すのは紛い物ですから」

  ルーフィン 「酷い事言ってくれるね、リッタも乳魔の仲間なのに」

  フェカト 「ダイン様への絶対的な愛情が無い以上は紛い物ですよ、乳魔ってルゥへの忠誠も怪しいですよね」

  ルーフィン 「そこは元ザキトス魔族だからね、でも遊魔因子で改良された娘は大丈夫だよ、ダイン君を魔王として崇拝してるから」

  ダイン 「私の意思が介在していない者に愛されても戸惑いますから、その様に設定したんですよ、魔王とは神に近い認識ですから」

  フェカト 「なら、ルゥの事は何と感じているんですか?」

  ルーフィン 「多分、お姉ちゃんだと思うね、魔族ってザキトスに対してもそんな風に感じてましたよ」

  ダイン 「ならザキトス意思の消滅で枷が無くなったとはおかしく有りませんか、ルゥはそう言いましたよね」

  ルーフィン 「そこは生物的な事、元々魔族は魔族同士で繁殖出来るの、でもザキトスを兄とする認識があったので近親交配の制約が掛かっていたわけ、それが意思の消滅で解けたって事」

  ダイン 「ザキトス魔族は人間と交配する事が出来ないんですか、魔族じゃ無ければ性交出来ますよね」

  リレッタ 「それは人間が猿に欲情しないのと同じです、ザキトス魔族は下等な人間には興味有りませんよ」

  ダイン 「確かに世代を繋ぐ行為は、より高みに至る為に行われている様に思えますからね、種として到達点に近い遊魔は不安定な繁殖を放棄してますから」

  フェカト 「ダイン様が存在する以上、ダイン様を超えるモノは遊魔の中には産まれないという事ですよね」

  ダイン 「はい、もし何かの理由で私が消滅すれば、遊魔の雄が誕生するかもしれません」

  ルーフィン 「考えたく無い話だよ、ダイン君のいない世界に生きる意味は無いけど、死ぬ事も許してくれないよね」

  ダイン 「私の望みは遊魔の幸福ですから、私の存在しない遊魔など考えたくは有りませんが、案外上手く行くかも知れませんよ」

  フェカト 「今のダイン様の存在の大きさを考えるとそうは思えませんが、ダイン様が人の心を容易に変えてしまう事を実体験してますからね」

  ルーフィン 「アレは貴重な体験だよ、魔族に成った時より変わったから」

  ダイン 「生物に魂なんか存在しませんからね、遊魔の脳が判断の根幹となる情報を共有しているから全ての遊魔が同じ目標を持てるんですよ」

  ルーフィン 「ルゥの作り替えてる乳魔はダイン君への恋愛感情を与えて無いから、崇拝という感情を抱いてる訳だね、でも、愛情を加えちゃってる娘もいるけどね」

  ダイン 「ルゥの試みは今後の参考になりますから、何せ処女じゃない乳魔も居ますからね」

  ルーフィン 「今呼んでる娘はちゃんとした処女だから、でも呼べる娘だけだから、状況的に呼べない娘はダイン君が訪ねてみてよ」

  ダイン 「まぁ私の潜入能力を駆使すれば、ククジアの王宮でさえ庭の様なモノですから」

  この場の遊魔達はダインの言葉を疑ってはいないが不安は確かに感じている、ダインが潜入を企むレブナン島には、乳魔でさえ全貌を掴めていない魔術クガトの本拠地だと思われているからだ、おまけに岩喰いという異種族の存在も予見されており、レブナン島勢力の持つ力は未だに闇に包まれている。

  おまけ

  乳魔の遊魔化 ルーフィンが眷属として産み出した乳魔であるが、着実に遊魔化が進みつつある、だが、ダインが産み出す遊魔とは違いルーフィン自体が遊魔化を進めている為に若干異なる乳遊魔として産み出されている。

  具体的にはダインに対する感情で、ダインが産み出した者はダインに対する愛情を抱いているが、ルーフィンの乳遊魔はダインに対する崇拝を植え付ける事で統制を維持している。

  ルーフィンの好みで産み出されていた乳魔で有るが、その選別方法はダインとよく似ており、美しい処女が必須条件となっている、これは純粋魔力を維持していないと乳魔化が上手く行かない為でも有る。

  魔族化を行う時には主から従へと魔力の供給が行われる為に、受け手側の魔力がより純粋な方が上手く行くのだ、例えるなら純水に砂糖を混ぜると砂糖水になるが、塩水に砂糖を混ぜると塩砂糖水が出来てしまう様な物で、元の魔力が純粋な方がちゃんとした魔族が産まれるという事で有る、この例で例えるなら乳魔はミルクの様な液体で砂糖の様な遊魔資質を加えると甘いミルクが誕生して上手く行くのだ。

  また、リレッタの様にダインが乳魔を遊魔へと作り変える事も可能で、この場合は通常の遊魔と同じくダインに対して愛情を抱く事になる。