展開編 第十七話 魔鋼リサイクル計画

  005-017

  結局のところ、この日に上がった議題の全てを円滑に解決する為には、浮遊母艦の建造を進めるという結論で幕を閉じた。

  今までと変わらない方針では有るが、作る浮遊母艦が馬鹿げた物となった事に、遊魔達のモチベーションはかなり向上している、基本ダイン思考の影響を受けている遊魔達は馬鹿げた行いが大好きなのだ。

  会議の議題も片付いて、一同がお茶とお菓子で休憩していると、静かに資料を読んでいたフェカトが口を開いた。

  フェカト 「各国の戦力分析の資料を読んでいたのですが、未だゾッフォ以前のゾゥティも結構残って居ますよね、マギガントの製造にリサイクルの概念なんて無かったですから」

  ティアス 「型が古いから戦いには使えませんし、個々の機体のばらつきが多いから作業にも使い難いんですよ、壊れても直せませんから」

  フェカト 「なら、そのゾゥティを集める事が出来れば、魔鋼不足も緩和されますよね」

  ダイン 「つまりフェカトには何か案が有るんですね」

  フェカト 「はい、今までマギガントが賭け試合の対象になって無いのは、移動に制約が多かったからです、ですが、浮遊母艦を有するユーマにはその制約がほとんど無いので、掛けの対象に使えると思うんですよ、具体的にはユーマの騎士に勝てたらエポポを与えるとかです、対してこちらの勝利ならばゾゥティとかの旧式のマギガントを頂く訳です」

  ダイン 「なるほど、不要品を掛け金にして、勝てば新型が貰えるわけですか、先に飛行マギガントで勝負を行えば浮遊母艦で掛け金を回収するだけですね」

  ティアス 「それ、ユーマが勝つ前提ですけど」

  フェカト 「たまに負けるのも必要だと思いますが、エポポなら余剰機が有りますし、それに旧式のゾゥティの方が使っている魔鋼の量も多いですよ」

  ダイン 「旧式マギガントのリサイクル計画ですか、掛け金というより参加費にゾゥティでも良さそうですね、動く動かないを問わずに」

  ティアス 「動かないマギガントですか、でも魔鋼として再利用するなら動く必要なんて有りませんね」

  七実 「日本じゃリサイクルとか当たり前ですけど、不要品回収の車が回ったりしてて」

  フェカト 「マギガントを動かすだけで多くのお金が掛かりますからね、古いゾゥティなんて権威付けに飾るとかぐらいしか使い道が有りません、ゾッフォと違って規格品じゃないので修理するのが難しいですから」

  ダイン 「同一規格の優位性は明らかです、ジノ・ジーカは性能面では遥かにゾッフォより上ですが運用面では足元にも及びません、交換頻度の高い部品はなるべく共用化してますが、設計上不可能な所も有りますからね」

  七実 「あれ、ダイン様の嫌がらせだと思ってましたけど、ゾッフォの部品使って無かったら選定戦で使ったジノ・ジーカはまだ直ってませんでした、ナナ的には関節が太くなって嫌だったんですけど、ゾッフォの関節使ってなければ歪んでましたね」

  ダイン 「ゾゥティを百年以上運用して得られた実績を基に作られたのがゾッフォですから作りが堅実ですよ、協定戦の強さだけを求めるなら、ジーカの設計も解りますけど、私は実戦に強いマギガントを求めてますから」

  フェカト 「耳長の登場でようやくフェカトにも意味が解りました、協定戦なんて人類圏だけで通用する仕組みだったんですよね、耳長は人類圏のルールに従ってくれましたけど、話が通じない魔族とかなら直接攻めて来てますよね」

  ダイン 「自分のルールに当て嵌めて相手卑怯というのは愚か者ですよ、考えられる手段は幾つでも手札として持っておくべきです」

  七実 「悪い事考えるのは楽しいですからね、まぁここで言うのは計算された悪さですけど」

  ダイン 「そうなんですよ、悪と一括りにするのが間違えてますよね、蛮悪と知悪が有りますから、そして遊魔の認識では蛮悪は恥ずかしい事ですからね」

  ティアス 「全くです、馬鹿に魅力を感じるのは自分も馬鹿だという証拠ですよ」

  真夏 「それがダイン様が遊魔を作り出す理由ですよね、自分を理解してくれる存在を求めているんです、でも人間社会で育ってしまうとそれが不可能ですからね」

  ダイン 「優れたモノをベースに改造した方が効率的なんですよ、私がゾッフォを好んでいるのを見れば解るでしょう、知の経験を引き継いで文明は発展して行きますから、私だって地球文明とアーグル文明を下地にしているだけですから」

  フェカト 「確かに地球文明は色々と参考になります、一度作った物をまた素材に戻しちゃうなんて」

  ダイン 「今回のフェカトの案は確実に上手く行くでしょうね、そして真似される前になるべくユーマが利益を得ましょうか」

  真夏 「浮遊母艦の優位性が有るので簡単ですよね、そう考えるとダイン様が浮遊母艦を最優先したのはさすがです」

  ティアス 「ティアスは力の象徴だと思ってましたけど、こんなにも実益があるんですね」

  フェカト 「迅速な物流という概念は画期的でした、地理的に恵まれていないテガスがここまで栄えちゃうなんて」

  ダイン 「この世界の技術が遊魔との相性が良かったからですね、もし、内燃機関を使って飛行機械を作っていたなら、作るだけで数年は掛かった筈です、魔術様様ですね」

  七実 「つまり魔鋼は幾ら有っても困らないという事ですね」

  七実のこの言葉がアーグル遊魔文明の核心を表していた、遊魔の技術は魔力によって効果を発揮する魔導を用いた物が多く、魔導のエネルギー源である魔力が高い遊魔はそれだけで多くの恩恵を受けられる存在だ、だからこそ魔導具に必要不可欠な魔鋼の入手はもっとも重要視されている。

  ダイン 「現状で技術的な優位性は我々に有りますから、ですが次の段階に進むのも必要でしょう、幸い魔龍化はマギガントよりも費用が掛かりませんから」

  七実 「耳長拐かして遊魔にしちゃえばいいだけですからね、マギガント手に入れるよりも簡単ですよ」

  フィセーリア 「つまり耳長はダイン様の愛情を得られる種族というわけですね」

  七実 「残念ながらそうなんですよね、ダイン様はロリ体型でも行けちゃいますから、それに耳長の騎士って反則的に美形ばかりですよね」

  セジア 「そうですか、人間にくれべて面白味が無いと思いますけど、セジア人類圏に来てデブ見た時は感動しました、ああゆうのも居るんですね」

  真夏 「遊魔だとああは成りませんが、人間は食べ過ぎると直ぐに肉が付いちゃいますよ、昔のナナもちょっと丸かったですよね」

  七実 「あれはお婆ちゃんと一緒だったからですよ、ナナに何でも食べさせてくれましたから」

  ダイン 「その頃のナナを少し見てみたいですね」

  七実 「絶対に駄目ですよ、まぁここじゃ見るのは無理でしょうけど」

  真夏 「マナの頭には鮮明に刻まれてますよ」

  ダイン 「記憶の映像化ですか、一度は試してみたいですね、イメージを画像に出来ればより多くの者に伝え易いですから」

  フィセーリア 「確かにクフィカールの整備を手伝ってくれている、工員さん達には伝えられない事が多いです、耳長と人類圏でこうも整備が違うとは」

  真夏 「人類圏マギガントは同じ機種なら整備はほぼ変わらないんですよ、クフィカールの個体調整は細かいですからね」

  フィセーリア 「繊細な機体ですから、ゾッフォってどの機体も同じ様に動せて癖が無いですよね」

  七実 「人類圏のマギガントには機種毎に共通の機体制御が用いられてますから、その一点だけはクフィカールよりも優れてますよ」

  ダイン 「制御システムの改良だけで、ジノをエポポにする事が可能ですからね」

  真夏 「制御システムの改良は何故か行われていないんですよ、あれだけで性能は大分変わるんですけど」

  ダイン 「そのお陰で利益を得ていますから感謝しておきましょう、ところで私が東方へ赴く前に東方に隠し拠点を築く事は可能でしょうか?」

  フィセーリア 「確かにいざという時のダイン様の隠れ家は必要かも知れませんね」

  七実 「クラフト一機送り込むだけで、秘密裏に地下基地ぐらいは作れる筈ですが、でもゾッフォは飛行性能に不安は有りますよね」

  真夏 「ならクラフト・クフィカールを開発してはどうでしょうか、問題は背中の飛行装備が嵩んで腕が増設出来ない事ですが・・・」

  ダイン 「背中から生やしたのは現物を流用する為ですから、新規に作業用の精密な腕を作るなら場所に自由度を持たせるのは可能ですよ、ですがクフィカールをベースにするなら新しい制御装置を組み込んだ方が良さそうですね」

  七実 「遊魔技術を組み込んだクフィカールですか、面白そうです」

  ダイン 「ナナはユーマ・ティアスに集中して下さい、この計画はフィセーリアとムジカに担当して貰いましょう、ムジカには東方大陸での浮遊母艦建造の計画を担って貰っていますが、その手脚となる作業用クフィカールから携わって貰った方が効率的ですよね、勿論私もフォローに回ります」

  フィセーリア 「いよいよ遊魔の威光を東方にも知らしめるんですね」

  ダイン 「知らしめては駄目ですよ、徐々に浸透して染め上げて行くんです、侵略とはどれだけ悟られずに進めるかが重要なんですよ」

  ティアス 「ククジアではいきなりですよね、時期国王のティアスをいきなり襲っちゃうなんて」

  ダイン 「先にティアスが私に仕掛けて来ましたよね、利用出来るモノは利用するのが私のやり方です」

  フィセーリア 「東方大陸の沿岸部には島がたくさん有りますから、そこに隠れ家を作れそうです、ただ、土着の種族を結構いるんですよ、日本の知識で言う獣人ですね」

  七実 「あ、それ駄目な奴だ」

  七実の言葉の正しさを証明するかの様に、ダインが肩を震わせている、だが、その意味は込み上げる嬉しさが現れている為だ。

  ダイン 「獣人ですか、実に甘美な響きの言葉です、この世界にはまだまだ楽しい事がありそうですね」

  七実 「でも、獣人の遊魔ってどうするんですか、獣人化する遊魔って多いですよね」

  ダイン 「現物を見てからのインスピレーションが大事ですからね、獣人と言ってもLvが有りますから」

  七実 「ダイン流ケモナーレベル判別ですね、けど、ダイン様って言うほどケモナーレベル高く無いですよね」

  ダイン 「自身の美意識を優先してますから、ナナはあれ以上のLレベルの獣人が好みでしたか?」

  七実 「もちろんダイン様に愛して貰える今が一番です、東方の獣人も愛せるレベルならいいですよね」

  フィセーリア 「それなら大丈夫だと思います、姿形は遊魔のナナによく似てますから、でも見た目は色々と派手ですよ」

  ダイン 「アクセサリーで自らを飾り立てているんですか?」

  フィセーリア 「それも有りますが毛並みに彩色してるんですよ、穏やかさを好む耳長には理解出来ない文化です」

  七実 「つまりヒャッハーな獣人ってわけですか、獣人ってイメージ的にはそうですけど」

  ダイン 「まぁ獣人の事はそれぐらいにしておきましょう、フィセーリアは秘密の隠れ家を幾つか作る事を考えて下さい、いざとなれば東方大陸でゲリラ戦を展開します」

  七実 「そんな事をすれば、人類圏に攻め込んで来ないでしょうか?」

  ダイン 「私を倒さないと遊魔が増え続けると言ってやれば乗って来るでしょう、折角築き上げたユーマ共栄国は滅ぼしたくは有りませんから、まぁ魔龍を前面に押し出せば勝利は容易いと思います」

  フィセーリア 「クフィカールをも凌駕する力ですからね、まさか私達にこんな力が宿っているとは」

  ダイン 「混沌大陸に埋もれているのは遊魔の始まりの力かも知れません、その探索の為にも東方の協力は絶対に必要です」

  ダインの示した強い意志はこの場の遊魔達に十分と伝わっていた、そしてその伝播した意志は遊魔達のやる気となって次に向けた準備が着実に進んで行くのだ。

  おまけ

  マギガントスペック ダイオーン

  運動力       20

  機動力       18

  腕力        12

  耐久力        8

  搭載力       15

  運用力        7

  対応力       10

  ユーマ共栄国が作り上げたゾッフォフレームの改修機、クフィカールの機体構造が応用されているがそれだけでは要求性能を満たせず、白兵戦能力を排除する事で要求性能を満たした。

  白兵戦能力を持たない為に射撃武器以外を装備していないが、クフィカール同様の防御障壁を展開する事が可能で有る為に高い防御性能を保有している。