展開編 第三話 ダインの開発指令

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  ダインの説明を聞いた真夏はその無茶な要求に反論していた。

  真夏 「いきなり無茶過ぎます、遠距離通信機器の目処は立ってますが、浮遊母艦同士で交信させるレベルの巨大な物です、ダイン様が東方大陸に興味津津なのは理解出来ますけど、現状で可能なサイズじゃどちらかの浮遊母艦を派遣する必要が有ります」

  ダイン 「真夏も頭が硬いですね、私も今、想定された規模を確認しましたが、ゾッフォに組み込む事は可能ですね、通信用ゾッフォを作り上げて先に派遣すれば、交渉を円滑に行えるでしょう」

  真夏 「ゾッフォ一機を丸々通信機として使うのですか、それならば確かに可能でしょうが、発想が斜め上過ぎです」

  真夏は複雑な視線をダインに送っている、真夏の中では呆れと驚きが混ざった様な感情が渦巻いており、自身が苦労して産み出した技術が想定外の馬鹿げた使い方をされる事にちょっとした拒否感を覚えている。

  ダイン 「まぁ今回は私自ら東方に乗り込む事になるので、事前の微調整が必要となります、そして通信型ゾッフォにはちょっとした仕掛けも施す事にします、通信が届けば私の意思を反映される事も可能ですからね」

  ダインの浮かべた邪悪な笑みに真夏は更に複雑な心境になる、この顔を浮かべるダインは本当にロクでもない事を考えているのを真夏は経験上理解しているのだ。

  真夏 「で、直ぐにでも作業を始めればいいんですよね、ですが三日も燃料が持つゾッフォなんて有りませんけど?」

  ダイン 「それにも私に良いアイデアが有ります、クフィカールに燃料タンクを付けて途中で給油させるんです、空中給油は無理でしょうが、途中で降りれる小島ぐらいは有りますよね」

  フォティーヌ 「空飛ぶマギガントなら問題有りません、船なら上陸出来ない島でも利用出来ますから」

  真夏 「え、島なら船で行けますよね?」

  フォティーヌ 「断崖絶壁で囲まれた島が結構有るんですよ、そもそも島というよりも只の大岩とか」

  ダイン 「やはり、短距離離着陸が出来るマギガントを作って正解でしたね、ファンタジー世界は交通インフラが整っていませんからね」

  フォティーヌ 「また難しい言葉ですね、遊魔で使われている言葉は耳長とは違い過ぎます」

  ダイン 「魔力が有るアーグルの魔導文明の方は色々と便利ですからね、私の来た世界では人型の巨人兵器を産み出すにはまだまだ時間が掛かりそうでしたから、その点ではアーグルの魔導兵器は弄り甲斐が有りますよ」

  真夏 「無茶苦茶ですけどね、地球文明を知ってるマナでもダイン様の脳味噌のぶっ飛び方には驚きしか有りません」

  ダイン 「なら、飛行通信型ゾッフォの方は任せますね、実験用のウィディを使って下さい」

  真夏 「解りました、先ずは鎧を取っ払って通信機器を組み込みます、ゾッフォって本当に万能ですよね」

  ユーマではゾッフォの評価が特に高い、協定戦では戦闘特化したジーカに対してかなり劣った機体では有るが、フレームの頑丈さとそれに伴う装備の自由度の高さがユーマ改造機のベースとして使い勝手がいいのだ、その上、エポポ改修事業で入手方法も確立されている。

  ダイン 「人類圏での百年以上のマギガント運用から産まれた機体ですからね、私は色々な改造機を作りましたが、基礎設計の優秀さが有って可能となったんですよ」

  真夏 「ダイン様ってそういうところが意外と堅実ですよね、ナナは一から新型機作りたいと言ってましたけど」

  ダイン 「マギガントの基礎に関しては普通に知識不足です、いずれ遊魔独自の機体も作るかも知れませんが、今はゾッフォやジノ・ジーカで十分です」

  フォティーヌ 「ダイン様って堅実な機体を好んでますよね、クフィカールも早々に調査を終了しましたし」

  ダイン 「ここの部品の組み合わせの凄さはさすがですが、それ故に調整に時間が掛かり過ぎて実戦向きでは無いでしょう、素早く剣を振るうには良いと思いますが、魔導ガドリングガンの細かな振動でズレが生じそうなんですよ、想定される混沌大陸の魔獣には銃器での掃討が効果的でしょうから」

  フォティーヌ 「確かにマナのゾッフォの様な戦いはクフィカールには不可能です、あの重さの武器を携行すると機体が傾いてしまいそうです」

  ダイン 「改修の進んでいるロゥディは混沌で有力な戦力となるでしょう、ですが、魔龍の防御に対してガドリングガンが何処まで通用するのかは不明です」

  真夏 「生物があの攻撃に耐えられるモノでしょうか?」

  ダイン 「知性の低い魔獣ならば不可能でしょう、ですが、魔龍は何か違う気がします」

  現時点でダインは魔龍と耳長の関係を疑っている、耳長の一般知識では隠匿されている様だが、多くの魔力を与えられた遊魔耳長が魔龍に似た形状に魔進化した事が根拠となっているのだ。

  フォティーヌ 「確かに魔龍には高度な知性を感じさせますね、幹母も何か秘密を知っているので魔龍に脅威を感じていないのかも?」

  ダイン 「比較的若い層の騎士達と、国家の主導者達との間に溝が有りますよね、少なくとも幹母の同意を確認しない事には耳長行きはリスクを感じますね」

  真夏 「ダイン様の不安を柔らげる為にマナの研究が役立つんですよね、使われ方に違和感は有りますが、ダイン様有っての遊魔ですから致し方有りません」

  ダイン 「まぁ浮遊母艦の都合も有りますから直ぐにとは行きません、ですが交渉はなるべく早く始めたいですね」

  真夏 「解りました全力を尽くします、ところで誰が乗るんですか?」

  ダイン 「私としてはフィセーリアかフォティーヌに任せたいと思っています、そもそも私達は東方大陸の事を余り知りませんからね」

  真夏 「別の耳長を堕とせば良いと思います、ユーマ訪問団も始まるんですよね」

  フォティーヌ 「はい、第一陣は後三、四日で到着する筈です、私の出立時にはほぼ用意が終わっていましたので、本来なら私と同行する予定でしたから」

  真夏 「置いてけぼりにしたんですか、悪い人ですね」

  フォティーヌ 「リーリエッテが先導してくれますから、彼女は若手の指導も行なってますから派遣団全員と交流もありますし、私が一緒では出来ない話も有るでしょうから」

  ダイン 「フォティーヌは魔力が上がり過ぎて疑われている様なんですよ」

  真夏 「いきなり三人も堕としちゃうからですよ、一人ずつ様子を見れば良かったと思います」

  ダイン 「遊魔魔力と耳長の親和性が予想外に高かった為です、その事を調べる意味でも派遣団の中から一人は魔進化させたいですね」

  フォティーヌ 「なら、幹母の娘なんてどうでしょう、多分幹母から何か含まされてますよ」

  ダイン 「確かに狙いどころですね、ですがその為には魔力を余り与えない魔進化も研究進めないと行けませんね」

  真夏 「確かに今後を考えるとそれは必要だと思います、ムジカの遊魔判定も魔力の質を見極めるモノでしたからね」

  ダイン 「魔力核を産み出す事で、全体の魔力を抑える研究を始めているんですよ、そしてその魔力核を上手く使えば人の魔力を必要としない魔導具が作れると思います」

  真夏 「いつの間にそんな研究を、ダイン様は抜け目有りませんね」

  ダイン 「フィセーリアからの提案なんですよ、東方に戻っていないフィセーリアはまだ耳長側に露見してませんから」

  真夏 「でも一番疑われる位置に居ますよね、なるほど、通りでこのところフィセーリアが夜伽に呼ばれていたわけです」

  ダイン 「私は秘密主義ですから、人の驚く顔が楽しみなんですよ、今日の真夏はいい顔してましたよ」

  真夏 「半分は呆れてたんですけど、でも、慣れたと思っていても斜め上で攻めて来ますね」

  ダイン 「退屈しない男の方が楽しんでくれますよね」

  真夏 「それは当然ですけど」

  ダイン 「私も暫くは準備に追われるでしょう、ティアスの戴冠式までは後一ヶ月有りますから、それが終われば東方遠征ですね」

  真夏 「三番艦は戴冠式に間に合わせると言ってましたが、浮遊母艦の運用もちゃんと計算しているんですね」

  ダイン 「はい、東方遠征でビグ・ユーマの抜ける穴は三番艦で補うつもりです、完成もしていない物のをアテにしてスケジュール組むのは嫌ですが」

  フォティーヌ 「急な申し出でご迷惑だと思っていましたが、少し安心しました」

  ダイン 「どの道このまま進めても四番艦の建造は魔鋼不足でしたから、それに人類圏から距離を置いた拠点が有っても困りませんからね、正直今まで少しやり過ぎたと思っていましたから、出る杭は打たれるというのが人間の本質です」

  真夏 「それを言うならククジア道連れにしそうですけど・・・」

  ダイン 「それはティアスだけで収められるでしょう、クガトとはまだ距離を置いてますから」

  真夏 「折角根付いたユーマの国は手放したく無いですけど」

  フォティーヌ 「でもその為の東方との接触ですよね、クフィカール三百機の後ろ盾は強力ですよ」

  ダイン 「耳長騎士達は鍵の開いた宝物庫ですね、ちょっとずつ盗み取って行きましょう」

  フォティーヌ 「本当に悪いお方です、ですが全てが遊魔に染まれば煩わしい争いからも解放されて、素晴らしい社会が訪れると思います」

  真夏 「実際そうなのが遊魔で証明されています、遊魔達は異なる四つの世界からの人材で構成されていますが、殺伐とした争いなんて一切有りませんから、馬鹿げた事ではよく争ってますけど、戯れてるだけですよね」

  ダイン 「元が異種族だとしても、遊魔には関係有りません、出自に関係無く遊魔は遊魔なんですよ」

  ダインを頂点とする理想社会は完璧に機能している、遊魔社会には貧困や差別など全く存在せずに頂点のダイン以外は誰もが立場は平等であるのだ。

  フォティーヌ 「早く私も遊魔の社会の中で暮らしたいです、耳長達の社会には拒絶されかけていますから」

  フォティーヌは少し悲しそうな顔をして言った、遊魔の社会を垣間見てしまったフォティーヌには耳長社会の不安定さを十分に感じ取っていたが、未練を完全に断てた訳でも無いのだ、そしてその意図を汲み取ったダインは遊魔たる耳長へ新しい道を指し示す。

  ダイン 「なら私の持てる力を駆使して、新しい遊魔社会を育みましょう、その為にもマナはゾッフォの改修を進めて下さい、譲歩を引き出せる相手は狙い目ですからね」

  真夏 「本当に恐ろしい人ですよ、でも耳長が狙われるのは力が有るからですよね、遊魔の人類圏侵蝕は権力層を中心に進んでいますから」

  ダイン 「人類圏はやり易いですからね、武力をほぼマギガントに頼ってますので、力の集中が明白です、それにこの世界の方法だと力が社会全体に広がらずに社会の安定が保たれてますよね、地球人類の間違いは愚者に大きな力を与え過ぎた事ですから」

  真夏 「その二の舞にならない為にも、遊魔による人類管理が必要だと思います」

  フォティーヌ 「全くの同意見です、遊魔に魔進化して明確な解答が与えられました」

  ダイン 「余り持ち上げないで下さい、私は遊魔の幸福を追い求め事を最優先してますから、その為の手段が人類管理なだけです」

  ダインはそう口にしたが、ユーマという圧倒的な武力集団の登場はアーグル世界の新しい秩序構築に大きな力となってくれる筈だ、そしてその新秩序を完全とする為には未知の力を持つ魔龍の探索とその支配が不可欠とも言えるだろう。

  そしてダインはまだ見ぬ強大な力に対しての備えを始めつつあり、遠からぬ未来に両者は会いまみえる事となるだろう。

  おまけ

  ユーマの通信技術 ユーマでは地球技術の再現を色々と模索しているが、既存アーグル技術を応用して研究されているのが通信技術で有る。

  マギガントには通信盤を介した短距離の通信技術が確立されており、ユーマをそれを発展させる事によってより長距離通信の模索がされている、その一例が浮遊母艦に搭載されているのだが、これは単純に規模を大きくして範囲を拡げている。

  それに対して真夏が研究している通信技術は魔導レーダー(レーダーと言っても探知出来るのは通信盤を持つ魔導具だけ)を応用した物である、魔導レーダーも通信盤技術から発展した物だが、球形に広がる通信範囲を方向を絞る事で長距離化に成功しており、マギガントの探知距離と通信範囲をガドリングガンの射程距離以上に引き上げている。

  同様の技術を用いて浮遊母艦同士で行った実験では数百キロ間の通信に成功しており、これは両者の間が直線上に有る事が前提でも有る。

  惑星上と思われるアーグルもより高度が高い方が直線が得られる距離が長くなる為に、通信装置自体を高い高度へと飛ばす必要が生じており、その為の実験機として飛行型ゾッフォが改造されている。

  浮遊母艦搭載級の通信設備を搭載する為に、武装どころか鎧すらも排除した機体が計画されており、同様の機体の複数配置で大陸間通信を目論んでいる。