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森の縁近くで出会ったのは、3人の冒険者たち。
1人は[[rb:巌窟人 > ドワーフ]]の血を引いていると思われる、[[rb:丸盾 > バックラー]]と[[rb:戦棍 > メイス]]を装備した小柄な女性。
1人は額に親指程の角を一対生やした、細身の長剣を携える儚い印象の美しき鬼人。
そして最後の1人・・一度だけ言葉を交わした、黒髪つり目の魔剣使い。
その黒髪はこちらに気付くなり「お前は・・」と小さく呟き鋭く睨みつけて来た。
以前にも増して敵意が強くなっているように感じる。
私は彼に対して何もしていない筈なのだが・・
向けられる、憎悪にも似た気配に内心首を傾げていると、隣の褐色肌がやや警戒を残したまま「「栄光への導き手」のメンバーじゃねぇか」と声を掛けた。
「話すのは初めてだな!アタイは「不屈の砦」4等級のキーラだ」
「同じく、「不屈の砦」の3等級、フラウリィーラよ~。それでこっちが~」
三つ編みに紹介される形で言葉を引き継ぎ「4等級のアド。「不屈の砦」とは別パーティーだ」と簡潔に身分を明かした。
こちら側の身分開示に、あちらも警戒を緩めつつ答える。
「おらは「白角のシグレ」だぁ。等級は3、よろしぐな~」
「あーしはミュレっていうっス!等級は4っス!あーしら皆「栄光への導き手」に所属してるっス!」
最後の1人に全員の視線が集まる中、にこやかな自己紹介の2人とは対照的に、眉間に皺を寄せた黒髪は「セドリック。3等級・・」と、端的に答えた。
「・・おぅ、そっか。よろしくな!あ~。アタイらは狩りと採集の帰りだけど、お前らもか?」
「んだ。おらたちんとこは良く食う[[rb:者 > もん]]が多いだでよ。何かちぃとでも足しになるもんねぇかと思っでな」
鬼人は見た目の儚さからは想像しなかった、何処かの田舎訛りが強い言葉で森に入った訳を話す。
「そうなんス!冒険者は大食いが多いっスけど、あーしらのとこは男が多いのもあって食料の減り方が半端ないんっス!」
両手を腰に当て、不満気に「全く、皆本当に食べ過ぎっス!」と愚痴を言う戦棍使い。
それに苦笑しつつ、褐色肌は「冒険者は食うのも仕事の内だからなぁ」と理解と同情を半々にした様子で返した。
「うちは女性だけのパーティーだけど、それでも良く食べるわよ~?性別は関係ないのではないかしら~?」
「んだなぁ。おらん里の[[rb:女子 > おなご]]は[[rb:男 > おのこ]]よりよぅ食っぞ!」
「種族によってかなり体格違うし、食べる量も変わるよな~!」
「確かに、そうっスね!」
賑やかに雑談を交わす両パーティーの面々。
『この様子なら荒事はないな』と思い、そっと鞘から手を離した瞬間。
バチチッ!!と走った紫電が、目の前を舐めるようにして走る。
「っ?!何を?!」
「リック!?」
突然の敵対行動に驚きの声を上げる中、半精霊の「B」が張った防御結界の縁をなぞり現れた円形の焦げ跡が地面に刻まれ、僅かに煙が立ち上った。
「何やってんスかリック!」
「お前ら!どういうつもりだコラぁ!!」
「ちょ、ちょっと待ってけろ!おらたちは争うつもりなんかね゛ぇ!」
「それじゃあ一体、どういうつもりなのかしら~?」
一気に空気が殺伐としたものに変わり、こちら側はそれぞれ獲物に手を掛け何時でも動けるように体勢を整える。
一方、あちらは言葉と態度共に交戦を否定しながら、原因となった魔剣使いを問い詰めた。
「リック!黙ってないで何か言うっス!!」
「んだ!仲良ぐしようとしてんのに攻撃するなんて、おらたちを巻き込んでまで何がしたてぇだ?!」
仲間に問い詰められるも、鞘から剣の鍔を押し上げ、僅かに刃を見せた状態のまま動かない黒髪はキリキリと眦を吊り上げ、ぼそり呟く。
「うっせぇよ・・」
「なんスか?!」
「うっせぇっつってんだよチビっ子!!俺はこいつだけは許せねぇんだ!」
突如声を荒げた黒髪に、仲間の2人は「「はぁ?!」」と理解に苦しむ様子を見せた。
「まだそんな事言っでんのかおめぇ?!」
「黙れや!お前もすっこんでろ!!おい、クソ金髪!!」
仲間に対して暴言を吐き、柄に指を掛けながらこちらに向かって呼びかける黒髪。
『もしかしなくても「クソ金髪」とは私の事か?』と少しばかり衝撃を受けつつ「何だ?」と短く答える。
「その邪魔な精霊どかして俺と1対1で勝負しろっ!!」
「断る」
「んだとぉ?!!」
「戦う理由が無い」
「俺にはあるんだよっ!!いいから剣を抜きやがれ!」
今にも抜刀しそうな勢いでまくし立てる黒髪に、こちらは『どうしたものか』と仲間内で視線を交わした。
「アド、あいつと何かあったのか?」
「いや、少し言葉を交わした程度で特には・・」
「でも「何も無い」って感じではないわよ~?」
「・・本当に身に覚えは無いのだが、どうしてか最初から敵視されている」
小声でやり取りしていたところに、とうとう痺れを切らしたらしい黒髪が剣を鞘から抜き放つ。
「バカ?!リック!!」
「¶ΦЮЙっ!!」
顔色を悪くした戦棍使いと、聞き慣れぬ言語を発した鬼人が止めに入ろうとした。
が、雷の気を帯びた魔力が黒髪を取り巻き始め、近づくことが出来ない。
「あら~」
「こいつ、抜きやがった!」
一方こちらも三つ編みと褐色肌がそれぞれ獲物を構え、流れのまま前に出ようと動いた。
しかし、私はそれを片手で制し止める。
「2人が手を出す事は無い。そのまま下がっていてくれ」
「アド!」
「まさか、1人で相手をするつもり~?」
心配してくれたのだろう。
そう不満気に言う2人に、笑みを浮かべて答えた。
「いや、無力化するだけだ」
既に私の意図を明確に察知して、戦闘態勢に入っている半精霊に告げる。
「頼む「B」」
結界を張り続けていた「B」が頷き答えると、片腕を振った。
それだけで、黒髪に向かって風圧が叩きつけられ、後方に大きく弾き飛ばされる。
空中で姿勢を制御して脚から木の幹に着地、衝撃を逃がした黒髪は地に降りるとこちらを指さして怒鳴った。
「1対1って言ったよな?!不意打なんかしやがって、この卑怯者!」
「卑怯?私は断った筈だ。それを問答無用と剣を抜いたそちらこそ勝手が過ぎるのでは?」
「ぐっ!・・ぐちぐち口ばっか動かしてんじゃねぇ!その鞘に入ってんのは棒切れか?!あぁっ?!」
「・・何度も言うが、戦う理由が無い」
通常の手合わせならば望むところだが、感情的になっている今の状態では受ける気になれない。
「だからぁ!俺にはお前を倒す理由があるっつってんだよぉ!!」
叫ぶように声を張り上げた黒髪の周囲を、バチバチッ!と小さな雷が幾つも走る。
だが、対する「B」はそんなの関係ないとばかりに手首を翻した。
「B」が手を振る度、不可視の斬撃が幾つも飛ぶ。が、黒髪はそれを剣で弾き防御する。
「ぐっ!このっ!」
ギンッ!バキン!と魔力がぶつかり合い、剣戟と聞き紛う音が絶え間なく続くが、僅かな合間に放たれた風圧に再度圧され、黒髪は大きく体勢を崩した。
そこへ今度は斬撃ではなく風の弾が飛び、防御が間に合わない程次々と黒髪の体を打ち付けていく。
途切れぬ攻勢に声すら上げられず、膝をつく黒髪。
だが頑として魔剣は手放さず、腕で顔を庇いながらこちらを睨みつけた。
その目が如実に語る。『俺はまだ負けてない』と。
インクを垂らしたような黒い瞳は、だが次の瞬間に大きく見開かれる。
「っ!反則だろ!!」
驚嘆とも受け取れる愕然とした小さな呟きは、斜め上から落とされた大量の水によって押し流され、誰の耳にも届く事は無かった。
水が左右に分かれ流れ去った後、残されていたのは水圧により地に張り付くようにして伏せ倒れる黒髪・・
あまりの惨状に一時の間、場の全員が身動きせず無言で佇むのだった。
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