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褐色肌に紹介された「不屈の砦」のメンバーの情報を、頭の中で反芻する。
ミリアーナ。
リーダーで、分厚い体格。3等級の盾使い。
デラ。
副リーダーで、長身赤毛。3等級の双剣使い。
モウロ。
空を飛べる虫人で4等級。
フラウリィーラ。
柔和な雰囲気で間延びした喋り方をする三つ編み。3等級の[[rb:斧槍 > ハルバード]]使い。
リルベル。
乗り物に弱く、ボサボサ髪の魔法使いで4等級。
そしてキーラ。
褐色肌の弓使い。狩りが得意で、索敵や偵察も出来る4等級。
随分と個々が特徴的で覚えやすいメンバーだ。
そんな感想を抱いていたところで、扇状に立ち並ぶメンバーの中から離れた褐色肌が隣へとやってきて「そんでコイツが「アド」!」と肩を叩く。
「4等級だけど、すっげぇ強いぜ!」
そうパーティー仲間へ簡単な紹介をした褐色肌の言葉を引き継ぐ形で、言葉を紡いだ。
「「アド」だ。使うのは片手剣と、魔法を少し。先日登録したばかりの4等級だ・・キーラが言うには実力と等級が釣り合っていないそうだが・・自分では良く解らん。以後、よろしく頼む」
そう自分について語り、軽く頭を下げて「不屈の砦」メンバーへの挨拶とする。
「こっちこそ。よろしくなアド。昨日に続き、ウチのキーラに構ってくれてありがとよ」
そう言って、一歩前に出て来たリーダーに手を差し出されたのでこちらも右手を差し出し、互いに握り合う。
・・ごつごつとした、戦う者の手だ。
握手はほんの少しの間で終えたが、その僅かな時間でこの者が幾多の戦いを生き抜いてきた猛者であることが窺えた。
「いや、付き合ってもらったのはこちらの方だ。良い手合わせだった。感謝する」
「ははっ!そうかい。そりゃ良かった。こいつは実力はある癖に、どうにも他人との係わり方が下手でね。時々問題を起こすんだが、今回は良い出会いになったようだ。どうだい?この後一緒に晩飯を食べながら手合わせの話でも聞かせてくれないかい?」
「そうだぜアド!あんたが処理を手伝った獲物なんだ。食ってけよ!」
夕食に誘うリーダーに、褐色肌も同調して言う。
他の冒険者との話に興味はあるが・・
ちら、と背後の半精霊を見上げると、軽く首を振られて「不許可」と知らされた。
「すまない。誘ってもらえた事は嬉しいが、今回は遠慮するとしよう」
「え~?!いいじゃん!食ってけよ~」
頬を膨らませて不満を表す褐色肌の肩にのしっと腕を回し押さえたリーダーは「そうかい。じゃあまた機会があれば、その時に話そう」とこちらの都合を受け入れる。
「あぁ。またの機会に。ではなキーラ。手合わせ、楽しかった」
そう言って、ひらと肩の高さで手を振るとリーダーの腕から逃れた褐色肌が飛びついてきた。
勢いのまま、両手で私の右手をがしっと握り、ぶんぶんと激しく上下に振る。
「アタイもだ!すっげぇ楽しかったぜ!またヤろうなアド!」
「ああ。その内にな」
手を放し、「では、また」と別れを告げ、褐色肌の背後で待ってくれていた他のメンバーにも軽く頭を下げ、半精霊の「C」を連れてその場を離れた。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
ざっ、ざっ、と。歩を進める度に靴裏で砂を噛む音がする。
真っすぐ正面に視線を固定して、傍仕えが戻っているであろう天幕へと向かっている途中、背後に浮いていた「C」がすぅと両肩に掴まるようにして寄り添った。
「・・鬱陶しいな・・」
「C」が気にする右斜め後方に振り返ることなく、前を向いたまま呟く。
ピリピリと、敵意の籠った視線が後頭部に突き刺さる感覚・・
どうやら自分とそう歳の変わらない男性冒険者が、こちらを睨みつけているようだ。
『・・何か気に障る事でもしたか?』
ここ最近の行動を振り返るも、心当たりは皆無。
自分ではどうしようもない事で悪感情を抱かれるのは、何度経験しても理不尽に感じる。
暫くして、「C」が見ている事に気付いたのか視線は途切れた。
『・・面倒な事になりそうだ・・』
肩を落としてふぅと軽く息を吐き、気持ちを切り替え歩みを進めた。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
傍仕えと半精霊たちが待つ天幕へと帰り着き「今戻った」と声を掛けると、打ち合わせを終えていた傍仕えに迎えられる。
「お帰りなさいませ。夕食の支度が整っておりますが、すぐお召しになりますか?」
「そうだな、頼む」
「畏まりました」
折り畳み出来る簡易椅子に腰を下ろし、傍仕えから箸を受け取ると椅子と同じく折り畳み出来るテーブルの上に料理が運ばれてきた。
まず「A」が持って来てくれたのは金属のカップに入れられた茶と、食べやすい厚さに切られたパン。
続いて「B」がメインの肉料理と、スープを運んで来た。
肉料理は先に切り分けられており、ナイフやフォークが無くても食べやすくなっている。
どれも美味そうだ。
だが、テーブルの上に整えられた食事が一人分しかないのは、どこか寂しい・・
「カルセも、手が空いているなら一緒にどうだ?」
「・・ありがとうございます。それではご一緒させて頂きます」
ほんの一瞬、迷う素振りを見せた傍仕えだったが、その方がはたから見て違和感が無いと判断したのだろう。直ぐに頷き、半精霊にもう一人分運ぶように指示した。
正面に傍仕えが座るのを待って、何とはなしに彼女が食事の時にしていた両手を合わせる動作と「いただきます」という言葉を口にして、スープの入ったカップを手に取る。
『次に顔を合わせた時にでも、この動作と言葉の意味を訊ねてみるとしよう』
そんな事を想いながら、手元で揺れる茶色の水面に視線を落とした。
今日のスープは、昨日飲んだ物とは別の[[rb:異世界 > あちら]]の品だ。
確か「みそしる」だったか?丁度良い塩気が美味い。
具は海藻と、四角く白い立体のものが幾つか。
そして何かの植物らしい輪切りにされた、緑色の丸い輪だ。
一見地味だが、これも湯を注いだだけの物と思えば十分馳走だろう。
次に噛み応えのあるパンを齧り、肉料理を口に運ぶ・・
これは、昨日褐色肌から貰い受けた[[rb:旨鳥 > うまどり]]か!
奥歯で噛めば柔らかく、やや甘い油と旨味の詰まった肉汁が大量に溢れて満ちる・・
咀嚼し、飲み込んだ後で鼻に抜ける香草の香りが心地よい。
舌に残る旨味がまた次の一口を早める役割を果たしており、その狙い通りに私はまた一つ口に運んだ。
旨鳥のその名に恥じぬ美味しさに夢中になっていると、皿の端にある黄色に茶色の粒が混じったソースらしき物が目に留まる。
一旦手を止め、茶で口の中を落ち着けて傍仕えに訊ねた。
「カルセ、この端にあるソースは?」
「そちらは頂いた調味料の内の一つです。少し舌がピリッとしますが、肉の味が引き立ちますよ」
「ほぅ。それは良さそうだな・・」
早速箸で肉を一切れ摘まみ、ソースに浸して口に運ぶと期待を込めて咀嚼した。
一呼吸ほど置き、『何も感じないが・・』と首を捻りかけた瞬間。舌にヒリヒリっ!とした刺激を感じて瞬く。
これは、美味いっ!
噛むと、美味な油と旨味が舌に広がり、黄色いソースのピリリとした刺激が香草の香りと共に鼻からすーっと抜けて、何とも複雑な風味を生み出した・・
それからは、更に夢中になって肉を頬張った。
咀嚼し、パンを齧り・・嚥下してスープを啜ると、また新しく肉を箸で摘まむ。
口の中で解れた肉の繊維とパンを混ぜ、舌で味わい、飲み込んだら茶でさっぱりと流して、次の肉を楽しんだ。
幸せな気持ちで食事を堪能していると、視界の端に肉が山と盛られた皿が入る。
顔を上げると、半精霊の「A」が追加を運んで来てくれたようだ。
私の食べ進む速さを見た傍仕えが指示したらしい。
「A」が問う様に小首を傾げるので感謝を込めて頷くと、空になった手元の皿が退かされ、換わりに新しい皿が置かれた。
勿論、皿の端には黄色いソースが添えられている。
「お気に召したようで良うございました」と微笑む気配のする傍仕えに「とても満足している」と伝えたくて、力強く頷いた。
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