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【琥珀の牢】浄瑠璃・兄弟再会

  茂みの中、北天門を目指し疾走る大狸の姿はさながら鬼神の如く、、

  目の前に現れた悪鬼を槍の一刀にて切り捨てると脇目もふらずに走り抜ける

  僅かな間も惜しんでひたすら前へ、、、

  

  後を追いかける若虎は再び動き出そうとする悪鬼へ『とりもち玉』を投げつけ動きを封じ

  大狸の背中を追いかける、、邪魔になるので背中の道具箱の下半分は太犬の元へ置いてきた

  

  普段なら自分など付いて行っても"足手まとい"にしかならない

  だがそれは、、、『ついて行け』と言った太犬も判っている筈の事、、、

  大狸から何か"危うさ"を感じているのは若虎も同じ

  ...箏雪さん、、余裕が無い.....

  

  忍の"本気"の疾走に、漁で鍛えた足腰で必死についていく若虎

  やがて前を疾走る大狸の背中越しに"北天門"が見えてくる........

  

  

  

  

  

  ...頼む、間に合ってくれ!

  それだけを思いひたすらに疾走る大狸の視界に、北天門が、、

  

  

  

  

  

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  数刻前、、、、

  

  北天門に現れた小面を被った小柄な殻繰(からくり)使いの天壊の忍が一人、、、、

  対する昇月は皆各々違えど、腕に覚え、或いは才覚のある者ばかり

  

  如何に五百枝蔵人の手になる殻繰があれど、"忍"一人では如何ともし難い様に見える

  

  対峙した時こそ殻繰による意表を突いた攻め手が功を奏したものの、、

  今は充分な"間"を取られ、、、周りから押し包む様に向かってくる多種多様な攻めを

  

  時に枝葉の影に隠れて殻繰師"垂耳"と"桜太郎"の『とりもち玉』をやり過ごし、

  或いは狐娘"なり"の大太刀の一撃を、左脚を模した殻繰『胡蝶蘭』の刃で受け流し、

  動きを止めようと的確に手足を狙ってくる狼"蓮助"の木刀の連撃を腕の殻繰『彼岸桜』

  『鳳仙花』で受けて凌ぎ、

  隙あらば、華奢な少女の様なその体を喰らわんと食欲を滾らす大狼"新月"の手を掻い潜り、、

  

  脚を止めずに凌いで"囲まれる"事を辛うじて逃れている有様、、、

  

  そうして辿り着いた先は

  北天門の外れ、、、朽ちそうな祠(ほこら)を太い古木が囲む、、、忘れ去られた場所、、、

  かつて此処で巫女の舞いが奉納されていた事など誰も覚えていない

  その名残を苔むした石畳に残すのみ

  

  祠に背中でもたれ掛かる小面の忍が見つめる先には自分を追う者達の影、、、

  息が乱れてくる、、

  

  戦場(いくさば)の流れを読み分が悪ければ早々に引くのも、忍としての重要な才覚の一つ、、

  "無駄死にさえも許されぬ"、、、忍とはそう云うモノだと教わった......

  

  ・

  ・

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  ・

  ・

  

  しかし、、、、、、  此処は"舞台"

  

  逃れる事に精一杯と見せ此処へ"客"を誘った、、、死の舞を披露する舞台へ、、

  此処には観る者を驚かせる為の様々な"仕掛け"が仕込んである

  五百枝蔵人が殻繰に施した"改良"もまだ全て披露した訳では無い

  

  だが、、辛うじて此処に辿り着いた事も又、事実、、、、、、

  あの者達を相手に自分は舞う事が出来るのか....."無駄死"という言葉が頭を過ぎる

  

  

  だがしかし、、、、、

  "舞"に掛けては誰にも負けぬという自負がある、、いや負ける事など許せない

  何時もそうして相手を魅了してきた、、、、其れが観る者を"死へ誘う"舞であっても同じ事

  ...いつも通り"無心"に舞うだけ....

  己にひたすら言い聞かせ、狐娘達追手が客席(舞台)に"上がる"のを横目で確かめながら

  追っ手の目の前で祠を開け放つと

  

  歌舞伎の早替りの如く桜色の艶やかな衣に身を包み、袖口より取り出した白い扇を翳して

  くるりと回る"天女"の姿が月明かりに照らされて映える、、、

  

  ......どんな舞いも観る者を"魅せ"なくては始まらない、、、、

  

  

  

  唖然とする者達を前に小面の天女より、少女の様な白い手で

  

  ふわり ふわり と返される扇より怪しく光る粉が宙に舞う、、

  

  「な、なんだい!?」

  目の前での"天女"への早替りを目にして唖然としていた狐娘"なり"が我に返って慌てて後ろへ

  飛び退る、、、、、、、、しかし、その背後...

  高さ二丈(六めーとる)弱から狙うは"天女"の手元にある筈の右腕を模した殻繰『鳳仙花』?

  微かな破裂音と共に吐き出された鋼の種(針)を抱えた"ホウセンカの蕾"がその背に迫る、、、

  「なりちゃん!!」

  いち早く背後の殻繰に気づいた北極狐"豊平"が飛び掛って狐娘を押し倒す

  しかし、、、直撃こそ逃れたものの、、石畳の上で弾けた"蕾"より無数の種(針)がばらまかれ

  「うぐ!、、」

  辺りの木の葉が針によって舞い落ちる中、、狐娘に覆い被さったままの北極狐の着物が

  まだらに赤く染まっていく、、、、

  「おいヘタレ!

  しっかししろ!

  おい!!」

  伸し掛かったままの膨よかな体を慌てて押しのけ、北極狐を揺する狐娘の声に焦りが滲む、、

  

  

  周りの木々に張り巡らした繰糸に繋がる"予備"の殻繰達を祠より繋がる繰糸で操る"仕掛け"

  五百枝蔵人が廃棄したモノの"廃品利用"

  

  ......先ずは序の口、、、、

  予想を裏切る"筋書き"で揺さぶり、客席から"舞台"へと引きずり込み、、、

  

  

  

  怯み、怒り、、観者達の心がさざめく中、、

  「罠に誘い込んだって訳か、、だがよ、

  此処でテメエを"喰"っちまえば終わりだろが!」

  繰り手との間は約二丈(六めーとる)、、、

  大狼"新月"が飛び掛かろうとぐっと身を乗り出し、そのまま一気に間を詰めようと、、

  そう"思わせ"、後ろ手に掴んでいた"悪鬼の腕"をそのまま振りかぶって投げつけた

  

  考えなしに近づけば、他の"仕掛け"で返り討ちに会う、、、ならば予想外の攻め手で

  繰り手自身に体を躱させ、殻繰の手が疎かになる隙に間を詰めようという咄嗟の"奇手"、、

  その隙(とき)を待ち構え、引いた右脚に力を込める大狼の目の前で天女が"消えた"

  「な!?」

  悪鬼の腕が祠にあたって弾かれ、手前に返る.....

  

  慌てて探した"その姿"は呆気無く見つかった、、、元居た場所の一丈(三めーとる)上に、、

  何の前触れも見せずに すっと"宙"へ浮き 躱した事になんの感慨も示さず

  只 ゆらり と吊られる様はまさに操り人形の様、、、大狼の食欲が我知らず萎える

  「この野郎....」

  代わりにふつふつと思う通りにならない"苛立ち"が募ってくる、、

  ...なんでこんな奴に、、、

  わからぬ相手に翻弄される事で、普段押し込めている

  『他者に恐れを抱く事』への"恐れ"がうっすらと背中に滲んでじとりと肌をベタつかせる、、

  

  ......己を"人形"として操り、観者達の心を掻き乱して、自ら"舞台"へ上がらせて、、

  

  

  

  く、、と頭を振りギリッと上手に吊られた"人形"を睨みつけ

  ...あんな奴、なんでもねぇ!

  そのまま引きずり下ろしてやろうと祠に向かって駆け出そうとする大狼を

  「待ちな!」

  すっと左手を突き出して止める狼"蓮助"、、

  「なんだ? 邪魔しやがるなら、、」

  「アレを見てからにしな.....」

  そう言って木刀が示す先は、先程投げつけた悪鬼の腕、、、白い煙を上げて溶けている箇所を

  見れば先程"天女"の扇より舞い立った粉が付着している......大半は未だに宙を漂っている

  「只の目眩ましじゃねぇって訳かよ、、」

  いつの間にか祠からも吹き出し始めた"粉"を目の当たりにして、"慄き"がびっしょりと背を

  濡らす、、

  

  ......虚実織り交ぜた筋書きで翻弄し、

  知らぬ間に心へ"見えぬ糸"を結わえて、

  筋書き通りに動く舞台の"操り人形"となさしめる、、、、

  

  

  

  慌てて祠から離れる昇月の面々、、、

  北極狐の両脇を狐娘と狼が支えて疾走る

  最早、繰り手の次の"筋書き"から逃れるのがやっとの有様、、、

  

  ・

  ・

  ・

  

  そんな様子を、、、少し離れた箇所、木の陰から見るのは、

  先程着いたばかりの殻繰師の二人、犬の"垂耳"に鬣犬の"桜太郎"

  体力の無い鬣犬に合わせて追いかけたのが幸いし、そっと木の陰で投石器を組み立てる

  ..."繰り手"を『とりもち玉』で捕らえられれば、周りの"殻繰"も動かなくなる筈、、、

  宙に浮かんだ"天女"の背中を慎重に狙う犬が目を細めて"とりもち"を放とうとする間際

  「垂耳くん!!」

  叫ぶよりも早く手を引く鬣犬に驚き、よたつきながら三歩前に動いた犬の背中で

  僅かに的を外した左脚を模した殻繰『胡蝶蘭(試作品)』の刃が地面に刺さる、、、

  「どうして!?」

  背を掠める刃に驚愕する犬の殻繰師、、

  鬣犬の殻繰師が横目でちらりと見るは、こちらを見向きもしない宙に浮かぶ繰り手の

  背中、、、

  ...まさか、僕達が"視えて"いる!?

  

  ......張り巡らされた繰糸は殻繰を操る為のみにあらず、

  糸より指先に伝わる"震え"で視界だけでは把握出来ない動きを感じとり、

  遅れて来た者達を"舞台"へと追い立てる、、、、

  

  

  向かいより現れた右脚を模した殻繰『曼珠沙華(試作品)』の双方から追い立てられ

  祠の方角へ逃れる殻繰師の二人、、、そうして先の面々と再び集う事に.....

  

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  ・

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  ・

  

  祠の上で揺られながら、

  全員が"舞台"に上がった事に、小面の陰で我知らず笑みを浮かべる繰り手の忍、、、

  

  しかし、、心の表れ"血涙"は止めどなく流れ、纏う衣をほんのり赤く染め始める有様、

  嬲る事に喜びを見いだせぬのだから

  "こんな事"が何かの慰めになる筈も無し、、、

  

  だが舞台での"舞"と"人形操り"を喜びとしている小狸にとっては、

  "笑み"が浮かぶのも又自然な事

  

  その"舞台"が誤ったモノだという事に気づかぬまま、、、

  

  ......"人形"は全て舞台に上がった

  後はどう華麗に"終わらせるか"、、、

  

  

  

  殻繰師二人を追い立ててきた殻繰より"大弾"が放たれ、

  石畳の上で弾けて件の"粉"を撒き散らす、、、、一同は前後を"粉"の霧に囲まれた形に、、、

  

  「くそ!!」

  「逃げ場なしかよ!」

  毒気づく狐娘と大狼、、、

  

  「何です、この"粉"は!?」

  「離れろ! 肌を焼かれるぞ!」

  殻繰師達の問いに答える狼、、、

  

  「嬲り殺す気か、、、」

  両脇を支えられた北極狐が祠の方へ振り向き、宙に浮いた"天女"を見て呟く、、

  手綱街道で見た亡骸達の姿が脳裏を過ぎる

  ...おまりちゃん、、、

  だがそんな思いは中断される、、、霧の中、何かが動いた様な気がして目を凝らすと、、

  「え!」

  北極狐の声につられて一同、霧の中に目をやると

  霧の中より飛び出したのは、白装束の般若の面、、、

  「なんだって!?」

  「一体どうなってやがる!?」

  

  ...二人目!?

  吊られたままの"天女"へちらりと目をやり、再び白装束の"般若"へ視線を戻す

  ...でもどうやってあの"霧"の中を身を焼かれずに、、、

  

  ......強酸を含んだ"粉"が撒かれたのは、扇での最初の二振りのみ、、

  祠より湧きでた"粉"は中和剤と麻痺毒が主成分、、

  周囲の視界が霞む中、、"天女の衣"からするりと抜け降りた忍は般若の面を

  被って最後の"仕上げ"へ移る

  解毒剤を服用している忍は霧の中でも自在に動けるが、、、

  

  

  

  柄のない小太刀による霧の中からの"一撃離脱"の繰り返し、、最初こそ難なく躱していたが

  刃を受け止める狐娘の様子が、、

  「く、、」

  弾いた所で太刀を戻す力が無く、太刀に掴まり己が身を支えるのがやっと、、

  麻痺毒が効いてくる、、、先程からの"攻め"で霧が程よくかき混ぜられ一同を蝕んでいく

  他の者たちも同様、立っているのがやっとか、或いはもう座り込んでいる者も.....

  

  そんな中、白装束の般若が今度は静かに姿を表すとゆっくりと狐娘へ歩を進める

  問い掛けの声は少女の様な高い声、、心なし微かに"震え"が含まれているのは気の所為か

  「殺す前にひとつ聞いておく

  手綱街道で、、、、、

  お上の命に従い命を落とした大狸の槍使いに手を下したのは誰か知っているか?」

  

  

  

  

  ...本当は"いけない事"だと判っている、、、、

  忍が私情を交えた振る舞いをする...『誰が兄を殺したのか』を問う事など

  別に敵討ちの為では無い、、どうせ罪人は粛清(皆殺しに)するのだ

  

  だけれども....どんな死に際だったのか、、、せめてそれだけでも聞かなくては

  両親にどうして会う事が出来ようか

  

  まして、、、もしかして"手を下した者"を討ち漏らしていたかも知れぬなど....

  そんな思いを引きずる事など、耐えられない

  

  

  

  

  問われた狐娘が"知らねぇよ"と口を開こうと.....先程の光景を思い出して、はっと口を噤む

  ...あん時、森の中に入って行ったアイツ(覆面の大狸)、、、

  確か、元"天壊"って、、

  

  言いかけて口を噤んだその様を"命惜しさの時間稼ぎ"と見た白装束の小柄な忍が僅かに苛立ち

  を滲ませて冷たく言い放つ

  「くだらない時間稼ぎに付き合うつもりは無い、、、、

  死ね」

  

  これ以上、私情で行動する事も、罪人達に煩わせられる事も、許されぬ、我慢出来ぬと

  "兄への思い"を無理矢理に面の裏(心の内)で断ち切って『胡蝶蘭』の毒刀を、、、

  「!?」

  振り上げた右手に絡みついた縄の出処は手負いの筈の北極狐、、、

  

  平素なら、、本当に"無心"だったなら、縄が腕を捕らえる前に北極狐の動きに気がついた筈、、

  だが、"兄への思い"、、こころ(感情)の昂ぶりが、勘働きを鈍らせた

  そして、其れはそのまま、、いや、更に判断を誤らせ

  苛つきをそのままに、、、左手で『鳳仙花』を北極狐に向ける、、、

  即座に縄を断ち切り"霧"の中に紛れればどうという事は無い"悪足掻き"で済んだ筈の事が....

  

  べたり、、左手に絡みつく"とりもち"の感触に驚いて声も出ない

  軟弱な殻繰師達など、もう身動き一つ出来ぬ筈と、、、目に入って来たのは木刀の代わりに

  『とりもち玉』を殻繰師達より受け取り投げつけた狼の姿、、そして、、

  

  「ぐぅおりゃ!!」

  底なしの体力を元に自らに"活"を入れるべく雄叫びを上げて大狼が立ち上がる、、其れは緩慢

  と言ってもいい動きではあったが、注意を逸らすには充分だった、決して協力を意図した行動

  では無くとも、、、

  

  "目の前の敵"から目を離してはならぬという、、、基本中の基本を忘れた小狸の視界に

  大上段の大太刀を振りかぶり、残りの力を全てつぎ込んだ渾身の一撃を放つ狐娘の姿が、、

  ...間に合わない、、

  

  咄嗟に殻繰を盾に右腕1本で受ける形となる小柄な忍、、五百枝蔵人の改良はその一撃に耐え

  たが、、、

  右手の殻繰が弾かれ、地に仰向けに倒れる、、、いや、正確には僅かにでも力を逃そうと背中

  から仰け反って"跳んだ"結果なのだが、、はずみで般若の面が外れる

  

  鈍痛のする右手首で握り直した小太刀で辛うじて左手の"とりもち"と右手に絡んだ"縄"を断ち

  切る小柄な忍、、、どうにか立ち上がる

  

  縄を引き続けて右手の自由を奪いつづける力は北極狐に残っておらず、

  立て続けに『とりもち玉』を当てる余力も狼には残っていない

  しかし、、、とりもちでベタつく左手と鈍痛のする右手では殻繰がまともに動かせる筈も無く

  まして緩慢な動きながらもこちらを"喰らわん"と迫ってくる大狼を前にしては

  自身の"舞い"が無残に終わった事を認めざる得ない

  何よりも己の"血涙"を衆目に晒すという醜態を、、、、

  

  「!」

  立ち上がる面の外れた忍の素顔を目の当たりにして、狐娘が息を呑む

  ...こんな、華奢な、、、子供の、、、女?

  其れに目から流れているのは、、血、、、

  

  なんとか"もう一撃"という考えが消し飛んでしまった、、もっとも太刀を振り上げる余力は

  もう残ってなかったが....

  

  

  

  ...どうして、、どうして、、

  "舞"さえも奪われた、、、

  血涙が止めどなく流れ出るのを止められない、、拭う事さえ今は満足に出来ない、、、

  殻繰も幾つかは諦めざる得ない、、、"演出"の手の内が知られてしまう、、、

  あと何を"奪われる"のか、、

  

  潸潸と血涙を流し、辛うじて泣声を上げる事を堪えてその場を離れようとする小狸の前に

  霧の中から大柄な影が現れる

  

  「華焔、、、」

  

  ...ああ、罪人達はどうしてこんなにも創意工夫を凝らして自分から大切なモノを

  奪っていくのか、、、

  

  "舞"が最後の最後であんなにも無残に壊されたのも罪人達の演出だったのだ

  

  兄様の"生き写し"、、、きっと知らぬ間に幻術をかけられていたのだろう、、

  どう見ても兄様にしか見えない槍使いの大狸、、、

  顔を隠していてさえもそう感じる、、

  

  息を切らした大狸が顔を隠した布を解き始める

  「、、、、間に合った、、、、、」

  やや苦しそうに息を乱しながらも、その口調はまるで、、喜びを噛み締めているかの様に、、

  

  ...ああ、こうやって罪人達は今度は、兄様の想い出や、闘う気力も奪っていくのだ、、

  だって、、この相手になら自分は喜んで命を差し出してしまいそうになる

  ほら、"兄様"そっくりの笑顔で、、、、

  

  「兄様、、、、」

  

  ...きっと今、自分は"嬉し涙"を流しているんだ、、罪人達の思い通りに、、

  罪人達はきっと愉快だろうね、、、

  

  「、、、華焔、済まなかった、、、」

  「ううん、兄様は何も悪くないよ」

  

  ...いいよ、何もかも全部奪っていけばいいよ、、、、僕はもう勝てないから、、、

  でもね、、

  

  「、、、、御願いがあるんだ、、兄様」

  「なんだ? 何でも言ってみろ」

  大狸も嬉し涙を流しながら問い返す

  

  小狸は本当に嬉しそうな笑顔で泣きながら、、

  「兄様、、死んで!」

  握るのが覚束なくなってきた右手の小太刀にありったっけの体重を載せて

  その懐に飛び込む、、、、、

  

  ...絶対に"只"ではあげない!

  

  

  

  

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