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「ん....んぅぅ.....」
もうどれだけの時間が経っているのだろう? そもそも此処は何処なのだろう?
相田高校の三年生、大柄....と言うよりも、縦にも横にも大きい、腹回りが立派な太り気味の体格ながらも、全身をふんわりと包む皮下脂肪の下に強靭な筋肉を隠し持った頑強な躰の黒熊、自他ともに認める界隈一の腕自慢の番長・熊谷千弘は必死に躰を捩ってこの状態から抜け出そうと藻掻き続ける事、暫し....
だが、手首と肘を背中で固く縛める縄は解けるどころか、緩む気配さえ無い。脚さえも...相撲部に助っ人で所属している彼は日々の股割りで充分な柔軟性を持った開脚度なのだが、その脚が開く限界にまで足首を縛める縄が両側から引っ張りほぼ一直線に開かれた脚の所為で、踵から尻までピッタリと床に着けられた状態で、そこから一ミリたりとも動く事が出来ない。助けを呼ぼうにも、口中に押し込められた布が舌を押し付け、その上から栓をする様に噛まされた轡で、小さな呻き声を漏らす事が精々。目はしっとりとした布で二重三重に巻かれて、周りの光景は全く目に入って来ない。
何よりも気になるのは今の自分の状態である。先に述べた状態に加え、皮膚を時々撫でる空気の感触から、自分がほぼ全裸....其処に背中から学ランを掛けられ、学帽を被せられた....まるで晒し者の様な姿にされている事が判る。とてもではないが、知り合いに見られたらと思うと気ばかりが焦り、無駄と判りながらも躰を捩って、この状態からの脱出を試みてしまう。
それに千弘にはコンプレックスがあった。今も外気に晒されている巨大な陰嚢に比して小さな剥けない竿....いわゆる短小包茎というやつである。
相撲部の練習に付き合って、その後にシャワーを浴びる時も、出来るだけ周りの相撲部員に見られないように気をつけているくらいである。
無駄な疲労に、そうした羞恥心も加わって、今、千弘の躰は汗でぐっしょりと濡れ、仄かに湯気を立てていた。
『こんな姿は見られたくない』しかし一人では、どうにもならない事も事実である。だから助けも来て欲しい。そんな板挟みの心境が、千弘の豊満な躰を上気させ、躰を汗でじっとりと濡らす姿は、とても淫靡な物であった。
「ん....んくぅ....」
呻き声も心なしか色っぽく聞こえてしまう。そんな千弘の姿を、物音一つ立てず、声も出さずに町外れの空き家に据え付けた監視カメラでずっと観察している人影が2人。
元番長の二年生の白瀬と、一年生の岡本である。千弘が来るまでは、白瀬こそが、この界隈を取り仕切っていた番長だった。それがある日千弘が、この高校に引っ越してきてからあっという間に立場が代わってしまう。必死に攻略法を考え、練習もし、それでも何度挑んでもたったの数発で勝負がついてしまう豪腕。その度に白瀬は悔し涙を流し続けた。そんな時だった。これまで全く接点が無い、ごくごく普通の一年生であり、今はどういう訳か千弘と親しくしている一年生の岡本から、どういう心境なのか、今回の計画を持ちかけられたのは。
岡本が、睡眠剤入りのジュースを千弘に渡し、飲み終えて意識を失った千弘を陵辱して、その姿を撮影し、其れをネタに、千弘を従属させてしまおうと....
実を言えば、岡本は、千弘に惚れていた。ゲイである。しかし、千弘はノンケ.....だから、岡本は決心する。恨まれようと、どんな汚い手を使ってでも、千弘の躰を手に入れようと。あの豊満な躰と闊達な心に、一生消えない痕を自分の手で刻みつけてやろう....そう思う程に岡本は本気で惚れていた。だから、手加減などするつもりはない。徹底的にヤるつもりだった。その為の様々な道具を取り揃えていた。
岡本の本心など白瀬には判らないし、知りたいとも思わなかった。以前の誇り高き『無敵の番長』であったならば、むしろ痛めつけられたのは岡本の方だろう。だが....何度挑んでも、いい勝負にさえ持ち込めずに瞬殺されてしまう屈辱。離れていった配下達。そうした出来事が、この誇り高き猛牛の魂にヒビ割れさせ、その隙間が岡本からの『悪魔の囁き』を受け入れさせてしまった。卑劣だと、今でも思う。だが
『どんな手を使ってでも、勝たなきゃどうにもならねぇ....』
自身の仄暗い思いを自嘲しながら白瀬が
「なあ、そろそろ良いんじゃねぇか」
岡本が首を横に振る
「あのジュースには、媚薬と、痺れ薬を仕込んであるんです。其れがちゃんと効き始めるのは後もう少しですよ。そうしたら、どうどうと色々な恥ずかしい事やってやれるんですよ」
彼らの足元には、大小様々な張形やバイブ、ローションに、一抱え程の赤い頑丈なロープが横たわっていた。岡本が内心舌舐めずりする。
『千弘先輩、この縄で飾ってやったら、凄くエロいだろうなぁ.....』
[newpage]
『何か物音が近づいてくる....足音だ。一人じゃない。一体誰なんだ?
出来れば....物音で気がついた誰かが助けに来てくれれば....
それとも....自分をこんな目に遭わせた奴らだろうか?
くそう!! せめて目隠しさえ無ければ、状況が判るのに』
....そんな千弘の思いなど知らず、いや、何を考えているかなど考えず、白瀬と岡本は拘束され、視界を奪われ、微かに焦りの表情を覗かせる千弘に近づいていく。そして....岡本は其処で立ち止まりカメラで撮影を続け、白瀬は目の前で足を止めて、千弘を見下ろして睨みつける。そうした状態が5分程続く。
千弘は焦りと、若干の怯えの表情を見せて、更に汗をぽたりと垂らす。その量は既にぐっしょりと全身を濡らす程で、千弘の尻と股間の付近の床には汗溜まりが出来ていた。
目の前に一人、立っている事が気配で判る。だけど何もしてこない。助ける事も、何かよろしく無い事も。其れが一層、千弘の不安を煽る。ゴクリと生唾を飲み込んだ直後に其れはやってきた。
「んぐぅ!!!」
腹への強烈な蹴り。何も見えないから、身構える事も出来ない。更に一発。
「んぅぅ.....」
相手は黙ったままだ。また腹に来るのか?そう思い腹筋に力を入れて身構えていると今度は
「ふんぐぅ!!!」
外気に晒されていた巨大な陰嚢....其れを短小包茎な竿ごと足で踏みしだかれたのだ。ぐりぐりと何度も何度も。思わぬ所への強烈な刺激に、思わず涙が溢れ、躰が震えてしまう。
そんな事が3回ほど繰り返された。千弘は、目隠しが取れたら、こんな目に遭わせた相手を睨みつけてやるつもりだった。だが....どうも躰の調子がおかしい。腹に力が、いや、躰全体が痺れた様に力がまるで入らない。予期された腹への蹴りを全部まともに食らってしまった。そして股間への執拗な踏みつけ。苦痛な筈なのに....何か違う。躰も何だか暑い。何だか頭の中がぼうっとして考えがまとまらない。
『く、くそう......』
これじゃあ、いいようにやられるだけだ。なんとか....
媚薬と痺れ薬で、体全体が熱く上気し、霧散する思考をどうにかまとめようと藻掻く千弘の視界が急に開けた。目隠しが取られたのだ。強い照明を向けられて視界が真っ白になり、目を瞬いてなんとか目の前にいる人物を、そしてこの部屋の状態を確かめようと必死に目を凝らしていた千弘の目にぼんやりとだが、二人の人影が捉えられる。その姿が段々と明瞭になってきて....
『そんな!!』
先ず、目の前の白瀬に驚いた。そして、その後ろでカメラでこの光景を撮影し続けている岡本にも。驚愕の表情を浮かべる千弘の髪を掴むとぐっと顔を近づけてくる白瀬。牛の巨漢の顔が酷く憎々しげに歪んでいた。
「いいざまだなぁ、熊谷。今迄、俺を叩きのめして気持ちよかっただろう。お前ばっかりいい思いしているのはズルいよなぁ。だから今度は俺が気持ち良くなる番だ」
そうして再び陰嚢をグリグリと踏みつける。驚愕と刺激で
「あががぁぁ.......」
奇妙な呻き声を漏らしてしまう。そして、視界の端に、其れを楽しそうに撮影する岡本の姿を見て
『う、嘘だ....何か....夢を見ているんだ、俺は』
二人共見知った顔。だが千弘が驚愕したのはその事では無い。二人共こんな事をするような人間じゃない。そう信じていたからだ。
確かに、自分は白瀬から『無敵の番長』という称号を奪った。しかし、それは正々堂々と勝負した上での結果だ。その後、何度も白瀬は挑戦してきた。その度に、違う技....多分、勝つ為に特訓でもして身に付けた物だろう。危うい場面もあったが、あくまでも正々堂々とした勝負で勝ってきた。そんな真っ直ぐな性分の白瀬に好感さえ持ち始めていた。だから、いつ挑まれても全力で相手をした。手加減などしたら白瀬に失礼だと。そう思っていた。
そして岡本。何かと自分に付いてくる後輩は、自分の事を好意的に思っている物だと思っていた。あの自分に向けられてた恥ずかしそうな笑顔は嘘だったというのか?......
愕然とした表情で、状況を受け入れられない千弘を、白瀬は一方的に嬲り続ける。腹を蹴り、陰嚢を踏みしだき、張り手を左右から....
されるがままの千弘を一方的に嬲り続ける白瀬に後ろから岡本の声がかかる。
「白瀬先輩。あんまりやっちゃあ駄目ですよ。痕が残る様なのは。周りに気が付かれちゃうと厄介ですし。それに、本番はこれから。もっと長いんです。その前に熊谷先輩がダウンしちゃうと折角の準備が無駄になっちゃいますから」
「ああ、そうだな。ちと熱くなっちまった」
牛の巨漢がニィと笑みを返すと、岡本がニィと笑い返す。髪の毛を掴まれたまま、ぼんやりとした頭で、千弘はその笑みを
『悪魔みてぇな笑い方だ....』
とぼんやり眺めていた。
............
........
....
「これでいいでしょう」
岡本....小柄な愛らしい柴犬が満足気に頷く。目の前には学ランも学帽も脱がされ、文字通りの全裸になった千弘が、上半身を赤い頑丈な縄によって菱形の目で隙無く縛り上げられ、下半身も同じ縄で太ももから爪先までをきっちりと隙無く一本の棒の様に縛められ、床に転がされているあられもない姿だった。全身に縄を掛けられ床に転がされている無力な千弘の姿は、猟師に捕まった大きな熊の様な無様な姿を晒していた。何よりも、内側に並々ならぬ筋肉を蓄えているとは言え、其れ以上にふっくらとした脂肪で全身が覆われた千弘の躰の肉は、縄目から見事にはみ出して、ボンレスハムの様な、一種、独特の滑稽さとエロチシズムを醸し出していた。
千弘は、飲まされた媚薬に痺れ薬、長時間の拘束状態での放置、そして先程までの白瀬の嬲りで消耗して少しぐったりとして、大人しく岡本による赤縄での『飾り付け』を素直に受けていた。そんな『飾り付け』の様子を周囲に配置された複数のカメラで撮影し続け、今、『飾り付け』の終わったエロシチズム漂う、ぐったりと仰向けに床に横たわる千弘の躰を、今度は岡本自身が自らカメラを携えて、体毛の一本一本が判別出来る程近くににじり寄ってじっくりと周囲を回って、何処か一箇所でも細部の撮り忘れが無いように執拗に撮影し続ける。
やがて、満足した岡本は、千弘の躰をうつ伏せにゴロンと転がしてから、背面の赤縄に白い縄を絡ませていく。背中、腰部、太腿....それらの箇所に掛けられた赤縄と絡ませる様に白い縄を通していき、その中央部....背中で一纏めにした白い縄を引っ張ると、絡ませた赤縄が千弘の全身を均等に締め付ける様に結んでゆく。そして其処に、部屋の鴨居に掛けられた頑丈な吊り縄が下ろされて、千弘の背中に結ばれる。縄の具合を確認した岡本が
「お願いします。白瀬先輩」
「おうよ!!」
ニィと笑みを浮かべながら、白瀬は鴨居に掛けられた太く頑丈な吊り縄を力強く引っ張った。ギシリと鴨居と吊り縄が軋み、少しづつ千弘の躰が床から離れ始める。背中に絡ませた白い縄が吊り縄によって引っ張られて、千弘の全身を覆う赤縄を引っ張り、赤縄がより一層、千弘の躰に食い込んでギリギリと縄同士が擦れ合う音が響く。やがて....爪先と頭が床から離れ、胸と太腿も床から離れ、最後....大きな腹が床から5cm程離れた所で、一度止められる。床から水平に5cm程上に浮かされた状態で吊り上げられた千弘は
「ぅぅ....」
猿轡から苦悶の呻き声を漏らす。岡本がその状態の千弘に掛けられた縄を確かめて、偏り無く均等に躰を締め付けている事を確認すれば、
「じゃあ、最後までお願いします。白瀬先輩」
「ほいよっと!!」
白瀬によって吊り縄が勢い良く引かれれば、ギシギシと全身の縄が軋む音をさせながら千弘の躰がそのまま吊り上げられていく。勢い良く吊り縄を引かれる度に、赤縄が千弘の自重により締め付けられ躰に一層食い込んでいく。その度に
「ぅあ!....ぁぁ」
「んくぅ......ぅ」
「んぁぁん!!」
苦悶の呻き声が猿轡の下から漏れる。千弘の自重がそのまま千弘の全身を締め付けて、縄目が軋み、容赦無く千弘を苦しめる。だが.....それだけでは無かった。苦しい筈なのに....躰が熱く上気し、縄目の皮膚の擦れが、何とも形容し難い感覚を生んでいた。それは甘い疼きだった。縄に染み込ませた媚薬は、苦痛に耐える千弘が流した脂汗に触れれば溶け出して千弘の躰を濡らしていく。そしてその箇所が縄で擦られれば、媚薬を皮膚に擦りつけられる。その初めての快感が何なのか、千弘が判る訳も無い。ただ千弘は吊られて自重で締め付けられる苦しい筈の躯が、別の感覚に侵食されていく事に、唯でさえぼうっと霞のかかったような思考が翻弄されるのを受け入れるしかなかった。
縄の加減を調整されて、頭が上になる様にして爪先が床から20cm程離れた状態に固定されて、鴨居から吊り下げられると、吊り縄が太い柱に固く結ばれて、しっかりと固定される。白瀬がニヤニヤしながら
「おい、見てみろよ。こいつ、感じてるんじゃねぇか?」
巨大な陰嚢にちょこんと乗っかっている短小包茎から汁がもれだしているのを指差した。岡本がニィと笑って
「ほんとだ。まだ縛っただけなのに。熊谷先輩、やっぱりMの素質があるんじゃないですかねぇ」
無論、二人共、媚薬や痺れ薬、縄に染み込ませた媚薬の事は知っている。その上で言葉巧みに千弘を精神的に追い込もうとしているのだ。
千弘は、顔を真っ赤に紅潮させて、鈍い動きで首を横に降って、否定の意思を示すも、岡本に竿を掴まれてニギニギされ、汁がべっとりと付いた指で頬を撫でられながら
「こんなに濡らしているんじゃ説得力無いですよ」
それでも千弘は涙目で首を横に降り続けるのだった。
............
........
....
千弘が吊るされて苦悶と快感の間で空中でもがく姿は、岡本により、爪先から股間、尻穴、頭までを舐める様にじっくりと撮影されていく。その間2時間余り。締め付けられる苦しみと、媚薬を皮膚に縄で擦り込まれる快感で、頭の中に霧がかかった様な状態で、躰をくねらせて縄を軋ませ、流れ落ちる脂汗が、股間の短小から粘性の液体が、脚を通って床に滴り落ちて、床に溜まりを作っていた。躰が芯から熱くなり、熱に浮かされた様に思考がぼやける。猿轡の下から熱い吐息を漏らして、それでも....ゆっくりとではあるが首を横に振る事は止めないまま吊るされ続けた。時折、白瀬の腹パンや尻蹴り、岡本の指先による短小や乳首や臍や尻穴へのねっちこい愛撫を受けながら......
............
........
....
「よいせっと!!」
ゆっくりと千弘の躰が床に下ろされていく。やがて爪先が床に着き、踵が着き、更に吊り縄がゆるめられると、千弘は吊りの疲れと快感でぐったりとしてしまい、自身の脚で躰を支えられずに、ゆっくりと崩れ落ちるように足から床に倒れ伏していく。すっかり吊り縄が緩められて、全身を赤縄で緊縛された躰が床に下ろされると、時折、僅かに躰をもぞもぞと蠢かしながら、床にぐったりと倒れ込んだ。全身から吹き出た汗が湯気の様に立ち上り、床に汗の染みが出来る。全身を締め付ける縄の力が緩んだ事で、ホッとした表情で全身を脱力させてうつ伏せで床に突っ伏していた。猿轡の隙間から涎が流れ出る。
『....や、休める....』
千弘は心底ホッとした。だが、それも束の間の事だった。岡本が、背面に回って吊り縄と白い縄を解いて、取り去ると、更に脚を縛めていた赤縄も解かれる。そして....
『ん??』
首元に黒い皮のゴツい首輪がはめられる。その先にはリードが付いており、その先を岡本が握っていた。床に突っ伏したままの千弘に顔を近づけて、
「何を休んでいるんです、先輩? さあ、次に行きますよ」
岡本が立ち上がり、リードを引っ張りながら歩き始める。千弘は、リードで引っ張られた皮首輪が首を締めるのに『ぐぇ!!』となりながら、更には後ろから白瀬が
「ほら、さっさと行かねえか!! このマゾ豚野郎!!」
と尻を蹴られながら、自由になった脚....太腿を動かして、腹と胸を床に擦りながら必死に躰を床に這わせ、岡本がひっぱっていく方向....この部屋を出て、廊下に出て、別の部屋へと必死に這って付いていった.....
............
........
....
辿り着いたのは、この家の風呂場だった。吊られ続けた事での苦痛と快感、休む間もなく、無理な態勢での移動。千弘は猿轡の下で荒い息を漏らしながら、肩を上下させていた。
『も...もう動けねぇ....』
ぐったりと床に這いつくばっていた。だが、そんな事など構う事なく、白瀬と岡本の二人は千弘の躰を更に弄ぶ。
うつ伏せの姿勢で這いつくばっていた千弘の躰を、白瀬が仰向けにひっくり返す。そして肩口を両手で抑えると、今度は岡本がシャワーのヘッドを外すと、その管を千弘の尻穴に突っ込んだ。千弘は目を白黒させて涙ぐむが、岡本は楽しそうに
「其れじゃいきますよ~」
シャワーのノズルから水が勢い良く、千弘の尻穴に注ぎ込まれる。千弘が未知の感覚に暴れようとするが、白瀬にガッシリと躯を抑えつけられ、岡本がシャワーノズルをしっかりと千弘の尻穴に当てている状態では、外すことなど不可能だった。無論、この光景も撮影されている。みるみるうちに千弘の下腹部が膨らんでいく。やがてぷっくりと膨れた腹に、白瀬の拳の重い一撃が刺されば、千弘は下腹部の膨満感と痛みで苦悶の呻きを上げる。だが其れだけでは無い。徐々に、排泄衝動がこみ上げてくる。最初は何とか堪らえようとしていたが、水は容赦無く注ぎ込まれてくる。必死に堪らえようと、顔を紅潮させる千弘だったが、もう限界だった。涙をながして必死に何かを訴える姿に
「そろそろですね」
「ああ、そうだな。熊谷、出させてやるから、変な所で漏らすんじゃねぇぞ」
そうして千弘の首輪のリードを引っ掴むと、トイレへと引っ張っていく。そして便座に座らせた。
「さあ、たっぷり出しちまいな」
その言葉に安堵を覚えて、何も考えずに、ただ、下腹部につまった水その他諸々を便器に排出する千弘。その姿はとても無防備で幸せそうな表情であった。しかし、排出し終えて、正面を見て表情を強張らせる。この光景も岡本にしっかりと撮影されていたのだ。白瀬が
「さあ、出し終わったら、すぐ次だぜ。テメエの汚え腹の中が綺麗になるまで、何度でも続けるからな」
結局、千弘は10回、シャワー浣腸を受け続け、その様子を全て岡本に撮影される事となる。千弘はフラフラになりながらも、トイレの便器へとヨタヨタと歩いていった....
............
........
....
「先輩の躯、やっぱり柔らかいですね。脚がこんなに開くなんて。相撲に専念した方がいいんじゃないですか?」
岡本が声を掛ける千弘は、今度は柱の後ろに両手をしっかりと縛められ、足首は両脇の柱に括り付けられた、恥部をおっぴろげられた屈辱的な拘束を施された姿だった。無論、手首の縄を結び換える際に、千弘も抵抗を試みた。しかし....薬とこれまでの仕打ちによる疲労、そして未知の感覚....縛られ躯を締め上げられる事への快感に翻弄され、白瀬はおろか、最早、岡本の腕力にさえ抗う事も出来ぬ有様だった。その事が一層、千弘に屈辱感を与える。そして....
「やっぱりもっと飾ってあげますよ」
そう言って取り出したのは、怪しげな器具が二組。どうやら何かを締め付ける様なのだが....
岡本は、全く身動き出来ない千弘の乳首にピアスを取り付け始めた。穴を開けているわけではない千弘の乳首に、いきなり貫通型のピアスをつければ、千弘の乳首がもげかねない。岡本は両側からネジで挟むタイプのピアスを取り付け、乳首を締め上げる。千弘から呻きが漏れるが、それは苦痛だけでは無いような、何か色を含んだ響きだった。岡本は確信し始める。
『熊谷先輩、苦痛で感じ始めている』と....
予期せぬ暴発を防ぐ為、包茎短小の根本を細引きでしっかりと縛り上げる。これで、万が一、絶頂に達してしまったとしても、千弘は欲望のままに精を吐き出す事はままならない。
「さあて.....これからが本番ですからね」
ぼんやりとした頭で岡本を見つめる千弘の前で、岡本は指をたっぷりとローションに浸して尻穴に差し込み、かき混ぜ始めた。千弘の口から何とも形容し難い呻き声が漏れた.....
............
........
....
「それにしても、随分といやらしい穴だなあ。もうこんなのまで入っちゃうなんて」
じっくりと拡張を続けた結果、指4本分の太さの張形を千弘の尻穴は飲み込んでいた。そして抜き差しする度に、奥に突き込めば、前立腺を刺激され、引けば肛門周りの性感帯が刺激されて、苦悶と甘い疼きが混じり合った呻き声を漏らす。
............
........
....
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「さて、こんな所ですかね」
「ああ」
白瀬と岡本、その二人の前に全裸で股をおっ広げた状態で緊縛され、僅かに躯を動かす事もかなわない千弘の姿があった。その尻穴に挿し込まれているのは張形では無い。詰め込めるだけ詰め込まれたバイブだ。そのスイッチを全部入れれば、千弘の躯は小刻みに震え、躯が上気して汗と湯気を吹き、顔を紅潮させて、涙を流し始める。
『もう止めてくれ』と....
根本を縛られた短小包茎は汁でベトベトになりながらも、精を吐き出すことが出来ずに、溜まりきった欲望で膨らみ震えている。
岡本がカメラを多方向からセットし直して
「準備OKです」
「所で大丈夫なのか。此処にもう一日、このまま放置しておいて」
白瀬の言葉に、岡本が
「大丈夫ですよ。親父とお袋は、温泉旅行で後二日は帰って来ませんから」
と答える。岡本は、この地元の不動産屋の息子であった。この空き家は、岡本の父親が管理している物件。だから、岡本は、普段は止めている水道や電気を使う事が出来たのだ。客に見せるため水道や電気を止めていない、この空き家を。
「じゃあ、また明日な」
「たっぷり楽しんでくださいよ」
千弘の見ている光景から、二人が玄関のドアを施錠するのが見えた。千弘は、ぼんやりとした頭で
『止めてくれ.....』
『イキたい....』
相反する思いを抱きながら、縄の快楽に飲み込まれていった......
[newpage]
....自分に飛んでくる拳がスローモーションの様に見えたのは覚えている.....
何の手加減も無い拳が顎に一発入り、意識が飛びそうになる。躰が浮き上がり、地面から足が離れ、そのまま仰け反る様に背中から地面に落ちる。意識を失った訳ではないが、衝撃で意識が朦朧としている。その中で、聞こえてくるギャラリー(不良)達の大きなどよめき。
そのまま、意識を失ったフリをして目を瞑ったまま、土の地面に大の字に寝転んでいると、徐々に、自分にアッパーを食らわせた相手....巨漢の牛の白瀬を賞賛する声が上がり始める。
「おお、白瀬先輩。逆転勝ちだ!」
「白瀬先輩、番長奪還ですね!!」
そうした声に囲まれて、白瀬は上機嫌で
「おう、今日は俺のおごりだ!!」
周りを引き連れて、その場を去っていった....倒れた千弘を誰も気遣う事も無く。
公開処刑....集められた不良達の前で、決められた手順通りの殴り合いで、千弘が白瀬の渾身の一撃でノックアウトされる光景を見せつける。再び白瀬が、番長に返り咲く為の儀式。
『あんな辱めや、こんな事をしてまで、白瀬は番長に返り咲きたいのか?』
千弘は疑問に思う。是迄の、自分に向かって来た白瀬の拳は真っすぐで、まともに喰らえば一発で意識を失いかねない....そう思わせる重みと気迫があった。だが、今のは.....
疑われない様に、防御姿勢や受け身を取らなかったので、多少は効いているものの、正直...
「腐った拳だな...」
誰も居ない中、空に向かって呟く。番長を取られたとか、そういうのはどうでもいい。正直、面倒くさかったし。其れよりも、今まで真剣に相手をしていたのが、あんな奴だった事が虚しい気がした.....
『真剣勝負だと思っていたのは、俺だけだったのか....』
周囲に目配せして誰も居ない事を確かめると、ゆっくりと起き上がって埃を払う。盛大に溜息を吐くと、その場を離れた。今日は水曜日...."約束の日"だ。時間に遅れない様に、待ち合わせ場所へと足を早めた......
・
・
・
「やあ、君かい? 今日、モデルになってくれると言うのは」
「あ、はい。よろしくお願いします」
ファミレスの一角にて、お互いの面通しが行われる。テーブルを挟んで左側には、千弘と小柄な柴犬....岡本だ。対面には、背広を着た大柄な中年の虎が座っている。見た限りでは、全うな営業マンという風にしか見えない。だが.....
「しかし君みたいな、如何にも硬派な感じの学生がねぇ....いや、こちらとしては、とても貴重で嬉しいんだけど」
「あ、はい。その......」
千弘が顔を真っ赤にして俯く。虎がまあまあと
「いやいや、そちらの事情を詮索するなんて野暮な事はしないよ。これはビジネス。ちゃんとやってくれれば、お互い対価を払う。おおっぴらに出来ない事をやっているという事も含めて、皆ちゃんと事情を理解している人達ばかりだよ。君は安心して任せてくれればいい」
「はい.....」
千弘は、顔を真っ赤にして脂汗を背中に垂らしながら、しおらしく頷いた。
............
........
....
白のワゴン車が、ファミレスの駐車場に待っていた。外目では、後部座席までダンボールでいっぱいに見える。人目が無いのを確かめると、中年の虎....加藤と名乗った....が、後部座席を開ける。見ればダンボールは車窓に貼り付けられたフェイクで、中の後部座席はきちんと座れる様になっていた。その一番後ろに千弘が座らされると、加藤が
「まあ、これも儀式みたいな物だと思ってくれ」
「はい...」
大人しく頷いた千弘の手首に革枷が嵌められ、足元のフックに鎖で繋がれて、手首が千弘の股間により上に持ち上げられないように固定される。首輪もされて、座席に固定される。更に轡と耳栓、そして目隠しをされてしまう。最後に見えた岡本の顔が、複雑な表情をしていたのは気の所為だろうか?
そんな事を思う千弘の躰が後ろに引っ張られた。多分、車が動いたのだろう。何処に連れて行かれるのか?自分はどんな目に遭わされるのか?
不安で一杯の筈の千弘だったが.....股間が何故か疼いた。
あの監禁調教から一月が経っていた。あの時、千弘は二人が戻ってくるまで、躰中に食い込んだ縄で媚薬を擦り込まれて全身の性感帯が熱く痺れ、下腹いっぱいに詰め込まれたバイブで前立腺と肛門周りの感覚も熱を持ち.....膨れ上がる欲望は大きな陰嚢に蓄えられるも、きっちりと根本を縛られた短小は、欲望を吐き出せずに熱く滾っていた。ドアが開き、二人が見えた時に、思ったのは、ただ
『イキたい....』
それだけだった。固定カメラが周りを取り囲む中、岡本が短小の根本を縛るタコ糸を切り、勢い良く擦り立てれば、躰をビクビクと震わせて盛大に精液が吐き出され、千弘の下腹部をドロドロに汚した。開放感....其れしか感じなかった。二人に対する憎悪や、怒りも、起きなかった。ただ、漸く終わった....と。もっとも、其れで終わりでは無かったが。
この二日間での千弘の痴態を様々な角度から撮影した動画を何度も、あの姿勢のままで見せられた。そして、動画のコピーは既にネットのストレージに上げてあり、千弘が自分達の言う事を聞かなければ、即座にこの動画が、ネットに拡散されると.....
その時、千弘はボンヤリした頭で、頷くだけだった。ただ、開放された事にホッとして...
岡本が縄を外し、縛めを全て解かれた千弘は、上から見下ろしてくる岡本の
「判りましたか? これからは俺達の言う事は何でも聞いてもらいますよ」
其れを見上げてぼんやりと頷いた。浴室に押し込まれて、躰の汗やら精液やらをシャワーで乱暴に洗い流されるのも従順に従った。そして学ランを着せられて、家の外へ押し出されると、フラフラしながらなんとか自宅....古びたアパートに辿り着いた。台所に居た母親....女性にしては大柄な灰色熊に適当な返事を返すと、居間を衝立で仕切った、一室を二つに分けた形だけの自室に引きこもった。父親は居ない。そう今は....
千弘は相撲少年だった。父親....躰の大きな黒熊は、大の相撲好きで、幼稚園の頃から千弘を地元の相撲教室に通わせる程だった。時には一緒にマワシを締めて稽古までし、千弘は父親が遊んでくれている感覚で、土俵に鎮座する父親....熊谷武彦(くまがいたけひこ)に全力でぶつかって行っては弾き返されて土俵にひっくり返って泥だらけになりながらも、楽しそうに其れを繰り返していた。
小学校、中学と進むに連れて千弘の躰は、同年代の少年達よりも、一際縦にも横にも大きくなっていく。然しながら、その体格をしっかりと支え、俊敏な動きをする為の脚等の筋力も、通っている相撲教室の先生にしっかりと鍛えられ、中学の頃には地元で開催される相撲大会で、殆ど優勝する様になっていった。そんな千弘の事を、父親の武彦は我が事の様に喜んでくれていた。千弘は、ただただ嬉しかった。大好きだった。父親も相撲も.....
そんな千弘の家庭事情が一変したのは、中学三年生の中頃だった。相撲の強豪校への推薦入学もほぼ決まりかけていたある日の事だった。日曜日の昼頃、自室で漫画を読んでいると、居間の方からガシャン!と何かが割れる音がして、その次に母親....芳恵(よしえ)が金切り声で
「誰なのよ、この写真の女はー!!!」
....父親の不倫が発覚したのだった。
その日から家の中は、母親の金切り声が絶える事は無かった。ひたすら責める芳恵に対して、武彦は
「すまない....」
と黙り込み、更に芳恵が口で責め立てる。そんな日々が続いた。兎に角、嫌だった。家に帰りたくなかった。だが、相撲の練習で気を紛らわせようとしても、相撲と密接に結びついた父親の記憶が却って千弘の気持ちを陰鬱にしてしまう。千弘は次第に相撲部にも相撲教室にも寄り付かずに、街中を一人でフラフラする事が多くなっていった。そんな時それは起こった。
....父・武彦が失踪したのだ。不倫相手と共に。
貯金は引き出されていて、口座は空になっていた。父親が購入した家にはまだローンがだいぶ残っており、その返済を、せめてもの謝罪と差し出された父方の祖父母の蓄え殆どと、家自体を売った金で辛うじて全額を銀行に返済した。
母には親戚は居ない。施設に捨てられた子供として育ち成人し、働いていた会社で父と知り合って結婚したのだ。
だから、母にはもう、頼れる物など無かった。昔の会社のコネで辛うじて小さな会社に再就職を果たした。しかし技術職でも何でもない母が稼ぐ金などたかが知れている。二人は古びた小さなアパートに引っ越した。
千弘の相撲の強豪校への推薦入学も『無し』になってしまった。千弘の家庭事情は本来ならば、推薦入学に何の関係も無い筈である。しかし、先方は遠回しに推薦入学の取り消しを伝えてきた。千弘自身も、もう何もかも....特に相撲に関しての情熱を失ってしまっていた。だから、推薦が取り消された事も、特にショックを受けなかった。
推薦入学で進学するつもりであった事、家庭内のゴタゴタで勉強など殆ど出来なかった事、などから千弘の学力は壊滅的な状態であった。決して頭が悪い方では無いのだが....
その事から、千弘は中学を卒業したら、そのまま就職しようと考えていた。だが、其れは母親が『待った』をかける。せめて高校は卒業しなければ、まともな就職先など探せないと説得して。母親が古い参考書を貰ってきて、急場しのぎで受験勉強をし、最初の高校にギリギリで滑り込んだ。当然、学力は低く....校内も荒れていた。千弘は自然と腕っ節で居場所を作るようになり、相撲で鍛えた体力と勝負感で、一年生ながらもそこでの四強にのし上がった。
そのまま、卒業まで居続けるかと思っていた千弘に、第二の転機が訪れる。母親の勤め先が変わったのだ。今の職だって辛うじてありついたのだ。母・芳恵に『否』という選択肢は無かった。そして別々のアパートを借りて千弘を今の高校に通わせる事も経済的に無理があった。だから千弘にも『母親の勤め先近くの高校に移る』という以外の選択肢は無かった。千弘は、前回のゴタゴタから『どんな時であれ、最低限の勉強は必要である』と身に沁みており、高校では、補修コースを自ら受けて学力の改善を図っていた。せめて公立にでも通えれば、母の負担が相当に楽になる。幸いにして、引越し先の公立校は、近くの有名私立のお陰で公立校にしては偏差値が低めであった。無論、それでも千弘の学力そのままでは転入は難しかった。転入試験前の半年間、千弘は補修コースの授業を受け持っている指導熱心な先生に頼み込んで、補修コースの時間が過ぎた後、マンツーマンに近い形で猛勉強を続けた。元来、相撲の場合もそうだったが、一度集中出来る様になると、千弘のその分野に関する知識や技量の吸収力は格段に跳ね上がる。そのお陰で、今の高校....県立・相田高校に2年生の二学期半ばに転入する事が出来たのだった。
転入先....相田高校にて、元居た高校は不良達の巣窟として見られていた。当然、其処から転入してきた千弘も、相田高校の不良達の注目の的であった。初日から目をつけられて早速喧嘩を売られ、千弘も前の高校のノリで対処したら、いきなり『相田高校-四天王』を二週間でノシてしまう事になるとは思ってもみなかった。もう、こうなると、元々空手の有段者であり、周囲の高校からも『無敵の番長』として知られた白瀬が出て来るしかなくなってしまう。結果は張り手を応用したクロスカウンターまがいの顎への一撃で白瀬を轟沈。僅か一月で相田高校をシメてしまい、『無敵の番長』の称号を白瀬から奪い取る形になってしまった。
転校初っ端からそんな事になってしまったものだから、普通の学生が寄ってくる筈も無く....千弘の周囲には自然と不良達が集まってきてしまうのだが、正直、鬱陶しかった。千弘としては、普通に過ごしたかった。取り巻きなんかにチヤホヤされても、相撲に打ち込んでいた頃の周囲の反応と記憶が重なってしまい、虚しくなるだけだった。何より、いくら喧嘩が強かろうが、一度社会に出てしまえば、そんな物は何の役にも立たない。仕事で疲れているのに、その躰を引きずって台所に立つ母の背中を見れば嫌でも思い知らされてしまう。だから、少しでも学力を上げて、卒業後に少しでも稼ぎの良い所に就職したかった。兎に角、早く母を助けたかった。
だが、一度『札付きの悪(ワル)』とのレッテルが付いてしまった千弘を、学生も教師も怖がって遠巻きに眺めるだけだった。真面目に進路相談をしようとしても、当の教師は適当な言葉ではぐらかして逃げていく。不良でも真面目に付き合おうとしてくれる様な熱血教師は、ここには居なかった。
何かも上手く行かない....千弘は八つ当たりをする様な人間では無かった。ただ、鬱屈した思いを隠す事もしなかった。醸し出される怒気を孕んだ雰囲気は、やがて不良達も遠ざける様になる。千弘は学校で一人になった。ただ『沈黙の怒れる番長』として誰からも遠巻きに眺められるだけの、孤高の番長に。
正直、不良達が周囲から居なくなったのには清々していた。教師達にまともに相手をされなくても、授業中だけは真面目に勉強に集中できる。千弘は、兎に角少しでも学力を上げようと、黒板に食らいつく様な視線を向けて授業に集中した。そうして気疲れしたら、昼に真っ先に校内の売店に駆け込んで焼きそばパンとコロッケパンをゲットして、屋上に上がってのんびり空を眺めながらパンを囓る。誰にも恐れられない、気兼ねも要らない、ホッと出来る一時。本人は気がついて無かったが、その時の千弘はとても穏やかな表情(かお)をしているのだった。
転校してから二ヶ月目のそんなある晴れた日の事だった。昼飯を食い終わって屋上に寝転がり、ぼんやりと空を眺めていた上から、ちょっとおっかなびっくりな声だったが、
「こんにちわー.....、その、横に座って良いですか?」
人懐っこい笑顔の小柄な柴犬....岡本との出会いだった。ぶっきらぼうに
「....勝手にしろ」
と言った事だけは覚えている。そうした事が何日も続いたある日、何の気無しに
「お前、俺が怖くないのか?」
「....先輩、今、すごく優しい顔してますよ」
赤面してしまった千弘は、その後にどんな会話をしたのか覚えていない。気がついたら、自分でも驚いた事に、嬉しそうに話していたのだった....
それからは、昼飯は屋上で二人で食べる様になっていた。時折、岡本は千弘の分の弁当も持ってきてくれた。両親は健在だが、二人共仕事をしている為、家事は家族で各々が分担して行っており、岡本が料理当番の時に、両親と自分の分と一緒に作ってきてくれるのだった。
千弘は、母が作ってくれる料理に不満は無い。寧ろ、あれだけ遅くまでロクに休みもない状態で、インスタント食品に逃げる事無く、料理を作ってくれる事に感謝していた。しかし、流石に冷凍食品の割合が多くなるのは致し方ないと言えよう。
岡本が弁当で作ってきてくれる料理は、新鮮な素材を使った物が多かった。屋上で、晴れ渡った空を見上げながら、二人で弁当を食べている時、千弘は思わず涙ぐみそうになるのを、必死に誤魔化していた。
そうして、岡本は千弘の、相田高校に来てからの初めてのダチになった。岡本に案内されて校内や学校近辺の色んな所を教えてもらう。自然と顔つきも穏やかになり、千弘が当初、醸し出していた怒気を孕んだ雰囲気は徐々に薄れていった。
そうして校内を巡る間に、千弘は再び巡り合ったのだ。相撲に....
別に何処か部活に入ろうとは思ってなかった。本格的な物となれば、合宿とか、遠征試合とか出費がかさんでしまう。家の経済状態を考えると、とてもそんな事には付き合えない。
だから、岡本が嬉しそうに案内するのに、ただ付き合っている。それだけのつもりだった。ただ、のんびりと散策して、帰るつもりだった。あの、懐かしい光景を見るまでは.....
運動部の部室が集結しているその隅に、その部室はあった。ドシンと何か重い者同士がぶつかり合う音。何処か馴染みのある汗と土の匂い。自然と躰が、その小屋の中を覗ける小窓へと足を進めていた。
僅か五人....学年は二年生が二人に、一年生が三人という所だろうか。ガッシリとした体格の馬の二年生は、正直、千弘に言わせれば
『なんでこんな所に?』
そう思わせる程の、仕上がった身体に、躰の特徴を活かした取り口で周囲を圧倒していた。馬特有の強靭な足腰による俊敏さと突進力を武器に、相手の二年生....大柄なセントバーナードが、躰の特徴....懐の深さと柔軟さと腕の剛力を活かした取り組みをしてくるが、正直、馬についていくのがやっとの状態だった。
対して一年生達....誰の指導によるのかは判らない。頑張っているとは思う。しかし、いかんせん躰がまだ出来てない。一人....虎を除いては。相撲取りとしては体格に恵まれている方では無いだろう。しかし、其れを補って余りある全身の筋力がスピードと力とで、素早く変化する変幻自在な相撲を実現させていた。
やがて馬と虎が取り組みを始めた。明らかにレベルが其処だけ違っていた。二人だけを見ていたら、何処かの強豪校と間違えてしまいそうである。其れが千弘の興味を引いた。
『どうしてこんな所にこんな連中が?』
知っている相撲取り達では無い。正直、生まれ育った地元から離れてしまったこの場所では、この辺りの相撲事情は判らない。ただ、それでも力量は判る。その気になれば、強豪校へと行ける力量のこの相撲取り二人が、中と周囲を見れば一目で判る、決して相撲部が優遇されてないこんな所に何故?と....目が釘付けになり、じっと中を覗いていたら
「見学なら、そんな所じゃなくて、中に入ったらどうだい? 熊谷千弘くん?」
大人しそうな、背の低い肥満体型の白熊の、白衣を着た黒縁メガネの中年が声を掛けてくる。千弘にもその姿に見覚えがあった。理科の授業を受け持っている、鮎川進(あゆかわすすむ)先生だ。意外な組み合わせに驚きつつも、これまでの自分の立場から迷惑になると思い
「あ、いや....ちょっと気になったってだけで。それじゃ..」
その言葉を岡本が遮る。明るく
「はい! 見学させてください!」
戸惑う千弘の手を引っ張って、鮎川先生の後に続いて中へと入っていった。
中に入れば、三人に注目の視線が集まってくる。いや、正確には相撲部の顧問である鮎川先生を除いた二人....部外者である岡本と千弘、特に千弘に。
何せ一ヶ月で相田高校をシメてしまった噂の番長。誰も寄せ付けない孤高の男。そんなUMA(未確認生物)の様な男が、これまた全く不良などとは接点がない岡本に手を引っ張られて入って来たのだから。一年生がざわつき始めたのを鎮めたのは、意外にも、あの二年生のセントバーナードだった。大きな声で
「こらあー!!! 稽古に集中しろ、お前ら!! 見学者が来たくれえで浮つくんじゃねえ!!」
一瞬にして場が引き締まる。相撲の力量は、馬や虎と比べれば見劣りしてしまうが、人心掌握には長けているらしい。どうやら、馬ではなく、この犬が部長....相撲部を牽引しているらしいと千弘は察した。
邪魔にならないように隅に移動して練習を見つめ始める千弘と岡本。其処に顧問の白衣の白熊・鮎川先生が近づいてきた。練習稽古に熱心に見入る千弘に興味津々という所か。一方、一時はざわついた一年生達も、千弘が大人しく見学する様子を見て、稽古に集中し直し始める。
相撲部顧問の白熊・鮎川が口を開く。
「相撲に興味あるのかな?」
「いや....昔、ちょっとだけやってたってだけで....」
千弘が戸惑いながら言葉を返す。千弘は昔も今も教師などの目上の人間に対して乱暴な態度を取った事は無い。ただ、向こう(教師側)が千弘を勝手に恐れているだけで....この学校に転入してきて、初めて教師からまともに話しかけられた事に戸惑っていた。
『俺の事、「怖い」とか「迷惑」とかって、思ってないのかな?』
そんな事を思いながらも、目の前の馬と虎の実戦形式の取り組みに目が行ってしまう。
『相撲なんて....』とも思う。あれだけ懸命に打ち込んできたのに、そうさせてくれた人(父)から手酷い裏切り(愛人とともに失踪)にあい、相撲そのものからも拒絶(決まりかけていた推薦入学が無くなってしまった)された.....そんな二重に相撲から『裏切られた』様な感のある千弘には、相撲など、忌まわしい物でしかない筈だった。現に家に帰っても相撲中継は全く見ていない。ネットでニュースをみる際にも相撲関連の記事は避けていた。父親が居た頃を思い出さされて陰鬱な気持ちにさせられるだけだと....
だが、今、千弘は目の前の二人の取り組みに目が奪われていた。目を離す事が出来なかった。
『なんで俺は....』
そんな心の呟きに反して、二人の一挙手一投足から目が離せない。心臓がドクンと脈打つ。ジワリと背中から汗が垂れる。躰を巡る血が、滾っていた。
そんな様子の千弘を興味深げに見る者がもう一人....先程、一年生達を一喝して黙らせた二年生の相撲部員のセントバーナード・相撲部部長の門脇芳樹(かどわきよしき)だ。別に千弘に興味など無かった。風の噂で聞く『一匹狼の孤高の番長』、自分達相撲部とは何の関係も無い人間の筈だった。だが今は.....
『コイツ....なんか、あいつらと同じ匂いがする....』
あいつらとは、馬の二年生・竹崎裕太(たけざきゆうた)と虎の一年生・茅場義和(かやばよしかず)の事である。幼い頃から相撲に打ち込んできた実力者ながらも家庭の事情によりこの高校に通う『俺は、納得できる相撲が取れれば其れで良い』と腐る事なく相撲に打ち込み、貴重な新入部員の一年生達を丁寧に指導する面倒見が良いマイペースな竹崎。そんな竹崎を慕ってこの高校に入学してきた普段はお調子者ながらも、相撲の稽古だけは真剣そのものな茅場。二人共、紛れもない『土俵の中で生きる者』。門脇とて、相撲そのものの経歴はそれなりに長いし、真面目に取り組んできた。しかし、正直、あの二人の様な『土俵の中の生き物』としての純度は無い。
なのにだ。ふらっと興味本位で立ち寄っただけに見えた千弘の今の姿は....
ただの稽古の取り組みをあんなに真剣に見つめる者が、この学校に何人居るだろうか?
更に気になったのは手だ。本人は気がついて無いかも知れないが、固く握りしめた拳が震えていた。何か、我慢している様な....
『何か、ある』
何かは判らない。それでも....相撲取りとしての純度はイマイチながらも、『人の気持が判る』男として部長に選ばれた門脇の勘がそう告げる。そして勘が更に告げる。
『今、確かめなくては、次は無い』と....
意を決すると、顧問の鮎川に目で合図する。傍目には、唯のお人好しで鈍い様に見えるが、大事な場面での人の仕草を見逃さない鮎川は、門脇の合図に気がつくと、
「ちょっと失礼するよ」
何気ない様子で、門脇の方に近づいていく。門脇が少し言い難そうに
「先生。実は....」
「練習試合、別に問題ないでしょ。唯の体験入部って事にすれば。経験者でしょ、彼?」
門脇が言おうとしていた事を、ニコニコしながらこともなげに言ってしまう鮎川。唖然としながらも、今度は相手をしてもらう為に竹崎と茅場に話を持っていけば、竹崎がニッコリと
「あ、俺、最初ね。張り手以外も色々と見てみたいし」
「....まあ、最初は先輩に譲りますよ」
茅場が珍しく少し不満そうに零す。二人が『喧嘩屋』が土俵に上がる事に抵抗感を示すのではと予想していた門脇が更に脱力する。聞けば二人共、偶然に千弘と白瀬のタイマン勝負を目撃していたとの事。その時の、千弘の間のとり方と、顎への掌底を見て
「相撲取り、だな」
「ですね...」
自分達の事を棚に上げて、『なんでこの学校に来たのか』を聞きたかった二人だった....
鮎川がニコニコしながら千弘に近づいてきて開口一番
「練習試合、してみない?」
「は!?」
............
........
....
千弘が口をあんぐりと開けて驚いている間に、事はどんどん進められ、気がついたら裸体にしっかりマワシを締められて土俵の脇に立つ千弘の姿が其処にあった。
今現在、千弘はまだ困惑していた。
『なんで、こんな事に.....』
だが、こうなったら土俵に上がるしか無いだろう。怪我でもしたら、自分は勿論だが、この相撲部にも迷惑をかけてしまう。なので、入念に躰を解していく。相撲を止めた....と、自分自身には言い聞かせてはいるが、体力を保つ為と称して、相撲の基本的な躰作りのトレーニングは継続していた千弘だった。股割りなどを黙々とこなしていく千弘の姿を見ていく内に一年生達も流石に気がついた。
『この番長、唯の喧嘩屋じゃない....』
躰に汗が薄っすらと滲む。土の匂いが香る。何よりも、あの綱で囲われた場所に、自分を待っている相手が居る。其処に....綱で囲われた円の中に足を踏み入れる事に躊躇する。其処に自ら足を踏み入れる意味など、相撲取りには自明の理。
自分にとっての相撲がどうとか、最早そういう問題では無い。其処に自分を待っている相手が居る。その相手から自分は背を向けて立ち去る事が出来るのか?そんな事、何よりも自分が一番気に入らない。
すぅーっと息を静かに吸い込むと、低く吐き出すように
「よっしゃぁ......」
土俵の反対側で待ち受ける馬を真っ直ぐに見つめて土俵の内側へと足を踏み入れる。腰を落として前かがみになり、目前の馬をじっと見据える。馬も又、千弘に合わせて腰を落とし前かがみになる。顔が笑っていた。嘲笑とかそんなものでは無い。其れはまるで、獲物を前にした肉食獣が相手を貪り食わんとする凶暴な笑い。その目。気を抜けば飲まれてしまいそうな気迫のこもった表情に皮膚が泡立つ。千弘は思った。
「ああ、そうか。戻って来たんだ」....と。
部長である門脇・二年生の大柄なセントバーナードが行司となり、二人の脇で控える。その手が下に下げられると、対峙する馬と熊は握りしめた両手を前に下ろす。双方共に力を溜め込んで、今か今かとセントバーナードの手が上げられるのを待ちわびている。もう、お互い相手から目を逸らせない。しーんと周囲の音が消えていく。居るのは二人だけ....
「始め!」
声と同時に二人の間にかざされていた手が上に上がると同時に、二人は膝に溜め込んだ力を爆発させて、前へと突進する。熊よりも若干低い姿勢の馬の頭が、熊の胸に勢い良くぶつかる。そしてそのまま、全力で押しにかかる。受け止めた熊はズリズリと土俵の土の上で足を滑らせながらも、しかし、その勢いは殺されていく。丁度、半分程下がった所で両者がせめぎ合いを始める。熊はがっぷりと四つに組み、相手のマワシを右上から取ろうと、馬は熊の右手を牽制しながら右下手でマワシを狙う。お互いに押し合いながら、相手に主導権を取らせるものかと、必死にマワシに手を伸ばす。
最初に仕掛けたのは馬の方だった。熊の右手の牽制に使っていた左手をすっと下に沈めて伸ばし左手でマワシに手をかける。ぐいっと左手で引き寄せると、腰を下に割り込ませてそのまま勢い良く投げを打ってくる。だが....熊のどっしりとした腰はびくともしない。それどころか、逆に右手で馬のマワシを上手で掴むと、その腕力に任せて、更にぐいっと引き寄せた。馬の上体が引き寄せられて不安定になる。そのままの流れで投げを打ちにいった所こそが、馬の狙いだった。そのまま躰を預ける様に、更に躰を、流れに合わせて左へと一気に移動させる。
マワシを引き寄せて右上手からの、左へのうっちゃりを狙っていた熊が虚を突かれる。馬はそのまま移動して、熊の右後ろへと回って、今度は左手を熊の背中のマワシへと伸ばし、右脚を軸にして投げを打ってくる。熊も先程と違い、投げの態勢に入っていたので、上体が先程よりも不安定になっている。そのまま馬の目論見どおりに事が進むかと思われた。だが.....
熊は素早く左足を移動させて、馬の右脚を殺しにかかった。二人の上体が急接近してもつれ合う。そして....上体は徐々に馬の方に傾いていく。今度は熊が体格で馬を押しつぶそうかと思われたその時、
「でやあ-!!!」
馬が驚異的な腰の粘りを見せると、そのまま熊の躰を吊り上げ始めた。熊もそんな馬に抵抗を試みて、腰から押しつぶしにかかる。そのままで攻防が続くと、やがて....二人は横向きにもんどり打って土俵の上に倒れ込んだ。
周囲がしーんと静まり返り、皆、ゴクリと唾を飲み込む。果たして行司の采配はどちらに....?
セントバーナードの右手が右に大きく上げられる。
「竹崎の上手投げ。ほぼ同体だったが、熊谷の躰が土俵に付く方が早かった....」
其れを聞いて一年生から歓声と拍手が静かに上がる。鮎川にだけ向けられた物では無い。見事な相撲を取った二人に対して向けられた物だった。顧問の鮎川が嬉しそうにうんうんと頷いている。一転して和やかな雰囲気が周囲に広がった。しかし....
倒れ込んでいた二人....馬・竹崎と熊・千弘がすっくと立ち上がると、何の断りも無く、同じ位置に再びついた。呆気に取られる周囲を他所に、二人が腰を落とした。双方を見つめながら、竹崎も千弘も、あの凶暴な笑いを浮かべていた。それが何を意味しているかなど、相撲取りには明らかだ。
『『まだまだ、足りねえよなあ!』』
行司役の門脇が半ば呆れながらも、笑みを零す。其処にいるのは『喧嘩屋』なんかじゃあ無い。土俵の生き物なんだと....
「始め!」
再び掛け声と共に手が上がり、二匹の獣が今度は土俵の真ん中でぶつかりあった。
....その後、二人は10本ぶつかり稽古をし、どの勝負も殆ど僅差で、竹崎が七勝四敗で勝負を制した。その後、一年生の茅場とも七本ぶつかり稽古をして、今度は千弘が四勝三敗で勝負を制した....
練習を終えて皆が片付けを始める。一年生も二年生も区別は無い。かたし終えると、先ずは一年生からシャワーを浴び始める。二年生はその後だ。一年生達が出ていったシャワー室に熊谷達二年生と、虎の一年生・茅場が入っていく。千弘もその後に続いた。シャワーを浴びながら竹崎が話しかけてくる。
「なあ、いつから始めたんだ?」
「五歳からかな....」
千弘がボソリと返事を返す。茅場が
「この学校に来たのは、何でです?」
「ああ....ここ公立だから、学費が安く済むからな....」
同様にボソリと返事を返す。門脇が
「なあ、もしも何だが....」
その言葉に機先を制して
「すまねぇ....正直、今、其れは決められねぇ....」
そんな言葉が交わされる。三人も、その事....千弘の相撲部の入部に関してしつこく誘う様な事はしなかった。紛れもない相撲取りだと言う事は、あの取り口を見れば判る。それでも入部を躊躇うには、何か深い理由があるのかも?....三人共それとなく察していた。
着替える頃には、夜の七時近くになっており、顧問の鮎川が、千弘と岡本に
「良かったら夕飯はどうだろう? 近くに美味しいラーメン屋があるんだ」
多分家でも夕飯は用意されているだろう。しかし断るのも....千弘はスマホで母に電話して、今日の夕飯は食べてくる事を告げると、そのまま鮎川に付いていった。
鮎川は相撲部の現状を千弘に話す。一時は相撲部が形だけの物になっていた事。其れを今の二年生、竹崎と門脇で立て直して行った事。今年は茅場が加わった事で大幅な戦力アップと、始めたばかりの一年生の指導にも手が行き届いている事。しかし....団体戦で勝ち上がるには、もう一人、勝てる相撲取りが欲しい事、などなど....そして
「どうだろう? 直ぐに入部してくれとは言わないけど、気が向いたら練習稽古に来てくれないかな?」
黙ってラーメンを啜っていた千弘は
「....考えさせてください」
絞り出す様にか細い声で答えた。今の家の経済事情で、果たして相撲部に通う余裕などあるのだろうかと、考えながら.....
............
........
....
帰り道、鮎川先生と別れ、岡本と二人きりで歩いて行く千弘は
「済まねえな。付き合わせちまって.....」
何処か恥ずかしげな、しかしどことなく嬉しそうな....そんな横顔を見ながら
「いえ、誘ったのは俺ですし....」
その時の、岡本のなんだか複雑な表情が印象に残っている。『なんでそんな顔するんだろう?』と....
その後、放課後になると自然と、相撲部へとふらりと立ち寄る事が多くなった。正直、相撲そのものに関しては今でも色々とわだかまりが残っている。親父と重なる記憶....
相撲部に入部出来るかどうかの心配もある。この相撲部は、これから上へと登っていく。そんな勢いを感じる。そんな部だから、きっと遠征しての対外試合なんかも組まれる事だろう。しかし....自分の家の経済状況では、それに参加出来るかどうか....
学力の事もある。正直、この学校には本当に苦労して転入できたのだ。授業も、ちょっと気を抜けば、直ぐに判らなくなってしまう。ちゃんとストレートで進級して卒業し、ちゃんとした所に就職したい。
....こんな風に色々と相撲を諦める理由は幾らでも思いつく。なのに、どうしても、足が相撲部へと向いてしまう。来たからには頭を空にして、汗だくになるまで稽古をし、土俵の中でぶつかり合う。『楽しい』と感じる自分が確かに居る。躰がどんどん相撲の感覚を思い出していく。外では色々と思い通りにならない事だらけだけど、ここでは....
どうしたら良いのか、判らなかった。それに....相撲に興味が無いだろう岡本を誘って相撲部へ通う事も、なんだか悪い気がした。だから、なんとなく....放課後は一人で相撲部へ向かう事が多くなっていた。相撲が頭から離れず、屋上で岡本と昼飯を食べている時も、うわの空だった。どれくらい前だろう? 屋上で岡本と昼飯を食べなくなったのは? 偶にこっちから話しかけても避けられる様になったのは? 昼も相撲部の連中....門脇達と飯を食う様になったのは?
そんな事を思いだしながら、最近の出来事へと思いを馳せる。
何度負けても、あれほど真っ直ぐに自分に向かってきた白瀬はどうしてこんな卑劣な手を?
岡本は何で、こんな事に加担、いや、進んで行っているのか?
この学校で、ケンカ相手だが真っ直ぐな気性の白瀬と出会った。先生や普通の生徒達に避けられている中、岡本が普通に接してくれた。岡本の案内で再び相撲に巡り合った。また、人という物を信じて良いんじゃないか?そう思える様になってきた。そんな時に....
何で。どうして。こんな手酷い裏切りを受けなくちゃいけないんだ.....?
大声を上げて泣きたい気分だった。
あの時の開放された晩の事が思い出された。自室へとこもり、机の前で
「違う...!」
机の前で俯き、顔を真っ赤にして、涙目で否定の言葉を口にして頭を振った。しかし....はっきりと躰に残っていた。躰を擦る縄の感触。今でもじんじんと熱い下腹奥と肛門。そして....滾る股間。"快感"を感じていたなどと....その晩は寝れなかった。熱い躰を抱えて。
それから二、三日に一度は岡本達に呼び出されては、同様の行為をさせられた。その度に躰が熱く滾り、縄を見ただけで躰が熱く火照る様になっていった.....
呼び出される場所も空き家だけではなく、学校の個室トイレなど、より危うい場所へと呼び出される様になり、其処で白瀬や岡本の男根を咥えさせられ、口中に射精され、一滴も零さずに飲み込む様を録画されていった....
また、尻穴に突っ込まれる張形もどんどん大きくなっていった。
無論、屈辱感も怒りも感じていた。しかし....呼び出される度に、躰が、股間が、熱く滾る事を千弘は認めざるおえないでいた。そして....
『もっと激しいのが欲しい』と、思い始めている事を.....
そんな時だった。岡本から呼び出しがあり、其処で
「プロの調教を受けてみたくないですか?」
と聞かれたのだった。かぁッと躰の芯から熱くなるのを感じた千弘は、気がつけば頷いていた.....
それから数日後、今、千弘は、事実上、拉致されて何処とも判らない場所へと連れて行かれていた。車がどれだけ走ったのか、どっち方面なのか、まるで判らない。時間も30分の様な気もするし、二時間近い様な気もした。確かなのは、千弘の躰と股間が熱くなっていく事だけ.....
そうして車が徐々に減速し始めたのが千弘にも感じられた。ゆっくりとしたスピードになりやがて停車した。千弘を固定していた革枷と首輪の紐が外され、ゆっくりと引かれる。其れに従って、ヨタヨタと歩き出し、車を降りる場面では、両肩を掴まれてゆっくりと降ろされる。そのまま、革枷に付いた紐で引っ張られるままに歩いて行けば、やがてある場所で止められる。目も耳も塞がれた千弘には、周囲の状況など判らない。ゆっくりと、そのまま立ったままで、衣服を全て剥ぎ取られ、後ろ手に手錠を嵌められる。足には足枷が嵌められ、そして....耳栓と目隠しと轡を外された。顔に強い照明を当てられた千弘には、はっきりとは見えなかったが、自分の周りに、顔を全て覆った褌一丁の、歳も種族も体格もバラバラな十人程の男達が自分を凝視しているのが辛うじて見えた。その周りには、どんな使い方をするのか想像もつかない器具や道具が鎮座していた。虎の獣人....加藤と名乗っていた男が同じ姿で千弘の肩を抱き寄せ
「さて、お集まりの皆様。これが今日の奴隷....遥(はるか)です!! 初体験では無いとは言え、貴重な新鮮な獲物です。是非、初な反応を愉しんでください」
予めの打ち合わせ通り、源氏名....遥(はるか)で紹介された千弘は、加藤に腰を掴まれたままで深々とお辞儀した......
「遥(はるか)です。よろしくお願いします」
最初は手筈通りに、加藤がリードしていく形で進められていく。千弘は、麻縄で、上半身を亀甲の文様に縛められ、腕から手首を背中できっちりと決められて動けなくされると、天井から吊るされた吊り縄で、背中から引っ掛けられる。そして、股下から爪先までも縛り上げられ、捕まった大型獣の様な姿にされると、吊り縄を引かれて、高さ5cm程、足が床から浮いた所で固定される。何もせずとも、ぶらんぶらんと揺れる浮遊感に、加藤の要所要所をきっちりと縛める縄の感触、なによりも、こんな無力で無様な姿を十人以上の男達から寄ってたかって見られている事に羞恥心が刺激され.....短小がピクンと立ち上がり始めた所を、加藤に
「おっと....長く愉しまないとね」
と囁かれながら、鳥かごの様な、千弘の短小にサイズを合わせた貞操帯を嵌められてしまった。
加藤がその場を離れると、周りの男達がじりじりと近づいてくる。皆んなマスクの上からでも判る欲望にギラついた目で千弘を見つめながら.....
一人が乳首摘んで離す。思わず
「うッ!」
と声を漏らせば、男が嬉しそうに
「こりゃあ確かに初だねぇ。弄りがいがありそうだ」
その声を皮切りに、男達の手が千弘の躰を弄っていく。千弘はその度に
「ヒッ!」「んう!」
と声を漏らし、貞操帯の下から先走りを垂らしていく.....
............
........
....
その後、千弘は加藤の手によって様々な縛りをされ、男達からも様々な箇所を指だけでなく舌でも触られ続けた。相撲により躰の柔軟性がある千弘の躰は、様々な縛りの態勢に対応出来てしまう。首を曲げた状態で床に頭を着けられ、両の足首を部屋の反対側に引っ張られて、足をほぼ直線に開脚された時には、どよめきと拍手が起きた程である。
その姿勢のままで、一斉に男達が太腿と尻穴に群がって舌でペロペロと舐め始めた時は、千弘は思わず泣きそうになってしまった。しかし貞操帯の下より我慢汁が途絶える事は無かった.....
............
........
....
そんな行為が長々と続き、流石に千弘も、参加者達も汗で躰がびっしょりになってきた頃、『締め』として、千弘を逆海老縛りにして背中から吊ると、参加者達が一人づつ千弘の躰を両肩で掴むと、褌を外して千弘の口の中に突っ込み、前後させ始めた。いつも、岡本達からされられている通りに、男達の男根を舌と唇で刺激して男達の男根を固く熱く滾らせる。一人が、声と共に射精し、精を千弘の口中に出せば、千弘は一滴も零す事なく飲み込んでいく。其れが済んだら、次の男に千弘の躰が渡され、同様の行為が行われる。やがて....全員の精を飲み込み、口が精液でべっとりとなり、流石に疲れでうなだれていた千弘に
「さて、皆様、楽しんでいただけましたでしょうか? 最後は私で締めさせていただきたいと思います。今回が初めてだそうです」
加藤が千弘の後ろから近づくと、栓代わりの張形を千弘の尻から引き抜くと、加藤の大きめな巨根が尻穴に当てられる。その体温と感触に思わず
「ひっ!」
と声を上げた千弘の腰を掴み、ゆっくりと男根を挿入していく加藤。半泣きの顔に、男達が嬉しそうにどよめく。
「おお、流石、反応が新鮮で良いですなぁ」
「しまったなぁ....あと10万積めば、初挿入の権利が....」
そんな声を聞いてすっかり羞恥心が刺激されてしまった千弘が、顔を真っ赤にして、しかし初体験に半泣きになって、空中で躰を揺すられる事10分あまり。加藤が
「うっうーん!!」
との声と共に、千弘に中出しして果てると、後ろにモノを引き抜いて尻もちを付く。千弘は、前と後ろの口からドロドロの精液を垂らしながら、前後にぶらんぶらんと空中で為す術もなく、半泣きで揺られている無様で無力な痴態を晒していた。
5分ほどそんな事が続いただろうか....参加者の一人が
「生飲みの権利は儂の物だからな」
と千弘の下に胡座ずわりすると、貞操帯を取り外して、千弘の短小を口に含んで舌で転がし始めた。こんな状態で羞恥心で顔が真っ赤になったが、男の
「さっさ。こんな時は力を抜いて自分も愉しまんとね」
その言葉が妙に深みのある声で発せられた事で千弘も気が落ち着き、躰を委ねるように男にされるがままに.....やがて絶頂を迎えて精を吐き出せば、下の男は巧みに一滴も零さずに飲み干して
「いやあ~、これこそ若さを保つ秘訣だからねぇ。ご馳走様でした」
と千弘の頭を優しく撫でた。
............
........
....
それからの事は、ぼんやりとしか覚えていない。男達が退場し、加藤が手際良く千弘を縛めから開放すると、シャワールームで丁寧に躰を洗い流し、躰を揉みほぐしてから、服を着せると、今度は目隠しと耳栓だけで後部座席に座らされて、ぐったりとうなだれ....途中から寝ていた千弘を岡本と一緒に下ろした事まで覚えている。その帰り際、加藤が厚みのある封筒を岡本に渡していた事、「次も頼めると嬉しいね」という言葉を残して車で去っていった事ぐらいだろうか。いや、もう一つだけ....岡本が千弘の顔を複雑な表情で見つめていた事が妙に印象に残っていた。
自分が、人としてどんどん『堕ちていく』....そんな事が頭では判っていても、感情が死んでいく。『どうにかしなければならない』とか、そんな気力が全く起きなかった。このまま進んでいけば自分だけでなく、自分の周りを巻き込んでの『破滅』が待っている。そんな事が判っているのに、寧ろ....
『もっと、もっと....堕ちていきたい...』
世間体も、社会的生命も、何かも放り出して、人として破滅しながら快楽の深みへと沈み込んでいきたい。そんな事を漠然と願う様になっていた。
あれから加藤とは、数回の接触があり、その度にプレイ内容も際どく過酷になり、三角木馬に跨がらせて両足首に錘を吊るす様な事までやった。その度に、加藤は岡本に封筒を渡していたが、千弘には、その中身が何なのか、特に気にならなかった。自分はただ、このまま堕ちていけばいい。何もかも駄目にして....そんな時、千弘は暗い瞳で虚空を見つめて、一人でにやけているのだった。『堕ちていく自分』を感じながら....
ただ....岡本が千弘の顔を複雑な表情で見つめていた事が妙に印象に残っていた。
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ある日、千弘は岡本に空き家へ呼び出された。岡本が今までの動画を流して見せつけ
「これから先輩の動画を拡散させます」
と宣言された。だが....千弘の心は動かなかった。いや寧ろ
『とうとう破滅する時がきたのだ』と....仄暗い笑みを浮かべていた。嬉しそうに
「そうか....」
と告げれば、岡本が泣き笑いの表情で
「本気ですよ。このままだと先輩、破滅ですよ」
と言っても、
「そうか....早くしてくれ」
とニタァとぞっとする笑みを返した。涙ぐみながら怒った岡本が、スマホのボタンをタッチして
「さあ、これで先輩の動画がネットに拡散されましたからね! もう終わりですよ!!」
だが、千弘は
「そうか....ありがとうな」
と嬉しそうに返した。暫く俯いていた岡本がダッと横を駆け抜けていった。その横顔を見て千弘はハッとした。何故かは判らない。でも....
「なんで.....泣いて」
翌日、千弘は普通に高校に登校した。しかし誰も千弘を指差したり、蔑むような目をしたり、ひそひそ話をしたり.....という事は何も無かった。自分のスマホでも、家のPCでも検索したが、動画....千弘の物らしきモノは全く流出した痕跡が無かった。正直肩透かしを食った様な気持ちだった。だが、同時にホッとしたのも事実だった。あれから岡本達から接触は無い。宙ぶらりん気持ちで、数日間を過ごした....
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数日後、岡本に千弘は呼び出された。其処には何度も殴られた跡の有るボロボロの様子の岡本が立っていた。千弘が思わず
「お、おい? 大丈夫か?」
と聞けば、岡本が鼻血を垂らしながら苦しそうに笑って
「全く....先輩って、本当にお人好しなんですね。俺の事を心配するなんて....」
千弘が無言で岡本の肩を持ち、保健室へ歩き出そうとするのを止めて、
「白瀬先輩と縁を切りました.....動画は元々、俺が全部保管してたので、白瀬先輩はもう、先輩を脅す事は出来ません。俺の方で保管している動画も全部、昨日消去しました。先輩は....自由です。もう.....」
そうして尚も一人で立ち去ろうとする岡本を、千弘は無理矢理、お姫様抱っこして抱え上げると、保健室の方へ歩き始める。千弘は....
「どうして.....何から聞いたら良いのかさっぱりなんだが、どうしてこんな事になっているんだ?」
岡本が目を伏せて
「先輩は男が男を好きになるって、どう思います? 気持ち悪いですよね....」
千弘は、難しい顔をしながら
「場合によりけりなんだろうが、俺はそういうの、悪い事じゃないと思うぜ」
岡本が呟くように
「それ、自分の場合も、そう言えますか.....?」
千弘がハッと目を上げて岡本を見つめる中、岡本も目を上げて
「先輩の事、好きです。だけど....気持ち悪いですよね。言ったら拒絶される。だから....先輩にせめて自分の事、憎んでもらっても良いから、忘れられない様な痕を刻みたかったんです。だから......謝っても済むような話じゃないですよね.....だけど、ごめんなさい....」
そう言って泣きじゃくる岡本を、千弘は困った顔で見つめながら抱きかかえて保健室へと歩いていった....
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巨漢の牛の拳が空を切る。全く当たる気配もない。息を切らせ始めた白瀬に、千弘の黒い豪腕が唸りを上げて、腹にめり込んだ。
「ぐあぁ......」
地面で躰を二つに折って腹を抱える白瀬。千弘が上から
「岡本の分だ。後、二度と俺と岡本に近づくな。判ったな」
振り返る事も無く歩き出した千弘が、ふと足を止める。振り返らず拳を高く掲げ、周りの不良達に
「俺は番長を引退する。これからは好きな奴が番長を名乗りゃあいい。俺には別のやる事があるからよ」
と宣言した。
....相田高校の相撲部が春の大会で、思わぬ助っ人の加入により快進撃を続け、全国大会に出場した事で、その年の相撲部への入部希望者が増加した事を記しておく。
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それから一年弱....春である。卒業した者は、就職したり、大学へ進学したりと....様々な進路をとるのであるが.....
とあるテーマパークにて....
「先輩! 大学進学おめでとうございます!」
「いや、大学進学って言っても、たまたま向こうの相撲部の顧問の目に止まったってだけで、なんつうかなぁ.....」
クレープを食べながら恥ずかしそうに歩いているのは千弘....特別推薦枠で、相撲部への入部を条件に大学へ進学という、自分でも信じられない進路に戸惑っていた。まあ、恥ずかしそうに歩いているのは、其れだけではない様であるが.....
腕にしがみついた岡本が
「俺も同じ大学へ行きますから! 待っててくださいね!」
そんな言葉に、更に顔を赤らめる千弘であった.....
そんな二人を遠くから双眼鏡で観察する黒い影....加藤と名乗った中年の虎である。
「やっと見つけたよ。遥(はるか).....いや千弘(ちひろ)くん。岡本くんに連絡を絶たれてから、君らを探し出すのに随分と苦労させられたよ。君には別の才能があるんだ....このまま埋もれさせるのは惜しいからねぇ....」
そう呟くと、肉食獣の如く舌なめずりをした......
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