ゲーム転生〜ビジュアルつよ過ぎくん、ゲームの世界に入り込んでしまう!!!!

  ビジュアルつよ過ぎくんは、虹色のモヒカン頭にグラサンをしてゐる。

  服装は、幅が広過ぎる肩パッドをつけてゐる。

  あとは、首から下げてゐる金ネクが、長過ぎて地面を引き摺つてゐる。

  そんな彼が、ある日目覚めたら、ゲームの世界に入り込んでしまつてゐた!!!!

  「なんか太陽、しかくくないか?」

  それもその筈、彼は小学生に人気のゲーム「ウチノクラフト」の中に、何ういふわけか、入り込んでしまつてゐたのだ!

  太陽は正方形、地面も地形もしかくい。

  木も、その辺を歩いてゐるニワトリだつて、なんだか角張つてゐる。

  彼の視界には、ハートが四つと謎の四角形と、Tシャツみたいなアイコンが一つ写りこんでゐる。

  ハートは體力を、四角形はアイテムの所持欄である。

  彼が地面を破壊したり、雜草を引き抜いたりすれば、「土ブロック」や「草の種」といつたアイテムを入手する事が出来る。

  そして、近くを歩いてゐる間抜けなニワトリを殴れば、鶏肉が手に入るぞ。

  Tシャツみたいなアイコンは、彼の防御力を表してゐる。

  恐らく彼の肩パッドによりものだらう。

  肩パッドからはとても長い棘が生へてをり、攻撃力もあるかもしれない。

  ともかく、彼は不用意にもこの謎の場所を探検してみる事にした。

  と思つたら、穴に落ちた。

  幸ひ、肩パッドが入口でつかへたお蔭で、底まで落つこちる事は無かつた。

  彼は、ここが危険な場所だと悟つた。

  洞窟の中は暗く、サングラスなんかしてゐたら、余計に危険だ。

  彼は地面に注意しながら、先へ進む。

  途中、サンゴ礁の綺麗な海もあつた。

  彼は、生まれてこの方、こんな綺麗な海を見た事が無かつた。

  「ゲームつてのも、悪くないかもな」

  親にゲームを購つてもらつた事の無い彼だつたが、段々このカクカクした世界が、「ゲームの中」であると気づき始めてゐた。

  海の向かふには何があるのだらう。

  寶島か、このゲームのゴールか。

  あるいは蓬莱山みたいな島があるのかも。

  神仙が住んでゐて、願ひ事を叶へて呉れるのかも知れない。

  水平線に日が沈んでいくのを眺めた。

  辺りが暗くなつた時、彼の耳元から「ウワー」といふ爆音が轟いた。

  びつくりして飛び退くと、目の前にゾンビがゐた。

  眞つ青な顔に、謎の液體が頭から漏れてゐる。

  ボロボロの服に、腕からは骨が飛び出てゐる。

  そして何より臭い!

  ビジュアル強すぎくんは逃げた。

  幸ひ、ゾンビの足は遅かつた。

  彼は、月の光が白く照らす砂浜を、無茶苦茶に走つた。

  森の近く迄来た時、「ビュンッ」といふ音ともに肩に激痛が走つた。

  矢だ。

  矢で撃たれたのだ。

  「カラン、コロン」

  

  遠くの方で、そんな不気味な音がした。

  それに気を取られてゐる間に、二本目の矢が刺さつた。

  今度は額に直撃した。

  痛みを感じる前に、目の前が眞つ暗になり、白い文字が現れた。

  「ヨウ、ディエ…ディー?」

  

  彼は讀めなかつたが、それは「YOU DIED」と書かれてゐた。

  ……

  「やば、寝ちやつてた……。」

  點けつ放しのパソコンの画面が白く光つてゐる。

  部屋はもう眞つ暗だ。

  今目覚めたのは、山田モヒカン二世である。

  彼は、ゲーム会社「モジャヤン」に勤める、プログラマーだ。

  「モジャヤン」は、大手コンピュータソフト会社の「マイクラシフト」社の子会社であり、人気ゲーム「ウチノクラフト」を制作してゐた。

  「なんか、變な夢見たな……。プロジェクトも大詰めだしな……。」

  彼は今、「ウチノクラフト2.0」の制作に關はつてゐた。

  これは、VRを利用して、ゲームの世界に没入できる樣になる大型のアップデートである。

  モヒカンは、部屋を出て、コンビニに買ひ出しに出かけた。

  コピー機で会社にファックスを送り、サンドイッチを買って、店を後にする。

  彼が事態に気づいたのは、部屋に歸つて、パソコンを少しいじつた辺りからである。

  「何だこりや。」

  自分のキャラクターが、虹色モヒカンで、サングラスを掛けてゐるではないか。

  「何これ、MOD? 俺、こんなん入れてないし。あれ、寝ぼけてて何かやつちやつた?」

  色々と確認してみたが、彼の製作してゐる「2.0」ではなく、従来の「ウチノクラフト」で起こつてゐるみたいだ。

  彼は一先づそれは置いといて、2.0の仕事を続けた。

  さうしてゐるうちに、いつのまにか「虹色モヒカン」の事は忘れてしまつた。

  ……。

  「ウチノクラフト2.0」アップデート当日。

  モジャヤン社は、クレーム對應に追はれてゐた。

  曰く、「自キャラが虹色のモヒカン頭になつてゐる」とか、「ゾンビがリアル過ぎて怖い」とか。

  山田モヒカンら、技術者も原因究明の爲、出突つ張りとなつた。

  2.0のソースコードを詳しく読み込んでみたが、どこにも異常はない。

  ちやんと1.0の、「可愛いデザインのキャラクター」が出力される樣になつてゐる筈だ。

  モヒカン頭や、リアルゾンビなんかでは決して無い。

  VR機器や、コンピュータとの関係も調べられてゐる。

  山田モヒカン二世は、こんな事態になつてしまひ、胃がキリキリしてゐた。

  アップデートの日から二日が過ぎた。

  異常は、1.0で見つかつた。

  キャラクターのデータが、モヒカン、リアルゾンビに書き換はつてゐたのである。

  

  然し、おかしいのだ。

  誰も1.0のデータを觸つた形跡が無いのである。

  其れは、2.0のアップデートの日に初めて出現した部分でありながら、かつてリリースした旧バージョンに全て含まれてゐたのであつた。

  外部からの攻撃ではない。

  そして、1.0のリリースから仕組まれてゐた……。

  原因不明ながらも、インターネットでは、「イースターエッグではないか」「ドッキリかな」「エイプリルフールには早すぎる」など、メーカーが仕掛けたサプライズと捉えられてゐた。

  「モジャヤン」は、即時公開停止も考へたが、大きな問題は発生してゐないので、「バグのお知らせ」としてリリースするのみとなつた。

  そして、1.0の改修作業が始まつた。

  これには、山田モヒカン二世がメインで関はつた。

  同じモヒカンとして、居た堪れなかつたからである。

  給料は要らない、有志でやるとモジャヤンには傳へたが、「給料は出すので、責任を持つて仕事に当たつて呉れ」と言はれた。

  そのデータは、ゲームの根幹と深く結びついてをり、単純に削除すると、ゲームが起動しなくなる事が早くも知られてゐた。

  そこで、山田チームは、システムの全面改修に当たることとなつた。

  そして三ヵ月の時が過ぎた……。

  無事、新ウチクラ1.0のリリースが終はつた。

  そして、このモヒカンを仕組んだ犯人が判明した。

  それは、このゲームの初代製作者であつた。

  彼は、天才的なゲームクリエイターであつたが、人格的に問題があつた。

  オフィスに牛の血で魔法陣を描いたり、サーバールームで脱糞したり、など。

  それで、社員全員が苦情を申し立て、この製作者はクビとなり、運営のために「マイクラシフト」と契約したのだつた。

  然し、彼は、正式版「ウチノクラフト」、つまり「1.0」の製作の半分を完了してをり、それが今回の問題を引き起こしたてふのだ。

  詳しく説明すると、そのデータが残つたまま「1.0」をリリースしてしまひ、「2.0」をリリースするタイミングで、それが起動してしまつた樣なのだ。

  「マイクラシフト」及び「モジャヤン」は、彼に損害賠償を求める訴訟を提起した。

  然し何故、キャラクターがモヒカンだつたのか。

  山田モヒカン二世は、それが一番知りたかつた。

  其れは今に至る迄、謎である。