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Marinesnow Christmas

  【筆者コメント】

  ようやくうちの子オンリー創作作品をすることができました……!

  是非とも読んでいただけると次の作品への励みになります♪

  (なお,掲載しているイラストの著作権は全てクリエイターの方々に帰属しております.無断転載等は固く禁止させていただきますため,ご了承ください.)

  【登場人物】

  ○朱鷺宮ハルカ (ときみや-はるか)

  朱鷺と竜のハーフ.男性.とある大学で教授として勤務している.何やら急ぎの用があるようで……?

  [uploadedimage:17075349]

  (キャラクタークリエイター:Zack-Goto.さん[[jumpuri:Twitter > https://x.com/gotokemono?s=21]])

  ○アクア=カンピオーネ

  シェパードシャークという特異種族.かつて海世界を統べていた『五統貴族』の一族であった『カンピオーネ家』の王女が,抗争により棲む場所を追われてしまった.現在は海辺の町で小さなカフェを経営している.ハルカには特別な想いを寄せているようだ.

  [uploadedimage:17075508]

  (キャラクタークリエイター:陽花ましろさん[[jumpuri:Twitter > https://x.com/komorebi_box?s=21]])

  本編はこちらから!

  ↓↓↓

  [newpage]

  「まずい,遅くなってしまった……」

  仕事カバンを片手にスーツ姿の1人の竜が柏陽の髪を靡かせ、彩られたアーケードの商店街を駈ける.彼の名は『朱鷺宮ハルカ(ときみや-はるか)』.普段は大学教授として勤務している.今日は学会の発表会に参加していた.普段滅多に起こることではないのだが,発表に対する質疑応答が白熱しすぎたせいで乱闘騒ぎになってしまった.そのため,鎮静するのに時間がかかり,学会が長引いてしまった.

  「まだ開いてるといいんだが……」

  時計をちらりと確認し,人混みを縫うように目的の場所へと急ぐ.時計には『18:54 XXXX/12/25』と刻まれていた.

  「ここだこk……マジか」

  丁寧な筆記体で『[[rb:Le Ciel > ル・シエル]]』と書かれた看板の掲げられた菓子店.イルミネーションに着飾られた店内は溢れんばかりの人で大賑わいだ.

  「これじゃいくら待っても買えんぞ……」

  即座にその場を離れ,スマートフォンを取り出して手早く次の目的地を探す.

  「ここから……20分も歩くのか.電車の時間も間に合わない……けど……」

  一瞬険しい顔をするが,スマートフォンをしまうと意を決して元来た道をまた走り出した.

  [newpage]

  「ありがとうございましたー!」

  所変わって,とあるカフェ.

  すっかり日も落ち,窓枠に映っていた外の景色も深い藍色のクレヨンで塗りたくられてしまっている.

  ゆったりとクラシックジャズが流れる店内で,1人の女性が最後のお客さんを見送る.彼女は『アクア・カンピオーネ』.シェパードシャークという上半身が犬,下半身がサメという特異な身体をしており,この小さなカフェ『マリンスノー』のたった1人の経営者でもある.

  お客さんがそのままにしていたカップと食器を前足で器用に持ち上げると,空中を泳いで運ぶ.

  「今日もたくさんの方が来てくださいましたね」

  流し台に置かれた大量の食器類を見て満足そうに呟くと,前足で器用に洗い始める.チョコソースやクリームがついた皿も彼女の手にかかれば,未使用ものかと見間違えるほどの純白に早変わりだ.

  鼻についた泡を拭いながらふと時計を見る.

  「そういえば……遅いですね,あの方」

  時計は既に23:00を回ろうかというところだ.『今日は早く行くから』という連絡をもらったのだが.何かあったのではないか……気持ちに翳りが見え始めた,その時.

  カランカランッ!

  カフェの扉が勢いよく開かれ,ドアベルが激しく鳴る.驚いたアクアが作業の手を止めてドアの方を見ると……

  「ごめんっ!遅くなっちゃった……!」

  そこにはスーツを纏った柏陽の竜.よほど急いで駆けてきたのだろう.激しく上下するスーツの肩は水に濡れて藍色に染まり,ズボンの裾は撥ねた泥にまみれている.また、彼の角には幾分かの雪が付着していた.

  「ハルカさん……!?」

  急いで彼のもとに駆け寄る.

  「どうしたんですか……そんな格好で……!」

  「いや,行こうとしてたお店がいっぱいでね,もっと下調べしていくべきだったよ」

  たはは,とハルカと呼ばれる竜は少年のように笑った.

  全くもう,と呆れたようにため息をつく……と,ハルカの手に提げられたビニール袋が目に付いた.

  「ハルカさん……これは?」

  右の前足でビニール袋の中身を尋ねた.

  「あぁ……これから君と”お茶”をしたくてね」

  とくん,とアクアの心が跳ねる.

  「遅くなってしまったけど……お付き合いしてくれるかな?」

  未だ乾かぬ手でアクアの手を握る.

  頬をバラ色に染めた”お姫様”はこくりと頷いた.

  [newpage]

  カシャン

  カフェの窓際.

  電気の消されたカフェには漣の声だけが響く.

  テーブルの上に置かれたキャンドルにオイルライターで火を灯すと,ふわりと灯るあかりが2人の瞳を暖かに映し出す.

  「こういう事やるのも久しぶりだね」

  「そうですねえ……なんだか懐かしい感じ」

  お互いの目を見てふふ,と微笑む.

  「お茶いれますね」

  透明なティーポットに入れられた紅茶を器用にカップに入れていく.

  「そしたら僕はこれを……あっ!」

  合わせるように動き出したハルカがビニール袋の中から箱を取りだして開けた瞬間,大きな声をあげた.

  「どうしたんです!?」

  ハルカの声に驚いたアクアが尋ね,箱の中身を見た.

  中にはモンブランとミルフィーユが入っていららしいが,ハルカが激しく動いたせいか,形が大きく崩れてしまっていた.

  「やっちゃった……ごめんね,こんなになっちゃって」

  かなり落ち込んでいるのだろう.いつもの声が小さく震えている.

  「いいんですよ,ハルカさん.一緒に食べましょ?」

  ハルカの肩に前足を乗せてやんわり慰める.確かに形は崩れてしまってはいるが,込められた彼の真心は痛いほど感じている.

  「……うん,ありがとうね」

  アクアの手をハルカの両手で包み込む.

  「さ,食べようか.君の紅茶が冷めないうちに」

  ケーキを食器に盛り付けると再び席につく.

  2人に挟まれたキャンドルがハルカとアクアを優しく照らす.

  「「乾杯」」

  ティーカップをカチリと交わし,中の紅茶を含む.さっぱりとした風味が口の中に広がり,じんわりと身体を中から温めていく.

  「うん、やっぱりアクアさんの紅茶がいちばん美味しいよ」

  「あら、またお世辞が上手になった?」

  「おや、僕がそんな小綺麗なお世辞が言えるとでも?」

  「冗談ですよ、嬉しい限りです」

  既に時計の針は次の日を跨いでいたが、2人の間には他愛ない会話の花が次々と咲いていく.

  あまりにも早く流れてゆく時間.

  ハルカにとっても,アクアにとっても,この時を愛おしいと一言で片付けてしまうにはあまりにも勿体ないものだった.

  [newpage]

  「…アクアさん」

  ちらと外を見ていたアクアにハルカが声をかける.

  「僕は貴方とこんな時間を過ごせるなんて思ってもいませんでした」

  「ハルカさん……」

  突然の真剣な雰囲気の話にアクアは戸惑いを隠せない.だが,彼の口調に対して不快だとは決して感じなかった.

  「もしかしたら,この紅茶が僕たちを結びつけてくれていたのかもしれませんね」

  持ち上げた自身のティーカップの縁をなぞる.中の紅茶がキャンドルに照らされたハルカの顔をぼんやり紅く映し出し,アクアの目にもその像が映る.

  「……受け取って,いただけますか?」

  アクアが顔を上げるとハルカの前に青いリボンで包装された小さな箱が置かれていた.

  受け取り,ゆっくりと包みを開いていく.

  「ハルカさん、これ……!」

  箱の中にあったのは──空色のティーカップ.

  綺麗な円形をした飲み口には波を象った白い文様、側面にはサンタクロースの衣装を纏ったアクアがデフォルメされて描かれ、筆記体で『Aqours』と名前が刻まれていた.

  「メリークリスマス,そして……これからも、僕と共にいてくれますか」

  刹那.

  アクアの中で何かが弾けた.

  はじめは,ただのお客様だと思っていた.

  紅茶を好きだと言ってくれた,優しいお客さん.

  でも,何故か.

  離したくない.

  どこにも行って欲しくない.

  いつの間にか,無意識のうちに,

  この人を追いかけていた.

  叶うはずなんてない.

  それでも,願わずにはいられなかった.

  もっとこの方を知りたい.

  もっとハルカさんに触れたい.

  もっと貴方と,一緒にいたい.

  何度も燻っていた.

  苦しかった.

  でも,今は……

  いつしかアクアの目からは雫がこぼれ落ちていた.

  ティーカップの入った箱に触れるアクアの手に,白い手が重なる.

  愛おしいほど伝わってくる,貴方の熱.

  「……もちろん」

  震えて止まらない口からどうにか言葉を絞り出す.

  声に出して,伝えたいのに.

  私も貴方を

  ─愛していると

  「……ありがとう」

  アクアを包んでいた白い手が,濡れた頬に触れる.

  真夜中にもかかわらず咲き誇る六華が月のカーテンを優しく反射し、ハルカの手を艶やかに照らす.

  「ぐすっ……ごめ……ん、なさ…っ!わたし……!!」

  「静かに」

  不意に低い声色になる.

  はっとして正面を見ると,アクアの瞳はハルカの顔を捉える.

  お互いの息を感じる距離.

  再び胸が高鳴る.

  そして─重なる,唇.

  初めて感じるお互いの熱は、ただひたすらに身も心も溶かしてゆく.

  「愛してるよ,アクア」

  熱い口付けを終え,再び目の前の愛人を見つめる.

  「私も,愛してます」

  ようやく口に出せた,愛の言葉.

  愛しきお姫様を柏陽の王子様は優しく抱きしめる.

  窓の外に咲きほこる六つの花.

  青藍に浮かぶ蒼い月は、抱き合う2人をいつまでも優しく照らしていた.

  𝐹𝑖𝑛.

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