「なに、アイツがラビッピを狙ってる?」
「そーなんでチュ!はやくモグラーニャにしらせるでチュ!」
「分かった。お前はとりあえずあの子と一緒に居てやってくれ。」
「まかせたでチュ!」
とある吹雪が舞っている日の事。
おれはいつものように見張り番としての務めを果たすべく森へと向かっていた所、突然慌てた様子で走ってきたハリネズミの女の子・子ネヂミに出会い、そしてラビッピというウサギの女の子がピンチである事を聞かされた。
何でも、アイツがまた彼女を狙っているらしい。
あれだけ傷つけておいて、まだアイツは彼女に恨みがあるのか……。
幾ら自分の育てた野菜を持っていかれたとは言え、おれ達だって生きていくのには仕方のない事だ。
そんなおれ達の生きる権利を奪うような事を、人間であるアイツは平気でするのか?
まあ、やっぱりと言うべきか。おれは改めて、アイツの元を離れて正解だったと確信した。
「やはりお前は……っ!」
おれはアイツが嫌いだ。
アイツにとっておれ達は、所詮モグラーニャの行く手を妨げる為の駒でしかなかったんだ。
利用するだけ利用しておいて、用済みになればこの様か!
[newpage]
あれは、おれがまだアイツのもとで他の奴らと共に彼の前に立ちはだかった後の事。
彼は自分の奥さんと子供を救い、じんべえランドを後にした。
その後は各自解散という形で別れたが、おれは特に帰る場所がなかった為、アイツのもとで暮らそうと思った。
始めの内は、大して役に立てなかったおれに対してアイツは優しくしてくれたっけ。
まあ、時におれがアイツの畑仕事を任されたりもしたが、言われた通りの事を熟しただけでもアイツから褒美としてたくさんのご馳走を振る舞ってもらえたな。
それがきっかけでおれはアイツの事を信用し、アイツの用心棒でも居ようかと考えるようになっていった。
だが、現実はそう甘くはなかった。
無論おれには優しくしてくれたが、他の奴らに対して非道な仕打ちをしていた事を当時のおれは知らず、あの日もおれはアイツの畑仕事を手伝っていたのだが……。
[newpage]
「フゥー……終わったぜ。」
「おぉ。アジラ、お疲れさん!」
「ん?これで良いんだろ?」
「あぁそうだ!よし、今日もお前の為にバンバン振る舞ってやるか!」
「あんまりムリすんなよ?」
「分ーかってるって。じんべえランド造るのに無駄な金使っちまったしなぁ。」
今思えば、たかがモグラの為に馬鹿げた話だよな。
おれ達は真剣に彼の足止めをしようと思って雇われたと言うのに、アイツはわざと彼を誘き寄せた。
それもあんな大層なモンを作りやがって……お陰でおれ達は単なるやられ役でしかなかったじゃないか。
まあ、そんな話はもはやどうでも良いが。
「んじゃ、先に戻っててくれ。オラはまだやる事あるからなぁ。」
「あ、ああ。……ん?」
何だ?やる事って。
さっきの畑仕事で今日は終わりじゃなかったのか。
一度は言われるまま家へと向かっていたが、気になって仕方ないおれは踵を返すとアイツの向かった森の方へと歩いていく。
ただその選択が、当時はまだ知らなかったアイツの裏を知ることになるとは思いもしなかった。
暫く歩くと森の中へと入っていた。
しかし、アイツの姿が見当たらないな……何処に居るんだ?
「そういえば、最近よく畑に来るやつが居たな……。」
はっきりと姿までは見ていないので何とも言えないが、アイツは最近そんな話をする事が増えていった。
その時のアイツは何処か普段の優しさはなく、まるで憎しみを感じてならない表情を浮かべていた。
ふとそんな事を思っていると、森の奥深くにアイツらしき姿があるのを見つける。
ただ、何となく様子がおかしい。
おれは気になって、アイツの近くまで寄ろうとした……だが、そこで見えたのはまるで信じられない光景だった。
[newpage]
「このっ、バカウサギめっ!」
「ッ……。」
「オラのせっかく作ったキャロットを勝手に食いやがって!オマエみたいな奴は二度とオラの前に現れるなッ!」
「っ……ごめん……なさい……。」
「アイツ……マジか……。」
おれがすぐ側まで来た途端、アイツは声を荒げて、木の枝に吊り下げられている何者かをクワで殴り付けている。
その姿が見えた途端、おれは見てはいけないものを見てしまった感覚に囚われると共に、アイツの本性を知り落胆した。
そのターゲットは、かつての仲間であり、よりにもよってか弱い女の子。
そして何よりも、アイツの世界でおれ達と共に彼に立ちはだかっていたウサギの姿だった。
「っ……じんべえ、お前……そんな、[[rb:人間 > やつ]]だったんだな……。」
おれはアイツに優しくされていた為、てっきり他の仲間にも同様の態度で接しているのだろうと思いこんでいた。
だが、それは単なるおれの思い込みで、おれが勝手に仲間想いの人間だろうと信用してただけなのか。
まさか一切話も聞かず、一方的に手を出すような奴だったとは……。
おれはアイツのその姿に失望するとその場を後にし、その瞬間アイツの家から出ていくことを決めた。
あれから暫くの間、誰とも顔を合わせる気はなく、ただただ俯きながら巣へと足を進めている。
途中モロQや子ネヂミに話しかけられたが、おれはとても会話をする気力はなく申し訳なさそうに通り過ぎた。
「クソっ!」
やがて森から離れ、気付けばおれは海辺のジャングルへと辿り着く。
そして目の前のヤシの木を見つけると、怒りのあまり木の幹を殴り付けた。
ヤシの木の軋む音を気にすることなく、おれは殴り続け、それと共に目の前が涙で滲んでいく。
「ぐっ……信じたおれが、バカだった……っ。」
おれは悔しさで溢れ返ると、殴るのを止めてその場に崩れ落ちた。
[newpage]
あれから数日間、おれは完全に塞ぎ込むように毎日を過ごしていた。
時々モロQのやつがおれの元へ来たりするが、おれは「放っといてくれ」とだけ言って断り続けた。
さらに月日が経ち、流石にこの生活には堪えられないと思ったおれは気分転換にと、森へと向かうことにした。
季節は既に夏、幾らおれがかつて海辺にアソンやガジャと、モグラのやつを邪魔していたとは言え暑いのは苦手だ。
そういえば、あのウサギはあの後誰かに助けてもらえたんだろうか……。
ふと森が目の前に見えてくると、あの日の光景を思い出す。
流石にあんな高い所へ吊るされていたんだ、誰かしらに見つかっただろう。
森の中へ入るとさっきまでとは打って変わり、陰になっているおかげか楽だ。
おれは一先ず近くの木に寄りかかると、その場で一休みすることにした。
「ん……?」
少しばかり休んでいると、何処からか男の声と女の子らしき声が聞こえてきた。
他に誰か居るんだろうか、気になったおれは立ち上がるとその声のする方へと歩いていく。
すると、そこにはあの日木の枝に吊るされ、アイツに痛め付けられていたウサギと、見覚えのあるモグラの姿があった。
「まさか……?」
おれと同じくあのモグラを邪魔していたウサギの女の子、なのにアイツはあの子を助けたのか?
あの日見た時とは違い、モグラと仲睦まじそうにしている様子を見るにそうなんだろう。
「ぁ、ちょっと、待っててください……っ!」
「っ!?」
おれがそんな事を考えていると、ウサギはそうモグラに言い残してこちらへと向かい始めた。
すかさずおれは、近くの茂みに身を隠してやり過ごすことにする。
「……っぶね。今見つかったら厄介だ……。って……まずい、腹減った……。」
ウサギはおれの存在には気付いていないのか、そのまま何処かへと走っていった。
それを見てとりあえずモグラの様子を伺う事にしたが、ウサギがすぐにキャロットやキャビッジらしき野菜を持って戻って来た為再び茂みへと潜る事にした。
しかし、おれは生憎空腹である事を思い出すと、このままではまずいと思いプライドを捨てて彼等の元へと姿を現すことにした。
[newpage]
(グシャっ、グシャっ……ガブっ。)
おれは一つだけ転がっていたリンゴを手に取ると、背を向けてリンゴにガブリつく。
当然その音は彼等に聞こえていて、耳の良いウサギが真っ先におれに気付き、名前を呼んだ。
「あっ……アジラさん……。」
「ん?あ……アジラ?」
モグラもそれに気付いておれの方へと振り返る。
まともにモグラの顔を見たおれは、何故ウサギと一緒にいるのか漸く察する事が出来た。
空腹故の行動だったとは思わせないよう、おれは平静を装って食べかけのリンゴを持ち、彼等の方を見て久し振りに他人へ話しかけることにした。
「……ン?これ、お前らのだったのか……?」
「はい。……でも何だか硬くて、食べられなかったのでっ。」
「……ま、お前らじゃ当然だな。」
「ですよね……。」
ウサギはともかくモグラ如きには、こんなもの無理だろうと思って言う。
思った通りの返事が彼女から帰ってきたが、モグラの方はおれを睨んでいた。
「そう言えば……お前はモグラーニャと言ったな?」
「……なんだ?」
名前はアイツによって散々聞かされていたので覚えていたが、あの世界以外でこうして会うのは初めてな為に敢えて初対面を装う。
しかしモグラがおれへの態度を変えない事と、既にアイツに裏切られたことを振り返って、何も危害を加えるつもりはないと断ることにした。
「っ、別に……おれはもうお前には何もしねぇよ。おれも……そのウサギと同じ目に遭ったからな。」
「……えっ?」
彼女の方がアイツによる仕打ちは酷かったが、おれもまさか仲間を手に掛けるとは思わなかった為、彼女とされた事は同じだろう。
肉体的に、と精神的にという違いこそあるが。
「わっ……わたしはラビッピです……っ!」
んぁ……、そういえばそんな名前だったっけ。
あの世界では彼女とはほとんど面識がなく、ただ集まった際にチラッと姿を見かけ、名前を耳にした程度だったせいかこの時はすっかり忘れていた。
せっかく彼女の方はそんなおれの事をわざわざ知っていてくれてたのに、それは失礼。
「なぁ、アジラ……1ついいか?」
「……何だ?」
「お前も……アイツに何か酷い事された、のか?」
彼女の名前を改めて知るや否や、彼はおれの仕打ちについてを聞いてきた。
しかし、おれにとったら話す事でもないと思いそこは断る。
と、そう思った矢先おれは何かの気配を感じた。
「お前ら……おれに乗れっ。」
「えっ?」
「いいから早くっ!」
彼等は気づいてない様子だが、その気配が何かおれには分かる。
とりあえずこの場を離れるために、おれはその場にしゃがむと彼等を背中に乗せてやろうとそう促した。
「わ、分かったっ……行くぞ、ラビッピっ。」
「ゃっ……あ、はいっ。」
「ここは危険だ……っ、おれ達を狙ってるやつが居る。」
「っ……!」
彼等が背中に乗り、おれに掴まった事を確認すると彼等と共におれは久し振りに本気で走り、森を離れた。
その途中、彼女が自分のせいだと思い始めたのか分からないが、そちらの事情をよく理解出来ていなかったおれは彼女を宥めるようにこう言う。
「モグラーニャの言う通りだ……っ。ウサギは気にするな……。」
「っ、ぐすっ……ラビッピです……っ……。」
すまない、ラビッピ……。
[newpage]
しばらくして、南国の地に着いたおれは彼等をその場に降ろす。
そういえば、此処に来るのも久しぶりだ。
しかし、一方で彼等は元の森へと帰りたがっていた為、その理由を聞くと。
「いや……わざわざこんな所じゃなくても良かっただろ。ほら、ラビッピなんか暑そうじゃないか……。」
「っ……、早く帰りたい、です……。」
まぁ、アイツの気配を察せられたのはおれだけのようだから、そう思うのも仕方ないか。
とりあえずおれは再び彼らを乗せて、来た道を引き返そうとした。
だが、後方から聞き覚えのある声がした為振り向く。アソンだ。
「おーい!もう帰るのー?」
「ん?おやー、モグラーニャくんにアジラくんじゃないかー。それにラビッピちゃんも、どうしたの?」
「どうしたって……まぁ、何だかな。」
おれは彼とは顔を合わせずにそう答えた。
彼はアイツの従弟だ。彼に悪気はないのは知ってるが、それでも何処か癪に障る。
「ラビッピは今、悪い奴に狙われてる……それだけだ。」
そう思っていると彼がラビッピの様子を気にしてか、悩みを聞こうとしていた。
おれへの返事をしなかった事に少し苛立ちを覚えたおれは、さらっとモグラーニャとのやり取りからおれの場合とは違う何者かに狙われてる事を察し、そう告げた。
しかし、笑顔のままでキョトンとした素振りを彼が見せると、何故か知らないが急にガジャやフェイスネークの話を持ちかけてきた。
「ね、ねーみんな?最近、ガジャとかフェイスネークを見ないんだけど、知ってる?」
「ん?……アイツら、お前の所によく居たはずだぞ……。どうかしたのか?」
まぁ、ガジャはともかく[[rb:フェイスネーク > アイツ]]は基本何処にでも居そうだが。
「うーん。なんか、フェイスネークがやたら意味の解らない歌を歌いだしたり、ガジャが壁や木に体当たりしたりしておかしいんだー。んで、何日か前から見かけなくなっちゃってね。……もしかしてキミ達の所に居たりしない?」
「……ぇっ……。」
「いや、そいつ等割と普段は普通なはずだろ?……フェイスネークの奴は、いつも口開けてるだけでのんびりしてるはず……、?」
「フェイスネークさん……。」
フェイスネークの名前にラビッピが反応したのが気になり、おれは普段のアイツの様子を思い出す。
ただ、おれはついさっきまで塞ぎ込んでいた為かなり前の話、つまり最近のアイツに関してはまるっきり分からん。
だが、一人の女の子を悩ませるような事をしているのが本当ならば、それはおれが許さない。
「アイツか……もしアイツだったらおれは……っ!」
アソンのキョトンとする様子を他所に、おれはすぐにアイツの所へ向かおうと思いモグラーニャ達を背中に乗せる。
突然の行動に慌てる二人だが、おれは気にも留めず二人を乗せたまま森へと戻ることにした。
──あれから、森へと戻ったおれは二人を降ろした。
「ありがとうございます……っ、アジラさん……。」
「いや、お礼なんか……寧ろおれがお前らを振り回させちまって、ごめんな。」
「……オレは気にしてないから、謝るなよ。な?ラビッピ。」
「ぁ……はい。わたしも……違う世界をちょっとだけ、体感する事ができましたから……っ。」
「そうか。なら良いんだが……。」
結果的におれは彼らを振り回してしまったが、彼らのその言葉を聞いて安心する。
しかし、丁度その時またしても誰かしらの気配を感じたおれは、森の中へと振り向いた。
「アジラ……?」
「おれ……ちょっと行ってくる。お前らはそこで大人しくしとけ。」
「ああ。」
「は、はい……っ。」
彼らがおれの様子を不思議そうに見ていたが、彼らをその場に留まらせるとそのまま森の中へと入っていった。
[newpage]
奥深くまでやってきたおれは一度足を止めて、辺りを見渡す。
さっきまで感じていた気配は無くなったようだが、きっと誰か居るはずだ。
「ん……?」
しばらくして、奥から何者かが歩いてくる足音が聞こえてきた。
何処か安定しない足取りに聞こえるが、もしかしてアイツ等の言ってた奴だろうか。
すると、その正体はすぐに現れた。
「今日は居ないみたいだし、帰ろうかな~。……って、あ、アジラさん!?」
「……あぁ、おれだ。」
現れたのはフェイスネーク。さっきアソンのやつから耳にした名前の1人だ。
どうやら何らかの目的で此処へ来たようだが、おれの姿に吃驚した様子から何となく察しがつく。
「え、えーと、久し振りですね?ずっと寝てたんですか?」
「ん、まぁな。って、お前は此処で何してたんだ?」
図星を突かれるが冷静にそう返すと、此処へ来た目的を聞いてみた。
すると、彼は片手で頭を掻きながら苦笑いを浮かべつつ。
「あ、いえ~。いつも此処に来る女の子が居るので、今日は居ないのかな~って思ってまして。どうやら居ないみたいなので帰ろうかなぁと。」
「うさ……ラビッピのことか?」
「っ!?」
彼がそう言って背を向けるや否や、おれはその女の子がラビッピ以外には考えられないと彼女の名前を出すと、彼は驚く素振りを見せた。
やはり、そうか……。少し面倒だが、おれはそう確信すると彼を掴んだ。
「痛っ!な、何す……っ。」
「ちょっと来い。」
抵抗する彼の様子を他所に、そのままおれはモグラーニャ達のもとへと戻っていく。
そしてちょうどモグラーニャ達は仲良くイチャ付いていたが、気にせず彼等の前で[[rb:フェイスネーク > やつ]]を突き飛ばした。
「やっぱり、こいつだった……っ!」
「フェイス……ネーク、さん……?」
突然の事にびっくりした様子のラビッピだが、奴の元へ歩み寄ると心配そうに見つめる。
ここからは当事者同士での話し合いに任せようと、おれはモグラーニャと共に彼女達を見守ることにした。
[newpage]
あれから結構な時間が経った気がする。
暫くやり取りを聞いているうち、奴の返事に対して彼が取り乱したりしたが、その度におれは彼を宥めていた。
「モグラーニャ……お前は確か親父なんだろ?」
「……。」
「なら、そこは抑えろ……。」
まぁ、怒りたい気持ちは分からなくもない。おれだってあの日は彼のように、誰かに当たりたくなったからな。
だがそれをしてどうする、逆に自分がもっと傷付くだけだ。
ん……待てよ、おれはどうして今まで塞ぎ込んでいたんだ?
あんな裏切り者の事なんか、さっさと忘れてしまえば良いのに。
ふとそんな事を思っていると、話が着いたのか彼女が彼のもとへと戻っていった。
そして彼は、奴に「もうこんな事はするなよ」とだけ言い残して彼女と共に森の中へと入っていった。
「……フェイスネーク。」
残されたおれは、とりあえず奴のもとへと歩き話しかける事にする。
しかし酷く落ち込んでいる様で何の返事もなかったが、先程突き飛ばしたのを悪く思い謝る事にした。
「あ……さっきは悪かったな。まさかそんな事があったとは思わなかった。」
「……ッ、良いんです。僕のした事は間違ってましたから……。」
表情は変わらないが、何処か寂しげな雰囲気を感じる。
そうか、お前も話は違うけれどおれと一緒なのか。
「確かに女の子を怖がらせたのはダメだ。だが……男なんだからそういう時もあるさ。」
「……。」
「おれは誰かに好かれた事も、まして誰かを好きになった事もないが、信じていた仲間に裏切られた事ならある。」
「そ、そうなんですか?」
今のこいつになら話しても良いかなと思い、おれは信用していたじんべえとの一件についてを話す事にした。
[newpage]
「なるほど、それは辛いですね。」
「まぁ、今となってはもはや如何でも良い事なんだがな。何分、アイツの事が頭から離れなくてさ。」
「……アジラさんはもう一度、[[rb:じんべえ > あの人]]を信じたいとは思ってます?」
「それは……。」
話し終えると、彼はさっきまでとは違い冷静におれの話に頷いてくれた。
モグラーニャとは違い、進んで誰かと関わりを持とうとはして来なかったおれ。
そもそもこうして、まともに話をしてくれたのもモグラーニャ達が久し振りと言う感じだ。
「……仲直りを期待してるなら、おれは残念だがそのつもりはない。だから……。」
彼にそう言うと、おれは背を向け自分を改めようと両手で自分の両頬を叩く。
そしておれは向き直ると、「お前も吹っ切れろ」と言い何時振りなのか笑んでみせた。
「……!そ、そうですね!有難うございます、アジラさん!」
「ああっ。頑張れよ。」
フェイスネーク、お前の事を好きになってくれる奴は必ず居るさ。
こんなおれと違って、な。
「あ?何人の前で笑ってんだ?」
「っぐ……何時の間に。」
ふと振り向くと、いつの間にかおれ達の背後に居たガジャが話しかけてきた。
というかお前、居たのか!?
「アジラ、久々に笑ったなぁ?」
「そ、そんな事ねぇっ……さっきのは見間違いだ。」
「あれ、ガジャさんも居たんですね。」
「んー?さっきから居たけどなー。」
おれは照れ隠しにと背を向け、平静を装うとする。
それにしても、相変わらず彼と同じでサングラスが似合う奴だよな。
「にしても若けぇ奴らには色々あるよなぁ。まーそれも良い経験だわ。」
「は、はぁ……。」
腕を組んで「うんうん」と勝手に頷くジャガイモ、もといガジャ。
その後おれ達は男3人で、夜まで話し込んでいたのだった。
[newpage]
──あれから数か月後。
おれはすっかり過去の事を忘れ、毎日を楽しく過ごす事が出来るようになった。
まるで塞ぎ込んでいた時間が何だったのかと思う程に、今は充実している。
そんなアイツの事を引き摺るあまり、無駄に過ごしてしまった空白を埋める為に出来る事は何かないか、それを色々考えてみた結果、おれに出来る事が一つだけあった。
季節はすっかり夏だ、たまにはアソン達に会いに行ってやってもいいよな。
「ん?あいつ……。」
おれはふと森の近くに差し掛かると、目の前でモロQのやつがおどけた様子でラビッピに話しかけている所を目にする。
と、顔を真っ赤にして逃げる彼女を他所に何かイヤらしい話をしているのが聞こえた。
「おい。」
気付いていない様子のモロQに話しかけると、振り向いた瞬間おれは彼に拳をぶつけた。
「ん?あ、アジラkぐはっ!……い、いきなり酷いじゃないか~。あぁ薬が。」
「お前、こんな事して良いと思ってるのか?これはおれが預かる。」
「そ、そんなぁ~。」
「……冗談だ、ほらよ。」
「あ、ありがと~アジラくん優しい~。」
「っ……し、尻尾を掴むな!気色悪い。」
「アハハ、それにしても良かったよ~。やっと元気になったんだね~。」
「ったり前だ!いいから離せっ……!」
こうしておれはこの前の経験を活かし、この森の見張り番として生きていくことにしたのだった。