その10にゃん:それはねー、愛だよー

  「さ、たまちゃん。ここが私のおうちだよー」

  「ありがとにゃん、ねこちゃん……」

  変身が解けなくなってしまったたまちゃん。

  両親がいつ帰って来るか分からない事もあり、この姿のまま家に帰る事はできませんでした。

  それでたまちゃんは一旦、ここねちゃんの家へ置いてもらう事になりました。

  「でも、ねこちゃんも猫少女のままで大丈夫にゃのかにゃん?」

  「うん、気にしないでー。私、きっと元に戻ると持たないと思うからー」

  「え、にゃにが?」

  「あ、えっとね、何でもないよー?」

  ここねちゃんはスカートポケットを気にしつつも……何かをグッと抑えてました。

  「抑えなきゃ……抑えなきゃ……」

  「ねこちゃん? 苦しいのかにゃー?」

  「ううん、大丈夫だからー。ね?」

  「そうかにゃ。にゃらばいいんにゃけど」

  「とりあえず私のお部屋へおいでー」

  ここねちゃんは階段を上がり、たまちゃんをお部屋へ招き入れます。

  (たまちゃんが……たまちゃんが私のお部屋に……)

  ここねちゃんはドキドキな気持ちを必死に抑えます。

  「たまちゃん、お腹空いてないー? 何か食べるー?」

  「そういえば少し空いているにゃ……」

  「チョココロネくらいしかないけどー、それでも良ければー」

  「え、いいのかにゃん? ねこちゃん、チョココロネ凄い好きにゃのに。貰っちゃっていいにゃ?」

  「うん、いいよー。だって、その、たまちゃんだから……」

  たまちゃんはここねちゃんの真意が分からないようで、何だか不思議そうな顔をしていました。

  「ちょっと待っててねー、取ってくるからー」

  「ただいまぁ」

  「あ、にこちゃんが帰って来た! たまちゃん、私一旦変身解くねー? 絶対、お部屋から出ないでねー?」

  「分かったにゃん」

  ここねちゃんは小声で変身を解くと、一旦人間態に戻って下へ下りて行きます。

  「にこちゃんお帰りー。クラブどうだったー?」

  「うんー、どうにか持ったよぉ」

  「良かったー、体弱いんだし、あんまり無理しないでねー?」

  「うんー、ありがとぉ」

  「おやつのチョココロネがあるから、手洗いうがいをしたら食べていいよー」

  ここねちゃんはにこちゃんとやり取りを済ませ、チョココロネを取りに台所へ行きます。

  「あ、残り2個しかない……にこちゃんの分は取っておかないとー。でもどうしよう、私とたまちゃんの分ー……」

  ここねちゃんは仕方なく、チョココロネを1つ取ってお部屋に戻ります。

  「はい、たまちゃん。お待たせー」

  「ありがとにゃん。ありゃ、ねこちゃんまた猫少女ににゃってる」

  「うん、可愛い猫少女のたまちゃんの前ではねー、この姿で居ないと不安なんだー。発作が出ちゃうと……ううん、何でもない」

  「発作? にゃにか病気にゃのかにゃ?」

  「にゃんでもないの! 気にしないで!? ね!?」

  珍しく噛む程焦ってしまうここねちゃん。

  ここねちゃんは……何かの発作持ち、なのでしょうか?

  「うーん、分かったにゃん」

  『ガチャン』

  「あ、にこちゃん自分のお部屋へ入ったみたいー。今なら大丈夫だから、廊下の洗面所で手洗いうがいしておいでー」

  「ありがとにゃん」

  たまちゃんは一旦お部屋を出ました。

  「発作の事……絶対たまちゃんには言えないよね。私の発作の事を知ったら、たまちゃんはどう思うだろう……」

  ここねちゃんは「あの日の事」を思い返していました。

  [newpage]

  それはたまちゃんが転入生として、にゃあにゃあ学園へ初めてやって来た日の事でした。

  転入してきたたまちゃんの事を、ここねちゃんはとても気にしていました。

  (いいなー、あの子可愛いなー……いけないいけない、抑えないと)

  ここねちゃんはスカートのポケットを気にする手を抑えようとします。

  (抑えないと……また発作、出ちゃうー。もうあんな事、絶対に起こしたくないもの……)

  ここねちゃんは何かの発作持ちでした。

  彼女はその発作の事で、物凄く悩んでいるようです。

  「ねえ、ちょっといいかな?」

  「え、私ー?」

  「うん、たまたま近くに居たから声掛けちゃったけど……ごめんね? トイレの場所を教えてほしくて」

  「いいよー、じゃあ私と一緒に行こー」

  ここねちゃんは偶然たまちゃんに声を掛けられ、彼女をトイレへ案内する事になりました。

  「私、ここねって言うんだー。宜しくねー」

  「へえ、何だか猫みたいな名前だね」

  「え、そうかなー?」

  「ここねちゃんはねこちゃん! なんちゃって」

  「えー、何でー? 私、ここねなんだけどー。たまちゃんこそ猫っぽい名前してるのにー」

  ここねちゃんはこの時以来、みおちゃん以外からねこちゃんと呼ばれるようになります。

  お姉ちゃんのにこちゃんでさえも、周りに影響されてねこちゃんと呼んでくるようになりました。

  トイレに向かいながらたまちゃんと他愛の無い話をしつつ、ここねちゃんは幸せな時間を過ごしました。

  「ここがトイレだよー。私は大丈夫だから行っておいでー」

  「うん、ありがとう……」

  何故かたまちゃんは少し入りづらそうにしながら、ぎこちなく女子トイレへ入ります。

  「深呼吸して落ち着かないとー……発作が起きたら大変だよー」

  ここねちゃんは女子トイレの前で一息つきました。

  持病、なのでしょうか……どうやら発作の事を気にしています。

  「絶対に人を好きになっちゃダメ、そう決心したのにー……何であの子、あんなに母性本能をくすぐるのー?」

  ここねちゃんはスカートのポケットに手を入れ、何かを取り出そうとしましたが……。

  「……落ち着いて、私。大丈夫……大丈夫」

  必死に何かを抑えようとします。

  「お待たせ、ありがとうね。教室へ戻ろうか」

  「う、うんー。行こうー」

  ここねちゃんはたまちゃんと教室へ戻り、どうやら発作も抑える事ができたようです。

  [newpage]

  「たまちゃんはお兄ちゃん、か……」

  ここねちゃんは先程の学園での出来事で、たまちゃんはみおちゃんのお兄ちゃん、と言う事を確信しました。

  「何でたまちゃんはあの時、女子トイレへ入りづらそうだったのか……うん、分かったかも」

  たまちゃんがお兄ちゃんなのだとすれば、つまり女子トイレへ入りづらいのも当然なのでしょう。

  「たまちゃん、元は男の人だったのかなー……私だって魔法猫少女になれちゃうくらい、色々と不思議な事があるものね」

  そうなのです、この世界は本当に不思議な事で満ち溢れています。

  だからこそ、目に見えるものだけが必ずしも真実、とは限らないのかもしれません……。

  「たまちゃんに対する気持ち……私、男性のたまちゃんを知らないもの。だからこの気持ちは、純粋に今のたまちゃんに対して、だよねー……」

  「ねこちゃん、戻ったにゃん」

  「あ、お帰りー……えっと、たまちゃん、私が何か言ってるの聞いた?」

  「にゃんの事かにゃん?」

  「あ、何でもないの……はい、チョココロネどうぞー」

  ここねちゃんはチョココロネをたまちゃんに差し出します。

  「おいしそうにゃ! 頂くにゃん!」

  たまちゃんは嬉しそうにチョココロネに噛り付き、パクリと頬張ります。

  「うまうま……おいしいにゃん」

  「じーっ……」

  「視線!? 何処からだにゃ!? って……ねこちゃんしか居なかったにゃん。チョココロネ、欲しいにゃ?」

  「だ、大丈夫だよー。チョココロネ1個だけだったから私の分無いけどー、おいしそうとか食べたいとか命そのものとか、そんな事は決してねー」

  「すっごく欲しいんにゃね……はい、残り半分上げるにゃ」

  たまちゃんは残ったチョココロネをここねちゃんに上げました。

  「え、いいのー? ありがとー。ぱくっ……うまうまー。幸せー……あっ」

  と、チョココロネを食べながら……ここねちゃんはとんでもない事に気付いてしまいました。

  (これ、間接キスだよねー!?)

  「ねこちゃん、どうしたにゃん? 赤くにゃって」

  「にゃんでもないのー……」

  「おかしにゃねこちゃんだにゃん」

  (しちゃった、たまちゃんと間接キス、しちゃったー……しかも、猫少女状態のたまちゃんとー……)

  ここねちゃんは発作を抑える為にも、変身しておいて良かったと少しホッとしました。

  [newpage]

  夜、次の日も学園があるのでここねちゃん達は寝る時間です。

  ここねちゃんの家のベッドは2人用なので、たまちゃんと一緒に寝る事になりました。

  「にゃんか、やたらと広いんにゃね。ねこちゃんのベッド」

  「元々ね、私とママで一緒に使ってたベッドなんだよー。だから広いんだー……」

  「そういえばねこちゃん、お母さんは帰って来てる気配にゃいけど、どうしたにゃん?」

  「ママはねー……えっとね、遠くへ行ってるんだー。だから暫くうちには帰らないんだよー」

  「そうにゃったんだ。じゃあベッド、使っちゃって大丈夫にゃのかにゃ」

  ここねちゃんが言うには、ママは遠くへ行ってしまっているとの事です。

  何だかここねちゃんは、凄く寂しそうな表情をしていて……。

  「ねこちゃん?」

  「あ、何でもないんだよー。さ、電気消して寝るよー」

  「うん、でもにゃんでねこちゃん、寝る時までも猫少女の姿にゃんだにゃん?」

  「そ、それはねー、たまちゃんに合わせてるだけだよー?」

  「家族やにこちゃんに見つかったらどうするにゃん?」

  「大丈夫だよー、お部屋に鍵を掛けているからねー。おトイレ行く時は元の姿に戻るからー」

  「うーん、最初から人間状態で居ればいいと思うんにゃけど……」

  たまちゃんは疑問を抱きつつも、あまり深く考えないまま寝てしまいました。

  ここねちゃんと同じベッドで、寝息を立てて可愛く眠るたまちゃん。

  そんな状況にここねちゃんは、心臓をバクバクとさせてしまい……。

  (抑えなきゃ……抑えなきゃ……大丈夫、だよね。今は猫少女だもん……発作、出ない筈だよね……)

  ここねちゃんはベッドの中で、また「あの日の事」を思い返していました。

  たまちゃんが転入してきて、その後少ししてからみやちゃんも転入してきて。

  それから間もない日の事……ここねちゃんは、ついに発作を起こしてしまったのです。

  まだクラス内で解決していない、みやちゃんがここねちゃんにいじめられたと言った件。

  あの時、一体何が起きていたのでしょうか……?

  「……たまちゃんねー、何処となく母性本能をくすぐる感じで……自然といいなー、って思っちゃうんだ」

  「そっかそっか☆ 良く素直に言えたね! じゃあたまちゃんの事、好きなんだね☆」

  「うんー……」

  「じゃあみや、やっぱりねこちゃんの事、嫌いかな!」

  「え、みやちゃん? 一体何をー……」

  みやちゃんは猫少女に変身して、ねこちゃんに襲撃を仕掛けようとします。

  (え、みやちゃんが猫少女に!? 嘘、やられる……!?)

  ここねちゃんはバリアに特化した猫少女なので、変身さえすればみやちゃんの攻撃も防げます。

  しかし人間状態では防げませんし、変身も間に合いません。

  仮に変身したとしても、猫少女として戦う術を1つも持ち合わせていません。

  やられるかもしれないと思ったここねちゃん。

  彼女の頭の中には、まるで走馬灯のようにグルグルとたまちゃんの事ばかりが浮かびます。

  『ドクン!』

  「あ……まずい、発作が……魔法猫少女、始動」

  ここねちゃんは静かに呪文を唱え、魔法猫少女に変身しました。

  そしてスカートポケットに常備しているカッターナイフを取り出し……。

  「わっ! ちょっとねこちゃん! 危ないなー!」

  「大丈夫、私はみやちゃんを愛してない。だからみやちゃんは壊さないよ」

  (ここねちゃん……しっかりして! ここねちゃん……ここねちゃん……!)

  誰かがここねちゃんに呼び掛け、彼女を止めようとします。

  しかしその誰かの声も届かない程、ここねちゃんは豹変してしまい……。

  ここねちゃんはカッターナイフを振り回し、みやちゃんを威嚇するかのように追い詰めます。

  「もう危ないなー! みや、本気出しちゃってもいいの!?」

  「うるさい。黙れ。私の愛するたまちゃんを傷つけるな、手出しするな、たまちゃんは私のものだ」

  (ここねちゃん! 落ち着いて! アグレッシブ化……人間状態で発動しちゃうと、猫少女に変身した後も治まらないの!?)

  ここねちゃんに聞こえるらしい誰かの声……。

  今のここねちゃんの状態を「アグレッシブ化」と言っています。

  名前の通り物凄く攻撃的な状態で、普段のここねちゃんからは想像もできない程の変わり様です。

  カッターナイフを突きつけられたみやちゃん。

  そのままここねちゃんに押され女子トイレへ押し込まれ、しまいには個室の奥まで追いやられます。

  「一体どうしちゃったのねこちゃん! 凄い顔してるよ!?」

  (ここねちゃん! ここねちゃんってば! あたしの力でも抑えられない……)

  みやちゃんは押され気味で、攻撃態勢を崩してしまいます。

  みやちゃんが戦意喪失してしまう程、ここねちゃんはよっぽど凄い形相をしているようです。

  「たまちゃんには近付くなー! たまちゃんは私のものなんだからー!」

  ここねちゃんはみやちゃんのほっぺすれすれに、勢い良くカッターナイフを伸ばしました。

  するとみやちゃんのほっぺに擦れ、鋭い切り込みから僅かに血が滲み出ます。

  「ちょっとねこちゃん!? バリアしかできない筈でしょ!? みや、こんなねこちゃん知らないよー!?」

  「黙れと言った筈だ。黙らないとみやちゃん、愛してないけど破壊するよ?」

  (ここねちゃん、お願い! 抑えて……! みやちゃんを傷付けないで……!)

  ここねちゃんが抱えている発作とは……人を愛し過ぎるが故に起こしてしまう発作、破壊衝動。

  この発作が出てしまうと、好きな人を傷付けずにはいられなくなってしまう。

  ここねちゃんは普段から気を付けていて、発作を起こさないように抑えていました。

  しかしある日、ここねちゃんは魔法猫少女になりました。

  ここねちゃんはその日を境に発作が起こらなくなった、と錯覚していました。

  ここねちゃんは愛の使者の魔法猫少女で、更に守りに特化しています。

  きっと猫少女の力で心にバリアを張り巡らし、発作から自分を守る事ができたのだろうと。

  猫少女に変身できる程の強い愛を以って、ここねちゃんはバリアに特化した猫少女となりました。

  破壊衝動を起こす程の愛を、大好きな人を守りたい愛のエネルギーに変換したのです。

  だけど女の子の心は脆く、何かしらの弾みでバリアが壊れてしまうと……。

  「みやちゃんなんて破壊したくない。私はたまちゃんを愛してるんだ! 私が破壊したいのはたまちゃんなんだ! 殺したいくらいにね!?」

  発作からここねちゃんを守っていたバリアが壊された結果、彼女はアグレッシブ化してしまいました。

  自分を襲撃してでもたまちゃんを奪おうとした、そんなみやちゃんの行動がここねちゃんのバリアを壊したのでしょう。

  (あたしでも心のコントロールが効かないだなんて……! どうすれば、どうすれば……!)

  ここねちゃんの言動を受けて、みやちゃんはねこちゃんに掴み掛かります。

  「何するの、離してくれない? 私とたまちゃんの事を邪魔するなら、みやちゃんの事も破壊しちゃうよ?」

  「ダメ、たまちゃんは殺しちゃダメなの!」

  「何言ってるの、たまちゃんを倒そうとしてるくせに」

  「倒すのと殺すのは違うの! みやはただ、たまちゃんの事が好きで遊んでるだけだもん!」

  「みやちゃんに倒されるくらいなら、私がこの手でたまちゃんを一思いに刺して……息の根を止めて殺しちゃうんだから!」

  アグレッシブ化してしまったここねちゃんは、もはや手が付けられません。

  正気を失って暴走するここねちゃんを、みやちゃんは必死に止めようとします。

  彼女を掴んだままのみやちゃんは、そのまま廊下まで引きずられてしまい……。

  (このままじゃ……みやちゃんもたまちゃんも危ない! 仕方ない……みやちゃん! ここねちゃんを止めて! お願い……!)

  ここねちゃんにしか聞こえない誰かの声。

  みやちゃんは何かを感じ取ったのか……止むを得ず、ここねちゃんを止める為に強硬手段へ出ました。

  「たまちゃんは殺しちゃダメなのー!」

  みやちゃんはとてつもないエネルギーの魔法を放ち、ここねちゃんを巻き込んで衝撃破を起こします。

  バリアを張っていないここねちゃんは勢い良く吹っ飛び、致命傷を負ってそのまま気絶してしまいました。

  (痛い……みやちゃん、ここねちゃんを止めてくれてありがとう……えへへ)

  「たまちゃんは絶対に殺しちゃダメなんだから……! 絶対、絶対だもん!」

  気絶してしまい、恐らくもう聞こえてないであろうここねちゃん。

  みやちゃんは一応ここねちゃんに対し、言う事だけを言ってから去りました。

  みやちゃんは最初、確かにここねちゃんを襲撃しようとしました。

  しかし実際には予定外の返り討ちに遭ってしまい、ここねちゃんにやられそうになったのです。

  たまちゃんを殺したいとの言動を受け、みやちゃんは止むを得ずここねちゃんの暴走を止めました。

  それから暫くして、ここねちゃんはたまちゃん達に発見されました。

  [newpage]

  (偽っているのは私……結局、私はみやちゃんに罪を被せただけだった)

  ここねちゃんにいじめられた、と主張したみやちゃん。

  彼女は何1つ嘘を言っていなかったのです。

  猫少女に変身していれば、殺したい程の愛の衝動も守りたい想いに変換される、と気付きました。

  愛するたまちゃんが隣で寝ている状況ともなると、ここねちゃんはいつ発作を起こしてもおかしくないのです。

  愛する人を傷付けないようにする為……ここねちゃんは、猫少女に変身しているのです。

  (私が正体を隠したかった本当の理由、言える訳ないよ……発作の事、バレちゃうかもしれないもの)

  たまちゃんを守る為に猫少女になれたのだとしたら。

  それはすなわち、愛する人を守る為に「発作を抑える」事にも起因します。

  ここねちゃんは発作の事がバレないように、常に危惧していました。

  それ以外にもここねちゃんにはもう1つ、気掛かりな事があります。

  (あなたは誰なの? 時々私に話し掛けてくる誰かさん……もしかして、もう1人の……私なの?)

  ここねちゃんはアグレッシブ化を自覚している事から、自分は二重人格なのではないだろうかと悩んでいました。

  今日、たまちゃんを殺そうとしている者が居たかもしれない、しかしみやちゃんではなかった。

  みおちゃんは猫少女のにこちゃんが怪しい、と言っています。

  しかし、みおちゃんはここねちゃんの発作の事を知らないのです。

  (もしかしたら……無意識のうちに発作を起こして、もう1人の私がたまちゃんを殺そうとした……?)

  愛する者を殺したくなってしまう程、危険過ぎるここねちゃんの発作。

  万が一それが猫少女の魔法と合わさってしまえば、間接的にたまちゃんを殺す事だってできるかもしれない。

  たまちゃんに屋上から飛び降りるように、仕向ける事もできるかもしれない……と。

  (私、殺人未遂者なのかもしれない……怖い、自分が怖い……違う、私じゃない、私じゃない……きっとにこちゃん、にこちゃんだよ……)

  ここねちゃんは証拠も無くにこちゃんに罪を被せる事で、自分の仕業ではないんだと必死に自己暗示しました。