やんちゃデブ狼の先輩が舎弟たちの前で羞恥雄出産(お題箱より)

  数年前に廃業したボウリング場から若い男たちの声が聞こえてくる。

  深夜の廃屋に近寄るものなど誰もいない。

  ましてやそれが、地元の不良たちのたまり場になっていればなおさらだ。

  「ま~じでもったいねえことした~! せっかくヤれると思ったのによ~!」

  「ほんとバカだよな。あんなエロい体した女そうそういねえのに」

  「そうかあ? おれはもうちょっと肉ついてるほうが好きだけどな」

  下品な会話が薄暗いボウリング場に響く。

  「だいたい女一人ぐらい逃したからってなんだよ。カズヤさん見習えよ。ねえカズヤさん!」

  ゲラゲラと笑う中、話題の矛先がひときわ大きな体をした狼獣人に向けられた。

  まるまると肥え太った狼獣人のカズヤ。

  彼はこの不良グループをまとめている男だ。

  「ったく。一人ヤれなかったぐらいでピーピーうるせえ奴だな。女なんてその辺にいくらでも転がってるだろうが」

  「ですよねえ!」

  「さっすがカズヤさん、余裕がちげえや!」

  皆カズヤに羨望の眼差しを向けている。

  腕っぷしは地元随一。

  舎弟思いの情に厚い男。

  そんな彼の人物像から、抱いた女の数は数えきれないほどいるはずと思われている。

  しかし誰とも番うことはない。

  まさに一匹狼。

  だからこそ彼についてくる者は皆憧れを抱いている。

  「今度カズヤさんに女紹介してもらえよ。カズヤさんだったらお抱えの子たくさんいるんじゃないんすか?」

  「そんなのいねえよ。ヤるにしてもその場限りだ。後腐れねえし女々しくつきまとわれても迷惑だからな」

  そう、カズヤにはセフレなどいない。

  そして経験が豊富なのも舎弟たちの抱くイメージ通り。

  「わりいなお前ら、俺そろそろ帰るわ」

  唯一違うところがあるとすれば……。

  「あっ、ああん!! 気持ちいいっ! もっと!! もっとくださいいいぃぃぃぃ!」

  女になるのはカズヤのほうなのだが。

  「おっかねえ顔してるのに女々しい奴だな! おらっ!」

  「あっ、だめっ、そこ凄いっ、もっと突いてっ!」

  巨体に腰が強く打ち付けられる。

  発展場となっている霊園のトイレで男二人が盛っていた。

  舎弟たち、いや、誰にも言えない秘密がある。

  カズヤは男色家で、生粋のウケとして地元のあらゆる発展場で犯されまくっているのだ。

  「イっ、イっちゃう! イっちゃうからあ!!」

  「あー俺もそろそろイきそうだ」

  「すっ、すごいよおっ!

  赤ちゃんできちゃうぅ!

  中に、俺の中に[[rb:射精 > だ]]してえ!!!」

  「淫乱なメス豚だな! おらっ孕め!」

  地元の有名な不良は、別の世界では有名な肉便器なのである。

  今日もボウリング場にはカズヤたちがたむろしていた。

  あの学校のあいつが喧嘩が強いだの、最近あの街のあいつが調子乗ってるだの、そんな変わり映えのない話題で駄弁る。

  いつもと変わらない、繰り返しの日々。

  だが違うところがあるとすれば……。

  (カズヤさん……最近めっちゃ太ってねえ……?)

  舎弟の一人が流し目でカズヤを見やる。

  もともと大きな筋肉に脂肪が乗っている、非常に逞しく肉肉しい体つきをしていた。

  カズヤの人望も相まって、舎弟たちは「心も体もデカい兄貴分」として尊敬している。だがここ数ヶ月はその体の大きさに拍車がかかっている。

  特に腹は半年ほど前と比べて段違いの大きさに育っていた。

  (まあどんな体してようが関係ねえや。カズヤさんはカズヤさん、かっけえ男には違いねえんだ)

  見た目など些末なこと。大切なのは男らしい心を持っているか。舎弟は特段気には留めなかった。

  しかし、当の本人はその体の変化がずっと不安だった。

  (今日は一段と腹が張るな……)

  パンパンに丸くなった腹を手でさする。数か月前はうっすらとした気分の悪さや嗅覚の異常を感じていた。幸い症状は軽度でしばらくすればおさまったので、医者にかかったりはしなかった。

  (何か変な病気なのか?)

  地元でその名を轟かせる喧嘩自慢といえど、病には勝てない。一抹の不安を抱えていると、舎弟から「カズヤさん!」と声をかけられた。

  「どうしたんすか? 調子悪そうっすけど」

  「ぼーっとして、なんからしくないっすよ!」

  「ああ、悪いな。ちょっと腹の調子が悪くてな」

  張ると言ったが、痛みと言っても差し支えなかった。大きな腹全体を絞るようなじんわりとした鈍痛が定期的に襲ってきていた。

  後にカズヤは思う。

  痛みではなく張りだと思っていたのは自分に言い聞かせるためだったのだろうと。

  本能的に、今自分の体で起こっていることを避けるように。

  突然、痛みはギュギュウッと激しくなった。

  「っつ……! ぐあっ……!」

  カズヤが突然腹を押さえてうずくまる。突然の異変に、舎弟たちは血相を変えて駆け寄った。

  「カズヤさん!?」

  「だ、大丈夫っすか!?」

  心配になって声をかけるが返事はない。あまりの痛みに答える余裕すらなかった。

  「うっ、ぐううぅぅぅぅ……痛っ……」

  突然の異常事態。カズヤも舎弟たちも困惑していると。

  ばしゃあっ。

  カズヤの大きな尻から大量の体液が噴出された。

  「えっ、ウンコ?」

  「いや、ションベンじゃね」

  「でもケツから出てなかったか?」

  出てきたものも、出てきた場所も、いったい何が何なのか訳が分からなかった。ますます混乱する舎弟たち。

  そんな彼らを置いてきぼりにするように、腹痛は激しさを増した。

  「ぐあああああぁぁぁぁ!! 痛いっ、痛いいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

  一目があるなどお構いなしだ。野獣のような悲鳴に、舎弟たちも平常心を失う。

  「と、とりあえず脱がしますよ!」

  尻から噴き出た大量の体液はきっとカズヤの異変に関係があるはず。舎弟の一人がカズヤのズボンとパンツをおろすと……。

  「えっ……なにこれ……」

  カズヤの尻穴の向こう側に、大きな何かが覗いていた。

  「ふぐううううぅぅぅぅぅぅ!! っふぐううううううあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

  カズヤ自身も何が起こっているのかわかっていない。

  わかっていないが、野性的な本能がこう語る。

  体の中にいる大きな「何か」をひねり出さねばと。

  激しい痛みにも波があるようで、すうっと引いて行った。秘穴の圧迫感だけが残って余裕がある状態になると、押しのけられていた理性が戻って来る。

  そして今の状況を再認識した。

  仰向けになって寝転がり。

  下半身をさらけ出し。

  大股を開いて、あられもない姿を舎弟たちに見られている。

  兄貴分として頼ってくれる、可愛い舎弟たちに。

  「やっ、やめろ……見るんじゃねえ……」

  羞恥心がぐわっと湧き上がってくる。

  いつも男らしく、どっしりと。

  そんな背中をいつも見せているのに、今となってはどうだ。

  「は、恥ずかしい………………っ痛……!!」

  そしてまた、痛みがやって来る。

  ありえない、こんなことはありえない。

  だが本能が確信している。

  今、俺は赤ちゃんを産もうとしている。

  「見ないでえぇ……! 恥ずかしいっ……ぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

  手で尻穴を隠そうとするが、それに相反して全力でいきんでしまう。見られたくないという理性といきみたいという野性でぐちゃぐちゃになる。

  「男なのにっ!! 赤ちゃんできてるなんてっ!! 男なのに……産まれるうううぅぅぅぅ!!!」

  絶叫と共に、児頭がぼんっと飛び出した。

  「っんああぁっ!! っはあ……はあ……!!」

  カズヤと同じ、狼の赤子の頭が姿を現す。痛みで気でも狂ったのかと思った舎弟たちだったが、これを見てしまえば受け入れざるを得なかった。

  彼らの敬愛する兄貴分は命をこの身に宿し、産み出そうとしている。

  「頭っ、頭でたっ、出ちまったぁ……!」

  息も絶え絶えになる。尋常ならざる痛みによる苦しさと舎弟たちに見られている羞恥心がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。

  「見ないでくれえ……。こんな姿、見られたくねえよぉ……」

  右手で尻穴を隠そうとするが、無駄だった。そこからは大きな児頭が飛び出してきており、とても片手で覆い隠せるようなものではなかった。

  その右手で頭に触れる。

  ぬるりとしており、ほんのりと温かい。

  命を感じる。

  「なんでっ……!」

  否定しようのない現実が目の前にある。

  「なんで俺ッ……!」

  先ほど飛び出してきた体液は羊水。

  羊水が排出されたのは破水したから。

  そしてこの激しい痛みは陣痛。

  つまりカズヤは……。

  「男なのに妊娠してんだよおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

  ずりゅっと、肩が出て来る。

  「んはあっ……! はあっ……!」

  あとひといき。

  「ふぐうううううぅぅぅぅああああああああ産まれるううううううぅぅぅぅぅ!!!

  見ないでえええええぇぇぇぇぇ!!!

  赤ちゃん産まれるからああああああああああああっ!!!」

  渾身のいきみとともに、ずりゅんと産み落とされた。

  胎児で栓をされていたのか、ばしゃあっと大量の羊水が飛び出す。それと共に陣痛は引き、激しい苦しみから解放された。

  はあ、はあとカズヤの荒い呼吸だけが響く。激しい痛みから解放されてほっとすると、押しのけられていた理性が羞恥心を連れてやってきた。

  「お、お前ら……ち、違うんだ……これは……」

  今更何を言っても現実は変わらない。

  「俺は妊娠なんてしてない……」

  カズヤは妊娠していて。

  「違うんだ……」

  それに気づかず臨月の妊夫となり。

  慕ってくれている舎弟たちの前で破水し、出産した。

  痛みに悶え苦しむ、情けない姿を晒して。

  「情けなくなんかないっす」

  舎弟の一人が、赤子を抱きかかえる。

  「父親として頑張る姿、マジでカッコよかったっす。あんなに痛そうなのに、こうして元気な赤ちゃん産むなんて、まじでハンパねえっす」

  「そもそも男なのに孕むなんて普通の野郎にはできねえっすよ。やっぱりカズヤさんはちげえや」

  抱きかかえた赤子をカズヤに渡す。元気な産声をあげる、大きな赤子を。

  「だから違うなんて言わないでくださいよ。こんなに可愛い赤ちゃんなのに。この子はカズヤさんの子どもなんですから」

  「俺の子ども……」

  大きな胸に乗せて、そっと抱く。羊水で濡れた目元を拭い、そっと優しく頭を撫でた。

  「……かわいいな」

  その姿はまさに立派な母親、否、父親だった。

  「お前ら、ありがとうな」

  「いえいえ! 俺らこそ、かっけーところ見せてくれたんで!」

  「でもまさかカズヤさんが妊娠できるなんてな~!」

  「ほんと、びっくりしたっすよ」

  開放感からか、明るい雰囲気に包まれた。

  非常事態から祝福へ。

  新たな命の誕生を祝う。

  「で、カズヤさんにちょっとお願いがあるんすけど……」

  「おう、なんだ」

  舎弟の一人が恐る恐る尋ねる。

  「もしよかったら……俺との子ども、作りませんか……?」

  あまりにも予想外の提案に、カズヤは「はあ!?」と目を丸くした。

  「あっ、ずりーぞてめえ!! 俺もカズヤさんと子作りしようと思ってたのに!」

  「はあ!? お前もかよ!? 俺だってカズヤさんとの子ども欲しいっつーの!」

  「俺が一番カズヤさんの出産手助けしてたんだぞ!! カズヤさん孕ませるのは俺が先!」

  やんややんやと言い合いを始める舎弟たち。

  そっちのけにされたカズヤは大きなため息を一つ吐いて。

  「わかったわかった。お前ら全員の赤ちゃん産んでやるから安心しろ」

  彼らの憧れの男はやはり度量のある父親だった。