マッチングアプリの怪盗、虎獣人大我の場合。監禁付き。

  [b:「シチュエーションプレイ?なんだそりゃ。」]

  7月。

  虎獣人、大我はマッチングアプリで知り合った男と焼肉屋で話していた。

  「ほら、よく怪盗モノであるでしょ、警備員が眠らされて服を剥ぎ取られて成り代わるやつ。あれをやってみたいんです」

  「もしかしてお前のアカウント名が『ルパン』なのはそのせいか?」

  40歳独身男、身長180センチ、大我。好みは年下の男。

  仕事熱心で周囲からの評判もいいが、なんせ強面なのが災いした。

  年下の部下も自分の顔色を見て相談してくる始末、

  大体そんな俺を慕ってくれる男なんていないだろう。

  そう考えていたら40歳になっていた。

  もうこの年齢ではまずいと思い、マッチングアプリで相手を探した。

  しかし強面のせいでなかなか成立しない。

  3日前、このルパンとかいう男が会いたいと言ってきたのだ。

  お茶に誘い1週間したところで妙な提案をしてきたのだ。

  「要するにごっこ遊びか?」

  「まぁそれに似てますね、それに非日常的な体験はマンネリに効果的ですよ。」とルパンは言う。

  なんともまあ胡散臭い話だ、ただ非日常的という言葉には惹かれる。

  こいつは一興乗ってみるかと「いいぜ」とだけ答えた。

  次の日。

  午後4時ラブホテルの1室に2人はいた。

  「で、俺が警備員役か?」

  「はい、大我さん。まずはシャワーを浴びてきて下さい。」とルパンは言う。

  シャワーを浴び、部屋に戻ると準備ができていた、ロープだ。赤い木綿ロープ。

  「大我さんって白ブリーフ履いてるんですね」

  「うるせえ、動きやすいんだよ」

  「ブリーフ姿の方が盛り上がるかも、パンツ履いて下さい。」

  言われた通りブリーフを履き、貴重品は金庫の中に入れた。

  ルパンは手慣れた手つきで大我を縛りあげていく、後ろ手に縛り大胸筋を強調するように縄を通す。

  「お、おお。なんでお前こんなに手慣れてるんだ?」

  「ルパンですから」

  「答えになってねえぞ」

  あっという間に身動きが取れなくなった、逆エビ縛りと言う体勢になる。

  確かにフィクションでこういうシチュエーションがあるが、実際体験すると恐怖心と胸が高鳴る。

  物語の警備員はこんな思いをしていたのかと。

  「窃盗を疑われたら嫌なので金庫の鍵は首につけときますね。」

  大我の首に首輪が巻かれ、そこに金庫の鍵を装着された。

  緊縛強盗ではないことをアピールしている。

  「それじゃあ目をつぶってて下さい。」と

  ルパンは大我に手拭いで目隠しをする。時計の針は16時20分を刺していた。

  視界が奪われる。何かゴソゴソする音が聞こえる。

  目隠しが解かれると大我は唖然とした。

  自分がいた。大我がいた。身長、見た目、毛並み、声、股間の大きさ、足の大きさ、全く持って自分がいた。

  「・・・・・は?」

  「どう?俺の姿は」大我の声でルパンは喋る。

  「どうって、どうやったんだ!??」

  ドッペルゲンガーが目の前にいるとしか思えない、生き別れの双子と言われても忖度ない。

  「ルパン、お前何者だよ。」

  「ルパンですよ、言葉通り」

  時計の針は16時40分を刺していた、嘘だろ?たった20分で俺そっくりに変装したのか?

  こいつ本当に変装の達人、ルパンか?

  「それじゃあ服を借りますね、外出してきます。」

  「お、おい!!俺の姿でどこ行く気だ!!!」

  「お互い同意の上のプレイだから文句言わないで下さいね、3時間後には戻ってきますよ」

  ルパンは大我の口にボールギャグを嵌めた。

  「ンンンンン!」と叫ぶ。

  大我は身動き取れなくなりベッドの上で叫んだが、言葉にならない。

  「あ、そうだ。1人だと寂しいでしょうからこれを置いときますね」と

  小瓶を取り出し蓋を開けた。

  なんだそれは。とくぐもった声で大我は言いたかった。

  「薔薇の香りの媚薬ですよ、気化して吸入した人に効能を発揮します。」

  媚薬!?

  「じゃお楽しみに〜」と言ってルパンは部屋を去り鍵をかけた。

  ふざけるなあいつ、俺の姿で何する気だ!!

  必死にベッドの上でもがくも、下手したら落ちて怪我をしかねない。

  行動は完全に制御されていた。

  追い討ちをかけるように媚薬が室内に充満する。

  甘くとろける香りは大我の脳を刺激した、ブリーフの下で男根が膨らむ。

  こ、こんなことで!!と争うも媚薬は容赦なく大我の性欲をくすぐる。

  「ん、むふうううううう!!」

  もはや快楽に身を委ねるしかなかった。

  下着の内側は先走りでぐちょぐちょに濡れていた。

  あと3時間も耐えなければいけないのか?

  早くこの時間が過ぎてくれ、と大我は涙目になっていた。

  3時間後夜7時、約束通りルパンは部屋に戻ってきた。

  「予想以上にお楽しみだったみたいですね、今部屋を換気しますね」と窓を開け換気扇をつけた。

  室内に充満した媚薬の香りが抜けていく。

  大我は何回か絶頂したみたいだった。ブリーフが雄の臭いを放つ。

  大我にまた目隠しがされ、20分。目隠しをとるとルパンの姿に戻っていた。

  ボールギャグが外され唸り声で「おまっ、ルパっゆるさねぇ」と微睡んだ大我が今にも噛みつきそうな

  勢いで唸る。

  ルパンは大我にスマホの画面を見せた。

  「・・・・・は??」

  そこには若いオスの虎獣人のマッチング画面があった。

  いかにも求めていた若い男の子だ。

  「3時間前にマッチングした子ですよ。大我さんの姿でお喋りしてました。名前はガクと言います。23歳。近くの喫茶店で待たせているので言ってあげて下さい。」

  嘘だろ?たった3時間で俺好みの男を口説いていたのか?俺の姿で?

  ルパンがロープを解きながら大我は尋ねる。「お前本当に何者だよ?」と。

  「マッチングアプリ内でマッチングさせるのが好きなだけですよ、お似合いの2人を結ばせるのが趣味なだけでの変わり者です」

  下着は新しいの買っておいたのですぐに着替えて行ってあげて下さい。待ってますよ、ガクくん。

  「ホテルの代金はもう支払ってありますから安心して下さい。」

  大我は急いでシャワーを浴び、金庫の中の貴重品を取り出し服を着て半信半疑で部屋を出る。

  その前にルパンに聞く、「お前はこんなことに情熱を捧げているのか?」と。

  「他人の幸せを願うのことの何が悪いんですか?」

  それが大我が聞いたルパンの最後の言葉だった。

  指定の喫茶店に行くと本当に彼がいた、ガクという名の虎獣人青年だ。身長150センチぐらいと小柄だ。

  「あ、やっと戻ってきた。大我さんどこに行ってたんですか?僕を置き去りにして?」

  「い、いや仕事の野暮用でな」と最もらしいセリフを言う。

  「大我さん、何かいい香りしません?」

  「いや!なんでもない。身の丈に合わない香水をつけてみただけだ。」

  「香水!大人の男って感じですね!」とガクは無邪気に笑った。

  言えない、服の下は緊縛痕が残ってるなんて。

  なんでもガクという青年は幼い頃に父親を亡くし、父性というものに憧れを抱いているそうだ。

  40歳という大我はまさに理想の父親像だったそうだ。

  「あ。ああそうだったよな」とお茶を濁す。

  「さっきそう説明したじゃないですか、忘れっぽいんですね大我さん」

  ガクは屈託なく笑う、言えない。お前にあっていた俺は「俺」じゃない。ルパンだ。

  てかあいつ3時間でガクを見つけ、声をかけ口説いていたのか?

  早業にも程がある。あいつマッチングアプリ製作陣の人間じゃないのか?

  喫茶店で軽食をとり連絡先を交換した。

  「次はいつ会えますか?」とガクはいう。

  「・・・・・・水族館にでも行くか?」

  「水族館!!!行きたい!行きたいっす!!」と輝いた目で大我を見つめた。

  「じゃあ次の日曜日な」

  「はい!楽しみにしてます!」といいその日は解散した。

  家に帰り大我は玄関で膝を落とす。

  今日会ったことが白昼夢のようだった、強面の自分に全く警戒心を向けない子に出会ったのは初めてだ。

  ルパンという男は何者なんだ?とマッチングアプリを開くもいつの間にかルパンは退会していた。

  あいつ、逃げる速さも怪盗並みかよ。

  大きく深呼吸をしながら、次の日曜日どんな服を着ていくか考えていた。

  ガクという青年は裏表ない少年のような性格だ。

  その夏、大我とガクはいろんな場所にデートに行った。水族館、ショッピング、夏祭り。

  どれも大我にとって新鮮だった。無邪気に自分に全信頼を委ねてくる子なんて今までいなかった。

  ガクもまるで父親に縋る子供のように無邪気だった。いつも笑って次はいつ会えますか?と尋ねてくる。

  「僕、大我さんに父親の姿を重ねているってわかってます、もし俺に父親がいたらこんなふうに遊べたのかなって。」自分のコンプレックスを打ち明けるガク。

  「けど今ならはっきり言えます。大我さん。俺と一緒に暮らしてくれませんか?」

  夏祭りの花火大会。浴衣姿のガクは大我に告白した。

  最初にガクを口説いたのは俺じゃないと内心複雑だった、けど結果オーライだ。

  「俺でよければ」と返した。

  ガクは涙を流し大我の腹に抱きついた。パズルのピースがはまり合うように、お互い人生でぼっかりあいたものを埋め合う存在になれたのだ。

  遠くの屋台で焼きイカを頬張りながらルパンは2人を見つめていた、また新しくマッチングできたなと。

  それこそが自分の役割だ、ちゃんとハートを盗んでいる。

  さあ次は誰を非日常的に結ばせようかと考え、ルパンは夏祭りの雑踏に消えていった。

  おしまい。