起きてもまだ小さい。小さくなってから4日くらい経った、けどまだ小さい。いい加減この体にも慣れてきた。
パウル「アルゴ殿、いつ治るんでしょうか...」
あるご「いい加減慣れてきたよ...」
自分の体のサイズに見合わないベッドを眺めながらパウルと会話をする。
とりあえず朝食を食べに行くかな...
あるご「へぶっ」
ベッドの布に足を引っかけて盛大に転んだ。さっき慣れたって豪語したのに...恥ずかしいったらありゃしない。
いたい......すげぇ痛い...
パウル「アルゴ殿!鼻血出てます!!!」
あるご「あぇぇ...」
軽く拭ってみたら確かに鼻血が出ていた。ていうか服にもついてる。洗濯めんどいやつだ、これ...
とりあえずセリオ教官のとこに行くか...幸い休日だったから制服とか汚さずに済んだけど...
自分で歩くよりもパウルに運んでもらった方が楽なので肩に乗せてもらった。この際恥じらいとかはどうでもいい。
使わない布で鼻を抑えつつセリオ教官の部屋まで行った。休日だから多分部屋にいるだろうし。
セリオ「...これはまぁ見事に真っ赤になってしまって...」
あるご「まだこの体慣れないです...」
俺はセリオ教官のE.P.で手っ取り早く治してもらった。鼻がすごく楽になった。朝から散々だ。
セリオ「う~ん...取り返しのつかないケガをされても困りますし元の大きさになるまで私の部屋でアルゴ君には過ごしてもらいましょうか。」
パウル「アルゴ殿もそれでいいですか?」
う~ん...けがの対処が遅れる心配もないし...
あるご「はい、大丈夫です。」
ディーデリク「なんだなんだセリオの部屋で寝泊まりすんのか?」
あるご「なんでそういうときだけ耳いいんですか...」
ディーデリク「それぁお前が俺のお気に入りの生徒だからだろ」
ドヤ顔でそう言い放つデリク教官。なんでドヤ顔してるんだこの人...
セリオ「ケガの対処に遅れたら取り返しのつかないことになるのでダメです。」
ディーデリク「つれねぇなぁ...でだ、アルゴ」
あるご「はい?」
ディーデリク「せっかくの休日だ。俺と出かけねぇか?」
珍しい誘いだな...いつもは俺がデリク教官の部屋に出向くし...
まぁ断る意味もないし...
あるご「わかりました。」
セリオ「...教官としての自覚を忘れないでくださいね?」
ディーデリク「わぁかってるって。」
セリオ「アルゴ君から目を離さないでくださいね。」
ディーデリク「わぁかってるって...」
セリオ教官はデリク教官に釘を刺した。まぁ大方ちゃんとわかってるか不安なのだろう。
あるご「ではいってきます」
セリオ「はい。悪い人についていってはダメですよ。」
あるご「...見た目は子供ですけど中身は違いますからね。」
セリオ教官の視線がなんとなくデリク教官に向いていたような気がしたけどまぁ気のせいだろう。
ディーデリク「あ~...連れ出したのはいいんだがどこに行こうか...」
デリク教官がため息をつきながら頭をポリポリ掻いて呟いた。計画もクソもなく連れ出したのかこの人...
ディーデリク「そんな目で見るなって...」
別に今更気にすることでもないけど...
それからしばらく俺とデリク教官は行く当てもなくただ散歩をしただけだった。実に平和だ。
学院に戻るとオスカーが出迎えてくれた。
オスカー「アルゴ、おかえり。」
あるご「ただいま...?」
なんか怒ってる...?俺なんかしたのかな
オスカー「小説のネタになりそうだから色々聞きたいのに連れまわされてて聞けないからね」
多分顔に出てたから先読みされたやつだ。
あるご「ごめんて」
オスカー「別に怒ってないから」
怒ってるやつの常套句なんだよ、それ。
あるご「とりあえずセリオ教官のとこに行かなきゃだから話はそれからね。」
オスカー「分かった。」
セリオ「おかえりなさい。」
あるご「ただいま帰りました。」
ディーデリク「帰ったぜ。」
デリク教官はいつも通りにへらにへらしながら帰還報告をした、と思ったら椅子にドカッと座った。あ、これ居座るやつだ。
あるご「あの、オスカーに呼ばれてるんでオスカーのところに行ってきますね」
セリオ「はい。気を付けてくださいね」
ディーデリク「なら俺も」
セリオ「デリク教官はここに居てください」
なんとなく予想はできたな、この展開。
あるご「おすか~」
悪戯目的で少し子供っぽくオスカーの名前を呼んでみた。
オスカー「なぁに~」
想定よりもオスカーの顔が緩んだ。まるで子供が好きで子供の前だと顔が緩む親戚のお兄さんみたいだ。
オスカー「はっ」
我に返ったようだ。このまま戻らなかったらもふもふなでなでの嵐だっただろう。
オスカー「こほん...よし。色々聞かせて。」
...これ質問攻めされるやつだ......
オスカー「...色々って言ったけど僕が聞きたいのって単純に急に小さくなってどう感じたかってことだけなんだよね。」
どう感じたか、か...
あるご「寝起きだったから起きた直後はなんか変だな、程度にしか思わなかったんだよね...けどまぁ目覚めて鏡見てからもうそりゃ騒ぎまくったね」
オスカー「なるほど...」
そう言い終えるとオスカーはすごい勢いでメモ帳に何かを書いていた。筆記のスピードってあんなに鍛えられるもんなんだな...
オスカー「よし、このくらいかな。ありがとね」
あるご「うん、じゃぁ戻るね」
オスカー「あ、ちょっと待って」
セリオ教官の部屋に戻ろうとしたらオスカーに呼び止められた。
オスカー「...ちょっと撫でていい?」
うんわかってた。
...別に拒否する理由もないし別にいいかなぁ...
俺はそれとなくオスカーの膝に座って頭を突き出した。まぁ今の俺は見た目だけは子供だしこれくらい許されるでしょ。
オスカー「それじゃぁ遠慮なく...やわらかい...」
どうやら今の俺はすごい柔らかいらしい。子供特有の柔らかさだろうか...
あるご「ついでにセリオ教官の部屋に連れて行ってくれない?この体だと移動がめんどくさくて...」
オスカー「いぃよぉ~」
ダメだオスカーとろけてる...てかそろそろ撫でるのやめてくれ
セリオ「あら」
あるご「...へへ」
ちょっと恥ずかしくなってセリオ教官から目を逸らす。
そう、俺はオスカーに『抱っこ』されているのだ。
ディーデリク「おうおう俺にはさせてくれなかったのにオスカーは許すのかぁ?」
デリク教官が口を尖らせて俺を睨む。させてくれなかったって言ってもそんなこと言われた記憶が無いんですけど...
たらい回しにされるのは御免だ、と思いながらも抱っこされまくることを覚悟したら意外にもセリオ教官に持ち上げられた。
セリオ「アルゴ君が困っていますよ。教官が何やってるんですか。」
そういいつつもセリオ教官はそのまま抱っこする感じで俺を抱いた。
セリオ教官、俺もっと困惑してますよ、それ。そりゃ前例無いから珍しいのもわかるけど...
ディーデリク「しれっとお前が抱っこしてんじゃねぇか」
セリオ「私の部屋は物が多いですから。転んだら大変です。」
理由になってるのかなそれ...
で、しばらく俺はオスカー、セリオ教官、デリク教官の三人に抱っこの的にされた。すごく疲れた。
幼児体型ゆえの抗えない眠気に襲われてきた頃、デリク教官とオスカーは帰っていった。
この眠気がなによりめんどくさい。講義中はなんとか我慢してるけど休日だから抗う気力が無い。
セリオ「お昼までは時間ありますしご飯時になったら起こしますよ。疲れたでしょうし」
その疲れた原因が教官たちなのは言わないでおこう。
そのまま俺はセリオ教官が使っているであろうベッドで仮眠をとった。
やっぱりこの体は不便である。
セリオ「アルゴ君、起きてください。お昼ですよ。」
あるご「ん...」
起きると掛け布団を握っていた。子供みたいでちょっと恥ずかし...いや俺今子供か...
ベッドから降りると欠伸をしながら寝ぼけ眼を擦った。
セリオ「...眠そうですね」
あるご「この小さい身体妙に眠くって...」
よたよたと制服に着替えてお昼ご飯を食べに行く準備をした。
セリオ「私が運びましょうか。その状態だとどこかで怪我しそうですし...」
あるご「じゃぁおねがいします...」
運ばれるのにも慣れてきたな...怪我しやすいのもあるけどこっちの方が楽だし。
セリオ「食堂と購買どちらにします?」
あるご「う~ん...食堂で」
セリオ「わかりました。」
俺はそのままセリオ教官に抱えられて移動した。
グラントリー「...順応してるよな、お前」
あるご「そうかな」
テオ「お前はもう少し年齢に沿った行動をとれ」
あるご「年齢かどうかはともかく体の大きさに見合った行動のつもりだけど...」
セリオ教官に降ろしてもらって昼食を摂った。この後も付き添ってもらうわけにはいかないのでそこで別れた。
オスカー「ちょっと大きそうだね。切ろうか?」
あるご「じゃおねがい」
ちょっとこの体には大きそうだったので肉をオスカーに切り分けてもらった。兄みたいだ。
なんか体小さくなってからオスカーにはすごく甘やかされてる気がする...子供が好きなのだろうか...
取り皿に分けてくれたのでそれを食べた。やっぱりちょっと元の体の時と味が違うように感じる。美味しいことに違いは無いんだけどね。
オスカー「ほら、ソースついてる。」
あるご「ん...」
オスカーが俺の顔についてるソースを拭った。やっぱり兄みたいな行動してるな...あるいは彼氏か。
グラントリー「お前ら兄弟かよ」
オスカーはそれとなく照れているようだが俺は特に何かを感じるとかは無い。
ディーデリク「よぉ」
あるご「げ」
意図せず『げ』と声に出てしまった。
仕方ないでしょ、あれだけ抱っこされたのに...あの後にはもう抱っこされないなんて保証はどこにもない。だから体が元に戻るまではちょっと距離を取っておきたいんだよね。
ディーデリク「げってなんだげって」
あるど「いやぁ...えっと...」
どう言い逃れようか...と考えていたらわしゃわしゃと撫でられた。ちょ、首もげちゃう...
昼食を食べ終わってからはちょうど来たデリク教官とその辺を歩いた。またかよ。
けど今度はなぜか肩に乗せられている。親子か?
てかほんとに俺のことを甘やかしすぎでは?年齢で言えばお酒飲める歳なんですよ?体は今小さいけど...少なくとも子供ではない。
あるご「...なんで俺肩に乗せられてるんですか」
ディーデリク「あ?親子みたいでいいだろ」
単純だった~...単純だったよこの人...
小さい俺を贅沢に利用してる...利用されてるのか?俺...てか似ても似つかないでしょ
半ば諦めてそのままデリク教官の肩に揺られてあちこち移動した。やっぱり散歩したいだけだよこの人。暇なのかな?
30分ほど歩いてようやく学院に戻ってきた。誰かに見つかる前に降ろしてくれ...今度は肩車の嵐なんて勘弁してほしい。
あるご「そろそろ降ろしてください」
ディーデリク「しゃぁないな、ほれ。」
渋々俺のことを両手で抱えて降ろした。なんで渋々なんだ。教官としての自覚どこ行った。
何度か感じたけど今の俺やっぱり軽いんだな...みんなに軽く持ち上げられてるし...さすが騎士学院の生徒。筋肉隆々だね...関係ないか...まぁいいや、とりあえずセリオ教官の部屋に戻ろうかな。
セリオ「...デリク教官、またアルゴ君のこと連れまわしてたんですか?」
向こうから来てくれた。まぁ一言目は大抵そうなるだろうね。
ディーデリク「一緒に散歩するくらい別にいいじゃねぇか」
セリオ「ただでさえ小さいのに歩かせてどうするんですか」
ディーデリク「肩に乗せてたから歩かせてねぇよ」
ここからはデリク教官の言い訳、屁理屈の連投だった。途中からセリオ教官はまるで言うことを聞かない子供に説教している母親のように呆れていた。
セリオ「...アルゴ君も災難ですね...小さくなった挙句抱っこされたり連れまわされたり...」
あるご「恥ずかしさはありますけど新鮮な経験ですからまだマシですよ。恥ずかしいだけで。」
いい歳こいて抱っこされるのはやっぱり恥ずかしい、それもかなり。抵抗しても力の差がありすぎるからなぁ...
体が小さくてもぽこぽこ叩くわけにもいかないので肩あたりに手を置いてぐぐぐーっと押し返しても意味がない。
セリオ「抱っこされそうになってたときの抵抗、アルゴ君の優しさが滲み出てましたよね。」
あるご「そうですか?」
セリオ「普通なら叩くなりして抵抗しますよ。まぁ...子供の抵抗ですから大して効果は無いと思いますけど...」
それとなく察してはいたが普通に意味ない抵抗だった。
テオ「セリオ教官、少しアルゴを借りてもいいだろうか」
セリオ「はい。けどアルゴ君も疲れているのでほどほどにしてあげてくださいね。」
テオ「問題ない。間食に付き合ってもらうだけだからな。」
あら、テオが珍しく俺のことを名前で呼んだ。前まではド平民だとかこいつとか貴様とかでしか呼ばれな......教官の前だからか?風呂に誘われたときとかは名前で呼ばれたけど...
テオに抱えてもらうのはなんか違うので自分の足で歩いた。自分の歩行スピードにテオが合わせてくれていたような気がするけど多分気のせいだ。
テオ「食え。」
二文字...
あるご「お前が俺に優しくするの珍しくないか?」
テオ「幼子にこう接してなにが悪い。」
あるご「お前まで俺のこと子ども扱いか...」
まぁ体は子供なんだけどね。けどテオに優しくされるのはむずむずする。
そんなことを考えていたらテオに軽く睨まれた。うん、なるべくはやく食べたほうがよさそう。
美味しい。
暫くゆったり過ごしてあっという間に夜だ。風呂入ろうかな...誰を誘おうかな?う~ん...こういう時に自分のE.P.無いの不便だなぁ...あれがあったらそれとなく決められるんだけど......デリク教官はなにされるかわかんないからパス。
ん~...やっぱセリオ教官かな。
前誘ったときみたいな感じで誘って風呂に直行した。
セリオ「今日は災難でしたね~」
あるご「ほんとに疲れました...初めてですよ。休日はやく終われ~って思ったの」
セリオ「けど明日もまだ休日ですよ?」
あるご「そうなんですよね~...」
できれば考えたくない事実。はやく飽きる、というか普通に接してほしい。今は小さいけど精神はそのままだし。
あぅ...考えてたら頭痛が...
セリオ「...明日は私が一日付いていましょうか...アルゴ君が疲れる原因は大方デリク教官でしょうし...」
あるご「ありがとうございます...」
セリオ教官がついてれば安心かなぁ。まるで保護者だ。
風呂から上がって寝る準備を始めた。
セリオ「アルゴ君は私のベッドで寝てください。私はこっちで寝るので」
そう言いながら指を指したのは普通の椅子。うん、椅子。休日とはいえこれで寝てしまえば活動に支障が出るレベルで腰を痛めるだろう。
あるご「でも...それ固そうじゃないですか?」
セリオ「私は別に構いませんよ。まぁ...本音を言えば...小さいとはいえ生徒と添い寝だなんて教官として色々まずいですから...」
あるご「たしかに...」
とはいえこの体の俺、なぜか寝相が酷いからストッパーになるのがないと落ちかねないんだよな...まぁ失礼だから口にできないけど。
セリオ「とはいえ小さい子を独りで寝させるのもまずいですし...」
セリオ教官はかなり悩んでいるらしい。
あるご「なら椅子とベッドを隣接させればいいのでは?」
セリオ「なるほど。私の考えすぎだったようですね。ではそうしましょうか」
俺はベッドで、セリオ教官は結局椅子で寝始めた。セリオ教官は俺が寝付くまで起きていたようだ。
眠りに落ちる前に撫でられたような気がしたけど気のせいだろう。
明日もまだ忙しいだろうなぁ...
起きると体と右腕に違和感を感じた。左手で体を触ってみるとなんと元に戻っていた。
これで...これで恥ずかしい思いをしないで済む...
で、右腕の違和感は...セリオ教官の枕になっていたようだ。何気に教官の寝顔を見るのは初めてだ。まぁそりゃそうだよね、教官はそれぞれ自分の部屋があるわけだし...とにかく新鮮だ。
とりあえず、元に戻れたしオスカー達を驚かせようかな?
まず驚くのはセリオ教官かもだけどね。