「すぅーっ……ハァー……ッ」
暗闇の中、大きく深呼吸をして、逸る気持ちを抑える。
「ヒトは……いないな。よし……」
今ならいける――そう確信してズボンに手を掛けた。
ベルトを外し、ズボンを脱いで素足を晒す。それから、首、腕を通して、上着も全て外して、残るは股間を守る布切れだけ。
――既にそこは、今か今かと放出のときを待ち侘びるかのように、ピンと先端が尖り三角形を作り出していた。
「誰もいないよな……」
ドク、ドクと、胸の鼓動が全身を伝う。何度か下見をして安全だと分かっているはずなのに、ヒトが来ることを恐れている。
それでも、やってみたいことがあるんだ。
覚悟を決め、股間の三角形を取り払う。
途端に突き抜ける開放感。吹き付けたそよ風が、体を撫でる。
「はぁ……気持ちいい……」
心地よい風だ。きっとこれからの出来事も、最高のものになるに違いない。
窮屈な場所から解放され、快楽を主張する肉棒は、今か今かとその時を待ち侘びるかのように先端からヌメリのある液体を垂らしていた。
「やるぞ……ッ!」
勢いのままに、肉棒を手で包み込む。少し冷えた手に温もりが伝わって、その冷感もまた気持ちいいものだった。
「ハァッ……」
クチュクチュクチュ………
そんな卑猥な水音が、辺り一帯に響く。気持ちよすぎて、もうすぐに達してしまいそうな感覚とその欲求を抑えようとしたが――
(あっ……イクッ……)
ビュルビュルビュルッ。
「あっはぁっ……はぁっ……はぁ……」
思考が戻ってくると同時に、股間を伝う感覚が消える。
(気持ちよかった……)
誰も見ていない、真夜中の森で人知れず性欲を満たす――。
そのスリルと快楽がずっとずっと尾を引いて、もう一度したくなった。
よし、また明日来よう……。
――。
次の日。
日中から昨晩のことを考えていて、家でも一度満たしてきたのだが……やはり、物足りなく感じた。ここに来るまでの道のりは遠かった……早くあの快楽を得たい、心はそれで支配されたまま、森の奥までやってきた。
「あぁ……我慢できないっ」
もう無理だ。溜まりに溜まったその欲は、理性という名のついたダムを破壊し尽くして溢れ出す。
衝動のままに服を脱ぎ捨て、裸をさらけ出し、熱の篭った肉棒へと手を伸ばした。
ガサッ……ピシッ…………
(っ!?まずい……!)
茂みの中に何かがいる。咄嗟に服を着ようと思ったが、体が思うように動かない。
(な、何が起こって……!?)
ピキッピキッ……
何だこの音は……?何が起こっているんだ?さっきまでとは明らかに違う、生き物が立てるような音じゃなかった……。
ピキピキッ……
(っ!?オレの体から……?どういうことだ……?)
「ククク……」
(だ、誰……?)
暗闇で何も分からないまま、俺の体から乾いた音が響いてくる。そして、背後になにかの気配を感じる。それは、ぴったりと体を俺にくっつけて、耳元で喉を鳴らした。
「オマエ、待ッテタ。オレノ獲物」
(どういうことだ……?声も出せない……なんでこんな目に――ウゥッ!?)
ピキッ……
体が動かない。心做しか、足元が寒い気がする。そんなことを思っていると、いきなり肉棒を掴まれる感覚に襲われた。
「オマエノ体気ニイッタ。オマエ、オレノモノ」
「アッ……」
「石ニナルガイイ」
クソ……不意に肉棒を掴まれたせいで声が漏れた。
声の主は俺の目の前に移動してきて顔を覗き込み、黄色い瞳を見せつけてきた。なんだこれ……さっきの視線より明確に、不愉快だ――。
ピキピキ……
また、俺の体から乾いた音が聞こえてくる。それと同時に、肉棒から熱が薄れていくのを感じた。まだ興奮の主張は収まる気配がないが。
「ククク……イイゾ。オレガ完成サセテヤロウ」
(ぐぁ……!?)
完成とはどういう意味だと心の中で聞くより前に、尻に異物が入ってくる感覚に襲われた。硬く長いそれは、引き抜かれては奥まで入ってを繰り返す。それと同時に、快楽が体の中を駆け巡る。
(ぐぁぁっ、やめろ!)
「気持チイイカ?安心シロ、全部石ニシテヤル」
尻穴を犯されながら、冷たくなった硬い肉棒に絶え間なく供給される刺激。それは、想像を絶する快楽を全身で感じさせるほどだった。昨日の事なんか全部忘れてしまうくらいに気持ちいい――。
(ああっ、あっ、イクッ、イク……! )
ドピュッドプドプ……ピキ、パキッ!
果てしない快楽。そして射精の感覚……。
それを最後に、音を立てながら体は灰色に染まり、冷たく硬くなって――きもちいい…………
「ドウダ、気持チイイダロウ?1時間モスレバ、元二戻ル」
(ああっああっあっあっああああ――)
1時間がどうとか、どうでもいい。気持ちいい。それだけ……。
体はまったく動かないが、快楽だけは感じる。
「明日モココニ来ルガイイ。オマエヲ石ニシテ、タップリカワイガッテヤル。ソシテ我ノシモベニシテヤロウ」
もうどうでもいい。気持ちいい、石になって、犯される……石化、気持ちいい、気持ちいい……。
――
「ぅあっ!ああっ……」
石化から元に戻ったようだ。不思議な体験だった。快楽の最大値を更新し続けるという経験は、初めてだった。それよりも早く石化してあの快楽が欲しい――。
俺を石にしたヤツの姿は、どこにも見当たらない。あいつにもう一度お願いして、石にしてもらおうと考えたが、それに付き合ってくれるほど暇ではないようだ。
「明日、か……」
ふと呟く。明日もまたこれが出来ると思うと、また股間が反応してしまうのだった…。
――翌日、深夜。
また来てしまった。日中はもう、早く石になりたくて仕方がなかった。きっと俺の股間はずっと膨らみ続けていたのだろう。
それを解放する時が来た。長い長い時間だ。その間溜まり続けてきた情欲は、ピンとまっすぐに勃起した逸物がものがたっている。
「いるんだろ……?早く石にしてくれ……」
ガサガサ……
茂みから、アイツが出てきた。よく見ると、体が鱗におおわれているような風体だった。竜人かなにかなのか?
「マッテイタゾ。余程昨日ノ事ガキニイッタヨウダナ?」
「あぁ……石にされて、イカされて……もう最高だったよ」
「ホウ……ソウダナ…オマエガ望ムナラバ、完全ニ石化サセテヤロウ」
完全に石化……。一体どうなるんだろう。好奇心がくすぐられる。ずっと気持ちいいまま、石像になるのか?
「完全ニ石化スレバ、モウ二度ト元ニ戻レナクナル。ソノカワリ、体ハカタイカタイ石ニナッテモット気持チヨクナル。ソシテ我トズット遊ンデモラウ事ニナルゾ」
二度と戻れない。その響きが俺の心を鷲掴みにした。
ずっと石化して、気持ちいいまま。それが永遠に続くなんて、素晴らしいことこの上ない。
「それでいい。早く石にしてくれ……!」
即決だった。それに、我慢の限界でもあった。
石化したあとはどうなろうが知ったことじゃない。むしろ更に快楽を得られるということであれば、拒否する理由などあるはずもなかった。
「ソウカ。ナラバオ望ミ通リ石ニシテヤロウ。我ノ目ヲ見ツメタママ、逸ラスナヨ」
く、来る――。
怪しい光が視界を覆い尽くす。それと同時に、全身が強ばるような感覚と、ピキパキと心地よい音に迎えられた。
「ああ……!体が……」
こんなにも気分が高揚するのは初めてだった。全身が少しずつ灰色の石に染まっていく……冷たい風が石になった箇所を撫でる度に快楽が流れ込んでくる。
「フフフ……コレデ準備ハ整ッタ。オマエノカラダハモウスグタダノ石ニナル。喜ブガイイ」
「ああ、もう既にかなり気持ちいいんだ。石になれるってだけで嬉しい……」
「我ガ玩具トナレ、犬ヨ」
クチュッパンッパンッパンッパンッ……
ケモノ達の喘ぎ声が森に木霊する。肉が擦れ合う音と共にハーモニーを奏で、草むらに白濁した快楽の素が飛び交う。
「ああっイクッイクッイクッ」
ビュルルルルッ………
ピシッパキッピキッ………
ヌチュッヌチュッヌチュッ……。
「中ニ出スゾ……コレデオマエハ完成スル」
もうなんて言ったかなんて分からない。体が少しづつ石化していき、犯されて絶頂を何度も迎えた俺には考える力なんて残っているわけが無い。気持ちいい、もっと出したい……イクッ。
ビューッ……!ビューッ……ヌポッ……
あ、もう、いしに―――。
「ハァ……ハァ……イイ体ダ……ヤハリオマエハ我ガ玩具ニフサワシイ」
トカゲのような姿をした獣が、全裸で絶頂を迎えた石像を抱きしめ、呟いた。抱きしめた手で石像の尻や尻尾、その中を撫でるように堪能している彼はかなり疲弊しているようで、肩で息をしながら、石像を自分の住処へと持ち帰った。
夜中の森で、誰にも見られることのなかったその情事。石化した獣人は誰にも行方を知られることなく、住処の主によって、毎晩終わることの無い快楽を上塗りされ続けている。