娼館で誰にも相手をされなかったニンゲンの僕が、身も心も山賊狼獣人のものになるお話

  ☆

  「この役立たずが! いい加減、客の1人でもとってきやがれ! このタダ飯ぐらいが!」

  がつんっ!

  「うっ!」

  牛獣人の太い腕石で壁にたたき付けられた僕は、ただ痛みをこらえながら、怯えたように体を震わせる事しかできなかった。

  筋肉で膨れ上がった身体は、見上げるほどにでかくて厳つい。

  その目は怒り狂っていて、今にも僕を絞め殺してしまいそうだった。

  だが、僕には歯向かうことなんて考えることもできない。

  華奢な体のニンゲンが、猛々しい獣人に敵うはずなどないのだ。

  なにより僕ータクトーは奴隷で、彼はご主人様なのだから。

  人間は獣人様の奴隷。

  それは僕が生まれたときから植付けられた価値観だった。

  

  「お前、ここがどこだか分かってるのか!」

  睨みつけるご主人様に、僕はおどおどと答える。

  「……しょ、娼館です」

  「じゃあ、お前の役割はなんだ!」

  「……身体を売って、お客様からお金をいただくことです」

  そう、ここは娼館だった。

  男が男を体で歓待する場所。

  奴隷だった僕は、この牛獣人の旦那様に買われ、男娼として稼ぐことを求められていた。

  だが……。

  「じゃあ、なんで客を引っ張ってこねえんだよ!」

  そう、一度だって僕にはお客がつかなかったのだ。

  それは体が子供のように華奢なせいで、獣人の交尾に耐えられそうにないということが影響しているのだろう。

  この店に来るお客は、性欲を持て余して抱き潰すほど種を注いでも壊れない、屈強な男娼を求めてくるのだから。

  といってもさすがに商品を抱き殺すのは法律で罰せられる。

  そのために、誰も僕に手を出さないのだ。

  「酔った勢いで買ったのがまずかったぜ」

  舌打ちをするご主人様。

  「これが雌なら子を孕ませられるから使い道があるんだが……顔を見て身体を確認しないのが間違いだったな」

  「……」

  確かに僕は女の子に間違われるような顔をしているが、それを言われてもどうすることも出来ない。

  「すみません」

  ただ謝ることしかできない。

  いつだってそうなのだ。

  ここでも、この前にいた場所でも、僕はいつも邪険に扱われ続けていた。

  お前なんて買うんじゃなかったと。

  生まれてこの方、褒められたこともなければ、誰かに必要とされたこともない。

  この世界で僕の存在は、役立たずでしかないのだから。

  

  「まあまあ、そんなに怒るなよ」

  そんな僕の様子を見兼ねたのか、共同経営者である猪獣人が顔を出して口を挟んだ。

  「んなこと言ったって、こいつ今日も客がつかなかったんだぞ。今日だけじゃねえ。うちに来てから一度だって稼いだ試しがねえじゃねえか。ただ飯ぐらいなんて、うちには必要ねえんだよ!」

  「まあ、そりゃあな」

  「俺達だって慈善事業をしてるわけじゃねえんだ!」

  「……でも元はといえば、お前が買ってきたんだろうが」

  「……う。そりゃ、そうだけどよ」

  牛獣人が言葉に詰まると、猪親父は笑う。

  「まあ、心配すんな。いいこと考えたからよ」

  「いいこと?」

  「ああ。どうせここにいたってこいつは男娼としては売れないんだ。それならいっそのこと、奴隷の権利ごと誰かに売り付けてやれよ」

  「売りつけろって……こんな役立たず、買う奴がいるか?」

  「仕方ねえだろ、それぐらいしか方法ねえんだからよ」

  「まあ、そうだよな」

  牛親父は忌々しそうな顔で、僕を見た。

  「しかし、こんな奴、売れねえと思うけどな。……精々、身ぎれいにして、誰かに買ってもらえるように努力するんだぞ!」

  ☆

  

  『ニンゲンはすべからく奴隷であるべき』

  そう決められてしまったのは、あの戦争でニンゲンが敗北してしまってからだった。

  ニンゲン国と獣人国との争い。

  二つの戦力は長年拮抗していたらしく、お互い疲弊していた両国は和平をするための会談を行っていた。

  しかしそこでニンゲン側の大使が裏切りを見せ、獣人達を首都へと招き入れて国を壊滅させたのだ。

  ニンゲン国は滅び、残った住人達はみな奴隷として扱われることが法律によって定められた。

  それがもう30年近く前の話。

  僕が生まれる10年以上前のことらしい。

  ニンゲンの奴隷達は労働力として扱われている。

  男たちは獣人が嫌うような仕事をさせられるか、屈強な獣人を満足させるための性風俗に。

  女たちは労働力を増やすための孕み腹として。

  そんな中、男として生まれたにも関わらず、華奢な僕のようなニンゲンは、いつだって厄介者扱いされていた。

  ここに買われる前の採石場でも、この娼館でだって。

  『役に立たない』

  『お前みたいな奴はいらない』

  どこに行っても、そんなふうに扱われるのが当たり前だったのだ。

  今までの人生で誰かに求められたことなんてなかった。

  ……誰かに必要としてほしい。

  いつも心の奥底で、僕はそんな望みを抱いていた。

  でも、そんな気持ちを抱きながら、その渇望が満たされることは一度もなかったのだ。

  きっと今回だってそうなのだろう。

  ……誰も僕みたいな役立たずなんて、いらないんだ。

  だから、どうせ誰にも買ってもらえるはずなんてないと思ってたのに……。

  ☆

  「……お前、かわいい顔してるじゃねえか。喰っちまいたいぐらいだ」

  僕が男娼から販売奴隷となって数日。

  たまたまうちの店を訪れたのは、1人の狼獣人だった。

  元々交尾のためにここへ来たのだろうが、ペットのように檻に入れられた僕の姿を見て足を止め、ご主人様に話しかけたのだ。

  『こいつは売り物なのか』、と。

  驚いた牛獣人は、慌てて店の奥へと客を連れ込む。

  交渉のためにすすめられたソファーに座り、踏ん反り返った狼獣人。

  大柄だがでっぷりと肥えたその身体は、ボサボサの体毛に覆われて、離れていてもぷんと汗の匂いが鼻を突く。

  その身なりからも堅気のものとは思えなかった。

  荒っぽい冒険者か、はたまた山賊なのか。

  

  「お客様、お目が高い」

  嬉々とした牛獣人は手を揉みながら、狼獣人におべっかを使う。

  「こいつはまだ誰の相手もしていない処女でして」

  「それなのに、こんな安い値段で売ろうってのか?」

  つけられた値札を見て狼獣人は言う。

  それは、まさに捨て値と言ってもいいほどの安い値段で。

  「はい。ご存じの通り、この店のお客様の求めるニーズにあまり合わないものでして……。ですが、決して欠陥品という訳ではないです」

  「まあ、大抵の奴は一発抜いてすっきりするのが目的だからな。壊れない頑丈な男娼を求めるんだろうが……。俺はどちらかというと、かわいらしくておぼこい、年若いニンゲンが好みなんだよ。こいつみたいにな」

  ……え。

  その言葉に、俯いたままだった僕は、思わず顔をあげてしまう。

  生まれて初めて、自分が求められていると感じたから。

  「ちっこいし、やわっこい身体をしてそうだし、俺の好みにぴったりなんだよ」

  ご主人様にそう言うと、狼獣人は僕に話しかける。

  「お前。……名前、なんて言うんだ?」

  「え……。タクト、タクトと言います!」

  僕は泣きそうになりながら名前を名乗る。

  客の誰にも相手をされなかった僕は、今までこの娼館で名前を呼んでもらえることすらなかったのだから。

  「ふうん、いい名前じゃねえか」

  にやりと笑う狼獣人。

  ……この人なら、この人なら僕を必要としてくれるかもしれない。

  そんな期待が、僕の胸を高鳴らせる。

  「お、お願いです! 僕を……僕を買ってください!」

  僕は生まれて初めて大きな声を出して、必死に頼み込んだ。

  

  「何でもします! お客様のためなら、何でもしますから!」

  「……」

  狼獣人は檻の前にしゃがみ込むと、檻の中に手を伸ばし、僕の顎を掴む。

  そして、僕の顔をじっと見るのだ。

  「だから僕を……僕を買ってください……」

  「何でも、するか。……いい覚悟じゃねえか」

  狼獣人はにちゃりと笑うと鷹揚に頷く。

  

  「おい、店主。こいつは俺が買ってやるよ」

  そう、宣言する狼獣人に、驚いたような顔をするご主人様。

  「え!! 本当にいいんですか? ……勧めておいてなんですが、こいつの貧弱な身体だとすぐ壊れちまうから、そんなに激しい交尾を楽しめないかもしれませんが……」

  「ああ。問題ねえ。フェロモンもあるし、穴が裂けることはねえだろ。それに自分の奴隷にしちまえば、煮ても焼いても問題ねえんだろ。たっぷりと楽しませてもらうぜ」

  ☆

  ただ同然の値段でジンさんとの奴隷契約を行うと、僕はさっそく彼の住む部屋へと連れられて行く。

  それは街の隅っこにある、スラムの中にある一軒家だった。

  「あの……」

  僕は恐る恐る口を開く。

  「なんだ?」

  「ご主人さま。お名前を教えてもらってもよろしいでしょうか?」

  「俺か? 俺の名前はジンだ」

  「ジン様……」

  「様付けは性に合わねえんだ。せめてさんぐらいにしとけ」

  「でも……」

  戸惑う僕に、狼獣人は野太い笑みを見せて笑う。

  「俺の言うことが聞けねえのかよ」

  「わ、わかりました。じゃあ、ジンさん」

  「おうよ」

  僕の言葉に、機嫌良さそうな顔を見せる狼獣人。

  「ジンさんはどんなお仕事をされているんですか? ひょっとして冒険者とか……」

  「馬鹿言っちゃいけねえ。俺は山賊だ」

  「山賊……」

  「ああ、心配すんな」

  ジンさんは笑う。

  「別にこの仕事をお前に手伝わせるつもりなんてねえよ。お前みてぇにひ弱そうなやつが仲間になったって、何の役にも立たねえからな」

  「す、すみません……」

  ……役に立たない。

  しょげた顔をする僕の頭を、ポンと軽くたたくジンさん。

  見上げるとその顔は苦笑いをしていた。

  「馬鹿、そんなことを期待してお前を買ったわけじゃねえからいいんだよ。それよりもお前はうちに来て、その身体で身も心も俺を楽しませてくれりゃいいんだ。出来るんだろ?」

  「は、はい!」

  僕は勢いよく返事をする。

  未経験とは言え、閨の技術はきちんと覚えさせられたのだ。

  せめて、ジンさんに喜んでもらいたい。

  それがきっと、自分の存在意義になるはずだから。

  「とりあえず中に入れよ」

  「はい、お邪魔します……」

  殺風景で何もない部屋に、だだっ広い大きなベッドが1つ。

  「ここは隠れ家の1つみたいなところだからな。必要なもの以外は何もねえんだ」

  「そうなんですか……」

  そりゃベッドは必要なんだろうけど……。

  見ればキッチンやテーブルもない。

  ……食事はどうしてるんだろ。

  「来て早々悪いが、俺のやりてぇ事はわかるな?」

  「はい……」

  元々ジンさんは娼館に来ていたんだ。

  交尾したいなんていうことはわかりきっている。

  僕はその場にひざまずくと、泥で汚れたズボンを脱がす。

  ……うっ。

  むっとするような雄の匂いと共に現れたのは、ニンゲンとはまるで違う、長大な逸物だった。

  子供の腕ほどはあるであろう竿は、使い込まれているせいで飴色で。

  すでに興奮しているのか、いきり勃っていた。

  風呂になんてろくに入っていないのだろう、顔をしかめたくなるような匂いがしている。

  だが僕は勇気を振り絞って、亀頭に舌をつけた。

  

  ぴちゃっ。

  「……」

  舌に広がる、苦みとえぐみと塩辛さ。

  そのあまりのひどさに、僕の舌は自動的に動きを止めてしまう。

  びりびりと痺れる感覚に、身体が拒否しようとしているのがわかる。

  だが……。

  「おい、何まどろっこしいことしてんだよ」

  狼獣人は俺の後頭部を掴むと……無理矢理その逸物をめり込ませてきたのだ。

  めりっ、めりめりめりめりめりっ!

  「んぶぅぅっ!」

  中から口の中を圧迫する太い肉塊。

  ぎちぎちに膨らんだ逸物は、情け容赦なく喉の奥へと突き立てられていくのだ。

  張り裂けそうな痛みに僕は呻くことしか出来ない。

  「ぐぅぅっ、ぐぅぅぅぅぅぅっ!!」

  だが悲鳴すらも、その野太い逸物に塞がれて、くぐもった声しか出なかった。

  僕は逃げるように体をばたつかせる。

  しかしもちろん、大柄な狼獣人から逃げることなどできるはずもないのだ。

  「うるせぇよ。ちっとは我慢しやがれ」

  ジンさんは押さえ付けた掌を離すことなく、ゆっくりと前後に動かす。

  きつい肉穴をこじ開けていくように。

  

  ぐじゅっ、ぐじゅっ、ぐじゅっ、ぐじゅっ……。

  

  「……っっ!!!!」

  ただその感触を味わうための乱暴な動き。

  太い竿が強い力で粘膜を擦りたてるせいで、ヒリヒリとした痛みが僕の喉を襲い続けていた。

  ごちゅっ、ごちゅっ、ごちゅっ、ごちゅっ!

  「歯を立てるんじゃねえぞ」

  その豆だらけのカサついた掌はただ快楽を貪ることしか考えていなかった。

  ごちゅんっ!

  「……っっ!!」

  急に喉奥を刺激されて、吐き気がせりあがってくる。

  それを必死に堪えながら、それでも僕は喉を絞め、舌を動かしながらジンさんに奉仕し続けた。

  この人に、少しでも気に入って欲しかったから。

  じゅるっ、じゅるっ、ずるずるずるずる……。

  

  「ああ、いいぜぇ。やっとこなれてきやがったな」

  何度も僕の頭を無造作に動かしながら、ジンさんはやっと満足したような声を上げた。

  「ちょっと喉が広がってきやがった。粘膜も擦れるしよ、いい具合じゃねえか。溜まってるからな、まずは一発ぶっ放してやるよ」

  「んぐっ、んぐぐぐぐぐ……」

  喉に突っ込まれた逸物が膨れ上がるのがわかる。

  吐精しようというのだろう。

  僕はジンさんの腰に腕を回し、必死に抱きしめる。

  種をくださいとねだる様に。

  その様子に目を細めた狼獣人は……。

  「イクぞぉぉぉっ!!」

  鉄砲水のような勢いで雄汁を吐き出すのだ。

  びゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるっ!!

  口から溢れそうになるそれを、僕は必死に飲み下した。

  ひどい匂いと味がしている、喉に絡みつくように粘っこいザーメン。

  それでも、無理矢理喉の奥に送り込んでいく。

  僕がどれだけジンさんの事を求めているのか、わかってもらえるように。

  ……この人に気に入られたい。

  ……ジンさんのものになりたいんだ。

  ずるんっ!

  「げほっ、げほっ……」

  不意に引き抜かれた逸物に、僕は咳き込んでしまう。

  口から溢れた種汁を手で拭いながら、それでもほとんどを呑み込んでしまった僕を、ジンさんは満足そうな顔で見つめていた。

  「いいじゃねえか。ますます気に入ったぜ。俺の子種がそんなに美味かったのか?」

  「……はい。ジンさんの子種、美味しいです」

  何とか笑顔で答えてみせる。

  

  「かわいいじゃねえか。そういう従順な奴は、俺は好きだぜ。……さてと、まだまだおさまらねえや。今度はお前の雌穴を堪能させてくれや」

  そう言うなり、ジンさんは僕の身体を抱き上げると、ベッドの上に放り投げる。

  そしてそのまま自分のベッドの上に乗ると、僕の着ている服をその鋭い爪で引き裂いた。

  びりびりっ!

  「あっ……」

  「心配すんな。おめぇにはもう、服なんかいらねえんだからよ」

  そう言いながら、ジンさんは僕の身体をじっくりと見つめた。

  「いい体してるじゃねえか。たまらねえな。若くて柔らかそうな肌をしてやがる」

  舌なめずりをしながら、まるで愛おしいものを触るように、優しく僕の肌を撫でていく。

  誰かにそんな優しく触られるのは初めてで、涙が出そうなほど嬉しかった。

  大事にされている、そんな実感さえ感じられたから。

  「この若くてきれいな体を食い散らかせるなんて、たまらねえな。……俺と、身も心も一つになろうな」

  ジンさんは興奮で、先ほどイッたばかりの逸物が、ギンギンにいきり勃っている。

  「じゃあ、まずはおめぇの肉穴、味わわせてもらうからよ」

  「……はい」

  正直、怖かった。

  男娼になるために広げる練習はしてきたけど、相手は大柄な肉食獣人の、しかも巨根なのだ。

  肉が引き裂けてしまうかもしれない。

  ……それでも、ジンさんに喜んでもらえるのなら。

  少しでも入れやすいようにと、僕はうつ伏せになると、肉穴に硬い逸物の感触を感じながら、歯を食いしばる。

  「いくぞ」

  無造作な一言と共に、棍棒のような肉塊が、僕の穴を貫いた。

  ごじゅんっ!

  「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

  歯を喰いしばっていたはずなのに、思わず漏れてしまう悲鳴。

  それほどまでに強大な痛みと衝撃が、僕の身体を襲ったのだ。

  「痛いぃぃぃぃっ!!」

  まるで焼けた火箸で肉をえぐられるような痛み。

  それが内臓の奥深くを目指して無遠慮に貫いていくのだ。

  

  ずるっ、ずるっ、ずるっ、ずるっ……。

  「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!」

  体を真っ二つに引き裂かれていくような苦しみに、僕は身をよじらせる。

  この地獄から逃れようと。

  だが、狼獣人は逃がそうとはしなかった。

  強い力で押さえつけたまま、僕の身体がもたらす処女の快感を恍惚の表情で味わうのだ。

  「たまんねぇや」

  その灰色の毛と熱い体温に包まれたまま、僕は苦痛を味わい続けることしか出来ない。

  

  ぐちゅんっ、ぐちゅんっ、がちゅんっ、ぐちゅんっ!

  その苦しみさえも、ジンさんにとっては快楽なのだ。

  痛めつけられ恐怖で震える肉襞は、その太竿に快感を与え続ける。

  その肉壁の感触を逸物で確かめるように、執拗にこね回していくのだ。

  ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ……。

  「待って……やだっ、やだっ、やだぁぁぁぁぁぁっ!!!」

  肉穴の中はすでにジンさんの先走りと内臓から溢れた血が交わって、潤滑油になりつつあった。

  それでも、臓物をえぐられ、引き抜かれるような痛みと苦しみは変わらず僕を苛み続けるのだ。

  がちゅりっ、ぐじょっ、じゅるじゅるじゅるっ、がちゅんっ、どちゅっ、ずるずるずるずるっ……。

  「んぎぃぃっ! お願いっ……お願いですからぁぁぁっ!」

  許しを乞うように叫んでも、興奮した狼には通じない。

  ジンさんはただ、快楽に任せて腰を振るだけ。

  ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ……。

  ただただ快楽を求める腰遣い。

  緩急をつけながらひたすら僕の身体を喰らうように貪るのだ。

  脳天にまで響く痛みが僕の身体を震わせるというのに、そんな事はこの狼獣人にとっては、なんの関係もない。

  むしろ、その刺激がスパイスになってちょうどいいと言わんばかりに、興奮で鼻息が荒くなるのが感じられた。

  僕の苦しみも痛みも、この人には何の感慨も与えないのだ。

  「ごわいぃぃぃぃっ!!」

  まるで言葉を知らないケダモノに犯されているような絶望感すら感じられた。

  痛みと恐怖が絶頂に達して、頭がおかしくなりそうだったその時だった。

  「すげぇ。たまんねえぜ、タクト」

  ふと漏らしたジンさんの言葉が僕の耳に聞こえた。

  「あ……」

  

  『タクト』

  ……名前を、名前を呼んでくれた。

  ……僕の名前を。

  僕はぐっと歯を食いしばる。

  ジンさんは、僕を求めてくれているのだ。

  必要としてくれているのだ。

  死んでしまいそうなほど、痛くて、苦しい。

  ……でも。

  ジンさんは、僕を必要としてくれているんだ。

  僕は後ろを振り返ると、必死に口を開いて、言葉を捻り出す。

  「ジンさん……もっと……」

  「なに?」

  「もっと……激しくして……ジンさんの子種、欲しいです……」

  その言葉に、ケダモノの瞳が、ギラリと輝いた。

  そこにいるのは、もう雌に種を付けるための雄でしかなかった。

  「うぉぉぉぉっ!!」

  がちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんっ、どちゅっどちゅっ、ごりんっ、どちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっごりごりごりごりごりごりっ、どちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっどちゅっ!!

  「ひぎぃぃぃぃっっっ!!」

  僕の肉穴が、破壊されてしまいそうになるほど激しい抽挿に悲鳴をあげるのがわかる。

  だが、不思議と痛みは感じなくなっていた。

  それはジンさんの身体からうっすらと感じるようになった甘い匂いのせい。

  そう、それは雄の獣人が放つと言われるフェロモンだった。

  気に入った雌を見ると出ると言われるそのフェロモンは、相手を発情させ、快感を感じる体に変えてしまうのだ。

  「しゅごい……しゅごいぃぃぃっ♡!!」

  一気に快感が爆発した。

  薄いそのフェロモンでは、完全に痛みはなくならない。

  でも、今まで存在しなかった快感に身悶えする僕の体を押さえ付けて、ジンさんは種付けをする。

  「イクぞぉぉぉぉっ!!」

  どりゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるっ!!」

  「ひぎゃぁぁぁぁぁぁっ♡!!」

  血だらけの肉襞に焼けた鉄のように熱い雄汁が染み込んでくるのがわかる。

  僕はその痛みと快感、ジンさんの体温と汗の匂い。

  それに包まれて心が満たされていくのがわかった。

  ……僕はこの人と出会うために生まれてきたんだ。

  ……この人のためなら、僕は何でもできる。

  そんな思考が、頭の中に焼き付いていく。

  だから。

  「こんなもんじゃ足りねえな。もっと、もっと犯してやるからな」

  「はい……もっとジンさんと交わりたい……です」

  ジンさんが僕の身体の上で再び動き出しても、僕はそれを求めてしまった。

  ☆

  あれから、幾度となくジンさんは僕の中で精を放った。

  涸れることのない雄汁は、僕の全身を外からも中からも汚してしまう。

  まるでたっぷりとソースをかけられた肉塊のように。

  

  「はあ、はあ……」

  息を切らしてベッドに横たわる僕を見て、体を離したジンさんは満足げに笑う。

  「いい格好だな。たまらねえよ。大好きだぜ、タクト」

  ……ああ。

  なんて幸せなんだろう。

  たとえ痛みと苦しみを感じていたとしても、僕は幸福感に包まれていた。

  「僕も……僕もジンさんの事が好きです」

  「そうか。……タクト、おめぇは俺のもんだ。お前は俺の雌だ」

  そう言いながら、再び僕の身体に覆いかぶさってきた狼獣人。

  その言葉にまたも興奮してきたのか、交尾をしている時よりも濃厚なフェロモンがその大きな体からあふれ出てくる。

  ……すごい。

  霧のようなそのフェロモンを嗅ぐと、体が痺れて動かなくなるのだ。

  体全体がジンジンと疼いて、あれだけ激しく犯されたのに、もっと強い刺激さえ欲しくなってしまう。

  ジンさんのマズルが、僕の身体をゆっくりと上から下へとなぞっていく。

  「ひぃっ♡!」

  それがたまらなく心地いいのだ。

  その口が、腹を下がり、僕の股間へと到達する。

  そこには精を吐き出しすぎて小さく震える僕の性器があった。

  

  「お前は俺だけの雌なんだ」

  言い聞かせるように呟くジンさん。

  「はい」

  その言葉に棒は頷く。

  「だから……こんなもの必要ないよな」

  「え?」

  僕は首を傾げようとしたその時だった。

  あんぐりと開いたその口が、柔らかく僕の逸物と睾丸を包み込むと……。

  がちりっ!

  一気に鋭い牙が噛み合わさる。

  つまり……。

  切り取られてしまったのだ。

  僕の性器が。

  「ぎぁああああああああっ!!」

  僕の身体が苦痛でのけ反る。

  濃厚なフェロモンで狂わされた身体であっても、痛みを感じるほどの衝撃だった。

  

  「痛いっ、痛いぃぃぃっ!!」

  ジンさんの逸物で内臓を抉られた時よりも、はるかに強い痛み。

  それはそうだろう。

  鋭い牙で逸物を食い千切られてしまったのだから。

  僕はあまりの痛みに涙をボロボロ流しながら叫ぶことしか出来なかった。

  まるで尿を漏らすかのように血がどくどくとあふれ出るのがわかった。

  突然の痛みと恐怖とで、強張ってしまう僕の身体。

  だが、狼獣人はそんな僕をうっとりとした表情で眺めていた。

  口の中に存在する僕の性器をその舌で転がしながら。

  「ほら、見てみろよ。タクトの雄が、こんなに縮こまってやがる」

  恐怖におののく僕の目の前で、口を開けてみせる狼獣人。

  そこには、切り取られた小さな性器が血まみれで存在していた。

  「なんで……なんでそんなことを……」

  「決まってるだろう」

  でっぷりと太った狼獣人は笑顔を見せる。

  

  「俺はなぁ。気に入った雌は喰っちまわないと気が済まねんだよ。……好物なんだよ、かわいいニンゲンがな。だからおめぇを買ったんだよ」

  「あ……」

  そうだ。

  この狼獣人は初めて僕を見た時から言っていたではないか。

  『お前、かわいい顔してるな。喰っちまいたいぐらいだ』

  ジンさんは、初めから僕を食うつもりで買ったんだ。

  ……そんな。

  

  「それじゃあ、いただきます」

  そう言うと、狼獣人はゆっくりと口を閉ざす。

  

  ぐじゅりっ!

  閉ざされた口の中で、何かが潰れる音がした。

  ……ああ。

  とろり、と口の端から白い液体がこぼれた。

  僕の雄であった証明が、噛み砕かれていくのだ。

  「や、やめ……」

  ぐちゃっ、ぐちゃっ、ぐちゃっ、ぐちゃっ……。

  フェロモンのせいで身動きできないまま、狼獣人の咀嚼音だけが部屋中に響き渡る。

  「……やっぱりうめぇや。このちいせぇチンポはともかく、子種が入った玉がたまらなくうめえんだよな」

  ぐちゃぁ。

  開かれた口の中は、ミンチ状になった肉片が赤と白に染められていた。

  僕の性器のなれの果て。

  それを見て、僕は吐き気がこみ上げてくる。

  自分の性器が噛み砕かれた様子なんて、見たいはずがない。

  だというのに。

  「こいつはうめぇからな。おめぇにも味わわせてやるよ」

  狼獣人は事もあろうに僕の口にマズルを押しつけると、口の中の肉片を流し込んできたのだ。

  じゅるじゅるじゅるっ……。

  「んんんんんんんんっ!」

  小さな肉片が大量に流し込まれる。

  口の中に広がる血と生臭い味。

  おぞましぎるその行為。

  

  「うげぇぇぇっ!」

  思わず僕はそれを吐き出してしまう。

  「なんだ、もったいねぇな。自分の白子なんざ、なかなか食えるもんじゃねえだろうに」

  顔をしかめる狼獣人を、僕は唖然とした表情で見上げることしかできない。

  ……狂ってる。

  この狼は狂ってるんだ。

  ……逃げなきゃ。

  フェロモンに犯された身体に必死に力を入れ、僕はベッドから動こうとする。

  だが、身動きなんて出来るはずもない。

  「なんだ、お前も逃げるのかよ」

  そんな僕の様子に、がっかりしたような顔をする狼獣人。

  

  「お前は俺のこと好きだって言ってくれたじゃねえか。だから身も心も一つになろうって約束したのによ」

  「それは……」

  そんな意味じゃないのに。

  「まあ、いいや。腹も減っちまったし、さっさと食っちまうか」

  そう言うと、その大きな腕が逃げようとする僕を掴む。

  「やだっ、やだぁぁぁっ!」

  その掴まれる感触にさえ、未だ快感がまとわりついているというのはなんとおぞましいのだろう。

  「心配すんな。お前が逃げようとしても、俺がお前の事を好きなことには変わりないからよ。お前は死ぬまで俺の雌なんだ」

  そう甘く囁きながら開かれた口が、僕の右足首を咥え込んだ。

  味見をするようにチロチロと舌が足裏をくすぐる。

  そのくすぐったささえも恐怖だった。

  「あっ……あ……」

  

  ぎり、ぎり、ぎり、ぎり……。

  狼の牙が皮膚を突き破り、肉の繊維を断ち、骨へと到達する。

  そして……。

  ごりんっ!

  「ひぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

  僕は泣きながら叫び声をあげた。

  「痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!」

  骨を砕いて、牙と牙が重なるのがわかる。

  それと同時に、とんでもない痛みが脳天にまで走るのだ。

  ……痛い、痛い痛い痛いっ!

  今までの人生で感じた事のないほどの強烈な痛み。

  体が動けば、その場でのたうち回っていただろう。

  だが、フェロモンで痺れた身体はただ震えることしか出来なかった。

  そんな僕を見つめる幸せそうな顔をした狼獣人は、僕の血で真っ赤に濡れていた。

  満足げに僕を見下ろしながら、その大きな顎をゆっくりと動かしていく。

  ごりっ、ばきっ、がりっ、ごりっ……。

  生き物の口から聞こえるとは思えない異音が響いてくるのがわかった。

  僕の足を咀嚼しているのだ。

  「噛み応えがあって、なかなかうまいじゃねえか。骨の髄もいい味してるぜ。やっぱり睨んだとおり、タクトは俺の雌に相応しい」

  口の周りを血だらけにしながら、満足げに咀嚼を続ける狼獣人。

  現実逃避をするように視線を下にやるが、僕の右足首があった場所はただ血だまりになっているだけ。

  これは夢ではない、現実なのだ。

  「あ……ああ……」

  僕は恐怖で気が狂いそうだった。

  今僕は、生きながら喰われているのだ。

  ……ありえない。

  ……こんな目に遭わなければならないなんて。

  おぞましい。

  おぞましかった。

  せめて痛みで気絶してしまえれば、どんなにか楽だろう。

  だが、その痛みは僕の意識を失わせることはなかった。

  「心配すんな。フェロモンの力で、気を失うほどの痛みにはならねえよ。お前は意識を残したまま、自分の身体が喰われていく様を見てるんだ」

  「……なんで、なんでそんなことを」

  あまりの恐ろしさで、涙さえ出ない僕は、震える唇を動かした。

  「ああ? その方が気絶させたよりも肉がうまくなるんだよ。なんでか知らねえけどな。さあて、次はどこを喰っちまおうかな」

  平然と言う狼獣人。

  「やっぱり内臓が一番うまいんだけど、それを喰っちまうとすぐ死ぬからなぁ。まずは四肢をバラバラらにして喰っちまった方がいいか」

  「た、助けてぇぇっ!」

  誰にも届かない声を漏らしながら、僕はその手を狼獣人に捕まれる。

  「かわいい手をしてるよなぁ。俺なんかとは違う、若くて柔らかい掌。骨もやわっこくてすぐ砕けちまいそうだ」

  ぐわっ。

  優しく囁いた血だらけの口が、大きく開かれる。

  そしてその口は、おやつでも咥え込むように、僕の手をすっぽりと覆うのだ。

  「だめぇぇぇっ!!」

  ごりっ!

  「んぎぃぃぃぃぃっ!!」

  ばり、ばりばりばり……。

  指先を先端からかじっていく狼獣人。

  喰われていくその端から見える肉と骨の断面。

  そしてそこはすぐに真っ赤に彩られていくのだ。

  

  べろべろべろ……。

  溢れ出る血を嬉しそうに舐めとる狼。

  自らの行う行為にさらに興奮したのだろう。

  より濃厚になったそのフェロモンは、気体ではなく液体となって僕の身体にまとわりつくのだ。

  そのせいか、もう痛みは何も感じなかった。

  ただ、自らが喰われていく様子を僕は目に焼き付けることしか出来ない。

  それはまさに地獄だった。

  いや、地獄の方がまだマシだっただろう。

  自分の身体が徐々に失われていくのだ。

  嬉しそうな狼獣人によって。

  太股を食い千切られ、柔らかい耳をねじ切られ、乳首をかじられ……。

  それでも、僕はまだ死ねなかった。

  気絶をすることも出来ないまま、現実という地獄を体感させられ続けていたのだ。

  ついにはダルマになった僕を見て、狼獣人はにっこりと笑う。

  「そろそろメインディッシュだな。……ここがたまらなくうめえんだ」

  がぶりっ!

  大きく口を開けた狼が、僕の腹に食らいついた。

  びりりっ!

  まるで布が裂けるような音を立てて皮膚が裂け、中から臓器が顔を覗かせた。

  狼はそのまま皮膚を噛みちぎり、はらわたを引きずり出す。

  ずるずるずるずる……くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ……。

  血と己のザーメンとにまみれた腸をうまそうに麵でも食うように啜り上げると、嬉しそうに咀嚼するのだ。

  その様子を僕は無感動に眺めることしか出来なかった。

  「はは、はははははは……」

  僕に出来るのは、もう笑うことだけ。

  流した血で僕の頭は朦朧としていた。

  もう、助かることなんてないのだ。

  ただこのまま喰われて終わるだけ。

  「なんだ、もう壊れちまったのか」

  僕の血を啜っていた狼獣人が、つまらなさそうに言う。

  「もったいねぇな。もう少し楽しみたかったのによ。今まで喰ってきた中で一番美味い雌だったのに」

  「僕は……うまかったん……ですか……」

  なぜそんなことを聞いてしまったのだろう。

  朦朧とした意識の中で、なぜか僕は狼獣人に尋ねてしまう。

  狼はにやりと笑うと、満足そうに頷いた。

  「ああ、美味いぜ。最高だ。俺はお前を喰うために生きてきたんじゃねえか、と思えるぐらいには美味い肉だぜ」

  ……ああ。

  僕の心が、唐突に満たされていくのがわかった。

  ……必要とされているんだ。

  僕の存在は、今、ジンさんに求められているんだ。

  その存在価値が、食肉としての価値だったとしても。

  ……それでいいじゃないか。

  たとえ食われたって、ジンさんに選んでもらえたことだけで、僕の人生は価値があったんだ。

  痛みを越える充足感が僕の心を満たしていく。

  「ありがとう……ございます」

  「何だと?」

  「僕をうまいと言ってくれて……ありがとうございます……」

  息も絶え絶えに言葉を吐き出す僕を見て、ジンさんは笑った。

  「こんな奴初めてだな。喰われて感謝する奴なんてよ。……ああ、お前を選んで、本当に良かったぜ」

  ……ああ、幸せだ。

  「お前みたいな奴は、肉の一片、骨のひとかけらまで余すことなく喰ってやるからな」

  「よろしく……お願いします……」

  「よしよし。じゃあ、次は脳味噌を喰らってやるからよ。こいつがまた美味いんだ」

  僕は恍惚の表情のまま、大きく口を開けて頭にかぶりつこうとするジンさんを見つめて……。

  ぐじゃりっ!