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とある少年兵の結末

  定められた規定ほど、命の瀬戸際において無意味で無価値なものは無い。

  断続的に響く、砲弾が肉の塊を吹き飛ばす轟音。

  耳を両手で塞いでも隙間からするりと入り込む絶叫。

  空を覆うのは黒く分厚い、陽射しを欠片も通さない雲。

  飛び散る血液と肉片。

  血と硝煙と排泄物が入り交ざった、鼻が曲がるという表現すら生温い凄絶な臭い。

  ぎゃあぎゃあと屍肉を貪る烏の声に、慟哭と絶望と怨嗟。

  この世に地獄があるとすれば、それはここだ。

  かつて仲間だった屍の中に潜み、少年は必死に声を押し殺す。

  死にたくない。その一心で、少年は屍から滴る血液を体中に塗し、屍のふりをする。

  憎いという感情すら湧き上がらない。絶望と恐怖に歯の根が合わない。

  屍を。

  自分たちの仲間を無惨に殺戮する、大柄な男達。

  何故自分がここにいるのか。何をしに来たのか。大義は一体なんだったのか。

  少年には何も分からない。

  命じられるまま収集され、命じられるままに戦場に赴き、そして殺される。

  たまたま少年は生き残っていた。生き残ってしまっていた。

  少年が配置された前線基地に砲弾が撃ち込まれた所から、少年の絶望が幕を開けた。

  炸裂する砲弾が兵士たちを薙ぎ払い、肉塊へと変えていく。

  蜘蛛の子を散らすように兵士たちはその場から逃げまどい…

  鉛の弾によって命を奪われていく。

  少年はその日、初めて臓物が飛び散る瞬間を見た。

  恐ろしかった。悍ましかった。

  臓物に肉に、鉛の弾を情け容赦なく浴びせながら、嗤う兵士たちが。

  この世のものと、自分と同じ生き物だとは思えなかった。

  逃げまどう兵士たちを遊び感覚で撃ち殺す。

  飛び散った眼球を踏みつぶし、未だ痙攣している肉塊を蹴り飛ばす。

  銃の先で臓物を持ち上げたと思えば近くに転がっていた虫の息の兵士へ押し付ける。

  口をパクパクと言わせ、血液と唾液の混ざった泡を吐く兵士の胸元へ銃剣を近付け、心臓を抉りだした。

  嗤いながら。謳う様に。

  子供が無邪気に遊びながらそうするように。

  少年は湧き上がる吐き気を必死に抑え込み、自然と溢れ出した涙を血で拭う。

  『敵国』の兵士たちがただただ、過ぎ去ってくれるのを祈りながら。

  圧し潰されそうになりながら。生存本能にしがみついて。

  必死に、必死に。

  祈る。

  「みぃつけたぁ♡」

  神などこの世に、居るはずもないのに。

  [newpage]

  そこが何処なのか、少年には分からない。

  血と錆と膿の臭いがべっとりと染みついた、薄暗い空間。

  慰み者にされ痛めつけられた痕が残る肉塊が使われていないベッドの上に並び。

  その真横で兵士達は談笑し、酒を飲みながらカードゲームに耽る。

  「んぅ"ぅ"っ!ん"っ、うぐぅ"ぅ"っ!!」

  激痛と恥辱と恐怖と絶望に少年は声を上げた。

  ベッドの軋む音。リズミカルに尻を叩くのは屈強な兵士の下腹部。

  怒張した逸物は少年の腕ほどはある太さと長さ。

  「ゴミの山探索した甲斐があったってもんだ!あ〜、気持ちいい〜♡ガキの処女ケツぐちゃぐちゃにすんのたまんね〜♡」

  少年の頭をベッドに押さえつけると兵士はうっとりと声を上げながら腰を乱雑に動かし、少年の肛門を逸物で破り拡げながら蹂躙する。

  「ぁ"がぁ"ぅ"っ!ぅ"ぅ"っ、ぁ"ぅ"っ、がっ、ぁ"っ!ぐっ、ぎぃ"ぃ"っ!ぐっ、ぅ"ぅ"っ…!?」

  「この啼き声もたまんねぇわ〜♡おらっ、オラッ!オラッ!」

  肉がぶつかる。逸物が腸内をぐちゃぐちゃにかき混ぜ、腸壁が引き摺り出される。

  雄を知らず。

  まして排泄以外に使ったことのない肛門を馴らす事もせず行われるその行為は筆舌し難い苦痛。

  「おいおい調子乗って壊すんじゃねぇぞ。お偉い博士様達が必要としてんだからよ。」

  少年が蹂躙される姿を肴に酒を飲み、兵士は下卑た笑みを貼り付け静止する気もない静止の言葉をかけた。

  「それはわかんねぇなぁ、まぁまたゴミ山漁れば出てくるだろこんなガキ!ぉ"っ、いいっ、締め付け最高♡」

  「お前それで何匹ガキ殺してんだよ、後処理任されるこっちの身にもなれってんだ。」

  「んな事言って、お前だって死んだガキの死体で遊んでんじゃねぇか。…お、フルハウス。俺の勝ちな。」

  机に積まれたカードを引き、手札を見せ。血塗れのコインを手に取るのはやはり汚らしく笑みを浮かべる兵士。

  少年を犯す兵士の動きは行為を続ければ続けるほど激しさを増していく。

  兵士の分泌した先走りが少年の腹の中を満たし、逸物と粘膜で擦れ、泡立ち、少年の太腿を濡らしていく。

  肛門の何処かが切れてしまったのだろうか、泡立った液体が徐々に桃色を帯びていく。

  「うぐっ、ぅ"っ、ぎっ、ひっ、ぃ"っ、ぉ"ぅ"っ、ぅ"っ!!!?」

  「フーッ、フーッ!あ〜!!たまんねぇ〜!!チンポめっちゃ気持ちいい〜〜!」

  少年の頭を押さえつける手に力が篭る。ベッドに押し付けられ、布地が少年の顔を覆う。

  呼吸が出来ず、顔が赤く、青く、紫に変貌し始めても。

  兵士は腰の動きと手の力を抜く事はない。

  むしろ少年の苦悶がそのまま兵士の快楽に繋がっているようだった。

  「あ〜!あ〜!いいっ、いいっ、いいっ!ガキの処女ケツマン気持良すぎるッ!イくっ、イけっ!射精すぞッ♡処女ケツマンコにたっぷり特濃チンポ汁注いでやるッ♡」

  口の端から唾液を垂らし、少年の肛門から逸物を半分ほど抜いて。

  一気に強く激しく。腰を動かす。

  数度。腸内を突き上げられ。逸物が膨らみ。

  爆ぜる。

  どくっ、どくっ、どくっ、どくっ。

  注ぎ込まれる欲望が。少年の思考を真っ白に、真っ黒に染め上げる。

  自分の精に触れる事もそこまで頻繁に無かった少年は。その感覚にただただ絶望し、涙する。

  呼吸が出来ないという苦痛すら薄らいでいくような。

  恐怖。

  それは時間にしてどれだけだったのだろう。

  兵士は最後の一滴まで少年の中に精液を注ぎ込むと腰をぶるり、と震わせ、少年から逸物を抜き取った。

  がくがくと震える少年に。兵士はにんまりと笑い。

  立ち上がると逸物の竿部分を少年の顔に押し当てた。

  「これがテメェの処女ケツマンコ使ったチンポの味と臭いだ、よく覚えとけガキ。」

  悪辣な声と、密度のある悪臭。

  限界を超えた恐怖に、少年の意識が深い沼へと沈んでいく。

  [newpage]

  少年は死んだと思った。

  死神の笑顔が見えた気がした。

  「全く、あの野蛮な兵士どもめ。私のモルモットをここまで痛めつけおって。」

  ほんの少しだけイラついたような声だった。

  その声はしかし、傷だらけの少年を前にしたヒトの声とは到底思えない色をしていた。

  瞼が重い。全身が痛い。下腹部に不快な熱が灯っている。

  ぶぴっ、と下品な音を伴いながら無惨に破り拡げられた肛門から液体が溢れ出す。

  「息は…あるな。意識はまぁいいか。心臓が動いていればいい。」

  首筋を触るのは枯れ枝のように細い指。

  暑くもなく寒くも無い。ただ身に纏っていたはずの衣服の類は全て剥ぎ取られているようだ。

  薄く、ほんの少しだけ瞼を開く。

  自分はどうやら何かに座らされているようだ。両手両足をそれに縛り付けられている。

  そんな事しないでも、もう自分には動く力も無いのに。

  ただ死にゆくだけ。

  死ぬのか。恐怖と絶望に打ちひしがれ、激痛を与えられ、恥辱の限りを尽くされて。

  何も出来ずに、ただ死ぬのか。

  怖い。痛い。嫌だ。

  ただただ、嫌だった。怖かった。助けて欲しかった。

  混濁する意識の中で感情が渦巻く。

  腕にす、と指が触れた。それは直ぐに離れて。

  「さて、これはどうかな?」

  声の後に。

  皮膚を貫通する、針の感覚。

  ちくりとした鋭い痛み。

  「…ァ”ッ!?」

  何かが注入される。全身の血流に乗って何かが体内に入ってくると少年は瞼を一気に開いた。

  熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。

  感じていた痛みも、恐怖も。何もかも、何もかもが、その熱に飲み込まれていく。

  「ァ”ァ”ァ”ッ!!!ガァ”ァ”ァ”ッ!!!グァ”ァ”ォ”ォ”ッ!!!」

  全身の血流に乗った何かは溶けた鉄の様だった。血管が破れるのではないかと思う程の熱だった。

  少年は叫び声を上げる。部屋の中に反響した声は低く、太く、絶望に塗れている。

  視界が真っ黒に染まったと思えば次は真っ赤に染まった。

  涙が溢れ出す。鉄の臭いがする。

  血流に乗った何かが心臓に到達し、全身に行きわたる。

  ぶぢんっ、ぶぢっ、ぶぢんっ!

  「ふむ、ここまでは順調だな。」

  「ガァ”ァ”ァ”ッ!!!ゥ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッ!!!ァ”ァ”ッ、ァ”グゥ”ゥ”ィ”ィ”ィ”ッ!!!!?」

  全身の筋肉が千切れている。

  千切れた筋肉が修復されていく。その一瞬一瞬に痛みが伴い、少年はピクリとも動かせなかった全身をぬたうたせる。

  両手両足を縛る鎖が皮膚に食い込んで。その痛みが些末な痛みに感じる。

  「ァ”ァ”ッ!!!ギャァ”ァ”ァ”ァ”ッ!!!」

  ぶぢんっ、ぶぢんっ、みぢっ、みぢっ、みぢっ…

  ばつんっ!

  「――――ッ!!!!!!」

  全身が弾けた。

  真っ白な床が、真っ赤に染まった。

  それでも、それでも。少年の意識は残っていた。

  修復と崩壊を繰り返した筋肉がみるみるうちに膨らんでいく。

  気道が圧迫されんばかりに太くなる首。平坦だった胸に肉の塊。

  首に連なる肩には山が連なり始める。

  浮かび上がる血管。木の枝ほどの太さだった腕が丸太に変貌していく。

  その頃には少年は痛みを感じなくなっていた。

  熱い。ただとにかく全身が熱い。灼熱の中にいるようだった。

  乾く。渇く。

  上半身が二倍にも三倍にも膨らみ上がれば、太腿やふくらはぎ…下半身もどんどんと変貌していく。膨らみ上がっていく。

  骨が悲鳴を上げた。

  ごぎゃんっ、ごぎゃんっ、と耳を塞ぎたくなる音が響いた。

  関節が引き伸ばされ、骨が砕け、そしてやはり、肉体に耐えられるように骨が頑強さを増していく。

  皮膚が再生成されると同時に、銀色の獣毛が全身から噴き出す。

  顎が迫り出す。歯が全て抜け落ちるとその後から鋭く冷たい牙が無数に飛び出した。

  耳が膨張する肉体に飲み込まれ…代わりに大きな耳が、づるりと音を立てて頭の頂点に姿を見せる。

  ぶぢぃ、と尾てい骨が皮膚を突き破り、外部に飛び出して。

  肉と獣毛が尾てい骨を覆った。

  座らされていた椅子が体に食い込んで、酷く窮屈に感じる。

  「ガァ"ァ"ッ…!!ァ"ァ"ァ"ァ"ッ!!!」

  野太く、低い、獣の声。地獄の底から響く怨嗟の声。

  少年はその声を自分が出しているのだと、一瞬判別できない。

  「おぉ…ぉぉぉ…!素晴らしい!成功だ…!これであの脳筋どもを使う必要が無くなる、誰でも最強の兵士になる!…ふふ、ふふふはははっ…!さぁて、次は何を試そうか…」

  上機嫌な声が聞こえる。

  少年は真っ赤に染まった視界で研究者であろう男の背中を捉えた。

  憎しみも、絶望も。今は一欠片も湧かない。

  一つの欲求だけが。少年を支配していた。

  渇いた。喉が渇いた。渇いて、渇いて、何でも良い、液体を口に含みたい。

  少年は欲求のままに。

  全身に力を込める。

  両手両足を縛っていた鎖が、飴細工のように砕け散る。

  立ち上がる。全身に力が漲る。ぐっ、ぐっ、と手を握り、少年は地面を蹴った。

  その音に研究者は振り向こうとして…

  「がぴっ」

  素っ頓狂な声を。

  最期の声を上げた。

  少年の拳が研究者の頭にぶつかると、ザクロの様に頭蓋が弾け飛ぶ。

  砕けた骨の塊が壁に叩きつけられ、紅蓮の華を咲かせた。

  ゼリー状の脳漿と真紅の液体が少年の体を汚す。

  頭を失った体はヨタヨタと歪に動き。

  少年は目を見開いた。

  自分が人を殺めてしまったという事実?

  違う。

  自分の力と。そして目の前の肉の塊が、旨そうなものに見えてしまったから。

  少年は振り上げた拳を開き、研究者だったものの体を持ち上げた。

  逆さに吊るす。ボダボダと溢れ出す血液を口に流し込む。

  舌に触れるとそれは甘露。

  渇きがみるみるうちに癒えていく。

  溢れ出す血液をごくごくと飲み干して。血液が出なくなった肉塊をそのまま口に運んだ。

  膨らみ上がった全身と同様に頑強さを増した顎は、事もなげに肉塊を喰らい尽くして。

  ぼりっ、ぼりっ、ぼりっ、と骨すら噛み砕き。

  「ハァァァッ…ハァァァァッ…!!」

  少年は大きく呼吸を繰り返した。

  渇いている。少しは満ちた、癒されたがまだ足りない。

  真っ白で真っ赤な部屋。

  ここには自分以外、誰も居ない。

  誰か居ないか。肉は、血は?

  少年はまだ満たしきれていない欲求を満たすべく。

  壁に拳を振り上げた。

  轟音が耳をつんざく。壁にポッカリと穴が空いた。

  隣の部屋にも人の気配はない。あるのは無数の瓶に、血と膿と錆の臭い。

  そして大きな大きな鏡。

  「ボ…クハ…」

  そこに写る少年の姿は。

  大きな三角形の耳。迫り出したマズル。鋭い瞳に眼光。

  全身を覆う銀色の獣毛。

  影を作り、筋肉によって谷間が出来た胸。

  意識せずとも力瘤が浮かび上がる腕。

  くっきりとそれぞれの部位が把握できる腹。逆三角形の上半身。

  それらを支えるのは子供の胴体よりもなお太い太腿。

  鋭い爪が生えた足先。

  にょろにょろと蠢く尻尾。

  「ボク…ハァァァァッ!!」

  少年は。

  人狼へと変化した。

  [newpage]

  救いも、希望も。人狼には無い。

  だが、そんなもの必要無い。

  あんなに悍ましく、恐ろしかった戦場が、今ではこの世の楽園の様に思える。

  「ばっ、化け物ッ!」

  「撃てッ、撃てぇ"ぇ"ッ!!!」

  兵士達-あの時、少年を物以下のように扱った-は恐慌状態に陥りながら銃を人狼に撃ち込んだ。

  人狼は止まって見えるその弾丸をあえて避ける事はしない。

  その体で受け止める。

  ぶしっ、と皮膚が回転と摩擦で破け、僅かに紅の液体がこぼれた。

  密度の高い肉によって回転が強引に止められた弾丸。

  わずかに裂けた肉がそれ以上の速度で修復されていく。その過程で弾丸は押し出され…地面へぼとぼとと落ちていった。

  それを目の前にした人は、愕然とし、そして恐怖をかき立てられる。

  戦場において狩る者だった自分が、圧倒的弱者となり、狩られるという事実。

  「ひっ…ひっ、ひっ、ひぃっ…!」

  あるものは銃を落とし、その場にへたり込むと過呼吸状態に陥り。

  あるものは股間を濡らしながら人狼から背を向け、逃げ出そうと四つん這いではいずり回る。

  滑稽だ。滑稽で仕方ない。

  人狼は思わず笑みを浮かべた。

  兵士達にとってその笑みは、どこまで凄絶で冷酷なものだっただろうか。

  そんな事、どうでもいい。

  『食べ物』や『玩具』に寄せる感情など。

  人狼は頬を吊り上げたままだんっ、と地面を蹴った。

  ふわり、と体が中空に浮いて。全身の毛並みが抵抗を受け体に密着する。

  逃げ出そうとした兵士の体に覆いかぶさる。

  骨がひしゃげる音に、筋肉が千切れる音。

  「ぎゃぴぃ"ぃ"ぃ"っ!?ぎっ、ぃ"ぃ"ぃ"っ!?」

  奇怪な悲鳴を上げ、白目を剥きながら血の泡を噴き出す兵士に。

  人狼は腕を軽く上げ…背部に向けて振り下ろす。

  どぐんっ、どぐんっ、と肉球に伝わる鼓動。迸る真紅の噴水。

  舌に触れる甘美に酔いしれ。

  人狼は振り下ろした拳を今度は思い切り振り上げる。

  軽々と肉の塊が持ち上がった。

  深紅に染まった手に握られるのは人が、生物が生きるために必要な器官。

  貫通した肉体でびぐんっ、びぐんっ、と兵士だったものが痙攣して。

  人狼はその器官を、見せびらかすように。

  握りつぶす。

  あぁ、我慢出来ない。人狼は前菜にありつく。

  貫通した肉の塊を地面に落とし、四つ足をつくとマズルを孔へと突き刺して。

  温かいうちに。熱が残っているうちに。悲鳴が聞こえるうちに。

  貪る。貪る。

  まだこれは前菜。フルコースの始まり。

  牙で肉を切り裂き、咀嚼する。骨も砕き、とろりと溢れ出す髄液を舌先で掬う。

  人狼はギロリ、と次の肉を睨みつけた。

  前菜を貪り終えて。残骸は烏の群れにやった。

  メインディッシュの居場所は分かっている。

  臭いを覚えている。

  少年を犯したあの臭いを、人狼が忘れるはずがない。

  地の果てまでであろうとも追い詰め、そして。

  人狼は股間からづるり、と肉の塊を露出させると。真っ直ぐに臭いの方へ向かった。

  脱ぎ捨てられた防弾チョッキに帽子。銃。

  少しでも人狼の目を誤魔化そうとしている。その魂胆が見え見えであり…

  人狼はくつくつと喉を鳴らした。

  死骸の山がいくつも築き上げられて。自分が助かる為に他の兵士を犠牲にしたのだろう。

  あぁ、なんて愚かで、悍ましい生き物なのだろうか。

  くん、と鼻を動かす。

  臭いで導線が引かれているようだ。はっきりと見える。

  愚かで悍ましく…そして美味そうで…旨そうな。

  だから。

  「ミィツケタァ♥」

  [newpage]

  「助け、助けてッ、いやだっ、やめろっ、やめっ、離せッ!!」

  片手で兵士の両手を持ち、その体を宙に浮かせる。

  ジタバタと暴れ回る兵士の足がべしべしと人狼の腹を叩いても。

  痛くも痒くもない。

  人狼には及ばないものの十分立派な肉体。

  膨らんだ胸に、うっすらと脂肪がまといつつも筋が浮かぶ腹。

  下着の下には萎えていても存在感を示す逸物。

  人狼は抱いた感情に素直に従う。

  股間の部分から飛び出した肉が、ムクムクと膨らんでいくのを感じながら。

  人狼はべろりと兵士の体を舐め上げる。

  塩辛く、鉄の味。香りたつ雄のフェロモンを肺に収めながら。

  「ひっ、ひぃっ…ぃっ、ぃっ…」

  ぎぢり、と音が鳴るまで手首を締め上げる。

  股間から飛び出した肉-人狼のペニスが兵士の太腿を打つ。

  すらりとした先端。根本にぼっこりと浮かんだ瘤。

  兵士の太腿よりも太く、硬く。

  犯す相手を蹂躙し尽くし、確実に孕ませる様に作り上げられた、ある種芸術的とも言える禍々しい人狼種のペニス。

  「ぃっ、ぃ"っ…ぃ"っ、やっ…」

  少年を蹂躙した兵士と同一人物には思えない、情事を前にした処女の様なか細い声をあげる兵士。

  片方の手で兵士の腹を持ち。

  肛門にペニスを押し当てて。

  ぎぢっ。

  「ぎっ」

  づんっ♥

  「ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ッ!!?!?!?ぃ"ぃ"ぃ"げぴぃ"ぃ"ぃ"っ!?!?」

  悲鳴が心地良い。

  ぎゅうぎゅうと激しく締まり、必死に排泄しようと蠢く肛門-雄穴がペニスを刺激する。

  かなりキツく締め付けてくる雄穴へと無理矢理ペニスを突き進めていく。

  みぢみぢみぢと肉の悲鳴が聞こえる。体に伝わる。

  背筋に稲妻のような快楽が駆け抜け、人狼の脳を甘く痺れさせた。

  目尻が下がってしまう。耳がパタパタとはためき、尻尾がぶんぶんと大きく揺れる。

  まだ先端が僅かに入ったばかりである。

  これ以上奥に入れたら。愉しみで仕方ない。

  人狼は両手に力を込める。べぎばぎと心地良い音が響いて。

  ぎぢっ、ぎぢっ、ぎぢぃっ♥

  「ぃ"ぎぃ"ぃ"っ…!?ひぎっ、ぎっ、ぃ"ぅ"ぅ"っ!??!」

  太く硬いペニスが雄穴を破り拡げる。

  キツく締まった雄穴を抜けると柔らかく熱く、湿った腸壁がペニスに絡み付いて。

  「ォ"ォ"ォ"ッ…ォ"ォ"ォ"ンッ…♥」

  人狼は紅い液体混じりの唾液を垂らした。

  口があんぐりと開いてしまう。

  なんて心地良いんだ。かつて少年だった時、自分の手で慰めた事もほとんど無かった人狼にとっては想像以上の心地良さだった。

  今すぐにでも達してしまいそうだ。

  カクカクと腰が勝手に動いて。それでも両手で兵士を自らの体へと引き寄せる。

  「ギィ"ィ"ィ"ィ"ッ!!!!ぃ"ぉ"ぉ"ごぉ"ぉ"ぉ"っ!!?」

  ぎぢぎぢぎぢ、と。やがてペニスが兵士の腹越しにでも存在感を示し始める。

  もう少し、もっと、もっと奥まで。

  もどかしくも愉しく、心地良い。

  ペニスの半分程を飲み込んだあたりでどぢゅん、と先端に腸壁の曲がり角がぶつかる。

  ここが行き止まり?

  「ヵっ、ヵっ、ヵッ…」

  口から泡を吐いている兵士の顔を見ながら。人狼はいや、と首を少し振り…

  嗤う。

  ずるるるぅっ、とペニスを引き摺り出す。

  からみつく腸壁の感覚はやはり心地良い。

  熱く締め付け、汁を満遍なく付着させる。

  ペニスの先端が雄穴に到達した辺りで腰の動きを止めた。

  もちろん、終わりではない。

  「アォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ンッ!!!」

  ずぶごぐぎぢゅるぅっ♥

  「ッピィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"ッ!!?!??!?!?」

  今度は思い切り。情け容赦なく。ぶち破る。

  そして本来であれば変形しないであろう腸壁を無理矢理。こじ開ける。

  兵士は泣き叫び、奇怪な声をあげ、泡と胃の中の物を思い切り吐き出す。

  吐瀉物が不快ではあるが…今はその不快ですら心地良い。

  瘤近くまでペニスを挿入する。竿全体に絡みつく腸壁は必死に蠕動している。

  体を守るためだろうか、多量の液体が雄穴とペニスの結合部から溢れ出す。

  熱さがペニスの先端に触れ、少し腰を揺すると兵士は泡と血と言葉を吐き出して。

  腰の奥にマグマが溜まっているような感覚。

  解き放ちたい。

  ペニスの竿部分が擦り上げられるとその衝動はどんどん強くなる。

  兵士の抵抗が止み、全身から力が抜けるのを確認すると、人狼は両手で兵士の腰を掴み、腰を振り始める。

  ずがんっ、ずがんっ、と肉体同士がぶつかり合い、骨が軋む音。

  使い捨ての性処理道具を扱うような乱雑さで。両手を上下に動かし、兵士の中を蹂躙する。

  気持ちいい。雄として思うがままに腰を動かすのが、こんなに気持ちいい事だとは知らなかった。

  「ガゥゥゥッ!ゥ”ゥ”ォ”ォ”ッ、ォ”ォ”ォ”ォ”ンッ!!」

  人狼は全身の毛並みを逆立てながら唸り声を上げ、腰をガクガクと震わせる。

  多量の先走りが溢れ出し、兵士の腹がより一層膨れ上がった。

  もはや声も出せず、兵士は白目を剥き、蟹のようにぶくぶくと泡を吐く。

  締め付けが僅かに緩まった。

  それが気に入らず、人狼は片手を兵士の首へと伸ばし、太い血管を締め付ける。

  「…ォ”ァ”ッ、ぁ”ぅあぁっぃ”ぁ”ぁ”ぁ”…!!」

  そうするときゅっ、きゅっ、と締め付けを良くする。

  血管を塞ぎ、時折開放し、それを繰り返す。

  気持ちいい。気持ちいい。

  ペニス全体を扱く腸壁。襞が絡まり、根元が締まり、奥へと引きずり込まれていく。

  ぐちゃぐちゃに泡立った液体がぼとぼとと地面に落ちて、つん、と鼻を突く鋭い臭いとなって。

  「ゥ”ゥ”ゥ”ッ、ォ”ォ”ォ”ッ!!!」

  脚や腰がガクガクと痙攣する。

  びぐんっ、びぐんっ、と兵士の中に収まっているペニスが膨れ、マグマが根元に溜まっていく。

  解き放つ。その時がもうすぐ目の前に来ている。

  人狼は兵士の体を強く、強く抱きしめると。

  「ォ”ォ”ォ”ッ!アォ”ォ”ォ”ォ”ンッ!!!」

  どぶっ…どっぶっ…

  ごぶぐぶびゅるぅぅっ♥ぶぢゅっ、どぶぼごぼぉっ♥どっぶっ、どぶぶぷぅんっ♥

  ありったけの精を注ぎ込む。

  一瞬で兵士の腹と喉元まで膨らみ上がる。

  それでも精液の迸る勢いも量も衰える事は無い。

  ひたすらに純粋な欲望が兵士の中に注ぎ込まれていく。

  「おぶっ…ごぽっ…ごぼぉっ…」

  兵士は鼻と口から精液を逆流させながら、大きく数度体を痙攣させると…

  その内、動かなくなる。

  「グゥゥゥッ、フーッ、フーッ、フーッ…!!!」

  兵士だったものに精液を注ぎ込み。

  己の欲望を満たし。

  だんだんと冷たくなる兵士だったものの穴からペニスを抜き取る。

  ごぼぉ、と注いだ分だけの精液が雄穴から飛び出し、地面へと落ちて。

  ぐぅぅぅ、と間の抜けた音が腹から聞こえた。

  じゅるり、と唾液が溢れ出す。

  使い終わった『玩具』が、『食べ物』に変わる。

  それを不自然に思わない。むしろ何より自然な気がする。

  「ボク…頂キ…マ…ス♥」

  人狼は嬉しそうに呟くと、大きな大きな口を開いた。

  [newpage]

  内外からの悪評を受け続けていた傭兵たちが失踪した。

  戦場には僅かに彼らの痕跡があるだけであり、恐らく戦死した物だろうと断定された。

  狂い始めていた研究者達もまた同じように失踪していた。

  だがこちらもやはり、何かしら戦場に関わり戦死したのだろうと断定された。

  喪われた。一切合切の痕跡が喪われて。

  「今日…ハ…何…食ベ…ヨウカナ…」

  この世に居るはずの無い生き物。化け物。

  銀色の人狼は地図にも載らない名も無き森で。

  狩り、喰らい、貪る。

  獣を。森に迷い込んだ『玩具』を。

  「ミィツケタ♥」

  『食べ物』を見つけると…

  嬉しそうに。愉しそうに。

  己の欲望を満たし続ける。

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