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まいごのひーろー。

  そこまで広くない寮の部屋に、狼ヒーローが二人も居たらそりゃ狭苦しくもなるだろう。

  牙はそんな事を考えながら隣で酒の臭いをまき散らしながら豪快に笑うハウルの横で居心地悪そうにコップを傾けていた。

  食堂で食事を済ませた後、ハウルに部屋に来るよう呼び出されたのだ。

  何用かと思いつつ来てみれば、なんてことは無い。ただ呑む相手がいないから付き合ってほしいとのことだったのだ。

  というか、まだ戦いは続いている中でこんなに飲んで大丈夫なものなのか?

  「ハウルさん、その、あんまり飲み過ぎても…」

  「おぉう、分かってるぞ。これで最後だ!」

  そう言ったのは何回目か、もう数えるのを止めていた牙はふぅ、とため息を吐く。

  当然、未だ未成年の牙が飲んでいるのは酒ではない。

  ハウルは上機嫌に鼻歌を歌いながらコップを傾け、透明な液体を飲み干す。

  「ごっそさん!いやぁぁ、飲んだのんだぁ!」

  尻尾を振り、ハウルはゴロン、と狭い部屋で器用に寝転がる。

  そして頭を牙の膝に置いた。

  「ちょっ、ハウルさん!?」

  突然のハウルの行動に牙は危うくコップを落としかけながら耳をぴんっ、と立て全身の毛並みを逆立てた。

  そんな牙の様子に、ハウルはにやにやと笑った。

  「いい感じの枕だと思ったんだけどなぁ、やっぱいいわぁ!あったけぇ!がはっ、はははっ!」

  顔を酒で赤くしながらハウルは大口を開ける。そこから漂うのはこちらが酔ってしまいそうなほどの息。

  ごろん、と膝の上で寝返りを打ち、ハウルは牙の足の付け根を黒い鼻でつんつん、と突いた。

  「落ち着くなぁ。」

  「は、ハウルさん、ちょっと酔い過ぎじゃ…」

  「そうかもなぁ!」

  牙の言葉もどこ吹く風か。ハウルは耳を畳み幸せそうに目を細めた。

  まったく、と苦笑しながら牙はその表情に心を揺らす。

  少しの時間。知られてはいけない、ヒーローの安らかな時間。

  その中で、微睡み、揺蕩う。

  「なぁ、牙。」

  「はい?」

  「…お前、俺に言う事、無いか?」

  牙が視線を降ろすと、膝の上で目を細めていたハウルと目が合う。

  その表情はとても真剣で、真っ直ぐで。思わず瞳を逸らしてしまいそうになるほどだった。

  「言う事…無いですよ?」

  ハウルの問いかけに牙は笑って返す。

  その言葉に、ハウルは納得していないように牙には見えた。

  「…そか」

  しかしハウルはそれ以上何も言わず、体を起こした。そして牙の隣に座る。

  

  

  『貴方は、本当に、貴方なのですか?』

  

  

  本部に戻ってきたときも、食堂にいる時も、他のヒーローと話している時も。

  いつもと何も変わらないように周りには見えているのだろう。

  誰も、何も言わない。

  しかし、ハウルは牙に対して、何か違和感を抱いていた。

  言葉に出来ない、違和感。いつもと同じなのに、何かが違うような気がする。

  そう思い、ハウルはこうして牙を部屋に呼んでいた。

  無防備な姿を曝せば、その違和感の正体が分かるのではないだろうか。そう思い。久しぶりに酒を呑んだ。

  もし牙が未成年でなかったら確実に飲ませていただろう。

  「牙よぉ。お前、そろそろ成人だよなぁ?」

  「はい。」

  「そしたらさぁ、俺とどっか飲みに行こうぜぇ。…その頃にはきっと、戦いも終わってっからよぉ!」

  その言葉に。

  牙が笑う。

  その表情に、仕草。ハウルは見逃さなかった。

  ハウルは瞬間、牙の肩を抱き寄せ、ぐっ、と強く。強く抱きしめた。

  「なっ…」

  突然の出来事に、牙は目を白黒させ、戸惑うような表情を浮かべる。

  ハウルは酒臭い息を吐きながら自分のマズルを牙の首にこすりつけた。

  「お前よぉ、何年俺と戦ってるよ。俺はお前を信じてる。お前は俺を信じらんねぇか?」

  「なんでも…」

  「なんでも無かったら、そんな表情しないだろ、お前は。…全部見抜いてる、って言いてぇけど、流石にそりゃ無理だ。ただよ、なんかとんでもなく突拍子もない事考えてるように見えてよ。」

  

  

  

  『貴方の名前は?本当に…』

  

  

  

  牙はハウルの一言に。表情を僅かに曇らせた。

  見抜かれている。彼には隠し切れないのか。この揺らぎを。

  「…すんません。俺、話したいこと、ありました。いいですか。」

  「おうよ。話せ話せ!何聞いたって俺は驚きもしねぇよ!」

  ハウルのまっすぐな言葉が、瞳が。牙を貫いて。

  あぁ、この人なら話しても、いいだろう。このつまらない話を。

  こんなもので悩み、消えてしまいそうな自分の弱さを。

  [newpage]

  

  

  それはいつもの日々の中で。一人のヴィランを捕らえた時から始まった。

  そのヴィランは、特段特別な力を持っている訳では無い。戦闘能力も下手をしたら戦闘員よりも低いだろう。

  だが、確実にこちらの戦力をそぎ落としてきた脅威だった。

  棄てられた基地の中に、ただ一人でいたヴィラン。山羊の頭に、蛇の尾。キメラ、と言った方が正しいのだろうか。

  彼は牙たちがここに乗り込んできた時も。捕らえられた時も。今も。笑っている。

  静かに、不気味に。楽しそうに、不快に。

  「何がおかしい。」

  牙は不機嫌な声色でキメラのヴィランに問いかけた。

  ヴィランはそれに怯える事も、怯むこともない。ただ首をゆっくり振り、にこにこと笑っている。

  「いえ。まさか私ごときに貴方のような素晴らしいヒーローが来て下さるとは思いもしていなかったので。ビーストブラック。いえ。黒川牙さん。」

  ヴィランの間でも、おそらく牙は要注意とされているのだろう。しかし、自分の本名を知る者はいなかったはずだ。

  素性がバレれば、自分だけでなく周りにも危険が及んでしまう。

  「…なぜ知ってる。」

  「ふふ、なんででしょうね。あぁ、大丈夫ですよ。私以外、貴方の本名を知っている人はいませんから。」

  自分の考えが見抜かれているように。

  キメラのヴィランは笑いながら答える。そう。全てを見透かしたような、そんな瞳で牙を見つめながら

  牙は歯を食い縛るとヴィランの胸元を掴み上げた。

  ぎりっ、と締め上げる。

  「答えろ。何故知っている…!」

  怒気を孕んだその声。だがしかし。

  キメラは笑うだけだ。例え口の端から血を噴出したとしても。

  「ふふっ…ふふふっ…いい表情ですね。大好きですよ、その困惑した顔。一番見たいもの…がふっ…!」

  「答えなきゃ殺す。答えろ。」

  「嫌です。ふふっ、いいですよ、殺してください。」

  とことん牙の神経を逆撫でするヴィランだ。自分が殺されないと思っているのだろうか。

  そう思い牙は手に力を籠める。が。その時に気が付いた。

  こいつは、本当に殺されてもいいと思っている。殺されるとも思っている。その瞬間すら楽しもうとしている。

  瞳の奥からキメラは笑っているのだ。虚勢でも、何でもない。ゲームで遊ぶ子供のように。

  ぞくり、と背筋が凍りかけた。底知れぬ、言いようのない不気味さ。

  牙は手を離した。許したわけでは無い。殺してはいけないと考えたからではない。

  恐怖。力を持たないキメラに対して覚えた底知れぬ恐怖。

  「げほっ、げほっ。いいのですか?殺さないで。」

  キメラは口から血を吐き、冷静に牙に尋ねる。

  牙は首をふるふると横に振り、彼に背を向けた。危険な行為かもしれないが、キメラを直視することが出来なかったのだ。

  「…お前にはまだ死なれちゃ困るんだよ。」

  「そうですか。ふふふっ、まだ楽しめるという事ですね。貴方との会話を。」

  「俺にそのつもりはない。殺されたくなかったら黙ってろ。」

  端的に言い放つ牙。だが。

  キメラは笑う。

  「私は死を恐れるように造られていませんので。喋らせていただきますね。」

  気に食わない。と同時に。

  不気味で、仕方が無いと、牙は思う。

  「ずっとあなたに会いたくて私はここに居たのですから。ねぇ、《黒川 牙》さん?」

  含みのある言葉。牙は何も答えない。

  キメラは同じ調子で、不気味に続ける。

  「幼い頃、家族を殺され、自分自身も死の淵に立った。体を改造され、ヴィランへとされる前に脱走。…孤高のヒーロー。」

  「…何が言いたい…!」

  「貴方は…本当に、《黒川 牙》ですか?」

  振り向く牙。その目の前にはキメラ。瞳をのぞき込み、こちらの心を見透かすように。

  虚空がそこには存在し、ただただ牙を見つめる。

  「俺はっ…俺だっ…!それ以外の…何者でも…」

  「ただ記憶を移されただけだとしたら?」

  「…ッ!?」

  「貴方が黒川牙であることを証明できる人なんて、もはやこの世に存在しません。貴方は、本当に、貴方ですか?」

  何も言う事が出来ない。

  出来ない事の証明なぞ、出来ない。自分を知る家族は、もう居ない。

  あの時。

  溢れ出した温い涙。鉄の味がする涙に沈んでいく感触が思い出された。

  温くて、冷たくて、熱くて、苦しくて、怖くて、寒くて。

  憶えている。自分が、確かに、死ぬ瞬間。その時に自分はヴィランとして改造…

  「本当に?」

  「ハッ…ハァッ…ハッ…」

  心臓の鼓動が早くなる。嫌な汗が噴き出す。

  絡みつきそうなほど近付くキメラ。牙の瞳をただ見つめている。それだけなのに。

  「黒川牙。それは、本当に、貴方の名前なのでしょうか?もしかしたら、私と同じ。造られた、空っぽの存在。それに液体を注がれただけなのではないでしょうか?」

  そんなはずはない。自分は…

  「貴方の本当の名前は?教えてください。ねぇ?」

  「俺は…!」

  言葉が続かない。自分自身が、分からない。

  もし造られた存在で。《黒川牙》があの時、死んでいるとしたら。

  自分はいったい、なんなんだ?

  造られた、名もなきヴィランの出来損ない。

  自分自身が、ヴィラン?最も憎むべき?

  殺されるべき?…ならば、《敵》が居なくなった時。

  「《黒川 牙》さん?」

  キメラのヴィランは、にこにこと笑ったまま。

  牙の心に爪を少し突き立てた。そして、ぐりぐりと抉るように。

  砂の山を少しずつ崩していくように。

  何も言えない。呼吸だけが早まり、手が震える。

  見つめる手には、何もついていない。なのに、血の臭いがする。

  見えないものが見える。あの時、血の池に沈んだ、《黒川牙》。そして、その家族。

  自分は…

  

  「貴方は。誰ですか?」

  [newpage]

  

  

  気が付けば。牙は大粒の涙を流しながら自分自身の体を抱きしめ、震えていた。

  まるで迷子になってしまった子供のように。

  「俺…わかんなくなったんです…俺、なんだろうって。何者なんだって。ヒーローじゃない。ヒーローのふりをしているだけの、ヴィランなんじゃないかって。あのキメラが言うみたいに、俺はもう、俺じゃなくって…そしたら…俺、この戦いが終わったら…皆の敵になるんじゃないかって…世界を壊してしまうんじゃないかって…自分が分かんないんです…」

  ぼろぼろと零れるのは、本当に《黒川牙》の物なのか。それすらも。

  ハウルは無言のまま。

  震える牙を優しく、だが力強く、確かに抱きしめた。

  「…少なくともよ、俺が出会ってからのお前は牙だよ。弱きを助ける、ヒーロー。俺も助けられた。」

  「…でもっ…俺…!」

  「仮にお前が造られたヴィランだったとしてもさ。さっきも言ったろ?俺はお前を信じてる。本物の《黒川牙》じゃなかったとしても、ここにいる牙を信じてる。それじゃ、駄目か?」

  牙の頭を軽くなで、ハウルはいつもとは違う、とても優しい笑みを浮かべていた。

  慈しむように。

  「あ…」

  「俺を信じてくれよ。大丈夫。お前は、俺の知ってる黒川牙だ。お前がヴィランだ、って言われても、俺はお前と一緒に居てやる。止めてやる。それでいいんじゃねぇか?」

  染み込んでいく。ハウルの言葉が。不安と恐怖に満ちていた心に。

  牙に。

  確かにここに居る。黒川 牙に。

  「で、俺が死にそうになったり、あん時みたいに堕ちかけたらよ…また助けてくれよ。な?」

  「…はいっ…!」

  ぎゅう、と互いを抱きしめ合い…自分自身の存在を確認する。

  ハウルの胸の中で、牙は耳を畳んだ。そして。

  「その…ハウルさん。我が儘、言っていいですか?」

  「いいぞ。俺も付き合ってもらった訳だし。」

  「俺の事…その…抱いてくれませんか?」

  牙の突拍子もない言葉に、ハウルはぶふっ、と吹きだす。

  「なっ、おま、何言ってんだ!?」

  「そ、その、話聞いてもらったら安心しちゃったのと…ちゃんと俺、ここに居たんだ、って証明してほしくて…その、すんません、変な事言って。嫌だったらいいんです…」

  驚いた表情のハウルはやがてその顔を笑顔で崩し、優しく牙を抱き上げた。

  「分かった。いいぞ、やってやる。」

  優しく、ついばむようなキスを交わして。ハウルは牙をベッドの上に寝かせた。そして自らの下半身を露出させた。

  雄の臭いが立ち込め、二人を昂らせる。

  牙も着ていた衣服を少しずつ脱ぎ始め…下着一枚になる。膨らんだ股間。

  そこでハウルはあっ、と何かを思い出したようにつぶやいた。

  「…牙。その、なんだ。俺…初めてだ。」

  「えっ」

  「いや、あのだな。捕まってた時もずっと犯されっぱなしで、俺から誰かを抱いた事って…無いんだよ。だから、その、上手く出来るか分からん。」

  恥ずかしそうに言葉を紡ぐハウル。その言葉を聞いてから改めてハウルの肉棒を牙は見つめてみる。

  黒ずんではいるが…確かに、あまり使っていないのだろう。彼の雄穴からは考えられないほど綺麗なものだ。

  気が抜けて…牙はくすり、と笑う。

  「わ、笑うなよ!悪かったな、童貞で!そうだよ!ほぼ童貞だよ!!」

  顔を真っ赤にしながらハウルはわめいた。

  普段の彼からは考えられないほど子供っぽくて、愛らしくて。

  「笑うなぁ!ってかむしろ俺の初めて持ってくことを光栄に思え!ってかお前はどうなんだよ!」

  「俺ですか?…秘密です。」

  牙は人差し指を立てて、自分の鼻の頭に当てる。秘密にした方が楽しい。

  そう思った、牙のちょっとしたイタズラである。

  ぎりぎりと歯を食いしばるが…ハウルはすぐにふっ、と笑った。

  「ま、どっちでもいいや。とりあえず…その、よろしく。」

  「えぇ。」

  ハウルは頭を軽く下げると、早速牙の両の太腿を掴み、くい、と持ち上げた。

  引き締まった尻。その谷間に見える雄穴は、くぱくぱと蠢きながらとろとろと液体を零している。

  「…なぁ、俺、こんな感じだったのか?」

  「あ…えぇっと…その…」

  前にハウルを救出した時は正直こんなものでは無かったのだが…ハウルのテンションを顧みるに、それは言わない方が良さそうだ。

  牙は言葉を濁し…ハウルは首をぶんぶんと振った。

  「いや、もう忘れる!いい!あん時からむしろ良く立ち直った俺!」

  「そ、そうです!は、早くハウルさんの初めて下さい!」

  ハウルの大きな声につられ、牙も大きな声を出す。

  そしてハウルは大きく息を吐くと牙の雄穴に肉棒を宛がった。

  ごく、と唾液を飲み込み。

  「よ、よし。入れるぞ!」

  「は、はい!」

  ハウルはふぅっ、ともう一度息を吐き、ゆっくりと牙の雄穴へ肉棒を挿入していく。

  ずぶずぶ、と音が肉棒から腰を抜けて、耳に届く。

  柔らかい。暖かい。しかし抵抗もある。それを無理矢理押し込んでいく。

  「おっ…おぉぉ…?んんっ…」

  肉棒を優しく、柔らかく締め付ける腸壁の感触にハウルは心地よさそうな表情を浮かべ、ずぶずぶとどんどん肉棒を沈めていく。

  腹に感じるハウルの欲望。牙は嬉しそうな笑みを浮かべ、下腹部をゆっくり撫でた。

  自身の肉体越しに感じる肉棒はとても熱い。

  突き進め、牙に全身を預ける。ハウルの肉棒は…すべて、牙の中に納まった。

  「ハウルさんの初めて…熱くて、でかくて…気持ちいいです…♪」

  耳を動かし、牙は心の底から嬉しそうに呟いた。その声が届き、ハウルは口の端から飲み込み切れなかった唾液を垂らし、頷く。

  「お…俺も気持ちいい。…その、すまん。駄目だ、俺、加減とか出来なさそうだ。」

  「いいですよ…ハウルさんのしたいようにして…」

  「おう…」

  ハウルは牙の唇を奪う。がっぷりと貪り。舌を口腔内に侵入させ、じゅるじゅると音を立てる。

  手を握り、指を絡ませ。ハウルは牙に体重を載せたまま腰を乱雑に振り始めた。

  「んっ、んぶぅっ、んふっ…!」

  「フゥゥッ…ゥゥ…!ンンッ…!」

  ギシギシっ、とベッドが軋み。バツンバツンと肉同士がぶつかる。

  ハウルの睾丸が牙の尻を叩き、どくどくと中で精液を次々に生産していく。

  熱い。

  肉棒全体を包む腸壁がその動きを活発にし、ハウルの肉棒を吸い上げ始める。それは挿入した時よりもはるかに激しく。

  ハウルの肉棒が震える。脈動する。先走りを溢れさせ、どんどん膨らんでいく。

  先程言った通り。ハウルは加減できないことを自身で悟り、それならば、と。

  牙の中で己の欲望を思うままにはじけさせる。

  腰を乱雑に振り、自らが快楽を貪るように。

  体重を載せ、唇を離し、牙の首筋に自らの尖った牙を突き立てる。

  「ぶはっ、ハウルさ…あぶぅぁっ…!」

  牙の切羽詰まった言葉を遮る。軽く血のついた口を離し、また牙の唇を奪う。

  間近で見えるハウルの目は血走り、狂気すら感じた。

  ぞくり、と背中に走るのは、恐怖か、それとも。

  「ぶはぁっ…ハァッ…!ハァッ…!」

  「は、ハウル…さ…あっ…んぐぁっ…!」

  今のハウルは、ただの獣だ。自らが快楽を貪り、相手がどうなろうと関係のない。

  牙の中をかき混ぜ、腸壁を、前立腺を抉り、雄穴を捲り上げる。

  普段の彼からは考えられないほど野蛮で、凶暴で。だが。

  「ハァッ…牙ッ…!牙ァッ…!」

  唾液をだらだらと零し、牙を犯す彼の眼に、確かに牙は映っている。牙しか映っていない。

  それが牙には嬉しい。腹の中を掻き回されるのが、心地よくてたまらない。

  確かにここに居る。

  「ハウルさんッ…もっとっ…もっとっ!!」

  ハウルの手を強く、強く握り。牙は懇願する。

  もっと滅茶苦茶に。もっと激しく。

  それに応えるように。ハウルは更に腰を振る。

  グロテスクな肉棒が、腸液に塗れて。

  ハウルはグゥゥゥゥ!と激しく唸り、腰を痙攣させる。絶頂が近い。

  牙の中でハウルの肉棒が跳ねた。

  「ハウルさんッ…中に全部…種っ…!下さいッ…!!」

  宙に浮く両脚。それに尻尾をハウルに絡めて。

  甘えるような、ねだるような声。それにハウルは限界を迎えた。

  「グォッ…ォォォォ!!!」

  ずがんっと肉同士がぶつかったとは思えないほどの音が鳴り響き、ハウルは遠吠えを上げた。

  そして。

  「あっ…んぁぁぁぁぁ!!」

  体内を充たしていくハウルの欲望に、牙は甘く声を上げた。

  注ぎ込まれる精液はとても濃く、熱い。牙の中を灼き。

  牙は目じりを下げ、瞳を潤ませながらハウルの背中に爪を立て、肩に牙を突き立てる。

  ハウルは精液を全て注ぎ込むべく、更に体を押し付けて。

  ただひたすらに唸りながら、牙の中を蹂躙していく。

  「あっ、あぐぁっ!種っ…すごっ…あっ、あうぁぁぁぁ!!」

  「フッゥゥゥゥ!ゥゥゥゥ!!」

  ずちゅずちゅと射精を続ける肉棒を動かし、更に奥へ奥へと突き進んでいく。

  牙の下腹部が僅かに膨らんだ。

  互いの体が壊れてしまうのではないかと思うほど強く強く抱きしめ合い。

  実感する。

  ここに居ると。

  ようやく射精を終えたハウル。自分を取り戻したのか、やがてその表情をバツの悪いものにしていた。

  「す、すまん…その、気持ち良すぎて訳わからなくなった…その、痛かった…よな?」

  「大丈夫…です…むしろ…俺も…気持ち良くて…」

  息も絶え絶えに、牙は答え。だがしかし腹を撫で、未だ萎えていないハウルの肉棒を確かめる。

  「ハウルさんの種…一杯来ました…俺の中…熱くて…ふわふわしてて…もっと…欲しいです…」

  「…いいのか?」

  「…はい。」

  牙が頷くと。ハウルは今度はゆっくりと腰を動かした。

  そして指を離し、牙の勃起した肉棒へと手を伸ばす。

  「今度は…ゆっくり…な。お前も…出来るだけ気持ちよくさせてやる。」

  先走りで濡れた肉棒をにちょにちょと扱くと。牙の肉棒は素直に反応する。

  それが嬉しくて。ハウルは腰を動かしながら手も同時に動かして。

  牙の雄穴から肉棒が引き抜かれるたびに、精液が溢れ出してベッドを濡らす。

  卑猥で、淫靡な臭い。

  「ありがとう…ございまっ…あぅぁっ…!」

  肉棒を使った行為をしたことが無くとも、性経験は豊富なハウルだ。

  牙の肉棒の雁首を軽く捩じり、睾丸を摘み、裏筋を撫で上げる。

  こりこり、と亀頭を撫でまわせば。

  牙はどぼびゅるっ、と精液を噴出した。

  べっとりとハウルの手を汚して。ハウルはそれを自らの口に運び、飲み込む。

  「んぐっ…んっ…はぁっ…」

  真っ白に濡れた腹部が。

  腹の中を充たす精液が。

  この熱が。快楽が。ハウルの噛み跡が。

  ここにいる。と。

  「もっと…してください…」

  ねだるように、囁いて。ハウルは頷く。

  二人の夜は、終わらない。

  夜が終わっても。

  二人は、終わらない。

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