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_獣人。潔も存在くらいは知っている、人間と獣の中間のような生き物。とても希少な生物で、野生個体は滅多に見られないという。
しかし、それらは人間に近い見た目をしているだけの"動物"であり、生物の授業で一瞬出てくる程度の知名度。潔もそのような認識だった。
そんな生き物である、獣人。蜂楽は自身のことを、その獣人と人間のハーフだと言う。
「…え…?獣人って、あの…人間っぽい動物のことだよな?」
「うん。それそれ~」
「…いや、獣人と人間のハーフって…そんなことありえるのかよ?」
流石に冗談かと思い潔はそう言ったが、蜂楽はあくまでも真剣な様子だ。潔は戸惑った。いくら人間に近いとはいえ、人間が動物との間に子供を持てるものなのか。
考え込んだ潔に対し、蜂楽は自身の腕や足を見せた。
「ほら、獣人ってほど獣っぽくもないし~。かといって完全な人間でもないでしょ?」
「まぁ、そうだけど…でも…」
確かに不思議ではある。普通の人間ならまず飛び越えられない高さの柵を平然と飛び越える。人間離れした跳躍力、瞬発力、素早さ。そしてなにより、手足の特徴。
「にゃはっ♪そんなに考えなくても、簡単に言えばちょっと動物っぽい人間ってこと!」
「…蜂楽は、気にしてないのかよ?ほら、生活面での支障とかさ…!」
「…うーん?特に気にしたことない!」
潔の困惑や心配を全て吹き飛ばすような能天気発言には、流石の潔も理解を諦めた。
そんな潔を見て、蜂楽はやはり楽しそうに立ち上がった。
「うん、やっぱり君面白いねっ!これからもよろしく、潔!」
「…お、おう…(友達認定早くね…?)」
「ほらっ、握手!いぇーい♪」
あっという間に、潔は蜂楽に友達認定されてしまった。勢いの強い握手で手首を痛めそうになりながら、潔もつられて笑う。
この"謎獣人"蜂楽廻は、平凡で刺激の少なかった潔の日常に、突然現れた愉快で不思議な友人だった。
「…でさ、蜂楽は結局何の獣人とのハーフなんだ?」
「んにゃ?獣人は獣人だけど」
「いや、獣人にも色々ある…らしいぞ。ほら」
しばらく話していると、潔はいつの間にか蜂楽の存在にもある程度慣れていた。せっかくならと獣人について調べてみると、"獣人"という括りの中にも様々な種族がいるらしい。
猫や犬、狼、狐…現在観測されている種類だけでも様々な獣人がいるようだ。
「ふーん?聞いたことないなぁ…優に聞いてみよっと!」
「優?」
「あぁ、俺のお母さん!」
蜂楽は自身の種族名を知らないらしい。今まで聞いたこともなく、特に疑問も感じずに生活してきたと言った。
「へぇ…まぁ、そういうものなのか?」
「まぁね~、普通に人間として生活してるし。特に考えたこともなかった!」
清々しいほどの能天気発言を聞きながらも、潔はどこか引っ掛かるままでいた。その日はいつの間にか夕方になり、帰る時間になっていた。
「じゃあね~、潔!また会お!」
「ああ、またな」
連絡先を交換し、帰り道の途中で解散した。潔は帰り道も、ずっと同じことを考えていた。
(獣人…一体、どんな生き物なんだ?)
結局、その日の潔のスマホの検索履歴は、"獣人"で埋め尽くされることになった。
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「やっほー潔!今日も一緒に帰ろ~!」
「…またいんのかよ!」
次の日。いつも通り帰宅しようとした潔を、また蜂楽が待ち伏せしていた。サッカー部の活動終わりのため、もうすっかり夕方だ。
「昨日連絡先交換しただろ…そっちで話せばよくね?」
「あ、そうだった!まぁいいじゃん?ほら、これあげるっ!」
「うおっ!って…ジュース?」
蜂楽は悪戯っぽく笑いながら、潔に缶ジュースを放り投げた。よく見ると、蜂楽も同じものを飲んでいる。
「ほら、これでも飲みながら一緒に帰ろーよ!」
「お、おう…ありがと…」
本当に変なやつだ、と思いながらも、潔は蜂楽と共に帰ることになった。
「でさ~、昨日の話なんだけど。やっぱり俺が何の獣人とのハーフなのかは分からなかった!」
「え、お前の母さんも分からなかったのか?」
帰り道、蜂楽に呑気にそう報告され、潔は素直に驚いた。
「そうなんだよ~、俺が生まれたときも検査とかしたらしいけど分からなかったんだって」
そんなことあるのか?と潔は疑問に思ったが、蜂楽が冗談を言っているとは思えない。実際、蜂楽の体の特徴を見ても、潔には検討もつかない。
つまり、かなり珍しい動物の獣人という可能性と、何かの雑種であるという可能性がある。
「一つ分かったのはね~、猫科っぽいらしいってこと!」
「猫科…っぽいって、確定じゃないのかよ」
「うーん、分かんない!」
そう言って、蜂楽は楽しそうに笑った。やっぱり不思議なやつだと、潔は思った。
「…知りたいとか思わないのか?ほら、自分の血液型とかわからなかったら気になるみたいなさ」
潔の口から出た、なんとなくの一言だった。特に深い考えはない。
しかし、その言葉を聞いた蜂楽は突然足を止めた。つられて潔も足を止めると、蜂楽の顔を覗いた。すると、蜂楽はなぜかその瞬間、ものすごく真剣な顔で呟いた。
「…確かに」
「……え?」
次の瞬間、潔は突然蜂楽に強く肩を掴まれ、思わずよろめいた。蜂楽の目は、先程とは違いキラキラと輝いているように見える。未知の物を見つけた子供のようだ。
「知りたい!!誰も知らない俺の種族!ねぇ、潔も知りたいと思わない?」
「え…そ、そりゃ気になるけどさ…」
「じゃあ探そーよ!!ほら、そうと決まったら早速情報収集だー!」
「おい!どこ行くんだよ、夕方だぞ!?」
…と荒ぶる蜂楽を潔がなんとか止め、2人は再び帰路についた。
「探すにしても休日だろ?」
「うーん、そうだ!来週から夏休みじゃん!ね、一緒に探そ?」
蜂楽と出会ってまだ3日目の潔でも、蜂楽は一度火がついたら誰も止められない性格だろうと察していた。それに、獣人について調べていく中で、潔も獣人に興味を持ち始めているのは確かだ。
結局、部活や学業に支障がない範囲で、潔は蜂楽のルーツ探しを手伝うことを承諾した。
「…ただし、課題はちゃんとやれよ?」
「わかったー!」
「…ほんとにわかってるのか…?」
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蜂楽と潔が歩く夕方の帰り道。背後から2人を覗く2つの影があった。
「………」
「…おい、どうした?」
立ち止まり2人を見つめる青年に、もう1人の青年が声をかける。2人を見つめる白髪の青年は、気だるげな話し方で呟いた。
「…あいつ、獣人っぽい」
「あの黄色いのが?見た目は人間っぽいけどな」
「そうだね。人間っぽいけど、なんか変」
白髪の青年がそう言うと、紫髪の青年は不思議そうに2人を見た。どう見ても、ただの男子高校生だ。
しかし、こいつが言うならそうなのかもしれない、と興味を持った。"獣人"にしかわからない、獣人の特徴があるのかもしれないからだ。
紫髪の青年はそう言いながら、白髪の青年の尻尾を軽く触った。白髪の青年は少し気になりつつも、嫌がる素振りはない。
「ほら、帰るぞ凪。ばあやが迎えに来てる」
「…そうだね、玲王」
「あいつらのことは、また調べよーぜ。案外俺たちと同じ、"相棒"なのかもな」
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