「ハーハッハッハ!! すごい! すごいぞ!! やはり私は天才マッドサイエンティストだったか!! くぅー!! 早く、早くこれを誰かに試したい!! 誰か、誰か実験台になるやつはいないのかー!」
「博士~、お昼ご飯の時間ですよ~!」
発狂博士が自分の発明したアイテムに愉悦していると、人間の体をベースにネコ化したような半人半獣の助手がご飯を運んで来た。しかし、シッポは生えていない。
「おお、ちょうどいいところに来てくれたね、助手君。早速、君に試してもらいたいものがある」
「ウッ……何だかすごく嫌な予感……」
「善は急げビーム!!!」
「全然善じゃな゛ぁぁあぁあぁぁいに゛ゃぁあああぁぁあぁぁー!!!」
博士は今まさに完成した特殊な光線銃の銃口を助手に向け、怪光線を助手に浴びせた。
「あ、あれ? 何ともない……失敗作?」
「ふふっ、それはどうかな?」
「よく考えたら失敗作の方が、体がおかしなことになってしまうにゃ……」
助手の体が熱に侵されたように熱くなってきた。
「うぅ……熱い……うにゃっ!?」
助手の股間にあるはずのないものが現れた。
「この感覚……チ、チンポにゃ!? 博士、またTSもの作ったのかにゃ?」
「ノンノン、これはTSものじゃない。自分の体をよく見てみるといい」
「もぉー、そんなに女の子の体を弄んじゃダメにゃ……。はぁ!? にゃ、にゃんじゃこりゃあぁぁぁ!!!」
助手が白衣をめくり上げると、股間に何かよくわからないものができていた。股間の皮膚が伸びて肥大化している。そして、その新たに形成された皮膚は何か顔のようなものに形が変わっていっている。股間にできた顔はまるで動物のウシだった。
「股間に……ウシの顔ができてる……双頭にするにしても股間に顔を作るだにゃんて趣味が悪すぎ……」
「ノンノン! これは双頭にする銃じゃない」
博士はニヤリと笑みを浮かべる。何をされたかわからない助手は早くこの変身が終わることを心から願った。
「はぁはぁ……はにゃ!? あ、足が何か変……」
助手の下半身が変化し始めた。足の指がくっついていき、蹄のような形になる。しかし、蹄の向きが前後逆である。
「あぁっ! もう立っていられにゃい!」
助手は仰向けに倒れてしまった。下半身がまるで上半身のように変化していく。助手は今、半身半獣の上半身とウシの上半身をくっつけたような異様な姿になっていた。
「うぅ……にゃんだか眠たくなってきた……」
助手がそう言うと、顔全体が皮膚に覆われ、腕の付き方が背腹逆転した。逆転した腕はムキムキに肉が増し、太ももような形に変化した。そして、手の指はくっつき、蹄となった。
「モォォォ~~!」
助手の顔が皮膚に覆われた瞬間、股間にできたウシの顔が鳴き始めた。おっぱいが体の逆方向に移動し、乳首が伸びた。さらに、おっぱいが一つに癒合しながら、もう一対長い乳首が生えてきた。元々顔だった部分が体に吸収されていくと、髪の毛が一ヶ所に収束し、ウシのシッポのようになった。
「おぉー! 大成功だ! 人を動物に変える光線! わざわざ薬を飲まさなくていいので、今まで以上に簡単かつ大量に人間を動物に変えることができる! ふははは! これで動物が減ってしまっても人間をその動物に変えたらいいだけなので、絶滅を回避できるな! くぅー!! 素晴らしい! 自分の才能が怖いよ、助手君!!! あ、助手君はウシに変身させたんだった。変身中は記憶がなくなるから、目の前のウシにいろいろ解説しても無意味だな……」
「モオォォォー」
「まぁ、光線はそのうち効果が消えるから、放置しててもいいとして……何でUDTF(upside down transformation)……腕脚反転するのかは謎だな。普通に獣化させたいのだが、今は研究費が無い。とりあえずこの光線を使って金を稼がなければ……」
博士は助手が元に戻るまで、どうやって研究費を集めようか一人で唸りながら考えていた。
「はにゃ……ひどい目にあった……」
「お、完全に元に戻ったね。早速だが、助手君に頼みたいことがある」
「助手使い荒くないですか!?」
「まぁまぁ、これが成功すればがっぽり儲けられるはずだから。助手君の給料も弾むよ~~」
「ここは冷静になるにゃ。今まで成功した試しがない……」
「ハハハ。実験に失敗はつきものだ」
「失敗ばかりしてるからお金がないにゃ……」
「こほん。君には以前キメラを飼っていた敷地に、人間を集客して欲しい。今、あの場所は空き地になっている。檻は十分にあるから、その集めた人間達を動物に変えて動物園を作ろうではないか!」
「動物を直接捕まえてきた方が早くにゃいですか?」
「何を言う!! そんなことをしたら、せっかくの発明品を使う機会がないじゃないか!」
博士は助手に激昂した。
「おっと失礼。取り乱してしまった。とにかく、どんな手を使ってでもいいから、人間を空き地に集めるのだ!!」
「分かりましたにゃ……」
助手は博士に無茶ぶりをされたが、これも仕事と思って頑張ることにした。
「うおー! なんかすごいところ来たなぁ。すっげぇ山奥だ」
健太(けんた)がバスの外を見て、興奮した面持ちで言った。健太はサッカー部で体力には自信がある。筋肉は結構付いている。
「健太はいつまでも子供ね。もうすぐ大学生になるっていうのに」
やれやれといった感じで言うのは、幼馴染みの杏美(あずみ)だ。杏美は弓道部で、弓裁きには自信がある。細身の体だ。
「うるせー、杏美! いつまでも子供心を持っている奴の方が人生楽しいに決まってるし!」
二人はやいやい言い合ってバトルしている。
「あの二人、本当に仲良いよね」
二人の言い合いを微笑ましく見ているのは、陽向(ひなた)。杏美と仲が良い女友達だ。陽向は美術部で絵を描くのが得意。少しふっくらした体形をしている。
「あはは、そうだね」
同じく、二人を見て笑っているのは時雄(ときお)。健太と仲が良い男友達だ。時雄も陽向と同じく美術部で絵を描くのが得意。ちょっと肥満気味だ。
この4人は高校でよく一緒につるんでいた。
「健太ー、あんまりはしゃぎ過ぎるなよー!」
「せんせー、こんな時まで俺に注意するのは無しだぜ!」
教師が健太をいじって、クラス全体で笑いが起きた。健太達はつい先日、高校を卒業した。しかし、卒業する前に、教師が参加した研修会でスポンサーをしていた団体の福引で当たりが出て、クラス全員をオープンする前の動物園に特別ご招待する券をもらったのだ。この券を見せて、卒業前にクラスメンバーで旅行に行きたいか?と教師が聞いたところ、クラスの生徒全員が「行く!」と答えたので、卒業後にそのオープン前の動物園に行くことになったのだ。
「それにしても本当に山奥ですね。確かに車道は通っていますが……」
教師は運転手に話し掛けた。
「ええ、山奥だからこそ、普段と違う体験ができるのです。ハハッ。おっと失礼しました。楽しみにしていて下さい」
運転手は発狂博士だった。博士は実験材料もとい、動物園の動物素材がたくさん手に入ったので、喜びに満ち溢れていた。
「はい、到着しました。それでは中にお入り下さい」
一行を乗せたバスは元キメラ収容場に到着した。ざわざわとバスから降りるクラスメイト達。新たにオープンするという割には、入口の門が古びている。
「これが新しい動物園……?」
健太は素直な感想を口にした。
「こら! 動物園の人が目の前にいるのに、そんなことを言わないの!」
杏美は慌てて健太に注意した。
「ハハハッ。気にしないで下さい。そういう仕様なんですよ。さあさあ、門の中へ」
博士は取り繕って対応している。
――ガシャン
一行が門の中に入ると、門は自動で閉まってしまった。
何人かのクラスメイトが不安そうに門を見たが、博士は気にされないように一行をより中へと誘導した。
「なんか、動物園というより、お化け屋敷みたいだね」
陽向が少し怖がりながら、時雄に言った。
「うん……確かにそうだね。でもこの雰囲気、漫画を描くのに活かすことができそう」
「あー、いいね! その考え方。そう考えると、私も怖くなくなってきたかも」
陽向と時雄は動物園をあちこち見渡して、この雰囲気を観察した。
「それにしても……オープン前にしては、動物の気配が無いわよね。結構敷地内に入ってきたけど」
杏美が気になることを呟いた。
「そう言えばそうだな」
健太も周囲を見渡すが、やはり動物の気配が無い。これは一体どういうことなのだろうか?
「はい、みなさーん、あちらの檻を見て下さい。中にとても珍しい動物が入っています」
博士は一行が疑問を持ち始めたところで、一つの檻に注目させた。全員の注目がそちらに集まる。
「え? 何あれ? 髪の毛生えてる……」
「人間……ぽいけど違う……」
「ケ、ケモノだ……ケモノは実在したんだ!!」
一行は初めて見る動物に口々に感想を言い合う。彼らが見た動物とは……助手だった。博士は予め檻の中に半人半獣の助手を入れて、一行の興味を惹き付けようと考えていたのだ。
「檻の中の気分はあんまりよくなかった……お前らもこの気分を味わうがいいにゃ。ポチっとな」
全裸、四つ足姿勢で待機させられていた助手はスクっと立ち上がり、持っていたボタンを押した。
「しゃべった!?」
「立ち上がった!?」
「ボタン押した!?」
どう見ても人じゃない何かが思わぬ行動を取ったので、一行は驚愕した。そして、急に頭上が暗くなった。
「え?」
――ガシャーン
逃げる時間もなく、一行は全員、空から落ちてきた鉄の檻の中に捕まった。
「え? えぇ? 何これ?」
「ど、どういうこと?」
「こういうアトラクション?」
皆突然大きな檻の中に閉じ込められて混乱している。
「にゃはは~! 見事に全員捕まえた! 簡単過ぎてやりがいがなかったにゃ」
檻に入っていた助手が普通に扉を開けて外に出てきた。
「え? 出て来た……」
「あたし達捕まったの?」
「うほっ! ケモッ娘可愛い!!」
様々な言葉が飛び交う。
「せんせー、これ一体どういうこと?」
健太が教師に聞いた。
「わ、私にもわかりません……」
教師も驚いた表情をしていた。
「……。なぁ、なんだこれ? 説明しろよ! スタッフの人!」
健太が檻の鉄柱を手で引っ張ったがビクともしない。
「ハーハッハ! 威勢がいい人ですね。嫌いじゃないですよ。そうですね、まだちゃんと名乗っていませんでしたね。私は発狂博士。天才マッドサイエンティストです。こちらは助~~~手。私がキメラ化させた元人間です」
「はぁ? 意味分かんねぇ、ここから出せよ!」
健太が檻の柵を叩いて抗議する。
「ノンノン。威勢がいい人は好きですが、脳筋は嫌いです。檻の中を見渡してみて下さい。どこに扉があるというのです? 出すことは不可能です」
博士は健太に檻の中を見渡すように促した。釣られて全員が檻の中を見渡す。扉らしいものが全く見付からない……。
「分かりましたか? クレーンなどで檻を引き上げない限り、自力で出ることはできません」
「嘘だろ……」
健太はようやく状況を理解した。
「この動物園には動物が入っていなかったのを皆さん、見て来ましたよね。それは何故か……くぅー!! ハッハッハー! お前らが動物になるからだあぁぁぁぁー!!! 助手君!!」
「はぁーい! ポチっとな」
助手が再び何かのボタンを押した。すると、檻の外から檻の中に向かって、レーザーのようなものが全方向から発射された。一行は誰もそのレーザーから逃れることはできなかった。
「きゃあぁぁぁぁぁ……って、あれ???」
檻の中の皆は叫び声を上げたが、特に痛くも痒くもない。
「あれ……? 何ともない……?」
杏美は自分の体を見回したが、特に変化はなかった。
「あ、あれ? 失敗? 失敗しちゃった? 助手君?」
博士は動揺した顔で助手の方を見る。
「えーっと、おかしいなぁ、そんなはずは……」
助手は焦った顔でボタンをあちこち調べている。
「ったく、脅かしやがって、おい! ここから出せ!」
健太は檻の柵を叩くが、全くビクともしない。
「くそっ……どうしたら……ん?」
健太は股間に違和感を抱いた。イチモツが大きくなっている。ちょうど勃起したような感じでズボンが膨らんでいる。しかし、こんな状況で興奮する要素なんて全く無いはず……。
「な、なんで……」
健太は突然勃起し始めたイチモツに赤面し、誰にも見られたくないと思って股間を抑えた。しかし、健太の意に反してイチモツはどんどん大きくなっていく。何か変だ。ただの勃起ではない。
「なんだこれ? え? どうしたら? えぇ?」
健太は恥ずかしさと混乱で、泣きそうになった。
「何だよ、おい止まれよ!!」
しかし、健太のイチモツは大きくなり続ける。既に勃起の範疇は超え、服にギチギチに締め付けられる。おかしいおかしいおかしい。股間が苦しい。このままだと服を突き破ってしまう。
「あぁっ……」
ちょっとした解放感ととともに、健太のイチモツはとうとうパンツもズボンも突き破ってしまった。そして、露わになった健太のイチモツだが……異形の一言でしか表現できない。健太のイチモツの先端には、ダチョウの顔が付いていた。
「は? はあぁぁぁぁぁぁぁ?????」
恥ずかしいという気持ちより、何で自分のイチモツがダチョウの顔になっているのか、という疑問で頭が埋め尽くされる。しかし、この異常現象は健太だけではなかった。周りからたくさんの悲鳴が聞こえてくる。健太は周りを見てみた。すると、男子は服を突き破ったイチモツの先端に様々な動物の顔を宿していた。
「え、えぇー!? 何これ? 何これ?」
普段温厚な時雄も流石に混乱している。時雄のイチモツの先端には、キリンの顔が付いていた。その衝撃的な光景を目の当たりにした陽向は、異常過ぎる光景に理解できず、そのまま失神してしまいそうになった。
しかし、この異様な状況は気を失うことすら許さない。男子のイチモツの先端に動物の顔が現れたことにワンテンポ遅れて、女子の体にも異変が起きてきた。
「ふえぇぇ、ふえぇぇぇー!?」
体の異常に混乱し過ぎて、陽向は擬音語しか出てこない。股間が熱いと思ったら、アソコの割れ目の内側が伸びてきて、少し感じてしまったと思ったら、簡単にパンティーを突き破り、まるで男がイチモツを勃起させた状態みたいに、スカートをめくり上げていく。
「はぁ? はぁぁぁぁぁ???」
杏美も同じ状況で、あまりにも理解できない体の変化に、同じ言葉を繰り返し吐いている。クラスメイトの女子全員が同じ状況だった。
「い、いやあぁぁぁぁぁ!!! 何これ何これ何これ!!! や、やめて、こっち見ないでえぇぇぇぇぇー!!!」
女子達は泣き叫ぶ。しかし、クラス全体が同じ状況で、どうしても視界に入ってしまう。
「こんなのもうお嫁に行けないいいいい」
陽向はまだちゃんとした恋愛をしたことがなく、突然股間に生えたカンガルーの頭に絶望した。
「夢、夢……だよね……あは、あははは……」
杏美の股間にはサメの頭が生えていた。普段は気の強い杏美だが、衝撃が強過ぎて、心が壊れかけている。
自分だけじゃないと知って、健太は少し安堵した。しかし、これ以上クラスメイトの悲劇を見ていられないと思って柵の外に目を移す。すると、さっきまでいたはずの博士と助手の姿が消えており、代わりに三脚を立てたビデオカメラが置かれていた。
「はぁ? 撮られてる? 俺ら撮られてるぞ!!」
健太が大きな声を出すと、クラス全員が外を見た。檻の周囲を何個も何十個もビデオカメラが取り囲んでいた。クラスメイトを見ないように檻の外側を向くと、自分の顔が映されてしまう。自分の顔がビデオカメラに映らないように内側を向くと、クラスメイトが視界に入る。下を向いているしかない。かなり悪趣味な状況だった。
その頃、博士と助手は事務所の中に入っていた。
「博士~、何であんな気持ち悪い変身、ビデオに撮るんですか?」
「ハーハッハッハ!! 聞いて驚き給え。こういうのを見ると興奮する人達がいるのですよ! また、ホラー映画の素材としても高く売れる」
「……。いろいろ趣味悪いですにゃ……そう言えば、光線止めちゃってもよかったの?」
「ハッーハッハ! ご心配なく! さっきの大規模なものは最大出力状態の演出で、実は今も目に見えないほどの小規模な出力で檻の中を照射し続けている!」
「悪趣味……マッドですにゃ……」
「ハハハ! そう! そうさ! これぞ、マッド!! 助手君、これから忙しくなるから、今のうちに休んでおき給え」
「はーい!」
何だかんだ言って、二人は楽しそうだった。
視点は戻って檻の中。悲劇はまだ序の口に過ぎない。
「せんせー! どうにかならな……チッ、ダメだ……」
健太は大人に助けを求めようとしたが、教師は股間からウサギの頭を生やし、放心状態で立っていた。
皆が同じ状況なので、健太は少し冷静になれた。もし自分だけの現象だったらと考えるとおぞましい。この不可解な現象は、もうどうすることもできないのか? できない。外から誰かがこの檻を上げてくれるまで、自分達は助からない。
「こ、今度は何? か、体が大きく……嫌ッ、やめて、やあめてえええぇぇぇー!!!」
女子の叫び声が一際大きくなる。何事かと健太が顔を上げると、女子の体が膨らんでいた。
「お母さん、怖い、怖いよぉぉぉ!! うえぇぇぇーん!!」
陽向は自分の膨れていく体に恐怖して泣きじゃくっていた。着ていた服が全部悲鳴を上げる。膨らむ体に服が食い込み、苦しい。
「あっ……」
締め付けられる苦しみから解放されたと思うと、服がボロボロに千切れて落ちた。陽向の豊満なムネが露出する。その光景を見た何人かの男子は、こんな状況であるにも関わらず、思わずニヤリとしてしまった。股間には動物の顔が直立しており、勃起しても分からない。
「お、おい! 見るな! 陽向さんを見るな!」
時雄はとっさに陽向の前に出て、これ以上、彼女が周囲の好意の目に晒されないように背中で防いだ。しかし、防ぐまでは良かったが、向かい合う形になってしまったことで、陽向の股間に生えたカンガルーの口と、時雄の股間に生えたキリンの口がキスする形で触れ合ってしまった。元々性器だったこともあり、二人は股間の動物が触れ合って、お互いにビクンと感じてしまった。
「あっ……」
「イヤアァァァァァ!!!!!」
時雄は恥ずかしさが頂点になった陽向に、全力で顔をビンタされた。火事場の馬鹿力を発揮した陽向のビンタに、時雄は叩き飛ばされ、気を失った。しかし、これから起きるさらなる悲劇のことを考えれば、この時、時雄が気を失ったことは幸運だったのかもしれない。
女子全員の服が破れ去って全裸になったと同時に、男子も同様に体が膨らみ始め、着ていた服が全部破れ落ちてしまった。
「はぁ……はぁ……くそっ……くそおぉぉっ!!!」
健太はこの最悪な状況に悪態をつく。しかし、状況は変わらない。一旦膨らんだ体が何故か元に戻った。
「熱っ……」
体が熱い。特に下半身が熱い。そう感じて下半身に目を向けると、下半身のあちこちに鳥の羽が生えていた。
「うわあぁぁぁっ!」
足の指が癒合し、鳥の手羽先のような形状に変化すると、とても立っていられなくなり、健太はその場に尻もちをついた。下半身がダチョウの上半身のように変化していく。
「なんだよ、なんだよもぉぉー!!」
抗えない変身。流石に健太も目から涙を流してしまった。肩がむくむくと膨らみ、顔がその中に埋もれていく。腕から先がダチョウの足のように変化する。そして、骨格が逆転し、下半身のダチョウがより明確に姿を現す。
「あ、あぁ……」
体の熱さと変化する気持ち悪さはあるものの、意識が遠退き始め、不思議な心地良さに包まれる。健太の顔が体の中に埋もれていき、羽で覆われる。顔であった場所はプリッとしたお尻になり、イチモツだったダチョウの顔が目を覚ます。
「クケーッ!!!」
もう完全に健太の意識は残っていない。健太はUDTFして、ただのダチョウになってしまった。
キリン、シカ、ゾウ、ウサギ……男子はどんどん動物に意識を乗っ取られていく。
その様子を女子達は見ていて恐怖した。自分達もああなってしまうのかと。
「嫌ぁぁァァァ!!! 嫌あぁあぁぁぁ!!!」
杏美は完全に心が壊れてしまった。こんな恐怖を見せつけられて、正常でいられる方がおかしい。足は胸鰭に変化してしまい、もう立つことはできない。サメの体がじわじわと杏美の体を侵食していく……。
「あぅ……くすん……いろいろまだ描きたいものがあったのに……」
陽向の乳房がお腹側から背中側に逆転し、顔や髪の毛がカンガルーのシッポに飲まれていく……。
杏子も陽向も心が恐怖でいっぱいになっていたが、ある程度のUDTF段階を迎えると、不思議と心地良くなってきた。ほわほわとした気分の中で意識が薄れていく……そして、完全に意識が途切れると、股間にあった顔が目を覚まし活動を始める。皆同じような状況で、人から動物に変化していく……。
「ハーハッハ! 大収穫だ! よし、動物が手に入ったから早速、明日、この動物園を開くぞ! 助手君、ここからが忙しくなるぞ!! 先に水中動物を水の中に入れるんだ!」
クラス一行がただの動物に慣れ果ててしまった時、博士と助手の二人は扉に見えない柵のボタンを押して、柵の中に入った。
「全く、博士は助手使いが荒いにゃ……」
「ほれ、つべこべ言わない! 町に洗脳電波も流さないといけないだろう?」
「はぁーい。うっ、このサメ、重ッ」
博士と助手は大急ぎで、動物達をそれぞれ違う檻や水槽にぶち込んでいった。
翌日。早速洗脳電波を町に送り、町の人々にこの動物園に来るように仕向けた。
「博士、何もこんな回りくどいことしなくても、町行く人を襲って財布を強奪すればお金はすぐ集められるのに」
「ノンノン! それは犯罪じゃないか」
「どの口が言っているのかにゃ?」
「こほん。そんな大逸れたことをすると、特殊警察に気付かれる恐れがある。特殊警察は超能力者を集めた集団で、目を付けられると非常に厄介だ。どんなに撒いてもしつこく捕まえようと追い掛けて来る。そうなったら不安でベッドで眠れやしない。もし捕まったらありとあらゆる手で拷問されるんだ。ひぃぃー、考えるだけで恐ろしい……」
「どの口が言っているのかにゃ?」
「ま、とにかく、町の人々をこの動物園に呼んで、ちゃんと動物園で楽しい思い出を作ってもらいつつ、金を落としてもらう。これなら人々の意識的にも楽しい思い出しか残らない。つまり、特殊警察にも気付かれずにお金を集められるって寸法さ」
「……そんな上手くいくのかなぁ……」
助手は博士の行動や言動に不安を抱きつつも、博士の言う事には逆らえないので、やるしかない。
「お、言っている傍からバスが来たようだぞ。早速お迎えに行かなければ! 助手君、行くよ!」
「はぁーい!」
二人は早速開園の準備をした。
「ふぅー、順調、順調。お金もイイ感じに集まってる。UDTF中はレーザー浴びせておけば餌も必要なく動いてくれる。レーザーは客に当たっても体が変化しない光量だから、人間とバレることはない! ハッハー! まさにマッド! 自分の才能が怖すぎるぜ……」
「毎日毎日そのテンションでよくやれるにゃ」
「何か言ったか?」
「何でもないです」
洗脳電波が上手く風に乗ったみたいで、動物園は超満員だった。チュロス1本5000円と一般価格の10倍にしてもお客さんは疑問を抱かずに支払ってくれる。
「ふぅ、順調過ぎて怖いぜ。しかし、動物園はある程度お金が集まったらすぐにやめるぞ。長期間やると特殊警察に気付かれる恐れがあるからな。短期間でたんまり稼ぐ。痕跡を残さずとっとと逃げる! これがベストだ!」
「言ってることもやってることも最低にゃ」
二人は事務所でくつろぎながら監視カメラを見ていた。受付も販売店も適当に洗脳した町の人達にやってもらっているので、労力もかからない。既に売り上げは500万に到達しようとしていた。
「半日で500万だから一日で1000万いくかな。10日もやれば1億になる。それだけ集めれば、しばらくはマッドな研究に没頭できそうだ」
博士はウキウキ気分だった。
「そんな順調にいくかなぁ」
助手は不安な面持ちだった。
場所は変わって園内。家族連れが楽しく動物達を見ていた。
その時、遠くの方で轟音が鳴った。ここは晴れているが、町の方が暗い。町の方で雷が落ちたようだった。
「あれ? お父さん、キリンさんの様子がおかしいよ?」
「え? どれど……れ……?」
子供に指摘されて父親がキリンを見てみると、確かにキリンの様子がおかしかった。ビクビクと痙攣している。一体どうしたのかとキリンを見ていると、ペニスから尿を出した。ただのおしっこかと見ていたら、ペニスに目のようなものが生えてきている。
「ん? んん?」
さらに見ていると、目のようなものの上に毛が生えてきた。ペニスに生えた目はキョロキョロとあたりを見回し、父親とも目線があった。
「ぐへぁっ」
再びキリンがおしっこをしたかと思うと、呻き声のようなものを発した。そして、キリンのペニスはそのまま人の顔のように変形していく……。
父親は衝撃的な出来事に、口をあんぐり開けて呆然としてしまった。
「お父さん! ねぇ、あれ何? あれ何?」
「さ、さあ……」
まだ物心が付く前の子供は、純粋に目の前の異変の説明を求めるが、父親は答えを返すことができない。同様の変化は動物園内各地で生じていた。
――ギュイーンギュイーン
まったりしていた事務所に突如警戒音が鳴り響く。
「デンキガフソクシテイマス。システムダウンヲオコナイマス」
機械的な音声が流れ、事務室の電源が落ちた。
「え? いきなり何?」
余裕をぶっこいていた博士も流石にこれは想定外。
「あちゃー、町の方で雷が落ちて、停電になっているみたい。ここの電源も町から拝借しているから、供給が止まってしまったようだにゃぁ……」
「ちょっと待って! それじゃあ、レーザーも洗脳電波も止まるじゃない!」
「そうですね……」
二人は嫌な予感がして、窓の外を見てみると、檻の中で動物に変えた人間が次々と元の姿に戻りかけていた。
「こいつはヤバい……ずらかろう! 助手君、今のうちに集めたお金を受付から奪ってきて!」
「全く、逃げる時の判断は恐ろしく早いにゃ……」
二人はバタバタして、あっという間に動物園から去って行った。
UDTFさせられた一行と、洗脳が解けた観光客が残され、動物園はあちこちで悲鳴が上がるカオスな現場となった。
「きゃあぁぁぁぁぁ!! 動物の股間から人間の顔が!!!」
観光客は異形過ぎるその動物達の姿に恐怖した。しかし、中にはそれを面白がる猛者がいて、写真や動画はすぐにSNSにアップ・拡散され、この動物園の存在が急速に広まった。
「ゲホッ、ゲホッ、僕は一体……」
陽向にビンタされて気絶した時雄が意識を取り戻した。なんだか地上が遠い……。
「えっ?」
ぼんやりとした意識がハッキリすると、下半身がキリンの頭になっていた。
「うわああああぁぁぁー!」
「きゃあぁぁぁぁぁー!!」
驚く時雄。それを見て絶叫する観光客。
そう言えば、檻に入れられ、体がおかしなことになっていたことを時雄は思い出した。
「うっ、何か出る」
キリンの口から白濁した体液が出た。すると、キリンの顔が曖昧になって、人間のイチモツのような形状になる。時雄のイチモツはその後も連続して射精し続け、そのたびに体が人間に近付いていく。蹄が分かれて指となり、骨格が逆に曲がって前足が人間の足になり、背中にあった乳首が腹側に移動し、全身の毛が体の中に吸収され、体が小さくなっていく……。
「はぁ……はぁ……も、戻った……」
時雄はレーザーが止まったことで、人間に戻ることができた。しかし、全裸だ。着るものもない。それを大衆が見ていて、動画や写真を撮っている人もいる。人間に戻ったら戻ったで泣きそうだった。
一方、水槽に入れられた杏美はもっと大変なことになっていた。サメと化した杏美は、スリットから肉が出てきて、だんだん人間の顔に戻っていく。
「ンあ゛……ごぼぼぼ、がぼぼぼぼ」
水中で人間の意識を取り戻したので、いきなり溺れてしまうことになった。
サメの股間から急に人間の顔が現れたのを見て、ビックリした子供がその場で失禁して泣いてしまった。
「ごぼぼぼがぼぼぼ……っはぁー、はぁはぁ……生きてる……」
杏美は必死でサメの顔を振り、サメの体から生えてきた腕で何とか水槽の縁にしがみついた。なんとか息が吸えた。上に上がりたいが、下半身がサメの頭になっているので難しい。
「アァァァンッ!」
杏美は下半身がどうなっているのか分からないが、おしっこが出る感覚がして声を漏らしてしまった。サメの口から愛液が吐き出されると、顔の形を失いながら、杏美の股間の方へ縮んでいく。胸鰭が5本の指に分かれ、細くなりながら伸びていき、人間の足に変わる。背中にできた乳首がぐるっと反転して乳房を膨らませながら、胸の位置に戻った。人間の体に戻ったことで、水中から上がることができた。しかし、全裸だ。服も破れてしまっている。どうしたらいいものか……。
「君は被害者だな。まずはタオルで体を隠せ」
「え?」
頭上から人の声がして、振り向くとバスタオルが落ちて来た。
「私は特殊警察。君達の見方だ。SNSで事情を知り、すぐに駆け付けた。後のことは我々に任せ給え」
「は、はい……」
事情がよく分からない杏美だったが、特殊警察と名乗った人物は素早く動いてどこかに行ってしまった。結果として、クラス一行は特殊警察に助けられ、この事件は膜を閉じた。
数ヶ月後。
「あーくそっ! 気分が悪い……」
健太はあれからダチョウのお尻になる夢を時々見るようになり、悩まされていた。
「そこのお兄さん、ちょっとちょっと」
「あん?」
いかにも占い師という格好の美人の女性が健太を手招きした。
「あなた、動物になる夢を見てうなされているでしょう?」
「な! なんでそれを……」
「目を見れば分かります。私はその悪夢から解放させてあげることができますよ」
「ほ、本当か!?」
「ええ。これも何かの縁です。特別に安く診てあげましょう。どうぞ中へ……ハハッ……」
健太は占い師に導かれて、怪しい部屋の中に入っていく。その女性が発狂博士とも知らずに……。