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🥛基本の味🥛
🍳キャラ崩壊
🍳オリ設定
🍳口調迷子
«隠し味»
🥚ヒヨコが好きに味付け。
🥚皆実さんがいつもの様にぶっ壊れております。
m(_ _)m«ホットケーキにする都合上、味付けが変わっているかもしれませんので当初の味をお求めの方は食堂にお立ち寄り下さい。
(アレンジしている事がございます。)
以下、メニュー表でございます。
それではどうぞ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
📕メニュー📕
・ミカンの小瓶
・薔薇のソーダ
・トマトスープ
・ラズベリージャム
[newpage]
[chapter:ミカンの小瓶]
🧆基本の味🧆
・オリ設定
・口調迷子
・キャラ崩壊
【🥨隠し味🥨】
・皆実さんがマスター兼審神者
・ちょっとだけ小さい頃の皆実さんの話を煮込んでみたかったので煮込んでおります。
✪出会った順✪
夢の中→薬研
最初に召喚した→ジキルとハイド
m(_ _)m‹【こんな感じですがよろしければどうぞ】
[newpage]
[chapter:紫陽花の夢]
【最悪だ…。
…ゴホッ…。】
身体が嫌にダルいなと思い、近くにあった体温計で測ってみると熱があると読み上げられた。
【ゴホッ…。
護道さんに連絡しないと…。】
“プルルッ”
『どうしました、皆実さん?』
【がぜびぎばじだので、じばらぐおやずみざぜてぐだじゃい。】
(喉まで痛み始めたか…。)
『分かりました、お大事に。』
【ありがどうございばず。】
掠れた声で礼を言い、電話を切った。
意識がグルグル回り出した…。
動くのですら億劫になって来た。
【夜になるまでに時間…あるな…。】
(…寝れば治る…。)
また夜になれば血みどろになるのだから。
それまでには回復しないと…。
ー最初の夢ー
【誰か…助けて!!】
壊れ行く視界の中、虚空に手を伸ばし叫んだ。
火の勢いは凄まじく、眼球と身体を少しずつ焼き始める。
熱さと煙に絡め取られ、その場に倒れた。
口だけは動き、再度呟く。
【…誰か…助けて…。】と。
助けなんて来ないのに紡がれる言葉はそれだけだった。
嗚呼…意識すらも炎に飲まれて行く…。
意識を手放し掛けたその時だった、グイッと誰かに手を引っ張られた。
「こっちだよ、広見!!」と私の手を引っ張りながら声の主は言った。
(…だれ…?)
壊れかけの視界に映ったのは、優しそうなお兄ちゃんだった。
「野次馬と人が多くて迂回して来たんだ…。
ごめんね、遅くなって。」
お兄ちゃんは私を抱き締めた。
すると、後ろから[とっと走れや、クソジキル!!]と口の悪いお兄ちゃんの声がした。
「子供の前でクソとか言うな!!」
[ハッ、それは悪ぅござんしたぁ〜。
邪魔だ!!]
口の悪いお兄ちゃんは倒れてくる物を投げ飛ばしながら、優しそうなお兄ちゃんは私を抱えて走り、私達は窓に辿り着いた。
そして、なんの迷いも無く窓から飛び降りた。
“ボンッ!!”
飛び降りた瞬間、家は崩れぐちゃぐちゃになった。
「いてて…。
広見、大丈夫かい?」
【…(コクッ)…。】
微かな意識の中、私は頷いた。
[…間に合って良かった…。]
二人の声と救急隊員の声が私の耳に届いた。
「弟の事、よろしくお願いします。」
[俺らは無事だぜ?
“一応、来い”って?仕方ねぇな…。]
二人のお兄ちゃんも救急車に乗せられた。
そこで意識と視界を手放した。
次に目を覚ましたら真っ暗だった。
何も見えず、ただ暗闇が広がっていた。
【…にぃにぃ達、どこ…?】
助けてくれた二人の事を“兄”と呼び、手探りで探していた。
シーツの感触が手に来るが、私の欲しい物ではない。
(…探さないと…。)
フラつく身体を起こし、探しに行こうとした時“ガラッ”と病室の扉が開く音がした。
[…起きたのか、広見。]
口の悪いお兄ちゃんが声を掛けてくれた。
その後ろから、優しそうなお兄ちゃんの声がした。
「ハイド、勝手に病室抜け出すんじゃないよ…。
って、起きたんだね、広見。」
二人のお兄ちゃんの声が病室に響く。
その声に安心して【おにぃちゃ…。】と泣きかけた時、二人の手が私の頭を撫でてくれた。
「此処にお兄ちゃん達は居るから、安心して寝ようね。」
[そうそう。
俺らも側で寝っからさ。]
【…うん…。】
二人の声に安心した私は気を失った。
その後、正式に私の隣に兄達が寝ることになった。
[newpage]
[chapter:ー二番目の夢ー]
【…もう一人、兄が居る気がする…。
探すの手伝って…。】
病室でこっそりと話せば、ジキル兄さんとハイド兄さんがそれぞれ声を上げた。
なんで“もう一人、兄が居る”と思ったかは分からないがそんな気がする。
突拍子も無い話ではあるが、兄達は聞いてくれるらしい。
[どんな奴だ?]
「どんな子だい?」
【背が高くて白い肌をした子…。
…時々、背が低なったりしてた…。】
「ふむふむ…。
場所は分かる?」
【…多分、家…。】
私の回答を聞いたハイド兄さんが渋い声で言葉を編んだ。
[家ってなると、現場検証してるんだろうな…。]
編まれた言葉の上にジキル兄さんが更に言葉を編んだ。
「現場検証されているとなると、簡単には入れないね…。」
【…だとしても“兄さん”が待っているから、入らないと…。】
私は二人の編まれた言葉の糸を切り、自分の言葉を編んだ。
すると、ジキル兄さんとハイド兄さんが同時に言葉を転がした。
「だったら“悪い子”になれば良い。」
[だな。]
二人の編まれた言葉に首を傾げているとジキル兄さんが言った。
「此処を抜け出せば良い。」
[んで“もう一人のお兄ちゃん”とやらを探せば良い。
傷は痛むが広見の願いを叶えるにはそれしかねぇな。
あと、何時までも病室に居んのも飽きた。]
【…本当に手伝ってくれるの…?】
「うん。
僕も病室に居るの飽きちゃった…。
看護婦さんがシーツくれたの覚えてる?」
ジキル兄さんの問いに私達は“コクッ”と頷いた。
「それを改造して、服にしよう。
深夜になった瞬間に脱走。
良いね?」
[異議無し。]
【うん。】
[んじゃ、決定。
寢んぞ。]
-そう言い、それぞれ夢の世界に旅立った。
そして、決行の日を迎えた-
ー決行の日ー
病院が寝静まった深夜、そっと窓から三人で飛び出した。
夜の風が気持ち良かったが、今は感じている時間は無い。
“病院から抜け出した”のがバレれたら怒られる。
世間は火事のニュースで持ち切りだ。
当事者の子供が居るとなれば確実に根掘り葉掘り聞かれるだろう。
もしくは、言われもない事を言われるに違いない。
だから、早めに行って兄を探さないと。
“夢の中”でしか会ったことが無いあの子を見つけないと…。
目が見えずとも家の位置は分かる。
【…あっち…。】
小さい身体で二人の兄を引っ張り、歩いた。
急ぐ気持ちから何度か転び掛けたが、それでも二人を引っ張るのは辞めなかった。
[ちょっ、転ぶ…!!]
「落ち着いて、広見。」
兄達を引っ張りながら言った。
【早く行かないと…。
あの子が居なくなっちゃう!!】
そんなこんなんで辿り着いた、元・我が家。
煙と焼けた物の匂いが鼻を付いた。
【…見つけなきゃ…。】
足を踏み入れようとしたした時だった、ジキル兄さんが私を抱きかかえ、物陰へと隠れてしまった。
「…人が来る。
此処で待機。」
ハイド兄さんが頷く音が聞こえた。
[チッ…。
ご苦労なこって…なんか、調べてやがる。]
「検証でしょ。
なんで燃えたとかの…。
証拠品を持って行こうとしてる…?」
物陰から状況を確認するジキル兄さんの声の中に何かを怪しむ声が滲んでいた。
-現場検証に来た刑事が金目の物を持ち出そうとしているのがジキルの目に映った。
その頃、皆実の耳に懐かしい声が届いた。
夢の中で会い、遊んでくれた人の声だった-
❛俺は此処だ…。
刑事に捕まって動けん…助けてくれ。
俺を捕まえているのは片手に警棒を持ってる奴だ…。❜
-その声を聞いた瞬間、忘れていた名前が皆実の口から転がり落ちた-
【“薬研兄さん”の声だ…。】
“グキギッ”
ジキル兄さんの腕をなんとか抜けようと藻掻いた。
“ズルッ”
なんとか腕から抜け出した。
するとジキル兄さんが小声で言った。
「ちょ…広見、目が見えないんだから僕達にその“兄”の特徴言ってからぬけてよ…。
転んで怪我したらどうすんの?」
【そんなの今はどうでも良い。
警棒を持った刑事に近付いて…。】
「分かった。」
[なら、俺はお前の影に入るわ。
万が一、戦闘になっても良いようにな。]
「戦闘って…まぁ、良いか。
広見は僕の服の中に隠れて。」
-皆実が服の中に隠れたのを確認したジキルは何も知らない風を装い、物陰から出た-
“ガサッ”
«あん、誰だ?»
-物陰の音に警棒を持った男が振り向いた。
しっかりとその手に警棒を握り締めて-
「すみません…。
道に迷ってしまって…。」
-ジキルは優しく刑事に聞いた-
«何処に行きたいんだ?»
-刑事は乱暴な口調ながらもジキルに道を聞いた。
道を聞きつつもジキルの目は刑事が持っている刀を見つめる。
服の中に隠れている皆実の肩に指文字を書き問う-
❛鞘に彼岸花の絵が付いていて、桜の飾り付いてる?”
“うん。”
-皆実はジキルの手に答えを書いた-
“桜と彼岸花が付いているんだ、薬研兄さん。”
❛ありがとう。”
「道を教えて頂き、ありがとうございました。
もう一つ、良いですか?」
«あんだよ、こっちは火事の現場検証で忙しいんだよ。»
-乱暴な口調が更に荒くなった。
足音が苛立ちを象徴する様に音を刻む-
「すみません、忘れ物をしたのを思い出しまして。
忘れ物が見つかったら帰ります。」
«忘れ物だぁ?
なんだよ、その忘れ物って?»
-ジキルは刑事が持っている刀を指差した-
「その刀です。」
«はぁ?
これは証拠品だから、渡さねぇぞ!!»
-刑事は声を荒らげ、警棒を振り回した-
「おっとと…。
危ないですね。」
(ハイド、広見を影に落として。)
[了解。]
-ハイドはそっと皆実を影に落とした。
ジキルに気付かれない様に戦闘をハイドは開始した-
「広見に戦う所は見せられないからね。
ハイドは広見を見てて…。」
[はいはい。]
-ジキルはハイド達を撫でると刑事の方を見て、言った-
「刑事なのになんで、証拠を持って行こうとしているのですか?
しかも金目の物と刀。」
-ジキルの問いに刑事は“フンッ”と鼻を鳴らしながら答えた-
«金目の物は売る。
これは俺の持ち物にするからに決まってんだろ?»
「その刀には持ち主が居るのに?」
«けっ。
持ち主たって病院で寝てんだろ!?
検証が終わったら“証拠品は全部燃えて何も残っていませんでした”って書けば良いんだよ!!»
-刑事は警棒を振り回しながら答えた。
ジキルは警棒をクルクルと回る様に避けた-
「ただの玩具の刀にそこまでやれるって…。」
-ジキルは刑事の懐に回り込み、腹を一発殴った。
刑事の腹に衝撃が走った-
«ぐふっ…!!
ただの玩具の刀…!?»
「凄いですね。」
-ジキルは倒れた刑事の手から刀を抜き取り、見せた-
「ほら、玩具。」
«嘘だろ…!?
(俺が見た時は立派な刀だったぞ!?)»
-刑事が見たのはいかにも“玩具”ですという雰囲気を漂わせた玩具の刀だった-
「ね、玩具でしょ?」
«チッ…!!»
-刑事は立ち上がると見せかけ片足を一回させ、ジキルの足を蹴った-
「っ!!」
-蹴りは避けたがズボンが斬られてしまった。
ズボンの裾から血が滲む-
(靴底に刃物が付いてるのか…!!)
«金目の物なら、いっぱいある。
出て来い、お前ら!!»
-刑事の声に反応し別の物陰から半グレ達が出て来た。
声高に刑事は言った-
«コイツを消しちまえ。
俺は刑事だから、捏造ならいくらでも出来る!!»
-それを聞いた半グレ達は歓喜の声を上げ、ジキルを囲んだ。
半グレの一人のナイフがジキルを斬ろうと襲い掛かった-
“キンッ!!”
[無事か、ジキル。]
-半グレのナイフはハイドのナイフが防いだ。
ハイドは自分の服の裾を切り、ジキルの切られた足の個所を結んだ-
「ありがとう…助かった。」
-ジキルはハイドに礼を言うとナイフを抜刀し、立ち上がった-
«一人、増えたって変わらん!
消せ消せ!»
-半グレ達と刑事が一斉に二人を囲み、襲い掛かって来た。
二人は半グレ達と刑事の攻撃を避けつつ、互いに防御した。
が、多勢にたったの二人では戦力に差があった。
結果は目に見える程に明らかだった-
「はぁ…はぁ…!」
[っ…!!]
-ジキルとハイドは立っているのがやっとの状況に追い込まれていた。
それに比べ、半グレ達と刑事は傷こそあれどまだまだ動けていた。
ニタニタと笑いながら刑事は言った-
«たったの二人でよくやったもんだな。
でも…俺達の勝ちだ。»
-半グレ達と刑事が二人にトドメを刺す為に近付いた時だった。
ジキルとハイドの手に紫陽花の痣が浮かび上がった。
二人の後ろで幼い声が転がり落ちた-
【“令呪において、命ずる。
半グレ共を破壊せよ。”】
-祈るような声で皆実が令呪を発動していた。
痣から血を流し、目から血涙を流して。
二人は皆実を撫で、言葉を渡した-
[待ってろ、広見。]
「すぐに終わらせて来る。」
-二人は落ちた武器を拾い、半グレ達と刑事を見つめた。
その目に“殺意”が宿っていた-
«んだぁ、その目は?
そんな目をしたって俺達には勝てねぇぞ!!»
-半グレ達と刑事が向かって来るがもう二人の耳には言葉は届かず、動きすら遅く見えていた-
[こちとら、弟が泣いてるからさっさと終わらせてぇんだよ。]
「大事な弟を泣かせて、血を流させた自分に怒っているんだ…。
だから…。」
-二人の声が重なった-
「[さっさと居なくなれ。]」
-そこからは逆転勝ちだった。
半グレ達と刑事を上回る速さで動き、あっという間に終わらせた。
逃げられない様に半グレ達と刑事を縛り上げて-
ー終わった後ー
[もう、大丈夫だかんな…。]
「終わったよ、広見。
怖いのは兄さん達がナイナイしたよ。」
-二人は皆実の頭と痣を撫でた。
皆実の手の甲に美しい紫陽花が咲いていた-
【…兄さん…。】
-皆実はふにゃりと笑い、気絶した。
気絶した皆実をジキルとハイドは受け止めた-
「お疲れさま、広見…。
って…僕達、病院に戻らないと大変じゃない!?」
[あっ!!
やべぇ、急いで戻んぞ!!]
-気絶した皆実と刑事から奪い返した刀を持って二人は猛ダッシュで病院に帰ったのであった-
[newpage]
[chapter:穏やかな月の鈴]
【…ハッ…!】
しまった…。
寝てたか…。
「懐かしいよねぇ…。
あの後さぁ…あっ、広見起きたの?」
ジキル兄さんが寝起きの私の頭を撫でてくれた。
【…なんの話じでだの…?】
ガラガラ声で問うとジキル兄さんが「薬研兄さん奪還した時の話だよ」と水を入れながら教えてくれた。
入れて貰った水を飲みながら私は答えた。
【…懐がじいな、ぞの後、こっぴどぐ怒られだっげ…。】
[無理に喋んな、もう少しで粥出来るから寝とけ。]
「よしよし。
それで体調が戻った後、こっそりと薬研兄さんを顕現させたんだっけ。
あっ、噂をすれば…。」
-奥から粥を持った薬研が現れた。
薬研が続きの言葉を紡ぐ-
〈玩具の刀に化けといて良かったぜ。
粥、出来立てだから気を付けてな。〉
❝トンッ❞
-粥がテーブルに置かれた。
薬研が匙に粥を掬い、フーフーと冷まし皆実の口に運んだ-
【…ありがど…。
あっ、討伐…。】
〈もう終わらせた。
体調不良の弟を起こすなんてことさせる訳ないだろ?〉
「だね。
さっ、ご飯食べて皆で寝よう。」
[その前に片付けしろ。]
-その晩濁った鈴の音はせず、代わりに賑やかな音が流れてた行った-
[newpage]
[chapter:薔薇のソーダ]
🌹オリ設定🌹
・口調迷子
・キャラ崩壊
【隠し味】
・皆実さんがマスター兼審神者。
※結構な血塗れ。
m(_ _)m‹そんな感じですが、よろしければどうぞ。
[newpage]
[chapter:紫陽花もたまに甘える]
今にも倒れそうな痛みを飲み込みながら夜の中を歩く。
今日の連戦はキツかった…。
遡行軍が三匹(その中にクナイが居た)と最後に検非違使。
あちこちからボタボタと身体中から血が流れる。
兄達は検非違使の術で動きを封じられていたので、動けたのは私のみ。
でも仕留めたから良しとしよう。
兄達が私の傷を治してくれているが、痛いものは痛い。
【…早く帰らないと、朝になる…。】
痛い身体を引き摺り、歩く。
朝になればまた一日が始まり、私の目は夜になる。
一つだけ安心している事がある。
それはこんな姿を彼に見られないという事だ。
正義が人になったような者だからきっと、私の傷を心配して私を傷付けたのを探そうとするだろう。
それで彼に傷が付いたとなれば私が狂うだろう。
いや、絶対に狂う。
彼にはこんな傷は似合わない、似合うとすれば私が首筋に付ける赤い華のみ。
嗚呼…早く帰って支度をしないと…。
頭を撫でてもらうのが私の日常なのに…!!
ドンドン黒になっていく視界が憎い…!!
黒になっていく視界の中、私は走った。
[広見っ、傷が開くから走るな!!]
ハイド兄さんの声が聞こえても
「今日はお休み貰おう?
ね!!」
ジキル兄さんの声が聞こえても
〈広見!!〉
薬研兄さんの声が聞こえても、私は無我夢中で走った。
【早く帰らないと…朝になっちゃう!!】
夜と朝の境目の道を猛ダッシュで走った。
ーホテル前ー
【なんとか、着いた…。】
まだ辛うじて視界は見える…。
早く部屋に入らないと。
ー音を立てずに皆実は部屋に転がり込んだー
【っ…ぐっ…。】
動けば動く程痛みが走る、それでもやることはやらないと…。
血塗れの服を[[rb:影 > ほんまる]]に渡した。
【…こんな血だらけの姿じゃ驚かれる…。】
ゆらりとシャワー室に行き、軽めにシャワーを浴びた。
血が洗い流されるのをぼんやりと眺めた。
包帯巻かなきゃ…。
【あれ…?】
歩こうとした動いた瞬間、視界がぐるぐるして来た…。
その場に膝を付き、動けなくなった。
「だから、言ったろ!!」
ジキル兄さんの声が最後に聞いた声だった…。
ーーーーーーーーー
-ジキルは倒れた皆実を急いでベッドへと運んだ。
薬研が処置箱を持ち、治療に当たる-
〈ったく、無茶しやがって…。
傷口開いてんじゃねぇか。〉
-治療をしながら薬研は小さく呟いた。
薬研はジキルとハイドに支持を渡す-
〈ジキルは包帯の補充と治療薬作り。
ハイドは見張りしてくれ。〉
「[了解。]」
-ジキルは影から薬作りの箱を取り出し、治療薬を作り始めた。
部屋の中に薬品の匂いが充満し始めた。
ジキルは出来た治療薬を薬研が使っている桶に移した。
治療薬入りの桶の中に包帯を浸した-
〈人の気配するか?〉
-治療薬が染み込む様に包帯を押し込みながらハイドに問う。
ハイドは見張りをしながらも薬研の問いに答えた-
[いや、気配無しだ。
そっちは?]
〈無茶による傷口が開いてるから出血が凄いぞ。
まぁ、徐々に治り始めてるがな。〉
[そか…。]
-薬研の答えを聞いた後、ハイドは再び見張りに戻った。
ジキルは包帯を巻き終わった後、薬研に言った-
「薬研兄さん、彼に連絡は?」
-皆実の顔に絆創膏を貼りながら薬研は〈言わねぇと駄目か?〉と答えを返した。
ジキルは真っ赤になった包帯を取り替えながら言った-
「言わないと彼、心配するよ?
もしかしたら“犯人探し”に行っちゃうかもね。」
〈だよなぁ…。
んなことになってアイツに傷が付いたとなれば、[[rb:コイツ > 広見]]が怒り狂うかもしれんから、連絡すっか。〉
-薬研は自分のカバンからスマホを取り出した。
〈さて、連絡すっかねぇ。〉
画像に“護道心太郎”と表示されたが直ぐに“非通知”とディスプレイに現れ、そのまま呼出音が鳴った。
“電話の主”
護道が電話に出た。
薬研は護道に要件を伝えた-
[newpage]
【うっ…あ…。】
『皆実さん!!』
目が覚めると隣に護道さんが居た。
私の名前を呼ぶ声に泣きそうな音が混じっていた。
『非通知で“お前の大事な人が血みどろだ…。
包帯と治療は済ましてるから”って言われて急いで来てみたら、こんな傷まみれで…!!』
優しく“ぎゅっと”抱き締められた。
【…少し寝たら治りますから…。】
そっと護道さんを撫でた。
『…いいえ、傷が癒えるまで休んで貰います。』
ーそう言うなり、護道は携帯を取り出した。
相手は自分の兄である京吾だー
ー「どうした、心太郎?
お前が電話してくるなんて珍しい…。」ー
ー『本日から2〜3日お休みを貰いたいのですが、良いですか?』ー
ー「このところ働き詰めだったもんな…。
しっかり休めよ。」ー
ー『ありがとうございます、では失礼します。』ー
“ピッ”
電話を切るとまた優しく抱き締められた。
『俺の傍から居なくならないでください…。』
【…はい…。】
ー皆実はコクっと頷いたー
【護道さん、ベットに入ってくれませんか?】
『?』
ー護道は皆実のベットに入ったー
【…甘えさせて下さい…。】
ー包帯だらけの腕を伸ばし、護道を抱き締めた。
護道の体温が眠気を誘う。
次第に皆実の目が閉じ始めたー
【…これで寝れます、お休みなさい…。】
『…お休みなさい、皆実さん。』
ー護道は電気を消し、皆実が安心して寝れる様にずっと隣に居た。
この日は護道も悪夢を見ずにぐっすり眠ったー
ーENDー
[newpage]
[chapter:トマトスープ]
基本の味
・キャラ崩壊
・口調迷子
・オリ設定
(隠し味)
・ヒヨコが好きに味付け。
・いつもの様に皆実さん血塗れ。
(ぶっ壊れも起こしてます。)
※幻術乱舞
※ケチャップ大量に舞っております。
・ぎこちなく拙い推理物。
(心の目で大目に見て下さい。)
・ちょっとだけ犬が出ます。
《本日のさっぱり煮込み》
・お口が悪い皆実さん出てます。
・‘ヒナ’が皆実さんの審神者名です。
・小さな桜の髪飾り付けている。
それではどうぞ。
PS:英語に詳しくないのでタイトルの英語は調べて書いていますが、翻訳とかが違うかもなのでご了承下さいm(_ _)m
[newpage]
✎月夜が輝く深夜の0時から3時の間の事。
一人の遺体が発見された。
遺体の前に「俺が犯人だ。byグレーハッカー」と書かれた紙が置いてあった。
グレーハッカーは神出鬼没なハッカーで法律スレスレの事をやり、一部では感謝されているハッカーだった。
警察はグレーハッカーが犯人だと確定し、捜索しようとする。
そんな折、皆実の言葉がポツリとその場に咲いた。
[chapter:escape!!]
護道さん、犯行時刻は深夜でしたよね?】
私がそう問えば『ええ、深夜の0時〜3時です。』と答えが帰って来た。
【その時間はあの子は寝ている時間です。】
(あの子は夜に怯えているから、夜の外出は出来ない…。)
刑事の一人が声を少し荒らげ言った。
《だとしても、指紋と証拠がある!!》
アイカメラに指紋が一致した時の画像が送られて来た。
血の付いた刃物にあの子の指紋がべったり付いている。
が、その写真を見た時違和感が生まれた。
(あの子に指紋なんてあるわけ無いのにどうやって用意し、一致させた…?)
そして、調べた情報も其処に追加された。
❝夜に頻繁に出していた❞
❝女の人をとっかえひっかえしていた❞
❝警察のお世話によくなっていた❞
❝携帯の転売を斡旋し、実行もしていた❞
などなど、追加された情報はどれもこれも私が知っているあの子の情報では無く、どこかの人の情報では?と思われるものばかりだった。
それらが読み上げられる度に刑事達の声も大きくなっていく。
‘あいつが犯人だ!’
‘早く捕まえないと!’
‘ハッキングなんてつまらない事をしているのだから、罪人と一緒だろ!’
刑事達はギラギラとした目付きであの子の情報を見ては憶測の火種を生み出す。
(嗚呼、あの子が怯えるのも分かる…。
これじゃ私の言葉は届かない。)
生み出された火種から憶測の火が燃えていく。
その火に薪を焚べるように護道さんが私に問う。
『皆実さん、グレーハッカーの事を“あの子”と呼んでますよね?』
【ええ、何度かお会いしたので。】
『それは何処で?』
そう問う声に怒りが混じっていた。
目はきっとギラギラしているのだろう。
(護道さんも[[rb:そっち> ・・・]]側の人になったか…。)
【どこでも良いでしょう。
あの子は神出鬼没で会えた時点で奇跡です。】
『どこでも良い訳が無いでしょ…。
あと、グレーハッカーの事を“あの子”と呼んでいる声に親しみが混じっていますね。
と、言うことはこの事件が起きる前からグレーハッカーを知っているってことですよね?』
【…黙秘で…。】
(怒りを含んだ声にギラギラとした目で見られれば答える気にもならない。)
『なんでです?
この事件の犯人はグレーハッカーなんです。
皆実さんが知っている事を話せばそれで済むんですよ!?』
護道さんの声がその場に響く。
周りの刑事も‘そうだ、そうだ!’とヤジを飛ばす。
ヤジが飛ぼうがなんだろうが、あの子の事を教える気なんて無い。
『…皆実さん、重要参考人として任意同行願います。』
【拒否で。
任意だというのなら、拒否します。】
そう言い、帰ろうとした時だった“ギリッ”と私の手首を掴む音がした。
【…離していただけますか、護道さん?】
護道さんが私の手首を掴んでいた。
振払おうにもガッチリと掴まれていて動けない。
(このままじゃ、組み倒される。)
予想通り組み倒おそうとしたので、そうされる前に残りの手で鳩尾を一発殴った。
鳩尾を殴られた護道さんはその場で蹲った。
それを見た人達が一気に警戒体制を取る。
(この人数を沈めるのは骨が折れる…。)
バレないように迎撃と退避体制を取る。
【で、私をとっ捕まえて尋問する気ですか?
辞めたほうが良いですよ、怪我させるの嫌いなので。】
その言葉に触発された一人の刑事が襲い掛かって来た。
【よっと…。】
襲い掛かって来た手を捻り、床に投げ捨てた。
「ぐぇ!!」
潰れた蛙のような声を上げ、その場にのたうち回る。
(手加減したのにな…。)
次から次へと襲い掛かって来るので転がしまくった。
時折、白杖も使った。
…あとで直して貰わないと。
壊れてしまったら、大変だ。
蹲り、転がる人達を大量に生み出した後その部屋を脱出した。
ー廊下ー
部屋の外は大騒ぎだった。
それもそうだろう、重要参考人(なった覚えはない)が逃げているのだから。
一部始終を見ていた人が叫ぶ。
“重要参考人が逃げた、捕まえろ!!”と。
その声が届いた瞬間全員捕獲体勢に入り、一斉に向かって来た。
スルリと手達と人混みを避け、誰も居ない場所まで走った。
(此処なら、まだ…。)
人気のない場所に着き、床に手を付きポツリと唱える。
【“藤に紫陽花一輪”】
そう呟いた瞬間、藤色の水面が現れた。
【久し振りに帰るなぁ…。】
そのまま水面に飛び込んだ。
“パシャッ”
(あの子の事は私が守らないと…。)
本丸までの帰り道への階段を降りながら心の中で呟いた。
‐皆実が飛び込んだ後、護道達が来たがその場には静かな空気だけが漂っていた‐
『どこ行ったんだ、皆実さん…。』
‐それに護道の苦々しい声も追加された‐
[newpage]
[chapter:return to Honmaru]
藤色の水の道を歩き、開き戸に手を掛けた。
‘ガラッ’
【ただいま。】
ー「おかえりなさい。〛ー
私を出迎えてくれたのは加州だった。
「珍しいね、帰って来るなんて。
なんかあった?〛
私の頭を撫でながら加州は問う。
撫でられながら加州の方を見て、答えた。
【私の目になって欲しい。】
その一言で察した加州は「良いよ。〛と一言で了解してくれた。
【ありがとう…。
詳細は部屋で。】
礼を言った後、私達は自室に向かった。
「どういたしまして。
この事、薬研は知ってるの?〛
【知ってる。と、いうかあの場に居た。
ね、薬研兄さん?】
薬研兄さんの名前を呼べば〈バレてたか…。〉と私の影から出て来た。
【助けてくれてありがとう。】
“逃げる前に遡る。
蹲り、転がる人達を大量に生み出している最中、私の事を捕まえた人が居た。
私とは体格差がある男だった”
〚捕まえた、このまま尋問してやらぁ!!〛
(クソ…解けない!!)
“手首をガッチリと掴まれ、動けないでいた時だった〈その手を離せ…〉と声と共にその男の手を捻り上げてくれたのが薬研兄さんだった。
男が呻き声を上げる。
薬研兄さんはそのまま男を投げ飛ばした”
〈手加減はしたが、本当なら切り落としてるぞ?〉
“男を冷たい目で見た後、私の方を見て〈逃げるぞ、広見!!〉と手を引いてくれたのだ。
そして粗方人気が無い所に付いた時、一旦影に帰った”
〈いやぁ、あそこまで憶測の火を燃やせるってすげぇな…。〉
「うわぁ、それは大変だったね…。
で、主の目もそっち側になったの?〛
【ええ。
本来なら、私の目なんですけどね…。】
〈大将の手首を掴んでいた所を考えると相当余裕が無いって感じたぞ。〉
【そりゃ、殺人事件の犯人のことを知っている人を逃がすわけにはいきませんからねぇ。
まぁ、あの子がそんな事をする子ではないと思ってますが。】
“スパンッ”
自室の開き戸を開け、中に入った。
部屋の中は綺麗なままだった。
〚主が居ない間、クー・フーリンが掃除してたよ。〛
加州が部屋に常備してあるお茶を入れながら教えてくれた
【あとでお礼言わないと…。】
〈だな…。〉
自室の鍵を締め、荷物を隅に置いた。
「お茶、飲みながら会議だね。〛
〈菓子付きのな。〉
加州が注いでくれたお茶と私が持って来たお菓子を食べながらの会議となった。
「主、“グレーハッカー”の事を教えて?〛
加州が茶を啜りながら言った。
【あれは…。】
私もお茶を啜りながら言葉を紡ぎ出した。
[newpage]
[chapter:GLAY hacker]
“まだマスター兼審神者になって間もない頃の話”
【ううっ…。】
“当初、いつも目の代償に泣いていた。”
【目…痛い…焼ける…!!】
“まだその時は上手く目を使いこなせていなくて、呻いていた。
身体の傷も痛かったけど、目の傷に比べれば痛くない分類に入る。
…まぁ、痛いのには変わり無いけれど。”
“その日は綺麗な月夜で赤くなった視界でもよく見える綺麗な月だった。
少しだけ気分と痛みが良くなって気がして、歩いていた時にあの子と出会った。”
〔ひっ…!!〕
“誰かの怯える声が耳に届いた。”
(誰か怯えてる…?
助けに行かなくちゃ…。)
“ズルズルと身体と焼けるように熱い目を引き摺って声の所に行った”
【そこに居るのは誰ですか…?】
“私が声を掛けたのが後のグレーハッカーだった。
あの子は私の声に反応し、顔を上げる音がした。”
〔夜が怖い…怖い!!〕
“あの子は私の方に近付き、手を伸ばしてきた。
声に恐怖と狂乱が混じっていた。
本来なら見ず知らずの人を抱き締めるのは気が引けるけど、あの子だけは抱き締めないと壊れるような気がしたのでそっと抱き締め、その背中を擦った。”
〔…アンタ、目が見えないのか?〕
“開口一番に言われたのがそれだった。”
【なんで、分かったのですか?】
〔背中の擦り方がぎこちない。
あと目の焦点が合ってない…。〕
そう言った後で❲あっ、悪い…嫌だったよな?ごめんな❳と謝った”
【良いんですよ、いつも言われてますし。
それより、落ち着きましたか?】
〔…ありがとう、落ち着いたわ。〕
【良かった。】
“最初がこんな感じだった。
次に会った時にあの子がポツリと話してくれた。
この日は夜の目に薄い夕焼けが差し込んだ日だった”
〔オレ、夜と刃物と警察怖いんだ。〕
【なぜ?】
〔夜にトトとカカ、刃物で刺し合って居なくなった。〕
【えっ?どういうことでしょうか?】
“穏やかな声であの子はそう告げた。
どういう事かと問えばまた穏やかな声であの子は教えてくれた”
〔なんかの事件の証拠にオレのトトとカカの指紋が付いていて、警察さんが二人を犯人って決め付けて連れて行っちゃった…。で、釈放されたんだけど二人とも刃物で三日三晩お互いに刺し合っちゃったんだ。
しかも、オレが起きてる時の夜…。〕
【…。】
“その話に返す言葉も無くただ、黙って聞いていた”
〔だから、刃物と夜と警察さん怖いんだぁ~。
あっ、でもアンタがもし警察さんでも怖くないから協力出来る気がする…ちゃんと話聞いてくれるし。
あっ、夜が近いから帰る。〕
“そう言い、彼は帰って行った。
以降、姿を現さなかった。
けれど、点字の手紙が来るようになった。
中身は他愛のない会話だった。
それでも私に取ってはあの子の声だったからお返しした。
すると、また手紙がやって来た。
内容は〔最近、可愛い人形の彼女が出来た。
指紋があると疑われちゃうから消したんだ〜〕というものだった。
手紙は頻繁に来るが見れてないからこれが私の覚えてる情報”
一通り話し終えると加州が言った。
「そりゃ、夜と刃物と警察が怖くなるよね…。〛
それに続く様に薬研兄さんも頷いた。
【警察と刃物と夜に怯えるあの子が犯罪なんて犯せる無いんですよね…。】
「だよねぇ…。
やれば3大恐怖を味わうんだし。〛
〈アイツら、なんでそんな奴を犯人に仕立てようとしてるんだ?
あっ、加州の旦那、お茶お代り。〉
【私も。】
「はいはい。〛
加州はお茶を組みに台所に消えた。
【此処からは私が感じた違和感を話していこうと思うのですが…】
〈だな。
話せる内に話して行動を早くしないと捕まっちまう。〉
【捕まったら、何されるか…。】
考えただけでも寒気が…。
[newpage]
[chapter:Question&Anser]
【最初の違和感はあの子に指紋があることです。】
〈刃物に指紋があるってあの刑事言ってたな。〉
【あの子、自分で指紋消してるので本来なら付かないんですよね…。】
菓子を食べながら私は言った。
〈でも、奴ら指紋用意してたよな…?
指紋を消される前になんらかの方法で取ったとか?〉
【無理なんですよね…指紋を用意するの。
手紙が来た時点で指紋は無くなってますから。】
〈ところで、広見。〉
【どうかしました?】
〈此処、お前の家なんだから敬語ちょいと外せよ。〉
【癖で、こうなっちゃうから仕方ないじゃないですか…】
〈だとしてもだ…少しで良いから、な?〉
【…今回だけですよ?】
〈おう。〉
スーッと息を吐き、次の疑問の時から敬語を外そうと決意した。
【次の違和感、刃物。
最初に話した様に、あの子は刃物が持てない。
なのになんで、刃物を持てたか。】
〈確かに疑問だわな、誰かに持たされた?〉
【誰かに持たされたとしても刃物を見れば怯える子に持たせるか?】
〈いや、無理だ。持った時点で大発狂だ〉
【だろ?】
私の言葉に薬研兄さんは〘謎だ〙と言葉を返した。
【と、いうことはどうやって持たせたかが疑問なんだよな…。】
「誰かに操られ、もしくは弱みでも握られて持たさせたんじゃない?〛
お茶を持って来た加州が言葉を紡ぐ。
「ハッキングは毒にも薬にもなる行為。
多分、毒にしてほしくなかったら刃物を持て。って言われたんじゃない?〛
【その線も有りか…。】
〈これについての違和感、教えてくれ。〉
丁度録音してあったらしく、ボイスレコーダーを再生した。
❝夜に頻繁に出していた❞
❝女の人をとっかえひっかえしていた❞
❝警察のお世話によくなっていた❞
❝携帯の転売を斡旋し、実行もしていた❞
読み上げる刑事の声がギラギラしている、今でも思い出すとううっ…寒気が。
「わぉ、生々しい音声だこと…。〛
〈…広見、この違和感について、一気に教えてくれ。
あっ、吠えてもいいからな?〉
【じゃあ、お言葉に甘えて。
夜が怖いのにどうやって出歩くんだよ!?
最初に会った時に夜が怖いって言って実は怖くないって言って頻繁に出掛けていたら、主演男優賞あげれるくらいの演技派だな!!
で、次が女の人をとっかえひっかえしていた?
あの子は[[rb:彼女 > にんぎょう]]の事を大事にしているからありえない。
もしも変わったというなら、新しいパーツに変えただけ。
新しいパーツは元のより色が違うことがあるから。
警察恐怖症も患っているのにお世話になるわけないでしょ。
ラスト、携帯の転売を斡旋し実行していた?
あの子、機械見るとすぐに魔改造するから無理&無理!!】
〈広見、手紙は?〉
【手紙棚の中。】
「りょー。」
ー手紙棚の中を探すと、グレーハッカーからの手紙が綺麗に缶の中に収められていた。
手紙を見てみると、皆実が言っていたことが全部書いてあった。
〔今日も彼女とお昼の散歩に行ったんだ…。
本当は夜の世界も見せてあげたいけど、夜恐怖症が治るまでは無理かな…を〕
〔今日は包丁を見てみたんだ…。
いつまでも恐怖を持つ訳にも行かないからさ…。
でも、怖いものは怖いね。〕
〔携帯、買ってみたんだ…。
魔改造して200%の携帯にしてみた。
うん、見事に壊れた★
まだまだ改造の余地あり。だね。〕
〔ひっ、外になんか警察さんが居る…。
あっ、パトロールだった…。
パトロールでもなんでも良いけど、怖いから早く帰らないかな…。〕
たどたどしい文字の内容が浮かぶー
〈本当に恐怖症患いだな…。〉
「うん。〛
二人が手紙を見ている間に吠え終わった私が二人に言う。
【すっきりしました…。
さて、証拠集めしましょうか】
「どうやって?表に出るの?〛
〈出たら、捕まっちまうぞ…。〉
【出ませんよ。おいで。】
ーおいで。
皆実が呼んだ瞬間、柴犬の子犬が部屋に入って来たー
【この子に集めて来て貰います。】
二人は暫く固まっていたが納得してくれたらしく、子犬を撫でた。
〈コイツなら適任だわ。〉
薬研兄さんが子犬を撫でた。
「んで、俺らは裏からやるんだね。〛
【ええ。
裏側からなら捕まる可能性は低いので。】
柴犬を撫でながら私は言った。
子犬にやらせる任務ではないけれど、この子にはそれを任せれる。
本当なら成犬になっているのだから。
なぜ、子犬のままなのかに付いてはいつか語りましょう。
【頼みますよ“コハク”。】
‘ワンッ’
ひと鳴きするとコハクはいつもの風呂敷を持って任務に向かった。
‘ヒュオッ’
丁度その後ろを風がコハクを追う様に通り過ぎた。
〈あの護衛なら、大丈夫だな。〉
【二人とも、頼みましたよ。】
「さっ、お茶飲んだら仕度だよ。
事件が全部終わったら、二人で茶でも飲んで来なよ。〛
【それも良いですね。】
〈ふふっ、楽しみが増えたな。〉
ー裏は私達、表はあの二人。
私の目を取り戻さないとー
【…終わったら、手首捻ってやる…。】
注がれた茶を飲み、支度を開始した。
[newpage]
[chapter:obstruction of investigation]
“ヂリン”
“ヂリン”
〘グレーハッカーが犯人だ…。
うふふっ、さぁ早く捕まえちゃえ、刑事共♪
アイツが居ない間に証拠をいっぱい生み出そう。
あぁ、驚く顔が見たいなぁ…!〙
ー歪んだ鈴の音と笑い声が部屋の中で鳴り響き、歪んだ証拠が空へと舞った。
歪んだ証拠は遺体が発見された現場で芽吹き出す。
まるで表の捜索者を感知したようにー
ーコハクと護衛は現場にやって来た。
鼻の良いコハクが証拠品の匂いを嗅ぎ、護衛であるぬりかべが風呂敷に入れる。
その作業の最中、コハクが動きを止めたー
『わんっ!!」
「どうしたの、コハク?』
ーコハクが証拠を睨み、吠えるー
『わんっ!
(コイツ、駄目、危険!)」
「危険…?
えっ…!!』
ーぬりかべが声を上げた瞬間、グレーハッカーは無実と語る証拠が全部ドロリと溶け、グレーハッカーが犯人だという証拠に変わったー
「どういう事…!?
とりあえず、退避!!』
ーぬりかべはコハクを抱え、本丸への道を猛ダッシュした。
すると黒い手が二人を追う様に現れたー
「ワンッ、ワンッ!!』
ーコハクは自分等を捕まえようとする影を威嚇し、風呂敷に入っていたカラーボールを咥え影にぶつけた。
カラーボールは黒い手に当たり、動きを止めたー
「ワンッ!!
(このままダッシュ!!)』
『うん!!」
‐なんとか本丸まで逃げ切った二人は転がるように中に入った‐
「ワンッ!!』
ーコハクの鳴き声が玄関に鳴るー
〈どうした、二人共!?〉
丁度出掛ける支度をしていた薬研が二人に問う‐
「証拠集めしてたら、突然証拠が溶けて、グレーハッカーが犯人だという証拠に変わった。あと、黒い手に追われたの…』
『ワフッ…。
(カラーボールで足止めしたけど、あれなに?)」
〈黒い手…もしかして、誰かの妨害か?〉
「妨害だとしたらなんで?』
〈知られたらマズイ事がある…?
ともかく、集まった証拠は?〉
ーコハクが風呂敷を下ろし、中を見せるー
「うそ…溶けてる…。』
〈チッ、やられたか…。〉
ー風呂敷の中に入っていた証拠は全部溶けており、解読も見ることも不可だったー
『わふっ…わんっ。
(溶けないようにしたのに…どうしよう)」
〈…なんか光ってる?〉
ーコハクはしゅんっとなり、項垂れた。
溶けた証拠品の中にキラキラとした物が薬研の目に映った。
溶けた証拠品に手を入れ、溶けてないであろうキラキラとした何かを取り出したー
〈箱…?〉
ー溶けた証拠品から取り出したのは小さな箱だったー
『わふっ?
(それなに?)」
〈さぁ…?
ともかく、部屋に運ぶぞ。〉
「うん。
あっ、主は?』
〈裏なれど表で証拠集め…。
丁度、目も開く頃だからな。〉
「一人で?』
〈加州の旦那と一緒だ。〉
「見つからないと良いけど…。』
〈大丈夫だろ、きっと。
ともかく、これを部屋に運ぶぞ。〉
‐三人は溶けた証拠と小さな箱を皆実の自室に運び入れた‐
ー[一方、その頃]ー
誰も居ない夜、加州と私は証拠を集めていた。
「主、これも証拠になる?〛
見せてきたのは小さくて透明な箱。
中にキラキラとした筋が入っている。
【調べてみないと分かりませんね…。】
「だよねぇ〜。
でも、透明にしては少しだけ濁っているようにも見えるんだよね。〛
【もしかしたらあの子の記憶…とか?】
「グレーハッカーの?〛
【ええ。
確か、あの子記憶を箱にして残すので。】
いつぞやの手紙に書いてあったのを思い出した。
ー〔オレ、記憶は箱にして残すんだ。
そしたら、ずっと見ていられるだろ?〕ー
「…ってことは、自分の親がってのも?〛
【おそらく…。】
「なんか凄いけど、悲しいことには使いたくない能力だね…。〛
【…ともかく、透明な箱を探しましょう。
あの子の無実を語る証拠だから。】
キラキラの小箱を探していた時“ガサッ”と茂みを嗅ぎ分ける音が聞こえた。
(加州、隠れて。)
影に文字を書いた。
加州の頷く音が聞こえ、隠れる音も聞こえた。
隠れたのを聞き夕焼けを閉じていつもの夜を灯す。
【どちら様ですか?】
『一日だけ会わなかったのに、もう顔忘れちゃったんですか?』
其処にいたのは護道さんだった。
【護道さん、どうしてこちらに…?】
『現場検証してこいって言われまして。
皆実さんは?』
【私も同じです。
会いたかった、護道さん…。】
白杖を鳴らしながら彼の所に行き、抱き着いた。
『俺もですよ、皆実さん。』
護道さんも私を抱き締めてくれた。
(これが本物なら、どれだけ良かっただろう…?)
‐護道が抱き着いた瞬間、皆実の短刀が護道の腹を横に切り裂いた‐
『っ、この姿でも容赦無いってアンタ鬼だな!!』
‐切られた腹を抑えながら護道…だった物が叫び、皆実から距離と取るように飛び退いた‐
【本物なら私を見たら、捕獲します。
あと、気味の悪い気配が駄々漏れなんだよ。】
短刀に付いた血を振り払いながら護道さんに化けた遡行軍を見る。
彼でないのなら、目を夜にする必要もないので夕焼けを灯した。
【彼の姿で私の所に現れるって…。】
(腹を抑えてるなら、動きも鈍い…殺れる。)
短刀から鎌に持ち替え、飛び退いた場所にこちらも飛ぶ様に向かった。
【やりますね!!】
鎌の刃を飛ばし仕留めようとした時だった“ヒュオッ”と風の音がし、さっきまで距離を取っていた筈の奴がこちらに飛ぶように向かったのだ。
『相棒の姿をした奴に消されるのも乙だろう!!』
そう叫び、小刀を飛ばして来た。
【っ!!】
鎌を回し、飛んで来た小刀を弾き飛ばした。
『おっとっと。』
弾き飛ばされた小刀を避けながらまた突き刺そうと飛ばして来た。
【何度やっても効きませんよ!!】
飛ばされた小刀を弾き飛ばしながら、相手への距離も詰め、反撃に転じる為、鎌を振り下ろす。
『これなら、どうだ?』
小声で奴が言ったのと同時だった’ズキッ‘と腕に痛みが走った。
【えっ…?】
鎌を持っている腕を見ると…
【嘘だろ…いつの間に!?】
赤赤とした太刀が私の腕を貫いていた。
『最初に小刀が弾き飛ばされた時に一瞬だけ出来た影に太刀を忍ばせたのさ…。
そして、お前が反撃に転じる時になったら発動する様に仕込んだ。』
奴は私の腕に刺さった太刀を弾きながら、答えた。
そしてまた影から刀を取り出した。
動こうにも影の方にも貫通しているらしく、動けない。
(影にも貫通出来る型か…!!)
【っく…!!】
『もう一本、いかが!!』
奴がもう一本の刀を刺そうとした時’キンッ‘と弾く音が双方の耳に届いた。
「させるか!!〛
加州がもう一本の刀を叩き落とした。
そのまま加州が靴で土を蹴り、目くらましをしその場から私を抱え離れた。
「主、大丈夫?〛
【これぐらいどうってことないです。
今からやることは不問に処して下さい。】
動く方の手を動かし、腕に刺さった太刀を引き抜いた。
引き抜かれた箇所から血が吹き出るがそんなの知った事じゃない。
こうして隠れていられるのも時間が限られている。
(…早くアイツを仕留めないと…。)
「…どうやって仕留めるの?〛
【私が小刀と影の刀を弾き、鎌に全部封印します。】
「それって、主一切動けなくなるやつじゃん…!!〛
【はい。
ですが、手負いの私より加州が仕留めてくれた方が安心します】
「分かった…。
その動かない腕、どうするの?」
【幻術を使って隠します。】
「アイツにどうやって近付く?
二人いっぺんに行く?〛
【私が刺されそうな時に来て下さい。】
「無茶言うねぇ…。〛
【私の本当の相棒の時よりはマイルドですよ。】
「りょーかい。〛
持っていた包帯を血塗れの腕に巻き付け、奴が来るのを待った。
‐血の匂いを嗅ぎ付けた遡行軍が皆実を見つけた‐
『一人か…刀剣男士はどうした?』
【私を置いて逃げちゃいましたよ…。】
‐よく見ると皆実の腕が一本、無くなっていたー
『薄情な男士だな。』
本当。
薄情な男士です…。】
クスッと笑った後で言葉を紡ぐ。
【まぁ、そんな薄情な男士を産んだのはアンタですけどね。太刀の痛みで腕を切り落とさせたんですから…。
結構、痛かったんですよあれ。】
片腕で鎌を構える。
【まだ相棒の姿なんですか?】
『この姿の方があんたの苦しむ顔がよく見えるからな。』
奴も刀を構えた。
【悪趣味過ぎて。】
鎌から小刀を出し、それを奴に目掛け放った。
【笑えない!!】
続けて弓も放つ。
『ハハッ、片腕ながらよくやるな!!
そら、お返しだ!!』
私が放った弓と小刀をこちらに投げ飛ばしてきたのだ。
【よいせっと。】
私はその雨を転がりながら避けた。
【なんで捜索妨害するんですか!?】
疑問と共にまた小刀を奴に放った。
『グレーハッカーが罪人なのが正しき歴史。
それを変えようとするのは。』
小刀を弾きながら、奴は言った。
『悪人のすること。』
降りしきる刃の雨の中、私の間合いに入り刀を振り下ろすがそれを鎌で防いだ。
【悪人は妨害してくるお前だろ!!】
鎌を分裂させ、飛んでくる刃を全部受け止めた。
『表を受け止めても。』
ーギラリと後ろが光るー
『裏の刃は受け止めれない。』
ー裏側から刃が出たかけたが、それすらも皆実の鎌が受け止めたー
『よく受け止めれたな…。
だが、動けないだろ?』
ーズッシリと重い表裏の刃を全て受け止め、封じ込めた鎌はカタカタと鳴り、少しでも動けば封じてある小刀が皆実に突き刺さる。
幻術で隠したなれども太刀を引き抜いた時の血で皆実の周りが紅に染まるー
『最期に言い残すことは?』
ー刀を持ちながら、遡行軍は問うー
【ふふっ…。】
『何がおかしい?』
【私に集中してて気付いてないのでしょうけれど、とっくにアンタ…。】
ー赤黒色の刃が遡行軍の項に止まるー
【詰み、です】
私が‘詰み’と言った瞬間、加州の刃が奴の首を貫通した。
“ザシュッ!!”
『!!』
”カランッ“
奴の手から転がり落ちる刀を加州が蹴り上げ、私に言った。
「ソレ、返しなよ。
いつまでも持ってたら、疲れちゃうでしょ?』
【それもそうですね…。
持ってるの疲れちゃいました…。】
“ググッ”
ー皆実は片手で鎌を動かし始めたー
【コレ、お返ししますね。】
ー“コレ”と言った瞬間、皆実の方を向いていた剣先が遡行軍側へと向きを変えたー
【加州、危ないから避けて!!】
「はいよっ!』
“ブォンッ”
ー加州が避けたのを確認した皆実は鎌をバットの様に振った。
その瞬間、封じ込めていた小刀達が一斉に遡行軍に突き刺さったー
『ぐわぁぁぁあ!!』
ー遡行軍はけたたましい悲鳴を上げ、その場に倒れた。
“これで終わった”…と二人が安堵したのも束の間、なんと無数の小刀に刺されながらも立ち上がったのだ。‐
「なっ、どんだけ頑丈なんだよ!!』
‐加州が驚きの声を上げる‐
『グキギッ…!』
ー遡行軍が影から再び刀を出し、皆実に突進して来たー
「しつこいなぁ、もう!!』
ー加州が突進してくる遡行軍の道に立ち、遡行軍を真っ二つにした。
が、勢いは止まらず斬られた半身が皆実を襲うー
「主!!
(駄目だ、間に合わない!!)』
“スパッ”
ー皆実は加州の声が届いたのと同時に最後の力を振り絞り、残りの半分を斬ったー
【ありがとう…。
助かった…。】
「ふぅ…。』
ー二人はドサッとその場に座り込んだー
「やっと終わった…って、主、血すんごいことになってるよ!!』
ー皆実の腕からは血がドンドン溢れていたー
【あっ…安心して幻術、解いちゃいました。】
「“解いちゃいました…。”
じゃないよ、帰るよ!!』
【はい…。】
ー籠に証拠品を入れ、加州と皆実は本丸へと帰城した。
皆実達が帰った後、黒い人影が現れた−
〘グレーハッカーを逮捕してもらおう…。
ふふっ…楽しみだなぁ♪〙
−黒い人影は濁った鈴を取り出し‘ヂリン’と鳴らした。
すると鈴から黒く淀んだ霧が現れ街全体を覆い、歪んだ真実を生み出し始めた。
‘グレーハッカーが犯人’
ドス黒く歪んだ鈴の声を出す。
‘グレーハッカーは犯人じゃない’
その声は歪んだ鈴の音に飲まれ、街にも時間にも聞こえない物になった−
[明日の時間からグレーハッカーが犯人だ…♪]
ー明日の時間軸にグレーハッカーが犯人だいう時間が刻み込まれ始めた。
黒い人影は歪んだ時間が刻まれるのを眺めながら笑った−
[明日の新聞が楽しみだなぁ…♪]
[newpage]
[chapter:broken puzzle]
-皆実達が証拠集めをしている間、ジキルとハイドは表世界で買い物をしていた-
[しっかし、なんで俺等は買い出しなんだろうな?]
「僕達、戦闘専門だろ?
買い出しも居ないと広見達、倒れちゃうよ。」
[だとしても、戦闘専門の俺達が買い出しって…。
俺も戦いたい。]
「まぁまぁ…。
犯人を捕まえたら締め上げに参加させて貰おうよ。」
[だなぁ…。]
-そんな事を言いながら歩いていると、一枚の新聞紙が二人の間に落ちて来た。
ジキルは買い物袋を片手に抱え、新聞紙を拾った。
その内容を読んだジキルは声を潜め、ハイドの名前を呼んだ-
「…ハイド、帰るよ。」
[…どうした、ジキル?]
-ハイドもジキルの声のトーンに合わせ、声を潜めた。
ジキルはハイドに新聞を見せた-
「…これ。」
−{グレーハッカー逮捕。}
{グレーハッカーこと、夕凪レンを月夜公園で起きた殺人事件の犯人として、逮捕しました。
本人は容疑を認めておらず、署内で泣き叫んでいる模様。}−
[なんだよ…これ!?]
「昨日までは何もなかった筈だ…。
なのに、なんで?」
[知らん。
早く帰って広見に見せねぇと…。]
−ジキルとハイドは本丸への帰路に着く為、街を出ようとした。
その時、皆実を呼ぶ声が聞こえて来た。
二人は咄嗟に物陰に隠れた−
『皆実さん、何処に行ったんだ…?
この事件の重要参考人なのに…。』
−「…。
(護道さんか…広見を探しているな…。)」−
−[…。
(見つけたら、とっ捕まえる気満々だな。)]−
−服に隠されているが、護道の手の中で手錠が“キラリ”と光っていた−
−「…。
(このまま、行こう。)」−
−[…。
(了解。)]−
−二人は影を見つけ本丸へと帰って行った−
ー{本丸}ー
「ヒナー!!」
[何処だー!!!]
ー二人の声が廊下に響くー
«ヒナなら、湯浴みだぜ?»
ー寝起きの声を上げながら、鶴丸国永が二人に皆実の場所を教えたー
[まいどー。]
「ありがと!」
-礼を言った二人は荷物もそのままに行こうした。
それを鶴丸が止めた-
«荷物置いてから行けよ。
じゃないと食いもんが腐る»
「それもそうだね。」
[忘れてたわ。]
ー荷物を台所に置き、猛ダッシュで風呂場に向かった。
風呂の中で皆実はぼんやりと呟いたー
【…夕、無事かな。
捕まってないと良いんだけど。】
“ぷくぷく”
ー泡を作り遊んでいるとドタドタと賑やかな音が聞こえた。
足音で分かる、ジキルとハイドだとー
(なにかあった…?)
ー皆実が湯から顔を上げた瞬間、ハイドが浴室内に入って来たー
[ヒナ、表の世界の時間が…うおっ!!]
ー続きを言おうと近付いた時、床に置いてあった石鹸に足を取られ、スライディング方式で皆実の居る所に滑り込んで来たー
【ハイド兄さん、大丈夫?】
[おふっ…。]
ーハイドは頷くがちょっと痛かったらしく、小さな呻き声を上げたー
【で、表の世界の時間がどうしたの?】
[書き換えられてた…。
グレーハッカーが犯人だという時間に!!]
【えっ…ウソだよね?】
[嘘じゃねぇ…。
証拠の新聞ならジキルが…って、あれ?ジキルは?]
【ハイド兄さん…。
ジキル兄さん天井に突き刺さってるけど、なにかした?】
[なんで天井に突き刺さってるんだよ!!]
「じるが、だずげでー!!」
ージタバタと天井に突き刺さったジキルはもがくー
【ともかく、助けるから待ってて…。】
ー皆実は自分の影から紫陽花の蔓を出しジキルの足に巻き付け助け出し、ハイドの隣に下ろしたー
【で、表の世界の時間が書き換えられていたってどういう事?】
ージキルは持っていた新聞を皆実に渡したー
−{グレーハッカー逮捕。}
{グレーハッカーこと、夕凪レンを月夜公園で起きた殺人事件の犯人として、逮捕しました。
本人は容疑を認めておらず、署内で泣き叫んでいる模様。}−
【…!】
ー皆実は言葉を失った後で小さく【チッ…!!】と舌打ちに似た声を上げ、フラッと立ち上がったー
【逆上せちゃう…出ないと…。
兄さん達、教えてくれてありがとう。
上がるから、出て貰って良い?】
ー逆上せそうなのを抑え、ジキルとハイドに浴室内から出る様に言うが聞こえておらず、その場に留まる二人。
どうやら、聞こえていなかったらしい。
(もう一回言った方が良いかな…。)
皆実が口を開こうとした時、薬研の声が飛び込んで来たー
〈広見、大変だ!!
保管していた証拠品が黒くーっずえ!!〉
ー可憐に床の上を滑り、トリプル三回転を開始。
そして見事にジャンピング正座を決め、ジキルの横にピタッと止まった。
そのまま、薬研は話を続けるー
〈時間が書き換えられてたのと同時に証拠品が黒くなって来た…。
今は、凍らせてるが黒くなって消えるのも時間の問題だ。
どうする?〉
ー薬研の問いに皆実が答えるー
【状況は後で確認するから…。
とりあえず、お風呂から全員出てけ。】
「えっ?」
[はっ?]
〈!?〉
ー三人は顔を見合わせ、皆実を見た。
皆実は風呂の縁に頬を付き、言葉を転がしたー
【ずーーーっとお風呂に入ってたから逆上せそう。
これ以上入ったら湯船が血の海になるけど、どうする?】
[えっと、どれぐらいだ?]
【一時間くらい?
正直に言うと兄さん達が教えてくれた事、聞いてはいるけど頭クラクラで入ってない所があるんだ…。
と、いうわけで早急に出てけ。】
ー紫陽花の蔓に三人を巻き付け、廊下に放り投げたー
【着替えたら、話聞くから部屋に行ってて!】
ー紫陽花の蔓で引き戸を閉めた。
着替えながら皆実は呟いたー
【…早くパズルを直して夕を助けないと。】
(夕のことだ、今頃ギャン泣きしているんだろうなぁ…。)
ー皆実の脳裏にあるのは〔警察と刃物と夜が怖い…!!〕と怯え、泣いている夕の姿だった。
ササッと着替え、皆実は自分の部屋に向かったー
ー〚皆実の自室〛ー
【ただいま、戻りました。】
ー皆実の声がしたのと同時に5人と一匹が机を囲む。
加州がすかさず全員に飲み物を配る。
皆実は配られた飲み物を少しだけ飲んだー
【逆上せてて覚えてない所もあるので、詳しくお願いします。】
「僕等が買い出しに行った時に新聞があって、そこには
❴グレーハッカーこと、夕凪レン、月夜の殺人容疑で逮捕。
本人は認めておらず、署内で泣き叫んでいる模様❵の文字が踊ってた。」
[んで、その文字が出た途端に淀んだ空気が流れたんだよ。
”お前らも早く認めちゃえよ、グレーハッカーが犯人だ”みたいなのがな。]
〈そんで、その時間の流れが俺が保管していた証拠に滲んで来て、黒ずんで来た。
今はしっかりと凍らせてるがいつ消えるか分からん。〉
ー三人はそれぞれの情報を話した。
話された情報がパズルのピースの様に繋がって行くー
〈そっちはなにか、進行あったか?〉
ー薬研が加州達に問うー
「護道さんに化けた遡行軍に出くわしたよ。
ね、主。』
ー加州の問いに皆実が頷くー
【あれにはびっくりしましたよ。
証拠集めどころじゃありませんでした…。
よりにもよって、私が会いたい人に化けるなんて…。
撃破するのに心が痛みました…。】
「(嘘付け、若干楽しそうにしてた癖に)
撃破はしたけど、まさかねぇ…。』
ー茶を啜りながら加州は呟くー
「…誰かが妨害しているって事か。」
[恐らくな。]
ージキルとハイドもお茶を啜った。
薬研は茶を啜りつつ、皆の様子を見ていたー
『わん。
(これからどうするの?)」
「今でも泣いているかもなんでしょ…?』
ーコハクとぬりかべは心配そうに言ったー
【どうやって助けに行きましょうかねぇ…。】
ー茶を啜りながら言う皆実の声は何処か楽しげだった。
その様子を見た四人と一匹は思った。
“あっ、これ何か企んでる”とー
【ド派手に行こうか、さっぱりで行こうか…。】
❝それが問題です❞
ー茶を啜る音ともに声が一つ溶ける。
パズルが組み上がる音も聞こえたー
『わふっ。
(ねぇ、ご主人。)」
【どうしました、コハク?】
『くぅーん…。
(パズルを揃えたとして、助けに行けるの?)」
ーコハクが心配そうな目で皆実を見たー
【行けそうになかったら、強行突破します。】
『わふっ!
(なるほど!)」
ーそんな会話をしているとあっという間に時間が過ぎた。
薬研が言葉を編んだー
〈作戦会議、一旦お開きにしよう。
皆、疲れてるだろうから。〉
[さんせー。
ねみぃ…。]
【じゃ、今日は此処まで。
皆さん、お疲れでした。】
ー皆実の声で全員解散となったー
[広見もちゃんと寝ろよ…。]
【…ありがとう…。】
ーハイドはポムっと皆実の頭を撫で、部屋を出た。
コクっと頷き、部屋を出るハイドを見送った。
皆が出ていった後の部屋は静かだった。
静かな部屋にパチパチと壊れたパズルが組み上がる音が溶ける様に鳴り響くー
【…要らない…。】
ーパズルを侵蝕しようとする黒いシミを握り潰しながら、組み上げるー
“パチッ”
ー最後のピースが組み込まれた。
それは壊れたパズルが直った事を意味する音だったー
【…出来た…。】
ー皆実はパズルが壊れないように結界の中に閉じ込めたー
【あとは明日、夕を助けて聞けば良い。】
ーパズルを安全な場所に置いた皆実はその場で寝てしまった。
後からこっそり来た加州に布団に入れられたのを皆実は知らないー
[newpage]
[chapter:The story of that child who is frightened at night]
ー〚取調室〛ー
〔オレ、じらない!!
殺っでない!!〕
ー取り調べ室に泣き声一つ。
それに被せる様に男の怒声が鳴り出すー
『お前が殺ったのは知ってるんだよ!!』
ー護道の怒声がその場に響くー
〔だがら、オレじらない!!〕
『じゃあ、なんで凶器の刃物にお前の指紋が付いてるんだよ!!』
“バンッ!”
〔じらない、オレ指紋ない!!〕
『それを証明出来る人は!?』
〔いないげど、殺っでないのは言える!!〕
『犯人は皆言ってるセリフだ!』
ー護道が怒りのままに机を叩いた。
ビクッとレンは震えたー
(何も知らないのになんでコイツ怒ってるの!?)
〔オレ、本当になにもじらない!!〕
『なるほど、あくまで知らないと?』
〔(グスンッ)
ほんとにじらない…!!〕
ーそれを聞いた護道が『質問を変える。』とさっきの声のままに問い、手紙のコピーを出して来たー
『この“ヒナ”って誰だ?
手紙を見るに親しい間柄に思えるが?』
〔じらない。〕
(コイツ等、ヒナちゃんも捕まえてこんな事する気か!?
だったら喋らない様にしないと…。)
ー泣きじゃくりつつもレンは心の中で思った。
“ヒナを守らないと。”
レンは護道を見て言ったー
〔ヒナって誰?オレ、じらない人。
それ、オレが一人遊びで書いたやつ。
一人遊びしてたやつなのにこうやって出して来てくれてありがとう。〕
ー少し落ち着いた様で聞き取りやすい声で護道に礼を言ったー
『シラを切る気だな。
だったら喋りたくなるまで問い詰めてやる。』
〔問い詰められても、じらないものはじらないよ。〕
ー護道の問い詰め、その回答に答えるレンの声が取り調べ室に鳴り響くが、今日もレンの勝ちだった。
窓をチラッと見れば、すっかり夜だったー
『時間か…。
部屋に閉じ込めておけ。』
ー護道の声と共に手首に手錠を掛けられ、レンは取り調べ室を出された。
チラッと護道の目を見たレンは違和感を覚えたー
(なんでこの人目、濁っているの…?)
ーレンの目に映った護道の目は濁り、曇っていた。
ほどなくしてレンは取り調べ室から連れ出された。
自分を引っ張る刑事にバレないように周りをチラッと見渡したー
(オレを罪人と決め付ける目をしてる…)
ーレンを見る目は皆一様に‘お前が犯人だろ、夕凪レン’という目をしていた。
その目は全員濁り、曇っている。
そして、部屋に着いたのと同時に放り込まれたー
«ちゃんと自分が犯人だと言えよ、そしたら楽になれるぜ。»
ーそう言い、刑事は部屋の鍵を閉め帰って行ったー
〔殺ってもいないのに‘オレが犯人です’なんて、言うわけねぇだろ、バーカ。〕
ーレンは小さく悪態を付き、夜の暗さに怯えたー
(ううっ…。
警察も刃物も夜も全部怖い…!!)
ー取り調べ室では気丈に振る舞っても夜と刃物と警察が怖いのには変わらず、部屋に戻れば怯えが一気に襲って来る。
全身がガタガタと震えるのを感じた。
が、震えつつも頭の中で小さなパズルのピースが生まれた。
それは小さくて掴める物では無いが、震えを抑えるには十分な物だったー
(そう言えば、あの刑事なんて言っていたっけ…?)
“深夜0時〜3時の間お前は公園で被害者を殺め、逃げた。
凶器の刃物にはお前の指紋が付いていた。”
(他は泣きじゃくっていて覚えてないけど、この二つだけなら覚えてるんだよなぁ…。)
〔指紋無しの刃物と警察恐怖症が刃物を握れる訳が無い…。
あの日は誰かに呼び出されて公園に行ったんだよなぁ。
箱に仕舞ってあるから、箱を見れば分かるんだけどなにかされてその箱達、四方八方に飛ばしたから覚えてない。〕
(目撃者と発見者は何処だ…?
ハッカーだからというだけであそこまで疑うか?)
〔駄目だ、眠気で考えられない…。〕
-レンは用意されていた毛布に潜り込み、眠りに付いた。
夜と警察と刃物に怯えるレンが助け出されるまで、後少しー
[newpage]
[chapter:Help that child who is frightened at night]
−朝−
〈広見、起きろ。〉
−薬研の声で皆実は目を覚ました−
【…おはようございます…。】
〈おはようさん。
良く、寝れたか?〉
【…(コクッ)…。】
−うつらうつらしながらも皆実は頷いた。
目が閉じかけるが、櫛に手を掛けた。
寝癖を梳かそうとするが櫛が髪から離れ、床に落ちた。
その様子を見た薬研が声を掛けた−
〈なら良い。
髪梳かしてやっから櫛、貸せ。〉
【…ん…。】
ー櫛を薬研に貸し、梳かされている間にレンの救出作戦を練るー
〈広見、出来たぜ。〉
【…ありがとう…。】
ー髪を梳かし終わったのを告げ、皆実に櫛を返した。
返された櫛は化粧箱に入れられたー
【…薬研兄さん…。】
〈どうした?〉
【…身支度の手伝い頼んでも…?】
〈良いぜ。〉
ー出来る所は皆実がやり、出来ない所は薬研が手伝い、身支度を終えたー
〈これを着ければ完成。
今日の髪飾りは広見が好きなヤツだぞ。〉
ー薬研は皆実の髪に小さな花の髪飾りを付けた。
皆実は礼を言い、欠伸を一つしたー
【ありがとうございます。
ご飯食べたら、作戦内容言いますね。】
〈おう。
食い過ぎるなよ?〉
【はい。】
ー薬研は打刀に化け皆実の左側に立ち、輪を作った。
いつもの様に皆実はその輪を掴んだー
【それじゃ、行きましょうか。
薬研兄さん。】
〈おん。〉
ー薬研に連れられ、食堂に向かった。
食堂に近付くと良い匂いが漂って来たー
「おはよう。
主、薬研君。]
ー声を掛けたのは燭台切光忠だ。
この食堂の主と言っても良いー
「今日は何食べる?]
【…お粥で…。】
「寝起きだもんね…。
でも、お粥だけじゃ足りないだろうから混ぜ込み粥にしとくよ。
薬研君は?]
【ありがとうございます。】
〈俺はいつもので。〉
「了解、じゃ待っててね。]
ー光忠は台所に消えた。
暫くして光忠が2つのお盆を持って来た。
「はい、お粥(肉と鮭混ぜ込み)といつもの定食。]
ー光忠はトンッと二つの盆をテーブルに置いた−
「どういたしまして。
じゃ、任務頑張ってね!]
ーそう言い、台所に戻って行ったー
【〈いただきます。〉】
ー朝御飯を食べながら、皆実は薬研に聞いたー
【“いつもの定食”って?】
〈唐揚げ定食に麦茶付き。〉
【なるほど。】
ー他愛もない会話をし、二人は朝御飯を食べ終えたー
〈【ごちそうさまさまでした。】〉
〈戻してくるから、待ってろ。〉
【ありがとう、薬研。】
ー薬研は自分の分のお盆と皆実の分のお盆を持って行った。
ほどなくして薬研が戻って来たー
【加州達はご飯食べたんですかねぇ…。】
ー皆実の呟きが聞こえた薬研は〈あー…。〉と言いながら視線を逸し、答えを返したー
〈…起こすの忘れてた。〉
【ですよね…。
燭台切さーん、使ってないフライパンありませんかー!!】
ー皆実は燭台切に届く様な声で言いながら、台所に向かった。
暫くすると捨てる予定のフライパンを持った皆実がやって来たー
【これで加州達を起こしましょう。
そして、レン救出作戦について話さないと。】
ー〈だな。〉と薬研は頷き、皆実のアテンドを開始した。
向かう部屋は加州、ジキルとハイドが寝てる部屋だー
ー〚加州の部屋〛ー
【ねぼすけ軍団、起きろー!!!】
“カンッカンッ”
【今日はレンを助けに行く日ですよー!!!
起きろー!!!】
ー皆実はフライパンを叩き、ねぼすけ軍団を起こす。
薬研は未だに寝ている軍団の布団を剥がしに掛かるー
〈起きろ、三人共ー!!〉
ー薬研は布団剥がし、皆実のフライパン叩きの音で三人は目を覚ました。
が、目が死んでおり油断したらまた寝そうな空気だった。
加州が船を漕ぎ、ジキルとハイドは布団に戻ろうとしていた‐
【そんなにドラムとフライパンの演奏が聞きたかったんですか。
良いですよ、目が覚めるまでずーっと鳴らしてあげます。
薬研兄さんはフライパンを、私はドラムを鳴らします。】
〈了解。〉
‐机にフライパンと影から出したドラムを置き、二人は思い切り鳴らし始めた。
フライパンとドラムの音で眠気が吹っ飛んだ三人は飛び起きた‐
[分かった、分かった!]
「起きるから!」
「演奏止めて!!〛
‐その声が届いた二人は演奏を止め、フライパンとドラムを机から退かした‐
〈最初から起きれば良かったのに…。〉
【楽しかった。】
‐薬研はいそいそと支度をする三人に呆れたという視線を送り、皆実はクスッと笑った。
支度が終わった三人はダッシュで食堂に向かった‐
〈朝飯、食って来いよ〜。〉
‐薬研は三人の布団を畳みながら、ダッシュで食堂に向かう三人を見送った‐
【次はコハクとぬりかべの部屋か…。】
‐影にフライパンとドラムを入れながら皆実は言った。
加州達の部屋とは少しだけ離れた所にある部屋に二人で暮らしているのがコハクとぬりかべだ‐
〈あの二人ならとっくに飯とか支度終わってそうだけどな。〉
【でも、一応。】
‐薬研と皆実はコハクとぬりかべの部屋に向かうことにした‐
ー〚コハクとぬりかべの部屋〛ー
『わふっ!
(二人ともおはよ!)」
「準備出来てるよ。』
ーコハクとぬりかべはお茶を啜りながら二人が来るのを待っていたー
〈ねぼすけ軍団が来たら、作戦決行だとさ。〉
『わふっ!
(表の世界行くの初めてだから楽しみ!)」
ーコハクは部屋の中を走り出した。
表の世界に行けるのが楽しみらしい。
そんなコハクにぬりかべは言ったー
「コハクちゃん。
今日は任務で表に行くだけで遊べないから楽しめないよ。』
『くぅーん…。
(そうだった…。)」
ーコハクはシュンッとした。
そんなコハクを見た薬研が言ったー
〈任務が終ったら、少しだけ寄り道してやるよ。
(それぐらい良いだろ、広見?)〉
ー薬研は皆実の耳元で呟いた。
(ええ。
コハクのしょんぼり顔は見たくないので。)
皆実はその呟きに頷いたー
【ほんの少しですが、寄り道します。】
ーその言葉を聞いたコハクがパァァッと明るくなったー
「良いんですか…?
捕まったりしたら…。』
ーぬりかべは心配そうな声を上げたー
【捕まらない様に楽しめば良いかなと】
「それもそうですね。』
‐ぬりかべも納得した様で表の世界に行くのを楽しみにしている同居犬を撫でた。
三人と一匹でのんびり待っていると残りの三人がやって来た‐
「ごめん、説明始まった!?〛
[寝ぼけて、すまねぇ!!]
「今日がレンの救出の日なのに二度寝しかけて、ごめん!!
説明会ってまだ始まって無いよね!?」
−三人の謝罪の声がぬりかべ達の部屋に響いた−
〈まだ説明されてないから、セーフだ。〉
−薬研は“セーフ”と言い、ポーズを取った。
三人はその言葉とポーズに“良かったー!!”と声を揃え、安堵した。
ジキル、加州、ハイドが空いてる所に座ったのを確認した薬研が皆実に告げた−
〈さっ、皆座ったぜ。
どうやってレンを救出するか教えてくれや。〉
−薬研の言葉に皆実は頷き、作戦内容を告げる−
【では、内容を発表します。
“署内を走り、全員の気を引いている間にレンを救出”です。
証拠品は壊さないで、ともかく騒いでください。】
[それだけで良いのか?]
−ハイドが問う。
問いに皆実は頷いた−
【ええ。
全員の気を引ければ良いんです。】
−皆実は配置が書かれた紙を渡した。
薬研達は書かれている配置を見た−
“東エリア:加州、コハク”
“西エリア:薬研、ジキル”
“南エリア:ぬりかべ、ハイド”
“北エリア:皆実”
−配置の紙を見たジキルが心配そうな声を上げた。
他の人達も頷いた−
「広見、一人で大丈夫…?」
【レンは私しか会った事がないので知っている人が行った方が良いでしょ?
と、いうわけで私一人です。
ですが、レンを見つけ次第保護し連絡を。
即、撤退します。】
‐皆実の言葉に五人と一匹は頷き、最終支度を始めた。
支度を終えた五人と一匹は皆実の声を待った‐
【表は歪んだ時間とレンが犯人という歴史が流れてます。
絶対、正気を保って下さい。】
‐皆実は懐から表世界の行きの鍵を懐から取り出し、影から現れた鍵穴に差し込み、六人は歪んだ時間と歴史が流れる表世界に任務へと向かった‐
ー〚表世界〛ー
‐表世界は‘グレーハッカーが犯人’という時間が瘴気として漂っている‐
[うげぇ、瘴気濃くなってない?]
「確実に濃いな…。」
‐ジキルとハイドは顔を顰めた‐
「コハクちゃん、大丈夫?』
『わふっ…。
(こんなに表世界は濁ってるの?)」
‐ぬりかべはジキルとハイドと同じく顔を顰めつつも、コハクを心配した。
コハクは『わふっ(大丈夫)」とひと鳴きした‐
「瘴気濃すぎ…吐いて良い?〛
〈加州の旦那、頼むから吐くなよ。
俺達も吐きそうなんだわ…此処まで濃いとさ。〉
‐加州は‘うぷっ’と嗚咽を漏らした。
その嗚咽の声を抑える様に皆実が言葉を重ねた‐
【本庁までもう少しです。】
‐皆実はいつも通りに振る舞ったが、語尾に吐きそうな声が混じっていた。
濃すぎる瘴気の中、なんとか本庁に辿り着いた。
六人と一匹は本庁を眺めた‐
【皆、行きますよ。】
‐皆実の声に頷き、本庁内に入った‐
ー〚本庁内〛ー
六人は作戦通りにエリア内を走り、騒ぎを起こした。
皆実の狙い通り、全部署がその騒ぎの音に反応した。
あちこちを刑事達が駆け回る。
北エリアを走る刑事は護道のみだった‐
『皆実さん、なんでこんな事…!!』
【お友達を返してほしいから、ですかね?】
『お友達?』
【“グレーハッカー”
いえ、夕凪レン。】
‐皆実は走りつつ、言葉を紡ぐ‐
【あの子は私のお友達です。
なにもしてないのに捕まったら返して欲しいでしょ?
それと一緒です!!】
‐この先の道に障害物があるのをアイカメラが教えた。
皆実はそれを飛び越え、着地した。
護道もその障害物を飛び越え、皆実を追う‐
【なんだか、この鬼ごっこ楽しいですね!】
『楽しい訳無いでしょ…。
ってか、あんたスカート履いてる上に黒いベール付けてよく見えますね!』
【カメラで見てますので。】
『そういう問題か!?』
ー護道との追い掛けっこを繰り広げている時、皆実のイヤホンに吉報が入ったー
ー[夕凪レンを南エリアの取り調べ室から救出。
直ちに撤退をお勧めするぜ。]ー
【Thanks.Brother.】
ー皆実はイヤホン越しにハイドに礼を言い、角を曲がった‐
『皆実さん!!』
‐護道も負けじと追う。
皆実は護道の死角になる方向に走り去り、鍵に唱える‐
【“藤に花、八輪”】
‐そう唱え、鍵を開いた。
それぞれのエリアに扉が出現し全員、扉に飛び込んだ。
全員が入ったのを確認した後、皆実は鍵を閉めた。
扉が閉められた後、各所で“夕凪レンが逃げた”と雄叫びが上がったのを皆実達は知らない‐
[newpage]
[chapter:Bubbles and boxes and puzzles tell the truth]
−本庁から脱出した時、外は既に夜だった−
[んで、こっから寄り道か?]
‐ずっと尋問をされていて寝れておらず、気絶中のレンを担ぎながらハイドは皆実に聞いた‐
【ええ、寄り道がてらの現場検証ですよ。
行き先は知ってますね?】
−皆実の問いにハイドは頷き、言葉を転がした−
[月夜公園。
この子が追われる羽目になった事件の現場の公園だろ?]
【正解。】
「気楽だもんね。
その方が。」
『わふっ
(確かに)」
「コンビニで晩御飯買って来ました!!』
‐ぬりかべがコンビニ袋をぶら下げて帰って来た。
と、いうのも公園付近にコンビニがあったのでぬりかべにお使いを頼んだのだ‐
[ちと、重いからベンチに寝かせるわ。]
‐ハイドは優しくベンチにレンを寝かせた‐
「ありがとさん、レンを起こすとするかねぇ。〛
‐加州は優しくレンを起こした‐
〔…ううっ。〕
‐小さく呻き、レンは目を覚ました‐
〔…此処は?〕
【外。
お久しぶりです、夕】
〔…ヒナちゃん?〕
【ヒナです。
表世界での名前は…。】
〔…皆実、広見…だろ?〕
‐レンは薄目を開けながら皆実に問うた‐
【そうです、その名前が表世界での名前ですよ。】
〔…まさか、FBI様に助けられるなんてなぁ…〕
‐レンは上を向いたまま、言葉を紡ぐ‐
「お腹、空いてない?
ご飯あるよ〛
‐加州がコンビニ袋をガサガサ鳴らす。
レンは横目でそれを見た‐
「ご飯食べ終わった後、ちょっと協力して欲しい事あるんだ。」
−ジキルは優しくレンに言った。
レンはおにぎりを食べながら返事を返した-
〔…現場検証か?
それとも、証言取りか?〕
「両方だよ。」
[刑事達に話せない事でも俺等なら、安心だろ?]
『わふっ!
(のんびり話そ!)」
「うんうん。』
〔皆実、あんた良い仲間に恵まれたなぁ〕
‐レンは仲間達の声を聞きながらしみじみと言った‐
【感謝です、本当に。
で、夕はおにぎり何味にしますか?】
‐皆実もしみじみと返し、おにぎりの味を聞いた‐
〔ツナマヨ。〕
【了解です。】
-皆実は袋からツナマヨおにぎりを取り出し、レンにあげた。
レンは〔あんだと。〕と言い、おにぎりを受け取った-
〔なぁ、パズル持ってるか?〕
-おにぎりをパクつきながらレンは皆実に聞いた−
【持ってますよ、ほら。】
“パチンッ”
‐皆実は指を鳴らした。
すると藤色の水面からパズルが現れた‐
〔しっかり直したんだな。
俺が吹っ飛ばしたピースと箱達。〕
【時間掛かりました。
それと妨害に合いましたが、なんとか間に合いましたよ】
‐皆実は袋から塩むすびを出し、食べながら答えた‐
〔大変だったろ?〕
【いいえ。
[[rb:お友達 > あなた]]を助けれるなら苦ではありませんでした。】
〔…そか。〕
‐レンの呟きに皆実は頷いた。
皆実がおにぎりを食べている間、ジキル、ハイド、コハクがレンの隣に座り、言葉を掛けた‐
「食べ終わったら、真相話してね。」
[のんびりで良いからよ。]
『わふっ。
(ご飯、ゆっくり食べてね。)」
〔おう。
お前らも食えよ、じゃないと倒れちまう。
皆実を守る盾と矛なんだろ?〕
「盾と矛って…。
まぁ、間違いじゃないか。と、いうわけでご飯タイム!」
−ジキルの声と共に晩御飯の時間が始まった−
[俺は梅。]
「僕は鮭。」
【私は昆布。】
「オレ、海老マヨ!〛
「私も…!』
『わふっ。
(ボクは…。)」
〈お前は‘I LOVE 犬’だろ、餌。〉
‐薬研は袋に顔を突っ込んだコハクに突っ込みしつつ、残りのおにぎりを頬張り、袋からI LOVE犬と書かれた缶詰を取り出し、開けた‐
〈そら、食え。〉
『わふっ。
(ありがとう。)」
−レン達は賑やかな夕食を過ごした。
過ごした後、皆実がレンに聞いた‐
夕、あの日の事を教えて下さい。】
〔嗚呼。
パズル使うかもだから、そん時は許せよ。〕
【貴方の記憶ですので、お返しします。】
‐皆実がそう言ったのを確認したレンはベンチから立ち上がった。
すると、地面から泡が出始めた。
その泡に合わせ、レンが歩き出した‐
〔あの日、オレは仕事で使うコードを無くして焦っていた。〕
‐泡の中にコードを無くして慌てるレンが写り出す。
次の泡が姿を現し始めた‐
〔いくら探してもなくて、困り果ててたらメールが来たんだ。〕
‐溶けた証拠品が光を帯び、影から現れた。
その証拠品とはレンの仕事用の携帯だった‐
’“11時50分に月夜公園に来い。
お前の仕事用のコードを持っている”
〔って、メールを貰ったから怖かったけど行くことにしたんだ。〕
‐その声に合わせてパズルが光出す。
夜道を歩くレンがそこに居た。
泡の中で歩くレンに合わせ、本人も歩く‐
〔そして、ここに着いたのがギリギリの58分だったんだ。〕
‐レンがパズル達に泡を吹き掛けた。
パズル達はその泡を吸収し、それぞれの位置に埋まった‐
〔で、事件が発生する一分前、つまり59分に女が現れたんだ。〕
‐箱から女との会話が出て来た‐
“コードを返してくれ、無いと困る”
“返す?何を言っているの?
お前は今から…。”
‐箱にノイズが走った。
ノイズが止んだ頃、手には血塗れの包丁。
足元には死体があったー
〔女はもう居なくなってた。
これがオレが語る真実。〕
【ありがとう。
じゃ、現場検証したいので付き合い願っても?】
〔良いぜ。
オレも真実語ったけど、曖昧だったら嫌だからな。〕
−それから八人は証言通りの道を歩いた。
泡と箱が答えを紡ぎ出す。
“コロッ”
新しい箱が小箱から落っこちた−
〔ん?〕
−レンはそれを拾い上げ〔嗚呼…コイツだわ、俺のコードを盗んだの。〕と皆実に小箱を見せた-
【…コイツでしたか…。】
‐その箱から出て来た顔を見た皆実は渋い顔をした‐
【やっぱり、殺っとけば良かったなぁ…。】
‐皆実は【判断ミスしました。】とその顔を見ながら言った。
薬研もその顔を見た途端、舌打ちをした後、言った。
〈コイツ、終わったな…。〉と。
ぬりかべ、コハク、加州、ジキル、ハイドは頭に“?”を浮かべ、続きが来るのを待った。
レンは皆実に聞いた‐
〔知ってるのか?〕
【はい。
“更生を信じて仕留めるのをやめた奴”と言えば、良いですかね?
まぁ、今となっては“仕留めておけば良かった”になりましたが。】
‐皆実はため息を付き、やれやれと言うように首を横に振った‐
「主、コイツについて教えて?〛
‐加州は持っていたお茶を皆実に差し出した‐
【良いですよ。
いずれ仕留めないといけない相手ですから。】
‐皆実は貰ったお茶を飲みながら、その“仕留めておけば良かった”対象の事を語り出した‐
[newpage]
[chapter:I should have kept it]
ー〚回想〛ー
その日“ブラック本丸を破壊せよ”という任務が入った。
担当は私と薬研兄さんの二人。
任務書に書いてあった本丸に行ってみると瘴気、呪い、怨みと言ったものが渦巻いている所だった。
〈こりゃまた…。
すげぇ、瘴気だなぁ…。〉
【呪いと怨みも混ざってる…。】
瘴気漂う本丸に乗り込んだ。
〈手荒い歓迎だなぁ…?〉
【そんなに歓迎しなくて良いんですよ、もう】
入った時には気配が無かったのに一斉に刀剣男士達に囲まれたのだ。
…いや、正確に言うと〚“刀剣男士だったモノ”〛と言った方が良い方だった。
【兄さん、この子達は…。】
私が兄さんに問うと首を横に振りながら兄さんは〈助けられねぇ…。〉と答えを返した。
〈もう…瘴気と審神者への呪いと怨みに飲み込まれていて、助けるには殺るしか方法が無い。〉
悲しそうな声で答えた後、兄さんは姿を打刀に変え抜刀した。
【…そう…。】
私も鎌を抜いた。
〈俺は後ろ、ヒナは前を頼む。〉
【了解。】
前と後ろの前後の殲滅戦を開始した。
“パキンッ”
聞き慣れた音が廊下を包み、私達の耳を包む。
斬れば斬るほどに真っ黒に染まる刀と鎌。
叫びに似た声が鳴り響く廊下…。
お互い真っ黒になりながら、審神者部屋を目指した。
ー〚審神者部屋〛ー
真っ黒けになりながら辿り着いた審神者部屋。
中からこの本丸の審神者の声が聞こえてきた。
〘ふふっ、今頃侵入者は死んでるわね。
アタシを守るのがアイツ等の役目♪
道具は壊れてもアタシが無事なら世界も喜ぶってものよ。〙
と、上機嫌な声が届いた。
(殴り込みしても良い?)
〈…。
(やっちまえ。)〉
“ドコッ”
【お邪魔しまーす。】
襖を蹴り飛ばし、中に入った。
〘なっ、何者!?〙
〈どうもぉ、侵入者でーす。〉
驚く女の声に合わせるように兄さんが声を上げる。
〘どうやって入ってきたのよ!?
護衛は!?〙
【護衛?
嗚呼、アナタに怨みと呪いを募らせた人達ですか?
ちゃんと、還してあげましたよ。】
〘ハァ!?アタシが怨まれてる!?
そんな訳ないわ、アタシは主よ!!
アタシを守るのがアイツ等の役目よ!!〙
女は喚く様な声でさっきと同じことを言う。
〈いや、ガッツリ怨みと呪い募らせてたぜ?
“手入れも愛もくれない”って。
そのおかげで男士とは呼べねぇ物に変貌してたぞ。〉
【あれ程までに呪いと怨みを募らせるってすごい才能の持ち主ですね、拍手しちゃいます。】
軽めに拍手をすれば女の顔がみるみる赤くなる。
〘キー!!
アタシは主よ、道具は持ち主を守るのが役割でしょ!!
だのにアイツ等、‘怪我したから治してくれ’、話を聞いてくれ、愛をくれ’って、人間みたいな事言いやがって!!
道具のクセに口答えしかしないから堕して殺してやったのよ!!〙
女の口から語られたのは吐き気と殺意が湧く言葉ばかりだった。
〈ヒナ、こいつ駄目だわ。
仕留めるぞ。〉
その言葉を聞いた兄さんは即抜刀し、女を組み倒した。
〘ぐえっ、なにする気よ!?〙
〈処刑。
ブラック本丸の破壊が俺達の任務だから、お前もその本丸の一部として破壊してやるよ。〉
その言葉を聞いた瞬間、女が泣きそうな声を上げた。
〘ひっ、今までの事を謝罪するわ…!!
だから、許してください!!〙
〈許す訳ねぇだろ。
あんな事を言っておいて許されると思うな。〉
〘さっ、審神者を辞めます…!!
今後はちゃんと一般人で生きますから!!〙
女はわんわんと泣きながら謝罪を繰り返した。
本来なら期待0で処刑と言いたいところけど…。
表世界での職業病がここで現れた。
(少しだけ更生を期待しても良いかな…。)
〈泣いたって無駄って言ってんだろ!!〉
“ヒュオッ”
“キンッ”
ー薬研の刃が女の首を目掛け突き刺そうとした時、皆実の小刀がその刃を止めたー
〈ヒナ…!!〉
【…帰りましょう、任務は終わりました…。】
〈…おい、女…。〉
兄さんは起き上がり、女を起こして言った。
〈ヒナに感謝しろよ。
良いな?〉
女は〘ありがとう…ありがとう〙と言い、その場で泣いていた。
…でも、これだけはやっとかないと私の気が済まない。
泣いている女に【ねぇ、審神者さん】と声を掛けた。
〘なんでしょうか…?〙
泣き晴らした女がこっちを見る。
“トンッ”
短刀の鞘で女の腹をなぞった。
【今度やったら…お前の腹をカッ捌く。】
〘はっ、はい…!!〙
【それでは、さようなら。】
〈二度と会わん事を願う。〉
そう言い、ブラック本丸破壊任務を終えた。
次の日、その本丸と審神者は居なくなっていた。
(ちゃんと更生していると良いなぁ…。)
ー今となっては仕留めておけば良かったと後悔しているー
[newpage]
[chapter:gift return]
ー〚回想終了〛ー
【あの時、仕留めておけば良かったなぁ…。】
‐皆実はまた、ため息を付いた‐
〈だから、言ったのに…〉
〔期待してみたかったんだろ?〕
‐ため息を付く薬研の声とレンの声が同時に皆実の耳に届いた‐
〈ったく…。
まぁ、見つけたら仕留めるぞ。〉
‐薬研の言葉に全員が頷いた‐
【…それもそうですね…。
(見つけたらお腹をカッ捌いてやる…)】
〈…おっと、レンを捕まえようとする連中の音が聞こえてきたぜ?〉
‐遠くでサイレンの音が聞こえきた‐
【せっかく助けたのにまた取られるのは嫌ですので、一旦帰城しますよ。】
‐影から扉を出し、開いた‐
【…お掃除終わったら、頭撫でてください…。】
‐追手の中に居るであろう、相棒に届けと願いを込め、皆が飛び込んだ後、扉を閉めた。
皆実達が去った後、公園に追手のパトカーが止まった。
刑事達がレンを探す。
護道もレンを探していた。
その時、泉が小声で言った‐
‹護道室長は皆実捜査官の捜索をしては?
此処は俺がなんとかしますので›
『…分かった、ありがとう。』
‐護道はそっと刑事達と離れ、皆実の捜索を開始した‐
『何処に行ったんだろ、皆実さん…。』
‐誰も居ない場所を護道は探し始めた‐
『…ん?』
‐皆実を探して少し経った時だった、キラリと光る丸い何かを発見した‐
『これって、皆実さんがいつも着けてる髪飾りだ…。』
‐護道が見つけたのはいつも皆実が着けている小さな桜の髪飾りだった‐
『…ってことは、俺達が来るまでは此処に居た。
俺達が来る前に逃げたって事か。』
‐護道のその髪飾りを懐に仕舞い『皆実捜査官は居なかった』と刑事達に言った。
刑事達も‹“レンは此処には居ない。”›と返事を返し‹“一旦、本部に帰るぞ。”›と言い、帰った。
もちろん、護道もその流れに添い本部に帰った‐
ー{本丸}ー
【あれ…?
髪飾りどこ?】
‐自室に戻り、ベールを取った後のこと。
いつも着けている髪飾りが無いのに気付いた‐
【表世界で落っことしたかな?
お気に入りだったのに…。】
‐ポツリと呟き、別の髪飾りを箱から出し髪を留めた。
桜の代わりに髪を留めるのはひまわりの髪飾りだった‐
【さて、反撃の支度をしないと…。】
‐空の玉を出し、証言と証拠を混ぜ合わせ始める。
混ざり出した証言と証拠は淡い光を帯び、混ざる‐
【おっとっと…。】
‐混ざり出した液体に不純物(犯人が放った時の欠片)が混ざろうとしているのに気付いた皆実はその欠片をピンセットで摘み、小さな弓へと変化させた‐
【お前の思い通りにさせる訳無いだろ。】
‐小さな弓を小瓶に入れ、不純物がないかを確認しながら混ざるのを見守った。
不純物が出たら取り除きを繰り返し、ようやく玉が完成した。
出来た玉は大きめのガラス瓶に入れて保管用の結界を張った‐
【今までの欠片を集めたら大きな弓矢が出来るな…。】
‐皆実は欠片を瓶に入れ、その蓋を閉め自室から出た。
瓶の中で欠片達が暴れていたが蓋の内側から平たいハンマーが現れ‘パリンッ、パリンッ’と欠片を砕き始めた。
部屋の中に欠片を砕く音が響く‐
【薬研から黒ずんでもう解読不可の証拠を貰って来たからこれも入れて…って、もう砕きの仕事してましたか。】
‐瓶のラベルに“砕き中、暫くお待ち下さい”の文字が浮かんでいた‐
【砕きが終わるまで、こっちの瓶に入れておきましょう。】
‐空瓶に黒ずんでもう解読不可の証拠を入れた。
真っ黒で淀んだ空気が瓶の中を漂う‐
【これごと入れちゃいましょう。
綺麗な弓矢が出来そう。】
‐瓶の中の欠片達が砂になった後、瓶のラベルに‘砕き終わりました。
お次の欠片、瓶を投下して下さい’と書かれた‐
【これもお願いします。】
“ポイッ”
ーパリンッ、欠片入りの瓶が砕かれ始めた。
砕かれる欠片の中に黒い手のような物が浮かんだ。
一本の黒い手が瓶を叩き、もう一本の手には真っ黒な目が浮かび上がり、皆実を見ていたー
【そんなに見つめられても砕くのは止めませんよ。】
‐ハンマーが瓶を叩いていた手を砕く。
追加のハンマーが目を砕いた‐
【出来るまでのんびりお茶啜るとしましょう】
‐皆実は欠片が全部砕かれ終わるまでお茶を飲みながら、欠片が砕かれる音を聞いていた‐
【終わりましたか…。】
‐最初の瓶に真っ黒な液体が揺蕩っている。
皆実はその瓶を指先でなぞった。
すると真っ黒な液体は瓶の中で弓矢に変化した。
真っ黒な弓矢はカタカタと揺れる。
まるで“早く出せ”というように。
瓶の中から弓矢を一つ掴み、紙飛行機の様に飛ばした。
“ビュンッ”
飛ばされた弓矢は元の主の所に帰って行く‐
【捜査妨害という名のプレゼントのお返しの弓矢です。
たっぷり受け取ってください。】
‐黒い弓矢を投げ飛ばしながら、皆実は呟いた。
飛んで行く弓矢はどれも黒い汁を垂らしていた‐
【これでラスト。】
‐とびきり大きな弓矢を瓶から出す。
大きいだけあって汁の量も半端ではなかった。
“ヒュッ”
とびきり大きな弓矢を投げ飛ばした‐
【これでよし、あとは向こうに届く良いですね。
おや…。】
‐手を見ると少しだけ火傷もどきになっていた‐
【…薬研兄さんに怒られそうだ…。】
‐皆実は【火傷の薬あったかな…?】と弓矢が完全に消えるのを見ながら言った‐
ー〚黒本丸〛ー
‐皆実が放った黒い弓矢達が本丸に居る黒い人影の上に降り注ぐ‐
〘!?〙
‐降り注ぐ黒い弓矢達は黒審神者を囲む様に落ちた。
黒審神者は弓矢の一つに手紙が付いてるのを見つけた‐
【いづれお前を捕まえ、そのお腹を捌きます。〉
〘!!
この文章…まさか、アイツ!!〙
‐黒審神者は外を見た。
外には刀剣男士とも呼べぬナニカが黒審神者を守るために彷徨いているのみだった‐
〘そうよね、場所は分かるかもだけど隠しちゃえばこっちのモノよ…〙
‐黒審神者は〘ふふっ…。〙と笑ったがその声の中に一瞬だけ焦りがあったのに本人は気付いていない。
【“夕焼け”】が黒審神者の居る本丸を照らすまであと少し‐
[newpage]
[chapter:heal the distorted time]
【薬研兄さん、火傷もどき起こしたので薬と包帯お願いします。】
‐薬研の部屋に来た皆実が最初に発した言葉だった‐
〈はいはい…。〉
‐薬研は皆実の手の火傷もどきの理由を聞かず、薬と包帯を用意した。
薬と包帯を巻かれながら皆実は薬研に言った‐
【ちょっと表に行って来ます。】
‐その言葉が出た瞬間、薬研は薬と包帯を巻く手を止め皆実を見た。
その目は兄として弟を心配する目だった‐
〘今、表に行けば捕まるかも知れねぇんだぞ。
それでも良いのか?〙
‐皆実はコクッと頷いた‐
【いつまでも歪んだ時間をそのままにするのは嫌なのです。】
‐表世界での目の色である夜色を灯した片目で薬研を見ながら答えを返した。
夜色が本丸内で灯ったということは表世界に行くのを決めている目だと薬研はすぐさま察知した‐
〈分かった。
絶対に捕まるなよ、良いな?〉
【はい。
薬研兄さん。】
‐皆実は再び頷くと【薬と包帯、ありがとうございました。】と言い、部屋を出た‐
〈行ってらっしゃい、広見。〉
‐小さくなっていく背を見ながら薬研は小さく手を振った‐
ー〚表世界のビルの屋上〛ー
‐皆実は一人、表世界に来ていた。
連日の調査と戦場での戦闘で皆が疲れているのを考慮し、皆が来る扉を閉めて表世界に居た‐
【今の状況で一人で表世界に来るの初だな…。
(相変わらず時と空気が淀んでいる…。) 】
‐表世界はどんよりと濁った空気と淀んだ時が流れている。
“夕凪レンが犯人”と淀み濁った時間の謳声が流れている。
皆実は夜色の両目でその楽譜がある場所を見た。
見えずともそこに楽譜があるのは分かっている。
歪んだ旋律が街を覆い、時間を壊していた‐
【“夕焼け小焼け、夜を飲み込め。”
(正しい楽譜を切ったら洒落にならない…。
だったら、夜を今だけ飲み込ませるしか無い)】
“ゴポッ”
ー夕焼けが夜を飲み込む音が皆実の耳に微かに聞こえた。
段々と両目に視界が灯り始めた。
開かれ出した視界にクッキリと淀んだ楽譜と謳声からなる音符が映った。
それと同時にゆっくりと痛みが両目を襲い出す。
皆実は降って来る楽譜を階段代わりにし楽譜がある場所に向かった。
地上に降り注ぐ音符はどれもこれもドロドロしていて、泥濘を踏んでいるような感覚に襲われた。
道中、邪魔して来る音符があったが鎌で切り裂きその音が地上に行かぬように破壊した。
太陽の光が破壊した音符を照らす。
音符達の邪魔を切り続け、ようやく脈を打つ楽譜に辿り着いた‐
“ドックン”
“ドックン”
‐淀んだ謳を編む楽譜が脈を打つ。
その脈と生まれを待つ謳が皆実を足の下を通る。
時折流れる謳が視界と鼓膜を濁らそうとする‐
【うっ…。】
‐皆実は吐きそうになるのを抑え、鎌から一本刃のハサミに変え、自分の足の下を通る脈筋に突き刺した‐
⇚ギャァァァァア!!!⇛
‐突き刺された脈筋が悲鳴を上げ、黒い音色を血の様に流し始めた。
その悲鳴を聞いた手の様な管が皆実を捕えようと手を伸ばし襲い掛かる。
クルリと躱しながらも捕まえようとした手を斬る。
斬られた手から出た黒い音色が皆実のハサミと本人を黒く染める。
その黒を拭い、手の根元にやって来た‐
【邪魔なお手は斬りましょう。】
‘’ザクッ、バサッ“
‐皆実は手の根元にハサミを突き刺し、斬った。
手を躱しながら分裂させたハサミ達も同じ動きをした。
斬られた手の様な管達は消失しようと最後の力を振り絞り、自らを裂こうと指を動かした‐
【おっと、まだ消えられたら困るんだよ。】
“パチンッ”
‐手首の端をクリップの様にハサミで突き刺した。
突き刺された手の様な管はビクビクと脈を打つ‐
【正しい音色、返して貰う。】
ー手首に真っ直ぐ刃を突き立て、斬った。
斬られた箇所から黒い音色と正しい音色が混ざって出て来た。
正しい音色は淡い光を放っていて綺麗だった。
皆実は淡い光を放つ音色を拾い上げ、持っていた小瓶に入れたー
⇛がえぜ、ぞれば我の音色ぞ!!⇚
‐その叫び声に反応した新たな黒い手が伸び、皆実を捕えようと動き出した‐
【コレ、お前の音色じゃないだろ。】
‐伸びて来た手を斬りながら皆実は楽譜に言った‐
⇛夕凪レンが犯人なのが正しい旋律!!
それを破壊する即ち、悪音なり!!⇚
‐ハサミで斬られていた手達がその声に反応し、再生した。
が、最初に斬られた手は再生しなかった‐
(音色を取られたら再生出来ないのか、なら…。)
‐皆実は鎌を構え、自分を捕えようと向かって来る手達を斬った。
そして斬った手達が再生しない内に中に組み込まれている正しい音色を抜き取った。
黒い音色を拭き取り、最初の音色が入った瓶に入れた。
最初に入った音色と後から入れた音色達が集り出し小さな楽譜を編んでいく。
だが、本当の楽譜になるには音が全然足りず、音色も刻む時も小さいままだった‐
(残りはあの中か…。)
‐皆実が再び鎌を構えた時だった、淀んだ楽譜が口を開いた‐
⇛ぐぬぬっ…!!
この小童め…我の音色を返せ!!⇚
‐楽譜の端から巨大な目と手が一体化した手もどきが現れた。
巨大な目がギロリと上から皆実を見、濁った涙形の刃を降らせ始めた。
皆実はその刃を鎌で躱し、刃を弾き飛ばした。
が一部のごく僅かに付着した涙形の刃が”ぬちゃあっ“という粘着質な音を出し、鎌全体を覆い始めた。
鎌を覆い、刃に纏まり付いた涙形の刃は重さを伴い皆実を押し始める‐
(重っ…!!)
“ギギギッ”
‐粘着質な刃を鎌で押し返そうとする皆実を見ながら楽譜はケタケタと笑いながら言った‐
⇚その小さき体で我の刃を防ぎ、押し返そうとする心は天晴。
ならば“貴様の鎌”を貰おう…今日から我が所有者だ!!⇛
‐楽譜が叫んだ瞬間、皆実の手から鎌が抜け黒い音色を生み出す楽譜の印が刻まれてしまった。
鎌が皆実に向かい小刀を撃つ。
すかさず皆実は撃たれた小刀を避けるが、鎌は皆実に向かって次の小刀を撃った‐
(もう私の鎌っていう記憶は無いのかな…。)
‐小刀を避けつつも、寂しげな視線を鎌に送った。
だが、いつまでも避けるという防御をするわけにもいかない…。
着実に両目が痛み出しているのだから‐
【…。
(早く、終わらせないと…。)】
ー皆実は影からスルリと太刀を出した。
キラキラと輝き、海を宿した太刀。
鞘からはポタポタと水滴が滴っていた。
それをみた楽譜はまたケタケタと笑ったー
⇛そんな物で我の鎌を止めれるものか!!⇚
‐楽譜が鎌を振るう。
勢い良く振られた鎌が皆実を狩ろうと飛ぶ様に舞った。
かたや皆実は、太刀を鎌の勢いを殺す様に振るった。
刃と刃がぶつかりバシャンっと音と共に鎌の刃先が海水に塗れ、粘着質な地面が水浸しになったが、鎌の勢いは殺せた。
勢いを殺された鎌から小さい鎌が弾けるように現れ、高速で皆実の方へ飛んで来た。
その速さへの反応が遅れた皆実は頬と足に赤い筋を走らせた‐
【っ…。】
‐皆実の頭上で鎌の花が咲き、一気に弾けた。
弾けた花弁を皆実は太刀で防いだ。
が、鎌の花弁の数が多く動くことは出来ない。
そんな様子を見ていた楽譜が皆実と鎌に聞こえるように言った‐
⇛そろそろこの演舞にも終焉をもたらさなければ…。⇚
‐楽譜の声に反応するかの様に鎌が震える。
震えた鎌から大小様々な鎌が出始めた。
その様子を見た皆実は太刀を一回転させ、防御の構えを取り、結界を張った‐
(今のあの子の攻撃なんて喰らったらひとたまりもない…。)
⇚消えよ、夕焼け!!⇛
‐楽譜がそれまで持っていなかった指揮棒を振り下ろす。
その振り下ろされた指揮に合わせて、鎌の花が皆実に降り注いだ。
海色の結界が降って来る鎌を防ぐ音が響くが、次第に不穏な音もその場に生まれ出す‐
“ピシッ”
‐結界が割れる音だ。
その音が楽譜の耳に届いた‐
⇚ふははっ、我が鎌は優秀だ。
お前が張った結界を砕いてくれるからなぁ!!⇛
‐その声に機嫌を良くした鎌が次々と質量を上げる。
そして鎌から鋭い爪が現れ、結界を掴みに掛かり始めたのだ。
鋭い爪はググッと結界を握り締め、破壊した‐
“パリンッ”
ー破壊された結界が地面に落ちて行くー
【…っ…!!】
ー皆実が再び防御の構えを取ろうとした時だった。
猛烈な痛みが皆実の身体を襲ったー
【…っ、あ…?】
ー恐る恐る自分の身体を触った。
手の平を赤が濡らし、手の平から溢れた血が地面を染めていくー
“ゴポッ”
ー皆実の口から赤い筋が流れ出した。
赤い筋と痛みの中、視線を動かした。
“結界を壊した鋭い爪が自分を貫き、固定しているのだ。”と皆実は理解したー
その状況を見た楽譜がまた笑いながら鎌に指揮を振るうー
⇚喰らえ“鎌の花雨”!!⇛
‐大小様々な鎌が皆実に降り注ぎ、その小さな身体を四方八方に貫く‐
【ぁぁぁぁぁぁああ”ー!!】
‐音列の線の地面に皆実の悲鳴が鳴り響く。
悲鳴は暫く鳴っていたが次第に小さくなり、聞こえなくなった。
楽譜は笑いながら言った‐
⇚悪音しか鳴らさぬからこうなるのだ。
さて、貴様が奪って行った音色返して貰うぞ。⇛
‐楽譜は血塗れの皆実が持っている小瓶に手を伸ばした。
小瓶に手が掛けられようとした時だった…。
“ザシュッ”
楽譜の視界が真っ二つに鳴る音がし、そのまま楽譜は二つに割れた‐
⇚ぬのぉ…!(なにが起きたのだ…!!)⇛
‐割れた視界で自らを割った者の姿を見る‐
⇛なっ…!?貴様は!?⇚
【悪音指揮者の夕焼けです。】
‐楽譜が見たのは真っ赤なスカートに身を包んだ皆実であった。
その紅は間違いなく先程流された血の赤。
皆実はスカートの端を掴み、お辞儀をしてみせた。
驚いた楽譜が言葉を紡ごうとした瞬間、皆実が楽譜の口に手を突っ込んだ‐
【お前が盗んだ正しい時間と楽譜、返して貰う。
あと私の[[rb:武器 > バディ]]もな。】
”ガシッ“
‐皆実の手が歪んだ旋律を奏でていた楽譜の本体を掴んだ音が皆実の耳に届いた‐
⇛やべろ…ぞんなごどをじたら我ばぎえじまう!!
この時間が正じいのだ…!!⇚
【この音色とお前が盗んだ時間が正しい旋律で時間と歴史…それを壊そうとするのは悪、だ。】
‐ドンドン本体を楽譜の口から引き摺り出す。
楽譜が出て行く本体を飲み込もうと息を吸った時、皆実の太刀が動き、楽譜の口を引き裂いた。
楽譜は裂かれた口で言葉を吐いた‐
⇚鎌、我を助げろ!!⇛
‐その声に反応した鎌が皆実を狩ろうと再び動き出した。
皆実は襲い掛かって来る鎌を小刀で受け止め、その持ち手に突き刺し、楽譜の方を見た‐
【その目“なんで生きてるんだ?”っていう目してますね。】
‐ドンドン本体を楽譜の口から引き摺り出す。
楽譜が出て行く本体を飲み込もうと息を吸った時、皆実の太刀が動き、楽譜の口を引き裂いた。
楽譜は裂かれた口で言葉を吐いた‐
⇚鎌、我を助げろ!!⇛
‐その声に反応した鎌が皆実を狩ろうと再び動き出した。
皆実は襲い掛かって来る鎌を小刀で受け止め、その持ち手に突き刺し、楽譜の方を見た‐
【その目“なんで生きてるんだ?”っていう目してますね】
⇚なべ、わがっだ…?⇛
‐自分が言いたかった事を当てられた楽譜が半分になった目を見開いた。
皆実は楽譜の隣に座り、言葉を紡ぐ‐
【“身代わりの術”を使いました。】
⇛そんな余裕、いづあっだど言うのだ!!⇚
‐楽譜が濁音まみれの言葉を編む。
皆実の言葉が紡がれようとした時、楽譜が喋ろうとしたのでその口に太刀を突き刺し、皆実は返しの言葉を紡ぐ‐
【貫かれる前の一瞬の内に身代わりの術を使い、脱出しました。
とはいえ、刺された痛みと貫かれた時に出る血がこっちに来るタイプの術でしたので叫びましたけどね…。
だって、めちゃくめちゃ痛いし血がドバドバ出るんですもん…。
あーあ…。
せっかく、白いスカート着たのに時間と共に血は酸化していくから、お前を殺したら真っ黒スカートになっちゃいます。
では、回収続けますね。】
‐そう言い突き刺していた太刀を引き抜き、歪んだ楽譜が飲み込んでいた正しい旋律を紡ぐ楽譜の回収を再開した‐
”ブチブチ“
⇚やべろ、やべろー!!⇛
‐歪んだ楽譜が張った根が千切れる音と楽譜の叫び声が音列の地面に響く。
瓶の中の音色達が今が今かと出るタイミングを待っている‐
“ブチッ”
‐完全に歪んだ楽譜の根が切れる音が鳴った。
太陽に当たった黒い音色が灰となり消えて行く‐
⇛ぎゃあぁあ、ぎぃぃぃい!!⇚
‐奇声を上げ、楽譜だった物が太陽の方向に飛ぼうとしていたのを皆実が見逃す訳もなく問答無用で楽譜だった物に再び太刀を突き刺した。
海の膜が太陽を隠しながらもしっかりと楽譜だった物の退路を断つ‐
【まだまだ消えないで?
お前が盗んだ音色と時間と歴史を搾り取らないと行けないから。】
‐皆実は真っ黒な手を楽譜だった物の中に入れ、中身を掻き毟った。
楽譜だった物の中から正しい音色が溢れ出る。
ようやく全ての正しい音色を出し切った時にはもう、楽譜だった物は虫の息だった‐
【これで全部揃った。】
‐皆実の言葉に反応するかの様に“コンコンッ”と瓶を叩く音が聞こえた‐
【今、開けますね。】
−蓋を開けるとコロコロと小さな楽譜が瓶から転がり出し、正しい音色達とくっ付き始めた。
くっつけばくっつく程に綺麗な音色が鳴り始め、淀み濁り切った空気が澄んでいく。
途切れ途切れにしか聞こえなかった音が聞こえて来た。
正しい音色は優しく、でも力強く詩を紡いだ−
“夕凪レンは犯人ではない。
彼には指紋がない、犯人が指紋を捏造した。
夜と刃物と警察を嫌い、怯える子がどうやって刃物が持てようか?
正しい犯人現在逃亡中”
‐元に戻った音色を聞いていると楽譜だった物が皆実を睨み、濁音を編む‐
⇚ごの悪音が…そこまでじでごの正しい旋律を…音色を…歴史を…崩しだいのが…?
夕凪レンが犯人なのが正しい旋律…。
レンが犯人なのが正しい音色であり、歴史なのに…!!⇛
【お静かに、】
‐皆実が太刀を小刀に変化させ、言った‐
【願います。】
”ザシュッ“
‐斬られた楽譜だった物は声にならない声を上げ、消滅した。
正しい楽譜の音列の上に小さな海が出来ていた‐
【さて、帰りますかね…。】
‐皆実が自分に対する敵意を無くした鎌を持ち、帰ろうとした時だった。
正しい楽譜が声を掛けた‐
〘ありがとう、私を助けてくれて…。
お礼に太陽の光を弱め地上に戻れる様に道を作りました。】
‐正しい楽譜はペコリとお辞儀をし、海の道を作った‐
【どういたしまして。】
皆実もお辞儀をし、その海を歩いて地上のビルに戻って行った。
皆実が地上に戻ったのを確認した正しい楽譜は再びお礼をして空へ帰って行った。
全ての修正が終わったのを確認した様に両目から血涙を流し、身体が焼け付くような激痛が走る‐
【旋律の修正中じゃなくて良かった…。】
‐皆実は焼け付くような痛みと血涙に呻きながらもなんとか本丸へ帰城した。
真っ黒なスカートのままに向かったのは刀工達が居る部屋だ。
皆実が帰って来たのを察知した一人の刀工が部屋の扉を開けた‐
《おかえりなさい、主殿!」
‐扉を開けた刀工が声を上げる。
皆実は海の膜で包んだ鎌を見せ、言った‐
【この子の手入れをお願いしたいのですが、出来ますか?】
ー皆実は刀工に膜に包んだ鎌を渡した。
刀工が受け取った瞬間、鎌が再び暴れ始めた。
皆実への敵意を思い出したのだろう、膜の中の鎌は暴れ回った。
刀工は大暴れしている鎌の柄と刃の境目を握り締めた。
柄と刃の境目を掴まれた鎌は大人しくなり、膜の中を漂い出したー
《ちょっと時間は掛かりますが、出来ますよ。
次いでに主殿の刀もメンテナンスしますか?」
【お願いします。】
ー皆実は自分の刀を刀工に預けたー
《しかと、受け取った。」
ー刀工はニッコリと微笑んで、刀達を受け取ったー
《明日には出来上がるのでお待ちください。
それでは、失礼します。」
ー刀工はペコリとお辞儀をすると部屋に戻って行った。
部屋の中から“主に勝利を!!”と勇ましい声がし、刀と鎌を直す音が聞こえた。
皆実はその勇ましい声を聞いた後、自室に戻ったー
【…っく…。】
ー部屋の真ん中で膝から崩れ落ち、皆実はそのまま気絶した。
晩御飯の時間になっても食堂に来ないのを心配した光忠に発見され、手当てをされたのを皆実は知らない‐
‐〚黒本丸〛を夕焼けが破壊するまであと少し。
破壊される事を知らぬ黒本丸の審神者の笑い声が夜に鳴るー
[newpage]
[chapter:Close]
‐歪んだ旋律が破壊された次の日の事、黒審神者の耳に耳障りな音が届いた‐
〘どうして、歪ませた筈の旋律が消えてるのよ!!〙
‐審神者の耳に届いたそれは正しい楽譜の音色だった。
”ダンッ“
審神者は机を叩いた‐
〘なんでよ!!
私の音色は完璧だったのに!!〙
‐審神者は苛立ちの音を机に叩き込む。
その音に刀剣男士だったモノ達がウロウロする音が混じる。
ウロウロする音も煩わしく感じた審神者がまた机を叩く‐
〘うるさい!!
黙ってアタシを守ってれば良いのよ!!〙
‐審神者は苛立ちの声で怒鳴り散らす。
刀剣男士だったモノ達はいそいそと各方面に散らばった‐
〘アイツが壊したとでも言うの!?
アタシが作った音を!?
夜しか動けないに無理よ…あの楽譜が居た時間は朝なのよ?〙
‐審神者は机を叩きながら次の手を考えていた‐
(アイツがこの本丸の場所を知っている訳無いだろうけど、手は考えておかないと…。
まぁ、此処に来たとしても隠せばいっか)
〘さて、壊された楽譜をまた編まないとね…。
ふふっ、驚くだろうなぁ〜治したはずの時がまた歪むのだから。〙
‐審神者は笑いながらペンを取った。
タイトルは“歪みの時の謳”
ふふっと笑いながらペンを走らせる‐
〘表上じゃ審神者辞めてるからアイツも手を出せないから、アタシの勝ち〜(笑)
仮に審神者をやっている事がバレたとしてもまた泣けば許してくれるわよね〜。〙
‐そんな事を言いながら審神者は歪んだ楽譜を作り上げていく。
歪んだ音符が楽譜の中に染み込み音色が生まれ出す。
一つの音符が音色を出そうとした時だった、外が騒がしい音を耳が受け取った‐
〘?〙
(なによ、せっかく音を作っていたのに…)
‐審神者は‘’チッ‘’と舌打ちをし、窓を開けた‐
〘どうしたのよ、役立たず共!!〙
‐審神者は外に居た男士だったモノに叫ぶ様に問う。
“なんでもない”
男士だったモノ達が合唱する様に問いの答えを返した。
審神者は〘アタシを守るのがアンタ等の役目だから守って。
今度煩くしたら、へし折るから。〙と言い、窓を閉めた‐
〘ったく、せっかく筆乗ってたのに…。〙
‐またペンを持ち、歪んだ音符を書こうとした時だった…。
また何処かで‘’ぎゃあ‘’と言う声が聞こえた。
審神者は舌打ちをし鞭を取り出した‐
〘アタシを苛つかせた罰を受けてもらわないとね♪〙
‐審神者は鞭を振り回しながら部屋を出て、道行く男士だったモノ達に鞭を振るった‐
‘‘ピシンッ、ピシンッ’’
‐鞭が振るわれる度に男士だったモノ達は声無き声で抵抗する。
それを見た審神者が更に鞭を振るう‐
〘うふふっ、楽しい〜。
やっぱ、審神者サイコー!!〙
‐審神者が笑いながら鞭を振るい、笑っていると”ビリッ“という紙を破る音と“うぎゃあっ”という声が同時に聞こえた‐
〘!?〙
‐審神者は急いで部屋に戻った‐
〘なっ、なによこれー!!〙
‐部屋に戻った審神者の目に映ったのは破られた楽譜の紙と壊されたペンだった‐
〘誰よ、こんなことしたの!?〙
(結界が破られた痕跡は無いし、あの役立たず共がするわけも無い…。
じゃあ、誰がこんな事したっていうの?
アイツがこの本丸の場所を知るわけもないし)
‐審神者は部屋を見渡した。
壊されたペンと楽譜のみ机の上に転がっており、それ以外はいつもの空間が広がっていた‐
〘もしかしたら、役立たず共の誰かがやったかもしれないってことよね…?
だったら、仕置きしないと。〙
‐審神者は部屋を出て、手当たり次第に鞭で周りの男士だったモノ達を鞭で打った‐
〘アタシを怒らしたんだからこれは罰よ!〙
‐その日、黒本丸に鞭の音と男士だったモノ達の叫び声が木霊した‐
〘役立たず共をシバいてたらすっかり夜になっちゃったわ。
ったく…。〙
‐空はすっかり真っ暗で星一つ無い夜空が広がっていた。
審神者は外に出ると札を一枚懐から取り出した。
その札には“闇隠し”と書かれていた‐
〘さーてと、明日は役人共が来るから役立たず共隠しておかないとねぇ〜。
これでアタシは健全審神者!!〙
‐呪を込め唱えようとしたその時、“トスッ”と札に小刀が突き刺さったー
“ボンッ”
小刀が突き刺さった札が破裂した‐
〘!?〙
(なんで破裂したのよ!!)
‐審神者は周りを見渡した。
すると何処からか声が聞こえて来たー
“【こんな所に本丸を構えていたんですね。】”
‐それは審神者にとって一番聞きたくない声だった。
声の主はゆっくり近付きながら言葉を編む‐
【うちの子が教えてくれて助かった。】
ーぽうっと行灯が揺らめくー
〘あっ、あんたは…!〙
【お久しぶりです、あの時の黒審神者さん。】
‐女の目に映ったのは小さな行灯を持つ皆実の姿だった。
その手には式神がクルクルと踊っていた‐
【道案内ありがとう。
さっ、影におかえり。】
‐その声に頷いた式神は皆実の服の裾に潜り、そのまま帰って行った‐
〘どうして、此処が分かったのよ!?〙
【道案内に案内してもらったので。
んで、なんで審神者続けているのですか?
言いましたよね?‘
’次にやったら腹をカッ捌く‘’って。】
〘いっ、妹に頼まれたのよ‘‘本丸を見て’’って!
そんなことより、表の世界で事件があったらしいわよ?〙
‐審神者はどこで知ったのか皆実の表世界での職業病を起こす様な言い方をした。
皆実は“どんなのですか?”と審神者に問う‐
〘どっかの公園で事件があったらしいのよ、しかも殺人。
ねっ、こんな所に居るんじゃなくて犯人捕まえてきたら?
って、犯人決まってるか“夕凪レン”だもんねぇ〜。
貴方のお友達の。〙
‐審神者は身振り手振りしながら話した。
“どうせバレないだろう”と濁った確認を出して‐
【なんで“殺人事件”があったのを知っているんですか?
あと、その犯人とお友達だなんて一切言ってないですけど…。】
〘えっ?ニュースでやってたのよ。
貴方とお友達だって。〙
【可笑しいな…。
私とあの子が友達なんて誰にも言ってないですし、ニュースにも載らないのに何で知っているのですか?】
‐皆実は首を少しだけ傾げた‐
〘新聞で見たの!〙
‐審神者は何処かで拾ったであろう新聞を音読した。
“殺人事件の犯人、夕凪レンと皆実広見は親友”と。
ところが審神者が音読した筈の新聞にはこう書いてあった。
“夕凪レンを嵌めた犯人は何処へ?
以前捜索中”と。
その文は審神者の目には見えていない様子だった‐
〘ねっ、書いてあったでしょ?〙
‐審神者はふふんっと鼻を鳴らし笑った。
皆実はやれやれという表情を作った‐
〘で、殺人事件の犯人の友人の皆実さん。
友人を捕まえに行ったら?〙
【友人を?
どうして?】
ー皆実は首を少しだけ傾げ、問う。
その問いに審神者が声を荒げるように言ったー
〘“どうして?”って…貴方の友人が犯人なのに捕まえないなんて可笑しいじゃない!〙
【あの子は殺人犯ではありませんよ。
犯人は…。】
ー皆実は一呼吸置き、審神者を指差したー
【貴方です。】
〘はぁ?〙
ー審神者の口から惚けた声が出たー
〘アタシが犯人って、どういう事よ?〙
ー審神者は皆実に問う。
皆実は【貴方が壊したパズルのお話ですよ。】と暗闇に染みる様な声で言った。
皆実が持っている小箱からオルゴール調のパズルが流れ始めたー
【事件が起きる少し前にあの公園で被害者を殺めた。
理由は被害者が貴方が審神者をやっているのを知っていたから。】
ーその声に合わせる様にパズルが当初の状況を作り始めたー
ねぇ、審神者を辞めているのだから真っ当に生きよう?
その方が良いよ…ね?”
“〘うるさい、アタシは審神者辞めた覚えはないの!
アイツ等さえ来なければ…!!〙
“でも、結果的には辞めてるじゃない”
“〘ふん、そんな歴史殺めしまえば良い!!〙”
“やめなよ、あんたがブラック本丸の審神者だったっていう歴史は正しいんだから!!”
‐段々とオルゴールの音が不穏になっていく。
審神者の顔に少しだけ青が差し込んだ‐
“〘そうだ、アンタさえ居なくなれば…!!〙”
“!?”
“〘アンタを消しちゃえばアタシが審神者をやっているの事を誰も知らない!!
犯人なんて、誰かに擦り付けちゃえば良い!!〙”
‐審神者がスルリと懐からナイフを取り出し、微笑んだ‐
“やめて…!!”
“〘さよなら!!〙”
‐”ザクッ“
包丁が貫通する音が響く‐
“ぐふっ…。”
‐審神者は何度も被害者の腹部を突き刺した。
気が付けば辺りと審神者は真っ赤に染まっていた‐
“〘ふー、これでよし。〙”
‐審神者は呪符を出しその状態を保管し、逃亡した。
そこで最初のオルゴールが途切れた‐
【そして、レンのパソコンからハッカーコードを盗んだ】
‐次のオルゴールが鳴り始めた。
その音はドロドロした音色を奏でる‐
“〘アタシの罪を擦り付けるなら、善人だけどやっていることが罪人が良いわ…あっ、コイツにしよう♪〙”
‐審神者の目に止まったのは“グレーハッカー、夕凪レン”の記事だった。
読めば読むほどに審神者の頭の中でレンを犯人仕立てるための図が出来て行く‐
【盗んだハッカーコードを使い、あの子を公園に呼び出した。
その際、死体に掛けていた呪は少し緩めた。】
‐審神者のパソコンには盗まれたハッカーコードが表示されていた。
そのままポチポチとレンを呼び出すメールを打ち、レンのパソコンに送信した‐
“〘ふふっ、アタシの罪を貰えるアンタは幸運よぉ〜。〙”
‐ドロドロした音色が公園と思われる景色を生み出し、途切れた。
次に出たのはオルゴールではなくレンの記憶が入った箱だった。
箱にはレンと女が公園内で話している場面が映し出されていた‐
【彼に会った後ノイズを発生させ、隠してあった死体を出し、刃物を渡した。】
‐皆実の言葉に合わす様にノイズが発生し、術が解ける音がその場に響く‐
【レンに刃物を押し付けた際に指紋を捏造したのでしょ?
刃物の持ち手に捏造の呪符を張って。】
‐レンが刃物に触れた瞬間無い筈の指紋が錬成され、レンが犯人だという証拠が出来上がった。
そして、審神者は抜き取ったレンの筆圧を使い、持っていたメモ帳に書いた。
“{俺が犯人だ。
byグレーハッカー}”と書き、逃げた。
そこでレンの記憶の小箱が消えたー
〘…!!〙
証拠と皆実の言葉を聞いた審神者の顔は完全に青褪めていた。
“捏造したのになんで証拠がある?”
“見えていない筈なのにどうして分かった?”
声無き声が皆実の耳に届いた。
夕焼け色の目で審神者ー犯人を見ながら言った‐
【私は目が見えません。
ですが優秀な目達…いいえ、仲間達が教えてくれました。
なので、此処まで来れた。】
〘…にが。〙
【?】
‐審神者の小さな声の答えを皆実は待った‐
〘なにが優秀な目達…仲間達よ!
あんなの道具だから、持ち主を導くのは当然でしょ!?
道具は持ち主を導いて守るのよ!!〙
‐審神者の吐き気のする叫びが夜に響く。
その叫び声に男士だった物が動く‐
〘アンタは一人で来たんだろうけど、アタシは違う。〙
‐審神者はゆっくりと手を上に上げ、皆実を指差し笑った‐
〘アタシには道具がある。
この言葉の意味、分かるでしょ?
行け、アタシを守れ!〙
‐審神者の声と共に男士だったモノが一斉に襲い掛かって来た。
その目は戦場で見る目と同じだった。
“主を守る”
その意思が男士だったモノ達の目にあった‐
(何もされても大事な主なんですね…)
‐襲い掛かって来る男士だったモノ達を避け、直ったばかりの太刀を影から出し男士だったモノの刃を受け止めた。
流れるように繰り出される攻撃の一撃、一撃が重いのは当然だが、その打撃がどれも本来の男士のとは違っていた‐
(あの審神者、やりやがったな…、)
‐攻撃を受け止めつつも、皆実の頭は嫌な考えを叩き出した。
“魔改造男士”
審神者が自分の望む強さで本来の刀剣男士の力を歪め、魔改造した男士。
本来の刀剣男士とは掛け離れた存在‐
〘ふふっ、アタシの男士は皆無敵なのよ!!
アンタの攻撃なんて…。〙
‐一人の男士だったモノに指を指す。
すると本来なら、動くのが苦手であろうそのモノは高速で皆実の懐を詰める為移動した。
ギラリと光る刃が皆実を狙う‐
〘効かないし、懐も詰め放題よ!!〙
【おっと。】
‐皆実はその刃をクルリと避けその攻撃を防いだ。
が、その後ろで新たな刃が振り下ろされ掛けていた‐
“キンッ”
‐振り下ろされ掛けていた刃を太刀で防ぎ、そのまま袈裟斬りにした。
当然のことながら、斬られた筈のその男士だったモノはムクリと起き上がり、攻撃を仕掛けた。
“キンッ、ギリッ”
刃と刃がぶつかり合い、火花が散る‐
【っ…!
(…本来の男士達の攻撃とは違うからやりにくいな…。)】
皆実が苦戦している所を見ながら審神者は笑った。
下卑た笑い声がその場を包む‐
〘うふふっ、お楽しみのところの悪いけど。〙
‐審神者の影がゆらっと揺れた。
揺れた影から見覚えのある武器が顔を出し始めた‐
(あの楽譜め…余計な事をしてくれましたね…。)
‐皆実は男士だったモノ達の攻撃を交わしつつも審神者の行動の続きを観察した‐
〘アンタの[[rb:鎌 > バディ]]に殺られて頂戴。〙
‐ゆらりと揺れた影から出てきたのは皆実の武器である鎌の色違いだった。
それを手にした審神者は微笑んで言った‐
〘鎌の花雨!!〙
‐鎌の花が皆実を囲う様に回り、審神者の声が聞こえたのと同時に突き刺そうと降り注ぐ。
皆実は近くに居た男士だったモノの首根っこを掴むと降り注ぐ鎌の盾にした。
鎌の花は盾にした男士だったモノと地面に突き刺さった‐
〘ちょっとアンタ、なんで男士を盾にしてるのよ!?〙
‐審神者の驚く声が皆実の耳に届いた。
皆実はケロリと答えを問いの答えを返した‐
【“道具は使え”とよく言うじゃないですか。
私の近くに居た道具を盾にしても可笑しくはないでしょ?】
‐皆実はそう言いつつも盾に使った男士だったモノに小さく【ごめんなさい、道具なんて言って】と謝罪し、鎌が刺さっていない場所に優しく置いた‐
〘はんっ。
アンタも所詮はコイツ等を道具して見てるって事よね!!〙
‐審神者は鼻で笑うと再び鎌の雨を降らせた。
今度は鞭のように撓しならせた雨が降り出した。
鎌の雨に混ざり、男士だったモノ達が斬撃の雨を浴びせる。
皆実はその雨達を一気に太刀で斬り伏せた。
鎌の雨が降れば降るほど、地面は刃だらけ。
その内の一つが皆実の足を掠った‐
【…っ…!!】
ーその【…っ…!!】という声を聞いた審神者が刺さっている鎌の刃に命じた‐
〘そのまま挟み撃ちよ!〙
‐声に反応した刃が回転し、皆実の方へと回転しながら向かった。
皆実は回転しながら向かって来る刃を交わし、その刃を太刀で斬った。
斬られた刃がバラバラと地面に落ちた。
いとも容易く斬られる鎌の雨を見た審神者がまた叫ぶ様に言った‐
〘なんでアタシの鎌の花雨が効かないのよ!!
こうなったら!!〙
‐鎌の雨を男士だったモノ達に突き刺した。
“ぎゃあッ!!”
男士だったモノ達の悲鳴が鳴り響く‐
〘“鎌と刀の舞!!”〙
‐鎌を鞭のように撓らせ、男士だったモノ達と一緒に振るった。
鎌と刀が一気に襲い掛かって来た。
皆実はそれらを太刀で高速で捌き、全ての男士だったモノと鎌の動きを封じた‐
〘やるわねぇ、でも…!!〙
”ヒュオッ”
‐一人の男士だったモノの刃が皆実を袈裟に落とした。
皆実の身体から赤い筋が溢れる‐
【…かはっ…!!】
‐皆実はその場に膝を付いた。
それと同時に太刀も地面に突き刺さる‐
〘封じるのに集中してて、影からの奇襲に気付かなかったでしょ?〙
‐審神者は笑いながら鎌を振り回しながら皆実に近付く。
ギラギラと揺れる鎌を振り上げるー
〘アンタの相棒に殺られて死ね!!〙
“ギリッ”
ー振り落とされる筈の鎌の動きが止まった。
正確に言うと透明な糸が振り落とされる寸前の鎌を縫い付け、審神者と鎌の動きを止めさせたのだー
【やっと、此処まで来てくれましたね。】
‐皆実が指を鳴らした。
すると影から鮮やかな鎌の花が現れ、審神者の四肢を貫いた‐
〘ぎゃあぁぁぁぁぁぁああ!!!〙
その叫び声に反応した男士だったモノ達が四方八方から、攻撃が飛んでくるが、もう一つの影から出てきた鎌が防いだ。
皆実は四肢を貫かれ、呻いている審神者に言った‐
【どうです?私の相棒の切れ味は?】
〘ぐっ…。
アンタ…最初からこの時の為に刺されたっていうの?〙
【ええ。
じゃないと影が芽吹いている事に気付かれちゃいますからね。】
‐皆実は四肢を貫いている花を一つ弾いた‐
〘ぎっ…!!〙
【さて、一つ約束したの覚えてます?】
‐皆実は審神者に問う。
審神者は〘なにかしたかしら?〙と返した。
その言葉を聞いた皆実は懐から小刀を取り出し、抜刀した。
綺麗に研がれた小刀は鈍色の光を放っていた‐
〘なっ、なにする気よ!?〙
【“次にやったら腹をカッ捌く”っていう約束したんですけど、覚えてます?】
‐その言葉を聞いた途端、審神者が怯えた顔をした。
どうやら覚えていたらしい‐
【良かった、覚えていたんですね。
じゃあ、サクッと殺っちゃいましょう♪】
[嫌よ、辞めて!!
アンタも審神者なら分かるでしょ!?
ストレス溜まってたのよ!!
道具はどう扱おうが自由よ!!]
【審神者ではありますが、アンタが言うところの“道具なんだから、好きに使っても構わない”ってのは分かりません。
彼等だって、疲れたり休みたい時、のんびりしたい時とかあると思うんです。
刀の神様ではありますが、私達と同じ人です。
あと、ストレス溜まってたからって男士達を彼処まで堕とし殺して良いなんてこと誰が言いました?
そんな事、誰も言ってないと思うのですが?】
‐皆実がヒタッと小刀を腹に当てた‐
【まぁ、こんだけ言っても分からない人はお腹を捌いてしまいましょう。
大丈夫、朝には治ってます。】
〘いっ、いやー!!!〙
“ザシュッ、ザクッ!!”
‐夜が明けるまで審神者の悲鳴が木霊した‐
ー〚夜明け前〛ー
【って、本当に殺る訳無いでしょ…。
警察に突き出さないといけないのに。】
‐皆実はズタボロになった人形と気絶した元審神者を眺めながら呟いた。
あの時、審神者の死角になる場所に人形を仕込んでいた。
そして、審神者の腹に突き立てたのと同時に人形の腹を斬った。
感覚は共有にしてあるから激痛であるが‐
“チリンッ、チリンッ”
【…これで全部終わった…。】
‐澄んだ鈴の音が聞こえた。
それはこの殺人事件が終わった事を告げる音だった。
鈴の音を聞いた瞬間、身体から力が抜けその場に再びの膝を付いた‐
(あれ…。
疲れちゃったかな?動けない…。)
‐立ち上がれもせず、ただその場に座り込んでしまった。
その様子を見た元審神者がなんと鎌の花を抜き、立ち上がったのだ。
四肢を貫かれていた筈だが、その個所は再生していたのだー〘ぐふっ…。
今ならアンタをー!!〙
‐審神者の刃が動けない皆実を襲おうとしたその時、皆実にとって聞き馴染みある声が二つ鳴った‐
「はいはい、そんなに遊びたいなら。」
[俺達が遊んでやんよ。
暇すぎて死にかけなんだよ。]
ーその声の主はジキルとハイドだった。
二人は皆実を庇う形で前に立っていたー
「広見、ちょっと待ってて。
お兄ちゃん達、お掃除しないとだから。」
[俺達の弟をズタボロにしたんだ、報いは受けて貰わねぇとな!]
ー皆実は二人の足元まで這い、男士だったモノを指差した。そして言葉と指示を転がした−
【…兄さん達、彼等を助けて…。
…きっと、元に戻れるだろうから…お願い…。
…審神者に関しては警察に突き出さないといけないから、手加減して…。】
ー指示と言葉を転がした後、皆実は意識を飛ばした。
二人は皆実の頭を撫で、互いに言葉を渡したー
「朝まで時間が無いから、さっさとやるよ。
ハイド。」
[了解だ、ジキル。]
ーその言葉通り、ジキルとハイドが残りの男士だったモノ達を制圧し、元審神者を木に縛り上げた。
制圧された男士だったモノ達は綺麗に時の政府専用の扉に流れるように吸い込まれた。
扉が閉まるのを見たジキルが言った‐
「ちゃんとした本丸に今度は行ってね。」
[それな。]
‐ジキルとハイドは気絶した皆実と荷物を抱え、本丸へと戻って行った。
空に薄っすらと太陽が登り始めていたー
ー〚本丸〛ー
「ただいま。」
‐ジキルの声が本丸の玄関に鳴る‐
[お疲れちゃん、連れて来たぞー!]
‐それに合わせるようにハイドが皆実を担いで歩く。
皆実は今までの疲れが出た為、担がれながら寝ていた‐
〔おかえり。〕
‐出迎えのはレンだった。
すっかり元気を取り戻していた‐
〔風呂とかも用意してるから。〕
[そりゃありがたいな。]
「ふふっ、だね。」
‐レンは担がれながら寝てる皆実の耳元で礼を言った‐
〔ありがとな…。〕
‐その声が聞こえたのか皆実が【どういたしまして】と小声で言ったのをレンの耳が受け止めた。
皆実が撃沈している時、表の世界のニュースが流れた‐
「あの審神者、逮捕されたんだね。」
[だな。]
〔されるだろうな、人一人殺っているんだから。〕
‐そんな他愛ない話が皆実の自室で行われた。
それから三日間、レンは本丸に滞在したという‐
〔END〕
[newpage]
[chapter:Dessert]
熟睡していた皆実が起きたのはレンが帰る一日前だった‐
【私、相当寝ていたんですね…。】
〔起きたか、皆実。〕
‐丁度、レンが夕餉の支度をしていた‐
〔長期間の調査と捜査、お疲れちゃん。
これ食って待ってろ。〕
“トコッ”
‐テーブルに置かれたのは小さいあんみつだった‐
【…ありがと…。】
‐皆実はあんみつを一口食べた。
空っぽだった腹に沁みる甘さだった‐
〔皆実が信じてくれてなかったら、オレはきっと殺ってもいないのに自白していた…。
んで、一生後悔してたと思う。
助けてくれてありがとう。〕
‐夕餉を作りながらレンは改めて礼を言った。
そのあと、ふと疑問に思った事を皆実に聞いた‐
〔なぁ…あの時刑事達の目、濁ってたんだ?〕
‐あんみつを食べながら皆実は答えた‐
【あの旋律を喰らったからでしょう。
一般人が喰らえば、誰でもそうなります。】
〔そっか。
なら、なんでオレは無事だったんだろうな?〕
【さぁ?
もしかしたら、ハッカー業以外に何かと縁結びしたからじゃないですか?
縁結びした子が“この人を守る!”ってなったから、効かなかった…とかですかね?】
〔ふーん、そんなもんか。〕
‐夕餉の匂いと甘い物の匂いが空腹の皆実の鼻を包む‐
〔もう少ししたら飯が出来るから風呂でも入ってこい。
ずっと寝てたろ、さっぱりして来な。〕
【はーい。
あんみつ、ごちそうさまでした。】
‐返事と返し、皆実は風呂場に向かった。
ところが皆実は大事な物を忘れていた‐
〔よしよし、出来た…。
って、皆実さーん、お洋服忘れてらしてよ!?〕
‐台所の火を止め、レンは急いで新しい服を見繕い皆実が居る方向へと向かった。
その姿を見た者からは“おかあさんみたい”だと声聞こえたとか聞こえなかったとか‐
〔END〕
[newpage]
[chapter:ラズベリージャム]
✪基本の味✪
・キャラ崩壊
・口調迷子
・オリ設定
《隠し味〉
・ヒヨコが好きに味付け
・皆実さんがマスター兼審神者
【本日のさっぱり煮込み[基本情報]】
皆実さん
武器は大鎌と短刀
初期英霊:ジキルとハイド
初期刀:薬研藤四郎
手の甲に紫陽花の痣が刻まれている
※火事の時にジキルとハイドを召喚した際に刻まれた
夜限定で目が見える
三人の事を兄と呼び、慕っている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジキル
暴走しがちのハイドの兄。
皆実の事を弟として大事にしている一人。
ハイドと皆実の世話役。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハイド
色々と暴走しがちなジキルの弟。
皆実の事を弟して大事にしている二人目。
犯人の締め役。
ーーーーーーーーーーーーー
薬研藤四郎
初期刀
短刀姿と打刀姿の二つの姿を使い分けている。
皆実に夜の目をあげた
(夜限定で目が見える様にした)
ジキルとハイドよりも先に夢の中で会っている。
皆実とジキルとハイドを弟と呼んでいる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
m(_ _)m‹こんな感じですが、よろしければどうぞ。
[newpage]
[chapter:夜のワルツ]
※夜限定の目の色は夕焼け色
皆が寝静まった夜。
私にとっては踊る時間。
ケラケラと笑いながら来る敵の腹を鎌で切り裂く。
まるで踊るように。
斬れば斬るほど鎌も私も紅くなる。
「グギィィ、なんで見えるんだ…!?』
腹を押さえながら敵は問う。
【神様から、夜の目を貰ったので。】
そう答えれば、後ろから「なら、その夜の目を奪ってやるわ!!』と敵が襲い掛かる。
[広見に触んじゃねぇ!!]
赤い目の鬼が敵を切り裂いた。
[無事か、広見?]
【うん、ありがとう❝ハイド兄さん❞】
[どういたしまして、残りの二人ならすぐに終わるだろうよ。]
【分かった…。
踊って来て。】
[無理すんなよ…。
アハハ、俺様と踊ろうぜー!!]
敵を見ては笑いながらハイド兄さんは敵を斬る。
{今日の所は撤退を…!!}
撤退の声を上げようとする敵に短刀を突き付ける。
私の目が見えなくなるまではまだ時間あります。
短刀から血だらけの鎌に変え、それを振り上げ告げる。
[[rb:let's dance together > 一緒に踊ろう]].
朝までのワルツにお付き合い願いませ。
[newpage]
✎アイドルの歌詞を変えて、歌ってみた模様。
[chapter:嗚呼、やっと見えた。]
【嗚呼、やっと見えた。
これは絶対、嘘じゃない“愛してる”】
むず痒いけど、護道さんに言えたら良いのにな…。
まぁ、この目は夜にしか開けないけれども。
それでも、言えたら良いのに。
【いつか、言ってみたいな♪】
-幸せそうに微笑む皆実。
嬉しそうな様子を三人は影から眺めていた-
「[〈俺達の弟、良いわぁ〜。〉]」
-三人のハモリが影に木霊する-
[広見、幸せになれよ…。]
-普段は泣かないハイドだが、今だけは泣いた様でハンカチで涙を拭った。
それに釣られ、ジキルも「うんうん。」と頷きながら、微笑んだ-
〈癒やされる…。〉
-薬研は幸せそうに微笑む皆実の姿をカメラに収めていた-
【兄さん達、何しているの?】
-後ろからひょこっと皆実が顔を出す。
その目は薄い夕焼け色を灯していたー
「えっと、写真会してたんだ。」
「嗚呼、写真会!」
〈猫のな。〉
ー三人揃って誤魔化したー
【?
お腹減ったからご飯食べよう?】
ー皆実が腹を擦る。
三人は頷き、晩御飯を頼むー
【兄弟でこうするのも悪くない。】
[newpage]
[chapter:紫陽花と兄達の戦い]
“ヂリンッ”
“ヂリンッ”
濁った鈴の音が現場に響く。
【ウソだろ…?】
私の声に護道さんが『どうしました?』と心配そうなに声を掛けてくれた。
【大丈夫ですよ。】
私はいつも通りの声で言う。
その間も濁った鈴の音が鳴る。
影に居る兄達の名前を小さく呼んだ。
【ジキル兄さん、ハイド兄さん、薬研兄さん…。】
私が名前を呼ぶと兄達は小さな声で応えてくれた。
【敵の居場所の索敵頼めますか…?】
兄達は頷き、それぞれ索敵に動く。
(今回は明るい内に攻めてきたな…。
夜だったら私の目が見えているから、見えない明るい内を狙ったということか…。)
濁った鈴の音が鳴り響く中、周りの音に耳を済ます。
私が黙ったのを不安に思ったのかまた護道さんが声を掛ける。
『具合、悪いんですか?』
【ご飯食べ過ぎてちょっと…。】
と、適当な事を言い流す。
濁った鈴の音がドンドン大きくなる。
足音も近く
(っ、近い…!)
私は護道さんにバレないように結界を張り巡らせた。
(これで少しは侵攻を遅らせられる…)
少しだけ息を吐いた瞬間だった
“パリンッ!!”
結界が壊れる音がした。
【チッ…!!】
私は大鎌を構えた。
護道さんにも割れる音が聞こえたようで『なにが割れたんだ!?』と慌てる声が耳に届く。
【護道さん…。】
慌てる彼に私は言った。
【少しだけ寝てて下さい。
今掃除しますから。】
『はぁ!?この状況でなにをー』
“ドスッ”
刀の鞘で護道さんの峰を打ち、眠らせた。
【薬研兄さん!!】
〈はいよっと!!〉
薬研兄さんが護道さんを私の影の中に沈めた。
結界でもいいのだが、割られる可能性もあるので影の中に入れた。
残りの兄達も影から出て来た。
今回は敵がいっぱいなので目を開けた。
明るい内に目を開ければ血涙が流れるからあまり開けたくはないけど、仕方ない。
【護道さんに怯えられたら…。】
向かって来る敵に鎌を一振りする
【生きていけない…!!】
鎌の刃が私の方向に向かって来る敵を切り裂く。
〈広見、現場の遺留品とかは壊すなよ!!〉
遺留品を壊そうとしてくる敵を斬りながら薬研兄さんが言った。
「さっさと終わらせないと…ってハイド、なにしてんのー!!」
ジキル兄さんも敵の腹に刃を突き立て、斬りながら叫ぶ。
理由はハイド兄さんが遺留品ごと敵を破壊しようとしていたからだった
【ハイド兄さん、現場が壊れたら私の始末書祭りが始まっちゃうから勘弁して!!】
[そん時はオレ様も書いてやっからよ、斬らせろや!!]
【だぁ、もう!!
始末書書く大変さ知らないでしょ!?
もう良い…敵を斬るのに専念!!】
遺留品を壊さない様にしながら、敵を殲滅していく。
“ポタッ”
敵を斬りながらも私の目から血涙が流れ始めた。
(早く終わらせないと…。)
それは兄達も分かっている様で殲滅のペースが上がっていく。
【さっさと】
「此処から」
〈おかえり〉
[しやがれ!!]
“ズバッ”
ー四人の刃はそれぞれの敵の腹と心臓を確実に討ち取った。
現場を壊そうとした敵達は悲鳴を上げて消えたー
敵が消えたのを確認した私はその場に蹲った。
目の許容範囲を超え、血涙が流れ出す
【っ…!!
兄さん達、何処…!!】
焼け付くように熱い目を腕で抑え、兄達を探す。
〈俺達はここだぜ、広見。〉
最初に触れたのは薬研兄さん。
[ほらよ。]
二番目がハイド兄さん。
「お疲れ様。
包帯巻くからね。」
ラストはジキル兄さん。
良かった、皆居た…。
【皆、ありがとう…。】
血涙塗れで笑えば兄達がタオルで顔を拭き、血涙を拭ってくれた。
〈さっ、護道の旦那を影から出すぜ。〉
「だねぇ、其処は僕等の居場所だもん。」
[んだな。]
三人で一斉に影から取り出した。
〈暫くほっとけば起きるからな。〉
そう言い、兄達は影に帰って行った。
‐護道が目覚めた後で事件を解決させた‐
[車の中]
『なんか凄い夢見た気するんですよ。』
【夢って?】
『皆実さんが綺麗な目の色してて何かと戦う夢…。』
【私がですか?】
『ええ…。
なんか、家来も居たんですよ。』
【ふふっ、不思議な夢ですね。】
(言えない、現実であった事なんて…。)
私はそっと紫陽花の痣とジキル兄さんが巻いてくれた包帯を触りながら話を聞いていた。
[newpage]
[chapter:審神者(護道のストーカー)を本気で締め上げる話]
«なんであんた、目が見えているのよ!?
偵察班が言っていたのよ“皆実広見は全盲”だって!!»
-女が銃を撃ちながら叫んだ。
皆実は女が放つ弾を鎌で弾きながら答えた-
【ええ。
全盲ですよ。】
«だったら、なんでアタシが撃った弾を弾き飛ばせるのよ!?»
【神様に夜限定で開く目を貰ったので、見えるんです。】
-自分の方に飛んで来る弾を女の方に合わせ、鎌の斬撃で弾き飛ばした-
«っ!!»
ー女はすかさず飛んで来た弾を刀で弾くー
«私があの人の一番になるのよ、お前じゃない!!»
ー女は弾を四方八方に撃ち、方向を皆実に合わせるー
«お前さえ居なければ私は愛して貰えるもん!!«»
ー女が指を鳴らすー
“パチンッ”
ー弾が一気に皆実に向かう。
弾がまるで雨の様に降り注ぐ。
それを鎌で防ぐが、何発かが皆実の頬と手を穿つー
“カランッ”
ー皆実の手から鎌が落ちたー
【っぐ!!】
ー拾うにも頬からは血が流れ手に痛みが走り、拾える状況では無かった。
女は銃を捨て、皆実に近付くー
«あんたの刀剣男士と英霊は今あたしの子達と殺り合ってるから来れないわね♪»
ー女は他の刀剣男士を呼んだ。
影から現れたのは三日月宗近だったー
《主の恋敵はお主か?]
ー月色の切っ先が皆実に向かうー
【恋敵?それを言うなら…。】
(加州、遊びの時間です。)
ー皆実はポツリと加州の名前を呼んだー
「あんたらだろ?〛
ー皆実の影から現れたのは赤黒い目に薄藤色の爪紅を差した刀剣男士の加州清光だったー
【加州、貴方は三日月宗近を頼みます。
私はあの女を絞めます。】
「三日月は半絞めで良い?〛
【ええ。
この勘違い女は完全に絞めます。
じゃないと[[rb:彼氏 > しんたろう]]を取るでしょうから。】
「オッケー。
本当に好きなんだねぇ、彼氏さん♡〛
【べっ…別にそんなんでは…!】
「もうっ、ツンデレさん♪
で、本音は?〛
-加州の問いに皆実は視線を横に逸し、言葉を転がした-
【早く帰って、抱き締めて貰って、愛でられたい…。】
-顔を真っ赤にして皆実は答えた。
そんな女子の様なやり取りに業を煮やした女が叫んだ-
«なんの話をしているのよ!!
護道さんはアタシのよ!?»
《そうだ、あの者を好いているのは主以外に居らぬぞ…。]
ー三日月が斬撃を仕掛ける。
加州はその軌道を読んだ様に動き、三日月の刃を受け止めた-
《主に譲れ、それが良い。]
「譲らせる訳、〛
‘ギギギッ’
「ねぇだろが!〛
ー火花が互いに散る。
皆実と女の方も互いに殺り合っていたー
«あたしが彼に愛されるの!!
だから、邪魔者のお前は死ね!!»
ー女の刀が皆実の動かない手を狙うー
【アハハッ、面白いことを言いますね♪】
ー動かない手を空へと交わさせ、動く方の手で握った刀で斬撃を受けるー
【彼に愛されているのは私ですよ…?
本当なら、愛でられているはずだったのに邪魔しましたよね?
気味悪い気配まで出して、彼と引き剥がすなんて…。】
ー皆実は加速し女の刀を持つ手を斬り付けたー
“カラーンッ”
ー今度は女が刀を落とし、斬り付けられた痛みで拾えない状況になったー
«っー!!»
《主!!]
ー三日月が自分の主に視線をズラしたその時、加州が一気にケリを付けに掛かる-
「よそ見するなよ、三日月さん?〛
“キンッ”
ー三日月の本体が空を舞ったー
《くっ!!]
ー本体を取りに行こうとする三日月を押さえ付け、赤黒色の切っ先を三日月の喉元スレスレに近付けるー
「勝負あり。〛
ー持っていた紐で三日月を縛り上げ、近くにあった太く丈夫な木に縛り付けたー
「暴れたら勝手に紐締まるから大人しくしていた方が良いよ?
まだ刀生楽しまないとね♪〛
ー加州は三日月が逃げない様に隣に座ったー
「こっちは終わったよー!〛
ー加州が皆実に聞こえる声で叫ぶ。
皆実は心の中で礼を言ったー
【これで終わりにしましょうか。】
ー夕焼け色を灯し、笑顔で女に近付く。
その手には大鎌を持ってー
«ひっ…私、手動かないのよ!見て分らないの!?»
ー女は動かない手を皆実に見せるー
【片手、動きますよね?
さっきだって、動く方の手で私を斬ろうとしたじゃないですか?】
ー皆実の鎌の刃が分裂し、動く方の手と動かない手を突き刺した。
一瞬、顔を顰めたが女は皆実を見て言ったー
«お前の手も私と一緒になれ!
“手食い蛇!”»
ー女は声高らかに呪詛を呟く。
が、声のみがその場に響いただけだったー
«なっ!?
なんで、発動しないのよ“手喰い蛇’!!»
ー女が何度呪詛を唱えても発動せず、声のみが響いた。
笑っていた顔を真顔に戻し、鎌に呪詛を唱えたー
【“我が敵を滅ぼせ、黒蛇!!”】
“キシャア!!”
-鎌から現れたのは真っ黒な大蛇だった。
大蛇は“オマエ、オレノエサ…!!”と言い、女を丸呑みにした-
“バキッバキッ”
-咀嚼音がその場を包む。
その音皆実と加州の耳を劈いた。
女を喰らった大蛇は“クダモノ…”と一言を残し消えた-
「主、三日月どうするの?〛
加州は三日月を縛り付けた木ごと持ってきて問うー
【影うちには居ない子だから持って帰りましょう。
あの勘違い女の瘴気を受けていただけかもしれませんから。】
「Agree.だっけ?同意って。〛
【ええ。】
『なら…三日月宗近。」
ー加州は三日月を見て言ったー
『[[rb:影 > ほんまる]]に石切丸居るから、しっかりと清めて貰ってね。」
《なぜ破壊しない…?
俺はお前を貶したんだぞ?]
【あの勘違い女の瘴気を受けていただけでしょうから、破壊なんてしませんよ。
こんなに綺麗な月に会えたのにそれを壊す馬鹿が何処に居るんです?】
《この男士誑しが…]
ーそう笑う三日月の顔は会った時の顔より、穏やかなものになっていたー
【ふふっ、よく言われます。
明日の朝、果物をいっぱい買わなきゃ…。
手伝ってくれた大蛇にお礼しないと。】
ー三日月の肩を触り、影に沈める。
それを見た加州も影に帰って行った。
皆実は月明かりの中、大事な人が待つホテルへと帰ったー
ー〚次の日〛ー
ー皆実と護道は綺麗な川沿いを歩いていた。
手に果物籠を持ってー
『皆実さん、その果物籠どうするんですか?』
【川に流します。
(あの子、川の生まれでしたか…。)】
-後から分かった事だが“手喰い蛇”いや“黒蛇”は清らかな川の生まれの蛇であった。
果物を供物とし、人々に崇められていたという。
ところが、皆実が絞めた女が祠から無理矢理蛇を連れて行った事により、呪詛化し自分の生まれの記憶を無くしていた。
だが鎌の素材に生まれ故郷の川の水が使われて事により、自分の生まれを思い出し、皆実に協力したのだった。
その後、役目を終えた後“クダモノ…”と言う言葉とほんのりと川の匂いを漂わせ、帰って行った-
『なんで、果物籠を流すんですか?』
【川の子に手伝ってもらったので。】
-皆実の答えに護道は頭に『?』を浮かべた。
だが、綺麗な川に心を洗われた護道はそれ以上の言葉を言うのを止めた-
【ふふっ。
綺麗な川ですね、護道さん。】
『そうですね、こんなに綺麗な場所があるなんて知らなかった…。』
-二人の言葉が川の音に溶けて行く。
溶けた声を聞くは果物待ちをしている蛇であった-
[newpage]
✎R-15
[chapter:地雷を踏んだ様です。]
『皆実さん、オレ家族旅行なので暫く居ません。
オレが帰って来るまで皆実さん、非番です。』
そう告げられたのが昨日の夜だった。
【行ってらっしゃい。】と見送ったものも昨日。
護道さんが帰って来るまで私は非番。
と、いうことは…。
【兄達と遊び放題…ってこと!?】
ひっそりか夜にしか会えない状態の兄達と遊べる。
【護道さんも家族と遊んでいるんだから、私だって…。】
そうと決まれば呼ぶしか無い。
【兄さん達、出て来て。】
影から兄達が出て来てくれた。
〈家族旅行で居ないのか、護道の旦那。〉
「いっぱい遊べるね。」
[なにして遊ぶんだ…?]
【悩む…。
まぁ時間はいっぱいあるし、のんびり考えよう。】
それから四人でお散歩に行ったり、冒険と称してゲーセンに行ったりした。
「あっ、もうちょい…。」
[おっ、取れた!]
〈菓子なら、取れたぞ。〉
私はその様子を聞きながら椅子で待っていた。
❝プルルッ❞
【呼び出し…?】
アイカメラを起動し発信人を見た
【護道さん…。】
連絡人は護道さんだった。
旅行先から連絡ですか。
家族旅行くらいは私のことを忘れても良いのに。
【…切っちゃお…。】
私は携帯の電源切り、思い切り兄達と遊んだ。
そして護道さんの事を忘れ兄達と遊びまくった日のこと、ふと薬研兄さんが言った。
〈なぁ…。
連絡ぶっちして遊んだけどさ、連絡すんごい事になってるじゃねぇか?〉
【…かも…?】
私の答えを聞いたジキルが珍しく悪い顔をして、言葉を咲かせた。
「良いこと、考えちゃった。
護道さんのお説教を聞きながら、お菓子を食べるってのはどう?」
…答えは決まっている。
私は答えを転がした。
【面白そう!】
本当ならお説教を聞きながらお菓子は駄目だけど、護道さんは此処に居ない。
今は悪い子になっても怒る人は居ない!
なら、悪い子になってしまおう!
私が答えを転がしたのを皮切りに次々と答えが転がり出す。
〈良いな、それ。〉
[説教を聞きながら菓子は美味だよなぁ!!]
「満場一致。
じゃあ、支度!!」
と、言う訳で“護道さんのお説教を聞こう”の会の支度を開始した。
お菓子とジュース、枕も準備万端。
いざ“護道さんのお説教を聞こう”の会の始まりだ。
-皆実は携帯の電源を入れた。
連絡の履歴を見ると“護道”の文字がビッシリと連なっていた。
メールも見てみると皆実を心配する文面が咲いてた。
履歴とメールを見ていると、また“護道”と画面に表示された-
【…ずっと連絡していたんですね、護道さん…。
旅行中ぐらいは私の事、忘れてくれて良いのに。】
さて、どんな説教聞けるのだろう?
【行きますよ。】
兄達は頷き、気配を消した。
“ピッ”
【はい、皆実です。】
『やっっっと、繋がった…!!』
最初は良かった。
私を心配してくれたのだから…。
ところが会話して数分、説教が始まった。
(こうなると長いんだよな…。)
説教を聞きながら音を立てずにお菓子を食べる。
気配は消しつつも兄達もお菓子を食べ始めた。
「…長いね。」
ジキル兄さんが小声で本音を漏らした。
[…それな。
寝れそう…。]
お菓子を口に入れながらハイド兄さんは独り言を溢した。
〈…zzZ.〉
あまりの長さに薬研兄さんは寝始めた。
最初こそワクワクしてたが、私も段々眠くなって来た。
あまりにも長い説教に飽きた私は言った。
【私のことを大事にしてくれて、心配もしてくれたのはよく伝わりました。
メールも見ましたが、私への愛情で溢れていて嬉しかったです。
いつもみたいに飾りをカリカリしたり心配を掛けさせた罰として引っ掻いても良いので、説教は終わりにして旅行楽しんで来てください。
お土産は護道さん達が無事に帰って来てくれる事が一番です。
では。】
“ガチャンッ”
【ふーっ、終わった…。】
ふと、兄達を見ると皆、顔を真っ赤に染めていた。
【私、なにか変な事言いました?】
「うん、自分の身体に地雷をぶち込んだくらいには…。」
[自覚無く、言ったろ…?]
〈…録音してるから、聞いてみろよ。〉
ー【カリカリでも弾いても良いんで、旅行楽しんでください】ー
【Oh、地雷…。】
「広見、カリカリは好きでも弾かれるの苦手だったよね…?」
[痛ぇのによく言えたな…。
オレ無理よ、うん…。]
〈眠い人の言葉だと思って、忘れてくれると良いんだが…無理か?〉
【護道さんが来るまで隠れとこうかな…。
兄さん達は影に居れば良いよ。】
一同声を揃えて言った❝そうする❞と。
「痣は隠しておくからさ。」
[うん、それが良いな。]
〈だな…。〉
…今、私が願う事は二つ。
護道さん達が無事に帰って来る事。
私が言った事を護道さんが忘れてくれる事。
『END』
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