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私は、ダンジョンのボスをしている。
間もなく勇者が来るらしい。
しかし、人間風情が魔王様に楯突くとは、
愚かだ、魔王様が直接手を下さずとも この私が貴様を葬ってくれるわ!
……まだ来ないのか……?
久々の戦、体でもほぐしておくか。
私は、適当にストレッチをする、だが、勇者の入ってくる入口からは目を離さない。
1・2・3・4・2・2・3・4
人間のストレッチのリズムらしい、意外と乗りやすいリズムを考える人間は
意外と凄いのかもしれない。
適当に体をほぐし、戦に備えることが今私に出来ることであろう。
しかし、久々の戦、体が疼くなぁ……。
私は、深く息を吸い、それを勢いよく吐き出す。
ブォーッといわんばかりの音を立て私の口から業火が吐き出される。
業火の行く末にあった、レンガの壁は、一部溶けて、床に落ち、泥の塊となった。
…………
そろそろ来ても良いはずなんだが……。
私は、少しだけダンジョンの終盤ルートを見回るため持ち場を離れる。
シーンと静まり返り、人間の気配は無かった。
まだ来る気配が無いな……。
……私は何をしているのだろう。
持ち場に戻り、入口に目を見張らせ、さらに時間が経つ。
「ふわぁぁ……」
思わず出た欠伸(あくび)、欠伸の反動で右目に一筋の涙が溢れる。
……
ここダンジョン、そんなに難しかったっけ?
早くて10分、道に迷っても30分ぐらいだった気がするが……。
流石に遅くないか?……。
魔王様の代わりに戦うというのに、私は眠気がこみ上げてきた。
退屈過ぎる……。
近くに暇つぶしの書物があるわけでもないので
適当にストレッチしたり、歩き回って眠気を抑えて待つしかない。
もしかしたら、勇者は、私の寝こみを襲うのだろうか
そう思うと、眠気がさえ、闘争心に火が付いたが。
その火は、10分と持たなかった。
そして、更に時間が経った頃、ちょーど再び欠伸をした頃だった。
「すみませぇ~ん……」
……ようやくお出ましの様だ。
「ムウ、ようやく来たか……では正々堂々と……手合せ願おうか」
しかし……なんと力のない声なんだろう。
「すみません、遅くなりました……うぅ……」
な、な……泣いてる! 手傷があるわけではないから、魔物と交戦した訳ではなさそうだが……。
ただ、転んだのか、膝小僧にバンソウコが付いていた。
「み、道にまっ、まよっ、迷って……うっ、うぅ……」
(……やり辛い)
こりゃ、景気づけに業火拭いたら、おしっこちびっちゃいそうな勢いじゃないか?
そんなへとへとな勇者は、剣に手を添える。
(えっ、戦う気なの? その状態で)
「実は、少し前まで寝ていてな、目が覚めるまでの間、互いに休憩……とせぬか?」
いや、起きてたよ? でも、何か口実つけないと すみません を連呼しそうなので
「あっ……わかりました、ありがとうございます。 えっと、ドラゴンさん無理しないで下さいね」
……私が心配されてる……。気遣ってるのこっちだぞぉ?
気付けよ! とは言わないけどさぁ……。
その時、懐の小さいバッグに入れてた携帯が音を出す。
ピロリーン
「ふわっ!!。……う、うぅ……ふ、不意打ちですかぁ……ひ、酷いですぅ……」
「いや、そ、そんなつもりはないんだが……すまん、メールの様だ、少し待っててくれ」
「ふぁぁーい…… うぅ……」
誰からなんだろう、送り主は想像ついたが……。
にしても、はい と返事出来ないぐらいくたくたな勇者。
どうするべきか……魔王に楯突くなら私がこの子を排除するしかないが……。
メールを開くと、目を疑う内容だった。
『from:魔王
勇者ちゃんに優しくしてあげてねじゃなきゃ殺す・魔王』
「はっ!?……」
「ど、どうかしました?ドラゴンさん」
「い、いや……なんでも。 もうちょっと待ってくれ」
そして直ぐ様返事
『to:魔王
優しくってどうしたらいいんスか……。』
送信ボタンを押す。
「えっと……大丈夫ですか? ドラゴンさん」
「あ、嗚呼……もう少し待ってくれ」
そして、30秒後、今度はどうやら長文の様だ。
『from:魔王
とりあえずもう適当にやられちゃって!』
「……はぁ……。(魔王様は何を考えてらっしゃるのか)」
まぁ、私も別の意味で倒せる気がしない……。
「えっと……嫌なメールでも来ました? 気にしちゃダメですよ?……」
再び気遣われる。 少し心がむず痒い。
「嗚呼……大丈……ぅ……」
そこには、目に涙を浮かべながらも私を心配している勇者の純粋無垢な眼差しがあった。
(ちょっとだけ……可愛いかもしれない)
そんな中、再び携帯が音を鳴らす。
『from:魔王
あと勇者ちゃんにおみやげ持たせるの忘れないでね!』
……
「嗚呼……こうなりゃ自棄だ」
「うん?……」
「グオオオオオオオオオオオッやられたぁ……」
「ひっ!……うっ、うぁぅ……」
「ぁ……すまん、脅かすつもりは、とりあえず……」
何故謝ってるんだろう。 そして、今更だけど、従える魔王間違えたかな。
「おのれ勇者……この私を倒すとは……だが私を倒したとて貴様の行く道は地獄よ……」
棒読みだけど、別に問題ないよな?……。
「え、まだ何も……」
そして、ムクリと私は起き上がり、お金とドラゴンまんじゅうを詰めた緑の風呂敷を差し出す。
「はいこれ、お金とか入ってるから あとお土産のドラゴンまんじゅうも入れておいたから」
「……あ……ありがとうございます」
……勇者が笑顔になった。
戦わずに済ん……コホンッ!
戦いが終わったことにホッとしているのだろうか。
そして、再び携帯がなる。
やれやれ……次はなんだろう。
『from:魔王
勇者ちゃんの写メ撮って送って……///』
「……」
「……大丈夫ですか? ドラゴンさん?」
……なんで、気高きドラゴンがこういうことを言わねばならんのだろう……。
しかし、行動しなきゃ魔王様に殺されそうな気がする。
「ゆ、勇者よ……一つ頼みがあるのだが?」
「は、はい?」
「シャ、写、写メ良いか?」
「……?あ、はい」
そして、私は、慣れない手つきで、勇者とピースした写真を撮り送信した。
それから勇者を連れ、14分ほどかけてゆっくりとダンジョンの出口の明かりが見える付近まで見送った。
出入り口に背を向け、此方に満面の笑みで大きく手を振る勇者を見て
私は、魔王様が勇者のことを好きな気持ちが少しわかった気がした。
勇者が見えなくなり、私はとりあえず、持ち場へ向かう。
あの笑顔、写メ撮って送ったら、褒められるかな……?
実は、私もちょっと欲しいなと思ったり……。
って……私は何を考えてるのだ。
一度、魔王様に従うと決めた以上、従うしかないよなぁ……。
そう思い、携帯を取り出す。
『to:魔王
勇者見送ってきました。 写メ大丈夫でしたか?』
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