「お前ら!前線を維持しろ!もうすぐ増援が来る!!」
「アルヴァァァァァン!」
「来たかクロム!」
前線で2人の戦士がぶつかり合う、大鎌と大剣が激しくぶつかり合い剣戟を演じる
「アルヴァン!!」
「来たか!スレイ!」
「ちぃ!ケンタウルスか!」
上半身が女性、下半身が馬の部隊、通称アルテミス隊が敵陣に突撃してくる、前線はアルテミスの突撃により、崩壊し敵は前線を下げざるおえなくなった
「忌々しいケンタウルスめ!」
「クロム!覚悟ォ!」
「アルヴァァァァァン!」
なおも戦士たちはぶつかり合う、炎と闇がぶつかり合うが前線が崩壊した今、敵も撤退を余儀なくされる…
「アルヴァン!やったね!」
「あぁ」
アルヴァンとスレイが拳を合わせる、アルヴァンとスレイは昔ながらの幼なじみであり、将来婚約を誓った仲だ、人と獣人がクラスこの国で異種結婚などよくある話だ、その中でもこのふたりは深い絆で結ばれている
「戦争が早く終わればいいな」
「あぁ」
2人は戦争が終われば幸せな家庭を築けると…そう思っていた
「ふざけるんじゃねえ!」
「落ち着けエララ…」
「バアルテ!お前は悔しくねぇのか!」
兵舎にて女性が酒瓶をぶちまける、机の上にあったのは小さな袋で中には金が入っている、しかしそれはあまりにも少なかった
このシルビア国は戦争が絶えず起こっている、その戦地に行くためにも軍備増強や技術は高く、兵士たちには十分な金が支払われる、しかしアヴァンの隊はここ最近お払い箱で雑用をやらされるわ、偵察兵の仕事だわ、場内待機も当たり前、原因はアルテミスだ
彼女達に軍備増強に路線を切っていたのだ、結果アルヴァン達は安い装備を回され、更にはアルヴァンの愛刀、獄炎剣ヴァンダルスもアルテミスの2番隊隊長、マルクの手に渡ってしまった
「隊長!!このままでいいんですか!」
「良くない、お前たちにも生活がある…だがアルテミスが全ての戦局に直結している今我々が出る出番もないは確かだ…私の剣も…」
ヴァンダルスはある火山深く、火口付近にある、そこまでには協力な魔物や番人がおりさらにはヴァンダルスが認めなければ持ち帰れないという神器と言われるものだ、しかしヴァンダルスは2番隊隊長マルクの手に渡ろうともすぐにマルクを主と認めてしまったのだ
アルヴァンの努力などが全て砕けた瞬間だった、あの日以来アルヴァンは気力を失い、この国を守ることにも気が滅入る、さらにはスレイは今や国の英雄、もてはやされ貴族や王族からチヤホヤされ、自分とは正反対であり、彼女も神槍ドヴェルグスに認められ、この国には神器が二本あるのだ
アルヴァン達が前線で戦う必要はなく、邪魔でしかないような現状を彼らは不服だった
「くそ!アルテミスだ!あいつらさえ居なきゃ」
「もう隊の人員は俺たちしかいない、みな辞めていってしまった」
「稼ぎも少なくなればそうだ…それに潮時かもしれない」
「隊長?」
「エララ、バアルテ、お前達もよくやってくれた…」
「まさか隊長!!」
「私達の隊を解体する、もはや3人しかいない部隊ではろくな装備や資金も与えてくれん、これで食っていくのも無理な話だ、偵察兵の仕事ですら本職以下の報酬だ、我々はもうアルテミスが発足された時点で終わりがはじまったんだ」
原因は間違いなくスレイだ、本来アルヴァンはスレイを守る為にと戦争に参加した、しかし
「アルヴァン!!お前の背中は私が守る!」
あの日、スレイが隊に入ってから全てが変わっ他、ケンタウルスの怪力、脚力は人間以上で、スレイは瞬く間に戦果を上げた、そして名声された女性ケンタウルスが次々入隊、アルテミスが発足され全てが覆った
アルヴァン達は役割を失い、安い賃金で食えなくなっていき隊の仲間はみな辞めて下町で働いたり別の国へと旅立っていった
「私ではもうどうにも出来ない、すまない」
「隊長!!私達はまだやれます!ですから」
「エララ…もういい…お前達には生きていて欲しいんだ、このまま消耗品のように命を扱われるなら皆で新たな旅路に着いた方がまだいい」
「隊長…」
「バアルテ、エララ、よく着いてきてくれた…ゆっくり…休め」
「隊長…!!」
バアルテは俯きエララは泣いた、今まで決死の覚悟で戦って来た自分達の結末がこんなことなど…認められなかった、しかし現実は非常だ…生きるためには金がいる、消耗品扱いされるならばいっそ新たな新天地を目指す方がいいと彼らは今日、部隊を解体したのだった
(エララとバアルテが新しく生活するには十分か)
アルヴァンはすぐに兵を辞めることを伝えた、退職金は期待していなかったがやはり奴らからしたら自分達はもはや消耗品らしく、予想より下の金額だ、しかし自分の分をエララとバアルテに分けたら何とかなると思い、彼は自分の取り分を2人に分けていた
「アルヴァン!」
後ろから蹄の音がする、振り返れば長い水色の紙に生えた馬耳、アルヴァンとは正反対の美しい鎧を身にまとったケンタウルス
彼女こそアルテミスの隊長にして総指揮、スレイだった
「アルヴァン、聞いたぞ!隊を解体して兵を辞めるって」
「さすがに耳が早いな…元々、もう隊の人間が3人しかいなかったんだ、国としても資金は割きたくないし解体してくれるなら構わないとな」
「待ってくれ…私が話しをつける、だから待ってくれないか」
「…」
いつからだろう、幼なじみの姿を見るのが、恋人の彼女をみるのが疎ましくなっていた…自分達が消耗品になり扱いが酷くなったのも元は彼女が原因だ、最初は背中を任せていた、だが彼女の力が明るみになりアルテミスが出来、それから正反対に彼女は成り上がっていく…綺麗な鎧を着た彼女、それはまた新しい鎧だとすぐに理解した
「また新しい鎧か」
「…あぁ、国王が私にと」
「随分気に入られてるな…色々話は聞いているさ、貴族や王族に引っ張りだこ、最近じゃよくパーティーも参加してるみたいだな」
「…」
「見合いや婚約の話も聞いてるよ、好みはいたか?」
「アルヴァン…信じてくれ、私がお前以外に心を許したことはないんだ」
「…スレイ…お前は」
「スレイ殿」
後ろから声がかかる、身なりが綺麗なそれは貴族、さらには公爵の地位に付いているものだとすぐに分かった
「クレイドル卿…」
「少し話がしたい、良いかな?」
「しかし今は」
「今後のアルテミスに関わる話です、他の方々も集まっておりますゆえに是非」
「…少し待っていてくれ、すぐ戻る」
スレイは踵を返しクレイドルの元に行く、わかっていた、彼女が今大切なのは自分では無い…アルテミス、そしてその仲間たちだと言うことを
アルヴァンは彼女が去るのを見てその場から歩いていった
[newpage]
「…最後の任務か」
解散したが彼は最後にひと仕事して欲しいと言われた、なんでもこの辺りで盗賊をしているものたちの集会があるらしく、場所を突き止めて欲しいとの事だ
「盗賊に扮して入り込みか…発煙弾を使えばすぐに襲撃してくれるか」
最低限の装備で乗り込めと言われた、大剣を一応持っていくことは許されたが…なるべく戦闘は避けたい…
そう思いながらも目的地に到着する、盗賊らしく国の隅っこ、川が国境となっている場所のすぐ近くだった
(たしかにここならコソコソできるな)
アルヴァンは中に入るとやはり盗賊らしき連中が集まっていた、間違いなくこの場は集会所だ
しかしなぜ場所が割れているのに行かせるのか一瞬頭に疑問がよぎる
「念には念をか…?とりあえず時間差で発動するよう発煙弾を」
ドガァァァァァン!
「?!」
「なんだなんだ?!」
発煙弾を打つ前に轟音がする、音がした方を見るとそこには
「突撃ー!」
「アルテミスだぁ!」
「逃げろ!」
(なんだと?!)
話に聞いていない、増援が来るとは聞いていたがアルテミスだとは思わなかった、しかも2番隊隊長マルクだ、獄炎剣を振り回しながら次々と焼き払っていく
(まずい巻き込まれる!)
「ふん!」
マルクが薙ぎ払った一撃は熱風となり当たりを焼き払っついく、アルヴァンは大剣で耐えるが…熱気で肺が焼かれそうだった
「…見つけたぞアルヴァン」
「見つけただと?」
「そうだ、盗賊団と内通していたと聞いてな、やはり情報は正しかったようだ」
「なっ?!」
この時アルヴァンは気づいた、嵌められたのだと
「違う!私は命令に従って」
「ここにいる時点で弁明のしようなどない、お前がここにいるのが何よりの証拠だ」
「…なに…?」
「お前がここにいて盗賊と一緒にいた…それだけでも十分…盗賊はみな斬殺して良いと聞いているからな」
マルクはニヤリと笑う、まるで殺したかったようにと
「お前とは話がずっと合わなかったな…!」
「あぁ、スレイ様の恋人だのと言っていたが、私は貴様がスレイ様といるなど許せないんだよ、貴様みたいな情けないやつがスレイ様の恋人など」
「悪いが幼なじみというのは覆せない事実なんでな」
「貴様がいるからスレイ様はいつまでも貴様に足を引っ張られるんだ、あの方の邪魔をするな、あの方はこの国にいずれ栄華をもたらすのだから」
「貴様はスレイを神格化しすぎだ」
「その減らず口も今日までだ!」
マルクが剣を振り回せば地面を火が走る、アルヴァンはそれを避け走り抜ける
(川に飛び込むしかない!)
一か八か、川に飛び込み、国境を超えれば助かる可能性がある、国境代わりの川は幅が広く、渡りきるのはかなり厳しいだろうが、板切れか船に捕まえれば生き延びられる可能性が高まる
(こんなくだらないことで死ねるか!)
川に近づいたその時
ドスッ
金色の矢が背中に刺さる…それを見たアルヴァンは目を見開いた
「これ…は…」
「爆炎破!」
怯んだところを炎がアルヴァンを切り裂く、左腕を切り飛ばされ全身に火が回る
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
炎が肺を焼き、体を焼き、痛みが体を切り裂いていく、壮絶な痛みを味わう…しかし爆炎破の威力が高く結果的に河野方面に吹き飛んだのだ
ドッボーン!
川に放り投げられるように落ちたアルヴァン、マルクが追撃しようとしたが上がって来る気配がない
「隊長、奴は」
「あの怪我だ、生きているなら運がいいが…無理だろうな、腕も切り飛ばし身体中は炎で焼かれた、生きている方が苦痛だろうな」
マルクは勝ち誇ったかのように微笑む、これでスレイのそばにいた邪魔者が消え去ったのだからと
ガサガサガサガサ
「ん?どうかした?」
ある森、そこで長い黒髪に褐色の肌、全身真っ黒なインナーに聖女のような黒い服を着た女性がいた、彼女の足元にいた影のようなものが彼女を呼んでいた
「…なにかあったの?」
女性が呼ばれるままにいくと、そこには左腕が切り飛ばされ、ズタボロの男がいた
「…」
辛うじて顔ははわかるが火傷跡が酷い…全身焼けたような跡があり、左腕は焼けた血が蓋をして止血されていた、壮絶なダメージを受け、ており、既に絶命していた
しかし彼を見た女性の顔は、恋する乙女のような顔をしていたのだった
[newpage]
(ん…)
目が覚める、アルヴァンが見た景色は緑だった、しかし花畑ではない、水の中にいるようなそんな感覚だ
(私は死んだんじゃ)
覚えてる、あれは死んだ、間違いなく死んだ、死んだはずなのに死んだと理解できるくらいのダメージだったはずだ
「ヴ」
声がしたから隣を見れば
「ニヤー」
影のような化け物がこちらを見て微笑んでいた
(は?!)
もしかして地獄か?自分は今から食われるのかとこんな時に限って冷静になってしまった
確かに人を殺してきたがまさか生きたまま化け物の餌になる末路だとは
「キシシ」
だがその化け物は笑うと奥へと歩いていく
そしてしばらくすると
「目が覚めたの!」
黒髪の褐色肌の女性が嬉しいそうに近寄ってきた、無論知らないし、知り合いでも無いし知り合いの友人にもいなかった
「よかった、上手くいった見たいね、生体反応はあるから大丈夫だとは思っていたけどやっぱり時間がかかったわね」
(…?)
「ふふ、なにが起きたか分からないみたいな顔してる」
ニコニコしながらアルヴァンを見てくる、アルヴァンも冷静になってきたのか周りが見えるようになってきた…なにかの部屋で自分は緑の液体の中にいる、不思議と呼吸もできている…
「動けるかしら?とりあえず起き上がらせるわね」
彼女はアルヴァンを持ち上げる
「!!」
その時自分の足を見た、腕を見た、左足は半分なくなっている、右足は根元から、さらには体は火傷跡がびっしりある、近くの鏡を見たら顔が半分火傷跡が着いている、だが1番驚いたのは腹の部分、なにか真っ黒なものが蠢いていたのだ
「お前!私になにをした!」
「あらいい声、予想より低音で素晴らしいわ、いろいろ聞きたいことはあるでしょうし順番に話すから大人しくしてて」
彼女はアルヴァンに服を着せると車椅子に載せる、彼女はニコニコしながらアルヴァンを見ていた
「まずは自己紹介かしら、私はマルディナ、わかりやすく言うなら…あなた達が滅びの魔女と呼ぶ者よ」
「なっ」
滅びの魔女の話は有名だ、どこにいるかは分からないが破壊神アイテールと契約し、その気になれば世界を滅ぼすなど容易い存在、その魔女が今目の前にいるのが信じられない
「本当に滅びの魔女なのか」
「疑いたくなる気持ちはわかるわ、アイテール」
名を呼ぶとどこからともなく、それは現れた、天使は悪魔を畏怖させるために異形の姿をすると聞いたことがあるが、これは形を形容できない、見るだけで畏怖し恐怖が体に流し込まれる…理解してはならない、理解しては行けない、名状しがたい恐怖がアルヴァンを包んだ
「もういいわ」
彼女がもういいというとアイテールは姿を消した
「わかってくれたかしら」
「あぁ、君は本物みたいだな…それで…私のこの腹のこれはなんだ」
蠢く黒い物体、心臓と同じように鼓動する
「それは私の作った竜の心臓よ」
「作った?」
「あなたを拾ったときあなたは絶命寸前だったわ、内蔵も真っ黒焦げで貴方を甦らせるには内蔵から全てを入れ替えなきゃいけなかったの、だから竜の心臓に改良を加えて貴方の体に埋め込んだの、焼け焦げた内蔵を新しくして延命を試みたの、結果は時間がかかったけど成功したみたいね」
「これをひっぺがすとどうなる」
「もうかなり体に馴染んでるからいずれ消えるしひっぺがすってことは内蔵全部引きずり出す勢いになるから無理かしら」
つまりこの改造心臓とこれから生きていかねばならないのかとアルヴァンは頭を抱えた
「私は…死んだのか」
「かろうじて生きていた、ほっておいたら死んでいたわ」
「なぜ助けた?」
それを聞いた瞬間、マルディナは顔を赤らめて恥ずかしそうにしていた
「…貴方に一目惚れしたから」
「え」
「倒れている貴方を見て一目ですきになったのよ…だから竜の心臓を使ってまで治療したの」
「まてまてまてまて君は私がどういう人間か知らずに私を助けたと?!」
「だってあなたからは私と同じ匂いがしたから、それに生きてきて初めて助けたいって想ったから間違いないわ」
「勘で私を助けたのか…私が非道な人間だったらどうする気だったんだ、殺されるということは罪人の可能性もあるだろ」
「いったはずよ、同じ匂いがするって、クズやゲスの匂いなんてすぐ分かるもの、むしろあなたの匂いは無臭、なにもないもの」
「…?」
言っている意味がわからないが、とりあえず自分の人間性を見抜かれてることだけは理解できた
「…私は治療費を払えない、無一文で国から追放されたような人間だ、君になにかお返しなど」
「いらないわ、だって貴方が好きだからしたんだもの」
彼女はキャーキャーいいながらアルヴァンと話せることを喜んでいた
「…君には恩義があるが私は君の気持ちに答えることは…難しい」
「どうして…?」
声のトーンが落ちた、彼女の顔から黒い涙が流れ始める、アルヴァンは即座にまずいと理解する
「まだであって数分だ、話しただけで君を理解した訳じゃないし一目惚れは嬉しいが…君の気持ちに今答えるのは早計というはなしで」
「なんだそういうことね、いいわ、待つもの3年も待ったのだし貴方が目が覚めたし、あと少しくらいなら待てるわ」
「3年?」
「貴方を拾って目覚めるまで3年よ」
3年も眠っていたのが信じられないが、マルディナが暦を見せてくれたら本当に三年経っていた、それだけ重症だったということだ
「…3年も待ってたのか?」
「生きていたら目覚めるって思ってたもの」
「…君は根気強いな」
「だって好きになったんだもの」
なんだろう、所々愛が重たく見えた
アルヴァンは少し動揺しながらも彼女の話を聞く、3年経てば色々変わっているだろう、国の情勢も気になるとこである
「…ちなみに私が君の想いに答えれないと言ったら?」
「…」
タブーだとは分かっている、仮に彼女を振るとどうなるか
彼女は黒い涙を流し
「そうなれば…全て…滅ぼすわ」
と涙を流しながらおぞましい笑顔が現れた、彼女は本気である
「…本当に?」
「本当よ、だから私の事愛してね♡」
この日アルヴァンは世界破滅の自爆スイッチとなったのだった