交尾の際にはテイルを淫猥に絡め合わせて

  20☓☓年、獣人のみが暮らすこの国においてとある概念が常識となり社会一般的に定着していた。それは誰かしらが名付けた【松竹梅テイルタイプ】、というものだ。

  人にはそれぞれ生まれ持ったテイルタイプが存在し、種類は松、竹、梅の三つで分類される。その大きな特徴としては、交尾した相手を孕ませるかもしくは孕ませられるかの違いだ。

  松のテイルタイプを持つ獣人は、タイプや種族関係なくどんな相手であっても子種を注げば確実に妊娠させられる。もし松が同じ松のテイルタイプに犯された場合、ネコは自動的に梅のタイプへと変異して二度と松には戻らない。

  一方で竹のテイルタイプは、松と竹を孕ませる事は不可能だが梅のタイプであれば妊娠させる事ができる。全体の9割以上はこのテイルタイプに当てはまり、最もポピュラーな性質だと位置付けられている。

  そして三つの中でも特に異質なのは梅のテイルタイプだ。通称ウメ型に至ってはタチでどれだけ種付けしても相手を孕ますのは性質的に無理な話であり、後からタイプが変異するのも今現在において報告されていない。つまり、梅の獣人は松や竹と雄交尾して子を孕むのが必然だと言われている。

  これらの概念は30年ほど前から世に広まり、一般常識として学校の保健体育でも学びが義務化されており成人を迎えると国民全員が漏れなく検査を受ける。本人が希望すれば成人前の段階でテイルタイプを知るのも可能だ。

  時代が進むにつれ法整備も行われ、ウメ型の獣人が望まない妊娠を防ぐ為に避妊薬の認可が下りたり雄交尾による出産一時金が国から支給されたりと、かつて問題視されていた障壁も少しずつ取り払われている。

  しかし一方で、生まれ持ったテイルタイプにより振り回される者も一定層いるのが事実だ。そしてここにもまた、悩みを抱える獣人が人知れず頭を抱えていた。

  「はぁ⋯⋯実家になんか帰るんじゃなかった。おフクロの奴、顔を合わせるや否や『あんた孫はいつ見せてくれるの?』って⋯⋯。俺がウメ型だからっておいそれと孕める訳ないだろ。仕事だってまだまだ半人前なのに」

  どことなく陰気なオーラをまとう茶トラ猫の男はぶつぶつと小声で愚痴りながら、両親が住む実家から戻ってきた足で夜の街中をあてもなく歩いて回る。気分が沈んでいるのもあり、真っすぐ家に向かうのも憚られる茶トラ猫はどこか雰囲気の良さそうな飲み屋を探していた。

  すると狭い路地の一角、地下へ続く階段の先に『BAR オアシス』と書かれた看板が掛かっているのを見つけた。まさに憩いを求める茶トラ猫にとってオアシスの文字が魅力的に映り、短い階段を降りてBARに続く入り口の扉を潜った。

  「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」

  カウンターの向こう側に立つ白シャツと黒いベストを着こなす店主のバーテンダーが丁寧にお辞儀し、新たな来客である茶トラ猫を席に誘う。空いている椅子に腰掛け、適当なカクテルを注文して出てきたアルコールを一口煽る。茶トラ猫はため息交じりにふーっと息を吐いた。

  周りからはレアな存在で羨ましがられる時もあったが、茶トラ猫からしたらウメ型で良かったと思った場面が一つも浮かばない。むしろ交尾目的で好きでもない奴に言い寄られて迷惑に感じたり、親から早く孫の顔を見せてほしいと急かされたり何かと鬱憤が溜まるばかりだ。

  何よりも厄介なのは、隔月で毎回訪れる発情期だった。テイルタイプにおける発情期の重さには差異があり、茶トラ猫の場合は誰でも良いから犯されたいという衝動に突き動かされる。市販されている薬を服用すると多少楽にはなるが、体調が優れないと会社を休む羽目になりそれも困り事の一つだ。

  どうしてこんな厄介にもほどがある性質を持って生まれたんだろうか。テイルタイプを気にせず普通に生活して、普通に恋愛して、好きな人と結ばれたい。切実な願いを胸に抱えたままちびちびカクテルを煽っていると、茶トラ猫の側に近寄る獣人の姿があった。

  「すみません、お隣よろしいですか?」

  「あ、は、はい。どうぞ」

  突如声を掛けられた茶トラ猫が驚きながら振り向くと、ワイシャツにスラックスというシンプルな服装が様になっているガタイの良い獅子人が穏やかな微笑みを湛え、ぺこりと小さく一礼してから横の席に腰を下ろす。

  彼もまた好みのカクテルを頼み、グラスに注がれた綺麗な色の液体をゆっくりと味わって飲む。仕草が店の空気感と一体化していてよく溶け込んでいるという感想を茶トラ猫は抱く。

  「⋯⋯初対面で差し出がましいかもしれませんが、何か悩みをお持ちなのではありませんか?」

  「へっ? ど、どうして⋯⋯?」

  「明確な根拠は無いですけど、ほら、この店のお名前ってオアシスと言うじゃありませんか。なので初めて来店される方は、何かしら胸の内にモヤモヤした感情を抱いていらっしゃるケースが多い様な気がして。かくいう僕もその中の1人なんです」

  「⋯⋯はい。実は、そうでして。会ったばかりで失礼かもしれないですが、お酒の席で愚痴を聞いて頂いても良いですか?」

  「もちろんです。僕に話したいだけ話してください」

  酔いが回って自制心も緩くなり、いつもなら家族にさえ打ち明けない己の陰鬱とした感情を名前も知らない他人にぺらぺらと喋り倒す。茶トラ猫が話している間、獅子は静かに相槌を打ち一言一句すら聞き漏らすまいとじっくり傾聴していた。

  「──と、いう訳なんです。もうホント嫌になっちゃって。ウメ型になんか生まれたくなかったですよ、せめて松か竹のテイルタイプならここまで悩みの多い人生を歩まなくて済んだってのに」

  「なるほど⋯⋯色々と大変でしたね。梅のテイルタイプは全体的に数少ないですから、あなたと同じ境遇の方と苦悩を共有するのも難しいでしょうし。発情期になると体調を崩すというのは、僕も症状が重く出るので頷けます」

  「分かったフリしなくて大丈夫ですよ。だって竹なら発情期もたかが知れてるでしょ? 俺の気持ちに寄り添えるはず無いですってば」

  「あ、言い忘れていました。僕は竹でなくマツ型のテイルタイプでして。一応、虚偽申告だと疑われない為にタイプカードを提示しておきますね」

  懐から定期入れにしまわれた一枚のカードを取り出してカウンターの上に置く。そのカードには獅子の名前と顔写真、更に【テイルタイプ:松(マツ型)】との記載が記されている。

  このカードは全国民が携帯する事を法律によって定められており、雄交尾の際に性的トラブルを防ぐ意味合いで作製される身分証明書だ。特殊な技術によって偽造はできない仕組みである上、万が一カードを複製等した場合は厳罰が科される。

  無論、目の前に提示された獅子のタイプカードも正真正銘の本物であり、口だけにあらず形をもってしてマツ型だというのが証明され疑う余地の無い茶トラ猫はすぐさま謝る。

  「ご、ごめんなさい。最初からテイルタイプを決め付けてしまって。その、俺のタイプカードも確認してください」

  「ありがとうございます。⋯⋯あなたのお名前は[[rb:猫梅日々希 > ねこうめひびき]]さんと仰るのですね。カードにも書いてありますが、僕の名前は[[rb:獅子松壮眞 > ししまつそうま]]と言います。日々希さん、とお呼びしても良いでしょうか?」

  「ぜひぜひ。俺も壮眞さんって呼びますね。壮眞さん、差し支えなければマツ型で大変だった経験とか教えてもらえますか? そういうの、今まで人から聞いた事なくて」

  「うーん、そうですね⋯⋯。新卒で入社した会社で、同僚から度を超えた猛烈なアプローチを受けた事ですかね。当時の僕は任された仕事をこなすのに精一杯で、恋愛については考える余裕がありませんでした。なので同僚の行為に気付いても知らぬ存ぜぬのスタンスを貫いていたんですが、ある日会社に行くと私がレイプ魔だと嘘の情報が社内で広まっていました」

  「ええっ!? そ、その情報を流したのってもしや⋯⋯」

  「お察しの通り例の同僚です。どれだけしつこく迫っても断られるのに腹を立て、僕を陥れてやろうとしたと本人が語っていました。誤解はどうにか解けましたが、会社で問題を起こされると困るという理由から入社1年でクビになってしまって。精神的にも落ち込んで途方に暮れていましたね」

  「⋯⋯申し訳ありません」

  「日々希さんがお謝りになる必要ありませんよ。今となっては笑い話にできるまで回復しましたしね」

  「いえ、違うんです。俺は自分だけが不幸なんだって思い込んで、壮眞さんの苦労も知らずに愚痴を垂れ流してばかりいて。自己中心的な視野の狭さを実感しました」

  「⋯⋯そう思える日々希さんは優しい方ですよ。意外と多くの人間は自省せずに、同じ過ちをまた繰り返しては相手のせいだと憤ります。ですが日々希さんに関しては違います。あなたは人の痛みや悲しみを分かち合える温かい心の持ち主ですね」

  目を細めてにっこりと笑う獅子につられ、茶トラ猫もまた口元を緩ませて自然と朗らかな顔つきになる。いつの間にか胸にわだかまっている靄はすっきりと晴れ、雨上がりの空に虹が掛かるかの如く澄み切った心模様だった。

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  それからというものの、2人は夜のBARでしきりに会い美味しいお酒を飲みながら他愛もない雑談に花を咲かせ、楽しい時間を過ごす様になっていた。

  会話の内容は日によって変わり、職場でのトラブルや最近ハマっている趣味についてやサブスクの配信サービスで視聴したあの作品が面白かったなど、お互いが思い思いに言葉を交わしてストレス解消と相手への好意を日ごとに募らせた。

  茶トラ猫と獅子人が知り合ってからおよそ3ヶ月が過ぎた頃、今日もオアシスで普段通り語らい合う2人だったが、どこか様子の違う事に気が付いた獅子は茶トラ猫に疑問を投げ掛ける。

  「日々希さん、何だか顔が赤いですよ。まだそんなに飲んでいないのに大丈夫ですか? ひょっとして熱でもありますか?」

  「⋯⋯ううん、違うんだ。あの、さ。今月に入ってから、アレが来たんだ。──発情期が」

  「発情期⋯⋯それで顔が赤かったんですね。納得しました。身体が苦しいとかありませんか? 僕にできる事があれば可能な範囲で力になりますよ」

  「良いのか、迷惑かけちゃうかもしれないぞ⋯⋯?」

  「そんなの平気です。少しでも日々希さんの負担を和らげる手助けをさせてください、お願いします」

  「じゃあ、甘えちゃおうかな。今から俺が言う場所に連れて行ってくれ、壮眞」

  「了解しました。お会計だけ済ませますね」

  獅子が2人分の料金をまとめて支払い、店を出て足取りが覚束ない茶トラ猫の肩を隣で支えつつ指示された方向へ足を運ぶ。

  夜のネオン街を抜けた先に辿り着いたのは、ピンク色の妖しい光が輝きを放つラブホテルだ。予想していなかった場所に到達し、獅子は戸惑いながら茶トラ猫に問い質す。

  「ひ、日々希さん。その、途中で道を間違えましたか?」

  「いや、ここで合ってる。早く入ろう」

  「⋯⋯入るだけ、ですもんね。ひとまず休んで元気になったら移動しましょうか」

  断じてやましい行為はしないと自分自身に言い聞かせながら獅子は茶トラ猫を引き連れてホテル内へと踏み込む。仕切りが設置された受付で利用時間を決め、鍵を受け取って選んだ部屋に押し入る。

  「日々希さん、部屋に着きました。一旦ベッドに下ろしますね」

  「世話かけて悪い、連れて来てくれてありがと」

  「いえいえ、お安い御用ですよ」

  肩を貸していた茶トラ猫の小柄な身体をベッドの上に優しく横たわらせ、獅子も近くに座って顔を覗き込む。服の隙間からチラリと見える首筋にムラっと色気を感じてしまい、獅子は理性を保てと己に喝を入れる。

  「⋯⋯ねぇ、壮眞」

  「何ですか?」

  「俺さ──壮眞とエッチしたいんだ。壮眞は、どう? 俺とそういう行為したいって思うか?」

  「ひ、日々希さんっ!? と、突然言われましても⋯⋯。ご存知だと思いますが、僕のテイルタイプはマツ型です。つまり雄交尾をするとなると、即ち日々希さんを孕ませる事になります。しかしながら避妊薬を飲めば回避できますけどね」

  「ウメ型の必須アイテムの避妊薬はちゃんと常備してる。でも、俺は飲みたくない。壮眞と交尾するなら子どもを産みたいんだ。だって俺、壮眞を誰よりも愛してるから。お前が好きなんだ!」

  ベッドに寝転がっていた茶トラ猫は上体を起こし、傍らにいる獅子の目を見つめて声に力を込めながら告げる。嘘偽りが一切ない純然たる気持ちを伝えられ、獅子はその告白に誠意を以て応える。

  「とても嬉しいです。僕も、日々希さんに強く惹かれています。正直、過去の経験から恋愛に対して臆病な一面がありました。ですが、日々希さんとなら恐れず向き合えます。僕と人生を共にしてください」

  「壮眞⋯⋯俺、壮眞と出逢えて物凄く幸せだよ。世界で一番の幸せ者って表現しても大げさじゃないくらいに。生まれてきて心の底から良かったと思う」

  「僕たち今、気持ちが一致していますね。日々希さんとより深く繋がりたいです」

  「それはセックスのお誘いと解釈して然るべきだよな? この期に及んで待ったは通用しないぞ」

  「いくら奥手な僕でもここでお開きにはしませんよ。むしろ日々希さんを犯したくて堪りません、発情期は来月の予定なのに前倒しで訪れたのかもしれませんね」

  「だったら支障は無いな。俺のトロトロアナルに棘付きチンポ突っ込んでくれよ、壮眞。俺にチンポ挿れたくて頭おかしくなりそうなんだろ? お前になら乱暴されても耐えられるからさ。あ、だからってケツは事前に解してくれよな。慣らさずにいきなりブチ込まれたら後で痛みが襲うかもだし──」

  「──もうダメ、堅苦しい言葉遣いが煩わしくなってきた。っていうかいい加減こなれてる感を出すの止めてくれない? 僕は君が未貫通の処女マンコだってとっくに見抜いてるよ」

  「⋯⋯へ。そ、壮眞? い、一体どうしたんだ?」

  「単に猫被ってただけだよ、これが素の僕。びっくりした? 恋人同士になったから無理に丁寧な話し方しなくても良いかなって。やっぱり自然体の方が楽だしね」

  「そ、そっか。怒ってるとかじゃないなら全然問題ない。確かに素を出してくれるのは信頼の裏返しだからありがたいよ。てか案外、壮眞って毒舌キャラなんだな。処女にも関わらず見栄張ってこなれてる感を醸してるのは全くもって正論だ、ぐうの音も出ない」

  「日々希は仕方ないなぁ。ま、そういう見栄っ張りなとこも可愛いから許してあげる。あと僕が詰ったりするのも愛情表現の一つだよ。日々希の事が好きなあまりに意地悪したくなるんだ、てへっ」

  「茶目っ気の塊だなおい。どこかで双子の弟と入れ替わったって言われても違和感ないぞ、逆にあのミステリアスな大人っぽさを演技でカバーできてたのに驚愕だ」

  「一時期は役者になろうか本気で迷ってたくらいだからね。冗談だけど」

  「冗談なんかい。からかい上手にもほどがあるだろ」

  前触れなく豹変した獅子に振り回される茶トラ猫は苦笑しながらも心地良さを覚える。あるいは気兼ねなく言い合えるフランクな関係性を彼自身、密かに求めていたのかもしれない。

  「そいじゃ元役者志望の壮眞さん、処女で未貫通な俺のアナルを掘ってくれるか? 発情臭がプンプン匂って鼻腔から犯されそうだ」

  「隠しててごめんね、実を言うと僕も発情期を迎えてるから香水でも上書きできないや。一緒にどろどろになってとことん堕ちよう。服、脱がすね」

  身体を乗り出した獅子は茶トラ猫の着衣に手を掛け、剥ぎ取る様にして脱がし被毛で覆われた裸体を露わにさせる。ふわふわな体毛と裏腹に茶トラ猫はすらりとした細身であり、背の低さも相まって実年齢より幼い印象を受ける体格だ。

  茶トラ猫を脱がした後で獅子も自ずと脱衣し始める。こちらは対照的に筋肉質で雄のフェロモンをこれでもかと漂わせ、茶トラ猫にお前はウメ型の雌だと五感全てで理解らせる。

  「う、わぁ⋯⋯♡ すっごぉい⋯⋯♡ オスくっさぁい⋯⋯♡ んっはあぁぁぁ⋯⋯っ♡」

  「でしょ? 脇の下とか特にニオイ濃いよ。嗅いでみて、えいっ」

  恍惚とした表情を浮かべる茶トラ猫の顔面に脇を押し付けて獅子が覆い被さる。強制的に汗と獣臭が混ざった独特の臭気を至近距離で嗅がされ、フガフガと鼻を鳴らして茶トラ猫は小刻みに痙攣する。

  「んんっ⋯⋯はぁっ⋯⋯♡ そーまのニオイに塗りつぶされちゃったぁ⋯⋯♡ しあわせぇ⋯⋯っ♡」

  「ありゃりゃ、トリップしちゃった? 惚けるにはまだ早いよ。これからマゾ変態な日々希にご褒美あげるから、四つん這いになってケツ上げな」

  「は、はぃぃ⋯⋯♡」

  表情筋を緩ませたまま後ろ向きの体勢で尻を高く掲げ、期待に胸膨らます茶トラ猫のヒクヒクと蠢くアナルに獅子は舌を伸ばしてニュププッと突き入れる。そしてザラザラな感触の舌先を器用に動かし、興奮で愛液が分泌される雄膣内を奥へ奥へと掻き分けていく。

  敏感な腸壁を舌で丹念に穿られ、肉襞の一つ一つをねっとりと舐められる感触に茶トラ猫は被毛がゾワッと逆立ち、堪え性もなく艶めいた声を喉元から外へ押し漏らす。

  「んほおおおっ⋯⋯♡ ひあああああっ⋯⋯♡」

  ピチャピチャと卑猥な水音を奏でてしばらくアナル舐めの時間が続き、10分近く経ってようやく尻穴から舌を引き抜き獅子が膝立ちになる。

  「ほら、コレ欲しいでしょ? 欲しいならおねだりしてみなよ。上手にできたら挿れてあげる」

  勃起した肉竿をペチペチと尻に当てて獅子から茶トラ猫へと命令が下される。今、主導権を握っているのがどちらかなのは一目瞭然であり、茶トラ猫は服従の意思表示として腹を見せ媚びる様な上目遣いで獅子に懇願の言葉を紡ぐ。

  「そーまぁ、俺のマンコにチンポ突っ込んでめちゃくちゃにしてぇ⋯⋯♡ そーまとの赤ちゃん、はらみたいよぉ⋯⋯っ♡」

  「及第点、ってところだね。もう少し色気のあるセリフが聞きたいけど、今回は良しとしておくよ。日々希との初セックス、二度と忘れられない記憶として肉体に刻み付けるから──全力で日々希を和姦するね」

  次の瞬間、それまで優しく穏やかな薄笑いを浮かべていた獅子の面持ちが一変した。例えるならば極限まで腹を空かせた猛獣が差し出された餌に齧り付くかの如き、生まれついた欲望を剥き出しにするワイルドを遥かに超越した猛り狂ったものだ。

  先祖が肉食動物であるのを想起させる低い唸り声をグルルルと鳴らし、獅子が宣言通りの激しいピストン運動を繰り出して雄交尾の快楽を欲しいがままにする。肉オナホとして身体を委ねる茶トラ猫は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃに濡らし、もはや声にならない稚拙な喘ぎを途切れ途切れに放つ。

  「んあ゛っ♡ おほお゛お゛っ♡ すげっ♡ ちんぽっ、おくにあたってるう゛う゛う゛っ♡ んお゛お゛っ♡ っひいいいいいぃぃぃぃぃぃっっっ♡♡」

  「ウオオオッ!! グルアアアアッ!! グウウウウウッ!」

  人語を介さないその性行為は果たして情愛と呼べるのかどうなのか、傍から見れば極めて不明瞭である。ただし言葉を交わす代わりに2人は互いの尻尾を巻き付けて絡ませ合い、理屈を抜きに相手の事を想っているとこの上なく明示している。それだけで気持ちが通じ合っていると表向きに視覚化するには十分な要素だった。

  マツ型とウメ型のテイルタイプが肉体を重ねて無我夢中にまぐわい、相手を孕ませたい側と相手に孕まされたい両者の切なる願望が一つになって雄交尾を加速させる。それに伴い場の熱気とボルテージも最高潮へと達した。

  「出すッ、ザーメン出すぞオオオオオオッ! 孕めっ、孕めえええええええエエエエエェェェェェェッッッ!!」

  「あっはああああああーーーーーーーーっっっ♡♡ んあっ、はうっ、んへえぇぇぇぇ⋯⋯♡」

  一段と大きな雄叫び後、ドチュンッ! と最奥にて種付けが行われる。その多量な獅子の精子は我先にと子宮を目指して泳ぎ、たちまち茶トラ猫のナカを白濁が埋め尽くす。

  そしてまた茶トラ猫の方もビクビクビクッと陸に上がった魚の様に全身を震わせて甘美なる絶頂の快感を得る。そんな彼の顔はだらしなく緩み切って白目を剥かんばかりに見開かれていた。

  共に悦楽の頂点へ到達し、これでセックスが一区切りついたと思ったのも束の間──驚異的な回復力で交尾モードに入った獅子が再び腰を叩きつける。体位は先ほどの正常位から対面座位に移行していた。

  体勢が変わっても2人の尻尾はしっかりと絡み付いており、尾の先で形作られるのはハートマークにも見えた。こうして2人は初夜であり子作りのひとときを精根尽き果てるまで延々と雄交尾に勤しむのだった。

  [newpage]

  ──熱く燃える一夜からおよそ10ヶ月、出産当日になって獅子は病院の待合室でそわそわと落ち着きなく肩を揺らし、両手を結んでグッと固く握り締める。今まさに分娩室で茶トラ猫がお腹の子を産むべくウメ型にしか知り得ない陣痛と懸命に闘い、獅子にできるのは出産が無事終わるのを祈るだけだ。

  しばらくして手術中を知らせるランプがふっと消え、それを見た獅子は即座に分娩室へと足を踏み入れる。そこでは今しがた産まれたばかりの我が子を腕に抱く安堵した顔つきの茶トラ猫が慈愛に満ちた眼差しを注ぎ、急ぎ足で室内に入ってきた獅子と視線を合わせてどこか清々しそうに喜びの声を紡ぐ。

  「壮眞⋯⋯産まれたよ、俺たちの子。お腹を痛めた苦労すらも愛おしく思えるや。神様からの贈り物だね」

  「この子が、僕と日々希の赤ちゃん⋯⋯。ありがとう、産まれてきてくれてありがとう。日々希も赤ちゃんもよく頑張ったね。本当に、よく頑張った⋯⋯!」

  元気良く産声を上げる2人の愛の結晶は、猫と獅子の要素を半々にして分け合った交配種である。普通は異種族間で交尾すると生まれてくる子どもはどちらかに偏る事が多く、きっちり半分半分で両親の種族を受け継ぐのはかなり珍しい。

  獅子は愛しのパートナーと目に入れても痛くないほど可愛い赤ん坊をまとめて抱き締め、目一杯の愛情を込めてすりすりと頬擦りする。この家族が今後どういった生活を送るのか、少なくとも笑顔が絶えない家庭になるのは想像するに容易いだろう。

  この茶トラ猫と獅子の番による関係性はあくまで一例であり、獣人が星の数ほどいる国ではありとあらゆる幸福や反対に不幸も渦巻いている。表があれば裏もあり、明るく眩しい光に紛れて闇に覆われた暗い部分もあるのが現実だ。

  国民には貧富の差に関係なく生まれた瞬間からテイルタイプが備わり、そのタイプが獣人たちの運命を大きく変える要素に良くも悪くもなり得る。

  果たして次はどんな物語が幕を開けるのか。もしくは既に始まっているのかもしれない。獣人ある所に雄交尾あり、だ。