ペットのわんこ獣人に主従逆転マゾバレえっちされる話です

  「なあテル、明日休みだしゲーセン行かんか」

  「あ、待って[[rb:照市 > てるいち]]は」

  「ああ、そうなんだ、カラメルの散歩があるから……悪い」

  教科書を鞄にまとめて、まだ賑やかな教室を足早に後にする。自宅の見守りカメラと連動させたアプリでカラメルの様子を確認しながら廊下を歩いていると、[[rb:宮村 > みやむら]]くん、と俺を呼ぶ声。顔を上げると、委員長のてまりさん。

  「どうしたの、てまりさん」

  「ううん。先日お手伝いしてくれた件、まだお礼言ってなかったなって。ありがとう、ほんとに助かったよ」

  「ああ、いいよ、俺帰ってもカラメルの世話するだけで暇だし」

  「宮村くんが飼ってるコだよね。そういえば見たことないかも。見ていい?」

  スマホの写真アプリを開き、直近で撮ったカラメルの写真を見せる。

  「……うーん? 犬種は……」

  「キャバリアだよ。てまりさんにはちょっと……見分けつきにくいかもだけど」

  「そうだね、イヌのコを見分けるのは苦手。キャバリア……って、名前聞いたことしかなかったけど。こんな感じなんだ。ふふ、かわいいね」

  てまりさんは目を細めて笑う。つられて彼女の尻尾もしなやかに振られた。

  「そういうわけで俺はこのアホの世話をしなくちゃいけないから、この辺で」

  「うん、またね。あ、でも歩きスマホは気をつけてね」

  てまりさんは軽く手を振って去っていった。実際のところ、俺も獣人を見分けるのは苦手だ。てまりさんがどの種類のネコかはわからないが、グレーの短髪からはネコ獣人特有の三角耳。その尻尾の毛並みは濡れた岩のようにつややか。

  耳と尻尾。獣人と俺たちヒトとの見た目の違いは、本当にそれだけ。

  彼女のネコ獣人としての種類がなんであれ綺麗でかわいいので、それでいいと思う。俺もそんな理由でカラメルを迎えた。

  廊下を歩く。ヒトとすれ違い、獣人とすれ違う。……この景色が、俺が生まれる少し前までは、どうやら普通じゃなかったらしい。以前は獣人ははっきりと動物扱いだったけど、ヒューストン宣言以降は、本人が人間としての扱いを望むなら人間として、従来通りの動物扱いを望むなら変わらず動物として扱うようになった。要するにヒトも獣人も関係なく、当人の望むアイデンティティを国が保障するべしという宣言だ……と公民の田中先生が言っていた。

  そうして今、こんなふうにクラスメイトにてまりさんがいる一方で、家にカラメルがいる。上の世代にはまだ差別意識の根深いヒトがいるみたいだが、俺にはまあ、今のこれが普通だ。

  ***************

  「ただい……」

  「ご主人!」

  ふたりで暮らすには持て余す一軒家のでかいドアを開けた途端、その音を聞いて家の奥から茶色の影がすっ飛んできた。

  「あは、おかえりなさい! 今日のご飯なんですかっ?」

  洗面所へ歩く俺の顔を、カラメルがのぞき上げながらついてくる。

  「豚しゃぶ温野菜」

  「ワ。玉ねぎ抜いてくださいね」

  「[[rb:獣人 > おまえ]]は食えるだろーが。好き嫌いしないの」

  「うへへ」

  俺が手と顔を洗ってる間にも、茶色の癖毛に覆われたでかい耳と尻尾をバタつかせながら、これまたでかい目で俺を見つめてくる。頭を撫でてやるとにっこりと笑った。明るく素直で人懐っこく、かわいいやつだ。

  *

  食後、互いに入浴を済ませてから。

  「なんか見たいのある?」

  「えー? んーと……ご主人が見たいやつがいいですっ」

  「んー……じゃあやっぱこれだろ」

  「あは、やっぱこれですか」

  広いリビングのソファに座り、何度目かわからないお気に入りの映画を見る。右の太腿は、ふかふかのパジャマを着たカラメルの枕になる。

  「これ、有名な映画なんですか?」

  「いや……同じ監督の前見たやつの方が有名。俺はこっちの主人公の方がカッコいいと思うから、こっちが好きなんだよね。話はほとんど同じだけど」

  画面を見たままカラメルの頭を撫でたり、顎をいじったりしてやりながら喋る。

  「ふーん。アクションは前の方が好きかもです」

  「それは俺もそう。でもこっちの方が武器は絶対カッコいい。主人公の女もカッコいい」

  雑談未満の、どうでもいいやりとり。人が死にまくるアクション映画を見ているにも関わらず、なんとなく優しい気分になれる。

  ……カラメルを迎えた大きな理由の一つは、寂しさだった。

  いつからか両親は仕事で数ヶ月帰ってこないことがザラになり、家族3人で過ごすための家は俺一人にはだだっ広く、うすら寒かった。そこで、親と相談の上、去年に地域のおばあちゃんからカラメルを引き取った。とても人懐っこく、俺にもすぐ慣れてくれた。

  ペット獣人は知性が高い(ヒトと比べると衝動的な部分は多いが)から、動物と比べて世話に大きな手間がかからない。自分で風呂に入れるし、小遣いの範囲で買い物もする。自室は自分で掃除できるし、勝手に俺のインスタントラーメンにかき卵を入れて食う。

  ……我が家に宮村カラメルが来てから、なんだか心に余裕が出来た感じがする。

  「……カラメルはさ」

  ……呼びかけに返事が無いので下を見やると、やはり寝ていた。気持ちよさそうに寝息を立てている。自分の部屋で寝ろよ風邪ひくぞ、と言おうと思ったが、こいつはこうなるともうテコでも起きない。

  「…………」

  ……ふと、カラメルの身体に目を見遣ってしまう。

  (……ああ、良くない)

  考えを振り払うように頭を軽く振り、カラメルに毛布をかけてリビングの電気を消した。

  カラメルを迎えた理由は、他にもある。……あった。

  ***************

  翌週土曜日。

  友人との、ゲーセンに行けなかった予定の埋め合わせのことをすっかり忘れていて、急いでカラメルに留守番を頼んだのが今朝だった。飯の用意もしていなかったので、俺の部屋に置いているカップラーメンを勝手に作って食っていいと言って、慌てて家を飛び出した。

  急に留守を任せて何もないのも悪いし、俺も食べたかったから、ケーキを買って帰った。日の沈みかけた頃に自宅の前に着くと、俺の部屋の電気がついている。たしかパソコンも消さずに出たような気がする。電気代は親持ちだ、申し訳ない。

  ドアを開ける。靴を脱ぐ。

  ……。

  あれ?

  「……あ、おかえりなさいっ」

  部屋着のTシャツ姿のカラメルが、廊下の奥からひょいと顔を出してくる。

  「……? あ、おぉ、ただいま」

  なんだろう。いつもならドアの音を聞くなりかっ飛んで来るところだが、珍しい。留守の間になんかやらかしたか?

  「ああ、ごめんな急に留守任せて。これ、ケーキ買って来たから。メシの後に食べよう」

  「わ! ケーキ! 果物のやつですかっ!」

  ぱっと顔がいつもの調子に戻った。カラメルは素直だから、何かやらかしたらちゃんと自分から言う。それを待とう。

  ……と。先に電気消さなくちゃな。

  「部屋の電気消してくる。これ冷蔵庫入れといて」

  「は! ……は〜いっ」

  これは、確実になんかやったな。階段を上がって、恐る恐る自室のドアを開けると……

  「……なんだ、何もないじゃん」

  電気がつけっぱなしなだけの、いつもの自分の部屋。夜食用だったカップラーメンはPCデスクから消えている……

  「……あ!」

  パソコンの電源ケーブルがコンセントから抜けている!

  「うわ〜、大丈夫かなこれ……」

  ケーブルを差し直し、起動。……とりあえず、パソコンそのものは問題なさそうだ。まあ、こんなことをイタズラでやる奴ではない。データが無事ならいいし、注意だけにとどめておこう。

  カラメルの部屋(元物置き)も確認……しようと思ったが、やめた。ペット以前に女の子だ。部屋を勝手に見るのは良くない。

  ……出会った頃は、それこそペットのケージを管理する感覚で、普通に部屋を見たりしていたが。

  「意識って変わるなあ」

  ひとりごちた。

  *

  「ふは、おいしかった! ケーキありがとうございました、ご主人っ」

  「ん」

  フルーツタルトをぺろりとたいらげたカラメルは明るい笑顔だ。俺が食事の皿をシンクに持っていき、振り返った頃にはカラメルは定位置……リビングのソファにいる。水を一杯飲んでからそっちに向かった。

  カラメルの隣に座る。……俺の右脚は、今日はまだ枕にならない。やらかした時のカラメルは、このタイミングでいつも謝る。

  「……あのう、ご主人」

  「さて。今日は何やらかしたんだカラメル、怒んないから言ってみ」

  「……実はぁ……」

  「……」

  「…………ぇと……」

  「……?」

  変だな。こんなにまごまごもじもじする奴じゃない。

  「…………ぁの」

  カラメルが、その大きな口を小さく開く。

  「……わたし、ご主人のパソコン……見ちゃって」

  「いやいいよ、とりあえず大丈夫そ……」

  ……ん?

  「……見ちゃって?」

  「……見ちゃいました。その、ごはん、取るとき。画面に……」

  一瞬、物凄く嫌な予感が頭をよぎる。しかしその予感は……

  「…………は、はだかの、獣人のコ、の、エッチな絵、とか。映ってて」

  ……すぐに現実になった。

  ぶわっ、と身体から汗が噴き出した。

  「———ッ、や、の、それは……」

  顔が熱くなり、口が乾く。言葉がうまく出てこない。

  「それで……ふーっ……ほんとに、ごめんなさい。がまん出来なくて、ちゃんと見ちゃったんですけど……」

  ずい、と、カラメルが急に身を乗り出してきた。

  顔が近い。

  「……ご主人、ああいう……女の子にリードされるの、好きだったんですねぇー……♡」

  ……何、だ。

  「……から、かってんのか……」

  何だ、そのにんまりした笑いは。

  「いえ、その。ふふ。ほらご主人って、時々わたしのこと、なーんかじろじろって、エッチな目で見るじゃないですか」

  「っな……」

  気づかれてた。

  「気づかない方がムリですよあんなの〜。や、ですからほら。最初はご主人、『そういう目的』であたしのことお迎えしたのかな〜って思って……ちょっと前までは、そういうヒト多いらしかったですし?」

  ……事実だ。世界がこうなる前は、ヒト男性の家に動物でなくわざわざ獣人女性が迎えられる理由といえば、性的なものがかなり多かった。ヒトと比較して性衝動・性的欲求に素直であり……また、根本から種が異なるため、獣人はヒトの子を妊娠しないから……手軽なのだ。

  現在インターネットに転がっている男性向けポルノ作品は、ヒト女性が4割で獣人女性が6割と、何かの書き込みで見たことがある気がする。

  「……でもご主人、何だかんだわたしにそういうことしないで、普通にお世話、してくれましたよね……? 最初は獣人は好きじゃないのかなって、思いましたけど……ふふ、なぁんだ、気を遣ってくれてたんですか?♡」

  そして。

  「……正直わたし、ご主人にならえっちなことされるの、全然イヤじゃないですよ? くふ♡」

  「ッ……」

  「ね〜ご主人……ほんとはわたしのこと、そういう感じで見てて……えっちなことしたくてお迎えしたんじゃないんですか〜っ……♡」

  俺が当初、『そういう目的』でカラメルを迎えたのも、また事実。

  「……なんか……」

  「んー?♡」

  だが。

  「……その、最初、は……っ、そういう、つもり、だったけど……なんか、世話してるうちに……なんかやっぱ、そういうの……良くは、ないかな、って……思って……」

  「…………」

  ……一緒にいるうちに、こいつも俺と同じで、ヒトなんだと気づいた。それに。

  「……それに、その……ひとりが、寂しくて、お前を迎えたのも、本当だし……そっちの方、が……一緒にいれるだけで、俺は、嬉しい、し……」

  ……全部言ってしまった。顔から火が出そうで、カラメルの顔を見られない。

  「…………ご主人」

  ささやかれる。

  「……」

  「こっち向いてください?」

  ……目だけを、そちらに向ける。

  ———カラメルの顔はやや紅潮し、据わったような目でじっとりと俺を見つめていた。

  突如、俺の両頬に手が添えられる。驚く間もなく、目だけではダメだと言わんばかりに、強制的に顔ごと正面に向けられる。

  ……カラメルが、顔を、近づけてくる。……女性と縁のなかった俺でも、カラメルが何をしようとしているのか、流石にわかる。

  身じろぎしても、逃げ場はない。半ば反射で目を閉じる。

  唇にやわらかいものが当たる。

  …………鼻息がかかった。

  ………やわらかいものが……離れる。

  破裂しそうなほど暴れる心臓を感じながら、恐る恐る目を開ける。

  「…………♡」

  カラメルが、けもののように舌なめずりをした。

  「……カラメル……」

  「ご主人……ふふ。こんなにかわいかったんですね……♡」

  また顔が近づく。カラメルが何度も俺にキスをしながら、身体を擦り付けるようにくっつけてくる。

  獣人の身体のつくりは、ヒトとほぼ同じだ。だから、やわらかいものが当たる。カラメルのにおいもする。

  にしても、今日のカラメルはおかしい。わずかな理性の糸を手繰って考える。こんなそぶりは今まで見せたことがない。俺が獣人のポルノを見ているのを知っただけで、こんなふうになるんだろうか? いくら獣人がヒトと比べて衝動的な部分が多いとはいえ……。

  「……っぷは。はぁっ……♡ っご、ご主人……ふぅーっ……ごめんなさい、急にこんな……」

  そんな考えを知ってか知らずか、カラメルが言う。

  「わたし、けっこう、その、周期が長い方で……始まったらどうしよっかな〜とは、ずっと……ふぅーっ……♡ 少し、考えてたんですけど……♡」

  周期? 始まる?

  「……あ」

  一瞬、何のことかわからなかったが、すぐに思い至った。

  「ごめん、なさい……抑制のお薬、ご主人がいないと買えないですから……っ、でも、その、言い出すのも……ふぅーっ……っは、恥ずかしくてぇ……♡」

  [[rb:発情期 > ヒート]]……が、あるのか。獣人にも。

  さっきの……『我慢できなくてパソコンを見た』っていうのは、そういうことか。

  「で、その……ふふ、わたし、ご主人のこと、だいすきですから……♡ はぁーっ……ごめんなさい……♡ ほんとに、ごめんなさいなんですけど、ちょっと……我慢、できないですっ……♡」

  完全に発情しきった目。辛そうにすら映る。

  「…………」

  「……ね、ご主人? リードしてあげますから、ですから、くふ……♡ ごめんなさ……」

  「あやっ……謝んないで」

  「……へ」

  「……その……っ、今回、カラメルが、そうなってんのは……っお、俺、の、責任だから……発情期あるとか、その、調べてなかったし」

  「……」

  「だからっ……その、せ、その責任取るってんじゃないけど。っお、俺も、その……お前のこと、は……っす……すき、だし」

  「…………」

  「っり、リード、される、のも……嫌いじゃないし、っていうかリードするとか、経験ねえからわかんないし……だから……」

  「………………」

  「……その、っ……好……きにしていいから……」

  「——————ッ」

  ……カラメルが、ゆっくりと身体を起こす。

  「……カラメル……?」

  「……ご主人」

  吸い込むような瞳が見つめる。

  「……わたしのお部屋に行きましょう」

  ********************

  「……どうぞ、ご主人……♡」

  子供みたいに手を引かれて、カラメルの部屋に招かれた。

  ……板張りのフローリングに、1人用のベッド。机と椅子。漫画が多めの本棚。薄桃色を基調にした部屋。

  ……普通に、女の子の部屋だ。

  手を繋いだまま、ベッドに2人で腰掛ける。

  「っ……」

  これから、このベッドで。

  「……こんな日がくるなんてぜーんぜん思ってなかったですよ、ご主人……♡」

  ……唾を飲んでしまった。この地獄耳には絶対に聞こえている。

  「わ、緊張してます? くふふ、かわいー……♡ だ〜いじょうぶですよ、わたしご主人のしてほしいこと知っちゃいましたからねー……♡」

  確かめ合うように指を絡められる。手汗が止まらない。

  「……ね、リードされたいってことはわかりましたけど……その、ご主人って、こういうこと他の女の子としたことは……あります……?♡」

  「ッ…………な、……ない……」

  「わ、わ、じゃあわたしがはじめてなんだ……♡ あっは、はじめて同士ですねっ♡ んふふふ、うれし……♡」

  目をきらきらと輝かせ、尻尾を振る。

  「……じゃあ」

  手を離したカラメルが、こちらを覗き込んで言った。

  「……はだかになって、仰向けになってください♡」

  *

  「うわ、ええーっ……♡ っくふふ、ご主人、もうおっきくしちゃってるんですかぁー……?♡ あ、待って待って、隠しちゃダメですよぅ♡」

  羞恥に耐えながら、一度はそこを隠した手を退ける。

  「ん、えらいですねご主人っ。……あれ? ふふ」

  えらいですね、って、おい。

  「なんかこれ、くふふ……。いつもと逆っぽいですね? こういうのなんて言うんでしたっけ? えっと……んー……」

  数秒して、思い出した! という顔をしたカラメルが、にんまりと笑って……俺の身体に、布団みたいに覆い被さる。慣れ親しんだはずの身体の感触で、激しく劣情を煽られる。

  カラメルの口が、俺の耳元に近づき。

  「……主従逆転、で〜すねっ……❤︎❤︎」

  囁いた後に、耳に生温かいぬめりが這った。

  出したことのない甲高い声が、喉の奥から勝手に出る。耳から甘い電流が迸って、背骨を削る。

  「……暴れないで……♡」

  シーツを引っ掴んで、身悶えする快楽に耐える。食いしばった歯の奥から呻きが漏れ出る。ぐぶぐぶと耳の奥に舌を捩じ込まれ、こそぐように舐められる。片手でもう片方の耳をくすぐられ、擦られ、ひっかかれる。

  必死に声を我慢するが、腰の跳ねは止まらない。下腹部のそれは、もう痛いほどに腫れ上がっていた。

  つぽん、と、口が離れる。直後、軽く耳にキスをされ、声が漏れる。

  「……ん〜……♡ ちゃんと我慢できてますね、えらいですよ〜……♡」

  目を見つめられながら、カラメルに頭を撫でられる。

  「ふ、ぅ、っゔ……!」

  ……これは、まずい。

  「んふふ、よ〜しよし……ご主人、かんわい〜……っ♡」

  「ぅあ、あ、ぁ……っ……」

  自分の脳の一番奥の、芯みたいな部分が、ぐしゃぐしゃに崩れていくのが……わかってしまう。それを嬉しいと感じている自分がいる。

  「わたしに頭なでなでされて嬉しくて、しかもわたしはお洋服着てるのにご主人ははだかんぼ……♡ どっちが飼い主がわかんなくなっちゃいましたね〜っ……♡ ん〜、いーこいーこっ、くふふひひひっ……♡」

  カラメルが、ごろんと横に転がり、俺の腕にぴったりと体を寄せた。耳元でぽそぽそと囁かれる。

  「はー……ご主人って、マゾさんだったんですねーっ……♡ ペットのほうが向いてたりして……♡」

  ———かあっと、顔が熱くなる。

  「あれ、恥ずかしいですね? でも恥ずかしい方が嬉しいですよね、ねっ♡ だって、ほら……」

  「ッ!」

  「もう、こーんなになっちゃってますしー……♡」

  下腹部の、自分でしか慰めたことのない幹を、するりと細い指に撫でられる。浮いた血管の形を確かめるようになぞられた。

  「正直、『恥ずかしい方がうれしい』ってあんまりよくわかんないんですから、ご主人の見てたやつの見よう見まねなんですけど……ふふ、なーんか楽しいかもです、これ♡」

  「……ぅ、ぅう……」

  思わず顔を逸らし、腕で目を隠す。

  「……あとは……ここかな?」

  言いながらカラメルは、俺の上にまたがるような姿勢になった。腰の上に座られ、柔らかい肉が幹を圧迫する。

  ……その感覚に悶る間もないまま、胸板にさらりと滑らかな感触が這い、腰が少し跳ねる。そこに両手を置かれていることを理解した。

  「…………ッ……!」

  そして、その置かれた手が、指が、この後、俺のどこになにをするかも。

  「あは、すっごいこわばってる……♡ 緊張しすぎですよぉ、まだ触ってないのに……そんなにここ触られるのこわいんですか? くふふ……♡」

  「ぅ……」

  「……うーん……どうしようかな……ご主人って、その、こういう時……お顔見られるのって、恥ずかしいです?」

  …………回答次第でこの後どんな要求が飛ぶか、理解している。その羞恥を求めている自分は、情けないが、いる。

  ゆっくりと頷いた。

  「……じゃあ……わかりますよね〜……♡」

  「…………ッッ……」

  震える腕を、体の横に置いて。

  「……あっは……♡」

  カラメルの顔を、正面から見つめた。

  「———ッふぅッぐ!!」

  途端に、両の胸の先を感覚が犯す。思わず目を強く閉じ、また顔を逸らしてしまった。瞬間、やはりカラメルの指は止まる。

  「あっ♡ ちょっとダメですよご主人〜……♡」

  ……とても他人に見せられない顔をしてしまうであろうことは、わかる。

  「…………ぅう……!」

  口元を手の甲で抑え隠しながら、なんとかカラメルの目を、見つめる。

  「はぁい、いい子ですよー……♡ ご褒美あげますねーっ……♡」

  胸の先にびりびりと、脳を溶かす電流が走る。狂いそうになりながらも、しかし必死に、見つめあう。

  ……いつか、こんなことを誰かにされてみたい……と、心の奥底で夢想していた。

  それが、まさか。

  「あ〜〜っ……♡ 乳首きもちーですね〜……♡ 泣いちゃいそうなご主人、とーってもかわいーですよ〜っ……っくふひひひ……♡」

  ……相手が、こいつになるなんて……。

  「ねぇー……♡ なんかわたしのおしりの下で、びくびく跳ねてるんですけどーっ……♡ 乳首ひっかくだけでこーんなに反応しちゃって、きもちーのに素直なんですねっ……♡」

  言って身体を起こしたカラメルの、「うわ、ねばねば出過ぎ……♡」という独り言のようなつぶやきに、ちくりと脳を刺される。

  ……身体を起こした。そう。カラメルは身体を起こして……乱雑に服を、脱ぎ始める。

  「ん、っしょ……」

  部屋着のTシャツを脱ぎ捨て、色気のないグレーのブラも側の床に投げた。

  ショートパンツも、その下のショーツも、いっぺんに脱ぎおろし、同じく投げる。

  「……ちょっと、見過ぎですよご主人ー……♡」

  ……こいつの裸なんて、出会って少しの間しか見てなかった。

  当初、そういう目的のために迎えたから……でも、一緒にいるうちに家族になって、だから裸なんか見ちゃダメだろって思って……。

  こいつ、こんなに胸が大きかったっけ。腹周りは筋肉のシルエットが薄く出てて、やわらかそうで、尻も……大きい、と、思う。

  ……こいつ、こんなに……エロい身体、してたのか。

  「ねぇご主人、お目々まんまるにしてるところ悪いですけどー……」

  言いながらカラメルが、腰を上げてまたがってくる。

  ……これから、始まるのは。

  「———ッ、ぅ、うぁ……」

  亀頭の先の熱いぬめりに、声が漏れてしまった。

  「ほらわかります? わたしもそろそろ限界っていいますかー……♡ ご主人と早くえっちしたくてたまんないっていいますかーっ……♡」

  カラメルの尻尾が、期待にばたばた揺れている。

  「……もう、いいですか?♡」

  「っ…………」

  ……。

  「……くふふ。じゃあ……えっちしよっか……♡」

  ———ぶん殴られたような感覚。こいつから敬語が取れるのを、初めて聞いた。

  「……あ、敬語じゃなくなるの好きですか? ……ふーん……♡ ほんとにリードされるの好きなんだ、くふはは……♡」

  心の奥底に腕を突っ込まれて、掻き回される。溶かされる。

  「はあい、じゃあちゃーんと私の目見ててねー……♡ わたしにはじめてのえっちさせてもらうんだ〜って、ちゃーんと覚えてねー……♡」

  ……カラメル。あの日寂しさと性欲から迎えた獣人ペット。今では家族。まん丸の目と茶色の癖毛の、騒がしくて人懐っこくて可愛い奴。

  ……に。

  「ん……っくふ……♡ は、ァう……♡」

  「ぅ、ぁ、ぁあっあ……!」

  「…………ぁは、はいったー……♡」

  ……童貞を、食われた。

  「うわ、わ、すっごいですねこれ……♡ ふふ、お腹の中にぎっちり詰まってる感じ……♡」

  腰の肉がみっちりと密着している。カラメルの中は熱く、やわらかい肉の外側から筋肉が抱きつくように締めてくる感じがする。圧迫感があるのに、ふわふわでぬめぬめ。

  「……っは、ぅ、ぉお……ッ♡」

  カラメルが腰を上げたら、中のヒダがぷりぷりと竿全体をなぞり……亀頭の出っ張りを弾かれる……。

  「ふぎゅ、っく、ふぅゔー……♡」

  腰を下ろすと、かき分けるみたいに奥にねじ込まれて……幹の根本まで、ぐっぷり咥え込まれる。

  「……っふ、っふ、ふっ♡ ふぅっ、ぅゔッ、んゔぅんッ……♡」

  それを繰り返される。どちどちと音を立てて、カラメルの肉が俺の腰にぶつかる。コンドームもなく、直接、カラメルの……膣の肉が、まとわりついて、こそいで、搾り上げてくる。

  ……陳腐な表現だが、気持ち良過ぎて頭がおかしくなりそうだ……!

  「あ、あ〜っ……♡ っふふ、ッン、ごしゅ、っじん、きもちよさそーっ……♡ そんなにわたしのナカ、いいんですかー……?♡」

  顔を覗き込まれる。自分が喘いでいる顔を観察されるみたいで死ぬほど恥ずかしいが、逃げ場なんて当然、ない。

  「わたしも……ッ♡ なんか、はじめては結構痛い人とかいるらしいです、けど……ッ♡ っふ、っくふ……♡ けっこう、ッ、ちゃんと……あは♡ きもちーですよ、ご主人〜っ……♡ わたしたち、やっぱり相性いいのかもしれませんねっ……♡」

  容赦なく腰を振り続けるカラメル。気持ちよくて顔を逸らすが、きっと、ずっと俺の表情は見られ続けている。……恥ずかしさで、腕で顔を隠してしまう。

  「……むー」

  むくれたような声を出し、腰を止めるカラメル。……次の瞬間。

  「えいっ!」

  「ぅ、っわ、待っ……」

  両腕を掴まれ、こじ開けるみたいに抑えつけられた。もう、顔を隠せるものはない。

  「…………ほら、さっきの、ちくびのときの続きですよー……?♡」

  ……それ、は。ちょっと、無理かもしれない。

  「……っ、っま、待ってマジで……っ、ちょっと本当に恥ずかしいかも……」

  「えー……?♡ じゃあずーっとこのままですけど、いいんですかー……♡ 最後までできないで、このまま寝ちゃっていいんですねー……?♡」

  「ッう……ッ……」

  …………目を閉じたまま、顔だけは、向ける。

  「……目、開けてください……?♡」

  ……開けても、逸らしてしまう……。

  「……ほら、こっち見て? ね? 見ーてっ……♡」

  …………ぁ、あ、う……。

  「……はーい、よくできました♡」

  腰の動きが再開される。

  「ゔッ……!!♡」

  強すぎる快感に、反射で顔を逸らしてしまうと、またも腰が止まる。その度に、半ば泣きそうになりながらも、カラメルの目を見つめ直す。全部見られている。全部見られている……!

  「あぁ〜〜〜っもう、ご主人かわいすぎーっ……♡ 可愛がってたペットの女の子にえっちぜーんぶリードされて、恥ずかしい反応ぜーんぶ見られて、それでうれしくなって、気持ちよくなって……♡ ふふ、そういうのなんて言うんでしたっけ? っん、えっと確か……くふ♡ あのまんがに書いてましたね……」

  ……カラメルが目を細めて、笑う。

  俺を、見下すような目で言う。

  「———マ〜〜ゾ……❤︎ って、言うんでしょ……♡」

  「ぅゔ……ッ……!!♡♡」

  「くふひひ、合ってるっぽいですね? ご主人嬉しそうですし……♡ これちゃんと意味合ってますか? ご主人ってマゾなんですかーっ♡ ねぇねぇ……♡ あ、ほら目逸らしちゃダメですって……♡ ……はい、いい子ですねご主人……♡ で、ほらぁ〜っ……♡ ご主人ってマゾなんですかってばぁーっ……♡ おしっ、えて♡ くだっ、さいっ、よぉ……!♡」

  なん、て、楽しそうな顔をするんだ。

  「ッ、ッ……!!♡ ぁ、の……♡ っゔ、合っ、てる、合ってるッ……!♡♡」

  「へぇー、ご主人はマゾなんですねっ……♡ ふふ、こういうのマゾって言うんだ、覚えましたよーっ……♡ なんて言うのかな、気持ちいいのに弱くって、リードされたくて、こんなふうにかわいくなっちゃう人……みたいな意味ですね? くふふ……♡」

  最後……は、少し、違うかもしれないが。そう評価されることに、著しい興奮を覚えている自分がいる。

  その興奮に押されて……腰の奥から、むず痒いものが一気に込み上げてきた。

  「待、ッ、って、カラッ、メル……ごめんっ、っ、もう」

  「えー……♡ あは、ほんとに気持ちいいのに弱いですねご主人、はやーい……♡ もうちょっとがまんできそうですか? できそうですかーっ?♡ っふふふ……♡」

  問いながらも、腰を止める様子が全く見られない。快感が幹の根本に溜まり始める。

  「待っ、ほんとっに、ごめっ、無理、無っ理゛ぃ……ッ……♡」

  顔をぶんぶん振っても、抽送の速度は緩みはしない。かたまりのようなものを、必至でせき止める。

  「あー……あは、ほんとに駄目そうだぁ……♡ んもう、しょーがないですねっ♡ そしたらもう……」

  ぱっと、腕にかかっていた力がなくなる。カラメルが俺を抑え込んでいた腕を離し……ふたたび、身体の前面で密着するように覆い被さり、俺の耳元にその顔を近づける。

  「———とどめ、刺しま〜す……♡」

  にゅぐ、と、耳に舌をねじ込まれた。

  瞬間、耳から背筋までを走った性感に、どん、と背中を押されるように。

  「———ッッ……ぎ……ァ…………♡♡♡」

  一気に尿道をかきわけ、駆け上がり、誘うようにうねるカラメルの胎の中に、脈動をともなって出ていった。

  「んぶぇる、ぇるれる……♡ っちゅ、れぷちゅ……っ♡ きもち〜〜……♡ えっちきもちーですね〜〜、んふふ……♡ れる、っちゅ、ぷちゅ……♡♡ はぷ、んむぇるれろ、っちゅーーっ……♡」

  射精で空っぽになった脳に、無理やり真っピンクの快感を、耳から直接流し込まれ続ける。その間、ずーっと頭を撫でられ続けながら。

  強すぎる快楽に身体が追いつかなくなり、気づいたら、よりどころを求めるように、両腕でカラメルにしがみついていた。

  どくん、どくん、と、脈動がやがて引いていく。

  互いの身体が、汗にまみれていることに気づく。熱気がたちこめる。カラメルの匂いがする。

  「……いっぱい出せましたねー、ご主人……♡♡」

  多幸感がじんわりと広がり……全身がシロップ漬けになったような甘い酩酊に、どっぷりと浸らされる。

  「くふ……♡ ご主人ったら、すっごい可愛かったですよーっ……♡ わたしもすっごく気持ちよかったですし……ふふ、それより……楽しくって、どきどきしちゃいました……♡」

  頭を撫でられながら、耳元でぽそぽそと囁かれ、うわごとのような反応しか返せない。

  「ご主人はリードされるの好きみたいですけどー、わたしもけっこうリードするの好きかもです……♡ どうですか?こういうことする時だけは、わたしのほうがご主人とか……♡」

  下唇を噛む。

  「……いやだ〜とは言わないんですね……♡ ふーん……わかってきましたよ、ご主人のことっ♡ ……じゃあ……っふ、ぁうんっ♡」

  カラメルが立ち上がる。引き抜いたそこから、白く泡だったものがぼたぼたと垂れ落ちた。それを気にも留めず、カラメルはクローゼットに歩いて行き、がちゃりと開く。

  「……カラ、メル……? なにを……」

  振り向いたカラメルが持っていたものを見て、息を呑んだ。

  「や、思い出したんですよねーっ……リードされたい、リードしたい……って言ってた時に……」

  すでに汗に濡れている身体から、さらに汗が噴き出す。

  「ご主人からいただきましたけど、すぐ使わなくなっちゃったから大事にしまってたなーって。ペット獣人用の……」

  「っあ……あ……」

  それは、

  「……[[rb:首輪 > リード]]っ♡」

  ……もう、戻れなくなるやつだろ。

  「…………ご主人〜っ……これ……どうしてほしい、ですか……?♡」

  呼吸が荒くなる。シーツを思わず掴む。

  ……高揚、してしまっている。

  「っ…………」

  …………。

  「…………ぅ……♡」

  目を閉じて……顎を、少し、上げた。

  「……ふぅーーーん……♡」

  ……するりと、首に手が回される。レザーの感触にひやりとする。

  それが喉のところまで回ってきて……かちりと、金具の音。

  「……はい、でーきた……♡」

  恐る恐る、目を開く。

  ……俺の首から伸びている紐の先は……俺に跨ったカラメルの手に握られていた。

  ……頭、が……とける。

  「……っ、カラ、っメル……♡」

  「『カラメル』?」

  「え」

  「……違うでしょー……?♡」

  「——————ッッ……!!」

  「…………もういっかい♡」

  「…………っ、ご……ッ……」

  「……」

  「………………ごしゅ、っじん…………♡♡」

  「……ん〜〜……❤︎ えらいよーっ……❤︎」

  撫で、て、くれてる。

  「これからはー、こういうことしたくなったらいつでもしてあげるからね〜っ……くふふひひ……♡♡」

  「……ぇ……ぇへ、へ……♡」

  【おわり】