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Mass of the MADNESS 〜Epilogue〜

  「………」

  (これからどうする……か)

  

  タチヤは家で頭を片手で抱えていた。

  かつて裏で活動していた自警団を辞め、現在はバーの店員として仕事をする事になっていたタチヤは思い悩みながらどうするかを考えていた。

  

  「おかあさん?」

  

  

  赤色が少し混じった茶髪の子供獣人がタチヤをじっと見つめる。

  「どうした、マリィ?」

  「おかあさん、つらそうにしてる。」

  その目は何処か悲しそうで、彼に似た紅い瞳がうっすらと鈍く輝く。

  「俺は大丈夫だよ」

  タチヤは微笑みながら、自分が産んだ“娘”マリィの頭を優しく撫でた。

  時は数ヶ月前に遡る………

  [newpage]

  〜数ヶ月前〜

  「やめろ…!俺に触るんじゃねぇ……!!」

  タチヤへハレルヤの手が触れようとしたその時──────

  “パリイィィィィィィィィン”

  窓ガラスを突き破って誰かが入ってくる音がした。

  「!?」

  いきなりの出来事に驚くタチヤだが、ハレルヤはいつにも増して冷静な様子で侵入者に対して視線を向けた。

  「おーおー、随分と大はしゃぎなお客さんが来たもんだ」

  ハレルヤはゆっくりとしながらパンツとズボンを履いては上裸状態になり首の骨を鳴らした。

  するとセンサーが反応したのか照明が侵入者を照らした。

  「......っ!?」

  タチヤはその人物を見るなり言葉を詰まらせた。

  その人物はタチヤにとって見覚えのある人物だった。

  それの正体は先日にたまたますれ違った人物、黒コートの男だったからだ。

  「......見つけたぞ」

  黒コートの男は静かにそう呟いては剣を手に召喚した。

  「.........」

  (召喚魔法?コイツ、中身は[[rb:ア>・]][[rb:イ>・]][[rb:ツ>・]]か?)

  ハレルヤは黒コートの男が手に剣を召喚した事に対してそれに似た人物を思い出していた。

  「ちょうどいい、ヤッた後だ。お前の手で俺を殺してもらおうかな?」

  「ほざいていろ、[[rb:垃圾>クズ]]が」

  中国語を放つ黒コートの男にハレルヤの思い浮かぶ人物が二つに分かれた。

  「ハンッ、面白そうなのが来たじゃねぇか」

  (中国語......てことは中身は[[rb:奴>・]]か?いや、確かアイツも話せたハズ......まだ確定じゃねぇな)

  「.........」

  黒コートの男は剣を逆手にして構えた。

  「...!?」

  (逆手持ちだと...?アイツや奴は使わねぇ...だとしたらコイツは一体──────)

  「ボーッとしている暇があるのか?」

  「!!」

  ハッと我に返るハレルヤ、黒コートの男が懐まで入り込んできていたのが分かると咄嗟に蹴りを入れては剣を弾いた。

  「ッ!」

  「おっとっと、あぶねぇあぶねぇ」

  ハレルヤは黒コートの男がさっきまでいた場所と入れ代わる。

  それと同時に黒コートの男はタチヤを一目だけ見てはハレルヤの方を向き直した。

  「お前は...あの時の......?」

  先日すれ違った時の人物と思ってタチヤが黒コートの男に声をかけた。

  「............」

  黒コートの男はフードの中でチラッとタチヤを見た後、無言を貫きながらハレルヤに剣先を向け、空いた手には札を手にしていた。

  「ハンッ、これでも食らいな。行けよ!黒蛇ッ!!」

  ハレルヤが先制攻撃を仕掛け、身体に刺青を現しては使い魔の黒蛇を召喚して黒コートの男に攻撃を向ける。

  「小癪な...!」

  すると黒コートの男もコートの裾の中から使い魔の黒蛇を出しては互いの黒蛇同士がぶつかりあった。

  「ほぅ......ならコイツはどうだ?俺なりのアレンジだぜ」

  ニヤリと笑ったハレルヤは黒蛇を出すと黒蛇の体には魔法陣が描かれていた。

  「...!」

  それが何か感づいたのか黒コートの男はタチヤを見た。

  「え」

  魔法陣が描かれた黒蛇が、タチヤの方に向かっていくとハレルヤは二股に割れた舌を出して笑った。

  「さぁ、お前の正体......見せてもらおうか?」

  その瞬間、黒蛇が爆発を引き起こすと同時にタチヤは爆発に巻き込まれた.........ハズだった。

  寸前の所で黒コートの男がタチヤの前に立っては爆発を代わりに受け止めていた。

  「随分と手荒な真似をしてくれるね、ただの人間風情が、、」

  すると爆風でフードが外れてしまったのか、その男の顔の正体が露わになった。

  「...!?アンタは──────」

  「やはりな」

  

  タチヤはその男の顔を見て言葉が出なかった。

  ハレルヤも同様にその顔を見ては不敵な笑みを浮かべていた。

  その正体とは─────────

  白い肌、角の先端が青く、目付きが鋭く、蛇の牙を持った銀色の長髪の獣人。

  かつてハレルヤが陵辱しその肉体を貪り食らい自身に憎悪と殺意を抱かせた者。

  [newpage]

  そして......

  強欲の冠を持つ者、そしてまたの名を“魔性の王”と呼ばれた人物.........

  その名は────────

  

  【死の裁定者】“シュオワン”

  

  

  「随分と久しぶりだな、ハレルヤ。貴様だけはこの手で潰したかった。」

  シュオワンはギラりと山吹色の目を光らせながら、ハレルヤを睨みつける。

  「ハンッ、まさかお前とはな。いつぶりだ?[[rb:シ>・]][[rb:ュ>・]][[rb:オ>・]][[rb:ワ>・]][[rb:ン>・]]」

  それに対して見下すように笑うハレルヤ。

  「僕の黒蛇を真似ただけで使いこなせるとでも思っているのか?[[rb:垃圾>人間のクズが]]」

  「おーおー、相変わらずおっかない顔してんねぇ。その顔と目付き...たまらねぇわぁ......」

  ゾクゾクしてきたハレルヤは身体から黒ずんだ霧を立ち込めながらシュオワンを見つめたその時だった。

  “キリリリリリンッ”

  

  ハレルヤに電撃が走った、何かを感じたのか手にしていた刀を鞘に納めた。

  「チッ、厄介なのが来たか。まぁいい、俺のコレクションは増えた。これにてお暇させてもらうぜ。」

  「逃がすかッ...!」

  ハレルヤは閃光手榴弾を手にしてはピンを抜き取り投げつけると爆音と共に眩い光を放ち、一時的にシュオワンの視界を奪うとその隙にその場から走り出し窓を突き破っては闇の中へと消え去った。

  「逃げられると思うな…!」

  するとシュオワンもタチヤをその場に置いて外へと出ては闇の中へと消え去って行った。

  タチヤ1人だけがそのままポツンと取り残されていると、その時、勢いよく倉庫のドアを開ける音がした。

  『Move!Move!Move!(行け!行け!行け!)』

  「今度はなんだよ...!?」

  倉庫の中に入ってきたのは顔をマスクや仮面で隠し、様々な武器を手にした見慣れない兵士達だった。

  「敵影無し、オールクリア。

  HQ、ターゲットは逃走した」

  『了解、ターゲットはこちらが確認した。

  現在キングが追いかけている。チームアルファは目標を確保しろ』

  「了解」

  1人だけヘルメットの色が違う兵士が無線で話しをしていた。

  見るからにリーダーだろうか、無線越しに会話を終えると、タチヤの方を見ては近づいてきた。

  「スカーレットだな?俺はカナードだ」

  よく見ると身長はタチヤよりも低く、耳や尻尾が生えていないということから人間であることが分かった。マスクで顔を隠し、ヘルメットを装着した状態で小銃を手にしながらリーダーの兵士はそう名乗っては膝立ちになりタチヤの目線に合わせた。

  「なんで俺の名前を…」

  タチヤがそう聞くと、カナードは仲間の兵士に視線を送った。

  「コイツを羽織っときな」

  アイコンタクトを確認した一人の兵士がやってくる。

  すると軽装の装備を身につけた鮫獣人がタチヤに毛布をかけた。

  「ダガー、周囲の警戒を頼む。モーニングスター。お前は周辺のカバーを。」

  「了解」

  「あいあいさー、キャプテン」

  コート1枚に顔を仮面で隠した獣人が気の抜けた返事でカナードに対して返した。

  「真面目にやれ!」

  「へいへい」

  そういうと仮面の獣人は壁に背を預けながらも周りを見回した。

  「大丈夫か?見たところかなりやられた様だが……」

  カナードがタチヤの異様に膨れた腹を見ては心配そうに声をかけた。

  「お、俺はイイっ…大丈夫だ。」

  タチヤはカナードの心配を払うかのように毛布で大きくなったお腹を隠しながら立ち上がろうとしたその時だった。

  [newpage]

  “ドックン──────”

  

  「ッ…!!」

  胎動の音がした。

  タチヤの腹が少し歪むとその場にタチヤが蹲くまった次の瞬間─────

  “ぱしゃっ”

  水を床にぶちまけるような音がタチヤから聞こえた。

  「なん、だ…いまの…」

  身を震わせながら息を荒らげるタチヤ、カナードはまさかと思い、タチヤの体を優しく気遣いながらソファの背もたれを倒してはベッド状にさせると、その上に彼を寝かせ彼を覆っていた布団を外した。

  「……やはりか!ルー!ヨミ!こっちに来てくれ!」

  カナードが大声で二人の名前を呼ぶと顔に傷のある雄の狐獣人と首に勾玉のペンダントを下げた雌虎獣人がこちらに向かってきた。

  

  「どないしたカナード。」

  「破水した、ルー。何とかなりそうか?」

  雌虎獣人のルーがタチヤの体を見て触りながら頷いた。

  「この状態だともうすぐ生まれそうかも…新品のタオルとお湯を!」

  「なら頼むでカナード!」

  狐獣人のヨミがカナードに取りに行かせようとそういうとカナードは頷いた。

  

  「あぁ、任せろ──────」

  そういってカナードは行こうとした瞬間即座に振り返ってはヨミにドロップキックをキメた。

  「ぶぇぁっ!?」

  「って、なんで俺が行くんだよアホンダラぁ!?オメーが行けよ!?さりげなくリーダーをこき使うんじゃねぇぞオイ!?」

  カナードが猫の威嚇の如くキレ散らかしているとルーが注意した。

  「そんなことはどうでもいいですから!ウツ───じゃなかった、ヨミさんでもいいから行ってください!早く!」

  「イテテ…カナードは人使いが荒いなぁ…ホンマに…」

  ヨミは仕方なく物資を取りに向かうとカナードはタチヤに向かって声をかけた。

  「いいかスカーレット、これからお前には鼻からスイカを捻り出すぐらいの痛みが出るかもしんねぇ。けどな、お前が踏ん張りゃお前の中にある命が救われる。いいか?」

  「はぁ…はぁ…な、何言って……」

  「いいから黙って聞け!お前は今もう出産間近になってる。だから俺とルーの言う通りにするんだ。いいな?」

  何が何だか分からない状況にタチヤは困惑しながらも頷いた。

  「わ、わかった……」

  「じゃあ、説明しますね?まずは──────」

  するとルーがタチヤに説明をする、その間にヨミが出産する際に必要な物資を持ってくるなりカナードがそれを取っては自身の一帯を大きく囲う程の滅菌テントを張っては人肌に触れられる程のお湯と新鮮なタオルを用意した。

  ルーの説明を受け終わったタチヤはルーの言われた通りに行動を開始した。

  「フーッ…フーッ……!」

  タチヤは目を瞑り、息を整えながらラマーズ法を始めていくとカナードはその場で対応しつつヨミもいざと言う時に備えて待っていた。

  そして一時間辺りが経過したぐらいか、赤ん坊の頭がタチヤの穴から見えてきた。

  「見えた!頭だ!もう少しだ!気張れ!」

  「大丈夫ですよ、スカーレットさん。このままゆっくり…ゆっくり……」

  「…ッぁぁぁぁぁあ゙あ゙あ゙!!!イテテテテ!イッテエエェェェェェェ!!!!」

  タチヤの苦痛に耐える声が倉庫内に響き渡る。

  そしてそこから奮闘する事30分後………

  『オギャア、オギャア』

  赤ん坊の声が聞こえてくると同時にタチヤは腹の痛みは治まると同時にぐったりとした。

  「産まれたぞ…!女の子だ!」

  カナードは微笑みを浮かべながら産まれたての赤ん坊を湯船に漬けては身体を綺麗に洗った後。新鮮なタオルで巻いてはそれをタチヤの顔元まで持っていく。

  「アンタの子だ」

  そういってカナードはタチヤに自身が産んだ赤子を見せた。

  「俺の……こども…」

  カナードがソファの背もたれを少し起こしてあげてはタチヤの上半身が上がり両手で優しくタオルに包み込まれた赤子を手にした。

  「………」

  タチヤは赤子を見つめる、赤子はよく見ると自分に似ているような気がした。それと同時にタチヤには最初は実感が湧かなかったが、少しずつ自分が痛い思いをしながらもこの子を産んだという思いで湧き始めた。

  「名前はどうするんだ?」

  そうカナードが聞くと、タチヤは首を横に振りながら答えた。

  「まだ決まってない…」

  とだけ返した。

  「そうか、なら後で付ければいいさ。とりあえずチームに応援を要請しておいた。そしたら君を安全な所まで連れていく」

  「わかった……」

  そして、タチヤは数分後に救援チームが来ると彼を連れて車に乗せてはカナード達がひっそりと設営した建物へと連れていかれた。そこからはタチヤは様々な手ほどきを受けたのであった。

  [newpage]

  

  ーとある施設の中にある個室ー

  「決まったか?名前は。」

  「あぁ、この子の名前はマリィだ。」

  タチヤは自動ベッドの上で上半身を起こした状態で赤子を抱きながらそう言った。

  「いい名前だ、それにしても可愛らしい顔をしてるな」

  と赤子のマリィを見つめながらカナードは微笑んだ。

  「…教えてくれないか?」

  マリィを見つめるカナードに対してタチヤがそう聞いた。

  「 ? なにをだ」

  と聞き返すカナード。

  「アンタ達はあのハレルヤという奴のことを知ってる、ならアイツはどんな奴か教えてくれないか?」

  「……そんなことを聞いてどうする」

  「決まってるだろ、アイツにここまでされたんだ。やり返さねぇと気がすまねぇ」

  小刻みに怒りで身を震わせているタチヤにカナードは彼の肩に手を置いた。

  「やめとけ、お前じゃ勝てねぇ。勝てるとしたら[[rb:アイツ>シュオワン]]か[[rb:あ>・]][[rb:の>・]][[rb:バ>・]][[rb:カ>・]]ぐらいさ」

  「あのバカ…?」

  1人は誰かわかったのか、もう一人の人物が誰かは分からない様子のタチヤはそう聞いた。

  「気にするな、もうとっくに死んじまったヤツのことさ。」

  カナードは立ち上がるなり窓際に立っては外を眺める。

  「あのハレルヤって奴は一体何者なんだ?」

  改めてタチヤはカナードに尋ねた。

  

  「……聞いたことあるか?

  かつて人間と獣人が戦争し獣人側が勝ち人間が滅ぼされたという大戦──────“[[rb:聖戦>ジハード]]”を」

  「聖戦………」

  タチヤは僅かに聞いたことがある気がした。

  何年も前にまだ人間と獣人が共存していたある日、あることをきっかけに戦争が始まり人間と獣人が戦い敗北した人間は獣人に滅ぼされてしまったという。

  「その後、何年か刻が過ぎたある日、世界を手にしようと目論んだ一匹の蛇龍がいた。そいつはある人物の妻を奪い、そしてその旦那を完膚無きまでに叩きのめした。

  だが、ソイツはある男によって滅茶苦茶にされた……」

  「…それがハレルヤなのか?」

  タチヤが名前を当てると、カナードは頷いた。

  「あぁ、奴の目的は[[rb:自>・]][[rb:身>・]][[rb:を>・]][[rb:殺>・]][[rb:さ>・]][[rb:せ>・]][[rb:る>・]][[rb:こ>・]][[rb:と>・]]とさっき言った、ある人物に注目させることだ」

  「…とんだイカれた野郎だな」

  「あぁ、アイツは頭のネジが数本ぶっ飛んでるとかじゃねぇ。ハレルヤは、全世界の人類の狂気を孕んでるぐらいのイカレ野郎だ。女子供誰だろうと容赦なく手にかける奴さ。

  アイツこそ“[[rb:狂気の塊>Mass of the insanity]]”かもな」

  そういった後カナードはタチヤのいる病室を後にした。

  廊下に出るとそこにはルーとヨミが立っていた。

  「ルー、ヨミ。どうしてここに?」

  「あの子がちと気になってな?そんでどないやった?」

  「特に別状、問題は無い。だがやっぱりハレルヤの事で問題がな」

  カナードがそういうとルーの表情が曇る。

  「……やはりあの人を倒さなければどんどん被害者が…」

  ルーがそういうとヨミはそれに対して不安を拭うように笑った。

  「大丈夫や、その為にカナちゃんが儂らを呼んだんや。

  カナちゃんは仮にもあの青年の力を持っとる。せやけどそれがいつ目覚めるかは分からん、けど…儂は信じとるで……[[rb:復活の自由>ライジングフリーダム]]が目覚める刻をな。」

  「ヨミ………」

  どこかで目を覚ますのを待ち続けているヨミを見つめるカナード。

  

  「ウツシヨさん……あっ」

  「フッ…」

  つい思わず本名で呼んでしまったルーにヨミはくすくすと静かに笑った。

  それを見たカナードも目を細めながら鼻で笑って微笑んだ。

  するとカナードが咳払いをした。

  

  「ヨミ、ルー。お前達へ、これを持って我が分隊は解散とする。今までありがとう、もう後はお前ら二人っきりでゆっくりと暮らしてくれ。子供達が待ってるんだろう?

  後、もうコードネームを名乗る必要もない。もうこれ以降は俺はお前達二人に関わることは無い。」

  カナードは感謝を2人に述べた。

  

  「かまへん、久々に儂も楽しませてもらったわ。せやけどハレルヤは未だにあちこちを転々として悪さ働いとる。カナちゃんはこれからどないするんや?」

  「……もう、戦いは終わってイヅナさんとシュオ君は結ばれて幸せな家庭を築いて平和に暮らしているのにカナードさんだけ戦うってのは…」

  再び顔が曇るルー、ヨミはカナードがこれからどうするのかを尋ねた。

  するとカナードは踵を返しては口元を静かに綻ばせながら答えた。

  

  「俺はその日その日を生きるさ、この世に戦いがある限り、アイツがいる限り俺の居場所はなくならない。[[rb:アイツ>シュオ]]や[[rb:娘>イヅナ]]の幸せの為にもな、それに─────────」

  

  カナードは振り返って答えた。

  「俺はアイツの※カーボンヒューマンだ。

  アイツの代わりに俺が奴をこの手で倒す。」

  

  (※カーボンヒューマン・・・簡略的にいえばクローン人間のこと。だがその人物に近い素養や年齢の人間を確保する必要がある。またそれに近い人物を再現するため元の本来の性格が歪んでしまうという欠点もある。)

  そういってカナードは二人に背を向けては歩みを進めた。

  「カナードさんッ…!」

  ヨミが止めようとするルーの肩を掴んだ。

  「リンシア。もうカナードは決めたんや、ハレルヤが存在し続ける限り終わらんのや。せやったら儂らは精々アイツの背中を押すことぐらいやと思うで?」

  「……それも、、そうですね…」

  徐々にカナードの姿が見えなくなるまで彼の背中を見届けたウツシヨとリンシアだった。

  そしてカナードは外に出ると同時に誰もいないその場で振り返っては呟いた。

  「ウツシヨ、お前は[[rb:待>・]][[rb:っ>・]][[rb:て>・]][[rb:る>・]]って言ったな。

  残念だが、もう既にアイツは──────」

  

  [newpage]

  そして時は冒頭に遡る………

  

  “ピンポーン”

  インターホンが突然鳴ると同時にタチヤは椅子から立ち上がってはドアモニターに近づく。

  「はい?」

  『スカーレットか?』

  

  モニター越しに現れたのはかつて所属していた自警団の仲間だった。

  「お前か、どうした?」

  『あー、ちょっと話をしたくてな。それだけだ、邪魔だったか?』

  「いや、大丈夫だ。今鍵を開ける」

  そういってタチヤはモニターの電源を落とすと同時に玄関のドアの鍵を自動ボタンを押して鍵を外した。

  “ガチャ、、、バタンッ”

  ドアを開けて閉まる音が玄関から聞こえてきた。

  タチヤはリビングの扉を開けると仲間が軽く挨拶をすると、タチヤも会釈した。

  「よぉ、久しぶりだな」

  「あぁ」

  仲間がリビングに入ると、マリィが仲間を見て不思議そうに見つめていた。

  「お兄さんだぁれ?」

  

  と聞くマリィに仲間は膝立ちになって挨拶をした。

  「マリィちゃんだったか、俺はキミのお母さんのお友達だ」

  「おともだち?」

  首を傾げるマリィ、仲間は笑った。

  「あぁ、そうだ。だから少しキミのお母さんと話させてくれるかな?」

  「……うん、わかった」

  素直に聞き入れたマリィはそのまま自分の部屋へと向かって行った。

  「悪いなスカーレット、いきなり来て」

  「気にすんなよ、なんか飲むか?」

  「いや、お構いなく。それにしてもマリィちゃん、数ヶ月で大きくなったな。」

  「よく分からないが、[[rb:連>・]][[rb:中>・]]が言うには突然変異って奴らしい。」

  

  タチヤがなにか飲み物を出そうと思ったが。それをやんわりと断る仲間。

  タチヤは仲間の座ってる向かい側の席に座った。

  「それで話って?」

  仲間が服の内側に手を入れては懐から取り出したのは1枚の写真だった。

  「コイツを見てくれ」

  「これは……黒コートの男?」

  「あぁ、昨日の夜、俺達が警備してるエリアで偶然にもカメラに写った。」

  タチヤは渡された写真を見てはそういった、だが実際に見た黒コートの男の正体をタチヤは分かっていた。

  “シュオワン”という魔性の王と呼ばれていた人物──────。

  「でも俺はコイツの正体を知ってるぞ?」

  というタチヤに対して仲間は首を横に振った。

  「コイツは違う、お前が見た奴とは別の奴だ」

  「別の?」

  

  そう尋ねると仲間は頷いた。

  「あぁ、それにコイツの身長は俺達よりも低いし、尻尾や耳も生えてねぇ。恐らくだがコイツは人間だ。」

  タチヤは写真を凝視した。

  確かによく見てみれば自身よりも身長が低い感じがした。それによく見ると尻尾があるであろう臀部には膨らみが無かったので人間であることがわかった。

  「コイツの持ってる武器はなんだ?SFみたいな武器だが…」

  写真を手に取っては黒コートの手にしている円筒形の武器を持っているのを見ては仲間に尋ねたタチヤ。

  仲間は首を振って、知らないと答える。

  「……コイツは一体…?」

  「分からねぇ、それとコイツを見てくれ。」

  すると仲間はもう一枚の写真を懐から出してはタチヤの目の前に置いた。

  「半グレ共が根城にしてる建物の壁にこう書かれていたそうだ。

  “EYE HAVE YOU(いつでもお前を見ている)” ってな。」

  「!」

  写真に映っている文字と仲間の言葉には聞き覚えがあった。タチヤはハレルヤと会う前に黒コートの男とすれ違った際に言われた言葉だった。

  「知ってるのか?」

  「あぁ、俺が前にハレルヤって奴と知り合う前の夜にソイツと出会って同じことを言われたよ。」

  タチヤがそういうと仲間は背もたれに寄りかかりながら、別の話を振った。

  

  「………そうか、ちなみにスカーレット。お前が辞めたあとなんだが…あの後半グレ共が一気に勢力を拡大していったんだが、ある日をキッカケに悪さを辞めちまったらしい。」

  「なんでだ?」

  「お前、“聖戦”のことは知ってるか?」

  その単語にタチヤは頷いて答えた。

  「あぁ、確か何年も前に起きた人間と獣人の戦争だろ?それがどうしたんだ?」

  

  首を傾げるタチヤ。

  「ある巷でこんなウワサが流れてる──────

  半グレ共がある教団に魅入られこう言われたそうだ、“ヨハネの黙示録が始まりを告げ、世界は混沌にまみえるだろう。我々と共に深紅の夜明けを”ってな」

  アホくさい話に仲間は肩を竦めた。

  

  「…まさか半グレ共がそれを信じて悪さを一切辞めてその教団に入ったってワケか?」

  「恐らく、な。そしてその教団の名前は“イルミナドス”というらしい。」

  「イルミナドス…ねぇ」

  頬杖を付きながらタチヤはため息をついた。

  「それともう1つある噂がある。」

  

  仲間は頷いた。

  「ある噂?」

  「あぁ───その噂はな──────

  さっき話した黒コートの男なんだが……」

  仲間は淡々と話を続けた。

  「そいつはお前がさっき言ったように見慣れねぇ武器を使って、俺達も警戒する程の問題だった連中を、コイツは一夜もしねぇウチに壊滅させやがった。」

  黒コートの男の写った写真を見ながらタチヤは怪訝そうな表情で聞いた。

  

  「ほんとにコイツは人間なのか?」

  「さぁな、でもある巷ではこんな"ウワサ"が流れてる──────

  なんでもソイツは…………」

  仲間が語り始める。

  その人物は、かつて傭兵として活動し見慣れない武器を手に世界を飛び回り、窮地に陥っている世界をその世界の主役の人物と共に救うのだという。

  そして今、その人物がこの世界に居ると言った。

  その人物の名は──────

  自由を解き放つ者、そしてまたの名を───

  “[[rb:ライジングフリーダム>復活の自由]]”と。

  「復活の自由…か。

  ……どんな奴なんだろうな、見てみたいもんだな」

  タチヤはそういいながら天井を仰いだのだった。

  [newpage]

  

  ーとある展望台にてー

  「………」

  黒コートの男は手すりにもたれかかりながらタバコを吸っていた。

  「またタバコを吸ってるのかい?」

  同じく黒コートを着た蛇龍、シュオワンが話しかけた。

  「お、シュオワンか。どうだ、ハレルヤは捕まえられたのか?」

  黒コートの男はシュオワンを見るなり、笑いながらそう聞いた。

  「残念だけど、どこかの誰かさんに似たせいでその素早い動きで逃げられたよ。いま君をこの場で捻り潰したいぐらいにね」

  とシュオワンは嫌味を言いながら黒コートの男の隣に立った。

  「ハハハ、そいつは笑える話だ。それにしても何故俺達に協力を?お前はもう開放されたハズだろ?

  お前を縛り付けるモン、揺るがすモノは全部取っ払っただろ。

  大人しくお前の嫁さんと隠居してたらどうだ?」

  「黙れ朴念仁。相変わらずキミの言い方は癪に障る。」

  シュオワンを煽る黒コートの男。

  少しばかり黒い霧を放つシュオワンに黒コートの男は笑った。

  「悪い悪い、つい可愛い[[rb:息>・]][[rb:子>・]]を相手にすると弄りたくなっちまう性なもんでよ」

  「僕はキミを父親として認めたつもりは無い。

  それに、君を父親として認めたのは“[[rb:もう一人の僕>シュオ]]”だ。

  この僕が、君を父親として認めるなんて軽々しく思うな。」

  「おーおー、素直じゃねぇんだから…ったく、これでハレルヤの目的は果たされちまったし、オマケにあの野郎は別の世界に行っちまった……どうする?お前はまだ追いかけるつもりか?」

  黒コートの男はタバコを吸い終えるとそのまま携帯灰皿に吸殻を捨てながらシュオワンに尋ねた。

  「いや、奴の動向が分からない上に、下手に動けば怪しまれる可能性がある。

  この場合は大人しく奴が動くまで待っているのが最善だと思うけどね僕は」

  「なるほどな、なら俺は旅行で来たアイツらの顔を遠くから見るとしますかいね。」

  そういって黒コートの男は手すりから離れるとその場から離れようとするとシュオワンが制止した。

  「相変わらずキミの行動が、僕には理解が出来ないね。

  あの時だってそうだ、何故僕を助けたりする?

  僕が頼んだ訳でもないというのに君は僕に手を差し伸べた。

  どうしてそんな事をするのか教えて欲しいものだよ。」

  黒コートの男は足を止めるなり、振り返る。

  

  「簡単な話さ、俺が訪れるところに狂気ありってね。

  ある意味俺が──────」

  黒コートの男が何かを言おうとしたその時だった。

  [newpage]

  

  “ガサッ”

  

  二人の背後から複数の足音が聞こえた。

  「貴様らが魔性の王と例のウワサの男か。」

  シュオワンと黒コートの男は振り返る。

  そこにはローブに身を包み様々な武器を手にした教団員、イルミナドスだった。

  「おっとこれまた物騒な連中が物騒な獲物をお持ちな様子で。」

  「ホント、君と一緒にいるとつくづくトラブルに巻き込まれて最悪だよ。

  僕、この後メルとランリャンと出かけるって言うのに…君のせいで台無しだ。

  責任は取ってくれるんだろうね?」

  呆れた様子で目を細めながら黒コートの男を横目で見るシュオワン。

  「ハハッ、ちょうどいいじゃねぇか。悪魔に関する禁術やらアイツらで行えるんだぜ?アイツらならちょうどいいサンプルが取れるんじゃねぇの?」

  とややふざけた様子で笑いながらそういう黒コートの男。

  

  「貴様ら如きに我が理想を止めさせはせん。」

  そういって教団員は二人に武器の矛先を向けた。

  すると黒コートの男がフードに手をかけた。。

  

  「……へぇ、君がそんなことを言うなんてね。

  気でも触れたのかい?」

  「さぁな」

  シュオワンは思いもよらない彼の発言にニヤッと笑いながら黒コートの男がフードを完全に外すと同時に名前を呼びあげた。

  フードを外すと、髪色は茶髪のショートシャギー、紫色の瞳に未来を見据えるほどの鋭い眼光。

  自由を解き放つ者、そしてまたの名を………

  “[[rb:復活の自由>ライジングフリーダム]]”と呼ばれた男。

  「“ヤマト”」

  するとシュオワンとヤマトは黒コートに手をかけてはそれを脱ぎ捨てると、シュオワンはスーツ姿、そしてヤマトはEVOスーツを着用した姿を露わにした。

  シュオワンは黒蛇を構え、ヤマトはライフルを構えながらニヤリと笑った。

  「だから言ってんだろ…

  俺がある意味──────

  (色んなヤツらを巻き込みテメェを不幸にしながらもソイツらを幸せしちまうかのような頭のイカれた……)

  

  “[[rb:狂気の塊>Mass of the MADNESS]]”ってな

  」

  そして引き金を引くと、一発のビームの銃声音が辺り一帯に響き渡るのであった………

  Madness exists within man from birth.

  Yet it is also man's instinct.

  Stay tuned for the next……

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