真面目で堅物クールなシェパード上司のゲイを知ってしまいヤる話

  「うひゃ〜〜……ガッツリ降られましたねぇ〜〜」

  「お前が余計な話ばっかりちんたらしてるからだ……」

  真面目で堅物なシェパード獣人である上司……上城さんは、スーツに撥水された梅雨を払いながらチクリと刺してくる。俺達は今日最後の営業先を出た所を通り雨に見舞われたのだ。暦の上では秋なのに、夕立だろうか。最近の地球温暖化と異常気象は全く由々しき事だ。上城さんはフラップをバタバタしながらスーツの濡れぐらいを見分している。

  「っあー俺このスーツ気に入ってたのにぃ」

  奮発して買った高級なスーツが濡れてしまい、俺は上城さんにチラッと目を向ける。

  「上城さんがメモが一段落するまでとか言うからあ」

  「俺のせいか……お前はメモが雑過ぎるんだよ。字も汚いし」

  「だいたい上司なんだから気前よく『スーツ1着ぐらい、俺が買ってやるっ!』とか言えないんですか〜〜?」

  「折角買いつけやっても駄目にするだろ。お前がもう少し賢くなったら考えてやる」

  また減らず口だ。将来の大切な資産である部下に 先行投資しても悪い話じゃないと思うのだが。古びたバス停のシェルターは屋根が傾いているしベンチの広告は掠れて抽象画と化している。周りは広々とした道路が視界を灰色で埋め尽くし、建物なんて無い。孤軍奮闘……っていうか四面楚歌?だっけ?

  この辺で贔屓にしているタクシーをアプリで確認するが、既に埋まっている。この辺利便性悪いからな……予約無きゃ乗れないのだ。もうズブ濡れ承知で繁華街まで歩くしかない。折角直帰して爆睡しようと思ったのに、電車も運行を見合わせているし、面倒な事になったあ。

  「仕方ない、ホテル街まで走るぞ」

  「やっぱりそうなるのか〜〜はぁ〜〜!!」

  襟元を正したあと、屋根下から飛び出すその背中はまさしく犬……というか何か嬉しそうじゃないか?いつもはキリッとして紳士の面を被っていてもこういうトコ犬なんだよなぁ〜〜ってか尻尾振ってる……。どこの犬も雨ではしゃぐのは多いけど、別の部署の柴犬も、受付嬢のプードルさんも雨の日はこんななのかな。ぼんやり予想しながら、犬の健脚でグングン前を行く上城さんの後を、全力で走って着いていった。

  「ふぅ、これで一安心ですね」

  ホテルにチェックインして一息つく。水浸しになったスーツをハンガーにかけると、濡れそぼった上城さんがなんとか上だけ脱ぎ捨てるとベッドにダイブした。あ、シーツ濡れると思ったけどまあホテルだしいっかーと思考放棄。俺は床に腰を下ろしながらため息をつく。

  「はぁ……疲れた……」

  濡れたワイシャツ越しに感じるフローリングの冷たさに顔をしかめる。本来ならもうそろそろ仕事上がりの時間だ、さっさとシャワーでも浴びて休みたい。このホテル晩飯とれるかな?サイドテーブルにたてかけられたメニュー表を引っ張り出して広げる。目覚えのあるレイアウトだ。

  炒飯、たこ焼き、ラーメン、ポテト、唐揚げ……あ、この餃子。元カノと来たとき頼んだら写真と違い過ぎるしラブホ来てんのに餃子頼んでじゃねーよってキレて出て行かれた奴だ……懐かし。だからこの辺のラブホは験担ぎで避けてきて……てか……アレ……?

  「上城さん……もしてかしてここラブホっすか?」

  「今更気づいたのか……受けつけしてる時もボーッと欠伸ばかり……お前のアホは筋金入りだな」

  はぁぁあと長いマズルから吐き出された溜息が、天井に溜まっていくのが見えるようだ。まあ、雨宿りに一日泊まるだけだし、どこでもイイってのはそりゃそうだけどな。

  「んじゃ、デリ呼ぶかな〜〜」

  「待て待て馬鹿馬鹿」

  ガッシリと掴まれた肩を揺さぶられ、頭が揺れる。上城さん、結構力強い。

  「お前の倫理観はこの際宛にしてないからいいとして、飯はどうなったんだ。3歩歩いてもないのに忘れたか」

  ゆっさゆっさと左右に揺れる視界の中で、俺はメニュー表と上城さんの顔を往復する。

  「え?腹減りました?じゃ先に飯っすね」

  「先って……その後デリバリーを呼ぶのをやめろ。俺いるんだぞ」

  「なるほど3P!」

  「ああ、もう。電話するから何頼むか言え」

  メニュー表をひったくり備えつけられた電話をとる気だるげな仕草はクールで魅力的だ。やっぱり獣人は何しても様になるなぁ。茶色い毛皮に対して色の異なる黒いマズルがヒクヒクと神経質そうに動いている。俺は、メニュー表の右端にあった肉を頼むと、上城さんは炒飯とサイドを適当に数品頼んだ。お腹減ってたのかな、ガッツリ食うな。そういえば上城さんと昼一緒した時、その豪快な食いっぷりに感心したものだ。

  「上城さんたら食いしんぼ〜」

  「うるさい、この野郎」

  メニュー表がポイっと投げられ、俺はそれを顔面で受け止める。上城さんのドスの効いた声も、今やもう慣れっこだ。彼はスマホと書類を何度か見比べた後、スーツ鞄から取り出したノートパソコンをコンセントに繋ぎ床にあぐらをかいて作業し始めた。俺は四つ足で這うとソロリと近づき、真剣な横顔とそれが注がれる画面とを、首を伸ばしてじっくりと見つめる。パソコンの脇に積み上がっている書類を見た感じさっきの案件だ。もう休みたい気持ちは満々だが折角だしその仕事振りを拝見しよう。見るだけ見て手伝おうとしない姿勢に呆れたのか、彼はフゥッと短く息をつくが、タイピングを続ける。男らしい手は犬らしくもあるけど、指だけ細長く伸びていてそれがまた色っぽい。爪は切り揃えられているし、毛もケアされているのか光沢がある。

  近づいて初めて気づいたが、雨に流されて薄れているものの、オリエンタルなコロンの匂いがする。上城さんはいつもそんな洒落た香りをさせていただろうか?

  「この香水どこで買ったんすか」

  「貰い物だ。俺の趣味じゃない」

  上城さんは液晶から視線を外さずぶっきらぼうに答えてくる。ちょっと残念だ、どこのか分かったら買ったソレ嗅いで夜を妄想するぐらいはやったのに。上城さんの横顔をじっくり見ながら、その香りを嗅ぐ。

  「いつも買うのって、高いヤツっすか?」

  「ん、いや……そこまでじゃないな」

  思えば俺、上城さんの私生活、趣味って奴を全然知らない気がする。営業マンなんてみんな同じ会社の人間とは言え、他部署の人とは深い関わりがない。せいぜい飲み会の二次会三次会で惰性で話したり……そもそも俺個人としては同期と飲むぐらい。他人に興味を持てた試しがないので、直属の上司である彼の事すら聞いた事がない。でなくても、寡黙な上城さんのプライベートは謎らしいけど。

  「上城さん普段何してんです?」

  「お前に話すような事は何もない」

  「えー、俺上城さんの事知りたいのに〜」

  彼のうなじにたまったモフ毛に指を埋めながら、その毛の奥を見透かすように目を細める。触り心地の良い毛並みと体温の温もりが、毛皮越しに伝わる。

  ……ちょっとこれはセクハラに近いか? 一瞬躊躇するが、上城さんはパソコンとの睨めっこを優先とした。俺は内心ホッとしたが逆に面白くない。どうにかしてこの無愛想を突き崩してやりたい。

  好奇心は猫をも殺すとは言うが、俺は欲望に忠実なので押し通す事にした。

  「あ、もしかしてワーカホリックとか?上城さん独身だし、今だって休めばいいのに仕事してるし」

  「……ま、そんなもんだ」

  そんな馬鹿な。いくら社畜だとしても奴隷みたいに仕事一本しか興味ないなんて、人間して有り得ない。……ただ、彼の生活や本心裏づける証拠がない。スポーツで名を成したとか、車に入れこんでるとか、キャンプや登山に汗を流してるとか、音楽だの芸術だのに凝ってるとか……一度も聞いた事がない。スクリーンに映っている情報は就業時間内でしか見たくもない生真面目な取引内容ばかりだし、この人本当に中身があるのだろうか。好奇心どころか心配になってきた。

  こんな色男なのに浮いた話も聞かないし……夜な夜な切り裂きジャックみたいな通り魔殺人してるとかじゃないと筋が通らないじゃないか。謎が深まる。

  「……そういう泰久はどうなんだ。趣味」

  彼はぶすっとして投げやりに聞いてくる。俺は、んーと言葉を選ぶ。

  「スポーツは……あんまり好きじゃなくて、その他アウトドアも興味ナシ、芸術音楽勉強読書からっきし、コレクションするには安月給……」

  「なんだ、似た者同士じゃないか、俺達」

  上城さんはフワッと表情を和らげて微笑んだ。そんな顔初めて見たぞ……というか、そんな柔らかい表情するんだなこの人。話のオチに取っておいた冗談が一瞬喉に詰まるが、変な雰囲気にしたくなくて何とかしゃべくる。

  「……やっぱり俺は一生風俗一筋っすわ!というわけで……オッケーGoo​gle!3Pの出来る嬢を探して!」

  「だ〜か〜ら〜〜……しないと言ってるだろう、この色ボケッッ!!」

  ずっとキーボードに張りいていて、膨らんだキーを叩き落とすだけだった彼の指が、とうとう俺の方へ向いた。襲い掛かってきた犬獣人独特の手触りのソレは、骨盤から脇腹にかけて素早く上昇していき、こしょこしょとくすぐりだす。

  「あ、ちょ……やめ……ふへへっ」

  くすぐったくてバタバタ騒ぐ有り様は男子高校生並みにアホらしい。抵抗しようにも、体格のある犬獣人に抑え込まれたら人間の貧弱な肉体では不可能だ。上城さんの太い指が、脇腹から脇の下辺りまで這い上がってきて、俺の胴体を揉みほぐす。

  「ぎぇーっっ!!セクハラっすよ上城さん!!」

  「さっきからズケズケ私生活について聞いてきた、お前のがパワハラだ。これは仕返し」

  「俺!俺部下ですから!パワハラじゃないし!」

  ゲラゲラ転げまわって逃げようとするも、進んだ先にダンッと上城さんのたくましく長い腕が振り下ろされて、囲いこまれる。まき網漁みたいに完全に追い込まれた。逃れられない地獄に、俺は天を仰いで爆笑する羽目になる。

  「あははは!駄目ぇそこ弱いのぉ!くすぐったぁい!」

  「ここが弱いのか」

  「ふひひっ!あははっは!」

  脇から脇腹、胸から首まで。一気に触れてくる肉球と毛皮に、俺は悶絶して大笑いする。くすぐりの刑を執行している上城さんの目は弓なりで、妙に楽しそうだ。

  「ぎゃーははは!ひーっ!くすぐってぇっへへっ!」

  段々笑い疲れて体力が減り、はぁはぁと吐息が荒くなる。やっとこさ手が止まると、俺はそのまま仰向けに倒れ込んだ。上城さんは腕まくりし、俺に馬乗りになってハァと一息つく。

  「どうだ?少しは反省したか」

  得意気にフフンと笑う顔は、シェパードの男らしさと犬らしさを兼ね備えていて、普段は見せない表情にどきりとさせられる。

  「うー……降参っす、もうしないんで許して下さい……」

  「フフッ。いつもこう素直なら良いんだがな」

  グワッと頭上から降ってきた大きな手のひらにビクッとするが、身構えた割に衝撃は来ない。ムニッと柔らかい肉球がつむじの上をぐるぐる回って、まるでこっちが犬みたいにヨシヨシと撫で回される。

  「上城さん……」

  その心地よさに、俺は上目遣いで主人に甘える子犬のような眼差しで彼を見上げてしまう。

  「……どうした、泰久」

  上城さんは少し意地悪な笑みを浮かべて、俺の頭から手を離した。

  「あの……その……」

  口ごもり言葉を発さない俺の顎を、硬い爪でツツーーっと下から上になぞりあげ、親指と人差し指で顎を軽く掴まれる。ジッと近距離で見据えられ、なぜだか全身が火照り出す。

  「泰久」

  今まで聞いた事のない、甘くて柔らかい声が耳孔から入り込み、脳内をじんわりと侵食していく。酒など飲んでいないのに、酔ったみたいにクラクラしてきた。

  上城さんは俺を見つめるのをやめない。言葉を探して、顎下の指の筋肉を感じていると──

  ドアがノックされた。

  「お食事をお持ちしました〜」

  上城さんはスンッと真顔に戻ると、俺の上から退いた。俺が慌てて飛び起きた頃には、いつもの無愛想な上城さんに戻る。

  「はい」

  彼は短く答えると、テキパキとトレイを置き、机の上の書類を片づけ、スペースを作る。

  「あ、パソコン閉じずにのけておいてくれ」

  あまりに冷淡な仕事モードで告げられ、こっちも畏まってしまい、ハイ、なんて受け応えてしまう。なんだよ、さっきの謎の王子様モードは何だったんだよ。

  期待、しちゃったじゃないか……。

  移動を指示された彼のパソコンを腕の中に抱えると、そこかしこに擦り傷が見つかり、外でも連れ回されているんだろうと容易に推察出来た。こんの仕事人間……と思いながらいくらか乱暴にパソコンを置くと、テーブルの上に並べられた飯を口に放り込んだ。

  こっちに断りや一言もなく食べ進める上城さんの口は大きく、ガバッと米の塊に食らいつく姿は野性味を帯びている。ガツガツと咀嚼し、飲み込む度に喉仏が上下する。筋肉質な犬獣人が、目の前でメシを食べている。その図に何故か目が離せない。

  「あ……ソレ俺の肉」

  「いいだろ、少しくらい。食い意地張ってるなお前」

  ニコッとまた朗らかに笑うと、切り分けた肉をヒョイと口の中に入れた。前このラブホに来た時、ここの飯はもっとパサパサで、工業製品みたいで不味かった。この数年で腕を上げたのだろうか。それとも、一緒に来ている人が違うからだろうか。俺は飯を頬張り頬を膨らます上城さんの横顔をチラリと盗み見ながら、その真意をはかりかねる。

  「ふぁあ……っ」

  思わず欠伸がでた。まだ食ってる途中なのに、なんで眠いんだ……。俺は自分の頭をガシガシと掻きながら、うとうと船を漕ぐ。

  「どうした?眠いのか」

  「……ん」

  「朝から忙しかったからなぁ。仕事、一段落ついたし寝ろ寝ろ」

  上城さんはポンポンと俺の肩を叩いて、ベッドに寝転がせてくれる。

  「……上城さんも一緒に寝ますか?」

  「馬鹿言え。俺はもう少し仕事する」

  「あ、そうですよね……」

  当たり前のツッコミを返され、俺がシュンとすると上城さんは眉を曇らせた。

  「気使わなくていいから、子供は早く寝るんだ」

  「子供、じゃなぁい……ですっ、たら……」

  言いつつもウトウト瞼が降りてくる。純粋に眠さの限界だった。ふわっと毛に包まれた手が近づいてきて、俺の頭を優しく撫でてくれる。上城さんの手ってやっぱり獣らしくて骨太でゴツいけど……温かい。彼の膝のすぐそばで暖かくまどろみ、タイプの音が聞こえなくなる頃には、俺の意識は深い沼の中に沈んでいった。

  ── ……まだ眠い。俺は横向きで薄暗がりの室内を眺めた。額のすぐ傍にあった熱源が無い代わりに、廊下のすりガラスから黄色い明かりが一筋漏れている。トイレか。俺は体を起こし、辺りを見回す。

  ベッド上には重みで沈みシーツの皺をたわませるノートパソコンが一台置いてあるだけだ。俺はその薄明かりに、闇夜の該当に集まる虫のように引き寄せられた。尖ったデザインのマウスを握り、ホイールを勢い良く滑らせる。画面に映し出されているのは、さっきみたいな嫌になるほど文字とグラフがビッシリ並んだwordとExcelの応酬ではなく、いかにも頭が悪そうなホームページだった。

  画像の色彩が目に染みる。シパシパと寝ぼけ眼を擦ってよく見ると……それはゲイ向けのサイトだった。

  際どく挑発するような、スポーツウェアチックなビキニパンツを履いた男が、一人二人……ツルツルの人間から毛深い獣人まで、ラインナップが揃っているが、どれも間違いなく、男だ。

  ……いや、ホモだからって別にそれで良いんだが。

  だが、上城さんの口からホモ趣味なんて聞いたことも……まさかあるなんて露ほど考えていなかったから、動揺を隠しきれない。俺はしばらく無言で画面をスクロールした。履歴やブックマークには知られたくないであろう情報がわんさかと詰まっている。

  ビジネスでは慎重に付き合う相手を選ぶ上城さんが、普段相手にしている人種からは掛け離れたイカホモ顔がズラリ……いけないとは思いつつもクリックが止まらない。掲示板やサイトの書き込み履歴を巻き戻り、ブラウザバックする度玉ねぎのように彼の隠された一面のベールが剥がされてゆく。

  突然、そしてこのパソコンに触れてからやっと、自分でも使った見覚えのあるページに辿り着いた。よくある個人メールだ。流石に表で書き込んでいないディープウェブを見てしまったのはマズい、いやこんな事しといて今更マズいって何だ、と自分に突っ込みながら、本文を見てしまう。

  どうやら同業者……いや、仕事のではなくいわゆるオナカマとのやりとりには……自分の部下がタイプで可愛い過ぎて困る、といった片思いの惚気がのったくられていた。文面こそ上城さんのイメージを崩さない理路整然としたものだが、心底惚れているというのが堅苦しい文章を貫通してくる。

  そこに綴られた人物像は、心当たりがあって、それは……

  「馬ッッ……鹿……。……見た、んだな」

  ハッとして振り返ると直立して、顎を引いて俺を見下ろす上城さんと目が合った。俺は慌ててマウスから手を離すが、もう遅い。今まで画面の中ではしゃいでいた男、俺が馬鹿真面目だと思いつつも憧れて背中を追ってきた人、その彼がなんだか小さく見えてきてしまう。

  「あの……すいま、せ」

  「そ──の。……えっと、だな」

  上城さんは口をモゴモゴさせ、悪戯がバレた子供のようにその場をウロウロする。ピンと張った尻尾が緊張状態で小刻みに振られているのを見ると可哀想になってくる。というか、人のパソコン勝手に見る度を過ぎた悪事でぶっ飛ばされるかと思っていたのに、真っ先に弁解の言葉を探すこの人はなんて愚直というか、律儀なのだろうか。

  「その、だな」

  上城さんは俺の隣にドスッと座ると、尻尾を両手で抑え、もじもじと切り出した。

  「なんだ……その、実は、俺は……ゲイだっんだ……いやっ、もちろん職場の人間に危害を加えるような事はしていない!」

  突然秘密を暴かれ、クローゼットゲイをアウティングされたというのに、あせあせしつつも誠実な態度と物言いを崩さず、彼はそう言い切った。

  「上城さん、あの」

  「本当にすまなかった!部下のお前がコレを知ったら不安がると憂慮していたのに……不注意だった、すまない……」

  謝らなきゃ、と思うのに、上城さんの方が先に頭を下げてきて、言葉に詰まる。

  「あの……むしろ、こちらこそ勝手に見てしまって……」

  「それは、もう……他人の近くで開いた俺の不備でもあるから、構わない。だが……だが、今後俺と、その……お前との関係は、だな……」

  きっと俺が、上司の性癖を知って怯えていると信じて疑わないのだろう。

  「……嫌、だよな」

  「ぇ、あ……の……」

  上城さんは顔を曇らせて、絞り出すようにそう言った。

  「嫌だよな……上司にそんな目で見られてるなんてな……」

  儚げで悲しげな、自信なさげな上城さん。確かに今までの俺なら、軽いジョークを飛ばしたり気にしない旨を簡潔に告げて、この重苦しい空気から逃げられたろうに、調子の良い事が言えない。このまま疎遠になったり、ギクシャクしたり、上司と部下として築いた関係を壊したくない。けど、何より……今、目の前にあるチャンスが、チャンスとして認識できない。

  惚れて焦がれたイケメン上司がまさかの同類で、個人メールから俺に好意があるのを思わせていて、これだけ条件を提示できる要素があって、賭けに出られるリソースがあって、それなのに……。

  それなのに、何故俺は声が出ないんだ!!

  「泰久……?」

  優しく震える美しい低音が、俺の耳をくすぐる。

  ──俺は、今ここで勇気を出さなきゃいけない。グッと拳を握りしめた。

  真剣な態度で話さなきゃ、真摯に向き合ってくれたこの人に失礼だ。

  本気の言葉で腹を割らなきゃ、恋い慕ったこの人を逃してしまうんだ!

  「ォッ……俺も、なんです!!」

  盛大に裏返った声をなんとか戻して、そう叫んだ。

  「え」

  「俺も……上城さんが、好きなんですッ!」

  「は……?な、何を言って」

  上城さんは俺を心配げに窺うが、嘘偽りない本心だと察すると、腰を下ろしてジッと見つめ返してくる。

  「お、俺も……ずっと上城さんのことが、好きで……職場で出会ったのに、一目惚れしてて……」

  「は──…………っはは、ははは!」

  上城さんは上に向けた顔を手で覆って笑った後、いくらかリラックスした表情をこっちに向け直した。

  「だったら、なんだ。俺達、物凄く馬鹿な事をしていたんじゃないか?」

  「そんな事はないです!!ゲイ同士だからってウマが合うとは限らないし、タイミングとか色々ありますから……これで、良かったんです。遠回りなんて一つも無かった」

  一息に言い切ると、ハァッと思ったより大きな吐息が飛び出してしまう。自分の自覚より緊張と息切れが上回っていて混乱した。上城さんはニッと笑うとマズルを開いて大きく赤い口を見せてくれた。キラリと覗く両サイドの白い牙がチャーミングで、やっぱり好みの美丈夫だと、改めて思った。

  「お前、やけに気障を言うじゃないか。覗き魔の癖に」

  「アレは寝ぼけてて……!それに仕事の案件だって言ってたから、見とくべきかなってなっただけで……っうわっ、ぷ……!!?」

  飛び込んできた腕に優しくラリアットされ、シーツにボスン!と埋まる。上城さんは俺の頭に腕を回し、自分の胸に引き寄せた。厚い胸板に耳を当てて、トクントクンと脈打つ心臓の音を聞くと、緊張が解れていく。

  「上城さん、俺……今、幸せです」

  「……俺もだ。最高に、幸せだ」

  上城さんは俺の頭を撫でながら、優しく抱擁してくれる。鼻腔に上城さんの体臭が入ってくると、彼の胸板に頰をスリスリさせて深呼吸した。シャツの薄い布越しに濃い毛皮の色が透け、袖に詰まったモフモフの毛の弾力が、腕の絡みついた耳から顎を優しく包む。

  ぎゅっと頭を抱きすくめられると、上城さんの恰幅の良さが如実に感じられて、彼の良い匂いと厚い体に包まれている多幸感に頭がクラクラしてくる。

  「上城さん……あの、俺」

  「泰久……」

  上城さんも何か滾るものがあったのか、うっとりと甘い低音で俺の名を呼ぶと、自分の頰を俺の頭にスリスリ擦りつけてきた。

  「俺も呼び捨てにしてもらって良いか」

  「あ、えと……はいっ!」

  俺より何歳か年上だったので気が引けたが、外でもない本人から呼び捨てにする許可を貰ったなら、従わないのは却って無粋。俺は意を決して彼の……意識してこなかった下の名前を読んだ。

  「健明……」

  慣れない口の動きと音色がくすぐったい。湧き上がる照れ臭さを喉を鳴らし誤魔化していると、彼の唇が近づく気配を感じた。不器用に硬くなる二つの口唇と、甘く溶けた視線。目を閉じて受け入れると、一瞬唇に柔らかいものの感触が押しつけられてすぐ離れていった。

  「泰久……もう一度……」

  再び唇同士が重なる。今度はより深く、互いに舌を絡ませて。

  「はッ……ぅ……健、明っ……」

  口を離すと、俺の口から吐息と共に甘ったれた声が無意識に漏れ出てしまう。

  「泰久……もっと、名前を呼んでくれないか」

  「健、明。健明、健明っ……健明ぃ……♥」

  それから互いに名前を呼び合いながら深く軽いキスを何度も何度も交わして、抱き合って。

  「泰久……その、俺はゲイだと言ったが、セックスは慣れて無いんだ。だが、お前の事を思うだけで胸が苦しくて、切なくて……お前を満足させられるか、分からないが……」

  「大丈夫、です。俺だって……上城さんの事を思って、毎日自分でシてますから。準備万端です」

  フハッと、上城さんは頰を染めて笑った。

  「それは、その……嬉しいな」

  しょうもない発言でいくらか不安も取り除かれたのか、上城さんはにっこり笑うと、俺の額にデコピンした。

  「あと、『健明』な。俺達、恋人なんだから」

  ビシッ、と指を差される。鋭い犬歯を見せて笑いかけられると胸が高鳴った。

  「じゃあ……健明。その、風呂借りても良いですか?」

  「ここ、ラブホだぞ。許可なんていらない」

  俺は照れ隠しにジョークを言うと、健明もニヤッと笑い返す。

  「準備してくるので、ごゆっくり。まだ射精さないで下さいよ」

  「……急がなくていい」

  [chapter:本番]

  浴室に入ってシャワーを浴びると、自分のペニスがむくむくと膨らみつつあるのに気づいた。彼のキスですっかり興奮したらしく、なかなか落ち着かない。備えつけの潤滑油のボトルをとると、触って欲しげに主張する息子は一旦置いておいて、これから上城さん……健明を受け入れるケツアナをほぐす事にする。手の中に出したジェルは緊張とシャワーの熱気であっという間に温まり、粘り気も増していった。

  「ぅう♥ん……ふぅっ……はぁ、はぁ……」

  体内に指を入れ、入り口を揉み解していく。段々と柔らかくなり、指を締めつけていた筋肉が緩んでいく。もう少し、もう少しだけと自分に言い聞かせて指を奥へ入れていく。

  「んんん〜〜……はぁ♥……あぁッ……」

  やがて、指が全部入り切り、二本目も馴染んだ。しかし……健明のペニスを受け入れるにはいささか十全ではない。目測とはいえ、あのサイズを食べるにはもっと拡張しておくべきだというのは分かる。健明のモノが入るか不安になりながら潤滑油をボトルから絞り出し、もう一度指を挿れる。

  「は、はぁ……はッ……っく、……♥」

  拡張の為、と再度自分に言い聞かせながら、指を馴染ませていく。しかし……健明のモノを入れる前に自分がイッてしまわないようにしなくては。健明とのキスで限界まで張り詰めたペニスを片手で優しく握ると、きゅぅぅと脳髄に電流が走る。

  「ッ……!んぐ……く……♥」

  思わず声が漏れてしまったが、浴室だし、大丈夫だろう。健明の唇の感触を反芻しながらゆっくりと上下に扱き始めた。

  「んんっ……ぅう、ぁ……♥」

  健明の唇は分厚くて柔らかくて、包み込んでくれるようで。舌は厚くて力強くて、絡め合うと溶けてしまうようで。ペロリと口元を舐めてみる。自分の唾液は無味で、彼の唾液の味が恋しい。

  手の動きが自然と早くなる。自分の先走りが潤滑油となり、手淫の滑りが良くなっていく。健明とのキスを思い出し、彼の逞しい腕に抱かれる想像をしながら扱く。やがてケツアナの窄まりが緩んできたのを感じ、指を増やす。

  「んん……はぁ、ぁ♥ぁんっ……!!」

  指が三本入ると大分楽になり、入り口と中が少し緩んでくれた。前立腺を探してみると、少し膨らんだ場所があり、そこをプニプニ押しまくると、鈴口から粘液がこぼれ始める。

  「んッ……ぁ、うぁあっ……!は、っぁ……♥」

  軽く甘イキしかけてしまい、一度手を休めて深呼吸をする。落ち着いてきた頃合を見て、前立腺への刺激を再開すると、小刻みに動かしていた手首をガッシリと掴まれる。

  「っえ、……あ……!?」

  「俺には射精すなと言っておいて……一人で随分楽しそうだな」

  「え、あの……健明?」

  健明は意地悪く笑うと、俺の腕を引き寄せて指を引き抜く。ぬぽっと自分の感触を失った穴にぬるい空気が入って、体温が下がったように感じた。

  ──あ、まずい。これ、完全にスイッチ入れてしまった。

  健明に命じられ引っ張られるままに、壁に手をつかされると、項から尻にかけてじっくりと指でなぞられる。楽しそうな顔はいつもの調子を取り戻す……どころか通り過ぎて、内なるSな一面が引き出されている。

  「ずっと思っていたんだが……手、綺麗だな。肌も……すごく、綺麗で。手つかずだ」

  つつーっと指でなぞられる。ゾクゾクした感覚に膝が震え、立っているのもやっとだ。カリカリと硬い爪が尻の柔肉を引っ掻くと、こそばゆさと微かな痛みが腰から迫り上がってくる。もふっと健明の手が尾てい骨に触れると、思わず声が漏れてしまった。俺が小さく呻くと、健明は両手で俺の尻を鷲掴みにする。

  「っあ、ぅう……っぅ♥健明……?」

  「……お前、安産型だな」

  そういうジョーク、飛ばせるタイプだったんだな……。根っこにその面があるからこそ、アホな俺と楽しくやってこられたのだろうか。ぼんやり考えている間も、力強い手のひらが絶えず尻肉をもぎゅっ、もぎゅっ、と摘み取るみたいに揉みしだく。

  「う……健明。尻ばっかり揉まないで、下さい……」

  クスクス笑った健明は、今度は俺の耳の裏を舐める。べろりと耳殻に生暖かい感触を味わいながら、その奥に舌を差し入れてチロチロと嬲られると、途端に意識がふわふわと浮く。しばらく舌で遊ばれていると、やがて耳の軟骨をコリコリと前歯で噛まれる。尖った犬歯が軽く触れる度に、自分の中がじゅわっと熱く潤む感触がしてたまらない。

  「はむ……っ、む♥……じゅる、るるっ……♥♥はむ、はむ……ぺろっ……♥」

  耳たぶをしゃぶられ、舌先でつつかれる。後ろから俺の髪を柔く掴んで引きながら、何度も。それから耳の裏にキスをされる。チュッとリップ音を立てて。

  「み、み……好きなん、ですか」

  「耳、っていうか……お前の耳が好きだ。可愛いからな」

  そういうと健明はまた俺の耳を口で弄び始める。その間も彼の大きな両手は俺の胸を揉みしだき、時折親指が乳輪を掠めて焦らしてくる。ケツアナには指が侵入し、入口付近を丹念に解された。次第に息が荒くなっていく。腫れ上がった乳首をクニクニする手つきはかなり慣れていて、経験が少ないと言っていたのが真実とは思いがたかった。

  「乳首、ぷっくり勃ってるな」

  嬉しそうに耳元で囁かれると恥ずかしくて脳が蕩けた。すると健明の指が胸から離れ、体をなぞって股間へと降りてくる。鈴口を撫でると先走りを潤滑油に亀頭をゆっくり、優しく撫で始める。裏筋を指の腹でなぞられるとゾクゾクする快感に腰が引けた。けど健明はすかさず左手でガシッと俺の腰を抱えてしまう。

  耳の下を甘嚙みされ、胸を揉みしだかれ、先走りでヌルヌルになった竿を扱かれる。

  「ぁ、っはぅ、……♥ぅぅくっ……♥そ……そこ……」

  「ん……どうした?」

  わざとらしく聞いてくる。こういう所がちょっと意地悪なんだよなぁと、ぼんやり考えながらも快感には抗えない。健明の腕を縋るように摑んで、先を促すように見つめてしまう。

  「気持ちいい所、言え」

  「う、ぅんっ、そこぉおッ……♥そこ、触って……♥気持ちいぃ……!ぅあっ……♥」

  ぬちゅ♥くちゃ……っ、ぴちゃ、ぬる♥しこ、しこ♥しぃ〜〜こ、しぃ〜〜こ、しぃぃい〜〜〜……こ♥しこ、しこ、しこ、しこ、しこ、しこ……♥

  彼はおねだりを待っていたかのように、カリ首と亀頭を重点的に責め始めた。俺は背を丸めて快感に打ち震え、腰を突き出して強請ってしまう。もうすっかり脳味噌はトロトロで、何も考えられずただ目の前の快楽に身を委ねるしかない。

  しかし健明は唐突に扱く手を止めると、俺の体を回転させ向かい合わせに立たせた。

  「あ!?……っ…ふぇっ、健明?」

  突然快感を取り上げられた俺は戸惑ったが、、健明はそんな俺を無視して体を触り始めた。胸筋を揉みしだき、よわよわ乳首を抓んでは離す。腹筋をなぞってへそに指を突き立ててグリグリしたり、耳の中に舌を差し入れたり。もどかしい愛撫で何度も体が突っ張っては痙攣し、脳が溶けるほど気持ち良かった。

  あちこち遊び回った手がいよいよ俺のちんこを扱き始めると、体の中にあった甘痒い感覚が解消され、充足感でいっぱいになって。さっきまであんなに気持ち良かったはずの愛撫が焦らされ焼けつくように肌を粟立たせる。竿を扱きあげながら親指で鈴口を撫で回し、カリ首をすりすりと擦ってくれる。焦らされた体は与えられる快楽に敏感で、腰が蕩けてしまいそうなほど重くなっていった。

  「あ、あの……前だけじゃなくて、後ろも……」

  「駄ぁ目だ。散々待たされたから、こっちも焦らさなきゃな」

  意地悪く笑うと健明はまた俺の体を撫で回す。キスして、首筋を舐め上げて、胸に吸いついて。全身弄ぶように嬲られて焦らされる度に、穴の奥がジンと熱く痺れ、体内がムラムラと熱くなっていく。

  ぢゅっ……ぱ♥ぬこ、ぬこ♥ぺろっ♥れ、るぅぅううぅ〜〜〜……っっ♥はむ、はむ♥ちゅ、ちゅ♥ぢゅぅっ……ちゅ♥

  もう愛撫なんて要らない程体が火照っていて、自分の滾る手の熱さを実感する。股間まで降りてきてまた乳首へと緩慢に上昇する手を引っ掴むと、ギリギリと力任せに動かそうとする。そう試みたが、腕力では到底獣人に敵いっこない。

  「ちょっとっ……!いい加減、後ろ触ってくださいよッ……」

  ハァハァと息を荒げながら懇願するも、健明は無情にも首を横に振った。

  「駄目、と言ったら、よし、と言われるまでは絶対だ。……犬に躾られる気分はどうだ?」

  黒と茶色の毛皮に覆われた長いマズルと黒々とした鋭い瞳、大きな口がニヤッと広がる。真っ直ぐ見ると失神しそうなくらいの美男子で、グッと息がつまり汗が流れ、全ての言葉を奪われる。体温の高い手がスルスルと俺の体をおりていく。臍に指を差し入れて、腹筋の割れ目をさする。

  汗で濡れた腹筋の凹凸を指で確かめながら、股間まで滑っていくと、いよいよ焦らされすぎて先走りでドロドロになった鈴口を指の腹でグリグリと抉られ、背中が反った。快感と期待感で息が荒くなる。思わず股を広げ、腰を突き出して懇願する。

  「お、お願いですからぁッッ……!!もう、我慢できないッ……♥」

  「……可愛いな、お前……本当に可愛い」

  突然耳元で囁かれてゾクゾクと背中が粟立つ。そのまま耳を甘噛みされ、ねっとりと舐められる。

  「はぁ、っ……♥ぅうっ……!く、……♥」

  「ぢゅ、ちゅっ……♥ちゅっ、ぱ♥れろ♥れ、ろ…れろぉ……♥ちゅゔぅ"……ぢゅッッ♥♥」

  耳を尖った犬歯で傷つけないよう絶妙にグニグニされれば、下半身が熱く昂る。耳の中に舌をねじ込まれ、脳味噌をかき回されるような錯覚がして気がおかしくなりそうだ。

  体を撫で回していた手がようやく胸に到達すると、そのまま揉みしだかれる。胸が弱いのをとっくに見抜ぬいていたのか、揉んだり乳首を引っ張ったり抓ったり。快感で体の力が抜けると、今度は耳を噛む力が強くなる。

  痛い位に胸の尖りを引っ張るかと思えば、不意に手つきを変えて柔く握られる。それを繰り返されるとじんわりとした快感が胸の中に積もっていく。耳たぶに犬歯を突き立てられると、すかさず乳首をこねくり回され、おかしくなりそうだった。

  「た、頼むからっ……もう扱いてくださいっ……!!」

  「どこを、触ってほしいんだ?」

  ギンギンのまま放置されたちんぽがビキビキと血管を浮き上がらせ、先走りでヌルヌルになっている。こんな状態、本当は恥ずかしくて口に出したく無いのに。

  羞恥心に抗いながらも俺の口からは勝手に言葉が漏れ出てしまう。こんな状態で扱かれたら気が狂いそうで恐ろしくてしょうがないのに、腰がヘコヘコと揺れてしまう。

  「こんなに腰を振って……はしたないな、泰久」

  耳元で低く囁かれるとゾクゾクが止まらない。健明の声で興奮したちんぽは、不随意にビクンッビクンッと先端を跳ねさせてしまう。

  「ま、少しは我慢できたな。よしよし……良い子には、ご褒美だ」

  健明は俺の頭を撫でながら、今度こそ竿を優しく掴むとゆっくりと上下に動かし始める。やっと待ち望んだ快感を得て、俺のちんぽは喜んで先走りをだらだら垂れ流した。

  「あぁあっ……!!お"♥ぉっ、ぉ……♥」

  弾力のある肉球とさらさら揺れるの毛、力強い犬獣人の握力が、肉茎を扱き上げる。気持ち良くって馬鹿みたいな声を漏らすのが止められない。にゅこにゅこという音と、扱かれる快感が脳を溶かしていく。耳を弄っていた手が俺の左手に指を絡めぎゅっと繋がれる。彼の右手はぬめった液体を亀頭に塗りつけ、ぬちゅぬちゅと音をさせながら撫で回してきた。

  ぬっちょ、ぐちゅん♥にゅっ、ぽ……つぽ♥っぽ、っぽ、ぬぽ……♥にゅぐ、べっちょ♥クヂャ……ぬ"っ、ぐぅぅう、にゅるるるぅぅ〜〜〜〜っっ……♥♥

  「ああ、ベチョベチョじゃないか……」

  「ぉ"ぐ、っくぅ……♥ふぐっ、ん"ん"ん"……ぅ"う"ん……♥」

  悶えてしまいそうな強烈な快感に歯を食いしばってやり過ごそうとするも、健明の手つきがそれを許してくれない。ちゅこちゅこと素早く上下する手に揉まれて、どんどん快楽を与えられて。

  チュコッ……チュコ、ニュ。ニュルッ……プ♥にゅこ、にゅこ……にゅる、ぬる……ヌッコ、ニュグ……ッ♥

  「ん"、ぉ"お♥お"っ、いぐ♥イグ♥♥イグぅう"♥」

  「いいぞ、イけよ。ほら、ここ好きだろ」

  尿道口付近を指先で捏ねくり回される。カリ首をなぞられるとゾワゾワと背中を快感が駆け抜けていく。ぢゅこぢゅこと扱かれれば、もう我慢なんて出来ない。

  ガクガクと腰を震わせ、背を丸めてつま先立ちになりながら、俺はあっけなく射精した。

  びゅっ……びゅっるるるるるぅぅうぅううう〜〜〜〜ッッッ………♥♥♥

  「♥♥……ッッツ…、!!ぉ"……ほぉぉおおっっ……♥♥お"ぉ、っんほ……っぉ……!!!♥♥♥」

  「ほら♥射精せ♥駄犬ザー汁ピュッピュしてしまえ♥」

  びゅっ、びゅるっ、どぷどぷっと大量に吐き出している間も、健明は竿を扱き続けて射精を強制する。イキながら扱かれる強烈すぎる快感で、俺は体を痙攣させ続けた。

  「ッ!!♥♥ん、はぁ"……ッッ!♥あ、ぅ"う"ッ♥ンぉ"おおッ……!!♥♥」

  びゅるっ……ぴゃるる、るるるっっ、ぅぅ……ぴゅ、っく…んぽっ……ぴゅーーっっ……♥♥

  「あ〜〜あ……泰久、お前すっげぇ量射精すんだな……♥いつも一人でマスかく時も、こうなのか……?♥」

  妖艶に微笑む姿は慈愛に溢れ、品のある知性と悪戯心を兼ね備え超然とした雰囲気を纏っている。顔を歪めて毛皮の模様が僅かに変容するのが、酷く蠱惑的に見えた。彼はドロッドロになった手を眼前まで持ち上げると、興奮に黒く濡れた鼻を近づけ、クンクン♥と嗅いでみせた。

  「うわ、臭っっっさ……♥いっぱい濃いの射精せて偉いな……流石、俺の部下だ……♥」

  さっきまで上司部下として築いてきた理想的な関係が崩れるとかで慌てて窮していた人とは思えない余裕だった。いつもは取り繕っていたのか、あっちが本分なのか、記憶が若い欲望とグチャグチャになってよく分からない。彼はスンッ、スンッ……と5本の指に纏わりついたゲル状の精液に鼻を寄せ、息を吸う音が聞こえるほど高く鳴らした。

  「スンッ、スンッ……っ"っ"………っっはぁぁああ〜〜……♥……ん"っ♥ッッ、はぁぁあ〜〜っっ♥♥……すっっっごい濃いな……♥」

  催眠術にでもかかっているかのように、精液の香りを堪能する横顔が、いくらか冷めたぬるま湯の湯気で遮られては、また現れる。いくら見ても飽きないほど美しい毛並み、凹凸のハッキリした彫刻のような西洋顔。一心に慕ってきた男前の犬獣人……愛しい健明が自分のザーメンをクンカクンカして香りを楽しんでいる。

  その淫猥な光景に、萎えていた俺のちんぽがまたムクムクと膨張を始めた。

  「ん?……フフ、なんだ泰久、まだ物足りないのか?」

  ほぅっと吐き出された濁った吐息が、たちのぼる湯気のベールを切り裂いていく。風呂場でじっくり蒸らしてお預けて、楽しみ過ぎた俺達の体は汗でグッショリと濡れそぼり、同時に肌にまとわりついていた雨粒を払い、サッパリとしていた。

  「じゃ、ベッドに行こう。風邪ひいてしまうだろ……」

  スッと腰に回された手があまりにも優しくて、胸がキュンと高なる。そのまま持ち上げられるようにして脱衣所まで連れていかれた俺は、優しく体を拭かれる。雨天の散歩から帰ってきた犬のように、ふかふかのバスタオルで髪をグシャグシャと擦られる。視界を遮るタオルが後頭部に撫でつけられると、健明の美しい瞳と視線がかち合う。

  「おいで、泰久……」

  腕を引っ張られて寝室に入ると、そのままベッドに押し倒された。バフンッと思い切り放り投げられ、布に体が沈む。ギシッと安物のベッドが二人分の体重を受けて軋む。

  「もう我慢しなくていいんだぞ……いっぱい、可愛がってあげるからな」

  ちゅ、ちゅっと顔中にキスを落とされてくすぐったい。それからまた唇を塞がれる。湯気を浴びたせいか、プルプルに湿潤した唇が押し当てられるその圧力を、口唇で味わう。フッと押しつけられる重力が離れた隙に、思いの丈を告げる。

  「上城さ……健明も遠慮せず、俺を可愛がっていいんですからね。特別に許可します」

  さっきあんなに撫で回され愛し尽くされ情けなくフライングお漏らししておいて、殊勝な軽口を飛ばしたのがツボに入ったのか、健明はフハッと吹き出した。良かった、ウケたみたいだ。

  「じゃ、全力で可愛がらせてもらおうかな」

  健明はいたずらっぽく微笑むと、俺の体を仰向けにひっくり返した。何をするつもりなのかと様子を見ていると、突然頭を掴まれる。そのままぐにぐにと頭を撫でられた。目を閉じて肉球の感触を側頭部に受けていると、突然耐え難い生臭さがツンと鼻を襲い、反射的に首が左右へ逃げた。恐る恐る瞼を上げると、そこには恐ろしく血管を張り巡らせた赤黒いビキビキデカマラグロちんぽがそびえ立っていた。獲物を前にして、亀頭からダラダラ涎を垂らし、ハッハッとその砲身から蒸気をたてている。

  「…………────……♥♥♥♥」

  「どうした……?犬獣人のブツを目の当たりにするのは、初めてか?」

  余りの存在感に言葉を失っていた俺は、健明に尋ねられてやっと意識を少しだけ取り戻した。

  「お、大きいですねッ!!俺のと比べても全然デカくて、それに……っむ、ぐくくぅぅうっ……!!!??、ん、も"っ……、…っぐぅぉ……ッ!?」

  とてつもない威圧感に、咄嗟に照れ臭さと保身から無駄口が飛び出したが、まだ言い訳をのったくって震えている最中だった声帯を、その自慢のデカブツで押し留められた。ずろろろろぉぉ……と、開け放った口から食道へなだれ込む健明のギンギンちんぽは、咽頭を一瞬でこじ開けると、あっという間に胃の腑まで突き抜けていった。ずろろっと引き抜かれる間も、カリの凹凸が口内を擦る。

  「ん"、ぅ"おっ……♥むむ、こ°ォツ……ォ"……」

  「御託はいらない……そうだろ」

  喉奥までしっかり貫かれ、イラマチオをかまされた俺は健明のデカマラを否応なくくわえさせられ、鼻から息を吐き出すのが精一杯だった。手や腕よりはいくらかカサカサした体毛……股間に生えた肉棒を覆い密集する陰毛が、目頭の間にふわっと乗っかる。ムゥんとアンダーヘアの鬱蒼と汗で蒸れた刺激臭が鼻腔を直撃する。顎が外れそうなほど巨大なちんぽに口唇をめいっぱい拡げられ、顎にふっくら金玉がべちんとぶち当たる。

  べぢッ……!!ぺちん、べっち♥ふるん……っ、ぶるっ♥ペチンッ……!!

  「っぅうッ……お"♥ほ♥ぉ"ぉ"……っタマ、ぶつかって……ッ!……口マン、ぬるぬるで、キツキツ、だッ……♥」

  「ん"ぶぉォッ……ッッッ!!っ…フゴぉッ……♥おッ、おッッ……もごっ、むぅぅっ…んっぽ……っ♥、ぉお"ッッ……!!♥♥」

  そんな状態にもかかわらず、健明は腰を前後させて容赦なく俺の喉奥を徹底的に犯し抜く。ごぽっ、ごぽぉっ……と空気の漏れる音が鳴って、口の端から泡立った唾液と我慢汁のカクテルが滴り落ちる。

  ぼた、こぽぉ……っ、ぽ♥ぬっぽ、ニュぐぐ……ぅぅう♥っぱ、にゅこ♥ぬっ、……ぷ、ぅうぅ……♥♥

  「ぉッ、お"ほッ……♥や、けぷっ…んんんっっ……!!んぐぉぉオ"ッッ……!!♥♥んむぅぅぅ、んんんんーーっっ……!!」

  「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……!!くぅぅううっっ……♥キッ、ツぅ……♥♥」

  責めの手を緩めて欲しいと乞おうとしても、最後の1文字が出るだけで、懇願の字句は喉奥に押し戻されてしまう。ぬっぽぬっぽと上顎からゾリゾリと擦れる感触がして、あまりの快感に、俺は何とも触れ合っていない腰を無意識に振っていた。

  「んぉ、オ"っ♥もご、むぐくっ……おごぉぉオ"ッ……!!♥♥」

  「ッハァ……ッ!♥ハァッハァッ……腰、揺れてる……なっ……」

  体の素直で浅ましい反応が健明にバレて、更に激しく喉奥を抉られる。俺の下半身も健明の腰振りに合わせてヘコヘコと無様に動いてしまう。

  「お、ほっ♥ぉ"ごぉぉッ♥んごッ、んん"んぅゥーーーっ……!!!」

  「ぅ"お♥食道、締まって……ッ!!あ"、ぁッ♥く、射精るッッ!!♥♥」

  俺の口まんこを使って、思う存分ちんぽを扱き上げた健明は、捧げられた奴隷喉オナホの奥底へ、そのまま一直線に射精した。

  ぶっっっ………びゅぅぅぅうぅぅうううっっっっ〜〜〜〜〜〜…………♥♥♥♥♥

  ドロドロに濃厚なザーメンが胃の中に直接注がれる。

  「〜〜〜〜…………ッッッッ!!!♥♥♥、ぶぽぼぉ、ぼッ♥ぽぼっっ……♥ぉ"ごッ……っブボッ…ポッ……♥」

  「ッッぁぁああ〜〜〜ッッ………っっっ♥♥♥……射精るッ、射精るゥウッッ……ッ!!♥♥溜めてた金玉汁ッ、めっちゃ射精るぅ……っ"!!!♥♥♥」

  滝のように注がれる白濁液の衝撃に、頭の中がぐらんぐらんと揺さぶられる。同時にビュルッ……ビュルルルッ……!!と喉奥に発射された特濃ザーメンがちんぽに引っかかって、口から逆流してしまう。息を吸うのもままならない。

  やっとこさ手に入れた酸素も、鼻腔から肺に巻き込んでしまえば、冷たく新鮮なソレではなく、ここに通過するまでに燻されて蒸されたムワムワチン臭に塗れた空気に変わり果てる。顔中に熱気がムワッ、ムワッと溢れ出し、健明のちんぽ臭さに脳がジーーンと痺れて焼ける。汗臭い犬獣人の性臭に、全身を犯される。

  ……ヅルルルルルゥゥゥウウ…………♥♥♥っぬぷっ…っ…、んぬっ…♥ぽんッ……!♥ちゅるるっ……♥スポンッ…!!

  「───………っっん"ッ♥ブプぽォッ……!!!フンッ、ブ…♥、んぷぱッ…!ブハァッ……!!ハッ、ぁッ!ハァッ…!!」

  「っっはァーーッ、ッスゥ、スッ……はァアッッーー、ハァアーーッ、……スーー……はぁぁぁーーー………♥」

  うっとりと恍惚に緩んだマズルが、カパッと真紅の舌と濁った牙を覗かせ、白痴みたいに天井を眺めていた。よほど悦に入った質の高い射精に、雄は快楽と至福を味わっているようだ。

  犬用の性玩具。俺自身の替えのない肉体が、そんなぞんざいな扱いに貶められたいたんだ……と、突っ立ったままキラリと眩しい照明をボクサーよろしく浴びる健明……さんの立派な立ち姿から、ハッキリと提示されていた。

  使う側と、使われる側。酸素不足の自分本位強烈イラマチオに晒され、ヘナヘナと床にへたり込んだ俺と、支配してぶちかましてやった勝利の余韻に仁王立ちする彼との間に、覆せない遺伝子と種族、優劣の差を覚えて、陶酔に脳がバチバチ光った。

  賢者タイムから脱した健明さんは、プルプルと頭を振ると、優しい笑顔をへにゃりと向けた。

  「ははっ、ついヤリ過ぎちまった。……すっげーーェ、ヨかったよ」

  ポンポンっと頭を撫でられると、背筋がゾクゾク痺れて、あまりの気持ちよさに思わず床に倒れこんでしまった。

  「おっと。大丈夫か?………まだ、ヤレるだろ?」

  ニッと爽やかに笑いかけられれば、下の者……犬はコクンと頷くしかない。まだ、まさぐられて、抜いてもらって、しゃぶってあげただけなのだ。

  むしろ、これからがホンモノの交尾だと、俺はこれからの行為に期待を膨らませる。残酷なイラマで元気を取り戻し半勃ち状態のちんぽから、透明なカウパー液がつつーっと流れ出て、健明さんの資格からは見えない竿の裏筋から、煮え滾る玉まで一筋を描いた。

  なで、なで、と俺の髪に指を滑らすご主人様は、見下しながら語りかける。

  「ほら見ろ。撫でられると嬉しいだろ?……気持ちは分かる」

  そう言うと、俺の体をひっくり返して仰向けにした。そのまま、膝の裏から腕を回してグッと持ち上げられる。

  「んッ!おっ、重いですっ!」

  「気にするな。これで全部入るんだ」

  持ち上げた俺の体を健明さんの肩に乗せると、尻穴の真上をグイッと押す。

  「あ、ぁあ"ッ……!♥はぁぁあっん……っ!!♥♥」

  ぐりっと押しつけられた亀頭が、俺の淫門をグググッとこじ開け、貫く。沈む剛直のその硬さに、健明さんの性欲が如実に証明される。ずんッ……、と体重を乗せて貫かれれた俺の尻は、窄まった肉壁をベリベリと暴かれてゆく。彼の重みで、下腹部の体内に健明さんのちんぽが徐々に割り込んでゆく。一番太いカリ首が通過すれば、あとは簡単だった。ズン、と一気に根元まで突き入れられる。

  「くぅぅっ……は、♥ァァアアッッ……♥」

  「クッ……泰久、力を…っ…♥、入れるな……」

  ビンと伸びた肘の先で、シーツを巻き込んだ握り拳がブルブル震えていた。快楽に耐えようと力んだ体からは、汗が滲み出てしっとりと添えられた彼の毛皮を湿らせていた。頼れる男らしい手が、ギュッと手の甲を指ごと包み込んでくれる。頬に手を添えられ、向かってきたマズルに首を伸ばし、自ら迎え入れる。初めての結合に、お互い歓喜のキスを送り合った。

  「んん……ちゅむ♥れるっ、れるっ……れるる、れろぉ……、っん、……んむぅ……んはッ…ちゅ、ちゅちゅっ……んっぷ♥ちむ、ぅ……っ♥」

  「ハフ、ハァッ……グルルッ……グルルルゥゥ……レロォッ…レロッレロッレロッ、ズロロォッ…♥はむっ、はむぅっ、……ちゅ、ぐ……ぢゅッ、ちゅぅぅうう〜〜……♥♥」

  イチャイチャと繰り返す口づけと舌の応酬にやめ時が見つからなくて、やめる気なんてサラサラ無くて。ぶっとい舌に薄いタンを遠慮なくのっけると、舌からちゅるんと救い上げられ、舌同士を絡ませ合う。

  「はぁぁ〜っ……♥ん、はむぅっ♥むちゅっ、むぅぅっ……♥ちむっ、ちむっちむむっ……ちゅ、ちゅむ……♥」

  「ガルルルルッ……フゥゥウゥーーッッ……♥はぐっ、レロッ……♥ブチュ、ぢゅっ……♥ぢゅるるっっッッ……!!!」

  生臭い野獣の舌と俺のベロが交わり、絡まり合う。キスを深める度に、合体した性器が生々しく艶めいた。肉穴に深く飲み込まれた健明さんのちんぽがどくどくと脈動して、脳が蕩ける。

  「んむむむっ♥んぅっ、ふっ、むちゅっぅぅぅう〜〜〜………♥んむ。……くぅ…んぅう……♥んぐっ、ちむッ……ちゅぽ♥むちゅっ、ちゅぅぅううッッ〜〜……♥♥」

  「ングッ、ハフッハフッ……ハッ、ハッ、ハッ……ハァッッ……!!はむ、くむ♥むぷっ♥グゥウッ…!♥」

  犬の交尾は長いと言うが、このメロメロのキス具合だと、通説通りになりそうだ。しつこい口吸いの荒らしは犬に顔を舐められてるのとそっくりで、ペロペロ顔中を這っては口にぶち込まれる舌の熱さとヌメリに翻弄される。心身が焼けつくほど燃え上がっていた。

  「んれろぉぉっ……♥はむ、っく、ちゅっちゅる♥ちむぅぅっ♥ん♥んんんん……♥」

  「チュゥッ♥むっ、はっぶぅっ♥れろぉっ♥♥むぢゅっ、ちゅぐ…ガウッ、ハッ…グルルゥ……!!はむ、ペロッ……ちゅむぅ…っ♥」

  情熱的なキスに心酔し、溺れるまで唾液を飲み下し合う。上の口で言葉よりストレートな告白をラリーしていると、腰の方にも快楽の手が忍び寄ってきた。ユサユサと軽く揺すられるだけで、無理に広げられた骨盤がジーーンと痺れ、尻から胸、脳に幸せな気持ちよさが染み渡ってくる。

  「っぷは♥れろっれろ…♥ちゅ♥はぁぁ……健明、さん♥健明さん……好き♥好き……♥ちゅる、ちゃぷっ…」

  「ッハァ……ガルッ、フーーッ……♥俺も、………ガルル…ッ♥……俺も好きだ。心から、愛している。愛してるぞ、泰久……じゅる、じゅぷるる……っっ♥」

  キューンキューンと鼻が鳴って、交尾の虜になった体が健明さんの雄々しい肉体に絡まっていく。彼も察したのか、瞳をキラリと光らせると、確認もサインと無しに、長大な太マラを、俺の陰部へと更に進軍させていった。

  「あ"ッ♥深ッ……深いィイ……ッ!!ぁう"、ぉ"…♥健明さんの、ちんぽっ……俺のナカに…ッ、く…どんどん、挿入ってくるゥウ……ッッ!!♥♥」

  「ガゥ…ガウッ!!グルルッッ……!!お"♥っ……くはぁ……お前の、肉穴……俺のちんぽにキスしまくって……!っく♥イヤらしく、吸いついてくるぞッ……!!♥♥」

  「ぁ"っ♥ぁあ"ぅうっ!お、俺っ、男なのにぃ♥こんなッ、ケツ穴で……♥イケないとこで、感じまくってるゥゥウウッ……♥♥♥♥」

  背徳が後孔をきゅんと締めつけて、淫茎が肉筒の中でピクピク跳ねる。ちんぽが結腸の手前に到達した。腰を掴まれて、ずっしり重い下半身が真上から押し潰すように振り下ろされる。

  ────ぐっ、ちゅんッ…………!!!♥♥♥

  根元まで突き挿れられた衝撃に、目玉が飛び出しそうにり、カハッと舌を伸ばしてピンと手足は張りつめた。健明さんのむっちり膨れて、筋肉のブロックごとに実った健脚から繰り出される種づけプレスは、俺を完全にメス犬へと変貌させていた。

  ぶぽッ……!!♥♥ずっぽ、くぽ……っ!ぬぽ、ぬぶ♥……っ、たんっ♥たんっ♥たんっ♥たんっ♥……ヘコヘコ♥スパンっ……パンッ、スパッ…ン……たん、たん、たん……ぬこっ♥ぬこっ♥ぬこっ♥ぬっこ……っっ♥♥

  肉と肉のぶつかる音が響く。長く形の良いマズルが近づき、重なる。口と口を結合する。密着した体の腹の辺りで、互いの肉がもみくちゃに混ざり合う。長い舌が俺の口内をしゃぶり尽くし、唾液がボタボタと顎を伝ってシーツに染みを作ってゆく。

  ズンッズンッと肉杭が襲いかかり、肉襞のうねりと猛りにオ"オ"オ"ーーッッと雄の咆哮を放つ。されている行為は、女役のメスもいいとこなのに。

  鋭いピストンを繰り出す筋肉でパンパンのマッシブな腰は、残像を残すほど力強く俺の胎を穿つ。背中の向こうで、狂喜に振り回される尻尾のふさふさとした毛なたわみが、稲穂のようで、子犬のようで、愛おしくて足を絡めてしまう。グイッ、と踵によって腰が引きつけられ、アナルの肉壺にペニスが一層深く突き刺さった。結腸の入り口が突き破られるくらいに深くまで抉られて、完全につよつよ益荒男雄棒の虜になっていた。

  「お"っ♥ぁ"っ♥あ"ぁ"ーーッッ♥♥すごッ……♥ぉ、お、おお…♥気持ちいいっっ!♥ちんぽぉおッッ……!♥健明さんの、ちんぽぉおおッッッ………!!!♥♥♥」

  「ッッ!!ガゥッ!ガァッ……!♥喰らえッ♥ちんぽ喰らいやがれッ……!!♥♥ケツマンコ全開にしてっ♥その肉襞で肉棒に媚びろォオオッッッ!!!♥♥♥」

  「ぉ"♥ぁ、あ"っ♥や、やぁ"あ"っ♥はっ、激しいィイイ〜〜〜〜ッッッツ!!!!♥♥♥♥」

  バチバチと脳がスパークする。暴力的なピストンに、バチュバチュと弾け飛ぶような水音が寝室に響く。腰を掴んでいた手が離れて、俺の股に伸びてくると、グチュグチュと我慢汁で泡立つ性器を根元からシゴき上げられた。男の握力で握りしめられ、素早く扱きあげられると気が狂いそうで、頭蓋を左右に振り乱す。お返しに、とケツマンから半身ほど飛び出た健明さんの根本から中腹を、なんとか手を伸ばしてキャッチする。

  ちゅこ♥ちゅこ♥……──スカッ、……スルル……ぐっ。ちゅこ、ちゅこ……ぬこっぬこっ♥ちゅぐく♥ちゅこっ♥ちゅこっ♥ちゅこっ♥ちゅこっ♥………♥♥♥

  察して腰を止めたその肉茎を指輪っかでちゅこちゅこ撫でてあげる。お仕事お疲れ様♥俺の穴に突っ込んでくれてありがとう♥と細かく擦っていると、ずっしりとした玉のつけ根から、精子がグツグツと煮えたぎっているのが伝わってきた。

  その精液の滾りとパンパンに腫れ上がった玉袋の実体感……。生え際をさすられたからか、体内の内側でますます熾烈な勇壮さを帯びてビキビキにイラだったちんぽが皮膚をググっと押し上げ、クッキリと腹ボコしたのにビビリ散らかしてしまい、パッと腕を引っ込めてしまった。ようやく邪魔な手が退かされたとばかりに、待ってくれていた腰振りの導火線に、火が灯される。

  「んぐッ……!!ひ、ひぐっ…ぅう……!…キュッ…♥ァ"ァ"ア"ア"ア"ーーーッッッッ!!!!!♥♥♥♥♥」

  前立腺を掠め、腸内に穿たれて抉られ、結腸の入り口ごと削るような激しい貫きピストンと、しゅっしゅっと竿を擦る手コキ。雄の快感の同時責めに、肉体が雄と雌の快楽を享受して混乱している。

  「ガッガゥ……ッッ!!グルルゥゥッッ……!!!!どうだ!オラッオラッオラッオラッ!!オラァァアァッッ……!!!ちんぽで雄まんこ掘りまくられて犯されるのッ……っはぁ、…最ッ高だろう……!!!?」

  ズポッ♥ズパンッ……!!!♥タンッ♥タンッ♥タンッ♥タンッ♥タンッ♥タンッ……ッッ!!♥♥

  ぬぽ、ぐちゅっ……ズルルルルゥゥウウッ……♥ずぽっ、ぷちゅんっ♥ぐぽっ、くちゅ……ぬぷっ♥ぐちゅ♥ぬ、ずぽっ……!!♥♥

  ハッと爽快に笑ってみせる相貌は、密集した毛皮の下にじっとりと汗をかき、その水滴を、首を振るうたびに飛び散らしていく。キラキラと瞬く表情と汗の雫が、俺の性欲を煽って煽って、煽りまくる。

  「ぅう"っ♥ァ、あっはぁあ"…♥さい、さぁい、こッ…う♥さいこーっっ♥……ですッ…!!!ぁっあ、ぁあァ"ア"ア"ア"ーーーーーーッッ………!!!!♥♥♥♥」

  腰の上でズパンズパンとちんぽが上下して、俺の肉穴を掘っては掻き回し、捏ね回す。結合部から尻たぶへと飛沫が跳ね、熱せられた空気が湯気を立ち上らせる。

  「ハッ!ハア!ハッ…!ハアァ…ッ♥ハァッ…!アアッッ♥いい、いいぞォオオッ!!泰久ァッッ!!」

  完全に火のついた猛獣と化した健明さんは、その生殖本能のままに、腰を打ちつけてくる。逞しい腕とぶっとい脚が筋肉の束となって躍動し、バチン!バチンッ!と肉がぶつかり合う音が響き渡る。

  「ぁ"っ!?ぁ、あっ!ぁあ"っ!!はぁ、はぁっ!はぁああ!♥ん"お"♥ぉ"っぉおッ……!♥」

  雄が雌を孕ませるためだけに振るう、力強いピストン。その情熱的な抽迭に、雄膣は悦びに打ち震えて、キュンキュンと収縮を繰り返し強く性器を抱きしめてホールドする。雄の悦びにビクビク脈打つ男根が、種を胎内に植えつけようと執拗に突きまくってくる。

  「グルルッ…!!泰久のケツマンッ…俺のちんぽ凄く気持ちよくしてくれてるなっ…♥偉いぞッ♥ハッ、ハッ、ハアッ……!!♥♥」

  「ぉ"、おぅうっ!ちんぽっ♥俺の中で…ッ、ぁ……大きくなってくれてっ、すっごく嬉しいです……!♥」

  はぁはぁと息を切らしながらも、互いの肉体の魅力を口にしては、喋り終えて舌の根も乾かないソレを濃厚に押しつけあう。犬歯が緩く舌の肉をグ、と押し込んでくるのが、堪らなく野性的で愛おしい。伊達で荒々しい肉食獣の交尾に、目眩がする。

  「ガゥッ!!……ッグゥウウッ!♥ガルルルゥゥウ……ッッ!!♥♥」

  咆哮と共に、健明さんが腰を一気に引くと、バチュンッッと飛沫を上げて、血管でデコボコする肉棒が、俺の体内へ挿し込まれる。ビキビキッと腸壁で怒張が限界まで膨らむのが伝わる。ビクンッビクンッと俺のナカで震える度に、雌の快楽がゾクゾクと脳髄に刻まれてゆく。

  好きな人と結ばれた安心。好きな人の犬ちんぽをぶち込まれる充足。好きな人の亀頭球がパンパンに張って、感じてくれていると分かる悦楽。

  全てが満たされていて完璧だった。一糸纏わぬ二匹の裸体が、筋肉の凹凸をぴったりとくっつけて、互いの熱を共有し合う。

  ピタリと合わさった胸板から、ドクンドクンと激しく血潮を送り出す心臓の鼓動が伝わってくる。左右の乳首がスリスリとくっつき、ビンビンに尖った突起を押し倒したり擦り合わさったりして、真っ赤に腫れた乳首から甘い疼きが広がってゆく。

  「ぁ"っ♥ぁっあっあっ♥はァァァあああ〜〜……♥♥」

  「う"っ♥うお"っ♥ん、ぐぅ…っ♥お前、ほんっっ……とに、乳首好きだな♥ほら、コリ、コリ……♥」

  健明さんの堅い乳首が、俺のやわやわにとろけた粒を下から上へとなぞりあげて、雄の快楽で喉を鳴らす。

  「はぁー、はぁー、はぁーー……♥ぐおっ♥グルルッ……♥ほらっ♥そらっそらっそらっそらっ♥乳首同士でコリコリ、気持ちいいな?♥」

  くに、くに……♥コリッ、コリコリ♥……くりっ、くりくり、くに♥くに♥コリリ、コリッコリッ♥くにぃ……っ♥

  「ぉ"ぉ"お"……♥♥乳首やっばい……コリコリ好き♥好きぃっ……♥」

  健明さんのむっちりした大胸筋にそびえ立った飾りが、俺の胸を擦る。視覚的に犯されているみたいで、堪らなく興奮してしまう。スリスリ左右に揺れて、時折先端が谷間に埋まると、狂おしい刺激が官能を襲う。

  下半身の性器はしっかりハメられたままで、ねっとりして手を抜かないディープキスも降りかかり、もう滅茶苦茶。体液と唾液と汗がついていない所が無いほどに、俺と健明さんは組み合って混ざり合って溶け合っていた。

  肉穴に包まれた彼のちんぽが、ギンギンに反り返って前立腺を抉る。亀頭球がぐぐっと膨らみ、先走り汁でドロドロになった結合部が水浸しになり、ぐちゅぐちゅと泡立っている。

  「い"ッ♥お"ぉ"おおッ!♥あ"っ♥♥イクッ、クるぅううぅぅううっっっっ!!!!♥♥」

  「お"ッ♥ほぉ"ぉ"お"お"ッッ!!!!♥♥射精すゾッ!!♥ガチ本気ザーメン種汁ッ……ぶち撒けてやるからなァアッッ……!!!!♥♥♥」

  ガツンガツンと掘りこまれ、ちんちんの猛り、滾り迸る脈動が早くなる。俺のケツマンに種つけしたくて、パンパンになったちんぽがブワッと膨張して、その竿がビキビキッと脈打った。

  腰を突き出す瞬間に肩を引っ張られ、思い切り掻き抱かれ、愛しい人と限りなくゼロ距離になる。結合部がじゅぽっと深くまで突き刺さり、根元まで竿がもぐりこみ、亀頭が腸内奥にごりっ、と食い込んだ。

  「ガゥッ!♥グルルッ……!イクッ!!イクぞっ、泰久……!精子受け止めろッ……!!!♥♥♥」

  男らしく命令されれば、脳髄が甘く痺れてゾクゾクと鳥肌が立ち、全身の筋肉が歓喜に震え上がる。彼の黒い尻尾がピンとたっていて、愛くるしくてたまらない。

  俺、健明さんと繋がって、彼のザーメンを受け入れられるんだ……。

  まばやぐほどの幸福に神経がジリジリ焼け、浅ましい淫乱アナルが熱烈歓迎に腸壁をうねらせて、締めつけを強めた。

  ───その瞬間。

  ぶッッッ………♥♥びゅるるるるるるるぅぅぅううぅうぅうううぅっっっっっっ〜〜〜〜〜〜ッッッッッ…………♥♥♥♥♥

  ……っぴゅるるるぅぅううっっ………♥♥♥ぶぴゅっ!どびゅぅぅっっ!♥♥ビュルッ、ブピュルルゥウウーッ♥♥ぶぴっ♥どぶっ、びゅるるるぅううぅぅッッ〜〜……!!♥♥

  「お"っぁ"あ"あ"あぁあ"ああぁあ"あ"ぁぁあああッッッ〜〜〜〜!!!♥♥♥♥」

  「お"ッ♥ぉ"ぉ"お"おおぉおおーーーーッッッ!!!!♥♥♥♥」

  雄の咆哮が重なり、互いの最高潮が繋がった体内で弾けて混ざった。うねる悦楽の迸りが、腹の中で激しく波打ち、内臓にドロリとした熱がぶちまけられる。

  腸壁が健明さんの白濁精液で塗りたくられていき、腹の中が熱くて熱くて堪らなかった。

  「あ"っ♥ぁ"ッッ♥♥ぉ"っ♥ぁ"ぁあ♥♥」

  「グゥッ!フーッ、フーッ、フーッ♥♥♥」

  ケツマンの絶頂に視界が真っ白になり、全身が硬直して突っ張った腕を、彼に鷲掴みにされる。改めて見ると、なんて太くて筋肉の盛り上がった腕だろう。手首をガッチリ捕まれ持って行かれそうになる。健明さんは絡めた腕をそのまま引っ張り、俺をオナホだとでも言うように、背を弓なりに反らせてちんぽを肉穴に深く縫い止めた。自分の尻たぶが健明さんの腰にピッタリとくっつき、肉が歪みプリッと盛り上がる。

  ズンと貫いた剛直の雄々しさに、肉襞の中が狂おしく痙攣し、キュンキュンと甘く蕩けて痺れた。

  「フーッ♥フーッ♥♥お"っ♥ぉ"ーッ♥♥」

  「フーッ、フゥーーーッッ!!フッ♥フッ♥グルルゥゥウォォオオッッッ……!!!ガルルッグァァアッ……!!♥♥」

  健明さんも犬剥き出しで牙を向いて涎を散らしては、未だ放たれる精液の奔流に身を任せ、遠吠えにも似た咆哮を轟かせている。雄子宮に注がれる熱い精液は、腸壁にびちゃびちゃと叩きつけられ、前立腺ごと、結腸の先までも犯す。

  ドクドクと健明さんの鼓動に合わせて、ちんぽがビクビクと跳ねては精液をブチ撒けられる。男らしく獣らしい手が、しっかりと深く指を絡め恋人繋ぎをしてくれる。ラブラブ手繋ぎキスハメしながら、愛しい子種汁が消化管の中に流れているかと思うと、至上の幸福で、頭がバカになりそうだ。

  「あっ♥ぁあ"っ♥♥ん、ふぅぅうっっ……♥健明さんのっ、ザーメ…ン…ンンンッ♥濃いッ……♥強いッ……♥多いッ……♥♥」

  「フッ、グルルゥ…ッ…ハフッ、ハフッ……ガルッ……くぅぅうおぉおっっ…ッハ、グゥゥッ……!!♥♥」

  ぶるっ、ぶるっ、と腰を強く震わせては、尿道に留まった残滓をびゅるっ、と亀頭から絞り出しては、射精の悦楽に酔いしれている。口を開け広げる無防備な様が可愛くて、つい手を撫でてしまう。それに反応して耳がピンと立ち上がるのが、また可愛らしい。

  「フーッ♥ハフッ、グルルゥ……ッ♥」

  健明さんはハフハフと乱れた息の調子をなんとか取り戻しながらゆっくりと結合を解き、俺の隣に寝転がった。ドサッと音を立てて崩れ落ちる、厚く重い筋肉の塊。汗の玉が滴り落ちる胸板。雄のフェロモンがむわりと立ち込め、鼻の穴を淫猥に膨らませる。肩で息をしながらちんぽを引き抜くとくぽ、くぷ、という音と共に精液がアナルから流れ出て、ケツが勝手にヒクつき雄汁を啜る。

  「はあっ、はぁっ、はああっ♥、はぁあーー……はふっ♥、はぁぁ……はっはっ……」

  「ふーーー、ふーーーぅう……グルル……ッハ、ハァッ、ハァッ……はぁああ……」

  二人して息を切らして、パチッと目がアウトレット同時に、プハッと吹き出した。

  「とっても、良かったよ。ありがとう」

  「はっ、はぁ……いえ、俺こそ。健明さんスッゴク上手くて、びっくりしました」

  彼は照れ臭そうにマズルの先を指で擦った。尻尾が全力でパタパタと揺れている。嬉しそうに頬が桃色に染まっていて、初めて出会った時の冷たさなど微塵も感じられなかった。

  恥ずかしそうながらも少し得意気な笑みは少年らしさを帯びていて、キューンと胸が高鳴る。本当に、どれだけ惚れさせれば気が済むのだ、この人は。

  「痛く、なかったか?……あまりにも夢中になってしまって……労るのを失念していた」

  シュンと耳が垂れて、反省している様子がありありと伝わる。俺は思わず噴き出して笑った。やっぱりこの人は可愛い。

  「いいんです。強引で男らしくて、最高に格好よかったです」

  「は、ははは。そ、そうか?そんなに良かったか。ふふふ」

  「喜び過ぎですよォ〜。ほら、尻尾揺れてる」

  プリプリの大臀筋に隠れた尻尾の先を捕まえようとすると、ヒョイと避けられる。そっちがその気なら、こちらもと健明さんの腹筋をなぞり、臍に人差し指を突っ込むと、アハハと笑って身をよじった。

  「ヤメロよ、泰久!」

  「うん、でも本当に。健明さん、本当に強くて優しくて上手くて太くて……またヤりたいです。……まあ、技術面は合格にしてあげます」

  「何様だ、馬鹿」

  ツンッと指でつつかれると、また腹の底からクスクス笑いが漏れ出て来た。

  「というか、『健明』……だろ。さんはつけなくていい」

  「いや、そう心がけてたんですけど、なんというか……俺の中では健明さんは健明さんだなーって、思ったんで」

  「ふーん?」

  興味深そうに片眉を上げる仕草も様になっていて、やっぱ俺の恋人はカッコいいなぁと惚れ惚れする。一目惚れして、内面にもゾッコンになった、俺の愛する人。本当に、何から何まで魅力的な人なのだ。

  「今夜は疲れたろ、もう寝ろ」

  と、布団をかけると健明さんは隣に横になる。それから、眠れるおまじないみたいに、大きくて頼れる手のひらで俺の頭を撫でた。

  「あーあ。明日起きられるかなぁ〜……」

  「腰痛めてたら、欠勤だって伝えといてやる」

  「えーそんな勝手に!俺今月有給使い切ったのにぃ……」

  「つくづく計画性が無いな、お前は……もし行き倒れても養ってやるから、余計な心配せずに寝ろ」

  「へへ、言質取ったー」

  「……確信犯か?もしかして」

  他愛もない話をずっと繰り返していたいほど、結ばれた利福に浸りながら眠りにつく。ずっと、こうしていられたらいいのになぁ。

  「おやすみ、泰久……良い夢見ろよ」

  麗しいテノールの声が、ふんわり耳をくすぐる。これからどんな日々になるだろう。最高の恋人が今も隣りに居て、眠りにつける幸せ。

  健明さんになら、俺の全てを捧げたい。

  この人が隣に居るだけで、俺はずっと生きていけるだろう。最愛の人が肩を一定のリズムでポン、ポン、と叩いてくれる。柔らかで満たされた空間で、俺の意識は優しい眠りの底に落ちていった。