犬のおまわりさん

  

  

  

  その小さな町は都市部から離れていることもあって、深夜になると駅前でも人通りが全くといっていいほどなくなる。灯りが点いている建物も全く見当たらない。

  唯一つを除いて。

  

  交番。

  

  その町の交番ではいつ如何なるときでも起こりうる非常事態に対応するため、24時間必ず一人の警官が常駐していた。

  ――といっても、この小さな町ではそんな非常事態など、まず起こりえないのだが。

  今夜も、闇に包まれた景色の中、その交番の室内だけは蛍光灯の光で煌々と照らされていた。しかし、常に外から見えるところにいるはずの警官の姿は、今夜は認められなかった。受付台の向こう側、窓際のステンレス製の机の上に、書きかけの書類とボールペンが転がっているのが見えるだけだ。

  受付台の奥には、ロッカーやトイレ、倉庫や当直室等につながる木製のドアがある。

  よくよく耳をすませば、その向こうから獣の唸るような声が聞こえた。

  

  

  

  

  

  「ぐうううう・・・!」

  当直室の中で、一人の犬獣人が呻いていた。1ヶ月前に赴任したばかりの新人のシェパード犬獣人の警官、犬崎健輔だった。両手足をロープで縛られた状態で、畳の上にうつ伏せに転がされている。制服は着たままだったが、拳銃も警棒も無線も見当たらない。両手は後ろ手に回され、足首はがっちりと固定されているせいで、立ち上がることさえできず、ごろごろと転げまわるか、今のようにロープを引きちぎる努力をするしかなかった。犬崎は噛み締めた歯の隙間から呻き声を洩らしながら、全身に力を込めていた。

  しかし、何度やっても、きつく縛られたロープは切れるどころか緩む様子さえなかった。

  「くそっ・・・!はぁ・・・」

  一旦力を緩め、止めていた息を吐き出す。

  ごろり、と横を向く。顔面の茶色の短い毛並みに、畳の跡が付いてしまっていた。長時間同じ体勢をさせられているせいで、肩が痛くなってきた。大きな身体を包む紺色の制服を見下ろすと、皺だらけになってしまっていた。1ヶ月前に新品の状態で支給されてから、犬崎は勤務から帰宅すると毎日のように自分で制服のアイロンがけをしていた。警官になって、自分の生まれ育った町を守るのが、犬崎の子供の頃からの夢だった。遂に憧れの警官になれたことが実感できるようで、ぱりっとした制服を眺めるのが好きだったのに。

  犬崎は、自分をこんな状態にした相手への復讐を誓った。

  (あの野郎・・・一体、何が目的で・・・)

  犬崎は、ここまでの経緯を思い出していた。

  

  あれは、0時頃だったか。この時間ともなると終電の時間も過ぎており、駅前も基本的には静かになる。ごく稀に酔っ払いの処理を頼まれる程度だった。

  この日の当直当番である犬崎は、数日前にあった子猫の迷子の案件の報告書を作っていた。その時の子猫は泣いてばかりいて、家の場所を聞いても名前を聞いても答えてくれず、まだ対応に慣れていない犬崎は非常に難渋し、こちらが泣きたくなるくらいだった。

  しかし、すぐに母親が見つかってよかった。子猫の泣き顔はあっという間に笑顔になり、母親に飛びついていった。

  (おまわりさん、ありがとう!)

  別れ際に子猫が言った言葉を思い出して、犬崎は自分でも気づかぬうちに笑みを浮かべながら書類を書いていた。

  

  ――そんな時に、あいつはやってきたのだ。

  

  こつ、こつとスチール製の入り口が叩かれる。犬崎が机から顔を上げると、ドアの上半分に嵌め込まれている曇りガラスの向こうに、人影が見えた。

  思い返せば、この時に少しおかしいと思うべきだった。用があるなら、ドアを開けて入ってくればいいだけだ。だがまだ慣れていない犬崎は何の疑いもなく、受付台の向こうから歩いて出ると、ドアの取っ手に手をかけた。

  「どうされましたか――」

  そう言いながらドアを開けた犬崎の鼻に、突然布が当てられた。つん、と薬臭いがした途端、犬崎は全身の力が抜けるのを感じた。

  (あれ?)

  その思考を最後に、意識が遠のく。交番の入り口に犬崎は力なく倒れた。

  「おまわりさん、ちょろいね全く――」

  完全に暗転する直前、太い声が笑うのが聞こえた。

  

  次に犬崎が目覚めたときには、現在のように当直室で縛られた状態だった、というわけだ。

  最初は大声で助けを呼んだが、当直室は安眠のために防音がされているのを思い出した。外でどんな騒音があってもここで休む警察官の休みを邪魔することはまずできないし、逆に当直室でどれだけ大声を上げようが、外までは声が聞こえない。交番に警官がいないことを怪しんだ誰かが見つけてくれることも期待したが、この田舎町では深夜に出歩く獣人はそうはいない。犬崎が自力でなんとかするしかなかったが、ロープはびくともしなかった。このままではドアを開けることすらできない。

  犬崎が今後どうするべきか考えていると、がちゃり、と当直室のドアノブが回される音がした。

  犬崎は首を曲げて入り口を見つめる。ドアを開き入ってきたのは、見覚えのない狼獣人だった。灰色の毛並みで、かなり体格がいい。

  「あれ、おまわりさん、起きたんだ」

  犬崎を見ると、狼の目が嬉しそうに細められる。剣呑な目つきをしていた。

  その太い声は、犬崎が昏倒する直前に聞いた声と全く同じだった。

  「貴様・・・!」

  犬崎は低く呻いた。

  間違いない、こいつが自分をこんな目にあわせた犯人だ。

  「何が目的だ!」

  犬崎は怒りに燃え詰問するが、

  「目的?・・・そうだなあ」

  狼は動じず、にやにやと笑いながら犬崎を見下ろす。

  「まあ、強いて言うなら、あんたが目的だよ、おまわりさん」

  「なッ・・・?」

  狼の大きな手が、犬崎の太腿を撫で回す。嫌悪感に、犬崎は総毛だった。

  「や、やめろ!貴様、本官を、ど、どうする気だ!」

  恐怖に叫びながら犬崎はじたばたと暴れた。

  「どうする気って・・・あんただって、もう子供じゃないんだから、なんとなく察しがつくだろう?」

  狼は笑いながらそう言うと、突然犬崎の口に吸い付いてきた。

  「んうッ!?」

  狼の舌が犬崎の口内に侵入してくる。べろべろと犬崎の舌と絡みあう。温かく湿った柔らかい感触に犬崎の頭は痺れたようになってしまい、狼の舌のなすがままにされてしまう。

  狼が口を離す。二人の間に唾液が糸を引いた。

  「な、何を考えてるんだ貴様は・・・?」

  犬崎は真っ赤になりながら、狼の行動とディープキスの感触に混乱する。

  「・・・だからさ、わかんだろ、あんたも」

  狼は好色そうな目で犬崎の全身を嘗め回すように見ると、犬崎の下半身に手を伸ばす。

  

  

  

  犬崎の股間に。

  

  

  

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  「ひっ!」

  狼の手が局部に触れた瞬間、思わず犬崎は身体を硬直させる。

  狼は制服のズボンの盛り上がりを優しく撫でる。犬崎は狼の目的を理解した。狼は、犬崎に性的な悪戯をするのが目的なのだろう。しかし、恐怖と混乱の最中にいる犬崎には狼の行動には嫌悪しか感じられず、犬崎の性器は縮こまったままだった。

  「き、貴様には悪いが、本官にはそういう趣味はないぞ!今すぐ止めて本官を解放しろ!」

  犬崎は恐怖を堪えて毅然として言ったつもりだったが、狼は犬崎を撫で回すことをやめず、くくくく、と喉の奥で笑っただけだった。

  「・・・本当にそうかな?おまわりさん・・・」

  

  そうして、しばらく狼が犬崎の股間をいじっていると、犬崎は自分がおかしな気分になっていることに気づいた。

  身体が、妙に熱い。

  「はあ・・・」

  何故だか、吐息が漏れてしまう。汗が出てきた。しかし、決して不快なだけの気分ではなかった。高揚し、心地いいような、切羽詰っているような、そんな感覚。

  そんな犬崎の様子に気づいたのか、狼の口の端が持ち上がる。

  「どうかしたか、おまわりさん?」

  「な、なんでもないッ・・・」

  犬崎は強がったが、先ほどまで嫌悪でしかなかった狼の手の動きが、なぜだか刺激的に感じられた。下腹部の奥に熱がわだかまっているような気がする。

  

  ――どうなっているんだ、俺は・・・?

  

  「はっ・・・はっ・・・!」

  次第に犬崎の息は荒くなり始める。

  そうこうしているうちに、むくり、と犬崎の息子が反応を始めてしまう。

  (!!)

  犬崎は、目を閉じて必死に股間から意識をそらそうとするが、そうすると却って狼の手の動きが鮮明に感じられてしまう。自分でするのとは違う、切なくなるようなその感覚。犬崎は自身の意思に反して、むくり、むくりと制服の前が盛り上がっていくのを感じた。

  「・・・あれえ、おまわりさん、これはどうしたんだい?」

  狼が嬉しそうに手をどける。その下では、制服の中で完全に勃ち上がってしまった犬崎の陰茎が、ぴくっぴくっと小さく脈動していた。

  「うう・・・!」

  屈辱と恥ずかしさで犬崎は呻く。職務中に浅ましく勃起するなど、犬崎には考えられなかった。

  「おまわりさんも好きだねえ、こんなにビンビンにおっ勃てちゃってさぁ・・・」

  「ち、ちがッ・・・」

  犬崎は弁明しようとするが、

  「ぐうッ!」

  狼が制服の上から犬崎の肉棒を握る。その感触に犬養は身体を震わせ声を上げる。硬く勃起した陰茎が、熱く滾っていた。同性からの刺激だというのに、異常に感じてしまう。

  狼はそのまま手を上下させ、犬崎自身を扱き始める。犬崎の陰茎はより硬く勃起する。

  「や、やめろぉ・・・」

  犬崎は身を捩って抗議の声を上げるが、全く力が入らななかった。気持ちがよすぎて、腰砕けになっていた。

  ――何かがおかしい。

  「おまわりさん、さっさと諦めなって。俺が天国に連れて行ってやるからよ」

  狼の手の動きが早くなる。刺激の強さに、犬崎の腰が跳ね上がった。

  「ううううう!」

  犬崎は舌を咬んで快感に耐える。このままでは、男の手でイかされてしまう。それだけでも大変な屈辱だが、もし絶頂を迎えれば制服が汚れてしまう。それだけは避けたかった。

  犬崎は目をぎゅっとつぶり、全身に力を込めて狼の責め苦に我慢し続けた。

  「まあ力抜けっておまわりさん・・・。我慢は身体に毒だぜ?」

  そう言うと、狼は上下の動きに加え、肉棒の先端に手が行った際にそこで捻るような動きを加えだした。

  「あぐうッ!」

  狼が手を捻る度に、亀頭が下着に強く擦れる。その新たな刺激に犬養は身体を硬直させる。下腹部がさらに熱量を増す。奥の方のわだかまりが、ぐるるる、と蠢き外に飛び出そうとしているのがわかった。

  ――なんとか耐えろ、射精したくない・・・!

  犬崎は全身にさらに力を込める。

  しかし、犬崎のペニスは、もはや我慢の限界だった。熱が、犬崎の奥を駆け上がってくる。

  犬崎の目が大きく見開かれた。

  「ぐうううううううう!」

  犬崎が歯を噛み締めて唸る。

  狼の手の中で肉棒が大きく膨れ上がったかと思うと、一度びくり、と大きく脈動した。

  その直後、ズボンの前に大きな染みが広がる。

  「おっほう!」

  狼が手を離して嬉しそうな声を上げる。

  「うっ!うっ!」

  犬崎は大きな快感に呻きながら全身を痙攣させる。それに合わせてズボンの盛り上がりもびくびくと律動し、その度に染みが広がった。

  つん、と青臭い匂いが当直室に犬崎の鼻をついた。

  

  ――やってしまった。 よりもよって男の手で、制服の中で射精してしまった。

  出してしまった大量の精液が冷えてくるのがわかった。パンツとズボンが濡れて、気持ち悪い。

  「貴様・・・!絶対に許さんぞ・・・!」

  犬崎は狼を睨みつけるが、涙声になっていた。

  「なんでだよ、気持ちよかったろ?」

  狼はそう言いながら、犬崎の股間のジッパーを下ろす。

  大きく盛り上がり、先端が濡れた犬崎のトランクスが出てくる。

  その前開きから、狼の手が乱暴に入ってきた。

  「や、やめろ!」

  慌てて犬崎は身を捩るが、狼の手は既に犬崎の陰茎を捕らえていた。

  

  

  

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  「はい、ご開帳ぉ~」

  犬崎の声など無視して狼が犬崎のイチモツを引っ張り出す。白濁液にまみれたそれは、射精直後だというのに屹立したままで、未だぴくぴくと脈動していた。

  狼がその表面をぬるりと撫でる。またもや犬崎は身体を震わせてしまう。

  それを見て狼が舌なめずりをする。

  「おまわりさん、大した精力だねえ」

  「な、何で・・・」

  犬崎は思わず疑問を口にする。

  自分はそんなに強くない、普通だと思っていた。一度射精をしたら、いつも萎えてしまう。

  「俺っていろんな薬を研究するのが趣味でさ、いろいろ持ち歩いてるわけよ。匂いを嗅ぐだけで気絶させる薬とか、――キスするときに飲ます催淫剤とか」

  嬉しそうに語る狼の言葉で、犬崎は先ほどのディープキスに思い当たった。あのときに薬を仕込まれていたのか。

  今や犬崎の身体は完全に火照っており、射精したばかりというのに、むらむらとした性欲でいっぱいだった。

  「それにしても、おまわりさんの亀頭は綺麗な色してるねえ。――もしかして、他人との経験ないとか?」

  狼の言葉に、犬崎は火が点いた様にさらに赤面する。図星だった。真面目な犬崎は今まで女性との交際経験がなく、完全な童貞だった。その陰茎の包皮はしっかりと剥けているものの、亀頭はまだ幼いピンク色をしていた。

  「あら~当たりかあ。さっきのキスでいやに顔を真っ赤にしてるから、おかしいとは思ったけど」

  狼はニヤニヤと笑う。

  犬崎の顔が歪む。そういえば、あれが犬崎のファーストキスだった。なんで、こんなやつと。

  「お、俺が童貞で悪いかよ・・・」

  犬崎は動揺して、思わず口調も砕けてしまう。

  「いや、何も悪くないよ。・・・むしろ俺はそのほうが嬉しいんだけど」

  そう言いながら狼は再び犬崎の肉棒を握る。尿道に残っていた精液が鈴口から染みだす。

  「――ッ!」

  たったそれだけの刺激で、犬崎は口を開けたままびくびくと身体を震わせる。催淫剤の効果は刻々と強まっていた。

  「それじゃあ、二発目、イッてみようか」

  狼はニヤニヤしながら再び陰茎を扱き出す。精液にまみれているせいで先程とは異なった刺激となり、犬崎は全身をわななかせる。

  「や・・・やめてくれ・・・!せ、制服を汚したくない・・・!」

  犬崎は息も絶え絶えに懇願するが、

  「何言ってんの、それがいいんだよ、おまわりさん?」

  狼は却って手を早める。犬崎は絶望的な気持ちになりながら、それでも肉棒は悦びに震える。

  「やっぱり童貞だからか、亀頭が感じやすそうだねえ」

  狼は笑いながら、片手で犬崎の竿を扱き、片手で亀頭を撫で回し始めた。

  「あがあッ!」

  強すぎるその刺激に、犬崎は大声を上げる。狼の手が動くたびに、腰が勝手に跳ね、口の端から涎が垂れてしまう。

  我慢など、できるはずもなかった。

  「がああああああ!」

  犬崎の叫びと共に、びゅる、と精液が真上に飛び出し狼の腕に落ちる。それを見るが早いか狼は素早く犬崎の肉棒を傾け、亀頭を犬崎の上半身に向ける。

  それを見ていながらも、一度始まった射精は、犬崎には止められなかった。

  「ああッ!あううッ!」

  どうにか吐精を堪えようと腰に力を入れると、一瞬肉棒は動きを止めるのだが、その直後に却って勢いよく脈動して精液を吐き出してしまう。我慢することで快感も増しているような気さえした。びゅ、びゅびゅっ、と音を立てそうな強さで精液は迸り、犬崎の制服の胸や腹の生地に染み込んでいった。

  射精が終わり、犬崎は疲労と絶望でがくりと首を垂れる。自分の警官としてのプライドも、汚されてしまったような気がした。

  ぱしゃり、とシャッターが切られる音がした。

  見ると、狼がデジカメを手にしていた。

  「“将来有望な若手警官、当直中に制服を精液で汚す”ってところか?」

  狼が下卑た笑みを浮かべながらデジカメを裏返して犬崎の目の前に突きつける。

  白濁液にまみれた制服を身につけ、気持ちよさそうに目を閉じている自分の姿があった。

  「うう・・・!」

  悔しさで狼を睨みつけるしかできなかった。自分は、そんな顔をしたつもりはなかったが、写真は正直だった。

  「そんな顔すんなって。あんたが俺に逆らったりしなければこの写真のデータは消してやるよ」

  狼はそう言うと、再び犬崎の股間に手を伸ばす。

  「いッ!?」

  狼が亀頭に触れると、犬崎はまたもや身体を震わせてしまう。二度に渡り精子を吐き出しても、未だに犬崎の剛直は全く萎える気配がなく、肉棒の感度もさらに上がっているようだった。

  「まあ、朝になっても俺に逆らう気が残ってれば、の話だがな。・・・言っただろ?天国にイかせてやるって。なあ、犬のおまわりさん?」

  狼の目が情欲に燃え上がる。

  

  

  

  

  犬崎の当直勤務は、まだこれからが本番だった。

  

  

  

  終