虎一家に家政婦としてやってきたのは、小柄でかわいいニンゲンの雄だった

  ☆

  僕は手渡された地図の住所にたどり着くと、ぎゅっと拳に力を入れる。

  見上げたそこは、大きなお屋敷だった。

  塀の隙間から中を見ても、庭はきれいに手入れされているし、高そうな調度品も置いてあるのがわかる。

  かなりお金持ちなのだろう。

  正直、小市民の僕としては気が引けてしまうが……。

  ……頑張れ、これが僕の初仕事なんだ。

  僕は覚悟を決めてインターフォンを押すと、マイクに向かって話しかける。

  「こんにちは。田丸家政婦センターから来ました」

  すると、待ちかまえていたように門が開く。

  そこにいるのは、50代ぐらいの虎獣人だった。

  もちろん僕よりは大きいのだが、虎獣人にしては小柄で、ぽっちゃりとしている。

  肉食獣人とは思えないほど穏やかな雰囲気。

  こう言っちゃなんだが、まるでゆるキャラのようだった。

  顔もかわいらしくて、子供が見れば、思わず抱きしめたくなるような愛嬌を持っていた。

  ……これで弁護士さんなんだもんなぁ。

  虎原源十郎さん。

  僕を指名で依頼してくれた雇い主だ。

  「ああ、待っていたよ」

  虎原さんはその細い目をさらに細めると、にっこりと笑ってみせる。

  「や、八尾大輔です! この度はよろしくお願いします!」

  僕が体を硬くしたままぺこりと頭を下げると、まあまあそんなに緊張しないで、と笑いかけてくれた。

  「さあさ、入ってくれたまえ。今日からここが君の仕事場になるんだから」

  ☆

  短大を卒業してすぐ、僕はこの田丸家政婦センターに登録をした。

  皆に話すと、男のくせにと言われるんだけど、僕は子供の頃から、母親のしていた家事の手伝いをするのが好きだった。

  料理も洗濯も、掃除だって。

  それが高じて、これを仕事にしたいと思ったんだ。

  正直なところ、手際の良さは我ながらいい方だと思ってる。

  掃除洗濯はテキパキとこなすし、短大でも勉強したから、料理だって得意だ。

  ただ、僕が男だという事と、非力なニンゲンだという事で、今までは一件の依頼もなかったのだが。

  そりゃ、家で住み込みの家政婦さんは女性の方がいいってところが多いだろうし、もし男がいいとしても、それなら力仕事が得意な獣人の方を希望されてしまう。

  必然的に仕事は回ってこず、どうしようかと悩んでいた際に、虎原さんの依頼が飛び込んできたのだ。

  しかも僕を指名で。

  初めての仕事で、僕は緊張しながらも、チャンスをくれた虎原さんの期待に応えられるよう頑張ろうと意気込んでいたんだ。

  ☆

  応接間にあるソファーで向かい合わせになりながら、僕は虎原さんの面談を受けた。

  話は事前に聞いていた通り、この家の家事全般を任せたいという事だった。

  「君は小柄だが、大丈夫かい? この家は広いし、掃除だけでも大変だと思うが……」

  心配そうに聞いてくる虎原さんに、僕は胸を張って答える。

  「大丈夫です、掃除は得意ですから!」

  「そうか」

  安心したように笑う虎獣人。

  「ああ、私の事は源十郎と呼んでくれないか? この家には息子が2人いるから、名字で呼ばれると紛らわしいんだ」

  「はい。……じゃあ、源十郎さんで」

  「うん、それでいい」

  僕が名前を呼ぶと、源十郎さんは嬉しそうに笑った。

  「長男の雄一郎は最近仕事が忙しくてなかなか戻ってこないから、そんなに頻繁に顔を合わせることはないと思うが、次男の悟はまだ高3だからな。毎日顔を合わせることになると思うよ。……ああ、噂をしてると帰ってきた」

  がちゃり。

  扉が開くと、応接間に顔を覗かせたのは、学ランを着たごついガタイをした若い虎獣人。

  「ただいま」

  源十郎さんとはまるで違う大柄なその虎獣人は、子供が見れば泣き出してしまいそうな迫力のある四角い顔をしていた。

  口からはみ出した牙は太く、目の奥からは獲物を狙うような鋭い眼光が垣間見える。

  いつも顔をしかめているのか、眉間にはしわが寄っていた。

  厳ついのは顔だけではない。

  まるでプロレスラーのよう分厚いそれは、体のパーツパーツが僕なんかとは比べ物にならないほど大きい。

  掌一つとっても、僕の頭ぐらいなら簡単に握りつぶせてしまいそうに見えるのだ。

  でも、この顔、どこかで見たような……。

  「おかえり、悟。ちょうどよかった。この人が今日からうちで住み込みの家政婦をしてくれる……」

  「先輩! 八尾先輩じゃないですか!」

  源十郎さんの紹介を遮って、若虎は僕の名前を呼ぶ。

  その声を聞いて、僕は思い出した。

  「あ……悟だったのか……」

  見覚えのあるはずだ。

  この子は僕の高校の後輩だった。

  3年の頃に入ってきた1年生で、生徒会長をしていた僕に、なぜか懐いてくれていたのだ。

  本人は腕っぷしが強くて、1年のくせに学校の番長のような存在になっていて。

  それが真逆の存在である生徒会長の僕を慕ってくれていたから、先生たちの間でも噂になっていたのを覚えている。

  「先輩!」

  悟君は嬉しそうに駆け寄ってくると、僕に抱きついた。

  汗の匂いと共に香る、若い雄の匂い。

  「久しぶりだな。俺、ずっと先輩に会いたかったんだぜ!」

  「お、おい、悟……」

  「なんだ、知り合いだったのか……」

  驚いたように呟く源十郎さんに、悟は頷いて見せる。

  「ああ。高1の頃、かわいがってくれた大事な先輩だよ。卒業してからはずっと会ってなかったけど……なんだ先輩。こんな仕事してたのかよ」

  「うん……」

  「八尾先輩にぴったりだな。先輩、マメで面倒見も良かったし、たまに作って持ってきてくれる差し入れもうまかったしな」

  「そうなのか?」

  「おう! 俺はてっきり料理人になると思ってたんだぜ。親父も期待しとけよ」

  「それは楽しみだ」

  親子で楽しそうに会話をしているのはいいのだが……。

  「悟、いい加減放してくれよ」

  その分厚い胸に抱かれたままだと、なんだか居心地が悪い。

  「いいじゃねえか。久しぶりに会ったんだから。俺、先輩の抱き心地が好きだったんだぜ。ちっこくて柔らかくて」

  「ちっこいは余計だろ」

  僕が悟の言葉に噛みついていると、すっ、と脇から僕の身体が持ち上げられる。

  源十郎さんだ。

  「あっ」

  「どれどれ?」

  

  悟よりも柔らかい肉の感触が、僕の身体を包み込む。

  「確かに、これはいい感触だ」

  「ちょ、ちょっと源十郎さん……」

  驚いて僕の身体は硬直してしまう。

  その身体は柔らかいが、さすが肉食獣人、奥には硬い筋肉が感じられる。

  年齢相応にお腹の感触はぽよぽよとしていたが。

  香水とともに、濃い男の匂いが漂ってくる。

  それにしても、まさか年上の男性に抱きしめられてしまうなんて……。

  源十郎さんにしてみれば、小柄な僕なんて抱き枕かぬいぐるみぐらいの感覚なのだろうが、一応僕にだって男のプライドがあるのだ。

  「源十郎さん、さすがに……」

  「親父、何してんだよ!」

  やめて欲しいと口にしようとしたところで、悟が僕の身体を奪い返す。

  「かわいいのはわかるけど、初対面の相手にやることじゃねえだろ」

  「うむ……悪気はなかったんだが……すまない」

  申し訳なさそうな顔をする源十郎さんに、僕は首を振ってみせる。

  「大丈夫です。そんなに嫌でもなかったですから」

  「そ、そうか!」

  パッと嬉しそうに笑う虎獣人の顔は、年齢不相応なほどかわいらしいものだった。

  「それでは、今日からよろしくお願いします!」

  「ああ、頼むよ」

  「先輩、よろしくな!」

  ☆

  僕の家政婦生活は順調にスタートした。

  後輩だった悟はもとより、源十郎さんも雇い主と思えないほど気を使ってくれるのだ。

  手が空いていれば掃除をしている僕に手伝おうかと声をかけてくれたり、慣れない環境で失敗することがあっても笑って許してくれる。

  僕はその状況に甘んじてはいけないと、一生懸命仕事をこなす努力をしていた。

  「大輔君。そんなに根を詰めないで、ちょっと休憩したらどうだい? ちょうどクライアントからもらったクッキーがあるんだ」

  庭掃除をしている僕に、ぽっちゃりした虎獣人はにこやかな顔で笑いかける。

  その手に持ったお盆には、クッキーとティーセットが乗せられていた。

  「いいんですか?」

  「ああ。せっかくのいい天気だし、庭でお茶しようか」

  庭に置いてあるテーブルにそれを置くと、まるで招き猫のように僕に向かって手を動かす。

  その姿が愛らしくて、僕は思わず笑ってしまった。

  「あの……前から聞きたいことがあったんですけど……」

  「なんだい?」

  テーブルでお茶を飲む源十郎さんは、僕に対して首を傾げてみせる。

  「どうして僕を雇ってくれたのかなって。ほら、僕は男だし、力の強い獣人でもないから……」

  僕の言葉に、源十郎さんは微笑む。

  「そうだなぁ」

  そして、茶化したように言った。

  「君にひとめぼれしたからかな?」

  「えっ?」

  僕が驚くと、源十郎さんは訂正するように笑った。

  「いやいや、そういう意味じゃなくて。……僕は10年前に妻を亡くしているんだ。彼女は子供の頃から幼馴染だったニンゲンでね」

  「……そうだったんですか」

  「それから仕事をしながら男手一つで子供を育ててきたんだよ」

  ……それなら、子供も大きくなったし、いまさら家政婦がいるとは思えないんだけど。

  そんな僕の疑問に答える虎獣人。

  「僕はあんまり器用な方じゃなくてね。長男がかなり家事を手伝ってくれていたんだ。だが、最近彼も仕事が忙しくなってきたみたいで、家の事に手が回らなくて。それで家政婦さんを頼もうと思ったんだけど……」

  一度話を区切り、お茶を啜ると、源十郎さんは僕の顔を見つめる。

  「そこでおススメされた君の顔写真を見て思ったんだ。妻と雰囲気が似てるって。気を悪くしたら申し訳ないけど、こんな優しそうな雰囲気の家政婦さんがいたら、僕も心和むかなぁと思って」

  そう言うと、源十郎さんは茶目っ気たっぷりに笑ってみせる。

  「ほら、男の家政婦さんだったら、まかり間違っても手を出すことはないだろうし」

  その表情に、僕は思わず吹き出してみせる。

  「そうですね」

  「おいおい、笑ってくれるなよ」

  「それにしても、奥さんの事、今でも好きなんですね」

  「ああ、大好きだよ」

  懐かしむような顔をする虎獣人。

  「たまに君の働く姿を見ると、妻が帰ってきたみたいな気持ちに襲われて、つい抱きしめたくなることがあるよ」

  それは大の大人が見せないような、寂しそうな顔で。

  「……いいですよ。抱きしめるくらいなら」

  僕は椅子から立ち上がると、玄寿郎さんの目の前で、手を広げてみせる。

  「大輔君……」

  驚いたような顔をする虎獣人。

  だが、ゆっくり立ち上がると、僕の身体をおずおずと抱きしめる。

  壊れ物を扱うように、でもしっかりと僕の身体を抱きしめるのだ。

  「源十郎さん……」

  僕の姿に奥さんの姿を見ているのが実感できて、僕はいたたまれなくなってしまう。

  源十郎さんはしばらく僕の身体を抱きしめた後、小声で『ありがとう』と呟いた。

  ☆

  あれから、源十郎さんはたまに僕を抱きしめたがるようになった。

  僕が家事をする姿に奥さんの面影を感じるのだろう。

  息子に知られるのが恥ずかしいのか、決まって悟がいないときに抱きしめてくる。

  そんな時はいつもと違う、うっすらと甘い体臭を身にまとっていて、それを嗅ぐとなぜか心が騒ぐような感じがした。

  ☆

  「これ……」

  僕は埃だらけの本棚から、一冊のスクラップブックを取り出した。

  ここは、虎原家にある書庫だ。

  普段使ってる部屋や庭の掃除がひと段落して、他に掃除をするところがないかと尋ねると、源十郎さんがここを教えてくれたのだ。

  最近は使ってないのだろう。

  古い法律の本や、子供向けの絵本と一緒に、古びたスクラップブックを見つけたのだ。

  何気なく中を開くと、そこには新聞や雑誌などから切り抜かれた料理の記事がたくさん貼られていた。

  ……亡くなった奥さんのものかな?

  きっと料理上手だったんだろう。

  余白には、きれいな文字で追加の調味料や材料が記入されている。

  僕は感心しながらページをめくっていたが、ふとある箇所で手が止まってしまう。

  『これ、源十郎さんの大好物!』

  そう力強く書かれて赤線まで引いてあるそれは、煮込みハンバーグのレシピだった。

  ……今日、作ってみようかな。

  あの日の寂しそうな源十郎さんの顔を思い出す。

  ちょうど今日は悟も友達の家に泊まりに行くと言っていた。

  家にいるのは源十郎さんだけだし、好物を作ってあげれば喜んでくれるに違いない。

  僕はそう思うと、スクラップブックをもって立ち上がった。

  ☆

  「大輔君、お腹空いたなぁ」

  その日の夕食。

  僕がテーブルに料理を並べていると、仕事から帰ってきた源十郎さんが、食道に顔を覗かせる。

  「今日はなんだい?」

  「源十郎さんが好きな煮込みハンバーグですよ」

  僕が皿を並べながら言うと、虎獣人はちょっと驚いた顔をする。

  「好きって……どうしてそんなことを知ってるんだい?」

  「奥さんに教えてもらったんですよ」

  首を傾げる源十郎さんの前にハンバーグを置くと、僕は召し上がれ、と声をかけた。

  「あ、ああ」

  困惑した顔でナイフとフォークを手に取ると、虎獣人はハンバーグを口に運ぶ。

  がぶり、とかぶりついた瞬間だった。

  「これ……」

  はっと気づいたような顔で、僕を見つめる源十郎さん。

  「妻の……妻の作ったハンバーグの味だ……」

  「そうなんですよ。実は書庫で奥さんの残したスクラップブックを見つけて……」

  僕は源十郎さんの顔を見て、言葉を続けることが出来なくなってしまう。

  その目から、涙が溢れだしているのに気付いたから。

  「ずっと……ずっと食べたかったんだ……」

  「……」

  涙を流しながら、一口一口味わうように噛み締める虎獣人。

  「本当に妻の味だ。大輔君、ありがとう、ありがとう……」

  「……」

  ぼくはそんな源十郎さんを見ながら、何も言うことが出来なかった。

  ☆

  「源十郎さん、しっかりしてください!」

  「あ、ああ……」

  その太った体をふらふらと揺らしながら、虎獣人は千鳥足で歩いている。

  僕はその大きな体を何とか支えながら、寝室へと誘導する。

  あれから、源十郎さんはせっかくだからと秘蔵のウィスキーを取り出すと、がぶがぶと飲みだしたのだ。

  こんなうれしいことはないと言って。

  普段はお酒を飲まない人なのだが、よほどうれしかったらしい。

  それは家政婦冥利に尽きるんだけど、ぐでんぐでんに酔っぱらったその体を、僕の小さな体で支えるのは至難の業だった。

  どさっ。

  「よいしょっ、と」

  僕は抱え込むように源十郎さんの身体を、なんとかベッドに横たわらせる。

  勢いあまって僕もベッドに倒れてしまうほど、力が必要だった。

  「大輔君……」

  「ゆっくり寝てくださいね」

  据わった目でこちらを見る源十郎さんに微笑みかけて、僕は立ち上がろうとするが……。

  ぐいっ。

  「えっ?」

  そのまま、酔っているとは思えないほどの力で腕を引かれ、僕の身体は源十郎さんに覆いかぶさってしまう。

  ……なに?

  さっきまで感じなかった、濃厚な甘い香りが部屋中に立ち込めている。

  それがたまに源十郎さんの身体からしていた甘い匂いを数十倍に濃くしたものだと気づいたときには、僕の身体に力が入らなくなってしまっていた。

  

  「源十郎さ……」

  助けを求めるようにその顔を見ると、そこに柔和な表情の虎獣人の姿はなかった。

  あるのは獲物を狙う猛々しい顔の中年の雄獣人。

  にゅちゅりっ!

  「んんっ!」

  マズルが重ねられ、無理矢理口の中に舌が潜り込んでくる。

  じゅるっ、じゅるっ。

  僕は首を振って抵抗しようとするが、その太い腕からは逃れることなどできない。

  ……やだっ、やだっ!

  男同士なのに……。

  酒の味がする唾液が、僕の口に流れ込んでくる。

  それでも、その口づけは驚くほど気持ちよかった。

  キスというのはこんなに気持ちいいものなのか。

  生まれて初めての感触に、僕の心は打ち震えてしまう。

  源十郎さんは僕の口を味わうように、ぬちゃぬちゃと音を立てながら舌を動かした。

  口の粘膜を掻き回し、舌を重ねると、抜けるほどに強く吸う。

  とろけてしまいそうな心地よい感触に、体から力が抜けていくのがわかる。

  虎獣人もそれを感じているのだろう。

  

  ちゅぱっ。

  口を離すと、中年らしい嫌らしい笑みがその顔に浮かんでいた。

  「もう我慢できん。……大輔は[[rb:俺 > ・]]のものにしてやるからな」

  「そんな……」

  普段は見せないその鋭い眼光に、そして突然の荒っぽい口調に、僕は体は蛇に睨まれた蛙のように身動きすることが出来ない。

  「さあ、その肌を見せてくれ」

  そんな僕を弄ぶように、源十郎さんはゆっくりと僕の服を脱がしていく。

  「んんっ♡、んんんっ♡!」

  ただ服を脱がされているだけなのに、布が皮膚を擦る感触だけで、僕は喘ぎ声をあげてしまうのだ。

  「なんでぇ♡……」

  そんな僕に虎獣人は優しく耳打ちする。

  「知らなかったのか? 雄の獣人は気に入った雌を見つけると、その身体を発情させるフェロモンを出すんだ」

  「僕は、雌なんかじゃ……」

  「いいや、雌だ」

  普段聞きなれない強い口調で断言するように言うと、源十郎さんはその指先を僕の肌に這わす。

  「ひぃっ♡!」

  「ほら見てみろ。体を触られただけで喘ぎ声をあげるやつが、雄なわけがないだろうが」

  「そんな……んんんんっ♡」

  その太い指で乳首を摘まみ上げられると、あまりの快感で言葉を続けることも出来ない。

  「うぶな乳首が、触って欲しいとぷっくり膨れてるじゃないか。かわいいなぁ」

  中年らしいねちっこい声でそう呟くと、指先をこすり合わせて、こりこりと僕の乳首を刺激するのだ。

  「だめぇぇぇっ♡♡!!」

  その強烈な刺激に、僕は体をのけ反らせる。

  「いい反応だ。喰いがいがある」

  うっすらと笑うその顔には、僕にはない、雄の凄みがあった。

  

  「その肌をたっぷり味わわせてもらおうじゃないか」

  そう言うと、ざらついた舌で、乳首をずるんっ、と舐め上げる。

  「ひぃあぁぁぁぁぁぁっ♡♡!!」

  棘のついた舌がざりざりと乳首を嬲るだけで、股間から何かが漏れそうになるのがわかる。

  すさまじい快感に、僕は息が詰まりそうになる。

  「や、やめ……」

  ざりっ、ざりっ、ざりっ、ざりっ!

  「んああああああああああああああっ♡♡!!」

  肌が傷つくんじゃないかと思えるほどに鋭い棘が僕の乳首を痛めつけるのに、そこには快感しか存在しなかった。

  真っ赤になった肌から、じわじわと気持ちよさが体中に広がっているのがわかる。

  その感覚に溺れてしまいそうになるのを何とか堪えながら、僕は必死に訴えた。

  「源十郎さんには……奥さんがいるじゃないですか。……こんな……」

  「妻の事は愛しているよ。だが、彼女はもう死んだんだ。俺が別の誰かを好きになってはいけないのか?」

  「それは……」

  「俺は大輔、お前の事が好きになってしまったんだ。優しくて、気配りが出来て、俺の事を考えてくれる。大輔は俺の事は嫌いか?」

  「嫌いじゃない、けど……」

  でもそれは、人として好きという訳で、恋愛感情じゃない。

  だが、僕の答えを聞いて、虎獣人は獰猛な牙を剥いて笑った。

  「そうか。心配するな。すぐに俺の事が好きで好きで仕方なくさせてやるよ」

  そう言い放つと、源十郎さんは僕をうつ伏せにしてベッドへ押しつける。

  そして、僕のお尻に舌をつけた。

  「ひぃ♡!」

  ぬるりとした感触に、僕は悲鳴をあげる。

  じゅるんっ!

  ……なんでぇっ!

  すぼまった小さな菊穴を、その舌がこじ開け、中に潜り込んでくる。

  それもたやすく。

  ぬちゅっ、ぬちゅっ。

  「いやぁぁぁぁっ♡♡!!」

  当たり前のように侵入を果たした舌先が、内壁を器用に舐めあげるのだ。

  ざらついた棘の合間にたっぷりと唾液を含ませて、僕の肉襞が緩むようにぐちょぐちょと動かしていく。

  初めて突っ込まれた異物感は、すぐに快感へと変換されていく。

  これはフェロモンの効果なのか。

  痛みなど、欠片も感じなかった。

  

  ずちゅんっ、ずる、ずる、じゅりゅんっ、ずるずるずるずるっ!

  「あっ♡、あっ♡、ああああああああっ♡♡!!!」

  僕は体をのたうち回らせるが、その力強い掌は腰を掴んで離さない。

  舌先がぐりぐりと動きながら、あふれんばかりの唾液をたっぷりとまぶしつけるのだ。

  ちゅぽんっ。

  やがてその分厚い舌が引き抜かれる頃には、僕の肉穴はすっかりとろけ、雄を受け止めることが出来る雌穴へと変わってしまっていた。

  ぽっかりと開いた穴に感じる風が、寒々しい。

  「くそ……。もう我慢、できない……」

  源十郎さんは荒々しく服を脱ぐと、うつ伏せのままの僕の身体に覆いかぶさってくる。

  ぴたりとお尻に触れるのは、火傷しそうなほど熱い、巨大な杭のようなもの。

  ……怖い。

  見なくても分かる。

  それは、子供の腕ほどもある巨大な逸物。

  鋭い棘が押し付けられる感触でわかった。

  こんなものを入れられたら……

  ……壊れちゃう。

  「や、やめてぇぇ♡……」

  今の僕は飢えた虎の前に差し出された、哀れな子羊だ。

  涙ながら、僕は源十郎さんに訴えることしか出来ない。

  だが、当然その獣欲を抑えることなどできず……。

  「すまん」

  呟かれた瞬間、僕の身体に衝撃が走る。

  ずごんっ!

  「ん”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ♡♡!!!」

  情け容赦ない一撃が僕の身体をえぐり抜く。

  「ひぎぃぃぃぃぃぃっ♡♡!!」

  その圧迫感に、僕の口から内臓が飛び出してしまいそうだった。

  体を貫かれ、配される感触がありありと分かる。

  それは……快感でしかなかった。

  気持ちいいのだ。

  ぞりぞりと肉襞を広げる感触に、俺の体はぶるぶると痙攣する。

  丹念にほぐされた肉穴は、その凶悪なほどに大きな亀頭を飲み込んでいるのに、裂けることもなくただ当たり前のように受け入れてしまう。

  肉棒に張り巡らされた鋭い棘が、じゃりじゃりと肉襞を擦る感触が甘い感触となって僕の身体を襲ってくる。

  今まで感じたことのない極大の快感に、僕は脳がショートしてしまうのを感じた。

  ぐちゅり、ぐちゅり、ぐちゅり、ぐちゅり。

  粘膜が媚びるように肉竿に絡みつき、その感触を楽しむように源十郎さんは時間をかけて肉杭を僕の雌穴へと埋めていく。

  「ひゃぁぁぁぁっ♡♡!!」

  びゅるっ、びゅるっ!

  突然、僕の身体はおびただしく射精する。

  その太い肉棒が、僕の前立腺をえぐったのだ。

  

  「気持ちいいだろ?」

  悪魔のように僕の耳元で囁く虎獣人。

  その感覚を僕に覚えさせえようとでもいうのか。

  その感じるところを何度も何度も、執拗に攻め抜くのだ。

  ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ!

  「おおおおおおおおおおっ♡♡!!」

  抜き差しされるたびに、漏れ出していく精液。

  まるで乳絞りをされている乳牛のように、シーツを濡らしながらどんどんと漏れ出していった。

  甘いフェロモンの中に、青臭い匂いが混ざりこんでいく。

  それを満足そうに笑いながら、容赦なく腰を振り続ける虎獣人。

  そのぽっちゃりとした体にそれほどまでにタフな体力が隠されてるなんて、僕には想像もできなかった。

  そこにいるのはいつもの優しい源十郎さんではない。

  猛々しく、力強い見知らぬ虎獣人だった。

  「はぁ♡……はぁ♡……」

  ついには精液も枯れ果てて、僕の身体は痙攣しかしなくなるのに気付いて、源十郎さんは体の動きを止める。

  ……やっと、終わったんだ。

  だが、源十郎さんは僕の身体を掴むと、ぐるりと回転させて、仰向きに変えてしまう。

  未だ勃起したままの逸物を突っ込んだまま。

  ぐりゅんっ!

  「んんんんんんんんんっ♡♡!!」

  その衝撃に、枯れたはずの逸物から透明な汁がこぼれる。

  「源十郎……さん♡……」

  「どうだ、気持ちよかっただろう?」

  僕は力なく頷く。

  それしか出来なかったから。

  「そうか」

  源十郎さんは満足そうに笑う。

  「じゃあ、次は私が楽しませてもらう番だな」

  ……えっ?

  僕はその言葉に目を剥いてしまう。

  「たっぷり中に雄汁出して、種付けしてやるからな」

  その顔は盛りのついた雄でしかなくて……。

  「中出しは……やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡!!」

  その腰が、激しく動き出した。

  がちゅんっ、がちゅんっ、ぐちゅんぐちゅんぐちゅんぐちゅんっ、ごりごりごりごりっがつっ、どちゅどちゅどちゅどちゅんっ、ばちゅんばちゅんばちゅんばちゅんっ、がつがつがつがつっ!」

  「ひぃぃぃぃぃぃっ!♡♡」

  今までの動きがお遊びだったと思えるほどに逞しく強い腰つき。

  まるで掘削機のように素早く重たい衝撃は、僕の身体に杭を打ちつけられているようだった。

  「しゅごいぃぃぃぃぃっ♡♡!!」

  脳みそを掻き回されているような快楽に、僕は阿呆のように喘ぐことしかできない。

  「気持ちいいか? 気持ちいいだろうが!」

  雄叫びをあげながら、虎獣人は僕に言い含めるように叫ぶ。

  「お前は俺のものなんだ!大輔、大輔! お前は俺の嫁だ! 絶対に離さないからな!」

  がつんっ、がつんっ、がちゅんっ、どちゅんっ、ごりっ、ごりっ、ごりっ、ごりっ、がつんっ、ばちゅっ、ばちゅっ、ごつっごつっごつっ、どちゅっ、じゅちゅじゅちゅじゅちゅじゅちゅ、がつんっばちゅんっ、どちゅんっ、ばつんっ、どちゅんっ、がつんっ、がつんっ、がつんっ!

  「やだやだやだやだぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡!!!」

  壊されそうな衝撃を咥えられているというのに、そこにはただ、快楽のみが存在していた。

  

  びしゃっ、びしゃっ!

  気がつけば、僕は鯨のように潮を噴いていて、それが源十郎さんの体にかかる。

  僕の潮を浴びながら、虎獣人はにやりと顔を歪めたまま、僕を攻め続けるのだ。

  耕され続ける僕の身体は、源十郎さんの逸物にふさわしいサイズに変えられてしまっている。

  そこにはなぜか、幸福感しか存在しなかった。

  ……僕はこの人の雌になるんだ。

  そう頭の中で何かが囁いた瞬間だった。

  虎獣人が淫らなうめき声をあげる。

  「そろそろ……イクぞぉぉぉぉぉぉっ!!」

  どりゅどりゅどりゅりゅりゅっ!

  僕の中で逸物が弾けたのがわかった。

  重く、粘っこいザーメンが、僕の中で子宮を探して流れ込んでいくのがわかる。

  「ああああああああああああっ♡♡!!」

  その時僕が漏らしたのは、確かに歓喜の喘ぎ声だった。

  ……僕、種付けされちゃったんだ。

  

  ☆

  「す、すまなかった!」

  翌朝。

  酔いが醒めて、自分のやってしまったことがわかったのだろう。

  僕の目の前で深く頭を下げる源十郎さんの姿があった。

  「……」

  さすがに僕も、はいそうですかと許すわけにはいかない。

  ただ、奥さんを亡くして辛い気持ちだった源十郎さんの気持ちも分からなくはないのだ。

  その奥さんに似ている僕が来て、しかも食べたかった奥さんの料理を再現してしまった。

  僕の事を奥さんのように思って、酔いに任せて襲ってしまう事もあるのかもしれない。

  

  「しょうがないですね」

  ため息をついてみせると、源十郎さんは驚いたように顔をあげた。

  「ゆ、許してくれるのか?」

  「まあ、今回だけですよ」

  「よかった……」

  僕の言葉に、子供のようにぼろぼろと涙を流す虎獣人。

  「大輔君に嫌われて、出ていかれたらと思うと……僕は……」

  「大丈夫ですよ。嫌いになったりしませんから」

  「そ、そうか!」

  そう言うと、凄まじい勢いで立ち上がり、僕の手を掴む虎獣人。

  「嫌いにならないんだな!」

  「え、ええ……」

  「それじゃあ……。結婚を前提にして付き合っては貰えないだろうか?」

  「……はい?」

  周りから聞かれていたら、僕はよほど素っ頓狂な声をあげていただろう。

  そのぐらい、僕は驚かされたのだ。

  「いや、あの……はい?」

  「僕は君の事が好きなんだ。君をどうしても僕のものにしたい。僕だけのものにしたいんだ!」

  「あの……僕、男ですよ」

  「それがどうしたというんだ。最近じゃ同性婚だって当たり前だろ? 法律だってこの間改正されたところだ」

  「それは……そうですけど……」

  「それとも、僕みたいなおっさんは嫌いか?」

  「いや、そういう訳じゃ……」

  おっさんが好きとか嫌い以前に、僕はゲイじゃないんだけど……。

  「体の相性は抜群だと思うんだ。昨日の夜は、君も気持ちよかっただろ?」

  「それは、まあ……」

  僕の顔が真っ赤になる。

  確かに気持ちよかったのは事実だ。

  でも……。

  「あの……考えさせてください」

  断りの言葉が出せなかったのは、源十郎さんをかわいそうに思ったからか。

  それとも、彼に惹かれてしまっている部分があるんだろうか。

  「そうか!」

  僕の返事に嬉しそうに笑うと、虎獣人は僕の身体を抱きしめる。

  「ゆっくり考えてくれ! 僕は絶対に君を幸せにしてみせるから!」

  「いや、あの……まだ決まったわけじゃ……」

  「いいや、絶対振り向かせてみせるから!」

  「……」

  その目は真剣で。

  僕は心の中で、頭を抱える羽目になった。

  ☆

  ……どうしよう。

  僕は1人ため息をつく。

  あれから、源十郎さんにアプローチが積極的になった。

  さすがに悟がいる分、寝込みを襲われるようなことはないが、ボディタッチが頻繁になっているような気がする。

  ……なんか悟が怪しんでる気がするんだよなぁ。

  『八尾先輩、なんか親父と仲良くなりすぎじゃないか?』

  そんなことをたびたび聞いてくるようになったのだ。

  「うーん」

  正直なことを言うと、僕は源十郎さんの事をちょっと意識するようになってしまっていた。

  いや、僕は男だし、ゲイじゃないし、同性婚にはやっぱり抵抗あるんだけど。

  でも、あの優しさと包容力、ベッドで見せた男らしさに少し惹かれてしまう自分がいたのだ。

  

  「だめだだめだ。仕事しないと」

  

  僕は頭を切り替えて、台所で料理の準備に取り掛かる。

  今日は久しぶりに、長男の雄一郎さんが帰ってくるんだそうだ。

  僕はお会いしたことがないので、ちょっと緊張している。

  ……どんな人なんだろう。

  源十郎さんに似た感じなのかな。

  それとも、悟みたいに大きくていかつい虎獣人なのか。

  ……なんにせよ、嫌われないようにしないと。

  「ねえ、君が今度来た家政婦さん?」

  僕が考えこんでいると、ふと、どこかで聞き覚えのあるような声が耳に響く。

  でも、それはこの家の中で聞く声ではない。

  「えっ?」

  振り返る僕の目に入るのは、見たことのない虎獣人だった。

  いや、見たことないと言うか、見たことはあるのだ。

  テレビの向こう側で。

  「……TAIGA、さん?」

  「ああ」

  僕の問いかけに、その格好いい虎獣人は、笑顔で頷いた。

  その虎獣人の名前は、TAIGA。

  テレビで引っ張りだこの、今若手No.1の実力派俳優だった。

  演技力だけではない、その容姿も飛びぬけて格好いいのだ。

  その顔つきには、男らしさはあるが、よくある肉食獣人特有の野蛮さは見られなかった。

  まるで世の女性が描いた理想像のような端正な顔つき、そして涼やかなその目。

  背は高いのだが、同じ虎獣人の源十郎さんや悟とは違う、筋肉質でありながらスリムな体つき。

  もちろん近くで見れば、がっしりとした身体をしているが、均整の取れたそれは、どちらかと言えばしなやかな豹獣人を思わせる肉付きだった。

  抱かれたい男ランキングでいつも上位にランクインしているのも当然だと思えてしまう。

  「……なんで、こんなところに」

  当たり前のように毎日テレビの向こう側で見かける違う世界の人が、なぜ虎原さんの家に現れるんだ。

  僕の頭は混乱してしまう。

  そんな僕を見て、TAIGAさんは笑った。

  「そりゃ、俺だって実家に帰ることぐらいあるさ」

  ……実家って。

  「ひょっとして、雄一郎さんですか?」

  僕の問いかけに、笑って頷くTAIGA、いや、雄一郎さん。

  「ああ、この家の長男、虎原雄一郎だよ。かわいい家政婦さん、よろしくね」

  切れ長の目でウィンクすると、雄一郎さんは僕に微笑んでみせた。

  

  ☆

  「ああ、そういえば言ってなかったかなぁ」

  いつもの席に着いた源十郎さんに、料理を運びながら雄一郎さんのことを聞いてみると、彼はなんでもない事のように教えてくれた。

  「こいつは下積みが長くて、なかなか芽が出なかったんだが、最近ようやく認められるようになってね。ドラマに出演できることが増えたから、あまりうちに帰ってこなくなったんだよ」

  「やっぱりこの辺は田舎だからさ、家から撮影現場に通うの大変なんだよ。……でもまあこんなかわいい家政婦さんがいるんだったら、それも悪くはないのかもしれないけど」

  「……」

  源十郎さんの隣に座りおべんちゃらを言う雄一郎さんを、噛みつきそうな顔で睨みつける悟。

  「なんだ悟。文句あるのか?」

  「べ、別に!」

  からかうようなその様子に、そっぽを向く僕の後輩。

  「なんだつれないなぁ。せっかく兄貴が帰ってきたというのに」

  

  そこまで言うと、にやりと笑うイケメン虎獣人。

  「ああ、わかった! お前、この家政婦さんが好きなんだろう?」

  「なっ!」

  雄一郎さんの言葉に、みるみる顔を赤らめる悟。

  「そ、そんなわけないだろ!」

  「そうかぁ? それにしちゃ、家政婦さんを誉めてると、お前の顔が変わるからなぁ」

  「そ、それは……。この人は俺の……大事な先輩……だから……」

  そこまで言うと、悟は僕の顔をちらりと見る。

  こんな懐かれているとは思わなかったので、ちょっと嬉しい。

  「まあ、せっかく家族3人集まったんですし、喧嘩なんてしないでください。……それと僕は八尾大輔と言います。良ければ家政婦さんじゃなくて、名前で呼んでもらえたら嬉しいです」

  「じゃあ、大輔、だな」

  すぐに反応を返してくれる雄一郎さん。

  「ちょっと待てよ! なんで兄貴がいきなり八尾先輩の事を呼び捨てにするんだよ!」

  「そりゃ、本人がいいって言ってるからだろ」

  「……」

  ぐるるるる、と喉の奥で唸る悟。

  「まあまあ。別に悟も僕の事、大輔って呼んでくれてもいいんだよ」

  「えっ、でも……。それじゃあ、だ、大輔先輩で……」

  僕よりはるかに大きい虎獣人が照れくさそうにする様子を見て、僕は思わず微笑んでしまう。

  高校時代を思うと、まさかこんな悟を見られるとは思っていなかった。

  熊獣人と間違われてもおかしくないほどのごついガタイの見た目通り、男臭くて仁義に厚くて、1年のくせにうちの生徒が他校の学生に絡まれると、助けに行くような奴だったのだ。

  まるで男らしさが学ランを着て歩いているかのようだなんて、みんなは噂をしていた。

  女子にモテモテだったのに、全然相手にしないから余計にファンが増えてしまって。

  確かバレンタインデーなんかはチョコがすごい数になっていたはずだ。

  『先輩、喰いきれねぇから一緒に喰ってくれよ』と、生徒会室に来た悟と2人きりでチョコを食べたのは、今もいい思い出だった。

  そんな悟のかわいいところを見られるんだから、ここに仕事に来てよかった。

  ……そういえば、あれだけモテたんだ。さすがに今は誰かと付き合っているんだろうか。

  「さあ、冷めるといけないんで、ご飯食べてくださいね」

  僕が勧めると、三人は箸をとり、料理を口に運んだ。

  「あっ……」

  驚いたような声をあげる雄一郎さん。

  源十郎さんと悟は慣れているようだが、今日の料理も、奥さんが残したレシピから作ったものなのだ。

  「……これ、母さんの味じゃないか」

  目を丸くする雄一郎さんに、源十郎さんは自分の手柄のように自慢する。

  「そうだ。大輔君があいつのレシピを見つけて、再現してくれたんだ」

  「そうだったんだ……」

  無言でがつがつと食べてくれている悟の正面で、雄一郎さんはぽつりと呟く。

  「これだけかわいくて、料理上手で……。よし、決めた!」

  雄一郎さんは手に持った箸をテーブルに置くと、僕に向き直る。

  「大輔……。どうか、僕と結婚してくれないか?」

  ぶぅっ!

  雄一郎さんの言葉に、口から料理を吹き出す悟。

  「おい、悟! 汚いなぁ、何してるんだよ」

  「何してるんだはこっちの台詞だ! 兄貴、せ、先輩は男だぞ!」

  「そんなの、見りゃわかる」

  食ってかかる弟に、雄一郎さんは平然と言う。

  「男だって、こんなにかわいくて料理上手だったら逃す手はないだろう? 性格だってよさそうだし。最近じゃ、同性婚だって少なくないんだぜ。……なあ、大輔。俺の事嫌いか?」

  「いや、嫌いも何も、僕、雄一郎さんの事、何も知りませんし……」

  「そこそこ売れてる俳優ってことは知ってるだろ?」

  「それはまあ……」

  僕は言葉を濁す。

  「それだけ知ってりゃ十分だ。お互いの事は結婚してからだってわかるんだから。金だってしっかり稼いでるから、苦労もさせないし、たっぷり甘やかしてやるぞ。昼も夜もな」

  「……」

  あまりのことに返事が出来ないでいると、横から苦言を呈する源十郎さん。

  「おい、大輔君の気持ちも考えずに何を言ってるんだ。そういうのは、お互いをよく知りあって、そのうえで……」

  「あれ? 親父こないだ、雄一郎も適齢期だし、いい加減誰か見つけて結婚しろって言ってただろ?」

  「……」

  「好きになったら誰でもいい、父さんはどんな人が相手でも応援してやるって言ってたじゃないか」

  「それは……」

  苦虫をかみつぶしたような顔をする虎親父。

  ……源十郎さん、そんな事言ってたのか。

  「はあ、なるほど……」

  イケメン虎獣人はにやりと笑う。

  「さては、親父も大輔の事を狙ってるのか?」

  「なっ、なっ!」

  その言葉に、あからさまに動揺する源十郎さん。

  「なっ、なんでそんなことっ! お、[[rb:俺 > ・]]がなんで大輔の事を!」

  ……源十郎さん、言葉遣い変わってますよ。

  「やっぱりな。そりゃそうだよな、こんな上玉、なかなかいないもんな」

  「いや、それは!」

  言葉を濁す源十郎さんを見て、悟は小さく呟いた。

  「マジかよ……」

  その愕然とした表情を見て、そりゃそうだよな、と僕は悟に同情する。

  父親と兄貴が、自分の先輩、それも男相手に告白しているようなもんなんだろうから。

  しかも、雄一郎さんはともかく、源十郎さんは本気なのだ。

  僕の事をお母さんなんて呼ばないといけないと思えば、ぞっとするのだろう。

  ……ご愁傷様です。

  「はいはい。2人とも、冗談はいい加減にしてくださいね」

  僕は話は終わりとばかり、ぱんぱんと手を叩く。

  「僕は雄一郎さんと結婚するつもりはないですからね。……せっかくお母さんのレシピで作ったんだから、残さず食べてくださいよ」

  ☆

  「はあ、疲れた」

  母屋のお風呂を借りると、僕は与えられている離れに帰ってきた。

  寝るときは1人じゃないと落ち着かないだろうと、庭にある離れの部屋を源十郎さんは用意してくれたのだ。

  「やっぱり気を遣うよなぁ」

  源十郎さんと悟だけならそうでもないんだけど、普段はいない雄一郎さんがいて、しかもそれがテレビで見るような俳優さんなのだ。

  普段のような心持ではいられない。

  ……でもまあ、格好良かったよなぁ。

  僕はベッドの上でそんなことを思う。

  虎獣人とは思えない柔らかい物腰と、体から滲み出るような色気が感じられた。

  それは源十郎さんにはないもので。

  ……あんな人に口説かれたら、そりゃ男でもついていっちゃうかもなぁ。

  そこまで考えて、僕はぶんぶんと首を振る。

  ……いや、違うから。僕はゲイじゃないし。

  源十郎さんとの事だって、たまたま起きただけなのだ。

  ……雄一郎さんだって、僕をからかっただけに違いない。

  ああいう職業の人は、きっと遊び慣れているんだろうし。

  「もう寝なきゃ」

  明日も早いのだ。

  僕は布団を頭までかぶる。

  と……。

  トントン

  小さくノックされる音に気付き、僕は飛び起きた。

  「は、はい」

  「雄一郎です。ちょっといいかな?」

  「はい。開けますね」

  ……母屋で何かあったのかな。

  僕はパジャマのままドアをカチャリと開ける。

  「うっ」

  開けた瞬間、僕の鼻腔には甘ったるい匂いが飛び込んできたのだ。

  ……なんだこれ。

  そのあまりの濃密さに、僕の頭はクラクラしそうになる。

  「あの……」

  ばたんっ!

  僕が戸惑っている間に扉を後ろ手に閉め、雄一郎さんは笑った。

  「よかった。まだ起きていてくれたんだね」

  ……何かおかしい。

  まるで風邪でもひいてしまったかのように身体が熱く、顔が赤くなっているのがわかる。

  腕や足から力が抜けていくのがわかって……。

  「おっと」

  その場にしゃがみ込みそうになる僕を抱きとめてくれる雄一郎さん。

  「あっ」

  近づくと、その甘い匂いがより強くなるのがわかる。

  ……これって。

  源十郎さんの身体からもしてた匂いじゃないのか。

  彼の時はひたすら甘いバニラエッセンスのようだったけど、目の前の虎獣人はそこにコーヒーの匂いが混じっているような甘苦い感じだった。

  源十郎さんはこの匂いについて言っていたはずだ。

  「確か……フェロモンって……」

  その言葉を聞いて、雄一郎さんは目を細める。

  「へぇ。それを知ってるってことは、誰かに手を出されたのか。……察するところ、親父かな。悟はまだそんな感じじゃなかったし、親父は君に執着してたからなぁ」

  小さく呟くイケメン虎獣人。

  「雄一郎さん、何を……」

  「決まってるだろ。君を口説きに来たんだよ」

  そう言うと、にっこりと笑ってみせる。

  「食堂で言ったじゃないか。結婚してほしいって」

  「それは冗談じゃ……」

  「そんなわけないだろ」

  笑っていてもその目は真剣で。

  「でも、僕、男だし……」

  「言ったろ。そんなことは関係ないんだ。親父だってそう言っていたんじゃないのか?」

  「別に源十郎さんとは、一度だけで……」

  「それは好都合。まだ俺が入り込む余地はあるってことだ」

  雄一郎さんは僕をお姫様のように抱き上げると、そっとベッドに横たえる。

  「君は無自覚すぎるんだ。君みたいにかわいい子が、こんなケダモノの巣窟に住んでいたら、襲われたって仕方ない」

  「……」

  「なあに、心配ない。その体を快楽で狂わせて、俺から離れられなくしてやる。明日それを2人に見せつければ、きっと諦めてくれるだろう」

  「や、やだ……んんっ♡」

  僕の抵抗を嘲笑うように雄一郎さんは覆いかぶさってくると、マズルを口に押し付けた。

  ……気持ちいい。

  フェロモンのせいか、その感触はとろけるような快感に変わってしまう。

  「だいぶフェロモンが効いてきたね。いい顔をしてるよ」

  気がつけば、僕の身体は脱がされ、肌を晒してしまっていた。

  「きれいだね。親父に先を越されたのは腹立たしいけど、たっぷり上書きしてやるよ」

  そう言うと、その視線は、小さく勃起した僕の逸物に向けられる。

  「君の逸物もすっかり喜んでるようだね。……まずはこっちをかわいがってやるか」

  「な……ひゃうっ♡!」

  そのざらついた舌が、僕の肉棒を舐め上げるのだ。

  ずるりっ!

  「ああっ♡!」

  初めて感じるその感触に、僕は体を震わせる。

  「いいねぇ。ウブな反応だ。……親父とどっちが気持ちいい?」

  「源十郎さんには……舐められたことないから……」

  思わず素直に答えてしまうと、雄一郎さんは眉をひそめる。

  「なんだ、親父。口でかわいがることもしてないのか。よっぽどがっついてたんだなぁ」

  にやりと笑うイケメン虎獣人。

  「じゃあ、こっちの初物は俺がいただけるってことだな。……たっぷり子種を出してくれよ」

  「あ、やめ……あああああああっ♡!!」

  じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ。

  その大きなマズルで僕の逸物を咥え込むと、雄一郎さんは口の中を柔らかく動かした。

  口の中の粘膜が包み込むようにうねり、逸物にまとわりつくのだ。

  「ひぃぃぃぃぃぃっ♡!」

  それは温かく、吸い付くように竿を刺激する、

  同時にざらざらとした舌の感触が、勃起してもあらわにならない亀頭に潜り込み、敏感な雁をぐりぐりとこねくり回す。

  ざりっ、ざりっ、ざりっ、ざりっ!

  「んんんんんんんんんっ♡!!」

  くすぐったいような、痛いような感触が、フェロモンのせいですべて快感に変換されてしまう。

  それは今まで感じたことのない異質な快楽で。

  「イッじゃうぅぅぅぅっ♡!!」

  びゅるっ、びゅるっ。

  僕は我慢などできずに、ありったけの精液を雄一郎さんの口に吐き出してしまう。

  「こんなもんじゃ足りないよ。もっと、もっと飲ませてくれよ」

  一度イッたというのに、萎えない僕の逸物を咥えたまま、くぐもった声でそんなことを言う虎獣人。

  「駄目だからぁぁぁっ♡♡!!」

  イッたばかりで敏感になった亀頭に襲い掛かる快感の嵐。

  ぬつんっ、じゅるり、ぐちゅん、ざりざりっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ、じゅるじゅるじゅるじゅるっ、ずぞぞぞぞぞっ、ぬちゅんっ、じゅりっじゅりっ、じゅりっ。

  「んんんんんんんんんっ♡♡!!」

  びゅるっ、びゅるっ、びゅるっ、びゅるっ、びゅるっ、びゅるっびゅるっ、びゅるっびゅるっ、びゅるっびゅるっ、びゅるっ!

  まとわりつく口の粘膜は、僕が何度イッても解放してくれることはなかった。

  出せば出すほど、もっともっととねだる様に蠢くのだ。

  フェロモンのせいか発情した僕は、賢者モードになることもなく、ただひたすらに快楽を受け止めるだけの淫らな体になってしまっていたのだ。

  それでも、子種汁にも限界があって。

  「はぁ♡、はぁ♡」

  「もう弾切れかい?」

  息も絶え絶えになった僕の体から、身を離す雄一郎さん。

  口の端についたザーメンをべろりと舐めとる姿は、満足そうで。

  「ごちそうさまでした」

  愛おしそうに指で触られる僕の逸物からは、もう白濁液は出てこない。

  ただ、未だ真っ赤に腫れた逸物が、びくびくと竿を震わせるだけだった。

  「さて、今度は俺の逸物をご馳走する番だね」

  そう言うと、僕の目の前で服を脱いでいくイケメン虎獣人。

  その黄色と黒の体毛の上から、うっすらと見える割れた腹筋。

  まるでギリシャ彫刻のように美しい肉体と、その股間から飛び出す長い逸物。

  ……怖い。

  僕はそれを見て、恐怖を覚えた。

  太さは源十郎さんほどじゃない。

  でも、その長さが問題なのだ。

  あれだけのものを突っ込まれたら、切っ先はどこまで届いてしまうのだろう。

  

  「やだ……やだ……」

  怯える僕の気持ちに気づいたのか、雄一郎さんは優しく笑う。

  「大丈夫だよ。初めはみんな怖がるが、奥まで入れられると、気持ちよさで狂ってしまうから。誰にも触られたことのない未開の地を、犯される感覚を教えてあげるよ」

  そう言うと、棘だらけの長い逸物を僕の肉穴に押し当てる。

  「これを喰らったら、もう俺以外の事なんか考えられないようになるからね」

  「あ……あああああああああああっ♡♡!!」

  ずぶりっ、ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるっ!

  「んぎぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃっ♡♡!!」

  それは想像もしたことのないほどに異質の快感だった。

  まるでのたうち回る蛇が体の中を貫いていくように、奥へ奥へと入っていくのだ。

  源十郎さんに攻められた前立腺など軽く飛び越えて、入ったことのない肉襞を押しのけ突き進むのがわかる。

  じゅこっ、じゅこっ、ずるっ、ずるっ、じゅるるるるるるるるるるっ!

  「ごわいぃぃっ♡! ごわいがらぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡!!」

  「大丈夫。ここを抜けたら、頭がおかしくなるくらいに、気持ちいいぞぉ」

  子供をあやすような声で囁く雄一郎さんの目は、ケダモノのようにらんらんと輝いていた。

  脳まで届いてしまいそうな肉棒の圧迫感は、すべて快感に置き換わって、内臓から快楽を伝えてくるのだ。

  「やだぁ♡、やだぁ♡、やだぁ♡、やだぁぁぁぁぁっ♡!!」

  「何を言ってるんだ。こんなに嬉しそうにメスイキを繰り返しておいて」

  雄一郎さんの言う通りだった。

  僕の身体はひたすらイキ続けていた。

  逸物ではなく、雌穴を震わせて、イキ続けているのだ。

  それは脳が壊れてしまうほどに強烈な衝撃で。

  身体がぶるぶると痙攣してしまうのを止めることすらできないのだ。

  涙を流しながらただ、受け入れることしか出来ない。

  それほどまでに強烈な刺激なのだ。

  「俺のこと好きだろう?」

  まるでドラマのワンシーンのように、囁きかける雄一郎さん。

  だが、その腰の動きは止まることはない。

  ひたすら僕の身体に、雌であることを教え込むようにぐちゅぐちゅと淫らな音を叩き込むのだ。

  がちゅんっ、どちゅんっ、ごちゅんっ、ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ、がちゅんっ、がつがつがつがつっ、ぐりぐりぐるぐりっ、ばちゅんばちゅんばちゅんばちゅんっ!

  「すきぃぃぃっ♡♡! すきですぅぅぅぅっ♡♡!!」

  もう自分が何を言っているのかわからない。

  ただ、虎獣人の操り人形のように、こくこくと首を振るのだ。

  「よし、もう親父には渡さないからな。たっぷり奥まで種をつけて、孕ませてやる。イクぞぉぉぉぉぉっ!」

  びゅるるるるるるるるるるるるるるるるるっ!

  「んああああああああああああああっ♡♡!!」

  糊のように重たいザーメンが、僕の肉壁にぶちまけられる感触がわかった。

  それは大量に吐き出されて、見る間に僕の腹を膨らませるのがわかる。

  ……しゅごぃぃぃぃ♡!

  僕の脳はもう考えることを放棄してしまっていた。

  ☆

  いつの間にか気絶してしまっていたのか。

  僕ははっと、意識を取り戻した。

  僕に覆いかぶさり見つめる雄一郎さん。

  その逸物は、萎えないまま未だ僕の肉穴を推し広げていた。

  「さて、もう一発出しておこうかな」

  当たり前のようにそう言うと、再びその腰が動き始める。

  ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ、ぬこっ。

  ……壊れちゃう。

  「も、もう……」

  懇願するように言う僕を見て、雄一郎さんは笑う。

  「何を言ってるんだ。大輔の体から俺の匂いが消えないぐらいに種を仕込んでおかないと。……二度と親父が手を出す気にならないぐらいに」

  「ひぃっ♡!」

  ぐちゅんっ、ぐちゅんっ!

  ゆっくりと動き出すその感触に、一度戻った正気が、またも快楽に引きずり込まれそうになる。

  「やっ、やだぁぁぁ♡♡!!」

  「いい声を聞かせてくれよ」

  イケメン虎獣人が、そう笑った瞬間だった。

  がちゃんっ!

  何かが割れる音が、雄一郎さんの頭上から聞こえる。

  「えっ?」

  そこには、割れた花瓶と意識を失った雄一郎さん。

  そして破片を手に持ったままの悟の姿があった。

  「……悟」

  「大輔先輩、大丈夫か!」

  その形相は、鬼のようで。

  「う、うん。ありがとう。でも、雄一郎さんは……」

  僕は覆いかぶさったままの雄一郎さんに視線を戻す。

  「大丈夫だ。こいつはこれぐらいで死んだりはしないから。ちょっと気を失ってるだけだ」

  その太い腕で僕から引き剥がすと、悟は兄をベッドの下に転がした。

  「よしよし、うまい事ベッドの上に破片は落ちてないな」

  そう確認すると、疲れ果てて身動きできない僕の側へ近づいてくる。

  その身体からは、源十郎さんとも雄一郎さんとも違う、甘さに青臭さが入り混じったような、フェロモンの匂いが溢れだしていた。

  「……なんで」

  悟はただの後輩なのに。

  「なんで、はこっちの台詞だよ」

  獰猛な顔つきをした巨漢の虎獣人は、鋭い目で僕を睨みつける。

  「なんで兄貴なんかに身体を許したりしたんだ!」

  「別に許したわけじゃない。無理やり……」

  「兄貴だけじゃないじゃないのか? ひょっとして、親父にもやらせたんだろう!」

  「……」

  牙を剥き出しにして僕に迫る、年下で巨躯の虎獣人。

  悟のそんな表情が僕に向けられるのは初めてで、思わず恐怖で身がすくんでしまう。

  「くそっ、俺の方がずっと前から大輔先輩を狙っていたのに……」

  「えっ……」

  思いもよらない言葉に、僕の口から間の抜けた音が漏れる。

  「やっぱり気づいてなかったのかよ。あんたは鈍いからな」

  そう言いながら服を脱ぎだす悟。

  「高校に入学した時から、俺はあんたが好きだったんだ。だけど勇気がなくて告白できずじまいだった」

  「……」

  「あんたが卒業して後悔してたんだ。それが家政婦としてうちに来てくれることになって、今度こそと思ったら、兄貴や親父に身体を許すなんて」

  「だから別に許したわけじゃ……」

  「うるせぇ! しっかりお仕置きしてわからせてやる。あんたは俺のもんだってな!」

  「ひっ」

  全裸になったその体を見て、僕は思わず悲鳴をあげる。

  見上げるほどの背丈にふさわしい、分厚く筋肉質な身体。

  そして視線をおろせば、凶悪なほどの存在感を放つ、棘だらけの逸物が天を衝いていた。

  長さや太さもさることながら、何より恐ろしいほどに雁が張り出しているのだ。

  まるで開いた傘のようなそれを埋め込まれてしまえば、どれだけの快楽が僕を襲うだろう。

  「すげぇだろ」

  怯えた僕の課を見て、悟は笑った。

  手に持った逸物を上下に揺らしながら。

  「こいつであんたの腹の中に出された、兄貴の子種を根こそぎ掻き出してやるからな」

  「だ、だめ……」

  そんなの入れられたら、狂っちゃう……。

  「なんだと!」

  だが、僕の呟きを別の意味に捉えたのか、悟の顔が強張る。

  「兄貴の子種を掻き出されるのが、そんなに嫌なのか?」

  「そういう意味じゃ……」

  「もう我慢できねぇ。きちんと躾け直してやる!」

  そう叫ぶと、悟は情け容赦なく、僕の雌穴に逸物を捻じ込んだ。

  めり、めりめりめりめりめりっ!

  「おおおおおおおおおおっ♡♡!!」

  僕は涙を流しながら悲鳴を上げた。

  壊されてしまいそうな衝撃は、まるで杭打機を直接内臓に打ち込まれているようだった。

  そのえげつないほど張り出した雁が、張り出した雁首は繊細な肉襞をえぐり取り、押し込まれていく。

  ぷつぷつと音を立てて肉襞が潰されるのがわかった。

  「んぎぃぃぃぃぃっ♡♡♡!!!」

  ずり、ずり、ずり、ずり、ずり。

  恐れおののく肉壺を無理やりに押し広げて、奥へ奥へと進んでいく。

  そして……。

  ぐじゅんっ!

  奥まで到達すると、一気に逸物を引き抜くのだ。

  「あがががががががががっ♡♡!!」

  引き出された雁首とともに、肉穴からあふれ出す雄一郎さんのザーメン。

  「こんなに出されやがって……」

  ずごんっ!

  再び突き立てられる逸物は、怒りに任せて押し込まれる。

  その衝撃に、僕は体を壊されてしまうのが、嫌でもわからされてしまう。

  「やだぁぁぁぁぁぁっ♡♡!!」

  「うるせぇっ! 兄貴の子種なんか、全部掻き出してやる! あんたは俺の……俺の子種の味だけ覚えてりゃいいんだ!」

  ぐちゅんっ、ばちゅんっ! ぐちゅんっ、ばちゅんっ! ぐちゅんっ、ばちゅんっ! ぐちゅんっ、ばちゅんっ! ぐちゅんっ、ばちゅんっ! ぐちゅんっ、ばちゅんっ!

  「うがぁぁぁぁっ♡♡!!」

  押し入れ、引き抜き、押し入れ、引き抜く。

  ただ掻き出すだけの荒っぽい動作は、そのあまりの快感に、僕の心を溶かしてしまう。

  僕は自分の身体が雌に変わっていくのがわかった。

  押さえつけられ、無理矢理に犯されているのに、そこには快感と満足感しか存在しなくなっていたのだ。

  「先輩は俺の雌なんだ! 俺のもんなんだ!」

  何度も何度も言い聞かせるように叫びながら、悟は腰を振る。

  

  ぐじゅりっ、がちゅんっ、じゅるじゅるじゅるじゅるっ、ぐじゅり、ばちゅんっ、ごり、ごりごりごりごりっ、ぐじゅり、どちゅんっ、がつんっ!

  すでにぽっかりと開いたままの肉襞を、年下の虎獣人は壊すように引き抜き、そしてまた貫く。

  目の前の雌を調教するためだけに。

  「あっ♡、あっ♡、あっ♡、あっ♡!!」

  僕はその衝撃に、淫らな雌の鳴き声をあげることしかできなかった。

  「もっと、もっとだ。もっとわからせてやる! あんたは俺の事だけ考えてりゃいいんだ!」

  ずるずるずるずるずるっ、がつんっ、がつんっ、がちゅんっ、どちゅんっ、ごりっ、ごりっ、ごりっ、ごりっ、がつんっ、ばちゅっ、ばちゅっ、ごつっごつっごつっ、どちゅっ、じゅちゅじゅちゅじゅちゅじゅちゅ、がつんっばちゅんっ、どちゅんっ、ばつんっ、どちゅんっ、がつんっ、がつんっ、がつんっ!

  「ひぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁああああああああああっ♡♡♡!!」

  「イクぞぉぉぉぉぉっっ!!」

  どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっどぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ。

  すっかり掻き出された雌穴に再び濃厚な雄汁が注ぎ込まれる。

  粘っこく重量のあるそれは、既に開ききったと思っていた肉穴をさらに押し広げながら、広がっていくのだ。

  「ああ……」

  僕はもう、何も考えることが出来なくなっていた。

  ☆

  「お前ら、何してる!」

  離れの入り口から聞こえたのは、普段の柔和な様子からは想像できないほどに怒り狂った源十郎さんの声だった。

  「大輔になんてことを!」

  源十郎さんはつかつかと部屋に入ってくると、悟の体を僕から引き剥がす。

  「親父、何しやがる!」

  「うるさい! 大輔に何をしてるんだ!」

  「別にいいだろ。先輩は俺のものになったんだ」

  悟の言葉に僕を見つめる源十郎さん。

  「そうなのか?」

  「いや、そんなこと……」

  その言葉に、ホッとしたような表情を見せる虎親父。

  「大輔は違うと言っているぞ」

  「いいんだよ、これからわからせるんだから」

  「そんなことは許さん!」

  部屋中に響き渡る声で咆哮する源十郎さん。

  「大輔は初めに俺が手をつけたんだ! 例え息子と言えども、譲る気はない!」

  その迫力のある姿に、一瞬怯む悟。

  だが……。

  「うるせぇ! そんなことを言うなら、俺が一番最初に出会ったんだ!」

  2人はにらみ合いを始めてしまう。

  「……」

  僕はどうしていいかわからず、おろおろしていると……。

  「じゃあ、大輔に選んでもらおうか」

  いつの間に意識を取り戻したのか、頭にたんこぶを作った雄一郎さんが、間に入ってくる。

  「へっ?」

  「3人とも大輔を狙ってるんだ。このままじゃらちが明かない。となれば本人に選んでもらうのが一番だろう。……まあ、俺を選ぶことになると思うけどね」

  「いや、大輔の初めてをもらった俺を選ぶはずだ。もともとお前らがしゃしゃり出てこなかったら、相思相愛になるはずだったんだからな」

  「そんなわけねえだろ! 俺が一番大輔先輩と付き合いが長いんだ! ぽっと出の親父や兄貴よりも、俺が先輩を一番好きなんだ!」

  「……」

  「「「さあ!」」」

  3人が僕に詰め寄る。

  「「「一番好きなのは誰なんだ!」」」

  「ええと……」

  僕は一体、どうすればいいんだろう……。