「おはよう、黒木。
…酷い顔だな、大丈夫か?」
「……」
佐久間の言葉に、軽く手を上げて応える。
最近Playもしていないし、体調はすこぶる悪い。
それでも誰に会う気もせず、ただつまらない日常を過ごしている。
翔達に八つ当たりをしてから、一度も病院に行っていない。
翔達に会うのは気まずいし、千秋さんに会うのが怖かった。
「まぁ…そんな重く考えんなよ…
俺が言ってもアレだけどさ
すげぇ軽い言葉しか思いつかねーけど、そのうち戻るって」
ガン!
佐久間の言葉に、俺は自分の机の脚を蹴る。
「……黒木…」
俺は立ち上がると佐久間の机に片手を叩きつけ、佐久間の顔を覗き込んだ。
「……軽い言葉しか浮かばねぇなら、喋んなくていい
黙ってろ。」
俺の低い声に、佐久間は目を見開き、伏せた。
「…悪い……」
教室を出ていく俺の耳に残った佐久間の言葉に、俺は歯を食いしばった。
「お前、荒れてるな…」
学校を出ると、空は曇っていた。
朝は晴れていたのに、太陽を雲が隠している。
薄暗い世界。
でも俺の心よりは明るいだろうか。
俺の心は、ずっと泣いている。
あの日からずっと。
傷が癒えることなく疼き、痛み、新たに増える。
心が俺に問いかける。
〔どうして、どうして、どうして、どうして……〕
そんなこと俺が聞きたい。
どんなに聞いても、俺じゃ答えてやれない。
その声を無視してると、そのうち胸が痛み出すんだ。
まるでしくしく泣いてるみたいに。
…小さい頃の俺のように…。
勘弁してくれと思いながら、胸をさする。
ぼーっと歩きながら、心はどこにあるんだろうなんて考える。
胸?心臓?
でも、痛むのはいつだってみぞおちの上だ。
そこに心があるのかな。
行き先を決めず歩いていたら、いつの間にか千秋さんとよく行った喫茶店の前にいた。
せっかくだから入ってみる。
「いらっしゃいませ」
カウンターに座り、メニューを見ずに注文する。
「カフェオレで」
「はい。かしこまりました」
また、ぼーっと木の机を見ていたら、不意に声をかけられた。
「…今日は、彼氏さんは一緒じゃないんだね」
声を掛けてきたのは、いつも注文を受けてくれていた店長だった。
俺は暫く店長を見つめていたが、目を伏せる。
「…まーね」
「……お待たせ」
運ばれてきたものに俺は切なくなる。
いつも千秋さんが俺の為に注文してくれていた、パンケーキが、カフェオレと一緒に置かれた。
「……っ」
「…サービスだから、安心して食べてね」
顔を歪めた俺に、店長は優しくそう言って、1度だけ俺の頭を撫でる。
ぽんぽん。
そんな軽いスキンシップ。
なのに……
「……っ……」
涙が零れ落ちる。
ぽたぽたと頬を滑って机に落ちる涙を拭うことも無く、俺は暫く泣いていた。
店長は何も言わずに、優しく寄り添ってくれる。
久々の糖分は、俺の心に染み込んだ。
「…ぐす……ご馳走様でした」
「はーい、いつでもおいでヨシヨシ(。・ω・)ノ゙」
優しい店長はそう言って、俺の頭を撫でた。
俺は小さく頷いて店を後にする。
また行き先を決めず歩き出した俺の足取りは、心做しか軽かった。
続く