「黒木くんは、今千秋と住んでるんだよね」
食事を終えた俺は、千秋さんのベッドの傍で涼介さんと話していた。
「そうです」
「……黒木くんさえ良ければ、その…家に来ない?」
涼介さんの言葉に、俺は千秋さんから涼介さんに視線を移した。
「…本気ですか、?」
静かな病室に、信じられないというような俺の声は、思ったより大きく響いた。
「……俺も悩むけど…流石に未成年を家に一人にしておく訳にいかないでしょ…」
涼介さんは小さくそう言って、千秋さんを見つめた。
俺も千秋さんを見つめていたが、やがて俯く。
「……俺は……千秋さんと過ごしてた、あの家にいたい。」
今までも、一人の時間はあった。
あのマンションならセキュリティは万全だし、何かあれば千秋さんの部下が動いてくれる。
一番思い出のあるあの家で、千秋さんにおかえりと言ってあげたいんだ…。
「……そっか…
ならせめて、時々様子を見に行かせて欲しい。」
その言葉に、ようやく俺は頷いた。
少しして涼介さんは午後から仕事だからと帰っていき、交代に色々検査をしたいと入って来た医師は、また別の人だったけど、さっきの月守先生と苗字が同じだった。
なんでも兄弟だそうで…。
「月守 海斗だ。
さっそくなんだが、まずは採血とMRI検査をしたい。
血を見るとダメなら出ておいた方がいいが…」
海斗先生の言葉に、俺は静かに首を振る。
「大丈夫です」
「…そうか。」
「…ここ、押さえといてくれ。」
そう言われて小さめの脱脂綿を渡される。
言われた通りに千秋さんの腕を押さえていると、もう一人の月守先生が入ってきた。
「ごめんね、黒木くんに相談というか、提案があって」
そう言って愛斗先生は俺に、パートナーがいる人用のPlayサークルがあることを話してくれた。
「今、神代さんは昏睡状態で、黒木くんとPlayが出来る状態ではないから、黒木くんさえ良ければ身体に不調が出る前に、欲求を満たした方が苦しくないと思うんだけど……どうかな」
俺は、愛斗先生の言葉が半分くらいしか頭に入ってこなかった。
それでも、違う人とPlayをするってことは分かった。
「………」
Playは、Sub性を満たす上で必要なこと。
でも俺は、千秋さん以外とPlayをすることなんて考えられなかった。
「時間はあるから、ゆっくり考えてみて。
パンフレット置いていくね」
そう言って、愛斗先生はいくつかのサークルのパンフレットを置いて、海斗先生と病室を出ていった。
「………千秋さん」
ポツリと呟いた俺の声は、貴方の耳に届いているのだろうか…
「…寂しいよ……」
そう口に出したら、余計に寂しくなって、俺は千秋さんの手を握って泣いた。
千秋さんが起きていたら、泣き虫だねと困ったように笑うのだろう。
「っうぅ……起きてよぉ……泣」
神様。
俺はあとどれくらい我慢したら、千秋さんの声を聞くことが出来ますか
続く