オオカミは苦手ですか?

  今に思えば僕の人生はいいことなんて一つもなかった。若干13歳にしてこの言葉が出てくるくらいに波乱に満ちていたと自負している。

  まず両親が事故で亡くなった。まだ8歳のこと、自分の誕生日の準備をしていた矢先交通事故に遭ってそのまま帰らぬ人となってしまった。

  それから親戚の狼軌叔父さんの家に引き取られることに。けれど狼軌叔父さんは……人間では、なかった。

  獣人。人間と動物の特徴を併せ持った人種。犬や猫、トカゲやウサギなど、人間よりも種類も数も多い。

  狼軌叔父さんは狼の特徴を持った、狼獣人というやつだ。

  暮らしには不自由はしていない。けれども、この世において少数派というのは少なからず周りから疎まれるということは、少年時代から知ってしまった。

  僕が住んでいるところは人間が主に暮らす地域で、獣人の数は少ない。人間は人間の、獣人は獣人が暮らす街に住むのが世の中の常識。

  だから、獣人を育ての親を持つ僕は、同年代の子のみならず教師までもが僕を異物として見られるようになった。両親が亡くなるまでは、親しくしてくれたのに。

  親が自分と違う存在になったからって、そんなにおかしいことだろうか。

  そんな環境で長くいてしまえば、心根があらぬ方向に捻じ曲がるのは必然だった。

  学校には行かず、平日だろうが休日だろうがただ無意義に自室で引きこもる毎日。

  ベットの上で買ってもらったタブレット端末を弄る。部屋から出るのはお腹が空いた時かトイレに行く時くらい。

  人との繋がりはたまに叔父さんと一言二言話すのみ。静かで面倒でなくて、学校へ行くよりずっといい。

  でも、最近になって何をやっても満たされなくなった……。

  [newpage]

  「それは悠君が人との繋がりを求めているからだよ」

  ある日の夜、そんな事をふと叔父さんに漏らしてしまう。心配性の叔父さんのことだから、中々話が途切れることはなかった。

  「そんなわけないよ。誰かと居ても楽しくないし、みんなバカばっかりだよ」

  「う〜ん悠君は頭がいいからね〜。周りと学力の差でみんなと反りが合わないのか」

  「うん。でもいいでしょ、僕はただ騒がしいだけのバカにはなりたくないから」

  「そっか……」

  叔父さんは気難しい顔をしながらマズルに手を当てて考えてる。まただ。

  僕だってわかってる。なんて生意気で可愛くない子供なんだろうって。

  叔父さんも苦労しているだろう。

  「でもありがとね。ちゃんと話してくれてさ」

  「まあ、どういたしまして……?」

  その後はなぜかお礼を言われる。訳がわからない。

  「悠君とは、普段こうしてゆっくり話せないからさ。それに自分の話なんて滅多にしないから、叔父さん嬉しいよ」

  「まあ確かに、言われてみれば……」

  「それに、悠君は感情が顔に出やすいからな」

  「はあ⁉︎そんなこと、ないし……」

  「ほら、今も顔が赤くなってる。図星なんだよね」

  「…………」

  叔父さんから目を逸らして、そっと俯く。ほらどうした、そんなことしたら余計肯定してるんだぞ。

  「話を戻すけど、悠君は悠君のままで俺はいいと思う。無理してみんなと合わせてたら、いずれ悠君が壊れちゃう」

  「でもそれは、みんなだって同じだと思うな。

  「やっぱり、叔父さんは叶わないよ。とっても……良い人だ」

  「でもみんなは、叔父さんのことをまるで厄介者みたいに言うんだよ」

  「……それが本音か」

  「うん……僕、それが許せなくて……どうしようもなく居た堪れなくなって……」

  叔父さんのことを知ろうともしないで。やっぱり知らないって悪いことなんだ。知らないから好き勝手に言えて、好き勝手に妄想できる。だからバカは嫌いなんだ。

  「そっか、それは……俺が悪いよね。ごめんね、悠君」

  「な、なんでよ……叔父さんが謝る必要なんてないよ!悪いのはあいつらのせいで……」

  「でも、俺のせいで悠君がいらぬ心配をかけてる。俺、親失格だな……」

  「叔父さん……」

  「……悠君を引き取った時、通う学校とか、住む場所とか、色々悩んだよ。でもやっぱり、悠君が快適に過ごせるようにと考えた結果、今の環境に落ち着いた」

  「……でも、それは裏目に出ちゃったみたいだね。俺の存在が、悠君を快適な生活から遠ざけてしまった」

  「人間と獣人。二つの種族の壁がまだ健在だとは思わなかった。だからこれは、叔父さんの勉強不足が招いた結果なんだよ……」

  笑えるだろと狼軌叔父さんは、自虐を交えて苦笑する。

  分かっていた。叔父さんが僕に苦労をかけないよう毎日仕事に奮闘していたことも、引きこもっている僕を心配してくれていたことも。

  全て、全て分かっていた。それでも……。

  「叔父さんは……叔父さんは悪くないよ」

  今更何を言っているのだろう。

  散々悪態を吐いて、今度は理解者のふりか。

  目先の問題に逃げておいて、僕にそのセリフを言う資格は無い。

  そうかもしれない。けれどこれだけは叔父さんに、隠し事なしで話したかった。

  「僕、叔父さんが好きだ。親子としてじゃなくて……一人の男として……で……」

  ああ言ったぞ。

  何を考えているんだ。

  後悔する。

  でも嘘じゃない。

  どうでも良い。

  清々する。

  「悠君……叔父さん、いや。お前が俺のことをそこまで想ってくれていたなんてな。嬉しい……」

  「出来れば、俺を好きになった理由を聞かせてくれないかな?」

  「それは……」

  「ハハハ、悪いな。告白されたばっかだってのに、この質問は意地悪だよな」

  「じゃあ俺の方からも言うぞ。駄目だ」

  「え……どうして……」

  「だって考えてもみろ、血縁関係抜きにしたって年齢が離れすぎてる。俺だって今年で45歳だ」

  「酷な話だが、将来俺の方が先に逝っちまう。愛に年齢なんて関係ないって言い訳も無しだ」

  「それに俺が老いたら、俺に惨めな姿をお前は見続けることになるんだぞ」

  「そんな、僕には……狼軌叔父さんしかいないのに」

  「まあ待てよ。何もまだフるなんて言ってないだろ?」

  「じゃ、じゃあ……!」

  「ただし、お前に正式に恋人ができるまでの間……じゃあダメか。お前の場合『じゃあ一生叔父さんの恋人でいる』って言いかねないからなぁ」

  「せめてお前が中学高校卒業して、成人して……20代!20を超えるまでお前の恋人でいてやろう。それで良いな⁉︎」

  「叔父さん……ありがとう!」

  「(はあ、可愛い甥っ子の頼みとは言え、とんでもない要求を受け入れちゃったなぁ)」

  「(まあでも俺だってお前のこと……)」

  「じゃあさ早速、キス……する?」

  「キスか……いいぞ、こっちこい」

  「うん……」

  僕は立ち上がって狼軌叔父さんの前まで来て、叔父さんは座ったままで。マズルの先端まで顔を近づけて、湿った黒い鼻がくっ付くと。

  チュ……。

  二人の唇が触れ合った。その瞬間、叔父さんの濃縮された匂いが漂ってくる。長らく嗅いでなかった親しい人の匂い。

  それをもっと欲しくて、動かす唇を激しくする。叔父さんの口の周り、頬を口に含み、味わう。自分にこんな大胆なことができることになんの疑問んも抱かないまま、叔父さんは僕にされるがままの甘いひと時は過ぎていく。

  「っふう……中々上手だったよ。どこで覚えたのかな、こんなこと」

  「あえっと……それは……」

  「ふ〜ん、恋人に隠し事するんだ。そんな悪い子には、オシオキ……しちゃおっかな……」

  「え……」

  言い淀んでいるうちに、叔父さんは僕を抱き寄せて自身の膝の上に座らせた。

  一瞬逃げようとするも、僕と叔父さんの絶対に覆せない体格と力の差で僕の足掻きは許されなかった。

  [newpage]

  ふと気づけば叔父さんは今まで見たこともないようなニヤケ顔で僕を見ながら、僕の着ている服をゆっくりと脱がしていく。僕は何が何だか分からず、ただ何も言えず怯えてされるがまま。

  やがて下着を除いた全てを叔父さんに脱がされ、体のあちこちを撫でるように触る。叔父さんの手の平にある肉球や指先の爪が優しく肌を掠め、そのくすぐったさに身を捩る。

  「叔父さん……」

  「大きくなったな。ついこの間まで、あんなに小さかったのに。よしよし……」

  そう言って叔父さんは僕の頭を撫でる。引き取られたばかりの頃も、こうしてもらったことを思い出す。

  「さて、こっちはどうかな?」

  ふと叔父さんは好きなものを最後まで取っておいた子供のように心躍らせながら、僕のパンツに手をかけて……一気に脱がせた。

  「あっ、えっと、その……」

  そこには、僕が狼狽えなければならない原因があった。天を向いて屹立した、僕の逸物。ピクピクと小さく脈動して、僕の意思とは反して悦んでいた。

  「あんまり……見ないで……」

  「なんだぁ?こうして俺とエッチなことしたかったんじゃないか?」

  「それは……違う……」

  「そうやってかわいこぶっても無駄だぞ。叔父さんは知ってるんだからな。お前が自室に一人でこっそりとしていることを」

  「なんのこと……?」

  「こんなことだよ!ほーらシ〜コシ〜コ♪」

  すると叔父さんは僕の勃起した逸物を掴んで上下に扱く。突然の快楽に思わず僕は嬌声を挙げるしかなかった。

  「やだっ、叔父さん……僕、こんなの知らない……」

  「まだとぼけるか。これは毎晩お前がしてることだろう?良い加減白状しちまえ」

  「息子がいつ精通したかなんてちゃ〜んと覚えてんだから」

  何を言っても“お見通し”な叔父さんに、余裕がなくなった僕が辛うじて口にした言葉。

  「イジワル……」

  そんなことを言えば、叔父さんの言い分を認めてしまうことになる。

  「ハハハ、まあそう言うな。……俺だってお前の父親なんだ。俺に……父親らしいことをさせてくれ……」

  叔父さんは僕の逸物を離して、思いっきり抱きしめる。

  それから声に涙が交じり始めハリが無くなる。まるで何事にも動じずざっくばらんとしているいつもの叔父さんじゃないみたい。

  いや、むしろ……。

  「叔父さんも……苦しかったの?」

  そう言われると叔父さんは端を切ったようにこう言った。

  「……やっぱりお互い隠し事は出来ないんだなぁ。俺たちは……お互い素直になるべきだったな」

  そしてしばらく見つめ合って再び、唇を合わせる。

  「んっちゅ……んふ……ちゅ……あむ……」

  今度は唇をくっつけるだけじゃなく、口を開けて相手の口の中に舌を入れる一つ上の行為をする。

  僕がねだれば叔父さんは観念んしたようにそれに合わせる。しかし見よう見まねの背伸びは長くは続かず、やがてペースが叔父さんの方に軍配が上がっていく。

  「んむ!?……んぐ……むぁ……んん……ちゅむ……」

  人間の口と狼獣人である叔父さんのマズルの口の前では、文字通り子供と大人の差がある。狼の長く肉厚な舌が僕の口の中を蹂躙していき、息が持たなくなったかと思えば突然舌を抜き、すんでのところでまた再開した。

  僕は叔父さんのキステクに手も足も出なかった。

  「どうした?こんなことで根を上げちゃ、叔父さんの恋人は務まらないぜ」

  「お、叔父さん……どうして、はぁ、こんなに、はぁ……」

  「これでも学生時代は結構モテてたからな。伊達にお前より歳食っちゃいないのよ」

  説明になっていない気がするが、軽い酸欠で僕はそんな考えは露と消える。

  「さ、続きはお風呂でするぞ。ほら立った立った」

  「え、もう……無理」

  「ヘヘヘ、そんなこと言っていいのか?叔父さんの恋人になりたいんだろ?」

  叔父さんは僕を抱えてお風呂場へ連れられる。そして、浴槽の淵に僕を座らせるときていた服を手早く脱いでいく。

  脱いだそばから叔父さんの被毛から、これまで嗅いだこともない濃厚な叔父さんの匂いが漂ってくる。先ほどキスした時よりも、甘いような臭いような独特な匂いに僕は今更ながら自覚してしまった。

  「さてこっからが本番だ。覚悟はいいか?エロガキ……♡」

  叔父さんの目を細めた表情で確信した。僕は、叔父さんの獲物なのだと。

  その証拠に叔父さんの股間部には屹立した、雄のシンボルが鎮座している。

  僕もモノとは、カタチは似ていても大きさも太さも何もかもが違っていた。

  「このまま喰ってやる……」

  一歩一歩近づいて上から見下ろしてくる、叔父さんの顔をした飢えた狼。同時に、狼の逸物も大好物である人間を前にして我慢汁がヨダレの如く垂れていた。

  「ヘヘヘ、安心しろよ、そう無茶なことはさせねぇさ。ま、それでもお前が耐えれたら、の話だがな」

  「ほら、ゴムつけろ。やり方は当然知ってるよな、エロガキの悠くんよぉ……」

  乱暴に渡されたのは半透明で小さな一枚の包み。中には指輪くらいの大きさの輪っかに透明な膜が張り付いている。

  名前も用途も知らないわけじゃない、避妊具と言われているモノ。そしてコレを狼の逸物に付けろということは、僕が……情事の女役になれと言われているようなモノで。その事実に僕は、徐々に受け入れ始めている……。

  「ほらどうした。まさか知らないなんて言わないよなぁ?」

  あんな力も体の大きさも逆立ちしたって敵わない巨大な雄に異を唱えられるはずもなく、僕は二つ返事で了承せざるを得なかった。

  若干震える手で封を開けて、中身を取り出して狼の逸物に取り付けていく。

  熱い。それだけ目の前の狼が僕というご馳走を前にして興奮している証拠。

  下手なことをすれば何をされるか分からず、黙って作業をこなしていった。

  「流石だな。それの使い方も取り付け方もちゃ〜んと分かってたか。もしかしてお前が俺を掘る妄想でもしてたか?」

  「っ!……」

  「ハハハ、お前が俺を掘るなんて地球がひっくり返ってもありえねぇよ。もっともっと、俺より大きくなれたら……な」

  狼はガシガシと僕の頭を撫でながら嘲笑する。僕は恐怖よりも安心感を覚えた。

  「さあ今度は立って壁に手をつきながらお尻を突き出すんだ。俺を前でな」

  「分かった……こうかな」

  言われた通りの姿勢をする。狼からしたら、僕はご馳走のように見えるだろう。いよいよ僕を食べる準備が整い、僕は目を瞑り覚悟を決めた。

  「いいケツだな……キレイで、食べ応えがありそうだ。こんなにエロく育ちやがって……!」

  僕のお尻を両手で開き、しばらく観察したのちパチンと軽く引っ叩いた。本来感じるはずの痛みが感じず。代わりに電撃が走ったように快感が体全体に生じる。

  狼……愛する叔父さんがしたと思うと痛みや痴態は僕の脳裏には幸福感に変換されていく。

  もっと僕のお尻を弄んで欲しくて、ねだるようにお尻を突き上げた。

  叔父さんはそれを汲んでくれて、尻たぶを揉んだりさらに引っ叩いたりする。

  段々と強まっていく快感に僕は声を抑えることが我慢が効かなくなり、僕の嬌声がどんどん浴室内に響き渡った。

  「あっ、ああん!おじ、さぁん……!」

  「ハーッ、グルルルルル……!もう我慢できねぇ……」

  発情した雄狼がついに僕の腰を爪が食い込まんばかりに強く掴んだ。突然の痛みに僕はビクリと体を強張らせるが雄狼はそれが気に入らず、体を覆い被さり半ば体重をかけて動けないよう押さえつけた。

  これが狼獣人の本能なのかと思うも束の間、僕の太腿に真新しい記憶の熱を帯びた存在を感じた。チラリと見るとそこにあったのは半透明な薄いゴム膜に包まれた、長大な肉の杭。

  心なしか先ほど見て触った時よりもさらに大きくなっている。

  「足、ちゃんと閉じていろよ。いくぞ……」

  長大な肉竿はピッタリと揃えた僕の太ももの間を突き通し、僕の腰と狼の下腹部がくっつくと肉竿は引き、何度も繰り返していく。

  俗にいう素股。しかし獣人の膂力の前では、本物の情事に等しい行為であった。

  「フーッ!フーッ!やっぱり人間の柔らけぇ肌でヤると、ハァ、すっげぇ気持ちいい……!ハァ、フーッ!」

  雄狼の興奮は最高潮まで達し、腰の動きも比率して早くなっていく。

  パンパンパン、腰と腰とが水音混じりにぶつかる音と、肉竿が太腿に擦れるたびに甲高い声で嬌声を上げ続ける僕の声しか聞こえない。

  もう叔父さんのことしか考えられない……♡好き……好き……大好き……♡

  独りぼっちだった僕を引き取って、育ててくれて……。

  病院でわんわん泣いていた僕に手を差し伸べてくれて、その時の笑顔は今でも忘れない。

  叔父さん……叶うなら叔父さんとずっと一緒に……。

  「ハァぐぅ……!射精る射精る射精る!むっつりスケベなエロガキに種付けすっぞ!♡いいな⁉︎♡」

  「うん!いいよっ!叔父さんとの子供欲しいぃぃぃ!♡」

  「おぉぉ俺の種は濃いぞぉ!♡一回で3人は確実だぁ!♡」

  「イクゥゥゥゥゥゥッ!!!♡」

  あっ……♡叔父さんの逸物がピクピク震えながらまた大っきくなって……♡

  残り少ないマヨネーズの容器から中身を出し切るみたいな擬音をしながら、ゴムの中に大量に射精している。

  人間の僕とは違って数秒程度では濁流の勢いは終わらず、10秒、20秒、30秒経っても終わる気配がなかった。

  「……これで、俺とお前は恋人同士だ。悠、愛してる……」

  「僕も……」

  [newpage]

  「じゃあ、行ってきます」

  「本当に行くのか?」

  「うん。僕だって、変わらないと。叔父さん……狼軌に相応しい人にならないとね」

  「そうか……無理はするなよ。じゃあ」

  「うん。いってらっしゃい」

  スーツを着た叔父さんをドアの向こうまで送った後、自室に戻る。

  そして、ハンガーに掛けてあった制服一式を手に取って袖を通す。

  久しぶりに袖を通した制服は、卸たての匂いとちょっと窮屈な着心地を感じた。

  「いってきます」

  机の上に置かれた写真立てに向けてそう言って、部屋を後にした。