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ガルーラのゆりかご ~レンジャーの約束~

  女性ポケモンレンジャーのミサキは、保護任務のため自然保護区を巡回していた。

  その日の夕方。

  森の奥から弱々しい鳴き声が聞こえてくる。

  「……?」

  ミサキは足を止めた。

  草むらをかき分けると、一匹の子ガルーラがうずくまっていた。

  まだ幼いオスの子ガルーラだった。

  「ガル……。」

  身体には小さな傷があり、ひどく衰弱している。

  周囲には争ったような跡が残っていた。

  親ガルーラの姿はどこにもない。

  ミサキは静かにしゃがみ込んだ。

  「一人なの?」

  子ガルーラは不安そうな目で見上げてくる。

  答えるように小さく鳴いた。

  どうやら親とはぐれたか、あるいは失ってしまったらしい。

  ミサキはそっと手を差し出した。

  「大丈夫。」

  優しい声だった。

  「私が守るから。」

  その日から、ミサキは保護任務の合間に子ガルーラの世話を始めた。

  食べ物を探す。

  傷の手当てをする。

  夜は安全な場所を確保する。

  最初は警戒していた子ガルーラも、少しずつ心を開いていった。

  どこへ行くにも後ろをついてくる。

  ミサキの姿が見えなくなると慌てて探し回る。

  まるで本当の親子のようだった。

  ある日の昼下がり。

  ミサキが木陰で休んでいると、子ガルーラが元気よく駆け寄ってきた。

  「ガル!」

  その目が淡く輝く。

  ふわり。

  ハート型の光が舞い上がった。

  「え?」

  子ガルーラが覚えたばかりのメロメロだった。

  本来とは少し違う、未熟な技。

  しかしその光を受けた瞬間。

  ミサキの胸に強い感情が湧き上がった。

  守りたい。

  安心させたい。

  危険から遠ざけたい。

  まるで母親が子供に向けるような深い愛情だった。

  「どうしたんだろう……。」

  戸惑うミサキ。

  だが感情はさらに強くなる。

  すると。

  身体にも異変が起こり始めた。

  「えっ……!?」

  腕が重くなる。

  脚に力が満ちる。

  身長が伸びていく。

  全身が淡い光に包まれた。

  ミサキは驚いて立ち上がる。

  だが変化は止まらない。

  身体を柔らかな毛並みが覆う。

  耳が長く伸びる。

  手足は大きく力強く変わっていく。

  そして腹部に不思議な感覚が生まれた。

  お腹の前に袋が形成され始めたのだ。

  「まさか……。」

  変化はさらに続く。

  数分後。

  そこに立っていたのは一匹の大きなガルーラだった。

  堂々とした母ガルーラ。

  ミサキは水面に映った姿を見て息を呑む。

  だが恐怖より先に感じたのは。

  目の前の子ガルーラへの心配だった。

  「ガル?」

  子ガルーラが近づいてくる。

  不安そうな顔。

  ミサキは思わず身体をかがめた。

  すると子ガルーラは安心したように鳴いた。

  そして。

  当然のように腹部の袋へ飛び込む。

  ぽすっ。

  袋の中へ収まった子ガルーラは、ようやく安心したように目を細めた。

  「ガル……。」

  その姿を見た瞬間。

  ミサキの胸は温かな幸福感で満たされた。

  この子はもう一人じゃない。

  自分が守る。

  その想いが自然に湧いてくる。

  それからの日々。

  母ガルーラとなったミサキは、オスの子ガルーラと共に暮らした。

  危険なポケモンが現れれば前に立つ。

  食べ物を探す。

  疲れた子ガルーラを袋の中で休ませる。

  レンジャーとして人々やポケモンを守ってきた彼女は、今度は一匹の子ガルーラの保護者となった。

  夕暮れの草原。

  袋の中から顔を出した子ガルーラが楽しそうに鳴く。

  ミサキは優しく見守った。

  姿は変わってしまった。

  それでも。

  この子を守りたいという気持ちだけは、本物だった。

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