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嫁の親父のゴツい虎獣人に誘われて家に飲みに行った黒豹獣人が、ノンケ同士なのにさかってしまう話

  ☆

  「謙治くん、おかえり」

  「ああ、恭子。ただいま」

  仕事帰りの俺を出迎えてくれたのは、愛しの嫁さんだった。

  豹野恭子。

  俺の3つ年下の23歳の虎獣人。

  虎獣人にしては小柄で細身な身体は、黒豹獣人にしてはゴツめの俺とだと、まるで子供と大人のように見えるらしく、結婚式では友達連中にえらく冷やかされたもんだ。

  「今日は謙治くんの好きな肉じゃが作っておいたからね」

  「ありがとよ。……でも大丈夫なのか? そんなに動いて」

  俺の心配をよそに恭子はケラケラと笑った。

  「何言ってんのよ。ほんと心配性なんだから」

  そう言いながらさするその腹は、小柄な恭子には似つかわしくないほどに膨らんでいた。

  妊娠8ヶ月のその腹の中には、俺と恭子の愛の結晶が詰まっているのだ。

  「無理はするんじゃないぞ。家事するのがしんどかったら、家事代行でも何でも使っていいんだからな」

  「だから大丈夫だって。妊娠中はしっかり動いた方がいいって、最近のお医者さんは言ってるぐらいなんだから。それよりも……謙治くんの方こそ大丈夫? その……ずっとしてないから……」

  顔を赤らめながらそんなことを言う恭子。

  「私妊娠しちゃったから、全然相手出来ないし……」

  「馬鹿、そんな事気にするなよ」

  俺は笑って言う。

  恭子は俺の性欲が並外れて強いことを心配しているのだろう。

  結婚してから、嫁が生理の時以外は毎日やってたからな。

  それがもう、妊娠がわかってから一度もやっていないのだ。

  「なんだったら、そういうお店で遊んで来てくれてもいいからね。病気には気をつけて欲しいけど……」

  「あのなあ」

  俺は変に理解のある嫁さんに苦笑いする。

  「人を節操無しみたいに言うのはやめてくれ。それに……」

  俺は岩みたいにごつい恭子の親父さんの姿を思い浮かべる。

  「よその女と遊んだなんてわかったら、親父さんになんて言われるか……」

  あの厳つい虎獣人の親父さんは、一人娘の恭子を目の中に入れても痛くないほどに溺愛しているのだ。

  「それだったら大丈夫。お父さん、昔は遊びまくってたみたいだから。亡くなったお母さんもよく苦笑いしてたわ。まあ、相手をすると疲れるから外で遊んでくれる方が気が楽でいいとは言ってたけど」

  なるほど。

  恭子が女遊びに寛大なのは、両親の姿を見てきたせいなのか。

  「あっ、そういえば謙治くん」

  愛しの嫁さんが思い出したように言う。

  「お父さんが今度暇なときにうちに飲みに来ないかって。なんか高そうな酒をもらったから、一緒に飲みたいみたい」

  「そりゃいいなあ。じゃあ、週末でも行ってこようかな」

  「どうぞどうぞ。私は家でゆっくりしてるから、男同士友好を深めてきてね」

  ☆

  「親父さん、こんちわ!」

  ……相変わらず、潮の匂いがする家だな。

  自宅から車を30分走らせ、たどりついたのは嫁の実家。

  敷居を跨ぎながら、中に声をかけると、のっそりと巨躯の虎獣人ー虎原権三ーが玄関まで顔を覗かせた。

  「おお、謙治か。待ってたぞ」

  泣いてる子供も気絶するような強面の虎獣人が俺を見下ろして破顔する。

  決して端正とは言えないごつごつした顔立ちだが、男臭くて俺は格好いいと思っている。

  黒豹にしては大柄な俺を、容易く見下ろせるその分厚いガタイは、毎日の漁で作られたものなのだろう。

  電信柱よりも太い腕や足なんて、そうそう見られるもんじゃない。

  俺も肉体労働だからそれなりに鍛えられた身体をしているが、勝ち目なんか欠片もないはずだ。

  正直、恭子さんをくださいと挨拶しに行った時には、命懸けだったのを覚えている。

  あのごつい掌でアイアンクローでもかまされたら、俺の頭なんか風船みたいに破裂しちまうはずだ。

  だが、おどおどしていた俺に対して、親父さんは始終歓迎ムードで。

  なんでも一人娘だし、母親も亡くなってるから、早く誰かにもらってほしいなんて思っていたんだとか。

  

  『俺が言うのもなんだが、恭子は顔も性格も悪くねえはずなのに、なかなか彼氏ができなくてな』

  ……そりゃ、お父さんのせいじゃないですか?

  そんな言葉を飲み込んで、俺は愛想笑いをしたのを覚えている。

  そりゃこんな鬼みたいな虎獣人が父親だとわかったら、悪い虫も寄り付かないだろうよ。

  そんな親父さんは、男の子が欲しかったとかで、義理の息子になった俺をちょくちょく可愛がってくれている。

  漁で美味そうな魚がとれたら、謙治が好きそうだからとうちに持ってきてくれたり。いい温泉見つけたから行かねえかとか、仕事帰りに飲みに行かねえかなんてと誘ってくれるのだ。

  俺も体育会系のそんなノリは好きだし、何より男っぽい親父さんに憧れを感じてたから、はいはいと二つ返事で付き合ってきた。

  まあ、一緒にソープにでもいかねえかと誘われた時にはさすがに恭子の手前、お断りしたのだが。

  そう、親父さんはそのガタイに似つかわしく、性欲がハンパなかった。

  俺の数倍は凄い。

  夜だけではなく、早朝風俗だって当たり前。

  酔った拍子に、ここいらの風俗は完全に制覇しているなんて俺に自慢して、側で聞いてた恭子に冷たい目をされたぐらいだ。

  ただ、亡くなったお義母さんに悪いということで、馴染みの嬢は作らないようにしているらしい。

  そういう義理堅いところも、俺は尊敬してたりするのだ。

  ☆

  「ほれ、今日とれとれの鯛の刺身だ。おめえ、好きだって言ってたろ」

  居間に座って待っていると、親父さんは早速酒の肴とばかりに、台所から大皿に乗せた鯛の刺身と、湯のみ茶碗2つを持って来てくれた。

  「あ、美味そう……」

  肉厚に切られた刺身はつやつやと輝いていて、噛めば歯ごたえを感じられそうなのが見てとれた。

  「そりゃ、うめえさ。俺が釣ったんだからよ」

  似合わないウィンクなんかして、自信満々に言う親父さん。

  そのまま台所に戻ろうとするので俺は慌てて立ち上がろうとする。

  「あ、俺手伝いますよ」

  「馬鹿野郎。客に手伝わせられるかよ。おとなしく座ってろ」

  ニカッと笑う虎獣人はついでだとばかりに、アラで作った煮物のちゃぶ台の上に乗せた。

  「飯も炊いてるからよお。後で鯛茶漬けにでもしようぜ」

  「はい!」

  俺が頷くと、親父さんは満足そうな顔をした。

  「……どっこいしょ」

  俺の正面に座ると、脇に置いてあった一升瓶を引き寄せる。

  

  「こいつが今日の目玉でな。ほれ、珍しい酒だって、武隈にもらったんだ」

  ……ああ、あのパンダ獣人のおっさんか。

  よく親父さんとつるんでいる漁師仲間だ。

  えらく好き者の独身中年親父で、自分を風俗大王なんて豪語してるぐらい、あちこちで女遊びしているらしい。

  その癖、親父さんにはそろそろ新しい嫁をもらったらどうだ、なんて事を言って、しきりに再婚をすすめたりする。

  遊んでるわりにそういうところは古風というか、亡くなったお母さんに一途な親父さんはそんなつもりはさらさらないようだけど。

  そんなパンダ獣人がくれた、『虎殺し』と書かれているその瓶には、少し生成色の液体が入っていた。

  「なかなか手に入らない酒らしくてよ」

  酒の味を想像してか、相好を崩した虎獣人。

  「そうなんですか? でも親父さん、一升瓶1本だけなら俺なんかに声かけなくても自分だけで飲んだ方が……」

  うわばみの親父さんにとっちゃ、一升瓶くらい訳なくペロリと飲めてしまうだろうに。

  俺が疑問に思ってそう言うと、虎獣人は、少し照れたような顔をする。

  「いや武隈がな、『珍しい酒なんだから、1人で飲まずにお前が可愛がってる奴と一緒に呑んでみろ』って言いやがってよ。『きっと良いことあるぜ』って。あいつはキャバクラかなんかの嬢の事考えて言ったんだろうけど……誰かと呑むなら、おめえしかねえかなって……」

  俺はつい、嬉しくなってニマニマと笑ってしまう。

  きっと息子のように思ってくれているのだ。

  ……尊敬する親父さんがそんなふうに思ってくれているなんて。

  俺は照れ隠しに茶化すように言ってしまう。

  「親父さん、俺の事かわいいって思ってるんすか?」

  「ば、馬鹿言え!おめえみたいにごつい雄がかわいいわけねえだろ!」

  顔を真っ赤にして怒り出す虎獣人。

  父親を早くに亡くしたから、こういうやり取りをするのが、俺にとっては嬉しくて仕方なかった。

  ☆

  とくとくとく……。

  湯のみ茶碗に酒を注ぐと、清酒特有の甘い匂いに混じって爽やかな果実のような匂いも感じる。

  「なんかいい匂いしますね」

  「ああ。なんだろな、これ」

  匂いを嗅ぐだけで身体がリラックスするような気持ちになってくる。

  「じゃあ……生まれてくるおめえたちの子供に……乾杯」

  無骨なガタイに似合わず気の利いた台詞を呟くと、湯のみ茶碗を突き出す虎獣人。

  慌てて俺も茶碗を持ち上げると、かちりっ、と小さな音が重なる。

  「……くうっ。これ無茶苦茶度数高いな」

  一息で湯のみを干した親父さんが、驚いたような顔をする。

  「ほんとですね。これ焼酎よりきついなあ」

  濃いアルコールが胃の腑に染みていくのがわかる。

  「でもなんか飲みやすいですね」

  何か混ぜられているのか、爽やかな酸味と甘さが強く感じられた。

  「ああ。これなら酒を飲みなれねえ奴でもスイスイ入っちまうだろうな」

  苦笑いする虎獣人。

  「武隈の奴、いつもこれで女を酔わせて襲ってるんじゃねえのか」

  「……ありえますね」

  「捕まるような事すんなよと言っておかねえと」

  それでも、その味が気に入ったのか、親父さんは手酌で焼酎を注ぐ。

  「おめえもまだ呑むだろ」

  「はい」

  俺も親父さんほどではないが、それなりに酒は強い。

  俺は頷くと、瓶の口を差し出す親父さんに湯飲みを突き出した。

  「そういや親父さん」

  「なんだ?」

  「亡くなったお母さんが妊娠したときって、どんな感じだったんですか?」

  度数が高い酒を呑んでいるせいか、酔いの回りが早いようだ。

  ふわふわした気持ちになり、いつもよりも口が滑らかに動く俺は、前から聞きたかった事を尋ねてみる。

  「いや、家事を手伝ったりした方がいいのかなって。恭子は大丈夫だって言うけど、俺、ガキなんか出来たの初めてだから、どうすりゃいいのかわからなくて。だから親父さんの時はどうだったのかなって……」

  「俺の時か……」

  親父さんもこの変わった酒に酔ったのか、珍しく赤い顔をしていた。

  俺の質問にほろ苦い顔をする虎獣人。

  「遊び回ってたなあ」

  「へっ?」

  素っ頓狂な声を出した俺を見て、罰の悪そうな顔をする虎獣人。

  「いや、さすがに身重のかかあと交尾するわけにはいかねえだろ。だから、外で遊んだ方が、かかあのためになるかと思ってよ……」

  「……」

  さすが親父さんらしいと言うか……。

  「お母さんには何も言われませんでしたか?」

  「俺が性欲の塊みてえな奴だって事はあいつも知ってるからよぉ、外で済ましてくれた方が楽だとは言われたよ。ただ……」

  「ただ?」

  「あいつが出産するときに傍にいなかったのは、事あるごとに責められたなぁ。謙治、おめえも恭子が子を産むときにはぜってえ付き添わねえと、死ぬまで恨み言言われるぜ」

  「……肝に銘じておきます」

  先達の教えをしっかりと受け止めながら、俺は湯のみ茶碗をぐいとあおる。

  五臓六腑に染み渡る酒の感触に俺は目をつぶって感じ入る。

  「……しっかし、なんか暑くなってきたよな。この酒のせいか?」

  そんな親父さんの言葉に、俺は目を開く。

  幾分ぼんやりした視界に厳つい虎獣人が立ち上がり、服を脱ぎ捨てる姿が映った。

  上半身は裸になり、身につけているのは前垂れのある褌だけ。その中央は心なしか盛り上がっているように見えた。

  しかし、分厚い身体だ。

  黄色と黒の体毛の上からでもわかる、発達した筋肉。

  長年漁師として身体を酷使してきた賜物なのだろう。

  そんな雄臭い身体を俺はついじろじろと眺めてしまう。

  男の裸になんか、なんの興味もないはずなのに、そのごつい身体から目が離せないのだ。

  「よっこいせ、と。謙治、おめえも暑いだろ。脱いだらどうだ」

  「え……あ、はい……」

  俺は親父さんの言葉に従いふらふらと立ち上がると、同じように服を脱いだ。

  身体がふらつくせいで、なかなかうまく脱衣出来ない。

  1枚1枚時間をかけてゆっくり脱いでいく様を虎獣人は、湯のみ茶碗を持ちながら、穴が開くほど真剣な目で見つめていた。

  まるでストリップをしている女を見ているように。

  「……」

  その熱視線を感じると、なぜか身体が熱くなるような気がした。

  「な、なんすか親父さん。そんなマジマジと見られたら照れるじゃないですか」

  ボクブリ1枚になった俺は、冗談めかしてそんなことを言うと、思いがけずに動揺したような声を出す虎獣人。

  「や、すまねえ。つい眺めちまったよ。なんでだろうな。男の裸になんざ、興味なんてねえのによ」

  苦笑いをしながら酒を呷ろうとしたその手から、するりと湯飲みが落ちた。

  「げっ」

  びしゃっ……ことっ。

  そのたくましい胸を濡らしながら、畳に転がる湯のみ茶碗。

  「あっ、いけない」

  俺は慌ててティッシュを掴むと、その濡れた胸を拭こうとする。

  ……格好いいよなあ。

  とても俺では敵わない、発達した分厚い筋肉をうちに秘めた黄色と黒の体毛を拭いながら、上目遣いに見上げていると……。

  ごくり。

  その太い喉仏がゆっくりと上下した。

  「おめえ……近くで見るとなかなかかわいい顔してるじゃねえか」

  「えっ……」

  降り注ぐ声に俺は驚く。

  虎獣人の顔は発情したような表情をしていたのだから。

  それは完全に雌を狙う雄の顔。

  俺のことを雌のように見ているのだ。

  だが、俺には嫌悪感は感じられなかった。

  それどころか、親父さんのそんな視線を受けると、身体の奥深くがジンと疼くような気さえしてしまう。

  なぜだろう、まるで自分自身が雌になってしまったようになるのだ。

  強い雄に身を任せてしまいたいと。

  それはまずいと心のどこかで感じたのだろう。

  俺は慌てて虎獣人から身体を離そうとして……。

  がしっ。

  俺の数倍はある、太ましい腕が俺を捕まえた。

  「お、親父さん……」

  発情した雄は、じっと俺を見つめる。

  「なあ、謙治。……キスしてもいいか?」

  熱に浮かされたように、そんなことを呟く親父さん。

  そんなこと、許されるはずがない。

  俺と親父さんは男同士で、ホモでもなんでもない。

  しかも、嫁の父親と婿の関係なのだ。

  だが、本能が理性を駆逐してしまう。

  ……キスしてほしい。

  ……強い雄に無茶苦茶にしてほしい。

  なぜか、そんなことを考えてしまうのだ。

  「……はい」

  俺はつい、頷いてしまう。

  「そうか」

  にやりと笑う雄臭い虎獣人は、俺の頭に手を伸ばすと、マズル同士を重ねていく。

  んん……。

  かさついた唇の感触。

  そして、お前は俺のものだと言わんばかりの、強引な口づけが開始される。

  ぬちゅっ、じゅるっ、ぐちゅ……。

  ……ああ。

  俺はされるがままに、親父さんのキスを受け入れる。

  舌先で口の中を掻き回されるたびに、俺の身体は痺れ、昂っていく。

  そのゴツイ身体を両腕で抱きしめ、もっともっとと言わんばかりにしがみつくのだ。

  ぬちゅん。

  親父さんが唇を離すと、名残惜しそうに銀色の糸が二人を繋いだ。

  「なんだ、雌みてぇな顔しやがって。そんなにキスが気持ちよかったか?」

  「……気持ちよかったです」

  恥ずかしげもなく口にする俺を見て、その興奮は頂点に達したのか。

  「たっぷり可愛がってやるからよ」

  鼻息荒くそう告げる虎獣人は、その場に仁王立ちになると、褌をぐいと横に寄せながら、体を起こした俺の前に腰を突き出した。

  そこにはネコ科獣人に特有のトゲにまみれたデカい逸物が、先走りにまみれて鈍く光っていた。

  ……でけぇ。

  そこまでデカい逸物を、俺は拝んだことはなかった。

  その太竿は、小柄な雌の腕ほどもあるだろう。

  相当使い込んでいるのか、まるでなめした皮のようにてらてらと鈍く光る肉棒。

  俺だってそこそこのものを持っているが、まるで勝ち目なんかなかった。

  「ほれ、可愛がってほしけりゃ、ご奉仕しろよ」

  鼻先に持ってこられた亀頭の先端からは、とろりと先走りが垂れ落ちる。

  親父さんは、俺に興奮しているのだ。

  そう考えたら矢も楯もたまらなかった。

  俺はそれが雄の逸物だというのに……むしゃぶりついてしまう。

  じゅるっ、じゅるっ、ぬちゅっ、じゅる……。

  

  口の中に広がる雄臭い味。

  いつもならそんなもの反吐が出るほど気持ち悪いと思うはずなのに、俺はたまらなく興奮していた

  ……雄の味だ。親父さんの味だ。

  ざらつく舌で、無数にトゲのあるいちもつを丹念になめしゃぶる

  

  「そんなにがっつきやがって……」

  親父さんはその掌を俺の頭に乗せると、手荒く掻き回す。

  その荒っぽい感触が、俺の心を沸き立たせる。

  「うめえか? 俺のちんぽ、うめえか?」

  「うまひ……うまひです……」

  俺は太竿を咥え込んだまま、必死に頷く。

  「よしよし。じゃあ、俺もおめえを可愛がってやるよ」

  じゅるんっ。

  口から抜けた逸物が名残惜しい。

  俺は物欲しげな顔で虎獣人を見上げると、親父さんはにちゃりと、今まで見せたことのないような淫猥な表情を見せた。

  「なんだ。すっかり雌の顔になっちまったじゃねえか。そんなんで、よく恭子を孕ませられたもんだ」

  「あ……」

  その言葉に、俺の脳が一瞬正気を取り戻す。

  「そ、それは……」

  俺は雄なんだ。こんなことをしては……。

  だが、そんな逡巡は瞬く間にかき消えた。

  いつの間にか俺を押し倒していた親父さんが、そのざらついた舌で俺の乳首をなぜたから。

  ぞろりっ。

  「ひっ、ひいいいいっ♡!」

  それは紛れも無い、雌の泣き声だった。

  全身にゾクゾクと走る快感の嵐に俺は身体をぶるぶると震わせる事しかできなかった。

  ……なんで。

  ……なんでこんなに気持ちいいんだ。

  自分の乳首なんてろくに触ったことなかったのに、舐められただけでおぞましいほどの快感を巻き起こしてしまうのだ。

  「なんだ、謙治。おめえこんなとこが感じるのか?」

  猫がネズミをなぶるような目で親父さんは冷たく言い放つ。

  「ち、違うんです……」

  「何が違うんだ?泣いちまうぐれぇ気持ちよかったんじゃねえのか?」

  「それは……」

  俺は泣きそうな顔で首を振る。

  「嘘をつくんじゃねえ。ここだってみっともねえぐらい濡れてるじゃねえか」

  そう言う虎獣人の手が俺の股間に伸びる。

  「あっ」

  度を越した快楽のせいか、俺のちんぽはすっかり縮こまっていた。

  皮が半分以上亀頭にかかり、そこに溜まった先走りがとろとろと流れているのだ。

  ぐちゅっ。

  そんな俺のちんぽを見栄剥きするように親父さんが剥くと……。

  「おおおおっ♡!」

  どろっどろっ……。

  俺のザーメンが親父さんの手を汚した。

  男の手でたったひとつまみされただけだと言うのに、俺はイッてしまったのだ。

  「おいおい……」

  呆れたような声を出す虎獣人の顔は嗜虐心で満ちていた。

  「大して勃ちもしねえのに、イッちまうのかよ。しかも男に触られてよぇ」

  「すんません、親父さん、すんません」

  「許せるわけねえだろうが。おめえホモ野郎だったのか?」

  「ち、違います。俺、女が好きで……」

  「じゃあなんで、俺に触られてイッたんだよ」

  「わかんない……わかんないです……」

  俺の顔は恥辱と惨めさでぐちゃぐちゃに歪められていた。

  涙がボロボロと頬を伝い、畳を濡らす。

  そんな俺を見て、虎獣人はにやにや笑った。

  「そんな雄に恭子は任せられねえなぁ」

  「そ、そんな……」

  「当たり前だろ。腹の子供だって、本当におめえが孕ませたのか? こんなに雌みてえな身体してよ」

  そう言うなり、虎獣人の太い指が俺の乳首を捻りあげた。

  「あああああっ♡!」

  途端に脳に走る、とてつもない快楽。

  俺は身体をのけ反らせてしまう。

  「なあ、これでも雄だって言い張るのか? 誰が見たって雌じゃねえか。恭子の旦那とは認められねえ」

  「……俺、俺」

  快楽で混乱した俺は虎獣人の言うことを鵜呑みにする事しかできなかった。

  ……俺は雄なんかじゃない。雌なんだ。

  ……俺は恭子に相応しくないんだ。

  もう俺は何も言うことはできなかった。

  「うう……」

  ただしゃくりあげ、目の前の厳つい虎獣人を見上げるだけ。

  「よしよし」

  そんな俺の頭を撫でながら、親父さんは言い聞かせるように囁く。

  

  「心配すんな。その分俺が可愛がってやるからよ」

  「あ……」

  俺は親父さんを見上げる。

  「お、親父さん……」

  「馬鹿野郎。親父さんじゃねえだろうが。権三さんと呼べ」

  「権三さん……」

  「そうだ。今日からおめえは俺の雌にしてやる。恭子と別れて、俺の囲い者になれ」

  強引なその言葉が、俺の心に溶け込んでいく。

  そして、考えられないほどの幸福感が心を満たしていくのだ。

  ……俺は権三さんの雌なんだ。

  俺はたまらずその身体にしがみつく。

  「じゃあ、おめえの雌穴を堪能させてもらおうか」

  権三さんはそう言うと、俺のザーメンで濡れた掌で軽く太竿をしごいた。

  ぬちゅっぬちゅっ。

  どす黒いいちもつに黄ばんだザーメンがまとわりついて、卑猥な彩りを見せた。

  どんっ。

  仰向の俺の上に覆いかぶさるように、畳に手を突いた虎獣人。

  足で器用に俺の股をこじ開けると、鋼鉄のような硬さの肉槍を俺の雌穴に押し付けた。

  「……おめえは俺のもんだ」

  酒臭い息と共に、決定事項を俺に告げる虎獣人。

  それは真面目な表情で。

  本気で俺を自分のものにしようと考えているのだ。

  その雄臭い言葉だけで、俺は脳イキしてしまう。

  じゅん、と雌穴が濡れるのがわかる。

  その腕ほどもある肉棒を受け止めるために、身体から力が抜けていく。

  親父さんの覚悟に俺は応える。

  ……俺は親父さんのものなんだ。

  「……権三さん……好きです。俺を孕ませて……」

  もう、言葉はいらなかった。

  あるのはケダモノの肉欲だけ。

  「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

  がちゅんっ!

  「ひぎいいいいっ♡!」

  気持ちいい。

  気持ちいいのだ。

  戸惑うようにうごめくにく壁を押し広げ貫いていく肉の槍。

  それは身体が壊されていくような感覚と共にそれを上回る快感を俺に与えた。

  「んあああああああああああ♡♡!!」

  まさに内臓を犯されているというのが正しい暴虐は俺を快楽の渦に叩き込むのだ。

  ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ……。

  自分ではない誰かの身体が、自らの身体を支配する感覚。

  それが、これほどまでに気持ちいいなんて。

  ……これが、これが雌の快感なんだ。

  どぷっ、どぷっ……。

  感極まった俺は、メスイキをしながら射精を繰り返す。

  だが、虎獣人はそのぐらいでは許してはくれない。

  雁の張った亀頭には小さなトゲがびっしりと張り巡らされていて、それで俺の肉襞をえぐるのだ。

  ぐちゅっ……ずるずるずる……。

  「ひぎいいいい♡♡!」

  貫かれる時はまだいい。

  引き抜かれる時に肉襞に引っ掛かったトゲが、甘い、甘すぎる快楽を俺の脳に伝えてしまう。

  ぶちぶちと襞が潰される感触に、俺は悶える。

  「いや、いやだああああっ♡♡!」

  だが、目の前の発情した雄が組み敷いた雌を逃がすはずがないのだ。

  がちゅんがちゅんがちゅんかちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんがちゅんっ!

  目を血走らせ、ひたすら腰を振るその姿は、ただただ雌をはらますことを目的とする雄でしかなかった。

  雌の身体が壊れようがかまわない。

  ただ種付けをして子孫を残すための、身勝手な交尾。

  なのにどうして、俺はこんなにも感じてしまっているのだろう。

  脳に焼き付いたこの快感を、俺は二度と忘れることはできないはずだ。

  それどころか、これなしでは生きていけない。

  だからこそ俺は叫ぶ。

  「くださいっ♡! 権三さんの子種ぇ♡、俺にくださぃぃぃっ♡♡!」

  「はぁはぁ……くれてやるよ。俺の子種汁、たっぷりくれてやるからよ……」

  ごちゅんごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅごちゅっ、ごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつごつっ!

  滝のような汗を流しながら、虎獣人は雄叫びをあげた。

  「うおおおおおおおっ! 謙治っ、謙治孕みやがれっ! 俺のガキを孕みやがれええっ!」

  びゅるっ、ぶばばばばばばばばばばばばばばばばぱばっ!

  まるで蛇口が壊れたような勢いで放出されて虎獣人のザーメン。

  「ん”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ♡♡!!!」

  どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ……。

  腹が膨らんでいく感覚に俺は悲鳴を上げる。

  熱く粘っこい雄汁は俺の肉襞の隅々にまで拡がっていく。

  ……孕ん……じまった。

  こんなに濃い種をつけられて、孕まないわけがない。

  「……権三、さん」

  だが、虎獣人の獣欲はおさまることを知らなかった。

  「まだだ。まだまだ……」

  そう唸ると、俺の身体を掴んだまま、再度腰を抜き差しし始めたのだ。

  俺の記憶はそこで途切れてしまっていた。

  ☆

  「馬鹿野郎っ! なんちゅうもんをくれたんだっ!」

  聞き慣れた虎獣人の凄まじい怒鳴り声で俺は目を覚ました。

  「いでっ……」

  途端に頭を襲う凄まじい痛み。

  二日酔いというか、悪い混ぜもの入りの合成酒でも呑んだ明くる朝のような感じだった。

  「んん……なんだ、これ……」

  それでもなんとか身体を起こした俺の目に入ってきたのは、じっとりと湿った畳と、まるで孕まされたように膨らんだ己の腹。

  

  「あ……」

  昨夜の情事が蘇り、俺は顔が青ざめる。

  ……俺、親父さんとヤッちまった。

  そら、嫁に女遊びしてもいいと言われたけど、こともあろうに相手が親父さんだなんて。

  呆然としたままの俺の目に入るのは、電話口で怒鳴る虎獣人。

  部屋の中には、むせるほど青臭い匂いが立ち込めていた。

  「なにぃ? 媚薬入りの酒だとぉ? だからかわいい奴と一緒に呑めと言っただぁ? 馬鹿野郎っ! なにくだらねえことしてくれてんだっ!」

  きっと電話の向こうにいるのは、友達のパンダ獣人なのだろう。

  

  「俺がいつまでも独り身だから発破をかけようとした? なんで万年チョンガーなお前に心配されなきゃいけねえんだっ! なに、寂しそうな顔してただと? 余計なお世話だっ!」

  「……」

  つまりこういうことなのだろう。

  いつまでも再婚しない親父さんを心配した武隈のおっさんが、気に入ってる嬢と再婚できるようにと、媚薬入りの酒を渡して、2人で呑むように言ったのだ。

  かわいい奴と一緒に呑めと。

  それを勘違いした親父さんが俺と呑むことにしてしまったのだ。

  『権三さん……好きです。俺を孕ませて……』

  夕べ、交尾の時に囁いた言葉を思い出して、俺は赤面する。

  ……なんちゅー事を言っちまったんだ。

  というか、こんなことが嫁にばれちまったらどうなることか……。

  ……一生、頭が上がらなくなっちまう。

  「手ぇ付けちゃいけねえ相手に種付けしちまったじゃねえか! どう責任とってくれるんだ! 結婚すればいい? 出来るかそんなもんっ!」

  電話口で怒鳴り続ける虎獣人の声を聞きながら、俺はこの秘密は墓場まで持って行かねば、と心に決めたのだった。

  ……でもあの快感、忘れられっかな。

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