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十二獣国記(6)

  第6章 最後の選択

  朝を迎えた。今は隈国を出発し猜国に向かっている。今日は大会があるのだが各国の王様が全員集合するので優勝出来るか不安だった。

  「そういえば昨日言ってませんでしたね…個人戦なのかチーム戦なのか。僕はチーム戦がいいです…。」

  「そうだな。個人戦だったら達也とも闘うことになるんだもんな。俺もチーム戦がいいと思っている。」

  「クロロ…達也から離れろ。俺の伴侶になるんだぞ?」

  「無理だ。今離れたら達也が落ちるだろ…。猜国に着くまで我慢してくれ。」

  今僕はクロロさんと一緒に騶虞に乗っていて…しかも抱かれながらだったのでシロンに文句を言われていた。ジオンさんはというと巻き込まれたくないようで2人の会話に入ってこない。猜国に着いたら話しかけてみよう。

  「お!やっと見えて来たぞ。」

  猜国は本当に山に囲まれている。一度訪れていたら移動魔法で行けるけど…そうでなければ騎獣で来ないといけないらしい。猜国に着くと楽しい音楽が流れていて屋台が立ち並んでいる。大会があると各国からいろんな種族の獣人達が訪れる。それ以外は殺風景な感じになるとか。特に犀獣人は気性が荒いとかで…シロン達でも行くことは滅多にないそうだ。

  「大会はコロシアムでやるそうだ。ここまで来たはいいけどお腹が空いてきたな…。達也の分は俺が払ってやるがシロンとジオンは自腹で払ってくれ。」

  クロロさん…そこまでしなくてもいいのに…。しかし断っても聞かないので素直に頷いたらシロンが眉を顰めていた。相変わらずジオンさんは会話に入ってこないけど何か考え事をしてるのかな?

  「ジオンさん?考え事ですか?」

  「いや、今は放っておいてくれ。」

  ジオンさんは先に行ってしまった。一人で行動するのは良くないけどとりあえず彼が何か言ってくるまで待ってみようかな?

  「なんだあいつ…ま、いいか。クロロ、あまり食べ過ぎるなよ。それで何かあったら困るからな。」

  「俺だけに言うな。お前こそ大喰らいな癖に…。」

  二人が喧嘩している間にミズキさんとアオバさんが僕の所に寄ってきた。

  「二人は相変わらずですね…こんな所まで来て喧嘩してほしくないですよ。あの方達より私の所に来てもいいんですよ?もし優勝できたら…執事としてお願いしてもいいですか?」

  「それなら俺もだ。達也と一緒にいたいと思ってたんだ。アオバと同じこと考えてるとは思わないだろ?他の王様達もみんな達也といたいらしいぞ。」

  みんな僕のことを…ただ親密に出来てない王様もいるので優勝されたら困るかも。僕はとりあえずシロン達のチームに勝ってほしいと祈った。

  「今回の大会はチーム戦だそうですよ。メンバーは三人です。勿論達也さんも出ますよね?」

  「は、はい。でも…三人ですよね?二人はもうチームを組んだんですか?」

  「まだだ。三人目を探してるんだけどな…多分彪王、隈王、宍王で出るだろうから達也は別になるな。俺達とチームにならないか?他の奴らも三人目を探してるんだがその中で達也達に目をつけてたんだ。四人で旅してるのはみんな知ってるから…チームを組むのに誰か一人省かれるから喧嘩しているかもしれないと予想してたんだ。それで早く見つけてチームを組もうと思ったんだ。」

  「…ですがこの大会は獣人限定だそうですよ。達也さんが獣人だったらよかったんですけど…。変身の魔法は聞いたことはありますが使えるのはほとんどいないですね…ですが達也さんなら出来るのではないでしょうか?隈王から受け取った魔法の指輪を使えば或いは…ですけど。」

  指輪の使い方はまだ分かってる訳では無い。今まで使ったのは移動魔法、魔物を消す魔法くらいかな?因みに盗賊に襲われた時に使った魔法…宍国の図書館で調べて見たらちゃんと載っていた。この魔法はエーテリオンと言うらしい。これは魔力を多大に消費するだけでなく回数も四回という制限がある。更に四回目を発動させると自分自身が消滅すると書いてあった。それで僕がこの世界に来た記憶が全てなくなり元の世界にも戻れなくなるとか。もう既に三回使っているのでなるべく使わないようにしないと…このことはシロン達には知らせていない。アオバさんが言った変身の魔法もその時に調べていた。これは魔力は消費しない代わりに使ったその日だけ元に戻れなくなるらしい。

  「僕…何に変身したらいいですか?」

  「そうですね…達也さんだったら犬が一番いいと思いますよ。その中で柴犬がいいと思います。」

  「はぁ!?達也だったら狼だろ!?」

  2人は口喧嘩を始めてしまった。犬も狼もいいけれど…僕はそのままの姿で出場したかったな…。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  いよいよ大会が始まる。しかしチームが二十とかなりあるので予選を行い半分の十チームに絞るらしい。僕はというと人族ということで結局出ることは出来なかったが観戦することなら出来るそうだ。(変身魔法を使ったけど結局バレてしまった。)シロンはクロロさんとジオンさんでチームを組んで出場するそうだ。僕も出場したかったな…。そんな僕はというと観戦席…ではなく何故か監獄に入れられていた。コロシアムに来た時シロン達と別れ観戦席に行こうとしたところ後ろから襲われたのだ…そして今に至る。そこは猜国の王様がいつも座っている玉座のあるところ。まあグレンさんも大会には出場するので逢えるのは終了後である。代わりに執事さんがそこに立っていた。

  「達也様…ですね?すみません。貴方のことはグレン様から聞いております。ここに連れてきたのは私でございます。グレン様に内緒で独断でやりました。実はというとお願いがありまして…本来なら人族は出場出来ないのですがあることをしてほしいのです。」

  「といっても…僕は何をすればいいんですか?」

  「貴方には出場者の回復をしてほしいんです。怪我人が沢山出てしまうため応急室が満室になるかもしれないと思うのです。回復薬は沢山お作りしておきましたので…こんなこと頼んでしまってすいません。」

  「それくらいなら…シロン達には逢いたいですし…。」

  「ありがとうございます…。それから食事も作れるなら昼休憩で食事を提供してほしいのですが…。」

  好き放題言うな…。まあ出来ることなら全部引き受けてもいいと素直に頷いた。執事さんはとても嬉しそう…自分で言ってしまったのだからやるしかない。

  「さて…まずは調理場に行きましょう。達也様には出場者のための食事を作ってもらいます。貴方は…何か作ったことはありますか?」

  「いえ…ですが人族の世界で自炊はしてましたので作るのは得意ですよ。」

  「ではここに書き留めたメニューを全て作ってもらいます。私もお手伝いします故、一緒に頑張りましょう。。」

  出場者は総勢十チーム。チームは三人ずつだから三十人分の料理を作ることになる。ただ…みんな獣人なため人族の三倍の量を作らないといけない。これは重労働だけどやると言った以上はやるしかない。執事さんは僕を監獄から出すと調理室まで案内する。そこは調理器具は勿論全てのものが大きい。倉庫にある材料も相当な量で…しかし今回は料理人がいなかった。というのも大会の間は来なくてもいいと言われているらしい。なのでこの時は執事さんだけが料理を作っているとか。

  「人族にしては手際がいいですね…これなら時間内に出来そうですね。貴方に頼んで良かったです。」

  全部の料理が出来上がったのは丁度最初の種目が終わった頃。これだけあればみんな満足することだろう。

  「ありがとうございます…ではまた監獄に入ってて下さい。貴方はこの大会の賞品なんですから。大会で優勝したチームに引き渡すことになっております。」

  王様のいるチーム以外が勝ったらどうするんだろう…そこは多分考えてないんだろうな。グレンさんにさえ内緒にしているわけだからその時は素直に受け入れるしかないか…と溜息をつく僕だった。[newpage]

  第一試合が終了して選手達が休憩に入る。因みに試合は三試合あるそうで…その間に選手が負傷して出場出来ない時はその場で失格になるそうだ。食堂に次々と選手達が入ってくる。僕はその間彼らに逢うことさえ許されず監獄に入れられていた。執事さんはグレンさん達に怒られたくないと思って僕をここに連れてきたんだろう。

  「はあ…シロン達に逢いたい…。」

  とそこに犀獣人が現れる。彼は僕を監獄から出すと食堂へと連れてきた。

  「この料理はお前が作ったものだな?みんなに評判が良かったが誰が作ったか知らなかった。俺の執事に問い正して吐いてもらったぞ。」

  ということは今いるのはグレンさん!?結局執事さんは最後まで隠し通せなかったようだ。

  「シェフやミズキが作ったものよりも美味かったから多分達也のだとは思っていたけどな。」

  シロンの言葉にミズキさんはへこんでしまった。みんなの舌はやはりおかしいんじゃないだろうか。

  「ここで働かないか?俺は歓迎するぞ!!」

  グレンさん…そんなこと言ったらみんな嫉妬します。既に遅しだけどね。

  「さて…次の試合が始まるぞ。達也、また料理作るんだろ?肉を中心に頼んだぞ。試合が終わるたびに食事するから頑張ってくれ。」

  試合が終わる度に食べるの?それはシェフ達も参る気がする。今回は許可がおりて料理人として配属された。まあイベントの間だけなら…と素直に頷いてしまっていた。

  「よし、じゃあ頼んだぞ。優勝したらこいつは俺がもらうからな。」

  「はぁ!?お前はまだ初対面だから渡すわけ無いだろ!!イテテ…そういえば一回戦の時に怪我したんだったな。」

  僕は持っていた回復薬をシロンに渡そうとした…その時シロンが僕にキスをしてきたのだった。そして二回戦が始まる…僕は二回戦が終わるまで監獄にいないといけない。競技はなんと料理対決だった。これはミズキさんのチームが有利だな…まあ今回は誰も怪我をしないのでよしとしよう。とー

  「達也様、審査員をお願いしてもよろしいでしょうか?貴方はまだ何も食べていないでしょう?」

  執事さんが監獄を開けて僕を出す。そしてシロン達のいる試合会場まで案内した。今いるのは4チームだが全員王様で…他はみんなでボコボコに罵したらしい。みんな強いから他の人は参るよね…。

  「お?達也が審査員してくれるのか?」

  「彼は特別です。達也様、厳しく判定をお願いします。」

  勿論そのつもりだ。それよりシロン達は料理出来るのだろうか…。

  「では二回戦…料理対決を開始します!制限時間はございませんので料理が出来たチームから試食をさせていただきます。」

  司会者の合図で全員料理を作り始める。ミズキさんのチームはやはりチームワークが良くて速かったためあっという間に完成させた。

  「まずは狼王のチームが完成しました!試食お願いします!!」

  ミズキさんが作る料理は既に食べているので美味しいのは分かっている。点数は勿論満点を出した。その後ギンジさんのチーム、アイラさんのチーム、シロンのチームと続く。まあ結局ミズキさんのチームが勝ったのは言うまでもなく…因みにシロンのチームは最下位だった…。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  第二試合が終わりシロンが足早で食堂に戻ってきた。僕の料理が早く食べたいらしく急いで来たようで食堂に着くなり僕に抱きついていた。

  「達也、なかなか触れ合えないから寂しかったぞ!それより俺はビーフカレーが食べたいな!」

  「シロン…試合前に食べたいもの言ってなかったんですね…。他のみんなはちゃんと言ってから試合に行ってたのに…。」

  「言うのを忘れてただけだ!」

  「…ちゃんと作ってあるから大丈夫ですよ?他のみんなもビーフカレーだったし…それよりシロン達は料理出来なかったんですね。あれは食べられるようなものではなかったです。」

  「ごめんな…狗王や琅王のように料理が得意なわけではないんだ。今度執事に教わって料理の修行をすることにするよ。」

  シロンと話している間にクロロさん達も漸く食堂に来た。しかし何故か怒っているように見えるけど…

  「おい…お前何達也を抱いてるんだ?しかも今キスしようとしてただろ?」

  「いいじゃないか、恋人なんだから…それより第三試合は俺達が得意なやつだぞ!それに…今回は達也も参加出来るかもしれないぞ?」

  「え…?」

  「猜王、まさかあの競技を採用したのか?」

  「お前らも好きだろうが…ただ達也には刺激が強すぎるかもしれないな。」

  「嫌だな…なんで全裸でする競技を作るんだよ…。」

  全員がグレンさんの方を見ている…グレンさんはガハハと大笑いしていた。

  「達也、匂いに当てられたらゆっくり休むんだぞ?」

  「はい…。」

  「シロン!達也を一人占めするな!」

  もう既に匂いに当てられてるんだけど…まあ今は慣れてしまったので大丈夫だ。

  だが獣人の全裸はクロロさんとシロン以外まだ見たことがない。全員の全裸を見たら鼻血を出しそうだ…。

  「ところであの競技って何ですか?」

  僕はそれについて気になっていた…皆を見ると顔や獣耳を真っ赤にしている。そんなになるほど言いたくないのか…。

  「お前は俺達の獣化は見たことあるよな?獣化で対決する競技を俺が作ったんだ。お前も勿論参加してくれるよな?」

  「…いいんですか?僕、大会の賞品にされてるんですけど…。」

  「お前なら大歓迎だ。俺の執事のせいですまなかった…それに賞品は龍の宝玉だ、執事には俺から言っておくからな。」

  「…ありがとうございます。」

  「それからお前は牢獄ではなく特別席で観てもらうことにする。絶対に見つからない所だから安心してくれ。」

  グレンさんがそう言うなら大丈夫…かな?因みに食事は会話をしながら楽しくしていた。あっという間にカレーはなくなったけど皆満足したようだ。

  「第三試合が始まる頃だな。達也、今度は肉料理を頼んだぞ。」

  「はい、それより僕も参加って…何をするんですか?」

  「行ってからのお楽しみだ、きっと楽しいと思うぞ。」[newpage]

  十二の王達と試合会場に戻ってきた。早速シロン達は着ていた服を全て脱ぎ全裸になると獣化になる。今目の前は動物園のようになっている…しかも柵なしで開放された状態だ。因みにシロン達が着ていた服は私の方に投げられていて足元に散乱していた。

  「…こうして見ると皆さん体つきが違うんですね。」

  『まあな、人族も鍛えれば俺達みたいになるんじゃないのか?』

  『俺は達也みたいな体格で十分だ、筋骨隆々だと抱きたくない。』

  「それで…僕は何をしたらいいですか?」

  『お前はな…俺達と戯れてくれるといいぞ。』

  獣化になったシロン達と戯れる!?それはなんとも最高ではないか!!と僕は内心小躍りをしていた。

  『今まで俺達を喜ばせた奴がいなくてな…執事達にも参加してもらったのだが全然面白くなかった。競技を取り止めにしようとも思ったのだが彪王達は良かったぞと言ってくれたんだ…それでお前みたいな可愛い奴が出てくるまで残しておいたんだ。』

  『勝利条件はお前を喜ばせることだ。まだ親密になっていない王もいるだろうが対等に判断してくれよ。それからここには俺達がアピールするものがある。それでお前の好感度をあげるのだ。では…始めるぞ!!』

  第三試合…王達との戯れが始まってしまった。シロン達が僕の所に集まりアピールをしだした…仕草や表情を見て僕は顔が綻び癒されていった。

  『今のところはフェアなようだな…。それならこれでどうだ!』

  グレンさんがいきなり走り出し角で岩を破壊した。グレンさんはどうだとドヤ顔をしているが僕は見向きもしなかった。

  『な…なぜだ!俺のアピールを無視するとは…!!』

  『大丈夫だよ、俺達も無視されてるからさ…。』

  残るはシロン、クロロさん、ジオンさん、アオバさん、ミズキさん、ギンジさんだ。この5人とは付き合いが長いので僕は誰にしようか迷っていた。

  『これでは勝負がつかないな…5人でバトルするか?』

  『それだと達也が喜ばないぞ?』

  『う〜ん…。』

  4人が相談している中クロロさんが僕の所にきた。獣化はシロン以外まだ見たことがなかったけど…。クロロさんが獣化すると威圧に押しつぶれそうになる…僕は動けずその場で固まってしまった。

  『達也、ちょっといいか?』

  「クロロさん…?」

  クロロさんがいきなり抱きついてきたのだ。獣人化と違い獣化は倍以上モフモフしている…獣化で抱かれるのは初めてだったので少し怖かった。

  『達也、獣化で抱かれた気分はどうだ?』

  「僕には刺激が強すぎます…でも嬉しいです。クロロさんだと分かると安心しました…今はもう大丈夫です。」

  『クロロ!やってくれたな!』

  『当たり前だ、達也は絶対に誰にも渡さない。』

  『それより大丈夫か?』

  クロロさんが気づいた時には遅かった…僕はしっかりクロロさんの匂いに当てられて気を失っていた。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  「それでは結果を発表をします!」

  僕が気を失っている間に表彰式が始まった…因みに私はグレンさんの執事に連れられお姫様抱っこされていた。

  「優勝チームは…彪王チームです!おめでとうございます!賞品の龍の宝玉を受け取って下さい!」

  「…達也はまだ眠ったままだな、獣化で抱くのは止めた方がよかったな…。それより龍の宝玉に何を願うんだ?」

  「それは勿論「どうせ達也のことを考えてるんだろ?だがな…人族は俺達獣人と一緒に棲むことは出来ない。元の世界に帰してはどうだ?」」

  「なんでだよ!俺は達也がいないと面白くないんだ、お前らもそうだろ?」

  「ああ、しかしこいつらの言う通りにしようと思う。俺も達也とは一緒にいて面白かったがいつまでも一緒にいられるわけではない。達也も元の世界に帰りたいと思っているだろうからな。」

  「クロロまで…俺は絶対嫌だからな!」

  シロンは僕をお姫様抱っこし連れて行ってしまう…シロンの目には涙が溢れている。それだけ僕と一緒にいたいことが分かる。

  「達也…俺はお前を恋人にしたくてここに連れてきたんだ。もしよかったらずっといてほしい…俺は達也と離れたくない。」

  「シロン…。」

  「!?達也…目が覚めたのか。」

  「シロンの気持ち…伝わりました。僕は…。」

  「やっと見つけたぞ…おい、そこのお前!その人族をこっちに渡してもらおうか。逆らうとお前を殺す。」

  言いかけた途端誰かに言葉を遮られてしまう…しかも最初に僕が彪国にいた時エーテリオンで消滅させた盗賊達だった。

  「達也、俺から離れるな…絶対に守る。」

  シロンは僕をお姫様抱っこし走った…と同時にすれ違いでクロロさんが盗賊の方に向かっていく。クロロさんは獣化になり盗賊達を次々と倒していく…が盗賊達の攻撃で傷を負っていた。

  「シロン!クロロさんを助けないと…!」

  「クロロはあんな奴らに負けるような奴じゃない!クロロも達也を守るために来てくれたんだ、今はあいつに任せろ。」

  「僕は…クロロさんを助けたいんです!」

  「…分かった、だが俺から離れるなよ。」

  シロンは僕と逢ってから素直になったな…それに円くなった気がする。シロンも獣化し僕を背中に乗せる。

  『クロロ!こんな奴らに苦戦してんじゃねえよ!』

  『シロン…少し疲れた、後は頼む。』

  『達也、クロロに回復薬を使ってやれ。俺がこいつらと対峙する。』

  僕はシロンから降りるとクロロさんの所に駆け寄る…が、それに気づいた盗賊が走ってきた。

  『達也に…近寄るな!』

  クロロさんは怪我した体で素早く盗賊の後ろに回り投げ飛ばした。同時にクロロさんも倒れてしまう。

  「クロロさん…無理しないで下さい。」

  『達也を守るためならこんな傷どうってことはない。』

  「…僕のために傷ついてほしくないです。クロロさんは僕の…恋人なんですからそんなこと言わないで下さい。」

  僕の持っている回復薬は本当によく効くな…あっという間に傷がなくなりクロロさんは元気になった。

  『達也…大好きだ〜!!』

  『クロロ!イチャイチャしてないでさっさと手伝え!』

  この二人は本当に仲がいいんだから…僕はそれを見て苦笑してしまった。二人になると闘いの激しさが増した…しかも圧倒的で二人の方が強い。そして数分もしないうちに片がついてしまった…。[newpage]

  「ふぅ…こいつらは彪国で達也を狙ってた奴らか。獄所に入れておいて正解だな…達也をこれ以上危険な目に遭わせるわけにもいかないからな。」

  盗賊を縄で縛り引き摺りながら獄所へと連れて来た…獄所は僕の世界にあるもので言うと刑務所かな?そこに入れられた者は二度と出てこれないらしい。

  「まさかここまで追いかけて来てたとはな…。」

  「そうだな…それより龍の宝玉を手に入れたから願い事を決めないとな。俺は絶対に達也とずっと一緒にいると願うんだ。」

  「シロン…俺もそうだが達也を元の世界に戻してやりたい。」

  「達也、俺達優勝して龍の宝玉を手に入れたぞ。龍の宝玉でお前と一緒にいたいと願い事をするところだったんだ。」

  いつの間にそんなことになってるんだろう…多分僕が気を失っている時だろう。シロンは僕を見てニコニコしているがクロロさんは深刻そうな顔をしている…僕もシロン達といたいと思っているし元の世界に帰りたいとも思っている。

  「決めるのは達也だ、お前が決めることはない。」

  「それはそうだが…。」

  「達也、決めたら教えてくれ。」

  すぐには決められない…ここに来てからシロン達に情が出来てしまったから帰りたくない。それに僕のような人族がいてはいけない所だ…シロン達獣人と一緒にいられないことは分かっている。

  「これからどうするんだ?このまま猜国に泊まるか?」

  「…彪国に行こうと思う。クロロも来てくれ。」

  「分かった、それならジオンも「ジオンには内緒にして三人で行く。クロロ、達也を頼んだぞ。」」

  「あいつ…龍の宝玉を手に入れてから様子がおかしい。とりあえず様子を見るしかないな…達也、獣化するから服を持っててくれ。」

  シロンは既に出発しているようだ…僕はクロロさん(獣化)の背中に乗り猜国を発つ。それよりジオンさんに言わなくて良かったのだろうか…。とりあえず彪国にやって来た僕達…シロンは僕達が来るのを待っていてくれた。

  「達也、最初に俺の国に来た時どんな感じだった?」

  「いろんな種族の獣人がいて怖かったです。でも…クロロさん達に逢ってから怖くもなくなったし楽しいと感じました。」

  「そうだろそうだろ!俺も達也といて楽しかったんだ!それよりお腹空いてないか?食事にしようぜ!」

  話しながら二人は獣人化し服を着た。シロンは僕の手を掴み連れて行こうとしていた…そこに虎獣人が立っていた。

  「坊ちゃま、帰ってきたのならまずは皇宮に来てください。」

  「モロ…坊ちゃまは止めてくれ。ところでなんでここにいるんだ?」

  「坊ちゃまを見かけましたので来ただけです。ところで食事にしようと言ってましたね?彪国に新しく食事処が出来たので行ってみてください。」

  「俺がいない間にか?長い間開けてたから仕方ないか…モロ、そこで食事をしたいから行き方を教えてくれ。」

  「畏まりました…食事処はここから数分の所で路地裏を通り抜けるとあります。目印は鉱山です。」

  「分かった、それが済んだら皇宮に戻るからな。」

  とか言ってるけど目が泳いでるし…シロンとモロさんは犬猿の仲なのだろうか。というわけで僕達はモロさんの教えてくれた食事処に行くことになった。それにしても彪国に来るのはかなり久しぶりである。獣人達は僕を見慣れているのか視線がこっちに向いてない…というかシロンとクロロさんが威嚇している。

  「達也に逢ったのは随分前だが今日のように感じる…旅するのも悪くなかった。達也がいなかったら俺は皇宮に籠もっていたかもな…。」

  「達也との出逢いは俺達にとって幸運だったんだな。」

  「その時は戦争の準備とかで武器や防具を買いに来てたんですよね?」

  「そうだ…まあそれは嘘で猜国で近々行われる大会に備えていたんだ。武術と剣術は絶対にあるからな。」

  「シロン達が闘っている所…かっこよかったです。」

  「魔物が出たら俺達が守ってやるからな。」

  話しながら数分…漸く食事処に到着した。シロン達と最初に行ったところとは大分違う…中を見ると一人もいない。新しく出来たところだからまだ皆知らないのかもしれない…因みに店の前には”この店のことは他の獣人には教えないで”と描かれた看板が置いてあるようだ。とりあえず中に入ると突然虎獣人に抱きつかれてしまった…。

  「いらっしゃい!初めてのお客様ですね!」

  「こら!俺の恋人に抱きつくな!」

  「すみません…俺なりの挨拶だったんですけど…。あ、俺ここの店を経営しているユウゴと言います。」

  「あの…他の獣人に教えないでと描かれている看板があるのは何故ですか?」

  「俺…人見知りなんです。今のところモロさんだけは大丈夫です。あ、食事しに来たんですよね?俺は何でも作れますので決まったら口答でお願いします。」

  「ほう…それは期待出来るな。」

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  各々食べたいものを頼んで席に座る。店の中はすっきりしていて綺麗に整頓されている…僕の世界の店にも似てるけど何か違う。

  「お待たせしました…どうぞ。」

  僕は蕎麦(並)、シロンはカツ丼(特盛)、クロロさんは1ポンドステーキを頼んだ。食べている間ユウゴさんはその場に立っているみたいだ。

  「お!美味いじゃないか!」

  「ありがとうございます。モロさんはよく来てくれてたんです…しかも彪王まで来てくれるとは…。」

  モロさん…シロンが王様だとユウゴさんに言っちゃったんだ…。

  「実は狼王の元で修行をしてたんです。彪国で新しくお店を開くために…ただ建てられる場所が人通りのない所しかなかったので…。」

  「なるほど…。」

  「ですが俺はここで十分です、少しずつですがお客様が増えてくれればいいと思っています。」

  「お前さえ良ければ人通りのある所に移すのは可能なんだが…。」

  「いえ…すぐには決められません。当分はここで営業していきます。」

  「…ここは俺達だけの秘密にしようぜ。他の獣人には絶対に言うなよ?ユウゴ…だったな、これから食事する時はここに来るから宜しくな。」

  「貴方がたなら大歓迎です!モロさん共々来てくれると嬉しいです!それから人族の子も来てくださいね!」

  と言いながらユウゴさんは僕にハグしようとしてきた…が、すぐにシロンが僕をお姫様抱っこして店を出る。そして彪国の入口へと連れてきたのだった。

  「俺の恋人なのに他の奴らにハグされたら嫉妬するじゃないか!」

  「お前のではない、俺達のだ。」

  「元の世界に帰ったらもうここには来れませんね…。」

  「達也…。」

  「迷っているようだな…達也には苦渋の決断になるだろう。」

  今ここで決めなければならない…ここに残るか元の世界に戻るか。二人は僕が何を言うか待っている…。

  「シロン…クロロさん。」

  「ゆっくりでいい、決まったら教えてくれと言ったはずだ。」

  この世界は弱肉強食…シロンやクロロさんのように優しくて強い者もいれば盗賊など悪い奴もいる。僕みたいに弱い獣人は多分いないだろう…それ以前にこの世界にいたらまず襲われる。それに比べて人族も同じことが言える…どちらにしても僕は多分狙われるに違いない。その思いを胸に僕は意を決した。

  「決めました、僕は…。」

  1.ここに残る

  2.元の世界に戻る

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  選択肢の続きは次に描きます。1は(7)、2は(8)です。

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