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十二獣国記(7)

  第6章 各国をぐるぐると

  ローヤルゼリーと龍の髭の合成薬の効果で魔力の暴走がおさまり回復した僕だったが代わりに声が出なくなってしまった。この薬は本来記憶がなくなるらしいのだが魔力の暴走状態だと効果が変化するそうだ。これを治すなら蜂蜜がいいとジオンさんが言っていたが…。因みに蜂蜜は浬国の特産品だそうだけど滅多に出回らないようでライムさんでもなかなか採取できないらしい。暫くはこの状態で何か言いたい時は紙に書いて見せないといけないようだ。

  「蜂蜜ね…本当に貴重で養蜂でもしないと手に入らないんだ。やってるところも少ないから探すのは大変だけどできることはやるよ。」

  「俺達も各地を巡ってみるよ。もしかしたら誰かが持ってるかもしれないからな。」

  「達也はここで待っててくれ。」

  やはりそうなるか…冒険するのは当分お預けになるのはなんだか嫌な気分だった。カムイさんとギンジさんは残るとは言ってくれたけどシロン達は嫌そうな目でみていた…。そしてシロン達が部屋から出ていった数分後ギンジさんが何か思いついたようだ。

  「達也君、劉国に行こう。温泉なら治せるかもしれないぞ?」

  なるほど…それもいいかもと頷く仕草をした。でも声が出ない状態で移動できるのだろうかと試しに指輪を翳してみる。その時ティンクルベリーの効果が残っていたのだろうか眠気が襲ってきた。倒れそうなところをギンジさんが支えてくれたけど…。

  「大丈夫か?無理を言ってすまなかった。それよりちゃんと劉国に来ることができたようだぞ。」

  目を開けると本当に劉国に来ていた。一面銀世界で…遠くから温泉の香りがする。

  「温泉に行く前に皇宮に行こう。話したいこともあるし渡したいものがあるからな。」

  渡したいものとはなんだろうか…とりあえず頷くことしかできない。ギンジさんに従い皇宮に来た僕達。やはり広場の中心にある。ギンジさんに聞くと皇宮は全て国の中心にあるとか。理由を聞いたがわからないらしい。皇宮の前には槍を持った兵隊が待ち構えていた。

  「ジルク、我がいない間何事もなかったか?」

  「は…はい!異常なしです!!」

  「そうか。今日は客人が来ている。邪魔するでないぞ?もしするようなことがあれば…。」

  続きを言う前にジルクさんは挨拶した。表情が強ばっているようで…ギンジさんが余程怖いらしい。皇宮に入ると目の前に階段が現れる。ただ段数があるので上がるのが大変そうだ…と溜息をつきながら階段に足をかけるとあっという間に最上段についていた。ギンジさんに聞くと呪がかけてあるそうだ。これだけ段数があったら大変なのはわかっていたけれど…なんでもありだね。ギンジさんについていくこと数分…ある部屋に到着した。そこはどうやらギンジさんの部屋らしい。上奏の書かれた巻物が山積みになっているのを見ると民の悩み事が特に多いのかもしれない。

  「達也君、かけなさい。誰か客人に茶を。」

  ギンジさんと二人きり…こんなのシロン達には見せられない。それにギンジさんの顔を素直に見られない…そんなことを思っていたら彼が覗き込んでいた。

  「どうした?我が怖いのか?」

  確かに怖いけど僕は顔を横に振っていた。そうかと言わんばかりにギンジさんは椅子に腰掛ける。

  「渡したい物とはこれだ。達也君は魔力を使い過ぎているから負担にならぬように使ってほしい。」

  渡されたのは霊本?のようなものだった。霊本とはいわゆる魔法書のことである。以前宍国でみたものとはまた別のもののようで…表紙には四聖獣の刺繍が施されていた。これって高価なものではないだろうか。

  「宍国でも見たであろう。この霊本は各王が一冊ずつ所持しているが我には難しく扱えない。そこで達也君にちょっとしたプレゼントだ。」

  断ることもできず押し付けられてしまった。ここで断っても譲らないだろうと思い素直に頷いた。

  「さて…ここに来たのだから温泉にでも入って疲れを癒やしてくれ。それと…その時君を抱いて入ってもいいか?」

  ギンジさんは顔を赤くしながらそっぽを向いている。まあ彼も僕を好きなのだから仕方なく顔を縦に振った。

  「やはり君は抱き心地がいい。いつでも劉国に来てくれ…我は歓迎するぞ。先に会っていたら契を結んでいるところだったな。」

  今ギンジさんと温泉に入っている。状態異常が治るそうだが声が出ないのは効果ないようだ…期待はしていたけど残念である。でも魔力は回復したのでギンジさんには感謝している。それより今"契"って言わなかった?

  「すまない…達也君は彪王の伴侶だったな。それより琅国に戻るんだったな。彼らによろしく言ってくれ。」

  声が出ないため頷くことしかできない。早く声を出したい…と自分の気持ちを伝えられない悔しさがある。

  「もっと話をしたかったが…早く出るとしよう。のぼせてしまうからな。」

  ギンジさんは本当に優しい。龍人はいかつい顔立ちだけど以外にも怖くはなかった。温泉からあがり琅国に戻る支度をする。ギンジさんはここに残るそうで…少し心細かった。指輪を翳すと魔法陣がちゃんと発動するので声が出なくても大丈夫そうだ。その時ギンジさんが「達也君…また会おう。劉国で待ってるぞ。」と照れ顔で言っているのが聞こえた。[newpage]

  ギンジさんと別れ琅国に戻ってきた。寝室から移動したからそこに戻るはずだと思ったが以外にもミズキさんの経営する店の前だった。そこにはカムイさんが待っていて僕の姿を見た瞬間笑顔になった。

  「彪王達はまだ戻ってないですよ?それまで琅国を回りますか?それならこれをつけてください。」

  やはりカチューシャしかないのか…今度は狼の獣耳のついたもので他のに比べてモフモフだった。

  「ミズキ様から預かっていました。多分必要になるだろうと。帰って来るのはいつになることやら…。」

  彼らは僕のために各地を回ってくれているのだから自分でも何かできることをしたい。そう思いカムイさんに行きたいとメモに書いて渡した。

  「わかりました。じゃあ行きましょう。」

  カムイさんは僕をどこへ連れて行くのだろうか。とりあえず狼の獣耳つきカチューシャを付ける。熊と虎のカチューシャはというと鞄に入れてあるのだ。この鞄は劉国でギンジさんが霊本をくれた時に一緒に渡されたものである。色々もらいすぎているので何かお返ししたいけど彼らが欲しい物が分からずにいた。声が出るようになったら聞いてみようかな?

  「着きました。早速入りましょう。」

  カムイさんが連れてきたのは本などがある雑貨屋のようなところだった。霊本はギンジさんからもらってるし…他に必要なものなんてあるのだろうか。カムイさんは店に入るなり何か持ってきた。

  「達也君は属性魔法を使ったことは無いですよね?ですのでそれを使える杖を持ってきました。ミズキ様達に怒られるかもしれませんが役立ててほしいです。タイミングよくきたのでタダで貰えました。」

  見た所しっかりしているその杖は先端に宝珠がはめ込まれている。属性魔法を使うと宝珠の色が変わるのだとか。それをタダで貰うわけにもいかず断ったが彼は黙って僕に手渡した。声が出れば反論できるのに顔を横に振ることしかできないのがかなり悔しい。結局受け取らざるを得ないのだった…。雑貨屋をあとにして店に戻って来るとシロン達がいた。手に何もないところを見ると蜂蜜は手に入らなかったようだ。

  「手に入らないもんだな…誰に聞いても駄目だった。」

  「こっちもお手上げです。」

  「暫くは我慢してくれ。でも絶対治すからな。」

  僕は頷くことしかできない。3人が帰ってきたのでカムイさん達と別れ宍国に行くことになった。ジオンさんが図書館で蜂蜜の入手できそうなところを探したいようだ。確かにそこなら手っ取り早いかもしれないけどこれだけ探してないなら自分の足で行った方がいいのではないだろうか。

  「ジオン、達也が自分の足で行った方がいいのでは?と言っているんだけどどうする?」

  「その方がいいか…わかった。じゃあどこから行くんだ?達也が言い出したのだから決めてくれ。」

  本当に僕の思っていることが分かるんだな…メモに書いて見せなくてもこの3人には通じている。でも行きたいところはまだ決めていないため顔を横に振っていた。

  「…まだ決めていないんだな?それなら尚更宍国に行きたいのだが…。」

  「そうなると思っていた…というわけで宍国に行こう。ここからだと騎獣が必要だな。入口に騶虞を待たせてるから移動しよう。」

  結局宍国に来てしまった。今は図書館で蜂蜜の入手方法を調べているところだ。しかし…

  「駄目だ。調べても入手できるのは浬国だけだ。また戻るしかないのか…。」

  「折角来たのに振り出しか…他に心当たりがあればいいのだが…。」

  宍国に来てもやはり何も得られなかった。本当にあったら心から喜んだのだが残念である。ジオンさんは次に皇宮に行こうと提案したが二人に反対されてしまったため落ち込んでいた。今度はクロロさんが隈国に行こうと提案した。熊族は蜂蜜が好きなので誰か持っていてもおかしくないかもしれない。これは二人も賛成したので早速騶虞に乗り隈国を目指すのだった。[newpage]

  クロロさんの国ー隈国を訪れた僕達。相変わらず機械の音が無い。彪国の鉱山から素材を採りに行きたいところだがシロンがそれを阻止してしまったため運営出来ないでいるようだ。猜国にも鉱山はあるけどここから遠いので行く人も少ない。そのことをシロンに聞いてみたが絶対に譲ることはないようだ。

  「早速行動するか。皇宮にも行きたいからそのルートにいる者達に聞いてみるとしよう。」

  クロロさんは上機嫌で先に行ってしまった。とりあえず近くにいる人達に声をかけてみることにした。しかしどの人も蜂蜜は持っていなかったので空振りに終わってしまった。熊獣人なら持っていてもおかしくないのに…期待が外れてしまったのだろうか。そして歩いて数分…皇宮に到着。一足先にクロロさんが待っていた。聞き込みは僕達に押し付けて自分だけ楽をしていたようだ。それはさておき隈国の皇宮もやはり街の中心にある。確かに中心なら監視がしやすいかもしれないね。皇宮に入ると劉国でも見たあの階段が待ち構えていた。それもやはり呪がかけてあるので足をかけると最上段についていた。僕の世界にも魔法があったらよかったな…。とー

  「クロロ様。おかえりなさいませ。」

  「セバス、今日は客人が来ている。茶を頼んだぞ。」

  「畏まりました…。それよりクロロ様、少し達也様をお借りしますね。」

  と言いながら僕の身体を持ち上げかっさらっていった…。これにはクロロさん達もお手上げなようでそのまま執務室に歩いて行くのだった…。一方セバスチャンさんに連れてかれた僕はというと試着室にいた。彼は僕に執事服を着させていた。

  「クロロ様から聞いております。魔力の暴走を抑えるために合成薬を使用したこと、それで声が出なくなってしまったことを。実は私蜂蜜を所持しております故安心してください。」

  王様の行動は全て執事に筒抜けになっているようだ。それは王様と執事にはテレパシーという魔法で繋がって入るとか。まあそれはギンジさんから譲り受けた霊本を読んで知っていた。それより今“蜂蜜“って言った?

  「達也様は料理は得意ですか?手伝ってほしいことがあるのでキッチンに行きましょう。」

  急いでいるようでまた担がれてキッチンまで連れて来られた。そこに入ると甘い香りが漂っている。

  「今蜂蜜でケーキを作っておりました。続きを任せていいですか?私は紅茶を用意いたします。」

  執事だからやることが早い。そんなことを思っているとセバスチャンさんが蜂蜜を僕に食べさせた。

  「この蜂蜜は私が養蜂したものです。どうですか?」

  「あ…ありがとうございます。」

  「大丈夫そうですね。治って何よりです。完成しましたので持っていきますか。」

  このことはクロロさん達には内緒にしておこう。でもそのうち言わないといけないし…言えるときに言おう。蜂蜜のケーキと紅茶をワゴンに載せクロロさんのいる執務室に来た。僕は今執事服を着ているので彼らに見られたら恥ずかしいな…。

  「クロロ様、紅茶を持って参りました。それから蜂蜜のケーキを作ってきました。」

  僕はバレないようにお辞儀だけした。クロロさんが僕を見て何か言いたそうだ。

  「セバス!達也に何をさせてるんだ!シロン達に怒られるだろ!!そんなことするな!!」

  「クロロ、これ…旨いぞ!」

  「この匂いは…蜂蜜じゃないか!!ここに来て正解だったな!それより早くしないとなくなるぞ?」

  クロロさんが怒っているのに二人はケーキをほうばっている。なんだか幸せそうだ。

  「いいな〜達也が執事だったら毎日顔を見られるんだ。それからこうやっておもてなしされるんだな…クロロが羨ましい。」

  「それを言われたら怒った俺が馬鹿じゃないか…ってケーキがない!?お〜前〜ら〜!!(怒)」

  「クロロ様、まだありますよ?」

  「そ、そうか。」

  「怒ったり嬉しくなったり…忙しいな。」

  「お…お前らもそうだろ!?」

  「クロロ様、ケーキでも食べて落ち着いてください。」

  「旨い…じゃない!俺は…なんで怒っているのか分からなくなってしまった。」

  クロロさんの反応が面白い。終いには恥ずかしくなり頭を掻いているのだった。

  「達也は食べないのか?」

  「達也様はすでに食べましたので三人で召し上がってくださいませ。達也様、後はよろしくお願いします。」

  三人の笑顔…久しぶりに見た気がする。ここに来てよかったな…。時々三人の口についたクリームを拭き取ったりして…なんか家族になった感じだった。[newpage]

  「今日はここで休むとしよう。セバス、寝室まで案内してくれ。達也はここで休ませることにする。」

  「畏まりました。シロン様、ジオン様、参りましょう。ついてきてくださいませ。」

  シロン達が怒ると思っていたのだがなんだかあっさりと引き下がった。蜂蜜が見つかったからかな?

  「さて…俺達も寝るとしよう。その前に言いたいことがある。聞いてくれるか?」

  と言いながら僕の身体を引き寄せるクロロさん。そしてそのままベッドに運ばれ座らせる。

  「これからも御前を離れず忠誠を誓うと制約する。」

  これ…あの時シロンが学校に来て言った言葉だ。その時はなんのことか分からなかったけど今はもう知っている。この世界では人族を王様にしたいらしい。理由はわからないけど…。

  「…今は言えません。ごめんなさい…。」

  「!!達也、声が出るのか?」

  「はい…シロン達には内緒にしてくださいね?」

  「それは仕方無い。シロン達も達也が好きだからな。誰と過ごすかは達也の自由だ。」

  クロロさんの言うことは一理あるけど…僕は離れたくないのでクロロさんの身体に抱きついた。

  「この行為は今と同じことだぞ?これは赦したということだな?達也…好きだ。」

  クロロさんは僕を前に立たせキスをした。と同時に舌を僕の口の中に侵入させる。彼の舌はザラザラしてさっき食べた蜂蜜ケーキのクリームが残っていた。そしてそのままベッドに倒されてしまった。

  「伴侶になると決まってスキンシップすることになっている。俺と…してくれるか?」

  「僕…汚いですよ?」

  「そんなことはない。俺は達也としたいんだ。」

  クロロさんの目が真剣である。蛇に睨まれた蛙状態の中僕は覚悟を決めた。

  「では…お手柔らかにお願いします。」

  そう言った瞬間クロロさんは僕の衣服を脱がしていた。彼の前で全裸になるのは初めてなので恥ずかしいな…。そう思っているとクロロさんは顔を下半身に持っていき股間のものを咥えた。ザラザラした舌だったので刺激が強い。すぐに絶頂し射精してしまった。

  「いい反応だったな…可愛いぞ。達也にも慣れてほしいから俺も脱ぐぞ。最初だから俺の匂いを覚えてくれ。」

  クロロさんはガチムチ体型だった。どこを見てもシロンより太い。そして股間のものは想像以上だった…。クロロさんは胸を僕の顔に押し付けて身体を抱いた。

  「達也、他の奴らもスキンシップするかもしれないからその時は受け入れてくれよな。」

  クロロさんはとてもいい匂いがする。少し汗臭いのもあったけど気にならず癖になってしまった。

  「気にいったんだな。少しずつだがやれることをしよう。じゃあこのまま寝るとしよう。」

  ものすごい体験をした。獣人は獰猛で怖いと思っていたのだが実は優しい。スキンシップを求めてくるのは例外だけど…僕はそんな彼らが好きになってしまった…。

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