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ヒグマ獣人高校生柔道部男子が大を我慢させられる話

  【ご注意】大スカ要素があります。

  [newpage]

  ◇◇◇

  久間里 椿は、正義感に溢れる健全な男子高校生だった。

  そんな彼は、名前を知りもしない男の家の中で、苦しげに表情を曇らせながら脂汗を滴らせている。

  「んぅう……ぐ、ぅうぅゥう゛ぁう……ッ」

  椿は自分の口から、悪夢に魘されているような声が漏れ出ていくのを感じながら、強烈な腹痛に苛まれていた。

  ヒグマ獣人の高校生男子である彼は、柔道部で鍛えたその太ましい肉体にパンツ一枚着用することを許されず、その茶色の短い被毛にじっとりと浮かぶベタついた汗が、彼の奮闘を物語っている。

  一体、彼が何と戦っているのか。

  それは、唇を噛みながら顔色を鈍く曇らせている椿を、ニタニタと粘着くような笑みで見つめている男が答えていた。

  「どうよ、椿くん。そろそろ、うんちしたくなってきたんじゃねえの?」

  便意だ。

  椿は大型ペット用のトイレシーツの上に仰向けで寝かされていた。しかも、ただ寝かされているわけではない。

  更に、その膝はM字開脚をした状態でバンド固定され、立ち上がる事が出来ないようにされた上、腕も後ろ手に縛られている。身動きが殆どできないようにされているのだ。かろうじて身じろぎ程度は出来るが、自由などほぼ無い。

  まるでお尻を見せつけるような格好。

  そして、なにより椿の顔色を曇らせている原因。彼の傍らに転がっているビニール製のチューブ容器は、便秘改善の為の浣腸薬の残骸だ。液状の薬は全て椿の中に注ぎ込まれている。

  そう、強烈な便意が訪れるその浣腸薬を投与されているのにも関わらず、椿はトイレに行くことも出来ないでいるのだ。

  羞恥にか、便意にか。ブルブルと震える振動で、縮こまって先端まで皮を被っている男子高校生の包茎がふるふると揺れていた。滑稽な姿だろうが、椿にとっては、地獄に他ならない。

  少しでも気を緩めれば、男の言う通り過剰な便意のままに腹の中を全て吐きだしてしまいそうなのだから。

  「ッ、うゥウ、っぁ……ぅう……、変、態……やろうめ……っ」

  「ん? なんだ、まだまだ余裕そうじゃねえか。良いねえ、良いねえ。そうでなくっちゃぁ……」

  膝の間に置かれた三脚に置かれたビデオカメラが、ひくひくと震える肛門を中心にそんな情けない姿の椿をばっちり捉えていた。

  男の目的は分かり切っている。椿が、便意に耐えきれず排便する様をビデオカメラに収めようというのだろう。

  最悪だ。

  何が嬉しいのか、何が楽しいのか。全く理解できない。

  ただ、椿にとって、男の思う通りになることは嫌だった。

  この男は、椿を犯して凌辱し、挙げ句、その画像や動画で脅してくるようなクズだ。牙をむき出しにして睨めば、男はそんな反抗的な椿の様子にますます笑みを浮かべる。

  「ぁあッ、……! やめ、触ん、なぁ……ッ!!」

  「ほら、ケツ締めないとお漏らししちゃうぞー? おしっこのお漏らしは何度もしてるけど、うんちまでお漏らししちゃったりしないよなあ、椿くんは?」

  「ぅぐう、ぅうゥう……ッ!」

  そして、腹を見せる子犬を慈しむように、丸く張りでた椿の腹をぐるぐると撫で付けた。その外部刺激に、ただでさえ活発化している大腸がグルグルと音を鳴らして蠢き始める感覚に、椿は堪らず悲鳴を上げた。

  腹の中身がお尻をパンパンに膨らませて、その窄みを激しくノックしている。限界まで押し下がってきているその塊が、括約筋という最後の門を鼓動と共にこじ開けようとしているのだ。

  「お、浣腸汁がちょっと飛び出したぞ。ぴゅう、ってよ! うんちしたいよなあ、椿くん、なあ。なあ!?」

  「……ッ、ぅ、ぐッ……ぁああッ、ぁっ!!」

  煽りたててくる言葉。絶対に漏らしてやるものかと、気合を入れ直すように叫び、椿は尻に力を込めた。

  肛門の間から、液体が走り抜ける感触は確かにあった。だが、それで諦めてはここまでの羞恥が全部無駄になる。男が飽きるまで、耐え抜いてやる。そんな覚悟で力を込めた椿の肉体は、今は排便を諦めたのか、便意が少し遠ざかっていってくれた気がした。

  「お、堪えるねえ。へへ、後で良いもの見せてやるよ、椿くんのケツマンコが内側からぷっくり盛り上がってたぜ」

  「……っ」

  「ははッ、情けないなあ、椿くん。黄色い汁も、水鉄砲みたいに飛ばしてさッ! 恥ずかしいか? 恥ずかしいよなあ……高校生にもなってこんな格好でうんち我慢してんだもんなあ!」

  「う、……ッ、るさい……っ黙れ……ぇ」

  男の言葉に羞恥心が煽られる。

  僅かな弛緩の隙を突いて飛び出した浣腸液が飛び散る様をビデオカメラはしっかりと記録に残しているのだろう。もはや男に画像や動画を何度も見せつけられている椿の秘部、そこから汚れた液体が吹き出す光景を如実に脳裏に浮かべてしまう椿は、屈辱に顔を上気させながらも男に噛み付いて返す。

  それが椿に出来る最大限の抵抗だ。

  

  「……ッ、ぅ……ぁ゛あぁ……っ」

  「お腹ギュルギュル元気だなあ、ひははっ。学校から一回も出してねえんだろ? さぞ、溜まってる事だろうなあ」

  誰のせいで。

  そんな言葉を心の中で吐きつけながら、もはや声一つ出す余裕はない。声一つ吐き出せば、その僅かな緩みで決壊してしまいそうだ。そんな事を考えただけでも、お腹が唸り声を上げ、内臓が蛇のようにのたうち回る。

  「……ぁ……ぐっ」

  こんな事なら、初めからこの男の言う事なんて聞いてやらなきゃ良かった。そんな事を思ってしまうが、それを実行できない事も理解している。

  椿は、あのメールを無視することなんて、出来るはずがないのだ。

  ◇◇◇

  椿は、柔道部の更衣室で、自分のスマホの画面を睨みつけていた。そんな彼の横を通り抜けるようにして後輩達が椿に声を掛けて更衣室を立ち去っていく。

  「お疲れ様です、先輩」

  「お……っ、おう」

  スマホを見つめていた椿はその声に驚いたように顔を上げると、スマホの画面を伏せるようにしながら、帰っていく後輩の背中を見送ってから、はあ、と溜息を吐いた。

  そして、もう一度、眉を顰めながらスマホの画面を表示させた。そこには、チャットアプリが開いていた。

  『今日、学校でウンコせず来い』

  『ご主人様』というふざけた名前相手のチャットに、短くそんな文言が綴られている。

  椿は、ぎり、とスマホを握り潰してしまうんじゃないかという程力強く手に力を込めながら、その後に椿が送った『はい』という短い返事を見て歯を食いしばった。

  嫌だ。そう言えたらどれほど良いだろうか。

  ふざけるな。そう警察に突き出せたのならどれほど良いだろうか。

  悔しさに涙がこぼれそうになる。いや、既に目頭が熱く潤んでいるのが分かった。正義感の強い椿にとって、人の弱みを握って傍若無人に振る舞うあの男はとても看過出来る悪人ではない。

  だというのに、その言いなりになるしか無い自分が、情けなくて仕方がなかった。

  「……っ」

  「ん、なんだ。お前が最後か、椿」

  「先生……」

  涙が溢れるよりも先に帰ろうとした椿に声を掛けられた。扉を開けて更衣室に入ってきたのは、柔道部顧問の教師だった。

  椿の胸に激しい動揺が訪れた。

  今、変な顔はしていないだろうか。涙が出ていたりしないだろうか。まず真っ先に浮かんだのは、先生に心配させたくないという感情だ。

  あの変態のせいで狂ってしまった椿の生活の中で、ただの部活の顧問と生徒という関係だった彼との関係もおかしくなってしまった。まだはっきりと自覚をしていないながら、椿は顧問と体を重ね、そして恋情を抱いてしまっていたのだ。男に対して恋愛感情を向けるなんて事を考えもしない椿は、気づいていない。

  いや、あの変態男の影響と切り離して考えられないその感情を認められないが故に、気づかない振りをしている、という側面も少なからずあるだろう。

  「……今日、少し調子悪そうだったな、どうかしたのか?」

  「ぁ……」

  だが、そんな複雑な感情を椿が抱いている事などつゆ知らず、顧問は気安く椿の肩に手を置いて、心配するような言葉を発していた。

  様子がおかしい事に気がついてくれていた。そんな事で泣いてしまいそうになるほどに喜びながら、椿は必死にその感情の表出を瀬戸際で押し留める。

  ここで先生に全て打ち明けたら良い、という考えが頭に浮かぶ。だが、そんな解決策を誰よりも椿が許さなかった。もしそうなったとして、あの男が持っている椿のデータをネットに流すよりも先に全て押収できたとして。

  警察がそのデータを検めたのなら、先生と椿が一線を超えた関係である事が明るみになってしまう。

  「いえ……ちょっと、便秘気味で」

  「ああ、そうだったのか」

  だから、何も言えない。

  先生の事も、俺が守らなければ。そんな意志を持って椿は嘘をついた。

  騙す事に罪悪感が無い訳じゃない。ただ、先生にも家族がいる。それをぶち壊してしまうような事を椿は絶対にしたくなかった。だが、先生はそんな椿の覚悟を更に揺らがすような行動に出た。

  「ぁ、……っ」

  「なんかあったら先生に言えよな、……まあ、色々あるだろうしさ」

  便秘だと伝えたからだろうか。先生は椿のお腹に手を当てて、ゆっくりと撫でてくれる。その温かみに椿は胸がときめくのを確かに感じた。

  熱に先生と体を重ねた事を思い出す。

  あの男に犯される時とはまるで違う、安心感に包まれるような快感。

  「……」

  もう一度、あの温もりが欲しい。

  誰もいない更衣室。このまま内側から鍵を掛けてしまえば、誰にも知られる事もなく先生と二人きりの空間が作れる。椿は、先生の顔を見つめた。

  目が合う。

  その優しい瞳の奥に、確かな欲の熱が揺らいでいる。先生も、もしかしたら、それを望んでいるんじゃないのか。そんな邪な考えが頭に過ぎって、椿は、お腹に添えられた先生の手の甲に手を添え、そして。

  「お、俺……この後用事あるんで……っ」

  「あ、……ああ、そうか。引き止めて悪いな」

  「……いえ、あの……あざす」

  ぐい、と未練を残さないように、その手をお腹から引き剥がしていた。

  先生は、急に現実に引き戻されたような顔をしてから、罰が悪そうに頬を指で掻いていた。そして、少し慌てた口調で出入り口に続く道を空けるように体を退かす。

  椿は、空けてもらった空間に身を捩じ込ませるように先生とすれ違いながら、後ろ髪を引かれながらそれだけ言い残して、足早に更衣室を飛び出していった。

  「……っ」

  あのまま、更衣室に残っていればきっと帰れなくなる――いや、きっと向かえなくなる。椿は、それが恐ろしかった。

  「よ、椿くん。部活お疲れ様ー」

  そして、椿は男の住むマンションに訪れていた。

  ガチャリと、扉が開けられる。

  その向こうから現れた顔はニヤついた笑みを浮かべていた。優しさの欠片もない、ただ己の欲求のことしか考えていないような寒気のする、そんな笑み。

  先生の優しいそれとは全く違う。

  大嫌いな笑みに全身を舐め回すように見つめられ。

  「じゃ、服は全部脱いでくれる?」

  ゾクゾクと背筋を這う感触は、悪寒に違いないと。

  椿は、そう自分に言い聞かせていた。

  ◇◇◇

  「ぁあ゛っ……ぐ、ぎ、……ぁゥううっ……!!」

  「ほら、がんばれ、がんばれ」

  腹を撫でられる、という行為にこれだけの違いが生まれるものなのか。

  椿は数時間前に先生から腹を撫でられていた時の感覚と、男にグルグルと唸る腹を撫でられる感覚の違いを痛感していた。

  気持ちが悪い。

  痛い。今すぐ、おもいっきりぶち撒けてスッキリしてしまいたい。

  浣腸薬によって活発になった腸活動が、体の主である椿を苛んでいる。体を内側から突かれるような苦しみは、内臓の蛇が暴れているような錯覚さえ引き起こさせた。

  「か、あ゛……っ! は、あ……ッ!」

  「いい声出すじゃん、どう? そろそろ限界なんじゃねえの?」

  ギュルルル。腸が激しい音を立てているのが分かる。内側で暴れる物体を早く出せと喚くようにうねりを上げていた。そんな内側からの圧力に体を押されて前のめりになった椿を男は嘲笑う。

  力を込めた尻は椿の体内の衝動を男に事細かに伝えている役目を担っているかのように、ヒクヒクと饒舌に語っている。

  限界。

  男にそう言われて、ただ下唇を噛み締めた。

  排便は生理現象だ。汗をかいたり呼吸をしたりするような、生き物としての当然の行動なのだ。

  そんな物を禁じられた所で、そんな長い間保っていられるはずがない。

  「……っ、ぐ……ぅうう」

  もう、我慢しなくていいじゃないか。

  椿の中に、諦念が生まれ始める。この男に排便している所を撮影されていようが構わないだろう。もう、それ以上に見せるべきじゃない姿を撮影されてしまっているんだから。

  男の思う通りになりたくない。そんな意地に何の意味があるのか。

  「ぁ……っ、ぁあッ……」

  弱気な考えが椿の脳にこびりついていく。

  息が荒くなっていく。

  苦しい。

  楽になりたい。

  極限状態に陥った椿が椿自身を誘惑する言葉。それは一度浮かび上がれば、まるで連鎖反応を起こしたかのように次々と浮かびあがっては、椿を責め立ててくる。

  もう良いじゃないか。

  このまま力を緩めて、出してしまえば。

  我慢したって何にもならない。我慢する必要なんてないんだ。

  もう、楽になってもいい……いいはずだよな?

  「んぐっ……! ん゛んぅううぅっ……!」

  そんな弱い心を振り払うように、必死に首を横に振る。だが、体の苦しみは誤魔化せず歯を食いしばるが故に歪んだ表情は、もはや慈悲を訴える病人に近いものになっていたのだろう。

  男の顔に下卑た笑みが浮かぶ。

  「じゃあ、ここまで頑張った椿くんに免じて……」

  「……っ、ぁう……?」

  男は椿に何かを見せつけた。

  そのニタニタと人を馬鹿にしたような表情は、その言葉が椿に取っての救いになるものではないのだろうと予想は出来た。だが、それでも、その男の手の中にあるものの正体を椿はしばらくの間、理解出来なかった。

  金属製のそれは、ともすればおしゃぶりのようにも見えた。トランプのスペードのような形をしている物体。

  「我慢するのを手伝ってやるよ」

  椿がその物体の正体に気づいた時には既に、その先端が椿のアナルに充てがわれていた。

  アナルプラグだ。

  椿が、諦めようとしたその時。

  限界だと根をあげようとしたその時を待って、男は椿のアナルに――排便孔に栓をしようと考えていたのだ。

  「ぁあ……ッアあぁ゛アア!!」

  ヌルヌルとした液体が肛門から染み出してきている。それが何の液体かなんて考えたくもない。

  ただ、不幸そのものだったのか、それとも不幸中の幸いだったのか。それが潤滑剤の役目を果たして、その太い直径のアナルプラグは、元々感覚が麻痺し始めていた椿の肛門へと痛みもなくずぶずぶと押し入りはじめていた。

  「アア゛ッ、ぐうぁ……ッ」

  椿は、痛みも無いというのに、その異様な圧迫感だけで絶叫する。

  肉の壁一枚のところまで迫っていた塊が、金属の塊に無理やり逆行させられている感覚。それが、如実に伝わってくる。

  気が狂いそうだ。

  いや、本当は気が狂ってしまえたのなら楽になれると望んでいたのかもしれない。

  「はははッ、おいおい、プラグ押し返してきてるって。こりゃあ、ちゃんと蓋してあげないとだなあ?」

  「ひ、ぐ……ッ、ぁあ……ぅ、ぅう゛……ッ」

  男の言葉の通りだ。

  アナルプラグのくびれの所に菊門が収まっている。強烈な違和感にただ括約筋を締めることしか出来ない椿に収まったそれは、相当な力を込めて引っ張らなければ抜く事も出来ないだろうが、しかし、内側から押し出されてくるその圧力によって、ぐぷぐぷと少しずつ吐き出されようとすらしている。

  「……ッ」

  もはや、椿に排便を我慢しようという意志は存在しなかった。このアナルプラグごと吐き出せてしまうのなら、それでいい。

  だが、椿は尻に感じた感触に、絶望すら覚える。

  そんな椿の考えも、男の掌の上だったのだ。

  「……ぁッ……ぁあ……ア、……や、だ……ぁあッ!」

  「おいおい。椿くんが我慢したがってるから手伝ってやってんだろ、むしろ感謝して欲しいんだけどなあ」

  獣人の毛束の上からでも使える医療用の固定テープ。強力なそれが椿の尻に突き立ったアナルプラグの底を中心に、ゲームのエフェクトのようにバツ印を描いて貼り付けられる。

  封印されている。

  「ぅ、……ァ……ッ」

  これまでは、あくまでその衝動を抑えていたのは、椿自身の意志だった。

  少なくとも椿が諦めさえすれば――それこそ、浣腸薬を投与された直後に諦めていれば、ほんの数秒でこの苦痛から開放されるはずだったのだ。

  だが、その自由意志すらも剥ぎ取られている。

  「……ッ、ぅう……っ、ああ……ッん、ぐぁアアッ!!」

  腹に力を込める。

  そんな事をすれば、瞬く間に肛門を便が抉じ開けて、その情けない排便姿をカメラに収められる事になっただろう。だが、今は。

  まるでのたうつイモムシのように背を仰け反らせて、腹から尻に力を入れても押し出されてくれない。縮こまったペニスがぷるぷると揺れてカメラに収められる。だが、そんなこと気にしてもいられない。

  椿が諦めようと、諦めなかろうと、何も関係がなくなってしまった。

  「ぁ……ッ、ぁあ……っ」

  椿は、必死に尻に力を込める。

  だが、どうしても抜けてくれない。どれだけ力を入れても、そのプラグは椿の体から排泄されるというあって当然の機能を完全に奪い取ってしまったようだった。

  「ぁ……ッぐ、うう……ぅう」

  息すら苦しい。

  椿は絶望に満ちた表情を隠すことも出来ず、汗と鼻水に濡れた顔を男に向ける。あの、汚い笑みを浮かべた男はゆっくりと椿の傍らにしゃがみこんでいた。

  そして、その手をゆっくりと椿の腹に向ける。腹の被毛に男の手が触れる。汗ばんた毛束が男の乾いた指に吸い付いていく感触。そんな微細な感覚すら掴めるほどに、椿の全身は敏感になっていた。

  椿にとっては、最悪なことだ。

  「やめ、……ッ、お願い……」

  「遠慮すんなって、なあ?」

  「やだ……ッぁあ……ッああッ、ひ、ぐぅ、アアぁあッ!!」

  お腹を軽く押されるだけで、強烈な排便欲と不快感が椿の体の中で暴れまわれる。体は、心は、その持ち主である椿自身が、今にも全部吐き出してしまいたいと願っている。だというのにも関わらず、男がそれを許していないというだけで、椿は生物として当然のように備えている排泄が出来ないでいる。

  「……ッ、ぁぐぅう……っ」

  ただ犯されるのならばどれ程良かったか。

  思い知る。

  犯され、なぶられ、時に射精を管理されるのにも耐性がついていた。そんな椿は今、思い知らされていた。

  ――椿は、この男の玩具なのだ。

  この苦行に意味はない。理由はない。

  ただ、この男が面白がる。それだけの為に、椿は弄ばれている。

  「く、そ……ッ、ぁ、ぐ……ぅうッ、ああ゛ぁ……ッ」

  許せない。

  この男を許せなんてしない。

  絶対に、こんな悪行を許して良いはずがない。椿の正義感がそう叫んでいる。物事がこんな男の望み通りになる事はないのだと、男を否定しなければいけない。

  「ぁ……ッぎぃイ!? ぁあ……ッ、あぐ、ううっ!」

  

  腹の下部を押し込まれた瞬間に激痛が走った。痛みは大波のように引いていくが、その波が過ぎ去った後に残されたのはジンジンとした圧迫感だった。ただ触られるだけでも痛みが走るほどだというのに、触られているような苦しみだけが消えてくれない。

  椿の目から、涙がボロボロと溢れていく。

  排便を封じられて苦しいからか?

  違う。

  カメラに撮られているのが恥ずかしいからか?

  違う。

  しゃくりあげながら、次から次へと溢れていく大粒の涙。鼻水と汗と混じり合って顔面をぐちゃぐちゃにしていく。

  その涙は。

  「出、したい……」

  絶対に男に屈してやるものか。そう考えていたはずが、最終的に男に懇願する自分自身の情けなさに涙が溢れてくる。

  脳が焼かれるようだ。椿はそんな慙愧を感じながらも、それでも、男に『お願い』をする。

  それは、紛れもなく椿にとっての敗北に違いなかった。

  ◇◇◇

  「へえ。……椿くん、ウンコ出してぇの?」

  椿の陥落を待ち望んでいたように、男はクツクツを笑いながら蔑んだ声を椿に向けた。

  「……っ、ぅ……ぁ」

  「まさかなぁ、椿くんに限ってそんなお願いしないよなあ?」

  もちろんだ。

  少し前の椿なら、迷いなくそう答えていただろう。だが、限界すら突破して朦朧とした椿にはそんな強がりを言うような気力など残ってはいない。

  「お、願い……出さ、せて……ッ」

  「んん? もしかして、高校生にもなって、こんな所でうんちお漏らしさせてくださいっておねだりしてんのか。おいおい、そりゃ椿くんよ、とんだ変態じゃんか」

  羞恥すら呑み込んで懇願する椿。だが、男はそんな椿の要求に容易く頷いてくれるはずはなく。

  「……まさか、そんなド変態じゃあないよなあ? まあ、椿くんが自分で『僕はうんち我慢してペットシートにいっぱいぶち撒けたい変態です』って言うなら考えてやってもいいけど……椿くんは違うもんなあ?」

  「う、……っう、うう゛……ッ」

  安い挑発。

  変態なんかじゃない。そう言い返すことは出来る。だが、もしそれを言い返したのなら、次に待つのはこの苦痛の延長だけだ。

  椿に選択肢などは残されていない。

  「お……俺……っ、おも……ッぅ、ぐ……ッ」

  嗚咽がこみ上げる。呂律が回らずうまく言葉が紡げない。だが、それでももう限界だった。

  出したい。

  お腹が痛くて、痛くて、どうしようもない。うんちしたい。楽になりたい。体中の汗から便の匂いが漂ってくるような気さえする。全身の汗が我慢した便を少しずつ血に溶かして発散させているような、最悪な感覚。

  出したい。排便したい。

  もはや、椿の頭にはそれしかない。それしか考えられない。極限まで耐え抜いた――耐えることを強制された椿の思考は、恥じらいやプライドなんてものに割ける余裕は残されていなかった。

  「俺……お漏らし、した……い……ッ、変態でも、……なんでも、いいがら……ッ、……出し……出させて……ッくだぁい……ぁあア゛アッ!?」

  「違うだろ?」

  「ぁあぎァアア゛ァ、あ、ッォああア゛ぁア……ッ!!」

  屈辱に顔を歪ませながら発したセリフに、しかし男の足が椿の下腹部に乗せられる。何が気に食わなかったのか。混乱する椿に、無慈悲に圧力が掛けられ、出したくても出せない苦痛に椿はブンブンと玩具のように首を振るしか出来なかった。

  「変態でもなんでも良いじゃなくって……、椿くんが自分をうんこ漏らしたがりのド変態野郎だって認めたら、お望み通りお漏らしさせてあげるって言ってんの」

  「……ッ、ハァ……ッ、んぐ、ぁ……ッはあ、はあ……ッ!」

  分かるよな? と告げる男に椿は分かった、と首肯する。

  椿はもはやまともな思考すら出来なくなっていた。ただ、自分が望んでその言葉を口走っているという意識だけが、汚泥のように椿の脳裏にこびりついていく。

  「お、おれ……は……っ、ひぐ、ぅう……っ、うん、ウンコ、漏らしたがりの……っ、ぁ、う……ど、ド変態……野郎……です……ッ。おも……お漏らし、ッ、ひぁ、うんこさせ……させて、ッ……んぐ……ください……ッ」

  「おお、椿くんホントに言ったよ。まじかァ」

  男は言い終わった椿に近づくと、その尻に刺さっているプラグの底をコツンコツンと指で叩く。腸骨を通じて、その刺激が全身を舐め上げていく。

  じっとりと全身の骨の内側を舐めあげられるような、気味の悪い感触。それに身を震わせる椿を男は満足そうに笑う。

  「へえ、椿くん。そんなド変態だったんだ?」

  「はい……っ、だから、……ッ、お願い、します……ッ、うんこ、……っもう、俺……ッ」

  「そっかそっか、悪かったなあ……こんな栓しちゃったら、ウンコ出来なかったよな。剥がしといてやるよ」

  藁にも縋るような心地で男に懇願した椿の覚悟に反して、男の答えは酷く簡単なものだった。椿を苦しめていたテープは、何も辛酸を呑むこともない男の手によってほんの数秒で取り払われていた。

  ぐ、とアナルプラグが押し出され始めていくのを感じる。

  「ん……っ」

  開放の時が近づいている。

  椿は喜びの中で、力を込めるという意志もなく加わっていく圧力に動き始めるアナルプラグへと、なんともなしに目を向けた。

  その時。

  椿はペニスとプラグの向こう、ペットシートの上に何かの紙が数枚置かれている事に気がついた。光沢のある紙、それが写真だと気付くのに数秒もかからなかった。

  「……ぇ、ぁ」

  両親の写真。弟の写真。そして、先生の写真。

  椿の尻の下に置かれた光沢紙には、椿の身近な人の姿がプリントされていた。それが置かれている場所は、今まさに汚物をぶち撒けようとしているその場所だ。

  「ぁ……ッ、ぁあ……、ぁっ……!!」

  それがただの写真で、それを汚した所で本人達がどうなるわけでも無いことは分かっている。それでも、椿にとっては冒涜以外の何者でもなかった。

  椿自身が、大切な人達を汚すのだと。

  嫌だ。

  だが、もう止められない。

  テープを外されたアナルプラグは、男がそれを引き抜くまでもなく、腹の中からの圧力で独りでに抜き出されていく。椿の濡れたアナルがみるみる内に太い膨らみに拡張されていき、そして、最大直径付近まで露になった次の瞬間。

  ごぼんっ!!

  まるでお風呂の栓を抜いたような音が弾け、アナルプラグが椿の尻から弾き出されていた。

  「ぁあ……ッ、ん、ぁあ……っ!!」

  絶頂にも似た開放感が一気に椿に押し寄せてくる。

  開放された門から噴き出したのは液体だった。薄茶色に染まる液体が飛沫を上げてペットシートを汚したかと思った、その直後だ。

  「ァ……ぁッ!?」

  ぶぶりゅぶぶッ!!

  聞きようによっては間抜けな音が室内に響き渡った。盛り上がった椿の菊門から茶色のホースを勢いよく引き抜いたように、柔らかな塊が飛び出していく。

  湯気すら立つような椿の健康的な便が浣腸薬で柔くなって、勢いよく溢れ出てきているのだ。その勢いは椿自身にも制御が効かない。ペットシートに跳ねて床を汚そうとも、それを止める方法は椿にはなかった。

  止める方法すら、分からない。

  「ほあ、んぁあ……っぁあっ、あァあ、アア゛ンん……っ!」

  肛門を圧迫し、前立腺を押しつぶすような勢いで溢れ出る大量の便。それが一気に菊座を擦り上げ、排出されていく感覚は、まさに絶頂そのものだった。

  生物的な快感。抑圧されていたその快感を一気に発散した椿は、まるで弱点を突かれる女のように喘ぎ声を上げながら、匂い立つ大便をひり出している。

  その瞬間は、椿は全てを忘れていた。

  「ぁ……ッ、ん、ぅ……」

  己がトイレでもない場所で盛大に大便をしている事も。

  その一部始終をカメラに収められている事も。

  便を放出した先に大切な人達の写真があった事も。

  そして、その状況が、誰よりも椿が避けようとしていた惨状だということも。

  「……ぁ……っ、ぁあ」

  排泄を終えた椿の目に映ったのは、己のしでかした恥そのものだ。

  「気持ちよさそうな声でお漏らししてたなあ、椿くん。あ、いや、ド変態野郎くんだっけ?」

  「……っ、ぁ……ぇあ……」

  「あんあんエロく喘ぎながらウンコ出せるとか、さすがだよなァ」

  けらけらと嘲笑う声が耳障りに響く。だが、それに怒りを覚える事もできない。

  ペットシートをはみ出て床を汚す排泄物。その塊の下に僅かに見える写真の角。室内に充満するむせ返るほどの汚臭。全身を包む汗と、顔を覆う涙と鼻水。

  なによりも椿自身が懇願して、それが実現した状況だという悪夢のような現実に、まるで暗闇に呑まれるような感覚があった。

  遠くから聞こえるような声で、男の声がした。

  「……っ、おれ……俺……?」

  「じゃあ、汚れちまったし、お風呂でも入るか。隅々までちゃんと洗ってやるからな、椿くん」

  ◇◇◇

  それからの事は覚えていない。

  「ぅ……ぁ」

  気づけば、椿は自分の部屋に帰ってきていて、ベッドの中で体を丸めて泣いていた。

  男のシャンプーの匂いが全身にこびりついている。それは単体であれば清涼感のあるいい香りのはずなのに、どうしても椿の鼻が排泄物の匂いを思い出させてくる。

  吐き気が押し寄せてくる。

  「……ッ、お……」

  椿は、布団を跳ね除けるようにして起き上がる。勉強机の横に置いてあるゴミ箱に頭を突っ込むと、そのまま胃の中に溜まっていた物を全部吐き出していた。

  喉の奥が焼ける。酸っぱい胃液と消化途中の夕飯が口と鼻の中に残留して、その匂いが更に吐き気を催していた。

  繰り返し、ゴミ箱に嘔吐して胃の中が空っぽになった椿は、ようやくゴミ箱から顔を上げた。

  窓ガラスに自分の顔が浮かんでいる。暗い室内に黒茶の毛並みが沈んでいる。まるでやつれたような顔をした椿は、飢え死んだ亡霊のようですらある。

  「風呂……入らないと」

  頬が酷く痛む。それが帰宅後に、自分で自分を殴った痛みだと漸くに思い出した。

  椿は冷えた空気が入り込んでくるのも構わず、部屋の窓を開く。

  凍えるような冬の夜が流れ込んでくる。

  その肌を容赦なく切り裂いてくるような冷たさが、今は心地がいい。

  ふらりと立ち上がった椿は、ゴミ箱に被せていたビニール袋を取り出して、家人を起こさぬよう足音を潜めて部屋を出ていった。

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