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暗い部屋。グチュ、グチュとカーテンの隙間から漏れる星灯りに、擦り上げる雄チンポの先から溢れ出る先走りがテラテラと輝いている。
「……ッ、はあ……っ!」
一人、その明かりもつけていない部屋は、噎せ返るような汗と皮脂が混ざりあった濃い刺激臭に包まれている。
木炭の脱臭剤は置かれているが、その脱臭能力ではてんで間に合っていない。成長期の男子部室という理由だけでは説明のつかない濃厚な思春期男子の凶暴なアロマ。
そんな悪臭の発生源となっているのは、部室に干されている『まわし』だ。
この部室の使用者、相撲部の男達が直に股間に巻き付けている布、厚手ではあるがそれ以上に巨漢の男が全身を振り絞り、躍動するその汗を受け止めているそれは、一吸いすれば、甘みと苦味、酸っぱさが入り交じった強烈な臭気が喉を驚きに震わせる。
「すご、ッ……ぁあ、……!」
だが、その人影はそんなまわしにあろうことかマズルを埋めるほどに深く、まわしの臭いを吸い込んでいた。そんな深呼吸は一度や二度ではない、普通であればその激臭に胃が暴れるような嫌悪感を感じるだけだろうが、彼はそうではなかった。
バキバキに熱り立った剛直を一心不乱に擦り上げ、そして。
「ぁあ、ッ……あゥ……、イく……イぐ……ッ!!」
力み上がるその一瞬、手繰り寄せたまわしにその剛直の先端を押し付けた。マズルに押し当てながら、垂れ下がったまわしでその剛直を包み込んで、その人影は熱い迸りを誰のものとも知らないまわしへと、熱い雄汁をぶち撒けた。
「ッ……ぁあ……はぁ、ッ……は」
そうして、汗とザーメンでどろどろになったまわしを彼はさらに引き寄せる。普通であれば他人の体液にまみれたまわしなど絶対に触りたくもないだろうが、その人影はそれをまるで宝物でも持つかのように大事に抱き締めている。
「……は、……ぁ……、ど、どうしよう……これ」
数秒の後、興奮から覚めた彼は、己の体液が染み付いていくまわしを見つめ、そして。
彼が立ち去った後、そのまわしが干してあった空間に残るのは若い雄のザーメン臭。その臭いも部室内に蟠る雄臭さにかき消されていくのだった。
◇◇◇
ズバンッ!! ズバンッ!! と屋根が揺れるような重い音が相撲場に響き渡る。
黒豹の相撲部員が、テッポウ稽古をしていた。鉄砲柱を平手で突くようにしながら、腕と足を同時に押し出すすり足と鍛錬を兼ねた稽古だ。普通であればもっと軽い音がするものだが、それをしている黒豹の体躯を考えれば頷けるというものだろう。
衝撃に波のように揺れる肉体。その度に飛び散る、全身の肉と脂から染み出してきているような、ハンバーグの断面から溢れる肉汁がごとき、濃厚な汗。
高校に入ってから相撲を始めた彼は、始めこそ細マッチョなスリム体型だったのだが、いまや見違える程の巨漢に成り果てていた。
体重は三桁などとっくに踏み越え、いまや150kgの大台に到達している。ずんむりとまわしの上に乗っかった肉は高校入学前と比べると三倍近い体重ではあるが、てっぽうでそれだけ重い音を発しているのは、その体重によるものだけではない。
「先輩、すげえっすね……てっぽうで天井揺れるって」
「それだけ体重も乗ってんだ。軽く流してるみたいにみえるのにな」
数少ない部員が、黒豹のてっぽうを見て感嘆している。この夏のインターハイでこの高校をベストエイトまで導いた立役者である黒豹は、その巨体に見合う相撲の技術を持ち合わせている。
顧問の豪田にも大相撲からのアポイントがあったとかいう話もあって、今やこの相撲部の大将と言っても誰も文句は言わないだろう。
そんな黒豹は、ただ一心に己の張り手と向き合っていた。
ベストエイトへと輝いた全国総体――インターハイ。個人では振るわなかったが、団体戦で本戦に勝ち残り、その準決勝への切符を掛けた試合。
最後に行われた大将戦で、黒豹は負け星を付けられ、敗退した。
粘りが足りなかった。
いや、それ以前に、初めてのインターハイ本戦の熱気に中てられたのだ。
「……っ」
ズン、と鉄砲柱に手を突いたまま、黒豹は少しの間項垂れた。
自分に突き刺さる大量の視線、相手の刺し貫くような熱のある視線。見られている。熱のある視線をぶつけられている。それを感じ取った瞬間、戦意が膨れ上がるとともに、黒豹は興奮をしていた。
そのまわしの中で勃起していたのだ。
いや、それ自体はいつものことだ。だが、その日は違った。いつもと突き刺さる視線の量が違う。それがいつもよりも少しだけ、黒豹の動きに精彩を欠けさせた。
恐らく顧問も、審判も、部員でさえもその違いは気付かなかっただろう。だが、その僅かな動きの乱れを対戦相手は見逃さなかった。一気に腰を泳がされ、主導権を取り返そうと気が逸り、気がつけばバランスを崩して前倒しになっていた。
まわしの中で圧迫される屹立。
勝利校の名前が読み上げられる中で、黒豹はこれまでの人生にないほどの悔しさを覚えていた。
自分に足りないもの。それを分かっていながらに、手に入れられないもどかしさを鍛錬にぶつけながら、黒豹はてっぽう柱に張り手を打ち続けていた。
「すみません、遅れました……、あの、先生」
「ん、どうした?」
遅れてやってきた虎獣人と顧問の豪田の会話が、そんな黒豹の耳に飛び込んできた。その手を止めずに耳を澄ませたその話は。
「あの……俺のまわし、なくなっちゃって……」
そう始まったのだった。
◇◇◇
「おーし、来い! 俺が受け止めてやるからなっ!」
黒豹はパンッ!! と手を叩きながら土俵際に立って部員達に腕を広げてみせた。
「オス! おなしやすッ!」
後輩の猪獣人が前に出る。黒豹は、一礼の後全身の筋肉を盛り上げ突っ込んできたその剛体を、真正面から受け止める。ズドン! と正しく交通事故のような衝撃。100kg越えの巨体の衝突をもってしてもなお、黒豹の体は、倒れる事はおろか、よろめく事すらなく猪の突進を受け止めきってみせた。
「そら、押せ!」
「ぶ、むぉおおオオッ!!」
雄叫びを上げながら、猪はそのまま黒豹の体に全身を振り絞るように押し進む。汗ばんだ肌と肌が、爆発しそうなほどの熱気が黒豹の全身を包み込みながら、自分の体が土俵際へと押されていく感覚に後輩の成長を感じていた。
始めは、最初の数歩分しか押し出せなかったというのに。
「お、いいじゃねえか。でも思いっきりが足りねえなぁ、もっと積極的にな」
だが、黒豹を土俵際まで追い込むことは出来ず、半ばほどで止まってしまう。
黒豹は健闘を讃えるようにアドバイスをしながら、土俵際まで押せなかった猪の首根っこを取って転がして、受け身を取らせた。汗で濡れた短い毛に土が吸い付いていくのを見遣りながら、筋肉量の多い肉体が起き上がる動きの問題のなさに頷く。
「よし」
「あざます!」
次は虎の番だ。
そうやってぶつかり稽古の受け手を担う黒豹のその胸中では、先程の虎の言葉が踊っていた。
「おし、来いッ」
「お願いします!」
虎は今、予備のまわしを締めている。
どうにも部室内で干していたまわしがなくなっていた、らしい。
そんな筈がないと思い、もしかして間違えて持って帰ったりしてしまったのかと、一度家に帰って確認したのだが、見つからなかったのだという。
まわしは、相撲取りに取って魂みたいなものだ。そんな物がなくなるなんてあり得ない。更に言えば部室に干して、基本試合などでない限り持ち運ばないものだ。
そこまで考えたのだろう後輩は、出来るだけ他の部員に聞かれないようにだろう、小さな声でこう言っていた。
「……盗まれたのかも」
と。
その言葉に顧問は難しい顔をした。
「好き好んで、まわしなんて盗むやつがいるか?」
「……いや、別に俺イジメとかされてないっすし」
「だよなあ」
謎は一切分からないまま、結局、虎には予備のまわしが貸し出されていた。誰も使っていないまっさらなまわしは、むしろ動きづらそうだ。
そのまわしを見つめながら、黒豹は考えていた。
好き好んで、まわしなんて盗むやつがいるか? いるとしたらそれは。
――相撲部みたいな巨漢デブに興奮する、デブ専クソホモ野郎なんじゃねえか、と。
◇◇◇
そして、数日後。
「くうーッ」
黒豹は、まだまだ暑さの残る夏空の下。背伸びをしていた。
まわし姿に何も羽織らないいつもの姿だが、場所が違っていた。相撲場ではなくグラウンドだ。野球部やサッカー部が使用しているグラウンドの端で、黒豹は集まった相撲部に振り返った。
「おうおう、何縮こまってんだあ?」
「いや、だってなあ……」
と黒豹に苦い表情で返したのは、同級生の猫獣人だった。彼は、暑いだろうにまわしの上半身にジャージを着込んでいながら、そのでんぶりと大きなお尻を隠すように裾を引っ張っている。
他の運動部から物珍しい視線を向けられることが恥ずかしいのか。
そんな同級生の姿に、黒豹は呆れるようにため息をはいた。
「恥ずかしがんじゃねえよ、これも鍛錬なんだからよーぉ。先輩見習えって」
と黒豹は、3年の先輩である熊獣人に視線を送った。元々、二つ上の学年に相撲部がいなかったが為に黒豹達が入部するまで三年引退後は一人だった彼は、黒豹と同じくまわし一丁で毅然と立っていた。
寡黙な彼は何も言わないが、少なくとも恥ずかしいと身を縮こまらせてはいない。
「ぅ、……まあ、そうだけどよ……」
「ま、緊張しないようにっていう訓練でもあるんだから、しゃっきりとしろよ」
黒豹は、その猫の背中をバシンと叩く。
そう、屋外での鍛錬を進言したのは他でもない黒豹だった。インターハイにて、ベストエイトを勝ち取ったは良いものの、全員がベストを尽くせていたかといえばそうではない。
人の視線に晒されて、場の空気に呑まれて緊張していたせいで、十全な力を振り絞れなかったのだ。
だから、その胆力を鍛える為に外での練習を積極的にするべきだと、そう進言した。
グラウンドの端を利用しての四股踏みやタイヤ引き。そして校区のランニング。
人の目に触れることに慣れようという思惑もあったが――それ以上の理由がある。
(やべえ……ぇッ、キマる……っ)
その理由を思い出しながら、黒豹はまわしの中で張り裂けそうなほどに膨張した雄欲に、頭をガンガンと叩きつけられているような心地に至っていた。決して不快などではない。
快楽だ。
「どすこいッ、どすこい!」
「どす、こい……っ、どすこい……ッ!」
黒豹は学校近くの河川敷をランニングしていた。その後ろを他の部員が追ってきていながら、黒豹が張り上げる「どすこい」という掛け声を羞恥に強張る声で復唱していた。
相撲の代名詞だろう「どすこい」は取り組み前に披露される相撲甚句の合いの手だ。実際、試合中や練習で声高に叫ぶ事などあり得ないそれを掛け声にしているのだから、相撲に縁深いものからすれば噴飯物に違いない。
「あーおすもうさんだー」
という子どもの声に振り向きながら手を振る黒豹に、他の部員は恥ずかしそうにしながらもそれに倣って河川敷下にいる少年に手を振っていた。
「からだ、おっきいねえ」
「そうねえ。いっぱい食べたらおっきくなれるのよ」
と微笑ましい親子の会話を背に聞きながら、黒豹は自分の体を公然と露にしている事にただならぬ快感を覚えていた。誰もがこの体に、息を呑むように引きつけられている。
単純な驚きや、称賛、もしくは蔑むような視線。その全てが黒豹の心臓から股間までをジクジクと痺れさせてくるようだった。
重く弾む胸の先。見るものが見れば、自分で弄っていることが丸わかりだろうぷっくりと膨らんだ乳首も。
腹回りにがっしりとついた、走る衝撃が伝わる度にばるんばるんと揺れる腹の肉も。
ともすれば、固く巻いたまわしの上にすら浮き出してくるんじゃないかと思ってしまう熱り立った雄茎も。
どれもが今、普通に暮らす人々に晒されている。
(ぁあ、たまんねえ……ッ)
走りながら、絶頂してしまいそうな快感に耐えながら黒豹は学校へと戻ってきては、グラウンドでの練習を開始していた。
「おら、もっと声出せ。どすこいッ!!」
「ど、どすこい……!」
すり足の練習をしながら、声を上げる。
まるでグラウンドを飛び越え、学校中に響くような声量。なんだなんだと教室に残っている生徒が窓から覗き込んでくる。グラウンドで練習をしている野球部から失笑が聞こえてくる。
「声がちいせえぞ!」
黒豹も恥ずかしくないわけではない。いやむしろ恥ずかしい。
顔が真っ赤になって身体も変な汗が止まらない。全身が燃えるように熱くなっているのは、夏の気温のせいでも、鍛錬の厳しさのせいでもなかった。学校中から、興味と嘲笑の視線に晒されている。そんな感覚に黒豹は体を蝕まれていた。
だが、それがいい。その羞恥が快楽に変わる。何よりも、まわしに隠された股間の隆起が誰よりも強く反応しているのだから。
そして、締め込みを解かれれば鍛えた体から吐き出される熱を孕んだ男根が、誰からも丸見えになるのだ。
「どすこぉい! どす、こいッ!!」
それを想像するだけで興奮してしまうほどの変態的な性癖を持つ黒豹にとって、この状況は地獄であり、天国以外の何物でもなかった。
自分は今、部員達とともに、同じ学校に通う生徒たちの前でまわし一丁で立っているのだ。その雄臭く汗だくになった豊満な肉体を晒しているのだ。
どすこい! と掛け声を上げれば上げるほど、股間に熱が集まっていくのが分かる。興奮していくのが分かる。そんな変態的な自分を見せびらかすのは恥ずかしいが、同時にどうしようもなく気持ちいい。
これは、鍛錬だ。だから仕方がないだろう? とそんな言い訳をしながら、黒豹は恍惚とした笑みを浮かべていたのだった。
◇◇◇
そんな光景を目にして数日後。
相撲部の屋外練習はまだ続いていた。始めは野外の練習をしてから、相撲場での練習をするルーティンを組んでいるらしい。そんな事を、相撲部の部室前に干されているまわしが夕暮れの風に揺れるのを見ながら考えている。
ランニングの終わり。蛇口を上向きにした蛇口から吹き出す水で、汗に濡れた顔を洗っていると、そんな相撲部の部室から声が聞こえてきた。
「あぁ、そうだ。外に干してるまわし取ってきてくれ」
「え、俺っすか!? 俺いま、マッパなんすけど……ッ」
「誰も見やしねえって! そら、行け行け!」
後輩をパシろうという先輩の声だ。
押さないでくださいってー! という困った声がしたかと思えば、ガラリと部室の引き戸が開けられたかと思えば、中から一人の虎獣人が飛び出してきた。
息を呑んだ。
何故なら、その虎は、彼自身が言っていた通り、何も身にまとっていなかったからだ。ずんぐりと太りながらも重力に従って垂れる胸肉と腹肉。ぶっとい足は一歩ごとにブルンブルンと揺れる。そんな両足の間に、半ば肉に生まれたちょんもりとした肉竿がふるふると揺れている。
仮性包茎なのか、小学生のちんちんのようにぷるぷると震えるそれは、でっぷりと中身の詰まった玉袋とのギャップで、むしろ男臭さを増しているようだった。
虎の全身を舐めるように見つめていると、ぱっと視線に気付いたのか振り向いた虎と目が合った。
ボッと。まるで火の出る瞬間を見たような勢いで虎の顔が赤く染まっていくのが見えたと思った次の刹那。
「ぅぁ……ッ!!」
その重厚感あふれる肉体からは想像もできないほど俊敏な動きで、干していたまわしを回収した虎はその勢いのまま部室の中へと飛び込んでいってしまった。
「見られたじゃないっすかー!! もーッ!! お嫁さんに行けなくなったらどうするんすか!!」
「バカお前、どっちにしてもお前は嫁には行けねえだろ」
「そういうことじゃないんですって!!」
そう言いながら後輩を慰めながらも笑うのは、あの黒豹の2年生だろう。
相撲部でも一際、体がデカく、男臭く、汗っかきで暑苦しい図体の黒豹。そのでっかい腕を、くさそうな脇を、もちもちとしていそうな胸を、分厚い肉質の尻を、丸太のような豪脚を、そして、あせた色のついたまわしのその下を。
想像しただけで、股間が張り裂けそうな心地になっていた。
ごくりと、喉が鳴る。ここにいては毒だと、部室の中へと入っては帰り支度を済ませていく。そして、先輩が帰った後の部室を軽く掃除することに集中して、気分を鎮めた後ようやく帰ろうかと外に出たその時。
「……っ」
同時に相撲部の部室から黒豹が出てくるのが見えた。
そして、彼は制服に無理やり押し込んだようなデカい身体でポケットをバンバンと叩く。巨体では、ポケットの奥に入った物を取り出すのも一苦労だろうと思いながら、何かを探しているのだろうか、とそれを横目で見つめていると。
「あっ、しまったぜ。部室の鍵、豪田ちゃんから借りて家置きっぱだなぁ。ま、いっか。相撲部になんて誰も忍び込んだりしねえだろ!」
そう言って、彼は部室に鍵を掛けることもなく、部室を後にした。
ゴクリと喉が鳴った。
数日前、手に入れたアレ。あの黒豹のそれは、きっともっと……激烈な刺激に違いない。あの日、出来心で盗み出してしまってから、問題に鳴っていないということも悪魔に力を貸したのだろう。
耳元で囁かれる悪魔の言葉に、熱り立つ股間を固く握りしめるのだった。
◇◇◇
その夜。
すっかり日も落ちて真っ暗になった相撲部の部室の扉を、こっそりと開ける人影があった。
「……ッ」
彼は、吸い込んだ部室内の濃厚な力士の汗の臭いに、一瞬たじろぎながらその足で部室に踏み入っていく。まるで一度は入ったことがあるような慣れた足取りで、その人影は陰干しをしているまわしの垂れ幕へと進んでいく。
前よりも暗い。入り口と窓のカーテンが閉められているのだと気づきながら、それでもこびりついた記憶がロッカーに足をぶつけさせること無く彼の足を目的のものへと運んでいく。
「は、ぁ……っ、はあ……」
夏の日差し下での練習も相当に堪えたのだろう。まわしは、以前にもまして濃厚な激臭を放つようになっていた。そんな中、その人影は一際強烈な存在感を放つまわしへと鼻を近づける。
そのまわしの布地越しに空気を吸うと同時に、彼はズボンとパンツを同時にずり下げる。
ブルン、と音を立てて飛び出したのは、見事に勃起した雄根だ。スリムな人影に似合わわず、まるで海竜の首のように僅かに波打つ屹立は、その先から既に先走りを滴らせている。
「ん、はぁ……ぁあッ……!」
彼が、まわしを嗅ぎながらその屹立を握りしめた、その瞬間。
「変態クソホモ野郎の証拠写真、ゲーットぉ!」
「……ッ!!」
パシャリ、というスマホの撮影音と共に眩い光に包まれて、そこにいた人物がフラッシュライトに照らし出された。
そこにいたのは、獅子獣人の男子生徒だった。己が変態行為に勤しんでいた所を写真に撮られた。そう確信した瞬間の動きは素早かった。
ズボンとパンツを上げたと思うやいなや、獅子は撮影者――黒豹の顔面目掛けて拳を放ってきていた。
「んぶ……ぉッ」
顔を逸して直撃を免れた黒豹は、しかし、その直後放たれたフックが腹を直撃し、少し油断したように身体をよろめかせた。その隙を獅子は見逃さない。黒豹の手からスマホを奪い去ると、そのまま部室の外へと飛び出そうと閉まっている引き戸を開けようとする。
だが。
「あ、開かない……ッ、鍵、開いてんだろ……!」
焦りながら、内鍵が開放されている事を確認しながらガチャガチャと扉を引くも、しかし、扉は一向に開いてくれない。そうしている内に、パッと部室の電気が付けられた。
人工的な光に照らされる部室。
ジャージ姿のスリムな獅子と、まわし姿の黒豹。
「……ぐッ」
「やっぱりお前だったかぁ~、クソ変態ホモ野郎は」
獅子の手からスマホを奪い返した黒豹は、そこにいた見覚えのある生徒にそう言った。
黒豹は流石に自分の性癖についても理解していた。重厚かつ壮大に育ったこの体を誰かに見られる事が、たまらなく好きなのだ。陰部に限らない露出癖というべきか……いや、黒豹にとっては見られる場所が陰部となるというべきだろう。
だからこそ、黒豹はいつの間にか視線に敏感になっていた。
黒豹の体に無関心なほどその視線には何も感じず、そして、黒豹の体に関心があるほど興奮する。この数日、外での練習に励んでいたのは、ただただ黒豹の性癖を満たすためだけではなかったのだ。
後輩のまわしを盗んだ犯人。
デブに卑猥な視線を送ってくるデブ専を見つけ、そして誘い出すための罠だった。そして、その見事罠にかかったのが、目の前の男子生徒、ということだ。
「えっと、ボクシングのスポーツ推薦で入学した一年生なんだって? お前が熱ぅい目で見てくるから思わず先生に聞いちまったよ」
「……何がしてんだよ……お前」
元々、学業の成績だけで入学し、そして相撲部でも活躍している黒豹は、先生達からの覚えもいい。軽く聞き込みをしてみれば、あっけない程簡単にその生徒の情報は手に入った。
今しがた出られなかった部室の扉、そこに後付の簡易錠が取り付けられている事に気付いた獅子は、牙をむき出しにしてニヤニヤと笑う黒豹を凄んだ。
殴り合いを制するボクシング部だ、流石に物怖じはしないらしい。そんな獅子の様子に、黒豹はむしろ喜々として笑みを深めていく。
「いやぁ? ちょっと頼み事がしたくてよ、大人しく言う事聞いてくれたらイイことしてやるんだけどな」
「断るって言ったら?」
「物盗りデブ専変態ホモが退学させられるかもなあ、でも安心しろよ。俺を倒せたら、不問にしてやってもいいぜ」
そう言うその手には小さな鍵があり、黒豹はそれをまわしの前袋の中へと押し込み、バンッと音を響かせてまわしを叩いた。
それは、背後の扉を閉ざしている錠の鍵なんだろう。つまり、獅子には黒豹を倒して、鍵とスマホを奪うしかない。部室棟の扉は頑丈で、簡易錠程度なら問題はないが、外に出られる程に壊せば即時に警備会社に通報が行くようになっている。
「様になってんじゃねえか」
「うるせえ、殺すぞクソデブ」
「そのデブのまわしでオナってた奴が言うかぁ?」
やるしかない。と悟ったらしい獅子は躊躇いを捨ててファイティングポーズを取る。その体が軽く跳ねた、と思った瞬間。獅子の姿が黒豹の視界から消えていた。
「……ッ」
大柄な相手の素早い動きは慣れている。だが、ボクシングの中でもライト級程の細身の選手は相撲にはいない。身軽さによって保証された機敏さは、黒豹の意表を突くほどだった。
流石にスポーツ推薦を得ているだけはある。だが、それだけ。
国技という一面に印象は薄いかもしれないが、相撲は3桁大の重量でぶつかり合うれっきとした格闘技だ。突っ張りや張り手で頬を打たれる事も日常茶飯事。視界の端に映った手の影に、クリーンヒットを避ける技術は体得している。
肩を狙ったフック。そこからのボディへとヒットは受け入れる黒豹は、まるで効いていないというように笑みを浮かべている。そして、ならばとこれまでのはお遊びだったとばかりに顎へと吸い込まれる拳に、黒豹はその一瞬の隙を突いて、手の平を獅子の胸に突き込んでいた。
ボクシング風にいうのならクロスカウンター。互いの拳を身に受けながら、しかし、その結果は全く違うものになっていた。
「軽いなぁ~、一番軽い奴でも90kgはある奴らと頭からぶつかってんだぜ? それくらいで怯むかよってなぁ、おら、どす――こいッ!」
一撃の重みに息を詰める獅子とは対照的に、怯みもしない黒豹はそのまま張り手で獅子の体を壁に叩きつける。そして、そのまま、仕切りのポースをして両手を床に付けた瞬間に、その巨体が獅子目掛けて突っ込んだ。
「が、は……ッ!?」
150kgのぶちかましと壁の間でサンドウィッチになった獅子は、その衝撃に肺の空気をすべて吐き出すような声を上げ、脱力する。
諦めた訳では無い。身体に衝撃が走って自由が効かなくなっているのだ。そんな獅子を壁に押し付けたまま、黒豹は腕を上げて晒した脇を獅子のマズルに押し当てていた。
「ふぐ、ぅ……っ」
今日は練習後にシャワーも浴びていない。そんな黒豹の脇の臭いに獅子の口から泡を吹くような音が発せられていた。もがく獅子に、しかし黒豹はむしろ押し付けるように脇肉でぐりぐりと獅子の鼻頭を押し潰す。ヌルヌルとした感触は、余りの激臭に溢れる鼻水か。
ひゅご、ひゅご、と脇の下で呼吸する獅子を哀れだとは思わない。
何故か――それの答えは、黒豹の腹の下にあった。
「こんなにやられてチンポ立ててんのか? お前って、ほんとに変態だよなぁ?」
「ひゅ、ぶふ……ぐぅっ」
黒豹の胸を鷲掴みにして抵抗する獅子を、黒豹は決して逃がそうとはしない。すっかり性感帯と化している胸を摑まれて、黒豹も限界だった。この獅子がやってくるのを待っている時からずっと勃起が萎えない。この数日、この瞬間を楽しみにしすぎてアナニーにすら集中できない日々だったのだ。
そう、この日。この日だ。
「まあ悪いことはしねえよ、秘密にしてやるからさあ。お前、俺の肉ディルドになれよ」
「ぶ……っぁ、は……ぁ?」
脇の肉に歪んだ顔を、更に歪めながら獅子は訳がわからないというように黒豹を睨みあげていた。そんな獅子が、黒豹にとっては最高に興奮する玩具に見える。ますます、漲りが固く張り詰めていく。
「ちょうどお前みたいなド変態のデブ専ホモ、探してたんだよぁ」
黒豹は、獅子の屹立を自分の腹で押し潰しながら、そう獅子に言い放っていた。
◇◇◇
「おら、好きなんだろ? デブのおっぱいだぜ」
「くそが、どっちが変態だ……ん」
「ぉほ、っ……ん゛ふぉ……ッ」
脇の匂いを堪能させた後、黒豹はそのばつばつに実った豊満な胸を獅子に差し出していた。その先端でくっきりと勃ち上がる突起に、獅子は悪態をつきながらも吸い込まれるように吸い付く。
軽く歯でコリコリと噛まれると、黒豹の身体を強烈な快感が駆け抜けていく。この数日発散できずに蟠っていた性欲が、初めて他人に弄られるという体験をより鮮明なものに昇華させていた。全身が痙攣するように震え上がる。
一瞬冷えた雷撃が全身を包み込んで、そして、直後に灼熱が再び押し寄せる。
人に、この肉体を虐められる事がこれほどに気持ちいいなんて。黒豹は、自分で弄るよりも何倍もの快感に身を浸していた。
「お゛……っ、ふ……すっげ」
「ん、む……っんぐぁ……!?」
獅子が夢中になって吸い付く様子に、黒豹は己のスイッチが入ってしまっている事を感じていた。もう我慢しなくてもいいのだ。黒豹はそう気付いた瞬間に、獅子の屹立を握りしめていた。
デカい。
太さも、長さもある、チンポだ。
獅子の雄叫び。ビクビクと震えるそのチンポが生きている雄のモノだという実感を得ながら、黒豹は胸を獅子から開放して、彼の前に蹲踞の姿勢でしゃがみこんだ。
「……っ」
「はあ……ッ、生ディルド……ちんぽ……!」
黒豹はうわ言のように呟きながら、獅子のジャージを下ろした。そこにはまだ一枚、ビキニブリーフが残っていた。だがそこに浮かんだ屹立のシルエットは黒豹の期待を更に上乗せする大きさを見せつけていた。
先端から染み出している先走りから雄汁の臭いを漂わせている。くっきりと浮かび上がる雁首の形。それが自分の尻肉を抉るのを想像しただけで、黒豹の処女穴は疼き始めていく。濡らしてもないのに、今すぐにぶち込みたい欲求。ただ、すぐにそうしてしまっては折角の楽しみが台無しだ。暴れ出しそうな欲を抑えつけながら、黒豹は獅子の下着を掴んだ。
そして、ビキニブリーフを下げて飛び出したその剛直に、黒豹は目を丸くする。先程は一瞬のフラッシュでよく見えなかったのその剛直は、黒豹自身の物とは一目瞭然のデカさを誇っていた。
「バッキバキのチンポ……ッ、はあっ、ぁあ……俺の持ってるディルドよりでけえ……」
跪いて、そのチンポを見つめる。もはや脅しているのがどちらか分からなくなるほど、黒豹の目の中にはくっきりとハートマークが浮かんですらいる。日頃黒豹がオナニーのオカズにしているのは雌モノのAVだ。だが、それは、女性器を掘削するペニスがみたいが為だったのだと黒豹は今になって理解する。
雄の生チンポが欲しい。これでアナニーしたら、どれだけ気持ちがいいだろうか。生唾を飲む。
そんな黒豹の顔に性器を晒した獅子は、じっとそれを見下ろしていた。困惑するような目、だが、そこあるのは淫欲に突き動かされる雄の獣性だ。
「おい変態、何だよ物欲しそうなツラしやがって。言いたいことがあるなら言ってみろよ」
「……、胸、で……」
「んん?」
「胸で、挟んでさ、……俺のチンコ扱いてくれよ」
獅子の要望に、黒豹は嘲笑を返す。
だが、獅子も言われるばかりではない。淫猥に屹立を見つめる黒豹に、その本性を確信したのだろう。ただふざけてこんな事をしているはずもないのだと。
「パイズリってやつだろ? そんなに俺の胸が気に入ったのかよ。なあ、おい」
「は、俺のチンコに涎垂らして、粋がんじゃねえよ、変た――ぁア゛っ……!」
黒豹は、獅子が言い返すその瞬間を狙って、その屹立を胸の谷間へと迎え入れてやった。両手で胸を寄せて完全にチンポを包み込むと、汗を潤滑剤にしてヌチュ、グチュと卑猥な音を部室に響き渡らせる。
それと同時に、獅子の喘ぎ声がこだまする。
先走りと汗が混ざって、粘着く音は更に淫靡にかき鳴らされていく。筋肉と脂肪の塊である相撲部の胸に押しつぶされている。その快感は、そこらのオナホなんかじゃあ体験できない悦楽だ。
「ん、ぁあ……っ」
ぐぷっ……と、黒豹の胸の谷間から、赤黒い屹立の先端が顔を出す。そうかと思えば、まるで蛇に呑まれていくかのように谷間の中へと先走りと汗が混じり合った泡だけを残して消えていく。
立場の逆転を狙った獅子を分からせるように胸オナホでチンポを虐める黒豹は、その喘ぎ声がどんどんと余裕が失われていくのに気付いていた。
「ぁ……く、っぁ……?」
「お前は俺の肉ディルドになるんだ、つったろ?」
黒豹の胸をべたべたに先走りで濡らしきった獅子は、突如訪れた予期せぬ開放感に瞑っていた目を開けた。ビクビクと寂しげに震えるチンポは「もう少しでイケたのに」と如実に語っている。
そんなチンポの心を見透かしたように、黒豹は自らまわしを脱ぎ去っていく。その途中に部室を閉ざしている鍵が金属音を鳴らしながら床に転がるが、獅子はそれに一瞥すら視線をやらない。その目は遂に顕になっていく力士の不浄に釘付けになっていた。
「あ? はは、やべ~」
黒豹は呆れるように笑った。
まわしの前袋を緩めれば途端に溢れてくる、雄種の香り。ギンギンに勃起している包茎と内布にこびりついているのは、紛れもなく黒豹の精液だった。彼はいつの間にか自分でも気付かぬ間に絶頂し、そして、一切萎える瞬間もなく勃起を継続させていたのだ。
暴かれるまわしの中で、自らの子種で汚れた性器。それを見て心臓を射抜かれたような心地になったのは、それを間近で見ていた唯一の人物。獅子だった。
黒豹は己に、肉ディルドになれと言った。本当に? 本当にそんな事があってしまっていいのか。そんな事を考えている間に、黒豹は準備を終えていた。現実を信じきれなくなりそうになっている獅子は、されるがままにベンチに仰向けになっていた。
無理やり脅すようにして、身体を触らせ、チンポをパイズリし、その中で射精してしまうようなオスデブが、今獅子の前でその雌穴を曝け出している。ベンチを跨いで、雄重な尻肉の中心でクパクパと拡縮するアナルを見せつけている。
バシン、とまわしを叩くように黒豹は己の尻を叩いた。
「はぁ、ア……ッ」
重い息を吐く。黒豹は、胸が張り裂けそうな期待に苛まれながら、ゆっくりと、ゆっくりとその腰を押し下げていく。胸を弄りたい欲求に耐えながら両膝に手を置いて、獅子の生ディルドに向かって腰を下ろしていく。
先端が触れた。
熱い。
ディルドとは比べ物にならない、存在感。熱。ローションとも違うぬめり、柔らかくも硬い、感触。
その先端が、ぐむりと潰れるような感触があったかと思えば、アナルに少し入り込んだ先端が反発してきて逆に入り口をこじ開けようとしてくる。
「ぉ……っ」
括約筋をガチガチのチンポが抉じ開けようとしている。黒豹は、自分のマンコを犯そうとするチンポがほんの先端を突っ込んだだけだというのに、今すぐに暴発しそうになるのを抑え込んだ。
ゆっくりと挿入して正解だった。この先を一気に感じ取ったのなら、頭が処理する前に絶頂してしまうに決まっている。息を整えながら、更に腰を下ろす。先端がめり込んでしまえば、後はゆっくりとそれを沈めていくだけ。
だが、獅子のチンポの最も太い部分もまたその先端だ。
「ぉあ、……ッ、ぉ、ほ」
風船のような尻肉の中に太い雁首が飲み込まれていく。ギチギチと音を鳴らしながら押し拡げられる感覚と、僅かに肉壁に亀頭が触れる感覚。まるで別人の身体に起きている事が一斉に自分の脳に流れ込んできているような、ちぐはぐな快感が黒豹の中にあふれかえる。
痛みはある。だが、快楽もある。触れられてもいない腹の奥が気持ちいい。
「……ッぁっ……ぉお、んッ!?」
太い雁首が入り口を広げ、拡げ、そして、ぐぽんっと音を立てて腸壁の中へと熱が滑り込む。まるで、体の中が燃えるような熱に晒される、その異物を腸壁が察知して、肉襞が一斉に脈打つのを黒豹自身が感じ取っていた。
「はぁあ……っ」
「ん、が……ぁあ」
肺の奥から空気が漏れるような声を響かせる黒豹に対し、獅子は今にも爆発しそうな肉竿を抑え込むのに必死だった。
豊満な屈強な力士が、陰部を曝け出し己のペニスに跨って恍惚とした声を漏らしているのだ。その半ば肉に埋もれた包茎の先からはとくとくと先走りを溢れさせていて、紛れもなく自分のチンコで快楽を得ているのだと分かる。
だが、そんな余裕はすぐになくなった。
「ッ、ぁあッ……たまんねえ……ッ、おい、すぐイクなよッ。わかったなあ!?」
「なぁ……っ、そんな、急に゛……ッ!」
ハンバーガーのようにパティを咥えこんだバンズ。スローペースだった黒豹が、その肉厚の尻に包んだ肉茎を一気に擦り上げたのだ。獅子の細い腰が、重量感のある桃肉に押し潰されて開放されたかと思えば、今度は絡みついてくる淫襞が獅子のペニスをゾリゾリと抉ってくる。
強烈だった。
それが何度も、何度も繰り返される。
「が、っ……ああっ、あッ! ぐぁ、アア゛ッ!!」
「気持ちいいだろッ、なあ、おい! お前の大好きな、デブのマンコにッ、チンポ……突っ込んでんだッ……っ!」
「……っ、ぅう゛、あッ!」
返事もろくにできない。ただ、狂ったように何度も獅子は首を縦に振っていた。
バチュン、バチュン、と尻肉が鞭のようにたわみながら獅子の腰を打ち付ける。その度、今にも張り裂けそうな程に揺れる肉と毛皮の塊から、汗の滴りが雨のように降り注ぐのだ。
日中からの鍛錬が染み付いた汗は、そのひと粒で獅子の頭をクラクラとさせるほど濃厚な雄臭さを放っている。それが雨あられのように降り注ぐのだ。
だが、それに意識を取られるばかりではない。
黒豹のアナルは、柔らかく獅子の屹立を迎え入れるようでいながら、その肉襞は彼を拒もうとしがみついてくる。まるで相反するその動きが、獅子のペニスの性感帯を巧みに刺激しているのだ。
「ぁあッ、ぁ゛! ちんぽ、ッ生ちんぽヤベえ……ッ、おら、どすこい、どすこいッ、お前も突くんだよ、おら! どすこォ……ッぃ、い゛……ッ」
ゴリゴリと中を抉る屹立に、黒豹は腰の動きを止められなかった。更にリズムよく腰を打ち付ければ、獅子の方からも突き上げられる。その度、道中の壁面だけではなく、押し込まれた空気で膨らむ奥の腸壁すら微細な快感を叫んで、黒豹の脳を焼き尽くさんとするのだ。
「ッぉお、っ……良いな、っ、これだよ、コレ……っ、この、ゴリゴリ、中削られるのが……イイんだよなぁ……っ」
「……っ、ぁあ……っ、ぐ、ぅ……!!」
「ぁあ、……っ、いつでもマンコ使わせてやっからよッ! もう、すんじゃねえぞッ……、まわしも返せ……ッいいなぁ……ッァア゛……ッ」
「ぅ、ぁ……ッ。わが……ッ、たぁ……ァぅッ……ぐゥ!」
黒豹は、もっとこのディルドで遊びたかった。だが獅子の方は、もう限界が近かった。硬く太いものに肉襞を蹂躙されながら、自らも前立腺の刺激を求めるように腰をグラインドさせる黒豹。その快感は獅子にとって暴力的だ。
「はあっ、やべえ、マンコ……ッ、壊れる……でも、もっと、どすこぉい、どす……ッ、こぃ……っ!」
「ぅ、ああっ……っフーッ、ふ……っ、ぐぅう……!! も、……ッ俺もう……ッ」
「どすこ、ぉ、……ぉオ、あァ……っ、やべ、……っ漏れる、……ッ、イク、イクイク……っ」
それを分かっていても黒豹は己の腰を、快楽を止められなかった。声が溢れる。
そしてそれは、突然に訪れた。
ゴリ、とこれまで散々、黒豹の脊椎に重い衝撃を押し付けていたはずの前立腺が、雁首に抉り取られるその一瞬。これまでと何が違うのか、角度か速度か、それは分からないが。
まるで忘れていたかのように急激に、射精感が――いや、それ以上の何かが黒豹の中を駆け上っていく。
「ぉ、おァッ、がッ、ああァア、ああ゛ぁあッ!?」
「……ッぁ、ああッ!!」
白濁が、一気に溢れ出した。どびゅぐッ!! と跳ねる粘液が弧を描き獅子の腹の上に滴って音を慣らす。
一瞬の解放感と脱力感に黒豹は目を見開く。ガクガクと震える腰、噴き出す大量の白濁液がベンチや床に飛び散っていくのと同時、獅子の屹立も黒豹の腹の奥へと、その熱いほとばしりを放っていた。
腸壁を叩く、勢いの良い熱汁。
種付の感覚。中出しされている実感。
射精後の冷静な思考を取り戻そうとする脳裏に、淫猥な初体験が刻み込まれていく。深く、深く。
「……ッ、ぁ、はあ……」
「か、ぁ……ッ、ぁ……っ」
黒豹は、荒い息を吐く獅子を見下ろした。
考えがまとまらない。むせ返るような精液の匂い。それはまわしを干した濃密な雄臭の中でもかき消えてはきれないだろう。それをどう誤魔化すか。いや、それより、虎のまわしを取り戻したとて、どうせ精液まみれのそれをどうするか。
そんな事を考えながら、黒豹はまず始めにやることを思いついた。
「……あった」
獅子のジャージのポケット。そこに入っていたスマホを取り出して、メッセージアプリの友だち登録を済ませるのだった。
◇◇◇
それから数ヶ月。
夏の暑さは過ぎ去ることもなく、性懲りもなく残暑が続いている。だが、暦は秋ということで秋季全国相撲大会が開かれていた。
団体戦は奇しくも、本戦初戦敗退。悔いはあれど、しかし、実力は十全に出せていた。
「……それだけに、悔しいっす……ッ!」
新しいまわしを締めた虎が、悔しさを噛み締めながら涙を流している。虎の相手は、大相撲入りも決まっているような実力者だ。そんな相手に自分の相撲を守り、喰らいついたのだから実質は白星も同然だ。顧問からの激励を受けて、涙を引っ込めた虎は、唇を噛んだままで黒豹に目を向けた。
「先輩、改めておめでとうございます……!」
「おう! まあ、黒星一つだけどな」
と黒豹は表彰された銀メダルを手に、浮かれきれない表情ではにかんだ。
「夏頃から腰の粘りが良くなったと思っていたが、お前が勝っても何らおかしくない戦いぶりだった。身に合う自主練でも見つけたのか?」
「おうっすよ! 豪田ちゃんにも教えたくない秘密の特訓っすけど」
黒豹はにやりと笑う。
そんな黒豹に顧問と相撲部の面々が不思議そうにする中、黒豹は自分のスマホが鳴動したのに気づいて、取り出して画面を点ける。
そこには夏に出会った獅子の名前が表示されている。
この数日、大会の為に会えていなかった獅子からの祝いのメッセージだ。恐らく速報で、黒豹が個人の部で準優勝した報を見たのだろう。
そして、その祝いと一緒に、今日会えないかという誘いもそこにあった。
「へへ」
ちょうどいい。試合で昂ぶって収まりがつかなかったところなのだから。と黒豹はそのメッセージに返信をする。
この特訓だけは、誰かに教えるわけには行かないだろう。
――『彼氏』とのセックスが、秘密の足腰トレーニングだ、なんて事は。
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