「はぁ……はぁ……」
壁を背にして荒い息を吐きながら、床にへたり込む。ここまで来ればきっと大丈夫だろう……。
「あぁ…疲れた……何とか逃げきれたか。へへ、あいつら、おれが獣人だってこと忘れてたみたいだな」
オオカミ獣人であった彼は、最近流行りの"獣人狩り"に遭った被害者の一人だった。バレないようにと魔法のかかった外套を身に纏い、毛皮や尻尾、尖った耳などを隠していたのだが、街角で人とぶつかったことによりそれが外れ、しっかりとその体躯を目に焼き付けられてしまったのだ。
「ついてないな……俺……。まぁ、とりあえず別の街に行きゃあなんとか暮らせるだろ……」
彼が逃げ仰せてきた場所は、元いた街からは少し遠く離れた外れの洞窟。ここを通り抜ければ近い、ということで通り抜けようとする者も少なくないのだが、近頃は強力な魔物が出るという噂で、めっきり人の往来も途絶えてしまった。
「さて、早いところ抜けないとな」
いつまでも休憩していられるほどの時間はない。彼は立ち上がって深呼吸をし、息を整えて前へと歩みを進める。
――洞窟の中を歩き始めてから少しの時間が経った。
彼は、奇妙なオブジェに気を取られていた。
「うえぇ……なんだこれ……?」
少し開けた場所に、姿見とその前に立つ獣人の石像。全身が灰色でよく分からないが、ふわふわとした毛並みは一本残らず石の針となってそれに触れた彼の手のひらを刺激した。
「てかこいつ……もしかして…?」
ふと気になって、下半身に手を伸ばす。背中のスベスベとした感触はしっかりそのまま下っていく手のひらに伝わってきた。
「裸……?いや、石だから普通か…」
噂の魔物とやらが石化させたのだろうかと一瞬考えたが、それだとこの石像が裸である説明がつかない。ここに来る者はみな、腕試しに来た戦士だとか魔法使いだとか、そういった類の魔物討伐を生業としている者たちだ。裸になる理由など1つもない。
「それにしてもこいつ……いい体してるな……」
そういう趣味はないと思っていた彼だが、正直なことに丸腰なはずの彼の剣は石像に向けられていた。
思考が完全にそちらに固定されてしまった彼は、一度発散してからゆっくり考えようと思案した。
服を脱ぎ、全裸になってもなお興奮で火照った体を冷ますように、石像の背中に自分の体をピッタリとくっつける。ひんやりとした感触が返ってくるが、彼の鼓動はむしろ速くなっていく。
「だめだ……我慢できねぇ………」
その言葉は、石像に対して謝るためだったのか、自分は悪くないという正当化のための言葉だったのか、彼自身にもよくわかっていなかった。
彼の硬く屹立した棒がゆっくりと石像の中に入っていく。熱を持ったそれが石像の中で冷やされていくのに、快楽を覚えた。
「くっ……うっ……はぁ……!」
そこからというもの、彼は完全に我を忘れ、一心不乱に腰を振り快楽を貪るケモノへと変貌した。
グチュ、パチュッ、ヌチュッ………
「アァッアオッ、グォッ」
水音と獣の唸り声がその部屋を包み込む。彼はもはやここに来た理由も忘れ、目の前の石像と交わり続ける。
快楽が頂点に達し、精神力の全てが股間から放出されようとした時、彼の目は見た。
――鏡越しに、石像の目が光るその瞬間を。
「イ、イク……!」
欲望の赴くままに、彼は石像の中にねっとりとした濃厚な白濁液を流し込む。
荒い息をあげながら、彼はゆっくりと肉棒を引き抜くと、目に飛び込んできたのはそそり立ったまま石と化し、硬くなったものだった。
「おれの……石に……!?」
慌てふためく彼をよそに、灰色はゆっくりと股間を包み込んでいく。
動揺に支配されているうちに下半身の身動きが封じられてしまった彼は、もはや為す術なく体の時が止まるのを待ち続ける存在になってしまった。
「お、やってるねぇ」
彼は不意にかけられた声に驚きながらそちらに振り向くと、そこにはこちらを品定めするような目で見つめる、目の前のモノと同じような姿をしている石像が立っていた。
「あぁ、良かった、助けてくれ!」
「んん?キミ、ぼくが助けに来たと思ってるのお?」
「…え?」
少しの静寂。その間も、ピキピキと音を立てて彼の体は少しずつ灰色の面積を増やしていく。
「いやぁ、残念だねえ。ぼくのカラダ見たらわかるでしょお?キミはここでぼく達と同じ石になるんだっ。えへへ」
あざといポーズを決め、可愛らしく笑う石像。それを見て、オオカミの彼が持っていた耳と尻尾が下がって行った。
「あ、そうだ!ねぇねぇ、この人にもっとプレゼントしてあげてよお!」
無邪気な子供のように、動く石像はオオカミの目の前にある石像に向かって語りかける。そしてオオカミはまたしても、石像の目が光る瞬間を見てしまった。
「ううっ!?くっ、はっ、はぁ………」
あの目を見てからというもの、急激に体が火照って目の前の石像をやる事しか考えられなくなった。
犯したい。犯したい。犯す犯す犯す犯す――。
ヌチュッ、ヌチュッ、ヌチュッ、ヌチュッ。
彼は性に狂ったケモノへと変貌した。徐々に石へと変化していくその体を勢いよく動かし、石像の中へと侵入しては脱出を繰り返すのだ。
「いいねいいね、キミもぼく達と一緒になってくれるなんてとっても嬉しい……!」
動く石像は声を上ずらせて満面の笑みで灰色に染まりゆく情事を観察している。
ビュルルッ……ビュッ……
「ガァッ、アッ……アァ………」
ピキピキ、パキッ……カチン……
獣のような唸り声は小さく消えてゆき、乾いた音が洞窟の中に響き渡る。
少しして静寂が訪れたその場には、情事に耽る2体の獣人の石像と、興奮した様子でそれを見つめる同じ影。
「やったね!初のえもの!」
石像は嬉しそうに言うと、もう一つの鏡の前にいた石像が動き出す。
それは後ろを振り返り、完成したばかりの石像を見て微笑む。
「引っかかってくれてよかった…」
そういって胸を撫で下ろす鏡の石像に近寄る、観察の石像は頬擦りしながら、
「ねえねえ、初のなかまづくりのお祝いに一回やろーよ!ね?いいでしょ!」
と、提案するのだった。
それを聞いていた彼も、満更でも無い様子でそれを受け入れる。
チュプ……チュッ……
先程とは打って変わって、ねっとりとした濃密な愛を共有する2体。もはや石化したオオカミ獣人などには目もくれず、彼らは相手の石柱を咥え、味わうのに夢中だった。
石化した部位は敏感になり、快楽を感じやすくなる。全身が石化した彼らは、膨らみきった快楽の濁流に耐えられるはずもなく、一瞬で達してしまい、柱の先端から灰色の愛の結晶を注ぎ合うのだった。
ビュルッ……。
そんな石像の戯れの傍らで、オオカミ獣人の石像もまた、股間に装備した石の槍の先端から灰色の快楽を垂れ流すのだった。